デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
ー士道sideー
新しい〈フラクシナス〉、〈フラクシナスEX<エクス・ケルシオル>〉を紹介され、士道と精霊達は目をパチクリさせた。
「え、エクス・ケルシオル・・・・?」
「ええ。〈フラクシナス〉が損傷した直接の原因は折紙との戦闘だけどーーーー『前の世界』で、エレン・メイザースの〈ゲーティア〉に手酷くやられたのも事実だからね。ただ元通りに修理するだけじゃ足りないって思ったの。お陰で、かなり時間が掛かっちゃったけどね」
琴里が自嘲気味に肩を竦めて言った。
「(そう言えば、『改変前の世界』でエレン1人が操縦する〈ゲーティア〉にボロ負けしたんだったっけな。まぁ、今はソレよりも・・・・)これなら、六喰のいる場所に」
「ええ。〈インフィニティ〉になれなくてもひとっ飛びよ。まだ調整が終わってないから発艦には少し時間がかかるけど、もう艦橋には入れる筈よ。ーーーー付いてきて。会わせたい子がいるわ」
琴里が、紙飛行機を投げるようなジェスチャーをしてから、士道を呼ぶようにクイ、と指を曲げてきて、士道は首を捻る。
「“会わせたい子”?」
「ええ。まあ、ある意味しょっちゅう会ってはいたけど、こう言う形では初めて何じゃないかしら」
「・・・・? どういう事だ?」
「来れば分かるわ。ほら」
琴里がそう言うと、〈フラクシナス〉艦体の真下へと歩いていった。
「む? 誰かシドーの知り合いがいるのか?」
「いや・・・・わからん」
士道は困惑した顔で、チラッと七罪の頭の上のドラゴンを一瞥するが、相変わらず士道に背を向けて寝ており、こちらの問いに答えてくれる気配は皆無だった。仕方なく、クルーや精霊達と共に琴里の後を追った。
皆が艦体の真下に来た事を確かめてから、琴里が顔を上げて声を発する。
「ーーーー良いわ。お願い」
するとそれに応じるように、士道達の身体が淡い光と不思議な浮遊感に包まれた次の瞬間、周りの格納庫の景色が、艦内のソレに変貌した。
顕現装置<リアライザ>を用いた転送装置だ。久しぶりの感覚に懐かしさを感じながら辺りを見回す。ーーーー上下2段に分かれた艦橋に、中心に艦長席が、下部にクルー達の座席があり、それらの前にコンソール類とパーソナルモニタが設えられていた。
以前の〈フラクシナス〉よりも少し広く、モニタの数も増えていて、転送もこれまで艦体下部の転送装置に行かねばならなかったが、今では直接艦橋に繋がったようだ。
士道の考えを察しているのか、琴里が説明する。
「艦内の幾つかターミナルを作って、何処へ転送するか選べるようになったの。ターミナル間の移動も可能だから、居住エリアから艦橋へも一瞬よ」
「成る程・・・・それで、琴里、会わせたい子って?」
士道は尋ねると、キョロキョロと艦橋を見回した。それらしい人物がいないようだ。すると琴里はニッと笑い、軽く顔を上げて、
「ハロー。久しぶりね、〈フラクシナス〉」
自分のいる艦に話しかけるようにそう言う。
すると。
『ーーーーええ、お久しぶりです、琴里』
モニタがボンヤリと光ったかと思うと、艦橋に設えられていたスピーカーから、少女のような声が聞こえてきた。
「わっ!?」
突然の事に、思わず身を反らす。周囲にいた精霊達も同じように驚いたような顔になる。
「な、何ですかー?」
「びっくり・・・・です」
『失礼な反応ですよ、士道。相手が精霊ならそれだけで減点です。ドラゴンからお仕置きの尻尾ド突きが飛んできますよ』
声が、説教するように言ってくる。艦その物が喋っているかのような感覚に、士道は目を白黒させながら辺りを見回した。
「こ、これは・・・・」
「何を驚いているのよ、士道。彼女にはいつもお世話になってるじゃない。ーーーー〈フラクシナス〉のAIよ。今回の改修に辺り、対話式コミュニケーションが可能になったの」
琴里の声に合わせるように、声が続く。
『こんにちは。お久しぶり・・・・と言うのも可笑しいですね。いつもお世話をしています。コールサインは〈マリア〉です。これからまた、よろしくお願いします。士道』
妙な感慨を覚えながら、士道は笑顔を返して見せた。
「ーーーー、ああ・・・・よろしく、マリア」
すると、士道の後方からなだれ込むように、精霊達がモニタの前へと押し掛けた。別にそこがマリアの顔という訳では無いだろうが、モニタに『MARIA』の文字が表示されていた為、まるでソコに人格が宿っているように見えたのだろう。
「おお! 凄いなこれは! どうなっているのだ?」
「ほえー、こんなのがあるんだ。スッゴいねえ」
「・・・・この声があの選択肢を出してるの? マジで?」
小さなマリアを囲いながら、精霊達はワイワイ騒ぎ始める。ソレを見てか、琴里がやれやれだぜ、と言った調子でパンパンと手を叩いた。
「ほらほら、あんまりマリアを困らせないの。まだ仕事が残ってるんだから」
言って、皆を落ち着かせてから、マリアに声をかける。
「ーーーーそれで、発艦までどれくらい掛かりそう?」
『機体調整に後90分は欲しい処です』
「時間がないわ、1時間で終わらせて」
『相変わらず容赦がないですね。将来の旦那さんが気の毒でなりません』
「・・・・機体性能は上がっても、冗談のセンスは今一つのようね。今回の作戦が終わったら再調整して貰おうかしら」
琴里が半眼で言うも、マリアは気にした様子もなく、今度はクルー達に言葉を投げた。
『ーーーーパーソナルコンソールのカスタマイズは前と同じ設定にしてありますが、一応念の為、各々確認しておいて下さい。この作業はこちらの調整と並行できますので』
その言葉に、クルー達はコクリと頷くと、マリアはさらに、椎崎と中津川に、艦橋に藁人形と美少女フィギュアはいらないと言われた。2人が愕然とした顔になり、敵襲時に呪うだの、嫁がいないとパフォーマンスがフルに発揮できないだのと弁解するが、呆気なく却下され、
「「ノォォォォォォ!」」
と叫びを上げた。
幹本と川越と箕輪がワハハハと仕方ないなぁ、と他人事のように笑うが、マリアから、別れた奥さんやお店の女の子への私用電話、昔の恋人の所へ自立カメラを飛ばすと言う事も却下されて、
「「「・・・・えッ!?」」」
と、3人が一斉に目を見開いた。
その反応を見て、琴里はピクピクと額に血管を浮かばせた。
「あなた達・・・・〈フラクシナス〉の設備をそんな事に使っていたの?」
「あっ、いえ、その」
「ご、誤解です! 私達は常に真剣に任務に向き合って・・・・」
クルー達がしどろもどろになって弁解していると、マリアが呆れ混じりに淡々と声を発する。
『ドラゴンの言葉を借りるならばーーーー【本っっ当に〈フラクシナス〉は、“優秀なクルー”ばかりで頼りになるなぁ?】ですね』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
その嫌味マシマシのマリアの皮肉に、その場にいる全員が、七罪の頭の上でこちらに背を向け、身体を丸めて寝ているドラゴンに半眼&苦笑いを浮かべて一瞥すると、琴里はハアと息を吐いてから、クルー達に視線を戻す。
「とにかく、今は時間がないわ。マリアと一緒に調整を済ませておいてちょうだい」
『はっ!』
琴里の声に、クルー達が敬礼をする。
「ーーーーさて、じゃあ私達は・・・・」
『そう言えば基地内に、琴里達との面会を希望している方がいらっしゃるのですが、いかがいたしますか』
と、琴里の言葉を遮るように、マリアが声を発した。
「面会希望? 一体誰よ」
『はい。ーーーーエリオット・ウッドマン議長です』
「・・・・は?」
『「(ピクッ)」』
マリアの答えに、琴里がポカンと口を開け、二亜とドラゴンが一瞬、身体を揺らした。
◇
クルー達を艦橋に残し、〈フラクシナス〉から出た士道と精霊達は、琴里を先頭に格納庫を抜け、再び長い廊下を歩いていた。
「・・・・シドー、シドー」
「ん、どうした、十香」
と、後方を歩いていた十香が声を掛けてきて、士道はチラッとそちらを向いた。
「いや、その〈ウッドマン〉と言うのは何者なのだ? 琴里が随分と畏まっているようだが・・・・」
確かに、マリアからその名を聞いて、琴里は慌てたように肩掛けしていたジャケットに袖を遠し、きっちりとボタンを閉めていた。
そんな疑念に答えるように、前を向いたまま琴里が声を発してくる。
「ーーーーウッドマン卿は、〈ラタトスク〉の意思決定機関である円卓会議の議長よ。・・・・実質的な〈ラタトスク〉のトップにして、創設者。彼無くして〈ラタトスク〉は生まれ無かったと言っても良いわ」
「・・・・!」
〈ラタトスク〉の実質的なトップ。その言葉に、士道は微かに眉の端を揺らした。
【一体うぬは・・・・いや、うぬらの後ろにいる者は、何を考えておるのじゃ】
一瞬、六喰に言われた言葉が、頭の中に蘇ってきた。
べつに、〈ラタトスク〉に疑念を抱いたとか、そういった話ではない。だがーーーー何だろうか、立ち上がる事を決めてなお、未だに六喰の言葉に返す言葉を持てていない事を、気にしてしまっているのかもしれなかった。
と、士道はソコで、隣を歩いていた二亜の表情が、随分と難しげなモノになっている事に気づいた。
「・・・・二亜? どうかしたのか? 随分怖い顔してるけど」
「・・・・!」
士道が名を呼ぶと、二亜は驚いたように顔を上げた。
「んー? あはは、別にどうもしないけど? それとも何? 少年たらそんな小さな変化に気づいちゃうくらい二亜ちゃんの事見てたのん?」
「おいおい・・・・」
苦笑しながら返す士道に、二亜はフッと表情を真剣なモノにして、小さな声で呟くように言った。
「・・・・ちょーっとね、ウッドマンって名前に聞き覚えがあってさ」
「え?」
と、士道が聞き返した所で、前方を歩いていた琴里が、扉の前で足を止め、扉の横に付いていたインターフォンのような装置のボタンを押し、来訪を報せてから、扉を開ける。
「さ、入って」
「し、失礼します」
琴里に促され士道達は部屋に入っていった。
扉の中は、書斎のような空間になっており、壁際には無数の本が並んだ本棚が並び、先ほどまでの機械的な建物の雰囲気を一変させた。
そしてその最奥にある大きな執務机の奥に、2人の人物がいた。
1人は、縁の細い眼鏡を掛け、長い髪を1つに結わえ、車椅子に座った50代くらいの柔和な印象のある初老の男性。そしてその脇に、これまた眼鏡を掛けたスーツ姿をした20代半ばくらいの眼鏡をかけた女性が、背筋に鉄芯を通したかのように綺麗な姿勢で控えていた。
「え・・・・?」
「む?」
『・・・・・・・・・・・・』
その姿を見て、士道と十香は思わず眉根を寄せ、ずっと七罪の頭の上で背後を見せて寝ていたドラゴンが正面に寝返ると、2人の人物を睨んだ。
ドラゴンの意図は兎も角、士道と十香はこの2人に見覚えがあった。七罪と出会う前、街で出会ったあの2人だ。
「ぼ、ボードウィンさん・・・・?」
士道が男性の名を呼ぶと、男性は年齢に似合わぬ悪戯者の少年のような貌で微笑んだ。
「やあ、久しいね。そちらのお嬢さんも、元気そうで何よりだ。ーーーー改めて自己紹介させて貰おう。エリオット・ボードウィン・ウッドマンだ」
「「っ!」」
「・・・・! ウッドマン卿、2人と会った事が?」
士道と十香の方を見て言う男性に、2人は目を丸くして顔を見合せると、琴里も驚いたような調子でウッドマンと士道達を交互に見る。するとウッドマンはおどけるようにパチリとウィンクをして見せた。
「前に天宮市に行った時、少しね」
「お戯れを・・・・! 何かあったらどうするつもりですか!?」
「はは、悪かったね。以後気を付けるよ」
琴里の言葉に、ウッドマンが悪びれた様子もない言葉を言って、琴里が額に手を当てながらため息を吐いた。
思っていたよりも気さくな人で、士道は少し安心した。
と、そんな風に士道が思っていると、ウッドマンはフッと表情を真剣なモノにし、士道の鵬に向き直った。
「さて、今日は突然済まなかったね。本来なら此方から出向かねばならなかったのだが・・・・」
「いえ、そんな」
士道が言うと、ウッドマンはフッと目を伏せ、言葉を続けてきた。
「ーーーー先ずは、感謝を。精霊達を救ってくれて、本当にありがとう」
「え、あ、いや」
言われて、士道は頬をかいた。こうして改めてお礼を言われると、何と言うか、少し戸惑ってしまう。
「お礼を言いたいのはこっちも同じですよ。〈ラタトスク〉が無かったから、俺は精霊の存在を知る事ができ無かったかも知れないし、例え知ったとしても、皆を保護して生活を保証する事なんてできなかったですし。それにーーーー5年前、精霊〈ファントム〉の手で精霊にされた琴里を助けてくれた事も、感謝してます。ありがとうございます」
言って士道は、ペコリと頭を下げた。
するとウッドマンは、それを素直に受け取るように頷いてから、士道の目をジッと見つめてきた。
「ーーーーでは次は、謝罪を。こんな事に巻き込んでしまって、本当にすまない。そして、先の〈ダインスレイフ〉の件についても、謝らせてくれ。今後はああいった事は絶対に起こさないように、“馬鹿共”にも厳命を下した」
「あ・・・・」
〈ダインスレイフ〉の名に、琴里はピクリと眉の端を揺らした。士道が暴走したあの騒動した後で琴里に聞いた話によると、円卓会議<ラウンズ>の幹部の1人が暴走し、勝手に〈ダインスレイフ〉を発動させてしまった事だ(本当はその1人だけでなく、何人かの幹部も裏で手を回していたのだが)。
「・・・・いえ。確かに少し複雑ではありますけど、暴走の可能性がある以上、それに備える事は必要だと思います。それにーーーーもし事前にそれを説明されてたとしても、『魔獣ファントム』が狙ってもいた事もありますし、多分俺は、精霊達を助けたいって言っていたと思うから・・・・」
「シドー・・・・」
十香が嬉しそうな、しかし何処か士道の危うさを心配するような声を発した。
周りに視線を向けると、皆も士道の危うさを心配しているな視線をしており、七罪に至っては頭の上にいるドラゴン<飼い主>に「ちょっと、またペット<士道>が無茶をやりそうよ?」と、言わんばかりペシッペシッとドラゴンの頭を叩くが、ドラゴンは『さして興味なし』と、言わんばかりにそっぽを向いた。
そんなやり取りがあるのに気付かず、士道は小さく笑いながら、十香の頭をグリグリと撫でた。
士道自身は、精霊達を救う事ができた。今手の平に感じる感触だけで、自分がしてきた事は間違いではなかったと確信する事ができた。
しかしーーーー何故だろうか。
「・・・・・・・・・・・・」
そんな士道の心に1つ、引っ掛かっている事があった。先刻投げられた、六喰の言葉だ。
それが頭を過ると同時、士道は半ば無意識の内に、口を開いていた。
「あの・・・・1つ、良いですか」
「なんだね?」
「〈ラタトスク〉には、凄く感謝してます。・・・・でも、どうして〈ラタトスク〉は、精霊を助けようとするんですか?」
「・・・・ふむ」
士道が言うと、ウッドマンは小さく首を傾げた。
「何か・・・・迷うような事があったのかな?」
「! いえ・・・・ただ、ちょっと、気になって」
士道は心を見透かされたような気分になって、アタフタとてを動かした。
するとそこで折紙が、士道の言葉に同調するように、〈ラタトスク〉に抱いていた疑問を口にした。
「それは、私も気になっていた。ーーーー〈ラタトスク〉が精霊を救う。それはいい。その点については私も感謝している。でも、一体その先に、何があるの。莫大な予算や資材や技術を使ってまで精霊を集める理由は、何?」
ウッドマンは折紙の疑問も尤もであると言うように頷くと、苦笑しながら唇を動かす。
「それを気にするのは当然だ。確かに〈ラタトスク〉と言う組織は、君達精霊にとって『都合が良すぎる』。不審に思うのも無理の無い事だ。だが・・・・困ったな。君達がすんなり納得してくれるような理由を、私は用意できないかも知れない」
「・・・・、どういう事?」
「『精霊を救う事』。・・・・それが、私の最大の目的なんだ」
「・・・・・・・・・・・・」
その言葉に、折紙が微かに眉根を寄せる。
すると、それに同調するように、部屋の反対側にいた二亜が声を上げる。
「さっすがに・・・・聖人君子過ぎるんじゃない? 水漬けば何とやら。ソコまでいくとちょっと胡散臭いよ」
普段の気の良いお調子者で駄目人間1歩手前ではなく、少し険の感じられる声音で二亜が言う。その様子に、士道は目を丸くした。
「二亜・・・・?」
しかし二亜は答えず、ウッドマンの目を見据えたまま言葉を続けた。
「ウッドマン。エリオット・ボードウィン・ウッドマン。それがあんたの名前。・・・・間違いないよね?」
「ああ。間違いない」
「じゃあ改めて聞くけど・・・・DEMインダストリー発足メンバーの1人で、30年前初めて“この世界に精霊を出現させた”あんたが、どの面下げてそんなキラキラした綺麗事ほざいてくれてンの?」
「な・・・・!?」
二亜の言葉に、士道と精霊達は息を詰まらせた。
「どういう事だ、二亜。ウッドマンさんがDEMの・・・・? って言うか、精霊を出現させたって・・・・」
いつものドラゴンのド突きで平静に戻れないので、困惑気味に問う士道に、二亜は頭をポリポリと掻きながら返してきた。
「んー、先月ーーーーまだアタシが完全な状態の〈囁告篇帙<ラジエル>〉を保有していた頃、ちょっと調べる機会があったんだよね。この世界に、原初の精霊が現れた時の状況を」
「・・・・!? な、何だって?」
「うんでその時、分かったの。アイザック・ウェスコット。エレン・メイザース。そして・・・・エリオット・ウッドマン。DEMインダストリー社の創設メンバー3人が、原初の精霊の出現に関わっていた事が」
二亜が挑発するような調子で言うと、ウッドマンは細く息を吐いた後、口を開いた。
「そうか。君の天使は全知の〈囁告篇帙<ラジエル>〉だったね。別に隠すつもりも無かったが、それならば話が早い。・・・・そう。私はかつてアイクーーーーウェスコットやエレンと共に、この世界に原初の精霊を出現させた」
「・・・・っ」
士道は息を詰まらせた。ウッドマンがあのウェスコットやエレン達の元同志であったと言うだけでも驚きであると言うのにーーーーソコに精霊の出現まで関わってきたと言うのだ。
と、ソコでウッドマンが、思い出したように口を開く。
「ああ、そう言えば自己紹介が遅れたね。ここにいるカレンも、私と一緒にDEMを出奔した元社員だ」
すると、彼の後方に控えていた秘書官のような女性が、小さく頭を下げてきた。
「ーーーーカレン・ノーラ・メイザースです。以後お見知り置きを」
「ああ、どうも・・・・って、ん?」
つられるように挨拶を返しーーーー士道は首を捻った。彼女の名に、聞き覚えがあるような気がした。
「『メイザース』・・・・?」
「はい。“エレン・メイザースは私の実姉に当たります”」
『ええぇぇぇッ!?』
突然告げられた衝撃の真実に、士道と精霊達は驚愕の声を上げた。
「あ、あのエレンの妹だと・・・・っ!?」
「狼狽。でも、言われてみれば何処か面影があります」
「こ、これは・・・・姉妹丼が捗ると言う事で宜しいでしょうか・・・・!?」
「・・・・美九、ストップ。深呼吸」
混乱した様子の美九に、七罪が冷静な声を掛ける。
「は、はいっ、そうですねー、落ち着きますー」
美九はそれに応じるように素直に頷くと、七罪に両腕を広げて、七罪にベアハッグをしようとする。
ーーーービシィッ!
「あぅぅぅん♥️ ハニーのいけずぅ~♥️」
七罪の頭の上にいたドラゴンが尻尾で美九のお尻を叩くと、目がハートになり、恍惚とした貌となった美九がへなへなと腰を落として、ビクンッビクンッ、と身を震わせた。
「(ビッ!)」
『(ビッ!)』
七罪とドラゴンはお互いに力強くサムズアップをする。
士道は動悸を落ち着けるように胸に手を置くと、改めてカレンの容貌を見回した。
・・・・確かに、眼鏡を外して髪を伸ばせば、あの『最大の敵』に良く似ている気がする。しかし、エレンは10代後半くらいの見た目に対し、妹のカレンは20代半ばくらいに見える。
とは言え、今はそれよりも先にハッキリさせねばならないことばかりである。士道は気を取り直すように首を横に振ると、ウッドマンの方に向き直った。
「な、何で・・・・精霊を? それに、どうやって・・・・」
士道が問うと、ウッドマンは士道を落ち着けるように手を開いてきた。
「順に話そう。先ずは・・・・五河士道、鳶一折紙、君達の質問に答えねばね」
ウッドマンが折紙の方を一瞥してから、言葉を続ける。
「本条二亜の言う通り、私はDEMの発足メンバーだ。最初は、ウェスコット達と同様に、“精霊の力を利用する事を考えていた”」
「・・・・・・・・」
その言葉に、ゴクリと息を呑む。
精霊を救う為に奔走してきた組織の長が、そんな事を言い始めたのである。緊張もしようと言うものだ。
そんな士道の様子を察したのか、ウッドマンは苦笑しながら後を続けた。
「だがーーーー実際、原初の精霊を目の当たりにした時、私は・・・・変わってしまった。それまでの目的を捨て、DEMを出奔し、〈ラタトスク〉と言う組織を作って、精霊の保護に自分の人生を使う事を決意した。ーーーーかつての同志に背を向けてでもね」
「・・・・、一体、何があったって言うんですか?」
緊張に震える声で問いかけると、ウッドマンは、フッと頬を緩め、肩を竦めた。
「ーーーー恋をね、してしまったんだ」
『・・・・・・・・・・・・はぁ?』
予想外の回答に、思わずドラゴンが呆れ混じりの声を上げた。
次回、ドラゴン達『魔獣ファントム』の事が、ウッドマンから聞かされる。