デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
ー???sideー
士道達がウッドマン卿と対面するほんの少し前、〈ラタトスク〉の秘匿格納庫に、2人の青年がやって来ていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
と、内1人が手に持つ『デバイス』で格納庫の警備システムにアクセスすると、カメラやセンサー等に自分達の存在を感知できないように細工を施してから、格納庫の扉を開け、2人は悠々と格納庫の施設の中に入りながら歩き出していった。
ー士道sideー
「ーーーー恋をね、してしまったんだ」
「・・・・・・・・え?」
予想外の回答に、士道は目を見開いた。
「こ、恋・・・・?」
「ああ。初めて始原の精霊と見<まみ>えた瞬間、私は彼女に心を奪われてしまった。どうしようもないくらいに、彼女に焦がれてしまった。ーーーー彼女の心を奪い取ろうとしていた自分が、許せなくなった」
熱っぽくーーーーそれこそ、恋する少年のような調子で、ウッドマンが続ける。
「だから、彼女と同じ存在である精霊が、辛い思いをしているのが耐えられない。ーーーー馬鹿げた理由と笑われるかも知れないがね、私が精霊を救おうとする理由は、それが全てなんだ」
「・・・・・・・・」
士道は暫しの間呆気に取られ、言葉を失う。
声や表情から心を読める技能は持っていない(そんなのがあったら今のような体たらくになっていない)が、ウッドマンの言葉に、偽りが無いように感じた。
士道は、グッと奥歯を噛み締めると、首を横に振った。
「馬鹿げてなんて・・・・いません」
そして1歩踏み出しながら続ける。
「寧ろ、何て言うか・・・・俺は、あなたが、〈ラタトスク〉を作った人が、そういう人で良かったと思ってます」
士道がそう言うと、ウッドマンは少し驚いたような顔をしてから、ふっと頬を緩めた。
「・・・・ありがとう。君は優しいね。私も・・・・霊力を封じる力を持っていたのが、『伝承の魔法使い』が、君のような少年であった事を嬉しく思うよ」
「いえ、そんな・・・・」
士道がそう言いながら頭を振ると、神妙な顔で話を聞いていた折紙が小さく息を吐き出し、カレンの方に視線を向けた。
「ーーーーでは、あなたは一体、なぜそんな彼について、姉やDEMを離れたの?」
「・・・・・・・・・・・・」
するとカレンは、眉1つ動かさずそれに返した。
「私はエリオットに惚れていますので」
『「・・・・ぶっ!?」』
またもや発された予想外の言葉に、思わず士道とドラゴンは咳き込んだ。
「そ、そうなんですか・・・・? でも、ウッドマンさんはその、始原の精霊に・・・・」
「相手に想い人がいるからといって諦めねばならない道理はありません。もしも彼が心変わりをした時、側にいなければ選ばれようがないではありませんか」
「そ、それは・・・・そうかも知れませんけど」
「尤も、欲を言えば、生殖行為が可能な内に胤<たね>をいただきたい処ですが。エリオットの気持ちは最大限尊重するつもりですか、彼の血を後世に残さないのは世界の損失です」
「・・・・っ!? は、はあ・・・・」
『・・・・ある意味、男らしい女だな』
あまりに露骨かつ、堂々とした発言に、士道は目を白黒させ、ドラゴンですら呆れ混じりボソリっと呟いた。
何だがここまでされると、逆に驚きを覚える自分達の方がおかしいのかと、錯覚してしまう。
「はは・・・・これは参ったな」
「あなたが参る必要はありません、エリオット。私が勝手にしている事です」
困ったように苦笑するウッドマンにカレンがそう答えると、彼女の話を真剣な様子で聞いていた折紙は、スタスタと彼女の元に歩み寄ると、スッと右手を差し出した。
「ーーーー深く理解した。あなたの気高い決意に、賞賛と喝采を」
「こちらこそ、感謝を。私の考えに賛同を示してくれたのはあなたが“3人目”です」
『(・・・・・・・・2人目は一体誰なのだ?)』
ドラゴンが半眼になって内心呟くと、カレンは折紙の手を取り、固い握手を交わした。
「・・・・・・・・・・・・」
何やら、士道達が窺い知れない領域で通じあった2人。
ソコはかとなく“身の危険”を感じる士道だが、余計な事は言わないようにした。
と、ソコで、ウッドマンが掛けていた眼鏡の位置を直しながら軽く机に身を乗り出すようにしてきた。
「すまないが、五河士道。ーーーー顔を、良く見せてくれないかな。最近、視力の衰えが激しくてね」
「え? あ・・・・はい」
『っ・・・・!』
士道が言われるまま、ウッドマンの方に近づくと、ドラゴンも七罪の頭から飛び立つ。
士道がウッドマンの眼前に立つと、ウッドマンはまじまじと士道の顔を覗き込み、フウムと唸る。
「・・・・成る程、やはり、似ているな。ーーーー“あの時の少年”に」
「え?」
独白めいたウッドマンの言葉に、士道は眉根を寄せた。
「“あの時の”って、いった(バシィィィィィンンッ!!)いぼぉぉぉぉぉッ!!」
士道が問い返そうとした、次の瞬間。
後ろから、顔の半分が潰れたかのような衝撃が入ってきて、士道の身体はふっ飛び、壁際に置かれた本棚に盛大に叩きつけられた。
ーーーードガッ! ボトボトボトボトボトボトボトゴキャ!
「ぐおぅあっ!!?」
本棚の本が反動で床に倒れた士道の上に落下し、最後に分厚い辞典の角が士道の脳天に落ちて、士道が悶絶し、その場で倒れてピクピクと動いていた。
「(ピクッピクッピクッピクッピクッピクッ・・・・)」
「い、五河士道、くん・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
あまりに突然に起こった事態に、ウッドマンとカレンは目を見開いてしまう。
十香達精霊が、半眼で苦笑しながら、たった今士道を後ろから、尻尾で殴り飛ばした存在、ご存じドラゴンに視線を向けると、琴里が小さく咳払いをしてから、ウッドマンに話しかける。
「あぁ・・・・ウッドマン卿。気にしなくても大丈夫です。我々からすれば、“いつもの光景”ですので」
「・・・・いつもの事、なのかね?」
『おい、エリオット・ボードウィン・ウッドマンと言ったな。貴様に聞きたい事がある』
「「っ!」」
ドラゴンに話しかけられ、ウッドマンとカレンはドラゴンの姿を見ると、驚愕に目を見開く。
「シドーは大丈夫か?」
「うわっ! デッカイタンコブ!」
「合掌。辞典の角で頭を打ったからでしょう」
「わぁ~、少年の顔の半分が潰れちゃってるよ」
『うっわ~、ちょっとしたスプラッタ~』
「し、士道さん・・・・!」
「だ、大丈夫よ四糸乃。琴里の天使の加護が発動しているわ・・・・!」
「いつもよりツッコミの威力が上がってますねー」
と、シリアスな空気に関わらず、倒れた士道に集まり暢気に会話する十香達だが、琴里と折紙はドラゴンとウッドマンの話を聞いていた。
ードラゴンsideー
ウッドマンはドラゴンの姿を隅から隅まで眺めると、感嘆したように口を開いた。
「ほぉ~・・・・〈仮面ライダーウィザード〉、『伝承の魔法使い』が五河士道である事は、五河司令の報告で聞いてはいたし映像でも何度も見たがーーーーこうして『伝承の魔獣』をこの目にする日が来るとは、長生きはするものだねカレン」
「そうですね。私もこの事を知るまでは、“里の大人達”のおとぎ話程度にしか考えておりませんでした」
他愛のない会話をする2人に、ドラゴンは疑問の声を発する。
『そのーーーー『伝承の魔法使い』に『伝承の魔獣』。アイザック・ウェスコットにエレン・メイザースも言っていたが、それは一体何なのだ? 奴等は、嫌、貴様らは、〈仮面ライダーウィザード〉の、我のような『魔獣ファントム』の何を知っている?』
ドラゴンの質問に、漸く回復して起き上がった士道に精霊達も目を向けた。
そう、『伝承の魔法使い』や『伝承の魔獣』。それはウェスコットとエレンと初めて遭遇した時に口にした言葉だったからだ。ウッドマンは少し思案をしてから、その問いに答える。
「私達の故郷では、『魔獣ファントム』の存在やその『魔獣』を使役する〈魔法使い〉の存在が、伝承として語り継がれていたのだよ」
「ファントムの存在が、伝承されていた?」
琴里が口を挟んだ。本来なら士道が口を挟むべきなのだが、絶縁中のドラゴンがいる手前、前に出られなかったのだ。
「君達は不思議に思わなかったかい? ファントム達の名前が、“神話や伝説に出てくる神獣や魔獣と同じ名前である事”に。そしてーーーーファントム達を生み出す『ゲート』は、“この時代だけだったのか”、とね」
その言葉に、士道達はハッ!、となる。
『メデューサ』、『グレムリン』、『フェニックス』、そして今まで現れた『魔獣ファントム』は、皆伝説上の存在の名前だったし、『ゲート』の存在がそれこそ昔にもいた可能性があったからだ。
「ーーーーまさか・・・・!」
「その通りだよ五河司令。聖書やおとぎ話に出てくる伝説上の生き物達や世界各地にある魔物や妖怪と言った存在は、紀元前にも及ぶ昔の時代にいた人間達、『ゲート』が絶望した時に現れたファントム達をーーーー“当時の人間達が記録した存在だったのだ”」
『・・・・・・・・・・・・』
『っっ!!』
ウッドマンの言葉に、ドラゴンは平然としていたが、士道達は驚愕に目を見開いた。まさかファントム達が、そんな大昔からこの世界に出現していたとは思わなかったからだ。
「そ、それじゃ・・・・どうやって当時の人達は、ファントム達を倒していたんですかっ!?」
士道が思わず声を上げてウッドマンに問いかけると、ウッドマンは静かに答える。
「当時の人間達は、五河士道くん。君のように自分のファントムを押さえつけ、その力を使って戦ってたのだよ。世に言う魔法使いに魔術師に魔女。エクソシストと言った退魔師に、日本で言うところの陰陽師も、これに含まれている。そして君のドラゴンのように、ファントムの中には気まぐれに人間に協力する個体も存在していており、使い魔や式神として、その時代の魔法使い達と共闘していたのだよ」
ウッドマンがそう言うと、耶倶矢と二亜が士道を押し退けて身を乗り出した。
「何と! それは真か!? 古の魔法使いと魔獣達の戦いの歴史! 何とも心躍るではないか!!」
「ちょっと! そのお話、もう少し詳しく教えてくれてもよろしいですか!? 次回作のネタになりそうですから!」
「溜息。耶倶矢、今は真面目でシリアスな空気なので中二病は押さえてください」
「二亜さんも、今は職業病は控えて下さい・・・・!」
「これだから中二病患者とネタに飢えてる漫画家って奴は・・・・」
夕弦が耶倶矢の首根っこを掴んで引っ込め、四糸乃とよしのんが二亜の服の袖を引っ張って引っ込ると、七罪が呆れたような声を漏らした。
琴里も呆れた顔になるが、小さく咳払いをしてから、再びウッドマンに目を向けて声を発した。
「失礼しましたウッドマン卿。続きを・・・・」
ウッドマンは小さく苦笑いをしてから話を続ける。
「うむ。当時の魔法使い達は、杖やアクセサリーを媒介にしながら魔獣達の魔力を使い、魔法を使って魔獣達を撃退していった。そして、魔法使いの身を守る為に鎧が作られた。ーーーー崇宮真那、くん。彼女が使う〈仮面ライダービースト〉のビーストドライバーは、その当時に作られた原型、『アーキタイプ』と呼ばれるドライバーだったのだ。そのアーキタイプを元にさらに改良されて精製されたのが、五河士道くん。君が使うウィザードライバーだったのだ」
「・・・・真那のドライバーを、メデューサ達がアーキタイプって呼んでいたのは、それが由来だったんですね・・・・」
「しかし、シドーの持っているドライバーは、おっちゃんがシドーに渡した物ではなかったか?」
「あ、ああ・・・・」
士道は自分のドライバーを触って呟き、十香の問いにも頷いた。
「シゲル・ワジマ氏の事も聞いている。私とカレン。それとアイザック・ウェスコットとエレン・メイザースの故郷の里は、さっき言ったファントムと戦っていた古の魔法使い達の末裔によって作られた里だったのだ」
ウッドマンの言葉に、ドラゴンは思い出したように呟く。
『そう言えばあの中年の先祖は、“古い魔術師の一族の末裔”、だったな』
「ーーーーその通りだ。彼の先祖は元々私達と同じ里の魔法使いだった。だが、その先祖は我々の里から離れ、世界中を渡り歩き、最終的に極東の日本に永住する事になり、シゲル・ワジマ氏はその子孫と言う事になる」
「輪島のおじさんとウッドマン卿、そしてアイザック・ウェスコット達にそんな接点が・・・・!」
ウッドマンの説明に、琴里は顎に手を当てて思案する。と、折紙が声を上げた。
「でも疑問が残る。ファントムの存在が古からあり、あなた達魔法使いの末裔達は、何故その存在を世界に知られなかったのか」
「それは、時の権力者達の采配だ。科学文明が発達するにつれ、魔法や魔獣の存在は人々の記憶から薄れていったのもあるが、もし魔獣ファントムの存在が公になれば、人間社会に混乱が起こる」
「あぁ、昔の名作ホラーアクション漫画にあったねぇ。自分達の近くに異形の怪物が人間の姿をしてひそんでいるって知って、人間同士で勝手に疑心暗鬼になっちゃって、勝手に殺し合いを始めちゃって、主人公が愛していたヒロインを殺しちゃったせいで、人間の味方だった主人公にすら見捨てられて、最終的には人類が勝手に滅んでしまったって言う鬱展開全開のバットエンドになったね」
ウッドマンの言葉を補足するように二亜がそう言うと、ウッドマンは少し悲しそうに顔を俯かせた。
「そうーーーー人間はそんなに強い生き物ではない。自分達の大切な日常のすぐ近くに、自分達を脅かす存在が息をひそめていると知れば、途端にパニックに陥ってしまう。精霊の存在を秘匿にしておくのもそれだ」
「確かに、私達精霊は精神状態が不安定になれば、空間震だけでなく、嵐や吹雪や音による洗脳など、個々の持つ天使の能力を暴走させてしまう。こう言ってしまうのは気がひけるけどーーーー普通の人達から言わせれば私達精霊は、“いつ何の拍子で爆発するか分からない爆弾のような存在”。知られれば私達精霊は人々に恐れられるか、普通の人達の精神が狂うか、最悪の場合は迫害を受けるのは目に見えている」
「ーーーーそ、そんな事(ガシッ)っ、十香?」
「(フルフル)」
士道は折紙の言葉を否定しようと声を上げようとするが、十香が士道の肩を掴んで止めると、首を横に振った。
周りを見ると、琴里や他の精霊達も何とも言えない複雑な表情だが、首を横に振った。恐らく精霊達は、折紙の言葉が正しいと思っているのだろう。
士道は感情ではそんな事ないと叫びたかったが、もしも、メデューサやグレムリン達ファントムが、自分達の天宮市や来禅高校に、怪人体の姿で堂々と彷徨いている姿を想像したら、背筋が冷たくなるのを感じた。
ウッドマンも言葉を続けた。
「それ故に、我々の魔法使いの末裔の存在も秘匿となっていた。だが・・・・」
そこまで言うと、ウッドマンは片手を握り、もう片方の手で握った拳を包むと、その手はフルフルと震えていた。カレンの方も、何処か悲痛な顔になって小さく俯いた。
ーーーーまるで、怒りと悲しみを必死に静めようとするように・・・・。
「・・・・ウッドマンさん・・・・?」
『???』
『・・・・・・・・・・・・・・・・』
ウッドマンとカレンの様子に、士道と精霊達は首を傾げ、ドラゴンは鋭い視線を送る。
と、ウッドマンはその視線に気づき、顔を笑みに戻した。
「あぁ・・・・済まないね。とまぁ、これが我々の里が知りうる情報だ」
『そうか。・・・・では、最後に1つ聞いておきたい』
「何だね?」
問い返すウッドマンにドラゴンは・・・・地獄の奥底から響く程の威圧感を込めた声を発した。
『お前達は始原の精霊を生み出した後ーーーー“何をした?”』
「「っっ!!?」」
その言葉に、ウッドマンとカレンは同時に顔を驚愕に目を見開いて、ドラゴンを見据えた。
「・・・・・・・・・・・・君は、“何をーーーー何処まで知っている”・・・・!?」
『質問を質問で返すな。貴様は我の問いに答えれば良いのだ。答えろ・・・・!!』
両者の間でとてつもなく重い空気が生み出され、士道も精霊達もカレンも、声を発せず、萎縮してしまった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
その場に重苦しい空気が充満し、全員が黙ってしまっていた。
「・・・・・・・・私達はーーーー」
と、ウッドマンが観念したように声を発そうとした、次の瞬間。
ーーーーゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・!!
激しい震動が、部屋を襲った。
『む?』
「うわ・・・・っ!?」
「おおっ!?」
「きゃーーーー!」
まるで近くで爆弾でも爆発したかのような衝撃が、壁を、床を、天井を震わせる。士道が落とした本棚以外の本棚に並んでいた本が、一斉に床に散らばった。
「だ、大丈夫か、皆!」
「うむ・・・・問題ない。しかし、一体何が起こったのだ!?」
十香が士道の声に応えながら辺りを見回す。するとそこで、四糸乃が怯えたように喉を震わせた。
「まさか・・・・六喰さん・・・・ですか?」
『ええッ、ここに隕石が落とされちゃったって事ー?』
よしのんがオーバーリアクション気味に自分の頬を手で挟み、お爺ちゃんになった奇妙な冒険の2代目主人公のように、『OH MY GOOOOOD!』と言わんばかりのリアクションをとった。
が、琴里が険しい顔をしながら、首を横に振った。
「いえ、今のは・・・・」
と、それに合わせるようにして、部屋に設えられていたスピーカーから、機関員の慌てたような声が、ノイズ混じりに響いてくる。
《ウッドマン卿! 緊急事態です!》
「落ち着きたまえ。一体何があったのだね」
《しーーーー襲撃です! 基地上空に空中艦の反応を確認! これは・・・・DEMです!》
「な・・・・!」
伝えられた言葉に、士道が表情を戦慄の色に染めた。
「DEM・・・・ですって!? 嘘でしょ、この基地が見つかるなんてーーーー」
愕然と琴里が叫びを上げそうになるが、途中で息を詰まらせた。思い出したのだ。今のDEMに、隠し事など無駄であると。
「〈神蝕篇帙<ベルゼバブ>〉・・・・!」
その全治の魔王の名に、二亜が苦々しげな調子でコクリと頷いた。
「・・・・多分ね。めいいっぱい検索の邪魔はしといてけど、あくまで時間稼ぎだし。ジャミングかける前に調べられてた事に関してはどうにもならないしね」
「く・・・・やったくれるじゃないの。態々この場所を調べて襲撃してきたって事は、敵の目的は改修を終えた〈フラクシナス〉かーーーー」
言いながら、琴里はウッドマンに視線を向けた。
「あなたか、です。ウッドマン卿」
「・・・・ふむ」
ウッドマンは顎に手を当てながら小さく唸り、数秒間考えを巡らせてから、顔を上げた。
「ーーーー兎に角、行動に移ろう。この場所が相手に知られた以上、ただ座しているのは死を待つようなものだ」
言って、ウッドマンはバッと手を掲げる。
「五河司令。君は精霊達を連れて〈フラクシナス〉へ急いでくれ。そして一刻も早く〈ゾディアック〉の所へ。ーーーーきっと、彼女を救って上げてくれ」
「了解しました。必ず。・・・・しかし、ウッドマン卿は」
琴里が不安そうに眉根を寄せながら問うと、ウッドマンはフッと頬を緩めた。
「私とカレンは別ルートから脱出させてもらうよ。この施設をそのままウェスコットに押さえられるとなると少々厄介だ。後始末をしていかねばならない物があるしーーーー何よりこの足では、君達の邪魔になってしまうだろう」
ウッドマンが自分の脚を軽く叩いて見せる。琴里が拳を握りながら悲痛な声を上げた。
「ですが!」
「大丈夫。脱出ルートは確保してあるから心配はいらないさ。この首、そう易々とくれてやるつもりもない。死ぬ時は、愛する女の腕に抱かれながらと決めているんだ」
「私の腕ならいつでも空いてますが」
ウッドマンがおどけるように言って、パチリとウインクをすると、カレンが眼鏡をキラリと光らせてそう言った。
「おっと。これは一層死ねなくなったな。君ほど優秀な人間を、死出の旅の供にする訳にはいかない」
肩をすくめるウッドマンに、カレンは表情を全く変えなかったが、複雑な感情が滲み出ていた。
ウッドマンは琴里の方を向き、力強く首肯する。
「行ってくれ、五河司令。ーーーー武運を祈る」
「・・・・、了解しました。どうかご無事で、卿」
数瞬迷うが、綺麗な敬礼をする琴里は、士道達を連れて部屋を出る。その際、ドラゴンがウッドマンに、鋭い視線を向けて口を開く。
『ーーーーまだ死ぬな。貴様には“やって貰う事”があるからな』
「・・・・(コクン)」
ドラゴンの言葉に、ウッドマンが頷くのを確認してすると、ドラゴンは再び七罪の頭の上に乗り、士道達は元来た道を辿るように進むと、辺りから戦闘音が響いてきた。
と、どれくらい廊下を進んだ頃か、前方の壁が爆音と共に弾け飛んだ。
「うわっ!?」
「な・・・・!」
壁の破片が辺りに散らばり、白煙の中から、グールとバンダースナッチが飛び出てきた。
「・・・・グールにバンダースナッチっ!?」
「ーーーー避けて、士道」
[エンジェル プリーズ!]
すかさず、エンジェルに変身した折紙が、『メタトロンウィンガー』の光線で士道に襲いくるグールとバンダースナッチを撃破する。
「あ、ありがとう、折紙」
「士道。ドラゴンが、【ドラゴンスタイルにはなれんが、通常のウィザードにはなれるからさっさと変身しろこの愚図】ーーーーだって」
士道の服の袖を引っ張りながら七罪が伝言する。どうやら士道と会話すらしたくないようだ。
「あ、ああ。ありがとう七罪」
士道が頷くと、精霊達もそれぞれのスピリッドライバーを取り出すと、
『変身!』
[フレイム プリーズ ヒー! ヒー! ヒーヒーヒー!!]
士道がウィザードに変身し、十香達も仮面ライダーに変身する。
「良し。一気に駆け抜けてーーーー」
と。そこで、ウィザード<士道>は言葉を止めた。
否、止めさせられた。
予想外の声が、前方から響いてきたのだ。
「ーーーーおや、これはこれは。まさか君達までいるとはね」
「な・・・・!?」
緊迫した場に似合わぬ涼しげな声色に、士道は眉根を寄せた。
未だに晴れぬ白煙の中から、金のラインが入った漆黒の魔法使いが、グレムリンと〈仮面ライダーメイジ〉を2人伴い、悠然と歩み出てきた。
忘れたくても忘れられない。否、忘れもしない。それは、
「アイザック・ウェスコット!?」
そう。DEMインダストリーの長であり、士道達の因縁の相手。アイザック・ウェスコットが変身する、〈仮面ライダーソーサラー〉だった。
ー???sideー
秘匿格納庫に潜入していた2人の青年は、途中でCR-ユニットを装備した魔術師<ウィザード>とグールを、持っていた光線銃(?)とナイフ(?)で蹴散らしながら進んでいると、角の所で、ウィザード<士道>とソーサラー<ウェスコット>の様子を角の影に隠れながら見ていた。
この話で、自分なりに〈仮面ライダーウィザード〉の世界観を、考察して見ました。