デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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さて今回の話で、所々に出てきた謎の2人や、ちょっとこの世界にやって来てしまった人達を書きます。


お伽の世界にご案内

ー士道sideー

 

ソーサラー<ウェスコット>の姿に、精霊達が警戒するように構える。

仮にも敵の本拠地に、敵組織の長が来た。さらにこれまでこう言った荒事は全てヘルキューレ<エレン>かファントム達に任せていたウェスコットがだ。

しかし、油断できる相手ではない。今目の前にいる男は先日に、〈仮面ライダーウィザード〉の最強スタイル〈インフィニティ〉と互角に渡り合っただけでなく、さらにーーーー。

 

「ーーーーはっ!」

 

ウィザード<士道>の思考を裂くように、エンジェル<折紙>が全ての『メタトロンウィンガー』の光線をソーサラー<ウェスコット>へと一直線に放った。

が、それがソーサラー<ウェスコット>を灼こうとした瞬間、彼の身体の前に黄金の魔法陣の障壁が現れ、『メタトロンウィンガー』の光線を全て防いで空気に溶けていった。

 

「うわぉ♪ 流石折紙ちゃん、容赦ないねぇ☆」

 

グレムリンがカラカラと笑いながら言うと、ソーサラー<ウェスコット>も笑っているように身体を震わせ、優雅とさえ思える仕草で頷く。

 

「素晴らしい。迷いのない、そして正確な攻撃だ」

 

「・・・・ち」

 

エンジェル<折紙>は忌々しげに舌打ちすると、ソーサラー<ウェスコット>は右手を前方に掲げて見せた。

 

「だが、残念だな。今の私には、その程度の力では傷をつけられない」

 

するとその動作に合わせて空間がグワン、と撓み、ソコから、禍々しい気を放つ1冊の本が現れた。

 

「ーーーー〈神蝕篇帙<ベルゼバブ>〉」

 

「・・・・っ!」

 

「あぁーっ! あたしの天使っ!」

 

ウィザード<士道>は思わず息を詰まらせ、二亜が騒ぐ。ーーーー〈神蝕篇帙<ベルゼバブ>〉。ウェスコットが二亜から奪った、全知の魔王。

そしてそれを顕現させたと言う行動が示すのは1つ。臨戦態勢だ。

精霊達もその空気を感じ取り、各々の武器を構える。ドラゴンはウィッチ<七罪>の邪魔にならないように、ウィッチ<七罪>の頭から、唯一変身できない二亜の頭に移動した。

 

「はぁッ!」

 

プリンセス<十香>が『サンダルフォンブレード』の夜色の斬撃をソーサラー<ウェスコット>に放つ。

が、グレムリンがソーサラー<ウェスコット>の前に躍り出、その1撃を切り裂いて消した。

 

「斬撃が駄目ならーーーー直接斬る!」

 

烈帛の気合いと共にプリンセス<十香>が剣を薙ぐように振る。

が、それを邪魔せんと、2人のメイジがプリンセス<十香>の前に立ち塞がり、随意領域<テリトリー>を展開し、強度を高めた。

 

「邪魔をーーーーするなぁっ!」

 

「「がふ・・・・っ!」」

 

が、その抵抗空しく、あっさりと壁にめり込むように叩きつけられた。

メイジ達の苦悶も聞かないまま、ソーサラー<ウェスコット>の頭上にサンダルフォンブレードを振り下ろすプリンセス<十香>。

 

『ちょっと、いきなりチェックメイトは駄目だよ、十香ちゃん♪』

 

しかし、グレムリンがその1撃を両手に持つ双剣『ラプチャー』を交差して防いだ。

 

「くっ・・・・!」

 

プリンセス<十香>か剣ごと切り捨てようと力を込めるが、その腕からは想像できないパワーでビクともしなかった。

するとソーサラー<ウェスコット>は、間合いの中に敵がいると言う状況でなお、楽しそうな声を発してきた。

 

「勇猛なり。素晴らしきかな〈プリンセス〉。ーーーーしかし、残念だ。本当ならばもっと相手をしてあげたい処だが、今日の目的は君達ではないんだ」

 

「ふざけるな、逃がすと思うか!」

 

「はは、そんなつもりは毛頭ないよ。君達を放置していたら、何かと厄介そうだしね」

 

ソーサラー<ウェスコット>は宙に浮いた本のページをなぞるような仕草をして見せた。

 

「そうだな。丁度いい。君の力を見せてくれ」

 

そして本に語りかけるように、その言葉を唱える。

 

「〈神蝕篇帙<ベルゼバブ>〉ーーーー【幻書館<アシュフィリア>】」

 

『「・・・・ッ、十香!」』

 

その声を鼓膜が捉えると同時に、ウィザード<士道>とドラゴンは嫌な予感を感じて、プリンセス<十香>に離れるように声をかけた。

すると次の瞬間、2人の声に後方に飛び退こうとしたプリンセス<十香>の足元の空間が歪み、ソコに大きな口を開けるかの如く開かれた巨大な本が姿を現した。

 

「なーーーー」

 

プリンセス<十香>が息を詰まらせるが、もう遅い。巨大な本は、プリンセス<十香>を丸呑みするように、勢い良くその身を閉じた。まるで押し花にでもされるかのように、プリンセス<十香>の姿が本に吸い込まれる。

 

「十香!」

 

ウィザード<士道>が声を張り上げると、プリンセス<十香>を救い出そうと床を蹴る。が、ウィザード<士道>の手が触れる寸前で、本の姿が虚空に掻き消えた。

しかも、それだけでは終わらない。

 

「きゃ・・・・!」

 

「な、何よこれは!」

 

精霊達の方からそんな悲鳴が響いてくる。ウィザード<士道>は慌てて後方を振り向くと、精霊達の足元や背後に、先ほどプリンセス<十香>を呑み込んだのと同じ巨大な本が現れていたのだった。

 

「く・・・・!」

 

『不味いな・・・・』

 

「ちーーーー〈囁告篇帙<ラジエル>〉・・・・! んっ!?」

 

「っ・・・・?」

 

二亜が〈囁告篇帙<ラジエル>〉を取り出して妨害しようとした瞬間、二亜とソーサラー<ウェスコット>が自分の手にある本の天使と魔王を見て、怪訝そうな声を上げた。

が、

 

「皆! 逃げーーーー」

 

士道の叫びを上げる前に、廊下に現れた巨大な本が次々と閉じ、精霊達を呑み込んでいく。勿論、二亜の頭の上にいたドラゴンもだ。

 

「わ、こ、この・・・・っ!」

 

「やばっ!」

 

≪し、士道、さーーーー≫

 

最後に残ったウィッチ<七罪>とハーミット<よしのんと四糸乃>が、本に呑まれて消えていく。その光景を見ている事しかできなかったウィザード<士道>は、ウィザーソードガン・ガンモードの銃口を、ソーサラー<ウェスコット>へと向けた。

 

「てめぇ、皆をどこへやった!」

 

「はは。そう鼻息荒くしなくても大丈夫だよ。ーーーーすぐに、会える」

 

そう言って、ソーサラー<ウェスコット>が声を上げた瞬間。

ウィザード<士道>の足元にも、巨大な本が現れた。

 

「!? う、うわぁっ!?」

 

ウィザード<士道>は本に挟まれそうになるのを必死に抵抗するが、ソーサラー<ウェスコット>は小さく笑いながら声を発する。

 

「〈インフィニティ〉の君なら兎も角、今の君は脅威ではない。しかし、どうしたのかな? 君の魔獣は?」

 

「ぐぅ・・・・っ! くく・・・・!」

 

「ふふふ、言う事を聞かない魔獣ならば、いっそ自分に従うように調教してみたらどうだい?」

 

「っ」

 

ソーサラー<ウェスコット>の言葉に、ウィザード<士道>は一瞬、ピクッと身体を揺らした。

 

「自分を常に褒め称え、自分に好きなだけ力を与え、自分の命令に従順に従う。それが魔法使いと魔獣の関係だと思わないかい?」

 

「(ドラゴンが・・・・俺に、従う・・・・?)」

 

ウィザード<士道>が力を弱めたその瞬間、ページの挟む力が強くなった。

 

「しまっーーーー」

 

「君達は、エリオットの後に相手をしてあげよう。それまでは、惑っていると良い。ーーーー幻想の、世界の中で」

 

ソーサラー<ウェスコット>がそう言うと同時、本はウィザード<士道>をページの間に挟み込むようにしてーーーーその表紙を閉じた。

 

 

 

 

 

ーウェスコットsideー

 

「ふむ・・・・まあ、初めてにしては上々かな」

 

ソーサラー<ウェスコット>は、〈神蝕篇帙<ベルゼバブ>〉の表紙を撫でるようにしながらそのページを捲った。するとそのページに、先ほどまでは書かれていなかった文章が記されていた。

 

『面白い機能があるようだね?』

 

「〈神蝕篇帙<ベルゼバブ>〉の良い試運転になったよ」

 

『それでーーーー士道くん達は一体何処に?』

 

「ああーーーー」

 

ソーサラー<ウェスコット>は、〈神蝕篇帙<ベルゼバブ>〉の文面に視線を落としながら、唇の端を歪めた。

 

「今は、物語の中さ。人々の幻想が渦巻いた、ね」

 

『物語・・・・?』

 

グレムリンが不思議そうに首を捻ると、ソーサラー<ウェスコット>は自分の玩具を自慢する子供のように、魔王の力を教えてあげたかったが、チラッと視線を別の方に向けた。

 

「ーーーー処で、そこの角に隠れているのは、〈ラタトスク〉の機関員、かな?」

 

士道達がいた通路の後方の角の向こうから、静かな殺気を感じ、ソーサラー<ウェスコット>とグレムリンが目を向けると、“緋色の影”が飛び出し、左右の壁をジグザグに飛びながら、グールと随意領域<テリトリー>を展開する前にバンダースナッチを切り捨て、破壊していく。

 

『ヒュ~♪ やるねぇ~』

 

グレムリンが、ソーサラー<ウェスコット>の間近にまで迫った『影』の前に立ち、片方のラプチャーを振るうと、『影』は動きを止めて、両手に持った黒い短剣で防いだ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・!!」

 

『うわぉ、何その武器? クナイ?』

 

『影』が持っていた武器は、時代劇で忍者が使用する両刃の武器・苦無であった。武器を抑えられ、動きを止められて姿を現すとその場に現れたのは、『燃えているように美しい緋色の髪の毛』と『篝火のように揺らめいているような美しい緋色の瞳』をし、精霊の少女達のような何処か浮世離れした美貌を持った、士道達とそんなに歳の変わらない少年だった。

 

『へぇ~、かなりの美少年だねぇ~。君、何者?』

 

「ふん」

 

少年は、グレムリンの言葉に返答せず、ラプチャーとクナイが刃を擦れ合わせ、ギリギリと音を奏でていた。

 

「っ、Mr.ソラ。その少年はーーーー囮だ」

 

『ん?』

 

ソーサラー<ウェスコット>の言葉に、グレムリンは先ほど少年が現れた通路の角を見ると、何処かの隊服を着用し、帽子を目深に被った青年が、『光線銃のような武器』を構えて、ソーサラー<ウェスコット>に向けて引き金を引いた。

 

『ーーーーMr.ウェスコ(ガシャン!)ん?』

 

グレムリンがソーサラー<ウェスコット>の元へ行こうとすると、少年は鍔迫り合いから突き進み、グレムリンの首の頸動脈に、クナイの刃を走らせようとした。

 

[ディフェンス ナウ!]

 

『うわおっ!!』

 

ーーーーバシュゥゥゥゥゥン・・・・!

 

ーーーーガキィィィィィィン・・・・!

 

「・・・・ちっ!」

 

光線銃から放たれた大人の男性の拳くらいの大きさをした光弾は、ソーサラー<ウェスコット>の右肩に火花を散らせ、グレムリンはギリギリの所で、クナイを弾いたが、薄皮1枚がパックリと裂かれた。

クナイを持った少年は小さく舌打ちすると、後方にトン、と飛ぶと、光線銃を持った青年のすぐ隣に降り立った。

 

「ほぉ~、ソーサラーの鎧にここまでのダメージを与えるとは、油断大敵とはまさにこの事、かな?」

 

ソーサラー<ウェスコット>はダメージで砕けた右肩の鎧を見てそう呟くと、首を抑えたグレムリンも声を発する。

 

『君達ーーーー〈ラタトスク〉の機関員じゃないね? 素人上がりのアマチュアである機関員にしては、動きがあまりにも実戦馴れしてるし』

 

グレムリンの問いかけに答えず、2人は光線銃とクナイを構えて、油断も隙もなくソーサラー<ウェスコット>とグレムリンを見据えていた。

 

「君達も放置しておくと少々厄介になりそうだ。イツカシドウ達と同じ場所でーーーー惑っていたまえ」

 

「「っ!」」

 

2人の足元と背後から、巨大な本が現れ、2人をページの間に挟み込んだ。

ーーーーその際、帽子を目深に被っていた青年の顔が一瞬だが垣間見えた。

 

『「ん?」』

 

ソーサラー<ウェスコット>とグレムリンが一瞬目をパチクリさせるが、その2人は表紙に閉じ込められた。

 

『・・・・・・・・Mr.ウェスコット』

 

「・・・・・・・・あぁ、エリオットの元に行こう」

 

ソーサラー<ウェスコット>とグレムリンは、漸く起き上がったメイジ達と残ったグールとバンダースナッチを引き連れて、〈ラタトスク〉の施設の通路を歩いていった。先ほどであった青年の事は、お互いに見間違いと思うようにした。

何故なら、先ほどの青年がーーーー“五河士道とソックリだったからだ”。

 

 

 

 

ー???sideー

 

それは、ウェスコットが〈神蝕篇帙<ベルゼバブ>〉の力を使った時と同時期、『とある平行世界』で『魔法の道具』を奪い、その力を暴走させた『クロサイの怪人』を追っていた戦士達が、異空間の中を流されていた。

と、その時、異空間に巨大な本が現れ、ページが開かれると、『クロサイの怪人』が吸い込まれ、一緒にいた女の子達と一緒に戦士も呑み込まれた。

 

「お前ら!!」

 

『輝二さーーーーん!』

 

「うわぁ! 俺っちもぉっ!?」

 

「『バイス』ーーーー!!」

 

変身が解除された少年、『嵐山輝二』は叫び声を上げて、ページの中に呑まれると、本が閉じ、異空間から消えてしまったーーーー。

 

 

 

 

 

ー士道sideー

 

「な、なんだここ・・・・」

 

変身が解除された士道は、寝ていたようで起き上がり、辺りを見回すと、藁のようなベッドで寝転がっており、さらには床や天井まで藁でできた家のようだった。

 

「これは・・・・って」

 

ソコで士道は思い出した。自分はソーサラー<ウェスコット>によって、本に呑み込まれてしまったのだ。

 

「じゃあここは・・・・本の中? (ドラゴン・・・・おい、ドラゴン・・・・駄目か・・・・)」

 

体内のドラゴン(本体)に話しかけるが、存在は感じているが、休眠状態のように応答がない。

士道は少し困惑しながらも、ベッドから下りた。が・・・・ソコで、何だか身体が動かしづらい事に気づいた。

不審に思って自分の身体を見やると、何故か肉厚な着ぐるみを纏っている事が分かった。

 

「なんだこの格好・・・・動きづらいな」

 

士道は眉根を寄せると、身を捩るようにして、その着ぐるみを脱いでいった。頭を覆っていたマスクをキュポンと外し、首元にグイと引っ張って身体を抜く。

そして脱いだ着ぐるみの頭部を見下ろし、士道は首を捻った。

 

「・・・・豚?」

 

そう。肌色の皮に折れた耳、そして特徴的な大きな鼻。士道が纏っていたのは、コミカルにディフォルメされた豚の着ぐるみだった。

そこで、豚と藁の家、そしてここは本の中、ソコから導き出せるのは。

と、士道が着ぐるみを全部脱いだその時。

 

ーーーーゴウッ!

 

と、大きな音がしたかと思うと、凄まじい突風が吹き荒れ、藁でできた家がバラバラになって吹き飛んだ。

 

「う、うわっ!?」

 

風圧に煽られ、士道もまたその場にゴロンと転げてしまう。

 

「いてて・・・・何だ?」

 

士道は頭をさすりながら身を起こすと、ビクッと肩を震わせた。

理由は単純。士道を覆い隠すように、巨大な影がヌッと地面に現れた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

恐る恐る顔を上げると、見るも恐ろしい巨大な獣の姿がソコにいた。

鋭い牙の並んだ大きな口。爛々と光る目。茶色の毛で覆われた体躯。身の丈は士道の倍はあり、カートゥーンのキャラのように2足歩行をしていた。

そう、お伽噺の代表的悪役ーーーーオオカミである。

 

『ーーーーぐぅえっへっへ、いやがったなぁ、美味しそうな子豚ちゃんよォ。オレが一口でくってやらァ!』

 

オオカミが、大仰な仕草で舌舐めずりをし、涎がポタポタと地面や士道の頭に垂れてきた。

士道は顔中にダラダラと脂汗を垂らしながら、震える声を発した。

 

「え、ええと・・・・ちょっと待った。落ち着こう。俺は・・・・」

 

『がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』

 

しかし、オオカミは士道の話等聞かず、その巨大な口を開けて、士道に迫ってきた。

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

見た目はコミカルでも、その野生の迫力と獣臭が、士道に身の危険を感じさせ、逃げ出した。

 

『はッはァ! 逃がさェよォッ!』

 

空気をビリビリと震わせるような大声で叫び、オオカミが士道の後を追ってくる。

 

「ーーーー完全にこの世界、『三匹の子豚』じゃねぇかよっ!?」

 

今自分がいる世界が、有名なお伽噺の世界であり、自分は1番最初にオオカミに食べられるお兄さん豚であると理解した。

 

ーーーーはっ、貴様のような豚小僧にはピッタリの配役ではないか?

 

「(カッチン)・・・・・・・・」

 

[ドライバーオン プリーズ]

 

脳裏にドラゴンの毒舌が聞こえ、士道は恐怖心が薄れ、バックルを起動させた。

 

[シャビドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪]

 

『あ?』

 

「変身!」

 

[フレイム プリーズ ヒー! ヒー! ヒーヒー、ヒー!!]

 

〈仮面ライダーウィザード〉に変身した士道がその場に立ち止まると、オオカミはニィッと、巨大な口の口角を上げた。

 

『潔いじゃァねェかァ! 子豚ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんんッ!!』

 

口を大きく開き、ウィザード<士道>を喰らおうと飛びかかってくるオオカミ。しかし、ウィザード<士道>は冷静に魔法を使う。

 

[ビック プリーズ]

 

オオカミに振り向き際に、魔法陣に手を突っ込むと、オオカミに向かって放たれた掌が、オオカミの体躯より大きくなった。

 

『へ??』

 

「・・・・誰が、豚小僧だあの陰険蜥蜴ーーーー!!」

 

ーーーーバキャアアアアンッ!!

 

『べぼォォォォォォォォォォォォォォォォんんーーーー・・・・』

 

巨大になったウィザード<士道>の掌に張り飛ばされたオオカミは、そのままキランっと星になった。

ちょっとドラゴンに対する鬱憤が晴れた。

 

「ふん! とりあえず、十香達を見つけないとな。この世界でも魔法は使えるようで助かったぜ」

 

[ガルーダ プリーズ]

 

[ユニコーン プリーズ]

 

[クラーケン プリーズ]

 

[ゴーレム プリーズ]

 

「皆。十香達を捜してきてくれ。ゴーレムは俺と一緒だ」

 

『ピュィィ!』

 

『ブルルル!』

 

『キュァッ!』

 

『ゴゴゴゴ!』

 

肩にゴーレムを乗せたウィザード<士道>が指示を出すと、ガルーダ達はそれぞれにこの世界に飛んでいった。

 

「さて、と」

 

[ハリケーン プリーズ フー! フー! フーフー、フーフー!!]

 

ハリケーンスタイルになったウィザード<士道>は、精霊の皆を探して飛翔した。

 

 

 

 

 

 

5分くらい飛んでの所で、ウィザード<士道>は煙突のあるレンガの家を見つけた。

『三匹の子豚』の末弟が造ったのかと思い、オオカミは空の彼方にふっ飛んだ事を教えようと、降り立ち、変身を解除すると、その家のドアを叩いた。

 

「すみませーん! 誰かいませんかー?」

 

するとそれに反応するかのように、奥の部屋から小さな声が聞こえてきた。

 

「は、はい・・・・どちら様ですか?」

 

やはり、誰か住んでいたようだ。士道はオオカミはいなくなった事を伝えようとしーーーー。

 

「・・・・ん? 今のって・・・・」

 

不意に、今聞こえてきた声に、聞き覚えのある気がする声に、首を捻った。

眉根を寄せながら、声のした方向に歩いていき、奥の部屋を除き込むと、ソコには予想通り、ウェーブがかかった青空か海のような青い髪と小柄な体躯、そして左手にウサギのパペットを着けた少女だった。

 

「・・・・! し、士道さん・・・・!?」

 

『おー! 士道くん! やっと顔見知りに会えたよー!』

 

先ほど、士道と同じく本に呑み込まれた四糸乃とよしのんが、士道の姿を見て驚いたように目を見開いてくる。士道は安堵の息を吐きながら部屋に足を踏み入れた。

 

「四糸乃、よしのん! 良かった、無事だったか!?」

 

「は、はい・・・・士道さんも、良かったです」

 

『んー、でもでも士道くん、ここって一体何なの?』

 

言ってよしのんが、首を傾げてくる。

 

「いや・・・・俺にも良く分からん。目が覚めたら『三匹の子豚』役の着ぐるみを着て・・・・って」

 

ソコで士道は言葉を止めて、四糸乃とよしのんの装いが変わっていたのだ。

これまた、お伽噺に出てきそうな可愛らしい格好である。白いブラウスに、フリルの付いたスカート。そして・・・・“赤いフード付きのケープ”。

その姿は・・・・まるで赤いずきんを被っているかのようだった。

 

「よ、四糸乃・・・・その格好は?」

 

「分かりません・・・・気づいたらこの姿になっていて・・・・それで、お婆さんの家にお使いに行ってくるように言われて・・・・」

 

『そうそう。意味分かんないよねー。何だか霊力も天使も使えないし、他に何していいか分かんないから一応来たけどさー』

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

それを聞いて、士道は額に汗を滲ませた。

四糸乃は『赤ずきん』の格好のようだ。しかも、話のあらすじでは、赤ずきんがお婆さんの家に着いた時、お婆さんは既にーーーー。

と、士道が別のリングを嵌めると、同時に、部屋の奥に置かれていた大きなベッドが、モゾモゾと動いた。

 

『・・・・あ、あらまぁ、赤ずきんや、お客・・・・さん、かい?』

 

そして、お婆さんが何やら野太いが弱々しい声を響かせてくる。

 

「は、はい。あの・・・・お婆さん。私そろそろ行かないと。パンと葡萄酒はここに置いておきますね」

 

四糸乃がそう言うと、布団に隠れた『お婆さん』はクックッと笑うように身体を揺らした。

 

『ああ・・・・赤ずきんはイイコだねぇ。本当に、イイコだねぇ。ーーーー自分自身だけでなく、こぉんなに美味しそうな子豚ちゃんを連れてきてくれるなんてェ』

 

次の瞬間、布団の中から、巨大なオオカミが姿を現した。一応、帽子と寝間着と眼鏡でお婆さんに変装しているものの、その身体はどう見ても、先ほど士道を追いかけていたオオカミその者だった。

 

「き、きゃぁぁぁぁっ!?」

 

『うひあー! お婆さんがビースト・モードに!?』

 

四糸乃とよしのんは悲鳴を上げる。するとオオカミが着ていた変装を剥ぎ取ると、全身包帯まみれになった姿で哄笑を上げた。

 

『よォォォォォ! 久しぶりだな子豚ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁン。さっきは良くもやってくれたなァッ! 一瞬お花畑が見えたゼェ!!』

 

「・・・・って、さっきのオオカミ!? そんな馬鹿な!」

 

士道は裏返った声を上げた。明らかにおかしい。先ほど星になった時からこのオオカミはベッドに潜っていた筈だ。常識に考えれば、同一の個体である筈がない。

 

『はッはァ、『この世界』で、何眠たい事言ってやがんだァ? まァいい。とにかく2人纏めて丸呑みにーーーー』

 

[バインド プリーズ]

 

ーーーーシュルルルルルルルルルルルル・・・・ガキィィィィンッ!! ゴギリ、ベギリ・・・・。

 

『アンギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!』

 

すんでで士道が『バインド』の魔法を使い、魔力の鎖でオオカミの口を猿轡にし、身体をガンジガラメに拘束すると、包帯まみれのミイラみたいな身体から、骨が折れるような音が響き、オオカミは凄まじい声量で悲鳴を上げた後、泡をふいて白目を剥いて、身体を陸にうちあげられた魚のようにビクッビクッと動かしながら、気を失った。

 

「ふぃ~、間一髪だったな・・・・」

 

「あ、あの、士道さん・・・・オオカミさんは、放っておいていいんでしょうか?」

 

『スンゴイ悲鳴だったねぇ』

 

心優しい四糸乃が今さっき自分達を食べようとしていたオオカミの身を案じた。士道は四糸乃に苦笑しながら話す。

 

「まぁ、お伽噺のキャラクターが死ぬっていうのはあんまりないし、解放していても俺達を喰おうするだろうから、暫くはここで大人しくしてて貰おうぜ」

 

お伽噺のストーリーでは、『赤ずきん』のオオカミは猟師に殺されるのだが、このまま拘束しておいた方が少なくとも安全だと思った。

と、その時。

 

ーーーードンドン!

 

「「っ!」」

 

『あり?』

 

突然、家のドアがノックされ、2人(3人)は身構えた。

 

『すまない! 今ここで凄まじい悲鳴が聞こえたのだが、大丈夫か!?』

 

聞き覚えのある声に、士道達はパァッと笑みを浮かべた。




奇妙な世界に来てしまった士道達の運命は!?
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