デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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仲間を捜して本の世界

ー士道sideー

 

ーーーードンドン!

 

『すまない! 今ここで凄まじい悲鳴が聞こえたのだが、大丈夫か!?』

 

どうやら、先ほどのオオカミの悲鳴を聞いて、何処かの誰かが尋ねたようだ。しかし、ドアの向こうから聞こえてくるこの声は。

 

「し、士道さん・・・・!」

 

『もしかして!』

 

「ああ!」

 

士道と四糸乃とよしのんが、ドアを開けるとソコにはーーーー。

 

「おおっ! シドーに四糸乃によしのんではないか! ユニコーンを見つけたから近くにいると思っていたが、無事で良かったぞ!」

 

「えっへっへ、無事だったみたいだねぇ、少年」

 

『ブルルル!』

 

「十香! それにーーーー二亜!?」

 

そう。ドアの向こうにいたのは、額にはご丁寧に桃のマークが付いた額当てを付け、夜色の長髪をポニーテールに結わえ、煌びやかな陣羽織と切り袴に脚絆を身につけ、腰に刀を差し、肩にはユニコーンを乗せた十香。

黒いロングコートを纏い、腰に白銀の銃をホルスターに入れた二亜だった。

士道と四糸乃と違って、2人とも戦闘に適したキャラクターを模していた。

 

「十香は、『桃太郎』か。二亜のはーーーー」

 

そう。今は脱ぎ捨てているが士道は『三匹の子豚』。十香は『桃太郎』。四糸乃&よしのんは『赤ずきん』。しかし、二亜が着ている黒コートに2丁拳銃を持った童話の主人公だなんて、見た事がない。

すると、二亜があははと笑って見せた。

 

「これ? 『SILVER BULLET<シルバー・ブレッド>』のファティマだけど」

 

「『SILVER BULLET<シルバー・ブレッド>』・・・・って、お前の漫画じゃねーか!?」

 

二亜の答えに、士道は素っ頓狂な声をあげたが、確かに『SILVER BULLET<シルバー・ブレッド>』の主人公に良く似ていた。

 

「あ、あの・・・・二亜さん、この世界って何なんですか?」

 

『そうそう。あの悪い人達のボスが使ってる魔王って、元々二亜ちゃんの天使でしょう?』

 

「んー」

 

四糸乃とよしのんの問いに、二亜は難しげに唸った。

 

「・・・・この世界はね、〈神蝕篇帙<ベルゼバブ>〉をチャンネルにしている事は間違いないんだけど、〈神蝕篇帙<ベルゼバブ>〉自体の中って訳ではなくて、どっちかって言うと、〈神蝕篇帙<ベルゼバブ>〉が作り出した超々小規模の『隣界』に近い空間って感じかなあ」

 

「『隣界』・・・・!?」

 

二亜の言葉に、士道は眉根を寄せた。『隣界』。それは、精霊が存在すると言う異空間の名称である。

 

「いや、あくまで性質を大別するとそう言う表現が近くなるってだけで、そのものって訳じゃないよ? 簡単に言うと、外界から隔絶された空間に閉じ込められちゃったって事」

 

「な・・・・成る程。それじゃあ、四糸乃達のこの格好は?」

 

「んー・・・・【幻書館<アシュフイリヤ>】って言うのは、人の想像や幻想、思い描いた物語をベースにして練り上げられた空間なのよ」

 

「・・・・つまり?」

 

「まあ簡単に言うとここは、〈神蝕篇帙<ベルゼバブ>〉によって集められた世界中の『物語』が混じり合った世界って事。それに取り込まれたアタシ達もまた、その『物語』に混ざっちゃったって訳(そう言えば、邪魔してやろうとした時、“何か妙なのが”〈神蝕篇帙<ベルゼバブ>〉に干渉していた気がするなぁ)」

 

二亜が本に呑まれる寸前に感じた感覚を思い出していた。が、士道の呟きが聞こえ、思考を切り替える。

 

「『物語』・・・・」

 

「そ。少年は見たところ普通の格好だけど・・・・何か思い当たる事は無かった?」

 

「ああ・・・・目が覚めた時は豚の着ぐるみを着てて、オオカミに追いかけられた」

 

「ぷっ、何それ。『三匹の子豚』? えー何で着ぐるみ脱いじゃったの? 見たかったのにー」

 

「う、うるせ」

 

吹き出した二亜に士道がそう返し、改めて二亜が自分の漫画の主人公の姿になっている疑問を口にする。

 

「でも、童話縛りかと思ったけど、二亜の漫画も含まれるんだな?」

 

「ふっふっふ、創作物に垣根はないのだよ、少年。そりゃ、知名度が高い物語ほど表層に出てくる可能性が高いから、必然昔話が多目になってくるけど、アタシの場合は他ならぬ作者だからねぇ。『物語』が『縁』に導かれて具現化したんじゃないかなぁ」

 

「そ、そういうもんなのか・・・・」

 

「そういうもんだよ。人が思い描いた『物語』なら、この世界の何処かに存在する筈だからね。人に認識されやすい・・・・知名度の高いキャラクターなんかは、近代のものでもそこら辺を歩いてるんじゃないかな。ーーーーあ、噂をすればあそこに、世界一有名なネズミと電気ネズミちゃんを見て、青いタヌキのような猫型ロボットが逃げてるし、嵐を呼ぶ五歳児がセーラー服美少女戦士ちゃんをナンパしてるし、海賊王を目指す麦わら帽子の海賊があんパンのヒーローからあんパンを貰ってるし、赤い配管工のおじさんが有名なゴリラと戦って」

 

「ストップ! 何だかそれは触れちゃいけない気がする!」

 

士道が絶叫染みた声を上げると、ブンブンと首を横に振った。

 

「・・・・と、とにかく、完全には理解できないまでも、此処がどんな場所なのかはだいたい分かった。でも俺、ここに来た時、どうやら意識を失ってたみたいなんだ。一体どれくらい時間が経っちまったのか分かるか?」

 

こんな世界で無駄に時間を費やしている内に、〈ラタトスク〉の基地は蹂躙され、宇宙にいる六喰の元に、再びファントムやDEMの魔の手が伸びている可能性があるからだ。

士道の懸念を察したのか、二亜が落ち着けと言わんばかりに手の平を広げてきた。

 

「ま、ま。焦りは禁物だよ、少年。こう言う時こそ落ち着いてドンと構えなきゃ。この空間は外の世界より時間の進みが遅いから、今すぐどうこうって事にはならない筈たしね」

 

「そ、そうなのか?」

 

その言葉に目を丸くする士道。二亜は肩を竦めながら続ける。

 

「うん。・・・・ま、とは言え、ここから出る手段を見つけなきゃいけない以上、あんまりのんびりはしてられないけどさ」

 

「・・・・! そうだ、それも聞きたかったんだ。俺達、一体どうやったらここから抜け出せるんだ?」

 

士道が問うと、二亜は難しげな顔をして腕組みした。

 

「1番確実なのは、ウェスコットが〈神蝕篇帙<ベルゼバブ>〉を使ってもう1度チャンネルを開いてくれる事だけど・・・・」

 

「お、おいおい・・・・」

 

ウェスコットが士道達を解放するのは、自分の目的が全て達せれた後だろう。

 

「それ以外となると、1番可能性があるとすれば、少年の〈インフィニティスタイル〉だろうね」

 

「〈インフィニティ〉が?」

 

「そそ。ここは魔王とは言え、元は天使。精霊の霊力と反発する魔力を使う魔法であり、その最強形態なら、この世界の影響を受けず、この世界を破壊して脱出もできるかもだけど・・・・ドラくんは今少年の中にいる?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

二亜の問いに、士道は渋面を作って自分の中にいるドラゴンの存在を感じる。

 

「・・・・駄目だ。ドラゴンの本体はいるけど、呼び掛けにまるで応じない。思念体になってこの世界の何処かにいると思うけど・・・・」

 

「私達は変身できないぞ?」

 

「(コクコク)」

 

十香と四糸乃がスピリッドライバーを腰に巻いて変身しようとしても、なにも反応しなかった。

 

「う~ん、この世界が何かしらの経路<パス>の妨害をしているのかもねぇ。少年は体内にドラくんの本体がいるから影響は受けてないようだけど」

 

二亜の言葉に、士道は細く息を吐いてから、顔を上げて声を発した。

 

「ーーーーとにかく、先ずは他の皆を捜そう。琴里達も、俺達みたいにこの世界の何処かに飛ばされてるんだろう?」

 

「うん、多分ね」

 

「なら先ずはそれからだ。外の世界に戻るにしても、全員揃ってなきゃ意味がないからな」

 

士道が言うと、皆が同意を示すようにコクリと頷いてきた。

しかし、ソコで十香が、ムウと難しげに腕組みをしてくる。

 

「だがシドー。どうやって皆を捜すのだ?」

 

「ガルーダとクラーケンが見つけてくれれば良いけど・・・・」

 

「ちょっと楽観的だねぇ、アタシととーかちゃんは運良くユニコーン<ユニくん>を見つけられたけど、他の子達が妹ちゃん達を見つけても、どんな状況になっているか分からないし」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

士道は難しげに渋面をムウと唸る。こんな時は頭脳担当のドラゴンが色々知恵を出してくれるが、今は不在な上に、いたとしても絶縁中の自分に知恵を貸してくれるか自信がない。

ーーーーまあ、十香と四糸乃が説得してくれれば話は別かも知れないが。

 

「(こんな時、ドラゴンならどうするか・・・・)」

 

恐らく、いや確実に嫌味と皮肉と毒舌のエンドオブワールドを放ってくるだろうが、最終的に良い知恵を出してくれる。今までのドラゴンとの付き合いから、考えてみると。

 

【利用できるなら何でも利用しろ】

 

「・・・・何でも利用しろ、か」

 

「シドー?」

 

十香達が首を傾げると、士道は家の奥のベッドで、未だに気絶しているオオカミに近づく。人間大の大きさのオオカミを見て、十香が腰の刀に手を置き、二亜も物珍しそうに見るが、ホルスターの銃をいつでも抜けるようにしていた。

 

「オオカミも一応犬科の動物だからさ。鼻が効くと思う。もしかしたら臭いで追跡できるかも知れない」

 

「おお、そうか!」

 

「なるほど、です・・・・」

 

『でもさ士道くん。このオオカミくんがよしのん達に協力してくれる?』

 

「んー、それならちょっと試してみよっか」

 

十香と四糸乃が目を輝かせ、よしのんが疑問を口にすると、二亜が何かを思い付き、十香に向けて声をかけた。

 

「とーかちゃん。ちょいとその、お腰に付けたきび団子、1つコイツにやってみてくんない?」

 

「む? これか?」

 

十香が首を捻りながら、二亜に言われた通り、腰か、下げていた袋の中から、団子を1つ取り出した。

 

「OK。少年、そのオオカミくん起こしてちょうだい。とーかちゃんはオオカミくんが起きたら、そのきび団子をオオカミくんの口に放り込んで」

 

「あ、ああ」

 

「うむ」

 

何となく二亜のやろうとしている事を理解した士道は、バインドを解除すると、足の爪先で、オオカミの身体を優しく突っつく。

 

『ーーーーあ、あガ・・・・?』

 

朧気だったオオカミは、士道を見た瞬間ーーーーその目をひんむく程一気に見開き、血走らせて飛び起きた。

 

「テンメぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! この子豚がァァァァァァァァ! よくも舐めた真似ををををををををををを!!」

 

「とーかちゃん!」

 

「うむ。とうっ」

 

『がああああああぁぁぁぁぁぁっーーーーあぁ?』

 

大口を開けたオオカミの口の中に団子が転がり込み、オオカミは思わず嚥下するとーーーーつい先程までの粗野な調子が嘘のように、オオカミが綺麗な『おすわり』の姿勢を取り、申し訳なさそうに頭を下げてきた。

 

『いやぁ、子豚さんに赤ずきんさん。先ほどはすみませんね。僕もお腹が空いて気が立っていたもので・・・・』

 

「あ、いや・・・・」

 

オオカミのあまりの豹変ぶりに、士道は若干気持ち悪そうに引く。

 

「えっへっへ、さっすが『桃太郎印のきび団子』。犬科動物には効果覿面だねー」

 

言って、十香の肩をポンポンと叩く。すぐ近くで青いタヌキのような猫型ロボットが怪訝そうにこちらをチラッと見ているのは気のせいだろう。

 

「・・・・って、きび団子ってそういうものなのか・・・・?」

 

「まー、細かい事は言いっこなしよ。そんでさ。オオカミくん。君、アタシ達の仲間の居場所とか分かる?」

 

二亜の言葉にオオカミはコクリと頷いた。

 

「あ、はい。この世界に置いてあなた方はいわば異物、特徴的な臭いをしてらっしゃいます。似たような臭いを辿っていけば、或いは」

 

「おお! やるではないか、オオカミよ!」

 

十香が表情を明るくし、オオカミの頭を撫でる。オオカミはきび団子をくれた十香をご主人と思っているのか、えらく嬉しそうに喉を鳴らした。

そしてオオカミは顔を上にして、臭いを嗅ぐ。

 

『クンクン・・・・クンクン・・・・おや? 変ですね』

 

「む? どうしたのだ?」

 

『はい。ここから1番近い北の城下町に複数の臭いがあるのですが・・・・南の方からも“複数の臭い”がして、南西の方角からも“複数の臭い”が、西の王国にも“複数の臭い”がしてますし。南東からは“1つの臭い”が、東にも“複数の臭い”があります。ーーーー皆さんの仲間ってこんなに大勢いるのですか? 臭いを数えても、“20人以上の異物”の臭いがしますよ』

 

「えっ?」

 

士道は目をパチクリさせ、十香達も似たような目で首を傾げた。この世界にいるのは琴里に耶倶矢に夕弦、折紙に美九に七罪、そしてドラゴンの7人だ。ガルーダとクラーケンを入れても9人。2桁も行っていない筈だ。

 

「ど、どういう事、でしょう・・・・?」

 

「う~ん、ウェスコットが〈神蝕篇帙<ベルゼバブ>〉を使ってこの世界に送られる際、アタシも〈囁告篇帙<ラジエル>〉で抵抗した時、“変な力が干渉してきた”感覚があったんだよねぇ。それで、基地にいた何処かの誰さん達も巻き込まれたんじゃないかなぁ?」

 

「だ、大丈夫なのかよその人達・・・・!?」

 

「まぁ、今は近くにいる人達と合流しようよ。先ずはソコからだね」

 

二亜がそう言うと、士道達は巻き込まれた人達の安否を気にしながら、包帯まみれのオオカミに道案内させるのは気の毒に思い、地図を書いてもらってからベッドに再び寝かせた。

家には、【危険。オオカミが寝ている】と言う立て看板を置いておき、近くの城下町へと向かった。

 

 

 

 

 

ードラゴンsideー

 

そこは南東にある1つの城。ソコに飛ばされたドラゴンは、目の前に立ち塞がる者達を睨む。

 

『・・・・・・・・まさかこんな形で、貴様らとまた出会うとはな』

 

この城に送られたドラゴンは、すぐにこの世界がウェスコットの魔王の能力で作られた空間であると看破し、すぐに十香達(ついでに士道<コウガイビル>も)と合流しようとした矢先。

目の前の“かつての敵達”に遮られてしまっていた。

 

『・・・・仕方あるまい。我が直々にーーーー地獄に送り返してくれるっ!!』

 

そう言った瞬間、ドラゴンの身体が発光し、その身体が変貌していったーーーー。

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

東にあるとある一軒家。ソコに住んでいた青年はーーーー“天まで届く豆の木をよじ登っていた”。

この青年は、ウェスコットに向けて光線銃を撃った青年だった。彼は『ジャックと豆の木』のジャック役なのだとすぐに理解し、豆の木をよじ登っていた。

空の上にある巨人の城。その城から、“自分の大事な『相棒』がいる事”が分かっているからだ。

 

「・・・・・・・・っ!!」

 

途中、豆から手が滑り、危うく落ちそうなる。眼下をみると、もうスカイツリーくらいの高さになり、尻込みしそうになるが、『相棒』の事を考えると、自分を奮い起たせ、再び豆の木をよじ登っていき、遂に雲の上に到着した。

雲の上を歩けるようになり、奇妙な感覚に苦笑するが、少し先の所に、巨人の住む城があり、城の扉が開くと、見るからに、昔話に出てくる風貌の巨人が城から去っていくのを見届けてから、眼前の城を睨み、そしてーーーー小さく呟く。

 

「・・・・・・・・必ず行くから、待っていてくれーーーー『エックス』・・・・!」

 

青年は意を決して、城へと向かった。

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

そしてここに、グレムリンと戦った少年が、浜辺を歩いていた。格好は昔の釣り人のような格好。

ふと、少年が目の前を見ると、海亀を虐めている子供達を見つけた。

少年が子供達は話しかけると、子供達は少年の美貌に一瞬目を奪われるが、自分達の海亀を虐めるのを邪魔されたと思い、声を荒げるが。

 

「(ギロッ)ーーーー!!」

 

『ひっ! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁんん・・・・!!』

 

その少年が一睨みした瞬間、子供達は大泣きしてその場から逃げ出した。

海亀は少年に平身低頭して、感謝の言葉を言う。

 

『ありがとうございます。あなたは恩人です。どうか私の背に乗ってください。是非ともお礼をさせてくださいませ』

 

少年はこの世界が、あらゆる創作物の『物語』が混在している世界だと言う事を、一緒にいた青年から既に聞いており、今自分は『浦島太郎』の主役の浦島太郎役であると理解している。

そしてこの海亀からの誘いを受ければどんな末路が待っているかも当然知っているので、海亀の誘いを丁重に断って、さっさと青年と合流しようとその場を去ろうとした。

がーーーー。

 

『お待ちください! それでは私の気が済みません! どうか私と竜宮城に!』

 

とても海亀とは思えない機敏な動きで前足のヒレで少年の足にすがり付く海亀。だが、少年はまたも丁重に断って、歩を進める。

しかし、海亀もまるで諦めず、少年の足にすがり付き、口調も変えて猫なで声を上げる。

 

『お願いしますよ旦那~! 海の中に行けば竜宮城っていう、絵にも描けない美しく城がありましてね! そこには色とりどりの魚介類達が宴会を開いて、飲んで歌えの大盛り上がりで海の幸が食べ放題! 更には乙姫様という絶世の美女がおもてなししてくれるのでございますよぉ~! 頼みますよ旦那ぁ~! 私と竜宮城に来て下さいよぉ~!』

 

「(イラ・・・・っ)」

 

その少年はしつこい海亀にイラつき、海亀の甲羅を持ち上げるとそのままーーーー盛大に振り回した。海亀の体重は100㎏~600㎏。その少年の華奢そうな身体からは想像できない膂力である。

 

「ーーーー!!」

 

『うわわわわわわわわ!!!』

 

少年は持ち上げた海亀を円盤投げの要領でダイナミックに振り回し、海亀は頭と手足を甲羅に引っ込めると、少年は盛大に投げ飛ばした。

 

『あーーーーれーーーー!!』

 

海亀は回転しながら海面を水切りするように滑っていった。連続で水を切る事87回、世界記録にも到達する記録を出して、海亀は海の中に沈んでいった。

 

「ふん・・・・」

 

浦島太郎の少年は欠片も気にせず、再び青年を捜して歩を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

そこは南にあるお寺、ソコに住む『一休さん』の姿をした17歳くらいの少年、『嵐山輝二』がいた。

 

「って、何だよこれは!? 何で俺が『一休さん』やってんだっ!!?」

 

輝二はハゲのカツラを脱ぎ捨てると、知り合いの足利義満から馬を借りて跨がり、そのまま馬を走らせて行く。

暫く走らせると、日本の室町時代の風景から、中国風の風景に変わり、さらに桜の木が満開に咲き乱れる場所だった。

こんな所で桜見なんてしたら、さぞ楽しいだろうなぁ、と思っていると、“自分と同じく、この妙な世界に飛ばされた女の子達”の内、3人の中学生くらいの女の子達が中国風の鎧を纏い、武器を天に向かって突き立てて叫んでいた。

 

「「「我ら天に誓う! 我ら生まれた日は違えど、死すときは同じ日・同じ時を願わん!」」」

 

「桃園の誓いかよっ!!」

 

ーーーートゴォォォォォォォォンン!!

 

「「「きゃんっ!!」」」

 

少年は馬でツッコミをしながら突撃させた。3人の女の子はぶっ飛ぶと、馬に乗ってる少年を見て、驚いた声を発した。

 

「あっ、輝二さん!」

 

「はー、合流できて良かったー!」

 

「輝二さん、じゃねぇよ! お前ら何で『三国志』の有名シーンやってんだ!?」

 

「えっと、この間、学校の授業でやってたから、ちょっとやってみようって『みらい』が・・・・」

 

「ちなみに『みらい』は関羽で、『リコ』が張飛で、私が劉備だよ!」

 

ご丁寧に関羽の特徴とも言える美しく長い髭を付けた『朝日奈みらい』、張飛のような格好をした紫色の髪の『十六夜リコ』、そして劉備の格好をしたピンクの髪の『花海ことは(通称はーちゃん)』を見て、輝二ははぁ、とため息を吐いた。

 

「ほら、さっさと他の奴らと合流して、『クロサイ野郎』を見つけるぞ。ヤツが『元の世界』に戻れるアイテムを持っているんだからな」

 

「「「おー!」」」

 

3人は持っていた武器を“箒に変える”と、箒に跨がり、輝二の乗る馬の隣を飛んでいった。

 

「輝二さん、馬に乗れたの?」

 

「知り合いの足利義満さんに教えて貰った。俺は『一休さん』だったからな」

 

「『一休さん』って・・・・!」

 

「ぷっ・・・・!」

 

「うるせー! さっさと行くぞ!」

 

リコとことはの言葉に声を荒げながら言うと、今度は中華風な景色から、おとぎ話の世界のような風景に変わると、視線の先に、見覚えのある人影を見つけた。

 

「おーい! 亜久里ーーーー!!」

 

「っ! 輝二さん! みらいにリコ! ことはも!」

 

そうソコにいたのは、小学生くらいの女の子、『円亜久里』だった。おとぎ話に出てくる女の子のようなファンシーな衣装が良く似合っていた。

 

「わぁ~、皆ヘンテコな格好でランス」

 

オレンジ色の模様が耳の中に入っている、黄色の小熊のような姿をした妖精、『ランス』が犬耳と尻尾を付けて、亜久里の両手に抱えられていた。

輝二は馬から下りて、みらい達も地面に降りたって亜久里に近づく。

 

「皆無事で良かったよ!」

 

「ん?・・・・」

 

と、ソコで、亜久里の近くにいる3人の女の子を見ると。

 

「・・・・・・・・・・・・プッ」

 

「「「あははははははははははははははははははははははははははははははっっ!!!」」」

 

輝二が身体を震わせ、みらい達は腹を抱えて爆笑してしまった。

 

「輝二さん・・・・。みらいちゃん達まで・・・・」

 

「何もそんなに笑わなくても・・・・」

 

「まぁ、私達も皆の視点で見たら笑っていたでしょうけど・・・・」

 

ソコにいたのは、亜久里の仲間の少女達、『相田マナ』、『剣崎真琴』、『菱川六花』だった。

 

「な、何だお前ら、そのーーーーイカれた格好は?」

 

寺の坊主の衣装の輝二や、三国志の衣装のみらい達もイカれているが、マナ達もかなりイカれていた。

マナはブリキ人形のような格好をしており、ガチャガチャと音を鳴らしていた。

六花はボロボロの農夫の格好に何故か磔にされたような姿勢だった。

極め付けは“自分達の世界”では、世界的なアイドルである剣崎真琴が、ライオンの着ぐるみを着ていたのだ。

みらいは笑い過ぎて付け髭を落としてしまいながらも、苦しそうに発した。

 

「も、もしかして・・・・! マナちゃん達、『オズの魔法使い』なの?」

 

「ええ。わたくしは気づいたらこの格好で、ランスは犬の耳と尻尾を付けていましたわ。とりあえず皆さんを捜して歩いていると、この姿になっていたマナ達と合流したのですわ」

 

みらいの問いに亜久里がため息混じりに答えると、輝二とリコは配役を見抜いた。

 

「な、成る程な。マナが『『心』がないブリキの木こり』。六花が『『脳』のないカカシ』。真琴が『『勇気』のないライオン』。亜久里が主人公の『ドロシー』でランスが『飼い犬のトト』って事か」

 

「何か、ちょっと皮肉の効いた配役ね」

 

マナが『心』。六花が『脳』、つまり『知恵』。真琴が『勇気』。確かに、中々に皮肉な配役だった。

 

「はー? 『アリス』に『他の精霊』の皆は? それに『バイス』も?」

 

「わたくし達も少しこの世界を歩いて探していたのですが、アリス達は見つかりませんでしたわ」

 

「俺は『一休さん』で、みらい達は『三国志』、そしてマナ達は『オズの魔法使い』。どうやらこの世界は古今東西のお伽噺ーーーーいや、創作物が混ざった世界のようだな」

 

「あれ? でも『三国志』って史実の実話だよ」

 

「多分だけど、『三国志』って小説から漫画、舞台にドラマに映画にアニメにゲームになったりしているから、みらい達はそう言った『創作物の三国志』の配役になったんじゃないかしら?」

 

マナの疑問に、六花が推察した。『『脳』のないカカシ』の役なのに、見事な頭脳的考察だ。

 

「とりあえず、皆は『アイテム』はあるか? 俺は『スタンプ』はあったが、『ドライバー』がなかった」

 

「私達は『ラビーズ』が無くなってたよ」

 

「私達も、『リンクルストーン』がいつの間にか無くなっていたよ」

 

つまり、全員が“変身できない状態”と言う事だ。輝二は顔を俯かせる少女達に、話を切り換えようと声を上げた。

 

「・・・・“変身”の事は今は置いておこう。先ずは、バイスとアリスと他の精霊達と合流・・・・いやちょっと待て・・・・この世界が創作物が混ざった世界なら、アリスはまさか・・・・」

 

『あ・・・・』

 

輝二の言葉に、少女達が察したように声を上げた。

 

「いやいやいやいや、まさかまさか・・・・!」

 

「そんな安直な・・・・!」

 

「ですがそう言えば、先ほど良い魔女さんが、あの山の向こうは『ハートの国』があって、とても恐い女王がいると言って・・・・」

 

リコと六花が苦笑しながら否定しようとするが、亜久里がそう言うと、全員が無言になり、とりあえずその国に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその国に向かう途中、おかしな森につくと。

 

「真琴!!」

 

「『ダビィ』!」

 

『チェシャ猫』役になっていた真琴のパートナー『ダビィ』を見つけ。

 

「「「何でも無い日ばんざーい(シャル)(ケル)(モフ)!」」」

 

「アホ共発見バンザーイ!!」

 

暢気にお茶会を楽しんでいた3匹の妖精、『三月ウサギ』になっていたマナのパートナー『シャルル』に、『帽子屋』になっていた六花のパートナー『ラケル』。そして『ネムリネズミ』になっていたみらい達のパートナー『モフルン』を見つけた。

そして遂に、ハートの国で裁判にかけられている、『四葉アリス』を見つけた。

裁判長席には『ハートの国の大王』の格好をした赤ん坊の『アイちゃん』が、キャッキャッと笑っており、その隣では、大きな扇を広げて自分の顔を隠している『ハートの国の女王』がいた。

 

「さぁアリス。貴方の罪状を述べなさい」

 

「恐れながら女王陛下。わたくしは罪を犯した覚えはありませんわ」

 

顔を隠したままの女王陛下に、アリスはにこやかに応対した。一応裁判にかけられ、ストーリー通りなら、横柄なハートの国の女王に首をはねられそうになっているのに凄い胆力だ。

 

「いいえ! 貴方は罪を犯しましたわ。それはーーーー『可愛い罪』でぇすッ!」

 

「まあ可愛いと言ってくれて嬉しいですわ」

 

「それだけではありません! 貴方はとても美味しそう! それが1番の罪でしてよ! そして判決は・・・・この! 『『ハートの女王様』に食べられる刑』でーーーーす!!」

 

扇を捨てた女王の顔は、アリスの知る輝二の相棒の〈悪魔〉、『バイス』だった(ご丁寧に口元のマスクには分厚い唇まで付けて)。

 

「あらバイスちゃん。わたくし、バイスちゃんに食べられちゃうんですの?」

 

「うへへへへへ! その通ぅぅぅぅぅぅりっ! と、言う訳でぇ・・・・アーーーーリスちゅわぁぁぁぁん! いっただきまーーーー(ドゴォォォォォォォンンッ)ずぼらぁはんっ!!」

 

おしとやかなに微笑むアリスに、女王の服装やカツラを脱いだバイスが、『某世界的な大泥棒の3代目』のようなダイブをするが、空中で輝二、リコ、亜久里がバイスにドロップキックを炸裂させて、地面に転がせた。

 

「何やってんだオメェはっ!?」

 

「こんな所で女装してアリスを食べようとするなんて!」

 

「ホントに何考えてんのよっ!?」

 

地面を転がったバイスに、3人がスタンピングの嵐を叩き込んだ。

 

「ぎゃああああああああああああああああああああああああっっ!!!」

 

輝二達がバイスを締めている間に、マナ達はアイちゃんを回収し、改めてアリスと合流した。

 

「アリス! 無事で良かったよ!」

 

「マナちゃん達も無事で何よりですわ。まぁ、『オズの魔法使い』に『三国志』ですわね。輝二さんはお坊さんですわね」

 

「『一休さん』だよ」

 

「まぁ・・・・」

 

「て言うかバイス、いつから実体化していたの?」

 

「おそらく、この特殊な世界が妙な影響を与えているのかも知れませんわね」

 

何て呑気な会話をしていると、ヨロヨロになったバイスが、北の王国の王様が珍しいアイテムを手に入れたと言う噂があったのを伝えた。

 

「珍しい道具、か。もしかしたらその中に、私達のアイテムがあるかも知れないわね」

 

「バイス、他に情報は?」

 

「んとね、その王様、『愛する者への愛がある者しか見えない服』って言うのを着ている王様だって。でもどう見ても裸にしか見えないんだってさ」

 

「それって・・・・/////」

 

「『裸の王様』・・・・/////」

 

その物語を知っている少女達は頬を赤くした。

 

「ま、とりあえずその王様に会ってみるか。北の王国だったな」

 

「あっ、確か北の王国って寒い国って言われてるから、防寒着を来ていこうぜ!」

 

バイスにそう言われ、輝二達はハートの国の城へと向かった。

ソコにーーーー『平行世界の〈仮面の戦士〉』がいるのを知らずに・・・・。

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