デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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合流の仲間達。

ー士道sideー

 

「ーーーーぶぇぇぇぇっくしょん! っあー・・・・ちくしょー」

 

女の子らしからぬくしゃみをする二亜に、士道は思わず苦笑した。

 

「おいおい、大丈夫かよ?」

 

「だいじょばなーい。何ここちょっと寒すぎない?」

 

言いながら、二亜は首を埋めるようにコートの襟を立てる。

しかしそれも無理はない。士道達一行はあの後、地図を頼りに野山を抜け、件の城下町に辿り着いたのだが・・・・街に入った瞬間、季節に天候、時間までもが一瞬にして変貌してしまったのだ。

辺り一面を覆うは白銀の雪。空は既に暗く、道は街灯で照らされていた。先ほどまでとはまるで違う光景。これも『物語』が混在するこの世界特有の現象なのだろう。

道行く人達が、奇妙な格好をした士道達にチラチラと四川を送ってくるが仕方ない。明らかに世界観や国籍が違う集団なのだ。ハロウィンでもなければこんな視線を送られるだろう。

 

「ねー少年、身体が暖かくなる魔法とか無いの?」

 

「あったらとっくに使ってるよ。って、二亜はコートを着ている分マシじゃねぇか。・・・・十香、四糸乃、大丈夫か?」

 

士道が問うと、2人は同時に頷く。

 

「うむ、大事ない」

 

「はい。寒いのは、得意です」

 

「ーーーーぶぇぇぇぇっきしょい!」

 

2人が言うのと同時、二亜がもう1度女の子らしからぬ派手なくしゃみをした。

 

「・・・・っえーい、くっそぉ。少年、さっさと妹ちゃん達見つけて暖かい所に戻って、温かいおでんかラーメンでも食べようよー」

 

「ああ、そうだな。ええと・・・・オオカミの話だと、あの城の方から臭いがするんだったな。とにかく、他に手がかりもないし、先ずは城に向かおう」

 

士道の言葉に、皆が首肯し、街の大通りを歩いていくと、どれくらいか歩いた後、城の前に漸く至り、士道達は足を止めた。

城の前で、何やら揉め事が起こっていたのだ。

 

「あれは・・・・」

 

士道は目を凝らすようにしてその様子を見やった。城門を守る衛兵と思しき男に、3人の少女達が詰め寄っているようだったのだが、それはーーーー。

 

「琴里! 耶倶矢! 夕弦!」

 

少女達の名を呼ぶと、3人はその声に反応するようにこちらを振り向いてきた。

 

「! 士道! 無事だったの・・・・って、皆何その格好」

 

良琴里が士道達の姿を見るなり、怪訝そうな顔をして言ってくる。士道は苦笑しながら歩調を速め、琴里達の元へ至ると、琴里達の服装を見た。

3人共、この街の時代考証にあってはいるが、こんな真冬のような季節に、琴里は粗末な服だけでいかにも寒そうだ。しかも、沢山のマッチが詰まったカゴを持っている。良く見ると、琴里の肩にはガルーダが止まっていた。

耶倶矢と夕弦は当て布をした同じく粗末な服に身を包み、何やらお菓子が入った荷物を携え、似たような服装だが、耶倶矢はズボンで、夕弦はスカート姿。体格と髪型も相俟ってか、男と女の双子に見えなくもない。

ソコまで見て、士道は3人がどのキャラクターになったのか察した。

 

「琴里は『マッチ売りの少女』で、耶倶矢と夕弦はーーーー『ヘンゼルとグレーテル』か?」

 

「まぁね。私はこの街でマッチを売るように言われて家を追い出されて、行き倒れになって危うく死にかけてたんだけど、ガルーダが見つけてくれてね。そのガルーダが助けを呼ぼうと飛んでいったら、耶倶矢と夕弦を見つけて連れてきてくれたのよ」

 

『キュルルルル!』

 

琴里は笑みを浮かべながら、人差し指でガルーダの頭を撫で、ガルーダは気持ち良さそうに鳴き声を発した。

 

「うむ。我らは気づいたら黒き森<シュヴァルツヴァルト>の中におってな。暫く歩いているとお菓子でできた家に辿り着き」

 

「説明。ソコから壁や屋根の1部を頂いていると、老婆夕弦達を家に引き込もうとしていたので、不審に思い逃げたらこの街に辿り着き、運良く空を飛んでいたガルーダを見つけ、行き倒れになっていた琴里の元に案内して貰い、琴里を救助しました」

 

「琴里、大丈夫だったのか?」

 

「ん。まぁ、ギリギリ危なかったけどね」

 

凍死寸前だった琴里に、士道が心配するように言うが、琴里は大丈夫と言わんばかりに手を振った。

ついでに十香達は八舞姉妹からお菓子を分けて貰っていたが、ドーナッツを食べると十香も四糸乃も二亜も、「はんぐり~のドーナッツの方がもっと美味しい」と言うと、琴里達も同意するように頷いた。

 

「それで、一体何をしてるんだ?」

 

士道が問うと、耶倶矢が不満げに腕組みした。

 

「見ての通りだ。城の中におると言う人魚を見に行こうとしたのだが・・・・」

 

「人魚?」

 

「ああ。何でも『だーりーん! ハニー!』と鳴く珍獣を眺める舞踏会らしい」

 

「・・・・な、成る程」

 

この上ない説得力に、頬に汗を垂らして苦笑する士道。

 

「だが、そこの衛兵が話が分からぬ奴でな」

 

「不満。夕弦達はお城に入れないと言うのです」

 

八舞姉妹の言葉に、衛兵が険しい顔をしながらみすぼらしい格好をした琴里達に、珍妙な格好をした士道達を不審者と思い、舞踏会が開かれている城にいれなかった。・・・・まあ、無理もないが。

琴里と八舞姉妹が忍び込むか、衛兵を昏倒させるか、と悪そうな顔で相談すると、それが聞こえていた衛兵が全員を牢屋にぶち込もうとしようとしたその時ーーーー。

後方から煌めくような毛並みの白馬に、街灯の灯りを浴びてキラキラと輝く車体をした、見るも美しい馬車が走ってきて、城の前で停車すると、御者が恭しく車体の扉を開け、中から1人の女性が姿を現した。

スラリとした長身。エメラルドを溶かしたような艶やかな髪。宝石を散りばめたような煌めくドレスと、それに負けない位美しい相貌。そしてーーーーその足に輝くのは、幻想的なガラスの靴。

その神々しい様に、衛兵だけでなく、周囲にいた舞踏会の参加者や通行人が、ゴクリと息を呑んだ。

 

「(ガラスの靴ーーーー『シンデレラ』か?)・・・・って」

 

だが、士道達はその女性が誰なのか分かった。

 

「七罪!?」

 

そう七罪だった。しかも、大人モードの姿だった。

 

「あら、士道。それに皆も。ごきげんよう」

 

煌びやかなドレスに身を包んだ七罪は、ニコリとたおやかな笑みを浮かべてそう言った。

 

「ど、どうしたのよ七罪、その姿・・・・まさか、天使が使えたの!?」

 

七罪の大人モードは、〈贋造魔女<ハニエル>〉の力がなければ変身できない姿なのだ。

 

「ううん。私の前に魔法使いが現れて、この姿にしてくれたの。ふふ、見て。このガラスの靴。綺麗でしょう?」

 

言って、七罪がその場でクルリとドレスを翻して見せた。

士道と琴里は目を見合わせ、七罪が『シンデレラ』であると察した。

七罪は2人の様子に気づいた様子もなく、悠然と衛兵の方に歩いていき。その美しさと妖艶な手つきで衛兵達を口説いて、士道達も城の中に入れるようにしようとした。

が。

 

ーーーーゴーン、ゴーン・・・・。

 

と、城の壁面付けられていた大時計が、鐘の音を鳴ると次の瞬間、七罪の身体が淡く光りーーーーポンッ! と音を立てて、その身体が縮んでしまった。

 

「ふぇっ!?」

 

否、身体だけではない。彼女の纏っていたドレスはツギハギだらけの服になり、乗ってきた馬車は南瓜に変貌してしまった。

 

「な・・・・何、どうしたのこれ・・・・っ!?」

 

本来の姿に戻ってしまった七罪が、慌てて自分の身体を見回す。

士道は城の大時計に目をやると、時刻は0時。つまり・・・・『シンデレラ』の魔法が解ける時間だった。

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

七罪に鼻の下を伸ばしていた衛兵が、再び表情を険しくしていくのを見て、士道は七罪を急いで脇に抱え、琴里達にアイコンタクトをすると、一同は頷き、その場から走り去っていった。

 

『怪しい奴等め!! 絶対にここは通さんぞ!』

 

後ろから衛兵の警戒心に満ちた声を受けながら、士道達はその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、再び城の門の近くの路地裏に隠れながら、これからの事を話し合っていた。

八舞姉妹など、もう士道の魔法で衛兵達を無力化させた方が良いのでは? と、言い出し、琴里も最終手段としてそれもアリと考えたが、士道は思い出したかのように、『ドレスアップウィザードリング』を取り出した。

 

「これでいけるんじゃないか?」

 

「でも、魔力は足りるの?」

 

8人分の『ドレスアップ』を使えば、結構な魔力を消費すると思ったようだ。

 

「まぁ、多分大丈夫だ」

 

[ドレスアップ プリーズ!]

 

と、精霊達に順番にリングを嵌めてドライバーに読み込ませると、音声が流れ、精霊達の格好が貴族の令嬢のようなドレス姿へとなった。

 

「・・・・で、俺までドレスなのかよ」

 

そして、士道も琴里の指示で皆と同様の綺麗なドレスとなっており、顔には化粧まで施され、髪は背中を隠すくらいに伸びている。・・・・完全に『士織』ちゃんモードの容貌だった。

 

「『シンデレラ』が行くような舞踏会なら、女の子の方が入り込みやすいでしょう。ほら、王子様が結婚相手を探して近隣から貴族の子女を招いてるとかありそうじゃない。それに、こんなに大勢の令嬢を連れた貴族のご令息なんて逆に目立つわよ」

 

「・・・・仕方ないか」

 

ドラゴンがいれば、『ぐちゃぐちゃ言ってないで、さっさと行け』と、尻尾ド突きが飛んで来そうなので、士道は小さくため息を吐くと、再度城へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

衛兵達に少々疑わしそうな視線を受けながら、舞踏会に入った士道達。

 

「おお・・・・!」

 

そして十香は、否、八舞姉妹に四糸乃も、キラキラと目を輝かせながらホールの中を見回す。

豪奢にして壮麗、文字通り、おとぎ話の世界でしか見られない空間だった。

 

「あー、皆。気持ちは分かるけどあんまり遠くに行かないようにね」

 

「うむ! 心得た!」

 

琴里が遠足にきた学生を引率する先生のような事を言うと、十香が元気良く答えた。

 

「さて・・・・と。件の人魚姫様は何処かしら?」

 

「ん・・・・見たところそれらしい姿は見えないけど・・・・」

 

と、士道がキョロキョロとホールの中を見回していると、視界の端に、スッと人影が現れた。

 

『ーーーーもし。美しいお嬢さん』

 

「え?」

 

不意に声を掛けられ、そちらを見やると、カッコいいタキシードを纏った青年がいた。

 

『よろしければ、一緒に踊ってはいただけませんか?』

 

青年が優しげに微笑み、恭しく手を差し出してくる。それを見て、士道は琴里の方に視線をやった。

 

「はは、ダンスのお誘いだってよ。モテるじゃないか、琴里。兄ちゃん妬いちゃうぞ」

 

しかし青年は不思議そうに首を捻り、士道の目をジッと見つめながらもう1度声を発してきた。

 

『いえ、そちらのちいさなレディではなく、あなたです』

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

 

青年の言葉に、士道は困惑した顔を作ったがーーーーすぐに思い出した。今の士道は、ドレス姿の士織ちゃんに変貌しているのである。

 

「・・・・、こっちじゃなくて?」

 

とは言え、士道に男と踊る趣味などなく、頬に汗を垂らしながら琴里を示すが、青年は肩をすくめた。

 

『またまたご冗談を。ユーモアのある方だ。でも、流石にそんな冗談を言ってはそちらのお嬢ちゃんが可哀想ですよ。ーーーーほうら、君、あちらのテーブルに美味しいケーキが並んでいるよ? 食べてきたらどうだい?』

 

「(ピキッ)」

 

子供をあやすような調子で琴里に笑いかける。瞬間、琴里の額に血管が浮かぶのが見えた。

 

「な、なんですってぇ?」

 

「お、おい、落ち着けって、琴里・・・・」

 

ここで騒ぎを起こしてしまうのは不味い。士道は慌てていきり立つ琴里の肩を押さえた。

他の皆にも琴里を押さえて貰いたい処だが、十香はいつの間にか四糸乃(&よしのん)と七罪を連れて、青年が琴里に勧めたテーブルに置かれたケーキを食べて幸せそうな顔になっているし、八舞姉妹と二亜に至ってはこちらに背を向け、身体をプルプルと震わせ、必死に笑いを堪えているのが分かった。それが女の子扱いされた士道に対してか、女装しているとはいえ男に負けた琴里に対してかは、判断できかねないが。

と、丁度その時。ホール奥の舞台に侍従のような格好をした女性が現れ、ホールで歓談する賓客達に向かって声を発した。

 

『ーーーー皆様、ご歓談中失礼致します。壇上にご注目下さい。世にも珍しい人魚姫の歌声を披露いたします』

 

その言葉に、会場中が色めき立ち、士道を誘ってきた男もまた、『ほう・・・・』と興味深げに壇上に目を向けていた。

 

「ほ、ほら琴里、目的はあっちだろ。見やすい位置に行こうぜ」

 

「・・・・ふん、まあいいわ。行きましょ、皆」

 

琴里が不満気な顔をしながらも、皆を呼ぶと、全員が集まり、ホール奥へと歩いていった。

するとそれに合わせるようにして、舞台に掛かっていた幕が、ゆっくりと左右に開いていった。

瞬間、広いホールがざわめきと感嘆に包まれる。

 

『まあ・・・・』

 

『本当に人魚ではありませんか』

 

『美しいですわね・・・・』

 

恐らく海辺の風景をイメージしているのだろう、舞台には薄く水が張られ、大きな石がまだらに配置されていた。

そしてその石の上に、腰から下が魚のようになった、見るも可憐な少女が腰かけていた。

微かに濡れた藤色の長髪。貝殻を加工して作られたと思しき水着に包まれた色白で形も良く豊満な胸。砂時計のように括れた腰回り。艶かしい肌に潤んだ瞳。成る程その姿は、お伽噺話に出てくる人魚姫そのものであった。

しかしそれは、大方の予想通りーーーー。

 

「きゃー!? な、なんですかここー! だーりんは!? ハニーは!? 皆さんは何処なんですかー!?」

 

『キュワキュワ!』

 

美九であった。しかも頭にはイエロークラーケンのおまけ付きで、パッシャパッシャと尾びれを動かしながら、悲鳴じみた声を上げる。一見するとまるで絵画のように美しい姿であったのに、色々と台無しだ。まあ、美九らしいが。

 

『こらこら、お静かになさい。お客様の前ですよ』

 

「そ、そんな事言われましてもぉ・・・・」

 

眉を八の字にしながら弱々しく声をあげる美九の耳に、侍従の女性が耳打ちするように言葉を続ける。

 

『今更ぐずるのではありません。あなたは既に、王様に買い上げられた身。ならば、王様にお仕えするのです。ーーーーさ、お歌いなさい。人魚と言うのは至高の歌声を持つ者と聞いています。遠方よりご来訪されたお歴々に、あなたの歌を聴かせるのです』

 

「お断りですっ! 至高の歌声ってところだけは合ってますけど、お顔も知らない王様なんかに支えた覚えはありませんー! 私のご主人様はハニーだけなんですからー! ちなみにだーりんは私が攻略するヒロインですー! 私は納得できないお仕事はしない主義なんですー!」

 

侍従の言葉に、美九はプイと顔を背ける。

そんな美九の態度を見てか、ホールに再びざわめきが広がっていく。王様に反抗的な態度を取る美九の姿を晒すのはマズイと考えたのか、侍従は少し視線を鋭くして美九を睨み付けた。

 

『お城に買い上げられた以上、あなたは王様のものなのです。大人しく言う事を聞かないと、王様もお怒りになられますよ』

 

「つーん! いくら怒ったって知りませんよーだ!」

 

『仕方ありませんね。歌わない人魚など無用の長物。明日のスープの材料か、塩焼きかバター焼きか、ムニエルにする許可を貰ってきましょう』

 

「わぁい! 美九お歌大好き!」

 

『キュワ・・・・』

 

流石に死の気配を感じたのか、額に汗を浮かべながら作り笑顔を浮かべる美九。クラーケンが呆れたような声を発した。

そんな光景を見て、士道は力なく苦笑した。

 

「また・・・・凄い所に捕まっちまったな、美九は」

 

「ええ。どうやら『人魚姫』の物語に取り込まれたみたいだけど・・・・こんなストーリーだったかしら?」

 

「多分俺達のようにストーリーから外れた行動を取ったんじゃないか? ストーリーの通りだったら、美九は絶対嫌がりそうだし・・・・」

 

「・・・・成る程」

 

なんて会話をしつつも、このまま放っておけない。士道達は舞台のさらに近くまで歩いていった。

 

「! だーりん! 皆さん! ご無事だったんですねー!」

 

「ああ、何とかな」

 

「は・・・・っ! て言うか皆さん何ですかその素敵なドレェェェェェス! しかもだーりんは士織さんモォォォォォドッ!? えっ! えっ! ソコに至るまでのプロセス詳しく聞きたいんですけどぉぉぉぉぉ!? 記憶映像とか残ってないんですかぁッ!?」

 

文字通り水には最初から浸かっているが、水を得た魚となった美九が目をキラメーイさせるが、このままでは話が進まないので一旦落ち着かせて、こうなった経緯を聞いてみると、美九も気づくと人魚の姿で海の中にいたらしく、士道達を探していたら悪そうな魔女が現れ、『人間になりたかったら、お前の声と引き換えだよ』と言ってきたようだ。『人魚姫』のストーリー通りだが、美九が自分の命とも言える声を失うなど断固お断りだろう。しつこく追ってきた魔女を尾びれで美九流の尻尾ド突き(尾びれだが)で1発張り飛ばしてから逃げて、海辺でクラーケンと再会したのだが、その時に漁師に捕まり、紆余曲折を得て、この城の王様に買われたようだ。

侍従に美九を解放して欲しいと頼むが、既に美九は王様の所有物ですと聞く耳を持たず、諦めず食い下がってくる士道達を疎ましく思ったのか、衛兵を呼んできて、一触即発になり、戦闘になろうとした。

がその時、ソコで響いたのは。

 

「・・・・一体、何の騒ぎ」

 

ホール奥から上階へと繋がる螺旋階段。

その上から聞こえてきた、凛とした声。

 

『・・・・!』

 

その声に、侍従は慌てた様子で目を見開き、他の参加者も、視線を向けた。

参加者達が驚き、侍従は恭しく頭を垂れた。

 

『お騒がせして申し訳ありません、王様。王の財産たる人魚を奪い取ろうとする狼藉者が現れた為、これを排除する所でございました。すぐに片付けます故・・・・』

 

「! 王様!?・・・・って!」

 

侍従の言葉に、士道は王様と呼ばれた人物に目を向けたその瞬間、思わずズッコケそうになった。

何故ならその王様はーーーー。

 

「お、折紙!?」

 

「ーーーー士道」

 

そう、最後の1人、折紙だった。頭に王冠を戴き、高級そうな赤い外套に身を包んだ折紙が、静かな声でそう言って、ホールの様子から状況を察して頷くと、纏っていた外套をバサッと翻して見せた。

 

『っっ!!?』

 

「あらー!?」

 

ーーーー瞬間、士道達は目を見開き、美九だけが興奮した調子の声を発した。

何しろ折紙はーーーー赤い外套の下は、無駄な脂肪が欠片もついていない、スレンダーながらスポーティーなしなやかさに溢れた身体を晒した素っ裸だったのだ。

しかし折紙はさして恥ずかしがる様子も見せず、寧ろ少し得意げな調子で、ゆっくりと階段を下りていった。

 

『あ、あれが噂の・・・・?』

 

『ええ・・・・な、なんて素敵なお召し物なのかしら?』

 

『ほ、本当ね! まるで霧か霞のよう・・・・!』

 

「ありー!? あの王様はだムゴ!」

 

「ーーー! 余計な事言わないの!」

 

「ーーさんも! 見ちゃダメ!」

 

「つか、王様って女の子だったのかよ・・・・」

 

ホール中の参加者達も、折紙の格好に無理をしているような様子が窺えた。

しかし折紙はそんな声を気にする事なく、壇上まで至ってから、再び大仰に外套を翻し、士道達は自分の賓客だから手を引けと宣言するように言う。

侍従は食い下がるが、折紙が目を細めると、侍従はもう1度深く頭を下げ、衛兵達と共に去っていく。

それを見届けてから、折紙が士道達の方に向き直る。

 

「士道、皆、無事で何より」

 

「あ、ああ・・・・お前も・・・・その、無事・・・・何だよな?」

 

目のやり場に困る士道が言うと、折紙は不思議そうに首を傾げた。

 

「言っている意味が分からない」

 

「や・・・・その、追い剥ぎとか・・・・遭ってないよな?」

 

「お、折紙! 何と言う格好をしているのだ! 裸ではないか!」

 

士道が言葉を選んでいると、十香がビッと折紙を指した。

瞬間、パーティーホールが騒然となる。

 

『あの子・・・・何て事を!』

 

『王様のお召し物に文句を付けるだなんて・・・・処刑されるぞ!』

 

等と物騒な声が、そこかしこから聞こえてくる。折紙は『物語』に取り込まれただけなので罪はないが、『この物語』の王様はここまで恐れられる程の圧政を強いていたのだろうか。

しかし折紙は、十香の言葉に気にした様子もなく、寧ろ哀れむように首を横に振った。

 

「これは旅の仕立て屋から買った、『士道への愛がない者には見えない服』。これが見えないと言う事は十香、あなたは・・・・」

 

「な・・・・っ!? ちょ、ちょっと待て!」

 

十香が慌てたように言って、目を凝らして折紙の身体をジッと見つめる。

 

「う、うむ・・・・これは・・・・まるだ人肌のような見事な服・・・・」

 

「・・・・無理しなくていいわよ、十香」

 

そんな十香の肩に、琴里がポンと手を置き、疲労と呆れが混ざった声を発する。

 

「折紙、あなた騙されてるわよ。・・・・それ、どう見ても『裸の王様』じゃない」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

折紙は琴里の言葉に暫く固まると、外套の前を閉めた。

 

「あーん! もうちょっと! もうちょっとだけー!」

 

ドラゴン<飼い主>がいなくて暴走する美九の叫びを無視して、折紙は小さく首を横に振った。

 

「全く気付かなかった」

 

「・・・・怪しいとか思わなかったの?」

 

「愛を知らぬ者には見えない服と言われたら、何だかうっすらと見えた気がした」

 

「そ、そう・・・・凄いわね魔術師<ウィザード>の想像力」

 

ーーーー馬鹿だろう。ただの馬鹿だろうあの女王様。

 

頬に汗を垂らしながら苦笑する琴里。遠くで声が聞こえたような気がしたが、今は無視し、何はともあれドラゴンを除いて皆が集まった。

 

「それじゃ、後はドラゴンを見つけて、今は士道との喧嘩を一旦中止にして貰ってから、改めて〈インフィニティ〉になってこの世界を脱出しましょう」

 

「うむ! しかし、今回は何が原因でドラゴンと喧嘩してしまったのだシドー?」

 

「あ、いや・・・・それは・・・・」

 

六喰に言い負かされたからと言うのが情けないのか、士道は黙ってしまった。やれやれだぜ、と言わんばかりに琴里が肩を竦めると、

 

「まあソコはドラゴンを見つけた時に話しましょう。アイツの事だから、私達の気配を感じてすぐにこちらに来るでーーーー」

 

と。その時ーーーー。

 

ーーーーガシャァァァァァァァァァンンッ!!!

 

『ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンッッ!!!』

 

ガラスの割れる凄まじい音が鳴り響いたかと思うと、城の窓を突き破って、巨大なオオカミがパーティーホールに侵入し、ホール中に響く程の雄叫びをあげた。

 




次回、ゲストキャラ達が次々とご登場!
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