デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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今回、1つの謎が明かされます!


対決・六喰

ー士道sideー

 

「うおおおおおおおおッ!」

 

ウィザード<士道>は〈封解主<ミカエル>〉に変化した〈贋造魔女<ハニエル>〉を両手で槍のように構えながら、随意領域<テリトリー>を飛行するように駆けていた。

六喰の周辺には、既に無数の〈バンダースナッチ〉が溢れ、完全な乱戦状態である。六喰は天使を振りながら、迫る機械人形を光線や流星群で迎撃する。

 

「ーーーーりゃぁっ!」

 

「ーーーーはぁっ!」

 

勿論、〈バンダースナッチ〉はウィザード<士道>やプリンセス<十香>にも攻撃を仕掛けており、2人も〈バンダースナッチ〉を一閃で斬り伏せていく。しかし皮肉だが、DEMの人形が六喰からウィザード<士道>の存在を隠す壁となっている。

 

「行け、シドー!」

 

「ああッ!」

 

好機と見たウィザード<士道>はプリンセス<十香>が切り開いた道を猛進し、六喰に鍵の先端を差し込もうとした。

 

「〈封解主<ミカエル>〉・・・・!」

 

が、六喰の身体に触れようとした瞬間。

 

「ーーーー【開<ラータイブ>】」

 

六喰の静かな声が響き、士道が突き出した〈封解主<ミカエル>〉の先に小さな『扉』が開き、その先端が中に吸い込まれた。

 

「な・・・・っ!?」

 

「ーーーー如何に敵が増えたとて、得たいの知れぬから視線を外すかと思うてか」

 

六喰がギロリとウィザード<士道>を睨み、〈封印主<ミカエル>〉を振り上げる。するとそれに呼応するように、〈封解主<ミカエル>〉の先端に光の粒が生じた。

 

「シドー! 逃げろ!」

 

「く・・・・!」

 

ウィザード<士道>は息を詰まらせ、その場から離脱した。

がーーーー遅い。ウィザード<士道>が距離を取るよりも早く、六喰の〈封解主<ミカエル>〉から、幾条もの光線を放たれる。

 

「シドー!」

 

「ーーーーふむん?」

 

が、ソコで六喰が不思議そうな声を発した。

右方から巨大な物体、スペースデブリらしき金属片が飛来してきて、六喰の攻撃を阻害した。

ウィザード<士道>達は〈フラクシナス〉の随意領域<テリトリー>に覆われている空間で、ただの金属片に精霊の攻撃を防ぐ事などできる筈はない。どうやら、近くで交戦していた空中艦の装甲板が、こんな所まで飛ばされてきたようだ。

しかし、あくまで防いだのは光線の直撃のみ。六喰の1撃を受け止めた装甲板は、その威力のままに、ウィザード<士道>を押し潰すような勢いで後方へと飛んで行った。

 

「ぐお・・・・っ!」

 

「だ、大丈夫か、シドー!」

 

六喰の元からどれくらい離れた頃だろうか、装甲板がガクンと揺れ、その進行が止められる。どうやらウィザード<士道>に追い付いたプリンセス<十香>が受け止めてくれた。

 

「あ、ああ・・・・助かったよ、十香。にしてもーーーー」

 

ウィザード<士道>は寸での処で自分を守ってくれた装甲板を軽く撫でた。

 

「タイミング良すぎだろ・・・・こんな装甲板が、俺と六喰の間に飛んでくるなんてーーーー」

 

と。ソコまで言いかけた、ウィザード<士道>はーーーー“頭に凄まじい衝撃が響き、一瞬気を失った”。

 

 

 

 

ー六喰sideー

 

「・・・・ふむん。細かいのは粗方片付いたようじゃの」

 

辺りに人の形をしていた機械の破片が多数漂っている宇宙空間を眺めながら、六喰は息を吐いた。全て六喰に敵意を向け、屠られた〈バンダースナッチ〉の残骸である。

近くを漂う金属塊の1つに手を伸ばし、矯めつ眇めつ眺め回す。

 

「今日は妙な客が多いのう。まあ・・・・」

 

人形の頭を無造作に放り投げ、視線を後方向けた。

 

「どれもこれも、うぬ程ではないがな、士道」

 

ソコには、自分に立ち向かう2人の仮面の戦士の姿があった。

 

「折角拾った命を捨てに来るか。もうあのような偶然は起きぬぞ」

 

六喰が〈封解主<ミカエル>〉を構えながら言うと、ウィザード<士道>は決意の込められた声を発する。

 

「逃げられるかよ。言っただろ。俺は、お前の心を開きに来たってな」

 

「むくとて言った筈じゃ。うぬの偽善に巻き込まれるのは迷惑とな」

 

六喰は半眼を作りながら言って、辺りを示すように手を広げた。

 

「ーーーーして、どうすると言うのじゃ。うぬが利用しようとしていた人形共は最早塵芥。先程のような小狡い策を弄する事もできぬぞ?」

 

「さあ、ソイツはどうだろうな。塵芥にだってーーーー使いようがあるぜ?」

 

ウィザード<士道>は手にした偽物の〈封解主<ミカエル>〉を高く掲げた。するとそれに応ずるように、辺りを浮遊した人形達の破片が、小さな隕石のように六喰目掛けて飛来してくる。

だが、それだけではない。

 

「十香!」

 

「うむ!」

 

そう叫びを上げると、2人は無数の飛礫に紛れて六喰に向かってきた。

ーーーー飛礫と少女の攻撃によって六喰の隙を作り、ソコを狙おうと言う作戦だろうか。

 

「いや・・・・」

 

六喰はフッと頭に浮かんだそんな考えを否定するように目を細めた。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

六喰の考えを中断させるように、少女らしい仮面の戦士が烈帛の気合いと共に剣を振るってくる。

とは言え、本気で六喰の身体を切り裂こうとしている1撃ではない。太刀筋に殺気が微塵も感じられないのだ。しかしそれも道理である。六喰を救う等と口幅ったい事を宣うウィザード<士道>の連れが、六喰を本気で両断しにかかるとは思えない。

こんな攻撃、受け止めるのも受け流すのも容易い。〈封解主<ミカエル>〉を握る手に力を込めた。

 

「ーーーー」

 

が。六喰は剣の刃を受ける寸前で身を引くと、その1撃を紙一重で回避した。

 

「のわっ!?」

 

流石に、接触寸前で回避されるとは思っていなかったのか、仮面の戦士が前につんのめる。六喰は戦士の肩口を踏みつけるような格好でその姿勢を崩すと、そのままもう1度身体を大きく捻った。

すると次の瞬間、六喰の後方の空間に『扉』が開き、ソコから〈封解主<ミカエル>〉の先端が飛び出してくる。

 

「なーーーー!?」

 

前方から狼狽の声ーーーーウィザード<士道>の方から聞こえてきた。ソチラを見やると、両手で〈封解主<ミカエル>〉を構えたウィザード<士道>が、驚愕の声を上げていた。

そして六喰の予想通り、ウィザード<士道>の持つ〈封解主<ミカエル>〉は、その先端が虚空に穿たれた『扉』に吸い込まれていた。

 

「やはりか」

 

六喰はフンと鼻を鳴らした。

無数の飛礫と少女の攻撃に注意を引き付けておき、〈封解主<ミカエル>〉で『扉』を開けて、自分の手元と六喰の背後の空間とを繋げる。ーーーーもしもウィザード<士道>が複製した〈封解主<ミカエル>〉が、本物と同じ力を備えているとしたなら、この手段は考えついて然るべきだろう。

実際、天使の特性を上手く使った、非常に有効な手段だ。

ーーーーそれを使う相手が、その天使の力を熟知した、本当の持ち主でなればの話だ。

 

「惜しかったの。じゃが・・・・これで終いじゃ」

 

六喰は短く言うと、手にした〈封解主<ミカエル>〉を、ウィザード<士道>が開けた『扉』へと突き刺した。鍵の先端が、天使の力によって歪められた空間を通り、遠く離れたウィザード<士道>へと迫る。

これで、全てが終わる。如何にしぶといウィザード<士道>と言えど、身体の機能を『閉じ』られたなら、マトモに動く事ができなくなるだろう。

だが、〈封解主<ミカエル>〉の先端がウィザード<士道>の身体に刺さろうとした、その瞬間。

 

「うひぁっ!」

 

素っ頓狂な声が響いたかと思うと、ウィザード<士道>の身体が急に縮み、1人の小柄なーーーー魔女のような姿をした仮面の戦士が裏返った声を発していた。

 

『やらせんよっ!』

 

その魔女の背中からそんな声が響くと、小さな竜が魔女の背中にしがみついており、翼を広げて六喰から距離を取った。

 

『ーーーー良くやったぞ七罪!!』

 

「う、うん! い・・・・今よ、士道!」

 

「ーーーーふむん?」

 

予想外の事態に、六喰は目を丸くした。

するとその瞬間、六喰の背後に、1つの気配が現れる。

 

「・・・・っ?」

 

視線を後方に送る。するといつの間に現れたのか、そこに〈封解主<ミカエル>〉を構えたウィザード<士道>の姿がある事が分かった。

 

「馬鹿な。うぬは、一体ーーーー」

 

「ーーーー通りすがりの魔法使いさ」

 

言うが早いが、ウィザード<士道>は〈封解主<ミカエル>〉を真っ直ぐ突きだしてきた。

鍵の先端が、六喰の豊満な胸に何の抵抗もなく吸い込まれる。

 

「(一体いつ、何故、何処からじゃ・・・・?)」

 

そんな疑問が六喰の頭の中をグルグルと巡る。

だが、そんな思考は数秒と続かなかった。

 

「・・・・【開<ラータイブ>】ッ!」

 

ウィザード<士道>がその言葉と共に、六喰に突き刺った〈封解主<ミカエル>〉を捻ったからだ。

 

「ぁーーーーーーーー」

 

瞬間。六喰は、長い間閉じ込められた心の中に、一条の光が差し込むような錯覚を覚えた。

 

 

 

 

ー折紙sideー

 

「ふーーーーッ」

 

「ーーーーはぁぁぁぁっ!」

 

エンジェル<折紙>とヘルキューレⅡ<アルテミシア>が暗い宙<そら>に幾度となくぶつかり、魔力光を散らす。

 

「く・・・・」

 

ヘルキューレⅡ<アルテミシア>の攻撃から伝わる重さに、腕が震える。放たれる1撃1撃が必殺の威力と意志が込められているのが容易に感じる。

しかしエンジェル<折紙>とて、やられっぱなしではない。今のエンジェル<折紙>は最強クラスの強者と渡り合えるのだ。

 

「ーーーー〈絶滅天使<メタトロン>〉! メタトロンウィンガー!」

 

エンジェル<折紙>が叫びを上げると、エンジェルの背後や腕や足に翼のように浮遊していた『羽』が、それぞれ意志を持ったかのように飛び立つ。

そして半数が先端をヘルキューレⅡ<アルテミシア>に向けると、彼女目掛けて一斉に光線を放つと、ワンテンポ遅れて、『羽』の先端に光の刃が伸びると、ヘルキューレⅡ<アルテミシア>に向かって突撃する。

 

「おっと」

 

ヘルキューレⅡ<アルテミシア>は小さく声を漏らすと、綺麗に身体を捻り、光線を回避すると、今度はダーインスレイヴを駆使して刃が伸びた『羽』を弾き飛ばした。

 

「逃がさない」

 

折紙は脳内で宙を舞う『羽』に指示を発した。

するとその意志に従い、無数の『羽』の内半分がヘルキューレⅡ<アルテミシア>の後方に展開、光景を網目状に放って逃げ場を塞ぐ。

そして残った半分が、エンジェル<折紙>の持つ槍〈エインヘリヤル〉の先端に結集し、巨大なドリルのような形となった。

 

「はぁッ!」

 

高速回転する〈絶滅天使<メタトロン>〉とメタトロンウィンガーから放たれる極大の光が螺旋を描き、ヘルキューレⅡ<アルテミシア>に迫る。

 

「ーーーーやるね」

 

ヘルキューレⅡ<アルテミシア>がそう言うとその瞬間、彼女のイージスを構えて、光の螺旋を吸収すると、撃ち返していった。

 

「く・・・・!」

 

跳ね返された光の螺旋をエンジェル<折紙>が回避すると、その一瞬の隙に、ヘルキューレⅡ<アルテミシア>は身体を翻すと、エンジェル<折紙>の包囲網から逃れた。

 

「ふう・・・・流石に今のは危なかったかな。イージスももう使えない、か・・・・」

 

エンジェル<折紙>から距離を取り、バチバチっと火花を散らせるボロボロのイージスを見て、ヘルキューレⅡ<アルテミシア>が息を吐く。

 

「霊力と魔力生成、そして君達〈ラタトスク〉の〈仮面ライダー〉が所有する魔力と霊力の融合を織り混ぜた、か。興味が尽きないね。・・・・でも残念、今日はあんまり遊んでいられないんだ。早めに決着をーーーー」

 

と。ソコでヘルキューレⅡ<アルテミシア>が言葉を止め、エンジェル<折紙>から視線を外した。

彼女程の強者が戦闘中に余所見をするなど愚の骨頂をするのが気になり、その視線を追うとーーーーエレン・メイザースが駆る〈ゲーティア〉が、黒煙を上げながら地球へと吸い込まれていった。

 

「エレン!? まさか、〈ゲーティア〉が・・・・!?」

 

常に余裕の張り付いたヘルキューレⅡ<アルテミシア>が、初めて動揺したように見える。エンジェル<折紙>は油断なく槍の矛先と『羽』の先端を向けながら、声を発する。

 

「ーーーーあなた達の負け。大人しく諦めて」

 

「・・・・・・・・」

 

ヘルキューレⅡ<アルテミシア>は暫しの間無言になった後、ダーインスレイヴを構え直した。

 

「・・・・勘違いしちゃ駄目だよ。確かにエレンがやられたのは予想外だったけど、それで勝敗が決した訳じゃない。私達の今日の目的はーーーー」

 

「ーーーー」

 

「“精霊を墜とす事”、何だから」

 

[ダーインスレイヴ デッドエンド!]

 

「く・・・・行けっ!!」

 

瞬間。エンジェル<折紙>はヘルキューレⅡ<アルテミシア>が右方を向くのを捉え、『羽』に指示し飛ばした。

がーーーー遅い。ヘルキューレⅡ<アルテミシア>の剣から放たれた魔力の刃は、〈絶滅天使<メタトロン>〉とメタトロンウィンガーの攻撃をものともせず、ウィザード<士道>と六喰の方へと振り下ろされた。

 

 

 

 

 

ー六喰sideー

 

「あ、あ・・・・」

 

視界が明滅する。痺れた手足に、急速に血液が巡っていくかのような感覚がする。六喰の心は、急激な環境の変化に戸惑い、混乱を起こしていた。

 

ーーーー『混乱』

 

そう。それこそが異常だった。〈封解主<ミカエル>〉によって『閉じ』られた六喰の心に、そのようなモノを感じる筈がないのである。

 

「(ーーーーああ、いや、だからこそかのう・・・・)」

 

段々と。理解していく。差し込まれた鍵。〈封解主<ミカエル>〉。士道。五河士道。【開<ラータイブ>】。開けた。心を。心の鍵を。長らく封印していた六喰の心を。流れる。流れ込んでくる。感情の奔流。ひさしく感じていなかった不可視の色彩。無理矢理心を開かれた憤り。予想外の手段を用いられた事への興味。そして、我が身を顧みず六喰の為にこんな所までやって来た士道へのーーーー。

 

「六喰ッ!!」

 

と。決壊したダムの如く溢れる感情に戸惑う意識に、突然そんな声がかけられる。

未だ感情と意識が繋がりきっていない為、そんな反応を示す事は困難であったが、頭の何処かが、視界から得た情報から、自分が置かれている状況を察する。

迫る。光。一直線に六喰を切り裂こうとする光の刃。

きっと士道はこれの事を言っているのだろう。だが。だけれど。しかし。荒れ狂う感情の波に、身体を上手く動かす事ができない。一瞬後には六喰の身体は、その光に切り捨てられてしまうだろう。

 

「(ーーーーああ、こわい)」

 

ーーーーそう。『怖い』。

痛いのが、怖い。死ぬのが、怖い。久方ぶりの恐怖が、六喰の心に広がっていく。

だが、次の瞬間。

 

「く・・・・ッ!」

 

「ぁーーーー」

 

六喰の感じた恐怖は、別の感情によって包み込まれた。

ウィザード、士道が、迫り来る光の刃から六喰を守るように、六喰に抱きついて来たのである。

 

「〈氷結傀儡<ザドキエル>〉・・・・ッ!」

 

叫びと共に、ウィザード<士道>の背に氷の盾が形成され、その一瞬後、ソコに凄まじい威力の魔力の刃が直撃した。

 

「が、ぁ・・・・っ!」

 

咄嗟に作った氷の盾だけでは、その威力を殺しきれず、苦悶と共に、ウィザード<士道>と、抱えられた六喰の身体が吹き飛ばされる。

するとそれに次いで、六喰は奇妙な感覚を覚えた。

今の今まで周囲に広がっていた不思議な暖かさがフッと消えたかと思うと、急に見えない力にグイと引っ張られ始めたのである。

それはーーーー地球の引力だった。

吹き飛ばされた2人は、ウィザード<士道>が活動していた不思議な領域から外れてしまったのだ。

このままでは、大気圏に突入してしまう。六喰は〈封解主<ミカエル>〉で空間に『扉』を開け、安全圏まで逃げようとした。だがーーーーどうしても、身体が上手く動かない。

 

「シドーォォォォォォォォォォォォォッ!!」

 

遠くから、ウィザード<士道>の名を叫ぶ十香<戦士>が、七罪<魔女>の背中にいた竜を持つと、思いっきりウィザード<士道>の方へと投げ飛ばした。

 

『小僧ーーーーッ!!』

 

「っ! ドラゴンッ!!」

 

『このペケポンキツネ! さっさと行くぞ!』

 

「おうっ!」

 

その竜が名を、ウィザード<士道>の名を呼び前足を伸ばすと、ウィザード<士道>も声に喜色を交ざらせ、その竜の前足に手を伸ばし、2人の手が触れあったその瞬間ーーーー。

 

[イィィンフィニティー!! プリーズ!]

 

ーーーーギャォォォォォォォォォォンッ!!

 

[ヒースイフードー! ボーザバビュードゴーーン!!]

 

ウィザード<士道>の身体が目映く光り輝き、ウィザード<士道>と竜が一体化すると、その身体を水晶のように美しく煌めく鎧となった。

 

「大丈夫だ六喰。お前は、俺が守るから・・・・俺が、〈仮面ライダーウィザード〉が、お前の『最後の希望』だ!」

 

ウィザード<士道>が落ち着いた口調でそう言うと、六喰の身体をギュウと抱き締め、光の球体に自分達を包む。

 

ーーーードクン、ドクン・・・・。

 

六喰は、ウィザード<士道>の心臓の鼓動が、身体を通して伝わってくる。

 

「ーーーー」

 

極彩色の感情の中、1つの色が浮かび上がる。

けれどそれが何を示すのかを認識するより先に。

六喰とウィザード<士道>の身体は、青い星に吸い込まれていった。

 

 

 

 

ーウッドマンsideー

 

ーーーー激しい銃撃音、地を揺るがす爆音が、〈ラタトスク〉本部基地のあちこちでひっきりなしに響き渡る。まさに破滅の足音と落城の兆し。積み上げてきたものが崩れ落ちる終焉の序曲。

本来ならば、随意領域<リアライザ>は勿論、あらゆる策を用いて秘匿されていた〈ラタトスク〉の本部が絶望的な状況に陥っていた。

DEMインダストリーのアイザック・ウェスコットが手にした〈神蝕篇秩<ベルゼバブ>〉によって。

 

「警戒していなかった訳ではないが、こうも鮮やかにやられてしまうとはね。流石はアイクと言った処か」

 

〈ラタトスク〉最高意思決定機関・円卓会議<ラウンズ>の議長(つまり組織の実質的なトップ)ウッドマンはこんな劣勢でも悠然とした調子で小さく肩を竦めながら呟くように言った。

かつての盟友にして仇敵であるウェスコットが、全知の魔王を手に入れたのだ。いの1番に未封印の精霊の所在とーーーー裏切り者であるウッドマンの居場所を知るのは想定済みであったのだ。

だからこそウッドマンは、〈ラタトスク〉が有する施設の中でも最高レベルの防衛体制を持つこの基地に身を移していたのだ。

 

「ーーーーお戯れを。アイザックはそこまで考えていません。旧友である貴方に、新しく手に入れた『オモチャ』を自慢したくてたまらないだけの子供です」

 

エレン・メイザースの実妹、カレン・メイザースが淡々とした調子でそう言った。彼女もウッドマンと同様、かつてDEMに籍を置いていた技術者であり、同郷の者。ウェスコットと言う人間の評価は的を射ていた。ウッドマンは思わずフッと唇を緩める。

 

「そうかもしれないな。アイクは昔から変わらない。だが、それだけに恐ろしいぞ。考えても見たまえ。準備が整った核ミサイルの発射ボタンが並んだ部屋に、好奇心旺盛な少年が1人放り込まれたようなものだ」

 

「怖気を振るいますね。狂気の沙汰です」

 

カレンが言葉とは裏腹に涼しげな表情をしながら、手にしていた携帯端末に視線を落とし、素早くソレを操作すると、再び顔をあげた。

 

「現在、〈白い魔法使い〉。〈仮面ライダービースト〉。公安0課の何人かがファントム達とDEMの足止めをしつつ、機関員達の避難誘導を行ってくれています」

 

「ほう。それは頼もしいな。それにしても、〈仮面ライダービースト〉ーーーー崇宮真那か。彼女が私達を守ってくれるとは、“皮肉な話”だね」

 

自嘲するようなウッドマンに、カレンは再び声を発する。

 

「ーーーー脱出経路が確保できました。こちらへ」

 

「ああ。資料の処理は?」

 

「滞りなく。勿論、アイザックの『おもちゃ』で覗かれたなら、どうしようもありませんが」

 

「結構。では、行こうか。機関員や白い魔法使い達にも待避勧告を」

 

「はい」

 

カレンが小さく頷くと、隠しエレベーターを使って、2人は脱出通路を進む。出口にはヘリコプターを用意されている。

がーーーー程なくして、車椅子を押してきたカレンが足を止めた。

通路の前方に、人影が2つ、あったからだ。

 

『ほうーーーー貴様が〈ラタトスク〉の首魁か?』

 

「ーーーーやあ、エリオット。直接顔を合わせるのは久しぶりだね」

 

白い身体の胸部に紫色の宝石を嵌めた異形の怪人と、黒の鎧に金のラインが走った鎧を纏った男が顔を晒し、薄い笑みを張り付けていた。

 

「・・・・・・・・」

 

車椅子のハンドルを通して、カレンの震えが伝わった。流石の彼女も、完全に無反応を貫く事はできないようだ。とは言え、突然『彼ら』を目の前にして、動揺をそこまでに抑え込んだだけでも、彼女の胆力は特筆すべき物である。

 

「ああ・・・・久しぶりだな、アイク。そして初めましてだなーーーー『古の魔獣 ファントム』、その首領、ワイズマン」

 

ウッドマンが、前方に立つ2人、ウェスコットとワイズマンを見据えて返した。

ワイズマンは得たいの知れない不気味さと圧倒的な魔力を全身に感じ、ウェスコットの淀んだ澱<おり>のごとき双眸。この世に満ちた穢れを集め、無理矢理人の形にしたような存在。無礼過ぎると自覚しても、そんな冒涜的な感想を抱かずにはいられない。つまりーーーーそんな男だ。

ウッドマンの衰えた視力は、眼鏡を通して朧気にしか相手を見とる事ができないが、その声と所作、そして異様な雰囲気は、かつて志を同じくした友の姿をありありと示していた。

 

「まさかこの道で待ち伏せをされるとはね。ダミー用の逃走経路を幾つか用意していた筈だが。これも魔王の力かい?」

 

「いいや。残念ながら〈神蝕篇秩<ベルゼバブ>〉は君の所の精霊に落書きをされてしまってね。ーーーーここを見つけ出したのはあくまで勘だよ。君なら、きっとここを選ぶと思っただけさ」

 

「成る程。やはり旧知の相手はやりづらい」

 

大層可笑しそうに肩を竦めて笑うウェスコットと一緒に、ウッドマンも笑う。

 

「それで・・・・一体何のご用かな。新しくお友達を連れて旧友を訪ねるにしては、随分とノックが荒っぽいようだが」

 

「ああ、すまないね。新しい友人達はどうもはしゃいでいるようで。大層な用件ではないんだ。ーーーー君とカレンを、DEMに連れ戻そうと思っているだけさ」

 

世間話をするような調子で、ウェスコットはそう言った。いや、実際彼にとってはその程度の話なのだろう。〈ラタトスク〉の崩壊など。

ウッドマンは驚きも憤りもせず、フッと唇の端をあげた。

 

「もし嫌だと言ったら、どうするね。私とカレンを殺すのかい?」

 

「まさか、それではエレンを置いてきた意味がなくなってしまうじゃあないか。君の意思は尊重したい。無理強いをするつもりはないよ。ただ、代わりと言ってはなんだがーーーー」

 

ウェスコットが肩を竦めると、マスクを展開し、〈仮面ライダーソーサラー〉へとその姿を変えると、右手を前に突き出した。

 

「〈神蝕篇秩<ベルゼバブ>〉」

 

そして静かにその名を呼んだ瞬間。その手の周りに闇が渦を巻き、1冊の本を形作った。

 

「ーーーー少し、私達と遊んでくれる、かな!」

 

『ーーーー!』

 

ソーサラー<ウェスコット>が左手をワイズマンが右手を突き出しと、その手の平から金色と闇色の魔法陣が展開され、そこから爆炎が2人に襲い掛かる。

カレンはウッドマンの前に瞬時に回り込み、両手を広げて守るように立つ。が、その時。

 

[ディフェンド ナウ!]

 

白い影がカレンの前に立ち、オレンジ色の魔法陣を展開すると、障壁となって爆炎を防いだ。

 

「っ、あなたは」

 

「ーーーー君は」

 

『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・』

 

爆炎が止むと、片膝を付いた白い影、白い魔法使いだった。

ソーサラー<ウェスコット>とワイズマンはその姿を確認すると、面白そうに声をあげた。

 

「おやおや。外の方のグレムリン<Mr.ソラ>達を放っておいて良かったのかい?」

 

『無用の、心配だ・・・・。ほとんどの魔術師<ウィザード>は制圧した上に、グールに〈バンダースナッチ〉も片付け、グレムリンはビースト<真那>が抑えている。機関員達も全員が避難を終えた・・・・。だからこそ、貴様らを追ってきたのだ・・・・!』

 

白い魔法使いはそう応えるが、その姿がブレだし、変身が強制解除されそうになっている。既にここまでの戦いで体力も魔力も相当消費したのが分かるほど疲弊していた。

ウッドマンはグッと腕に力を入れ、ゆっくりと車椅子から立ち上がると、まだ片膝を付いている白い魔法使いの肩に手を置いた。

 

「・・・・白い魔法使い、いや、敢えて本来の名を呼ばせて貰おう。ここは任せてくれーーーー『Mr.輪島』」

 

「っ!」

 

ウッドマンにそう言われ、白い魔法使いが息を呑むと、その瞬間、変身が解け、“20代前半の青年”が現れた。

ウッドマンが青年に前に出ようとすると、カレンが後方から肩を掴んだ。

 

「いけません、エリオット」

 

「大丈夫だよ、カレン」

 

「ですが」

 

ウッドマンは優しく微笑みながらカレンの手を外すと、よろめく足取りで前方に歩いていった。

 

「(・・・・・・・・後、2回と言った処かな)」

 

ワイズマンに聞こえるかも知れないので、内心でそう呟いて、ウェスコットの前に立つ。

 

「さて・・・・始めようか。思えばアイク、君とこうして対するのは初めてかも知れないね」

 

「それはそうさ。私は弱いからね。こうして力を得ても、君の前に立つだけで恐怖で足が震えるよ、エリオット」

 

冗談めかした調子でソーサラー<ウェスコット>が笑うように身体をゆらす。

ウッドマンはそれに応ずるように口元を笑みの形にすると、胸元から、“金色のドックタグのような物”を取り出した。




白い魔法使いの正体である『輪島』と呼ばれた青年。一体輪島のおっちゃんとの関係性は!?
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