デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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修羅場?・六喰と反転十香

ー士道sideー

 

「くっ・・・・!!」

 

魔王〈暴虐公<ナヘマー>〉から放たれた黒い光を放つ三日月の斬撃が迫る。

士道は〈インフィニティ〉に変身しようとするが、次の瞬間ーーーー。

 

「ーーーー【開<ラータイブ>】!」

 

士道の隣にいた六喰が〈封解主<ミカエル>〉を掲げ、虚空に大きな『扉』を開けると、迫り来る漆黒の斬撃を吸収した。『扉』の範囲から外れた斬撃の余波が地面を抉り、舗装道路のアスファルトに巨大な爪痕を残す。

 

「わっ!?」

 

「なーーーー何今の!?」

 

突然の爆発に、辺りを歩いていた通行人達が驚愕の声を上げる。

しかし騒ぎの元凶である十香(反転)は、そんな有象無象など気にも留めていない様子で、今自分の攻撃を無力化した六喰に鋭い視線を向けてくる。

 

「貴様。我が1撃を止めるとは、覚悟はできているのだろうな」

 

「それはこちらの台詞じゃ。何をしに出てきおった。うぬらの記憶は〈封解主<ミカエル>〉が『閉じた』筈じゃ。これ以上むくと主様の逢瀬を邪魔しようと言うのであれば容赦はせぬ」

 

六喰が、不機嫌そうに顔を歪める。十香(反転)がピクリと眉を揺らした。

 

「ーーーー上等だ。今の1撃で死ななかった事を後悔させてやろう」

 

十香(反転)はそう言うと、トン、と街灯を蹴って地面はと降り立ち、〈暴虐公<ナヘマー>〉をゆっくりと掲げながら、士道達の方へと近づいてくる。

 

「むん・・・・」

 

対する六喰も、目の前にいる反転精霊が凄まじい脅威である事は感じ取っているのだろう。油断なく十香(反転)を見据えながら腰を落とし、〈封解主<ミカエル>〉を槍のように構える。

まさに一触即発。2人の間に刺々しい緊迫感が充ち満ち、士道は思わず『インフィニティウィザードリング』を嵌め、ウィザードライバーを召喚しそうになる。

 

「ぐ・・・・」

 

とは言え、ここで十香(反転)と六喰と〈仮面ライダーウィザード・インフィニティ〉が全力で戦えば、この街処か、関東一帯が一瞬で焦土と化してしまうだろう。

だが、臨戦態勢を取った2人の精霊の間に構築された緊張感が、魔術師<ウィザード>の随意領域<テリトリー>ので構築された空間ように重苦しい空気に息詰まりそうになる。

今にも死闘のゴングが鳴りそうになる2人を止めようと、士道が1歩踏み出そうとするが、その進行を止めるようにポンと肩に手が置かれた。ーーーー折紙だ。

 

「五河君、ここは私に任せて。私に・・・・考えがあるの」

 

「え・・・・? し、しかし」

 

士道が言うが、折紙の意志は固いらしい。緊張した面持ちで、六喰と十香の間に割って入る。

 

「ーーーー待って下さいっ!」

 

「なんじゃ(ギロリ)」

 

「邪魔立てする気か(ジロリ)」

 

「ひ、ひぃっ・・・・!」

 

六喰と十香(反転)に睨まれ、折紙は先程までの勇ましさが嘘のような、涙目になりながら肩を震わせた。

 

「(いつもの折紙と違い過ぎて調子が狂うな・・・・)」

 

≪肉食獣から清純派、と言った所だな・・・・≫

 

士道とドラゴンが半眼になって苦笑する。折紙はどうにかその場に踏み留まると、躊躇いがちにか細い声を上げ始める。

 

「あ、あのですね、落ち着いて下さい。ーーーー六喰ちゃん」

 

「・・・・ふむん?」

 

折紙の声に、六喰が訝しげに眉根を寄せる。折紙は意を決したように六喰の目を見つめながら、続けた。

 

「む、六喰ちゃんは、五河君の事が好きなんですよね? だから、五河君を奪いに来た十香さんが許せない」

 

「・・・・むん。まあ、簡単に言うとそうじゃの。尤も、それにはうぬも含まれておるが」

 

言って六喰が、カチャリと音を立てながら〈封解主<ミカエル>〉を構えると、折紙が慌ててそれを止めた。

 

「駄目です! 五河君は乱暴事が嫌いなんです! そ、それに、五河君の愛を勝ち取るには、もっと別の方法があると思います・・・・!」

 

「・・・・ふむん?」

 

六喰が難しげな顔をしながら首を傾げる。と、今度は焦れたように十香(反転)が止めていた足を1歩前に踏み出した。折紙が息を詰まらせ、十香(反転)の方に向き直る。

 

「と、十香さんも落ち着いて下さい! 十香さんの目的は何ですか・・・・?」

 

「十香ーーーーそれは私の事か。・・・・まあ良い。目的等は知れた事だ。そこの男、奴には以前辛酸を舐めさせられた。屈辱を雪がねば気が済まぬ。貴様と鍵の精霊はどうでも良いが、邪魔立てするのであれば容赦はせぬ」

 

身も蓋もない殺意剥き出しの言葉に、折紙が額に汗を滲ませる。しかし、その発言に気になる点があったのだろう。オズオズと言葉を続けた。

 

「五河君に辛酸を・・・・それってもしかして、DEM本社であなたが顕現した時の話ですが・・・・?」

 

「場所までは知らぬ。しかし、耐え難い屈辱を味わわされた事はよく覚えている」

 

≪ーーーーまあ普通に考えて、いきなり女性の唇を奪うような男など、性的嫌がらせ、セクシュアル・ハラスメント、訳してセクハラと言われても文句は言えんな≫

 

「(いや、あの時は仕方なかったと言うか・・・・! やむにやまれぬ事態だったから・・・・!)」

 

ドラゴンと士道が話し合っているのに気づかず、折紙が話を続ける。

 

「・・・・、私も話に聞いただけですが、その時の事は知っています。確かに、あなたはあの時五河君に敗れたかもしれまーーーー」

 

と、折紙の言葉の途中で、十香(反転)が〈暴虐公<ナヘマー>〉を振るう。漆黒の刀身が折紙の頬を掠め、地面に薄く傷を付けた。

 

「ひっ!」

 

「言葉に気を付けろ。誰が、誰に、敗れただと?」

 

「す、すみません、誤解を生む表現でした・・・・! 以前十香さんは五河君と対峙した時、あくまで偶然不可抗力的に、あまり愉快でない事をされてしまったかも知れませんが・・・・」

 

「・・・・ふん」

 

十香(反転)が不機嫌そうな顔をしながら鼻を鳴らす。しかし取り敢えず今回の表現はセーフだったらしい。折紙が何処か安堵しながら言葉を続けた。

 

「思い出して下さい。その時、あなたは、彼の力に屈したのですか?」

 

「ふざけるな。そのような事があってたまるか」

 

十香(反転)の表情がにわかに険しくなる。

折紙は十香(反転)を宥めるように手を広げながら続けた。

 

「そ、そうです! そこなんです!」

 

「・・・・何だと?」

 

「五河君は単純な力で言えば、十香さんが負ける事はない筈なんです! でも、結果はそうならなかった! ですが、今五河君は力の大半を失った状態なんです・・・・!」

 

≪折紙にはもう、我は六喰にやられた事になっていると教えている≫

 

「(成る程)」

 

「今の五河君を倒したとしても、それは本当に五河君に勝ったと言えるんでしょうか・・・・!? 寧ろここで悪手を打ってしまったら、雪辱を果たす機会を失ってしまうのでしょうかっ!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

折紙の言葉に、十香(反転)は思案するように目を細めた。

 

「しかし、それならば如何にすればこの男に屈辱を与えられると言うのだ」

 

「それは・・・・こ、心です! 力ではなく心を屈服させてこそ、真の勝利と言えるのではないかと!」

 

「・・・・お、おーい、折紙ー?」

 

どうにか説得しようとしてくれているようだが、何やら段々と方向が怪しくなっている気がする。士道は心配になって折紙に声をかけるが、臨戦態勢の精霊2人に挟まれた折紙に、そんな余裕は無いようだ。顔中に脂汗を浮かべ、落ち着かない様子で2人の反応を窺う。

すると六喰と十香(反転)は、ほぼ同時に首を傾げ、折紙に向かって問いを発した。

 

「して、どうすればこの不遜な女から、主様の愛を勝ち取れると言うのじゃ」

 

「答えろ。この男の心を屈服させるには、どうしろと言うのだ」

 

「はい。2人の目的を果たしつつ、勝敗を決する方法があります・・・・!」

 

「ふむん?」

 

「ほう」

 

2人が興味深そうに返す。

折紙は大仰な仕草で片手を持ち上げると、ビシッと士道に方を指さした。

 

「五河君の唇を奪った方が勝ち・・・・と言うのはどうでしょう」

 

「・・・・・・・・、えぇっ!?」

 

≪こうきたか・・・・≫

 

切羽詰まった様子の折紙の言葉に、数秒間、思考が停止した後、士道は裏返った声を上げ、ドラゴンは苦笑した。

無論それは2人だけではない。十香(反転)もまた、訝しげな視線を折紙に向ける。

 

「なんだそれは。ふざけているのか」

 

「そ、そんなまさか。・・・・それとも、怖いんですか? 精霊ともあろう方がひゅッ!?」

 

折紙の声は途中で、十香(反転)が振るった〈暴虐公<ナヘマー>〉が鼻先を掠めて止まる。

 

「言葉には気を付けろと言った筈だが」

 

「は、はひ・・・・」

 

ガ~タガタガタ・キリッバ・ガタキリバッ! と、足を震わせる折紙が答える。

が十香(反転)は、〈暴虐公<ナヘマー>〉を下ろすと、何やら考え込むように顎に手を当てた。

 

「ふん。ーーーーだが、以前こちらに現れた時、その男は私にそんな真似をしたな。ーーーー確かに、あの時はしてやられた。・・・・仕返しがてら打ちのめしてやるも一興か」

 

「・・・・え?」

 

十香(反転)の言葉に、思わず目が点になる。すると、六喰が不満そうに唇を尖らせた。

 

「待つのじゃ。勝手に話を進めるな。主様の唇を・・・・じゃと? そんな勝負が受けられるものか」

 

「大丈夫ですよ。十香さんはあくまで、五河君の心を屈服させるのが目的です。六喰ちゃんと五河君がしっかり繋がり合っていれば何も問題はありません。・・・・もしかして勝つ自信が無いんですか? 五河君が六喰ちゃんより十香さんを選ぶと?」

 

「・・・・ふむん?」

 

ーーーーツプ。

 

「ひぃっ! な、何ですかこれ! 痛くはないけど何か! 何か!」

 

≪折紙の悲鳴とは新鮮だな≫

 

「(確かに)」

 

六喰が〈封解主<ミカエル>〉の先端を、折紙の腹部に挿し入れ、折紙が悲鳴を上げるが、六喰が口を開く。

 

「黙らぬと鍵を廻すぞ。・・・・しかしまあ、先んじて主様の唇を奪う・・・・ふむん、この女に格の違いを知らしめるには妥当な手段かも知れぬの」

 

六喰はそう言うと、折紙の腹から〈封解主<ミカエル>〉を抜いた。

 

「(・・・・なぁ、ドラゴンさんや。これどういう状況?)」

 

≪分からんのか板付きの愚か者。本来の十香を呼び起こすにも、〈ゾディアック〉を封印するにも、先ずは何をしなければならんのだ?≫

 

「(それは俺とキスしてーーーーあ・・・・)」

 

と、ソコで漸く士道は折紙の意図に気づいた。折紙は苦肉の策で適当な提案をした訳でも、勿論士道を生け贄にしようとした訳でもない。

士道とキスさせるーーーーつまり、六喰の霊力の封印。もしくは、本来の十香を呼び起こす事によって、この状況を打破しようとしたのだ。

折紙が「やったよ、五河君!」とでも伝えるように親指を立てると、突飛な提案に苦笑しながら、士道とドラゴンも親指を立てた。

と。次の瞬間。

 

「ーーーーっ!?」

 

士道は瞬く程の間もなく距離を詰めてきた十香(反転)に胸ぐらを掴まれ、強制的に姿勢を崩された。

 

「へっ!? あっ!? ちょーーーー」

 

「黙っていろ。すぐに済む」

 

士道が目を白黒させていると、十香(反転)があまりにクール過ぎる台詞を吐きながら、グイッと士道の身体を持ち上げた。

そしてムードもへったれくれもなく、冷酷な色を帯びた目で士道を見下ろしたまま、その唇を士道に近づけてくる。突然の事に、士道はされるがままになり、ドラゴンは「これで十香が元に戻るならば良いか」と、考えていた。

だが、2人の唇が触れる一瞬前、十香(反転)の頭部目がけて、巨大な鍵の先端が突き出された。

 

「させぬのじゃ!」

 

六喰が視線を鋭くし、十香(反転)を睨み付ける。

 

「ーーーーふん」

 

しかし十香(反転)は華麗に身を反らし、その1撃をかわしながら六喰を一瞥すると、士道の首を掴んだまま、もう片方の手で〈暴虐公<ナヘマー>〉を振り下ろす。

黒光が迸り、地面が深々と削り取られる。だか、六喰も軽やかに身を翻すとその攻撃を避け、再び十香(反転)に〈封解主<ミカエル>〉を繰り出す。

1撃で全てを斬り裂く剣の魔王〈暴虐公<ナヘマー>〉と、1度当たれば相手の力を封じる事のできる鍵の天使〈封解主<ミカエル>〉。どちらも精霊達の中でも最強格と言っても良い程の力を持つ魔王と天使が、目にも留まらぬスピードで交わる。

 

≪そう。全て、反転十香に首根っこを捕まれた小僧の目の前で≫

 

「ひッ、ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

 

鼻の数ミリ先を、霊力の籠った刃と錫杖が連続して掠めていき、情けない悲鳴を上げる士道。

十香(反転)の左手でガッシリと首元をホールドされている為、変身して逃げようと思うがーーーー下手に動いたら、次の瞬間に首から上が大空にスカイハイしている可能性もあり、動けなかった。

 

「ーーーー!」

 

「ふーーーーッ」

 

しかもそんな剣と錫杖の暴風雨の中、十香(反転)と六喰は執拗に士道の唇を狙ってくるので、必然的に士道の身体は首元を支点に、まるでカンフースターの操るヌンチャクよろしく、ブンブン振り回される。凄まじいGに、段々と意識が薄れていくーーーーが。

 

≪落ちるな軟弱者!≫

 

ーーーーバシィィィィィィンッ!!

 

「ナイチンゲールっ!?」

 

ドラゴンの尻尾ド突きのせいで気絶も出来なかった。

 

「ちょ・・・・っ、ストップストップ! ストップです、2人共!」

 

と、再び折紙が声を張り上げた。

 

「だ、だからそう言うんじゃないんですってば! 目的はキスでも、力任せに奪ったら同じ事じゃないですか!」

 

「・・・・ぬ?」

 

「・・・・ふむん?」

 

折紙の言葉に、十香(反転)と六喰が困惑したように眉をひそめる。ソコで不意に2人の攻防が止み、士道の身体がビターン! と地面に叩きつけられた。

 

「グフっ!」

 

≪この娘、かなりの脳筋だ。初めてあった時の十香も脳筋な所があったが・・・・≫

 

士道の喉から苦悶が漏れる。ドラゴンが呆れ、折紙が心配そうに!六喰が十香(反転)に敵意を抱くように小さな声を発した。

しかし士道の首元を掴んでいる十香(反転)はさして気にする様子もなく、折紙の方に視線をやり、

 

「ならば、一体どうすれば良いと言うのだ?」

 

真っ直ぐに折紙を見据えながら問う。

 

「・・・・むん」

 

そしてそれは六喰にとっても気になる事だったようだ。六喰が、十香(反転)に向けていた刺々しい視線を、そのまま折紙に向ける。

2人の精霊に注視された折紙は、顔中に脂汗を浮かべながら、言葉を探るように目を泳がせた。

 

「え? ええと、た・・・・例えば・・・・」

 

≪・・・・これは使えるな・・・・≫

 

折紙がたどたどしく説明していると、ドラゴンは1人、策を思い付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーそして、それからおよそ1時間後。

 

「あーん、だ。口を開けろ。開けなければ代わりに頬に風穴を開けるぞ」

 

「そんな奇っ怪な女の言う事など耳を貸すでないぞ、主様。言動から見てもマトモな頭を持っていない事は明白じゃ。それよりほうら、むくの方を向くのじゃ」

 

「何だと、貴様」

 

「何じゃ」

 

「・・・・・・・・、ええと」

 

場所は先程の通りから遠く離れた喫茶店。士道は左右から、先程までとは別種のプレッシャーに襲われていた。

左に十香(反転)、右に六喰に固められながら、執拗に苺の刺さったフォークをグイグイと押し付けられていたのである。

一応こちらの必死の説得によって、十香(反転)の装いは霊装から普通の服に変貌していたがーーーーだからと言ってその威圧感が薄れた訳では無かった。

しかも・・・・何と言うか。折紙が案内してくれた喫茶店がーーーーメイド喫茶だった。

 

「お帰りなさいませ、ご主人様ー!」

 

「行ってらっしゃいませ、ご主人様!」

 

等と、フリル付きのエプロンを着けた可愛らしい店員<メイド>達が、お客を出迎えたり、見送ったりしている。殿町辺りが通い詰めそうだ。

 

「・・・・なあ、折紙。何でこんな店なんだ?」

 

「・・・・ご、ごめん。ここなら目立たないかと思って・・・・」

 

士道が小声で問うと、向かいの席に腰掛けた折紙が、申し訳なさそうに答えてきた。

そう。この状況の原因は、折紙である。先程十香(反転)と六喰に詰め寄られた折紙は、困惑しながらーーーー。

 

【キスをするにはやっぱり、デートとかをして親密になってからと言うか・・・・】

 

【だから、その具体的な方法を聞いていているのだ】

 

【わ、私もそんなに詳しくは無いんですけど・・・・その、例えば食べ物を『あーん』して食べさせてあげたりとか・・・・?】

 

【ふむん。成る程の。ではそれをやってみるのじゃ】

 

【・・・・・・・・その前に、俺をちょっとトイレに行かせてくれ・・・・】

 

と、トントン拍子に事が進み、士道は災害レベルの力を持った精霊2人にプレスされており、更にはこの2人、折紙の言葉を今1つ理解していないのか、力技で士道に『あーん』させようとしていた。

十香(反転)と六喰が刺々しい視線を交じらせ、目に見えそうな程に激しい火花を散らせながら、てんやわんやと騒いで、何故か十香(反転)が士道を這いつくばらせ、その背中に座っていると、メイドさんが駆けつけ。

 

「お嬢様ぁ! ここはメイド喫茶ですよ! 何でご主人様をお尻に敷いてるんですかぁっ!」

 

「何だ貴様。貴様も這いつくばりたいのか」

 

「十香・・・・・・・・っ!?」

 

士道と折紙はスイマセンスイマセン、と、まるで大勢の人達に迷惑をかけまくった嵐を呼ぶ5歳児の両親のように、メイドさんに頭を下げまくると、慌てて十香(反転)と六喰を連れ、店を後にした。

 

「(このままじゃ俺の身が持たねぇ!ーーーードラゴーン! 頼んだぞっ!!)」

 

士道は内心、“トイレに行った数分の間に外に出したドラゴン”に祈りを込めて叫び声を張り上げた。

 

 

 

 

 

ードラゴンsideー

 

そしてここは、天宮市上空15000メートルに浮遊する空中艦〈フラクシナス〉の艦橋の真上。

 

『ーーーーかなりの修羅場になっているな。・・・・それはそうと、マリア<AI娘>にも効果があるとは、改めて〈封解主<ミカエル>〉の凄まじさが分かるな。直接的な戦闘では十香や折紙の天使が最強クラスならば、能力的な強さは〈ナイトメア〉の〈刻々帝<ザフキエル>〉以上かも知れん』

 

ドラゴン(琴里サイズ)は士道の状況を把握しているが、今はそれよりも、艦橋の下で十香(反転)と折紙の行方を狼狽えながら追って、無様に右往左往しているーーーー『低能で役立たずな粗大ゴミ共』を見下ろしていた。

 

『はぁぁーーーー全く・・・・!』

 

ドラゴンは盛大にため息を吐くと、『フォール』で天井に穴を開け、〈フラクシナス〉の艦橋へと入っていった。

 

 

 

 

 

ーワイズマンsideー

 

そして、天宮市のビルの屋上から、士道達の様子を伺うワイズマンとメデューサ<ミサ>、そしてグレムリン<ソラ>がいた。

 

『グレムリン。本当に精霊達はウィザードの記憶を失っているようだな?』

 

「まぁね♪ 昨日をちょっとからかいに行って見たら驚いたよ。十香ちゃんと折紙ちゃんの様子が変だったから、試しに真っ正面で挨拶したら、僕の事を知らない態度になっててね。もう簡単に首を切り落とせるくらいに隙だらけだったよ。それで暫く監視していたら、士道君が〈ゾディアック〉ちゃんといたからね☆」

 

「ワイズマン。これは好機と見ます。あの『指輪の魔法使い』は孤立しています。反転した〈プリンセス〉と〈デビル〉がいるのは厄介ですが、〈ゾディアック〉とは友好的とは言えません。上手くすれば奴等を諸ともに始末できると愚考します」

 

『ーーーーフム。では、少し本気でやってみようか・・・・』

 

ーーーーパチンっ・・・・。

 

と、ワイズマンが指を鳴らした瞬間、転移魔法陣が展開され、ソコからーーーー『再生ファントム』や、『シスターファントム』が、ぞろぞろと出てきた。

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