デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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激戦・六喰VS十香(反転)

ー士道sideー

 

「十香っ!! 六喰っ!!」

 

[ドライバーオン プリーズ]

 

「待って五河くん!」

 

変身しようとする士道の手を折紙が掴んだ。ここは天宮タワーの展望台だ。まだ避難しようとしている人達や監視カメラが動いているのだ。ここで〈仮面ライダーウィザード〉に変身するのは不味いと考えたのだろう。

 

「折紙! 離してくれ! このまま(ガンっ!)ジオングっ!?」

 

焦る士道の脳天に尻尾ド突き(威力中)が炸裂した。

 

≪落ち着けこのゲジゲジ。先ずは避難誘導と、琴里達に連絡を取って、マリア<AI娘>にここの監視カメラの停止だ≫

 

「琴里達に連絡って、ドラゴン! 琴里達は!?」

 

≪もう大丈夫だ。ほれ、さっさと連絡を取れ≫

 

「あ、ああ!」

 

士道は一抹の不安を感じながらスマホのビデオ通話で連絡すると、液晶に〈フラクシナス〉の艦橋と艦長席に座る琴里と艦橋にいるクルー達が映し出された。

 

《・・・・士道、聴こえる?》

 

「琴里!ーーーーん?」

 

琴里の口ぶりから、どうやらドラゴンが皆の記憶を戻したようだ。

なのだが・・・・。

 

「どうしたんだ琴里・・・・その頭? それに、他の皆さんも・・・・?」

 

琴里の頭には、大きなタンコブが作られており、他のクルー達、令音にですら琴里と同じタンコブが作られ、神無月に至っては昔のギャグ漫画のように顔面が比喩抜きで凹んでいた。マリアのコンソールの1部も、人間の拳の形に凹んでもいた。

琴里達の惨状に、士道も折紙も危機的状況なのを忘れて思わず聞いてしまう。

琴里は悔しさと屈辱に染まった顔を作り、他のクルー達(令音はいつも通り、神無月は顔面が潰れていた)も、面目無いと言わんばかりに俯き、琴里が、弱冠震える声でそれに答える。

 

《ーーーー大した事じゃないわ。士道をサポートする立場でありながら、肝心な時や必要な時には、何の力になれない、いえ寧ろ、足を引っ張ったりしているだけの能無しで、トイレットペーパーにも劣る役立たずな人間の末路よ》

 

「・・・・ドラゴン、お前また強烈な嫌味か毒舌でも吐いたのか?」

 

≪失礼な事を言うな。我はコイツらを『閉じ』られた記憶を解放する為にーーーーゲンコツをしただけだ≫

 

そう。ドラゴンが別行動を取っていたのは、〈フラクシナス〉に赴き、“琴里達に触れる事でドラゴンの魔力を流し込み、記憶を『閉じ』ている天使の権能を相殺する”事で、元に戻す事であった。霊力と魔力、相反する二つの力だからこそできる芸当だ。

しかし、今にも地獄兄弟の一員になりそうなやさぐれた琴里の様子に、士道は目をパチクリさせた。

 

《『士道。私が説明しましょう』》

 

〈フラクシナス〉のAI『マリア』も、何やら不機嫌そうな声で説明した。

何でも、十香が反転し、折紙の様子も変わり、2人が行方不明となり、無様に右往左往していた自分達の元にーーーー“20代中盤の年齢になった士道”のような人物が現れ、驚く琴里達を余所に、先ずマリアのコンソールに拳を叩き落とした。そしてマリアの記憶が『開け』られた。そしてすぐにその士道(?)は、琴里の目の前に一瞬にして移動すると、唖然と間抜け面を晒している琴里の脳天にゲンコツを振り下ろした。涙目になった痛みに悶える琴里を無視し、士道(?)を取り押さえようとした神無月を裏拳で殴り、神無月の顔面が潰れるのを確認すると、アクセルフォームかクロックアップしたように加速をして、クルー全員を殴った。全員が痛みに情けなく悶えるが、ソレが収まると、全員の記憶が戻った。

そしてその士道(?)の姿が、ドラゴンと重なった。

 

「えっ? その俺って・・・・?」

 

「ドラゴンさんの、人間形態? でもどうして大人の五河くんなの・・・・?」

 

そう。琴里達を殴った士道(?)こそ、ドラゴンが人間の形になった姿なのだが、『魔獣ファントム』は元となった『ゲート』の姿になる筈なのに、姿を変えるなんて、と士道と折紙が首を傾げるが、マリアは続ける。

 

《『そしてそのままドラゴンから士道の状況を聞いて、私達は六喰に『戻った』事を悟られないように、浮遊カメラで遠距離から見ていたのです』》

 

「そうか。でも、ドラゴンが罵声でも浴びせたのか?」

 

《『ーーーーいえ、ドラゴンは、冷徹な視線を向けて、「フンッ」と、鼻で息をするだけで、“何も言ってきませんでした”』》

 

「え・・・・?」

 

士道は思わず怪訝そうな顔になる。あの! 弱味を見せればトコトンまで突いてくるあの腹黒のドラゴンが! 何も言わずにいたのが不思議でならない。

 

「何も言わないって、ドラゴンも少しはデリカシーを持ってくれたのかな?」

 

「ーーーー違うよ五河くん」

 

「折紙?」

 

苦笑する士道と違って、折紙は憐憫な視線で琴里達を見てから口を開く。

 

「ーーーー多分琴里ちゃん達、もっと悔しかったんじゃないかな? “嫌味も罵声も毒舌も、言う価値すらない相手”だって、ドラゴンさんに思われたんじゃないかな?」

 

「え・・・・?」

 

士道は思わず聞き返した。琴里達は嫌味を言って欲しかった訳ではないが、ドラゴンの視線はこう言っていた気がする。

 

【『貴様ら、トコトンまで役に立たんな。もう何か言うのも疲れたわ』】

 

ーーーーもうドラゴンは琴里達に、何の期待も寄せていない。

精々精霊達の生活保証くらいしか役に立たないと思われている。それを言葉ではなく、態度で示したのが、琴里達にとって屈辱でならなかった。

恐らくだが、会話をしたのはほんの数回だが、プライドの高そうなマリアもドラゴンの態度を理解して、不機嫌なのだろう。

 

「(ドラゴン・・・・お前な・・・・)」

 

≪我は事実をありのままの態度で示しただけだ≫

 

「はぁーーーー琴里、俺は気にしてなんか・・・・」

 

《あなたが気にしなくても、私達が気にするの。役立たずなのは事実だし。ーーーーまぁ、それは今は置いておくわ。十香と六喰の方は、こっちの随意領域<テリトリー>で少しは2人の動きを抑えるから。六喰の好感度も測定しておくわ。士道は先に十香を元に戻してちょうだい。反転した今の十香は正直、六喰を攻略するのに邪魔以外の何者でもないわ!》

 

「わ、分かった!」

 

通話を切ると、士道は気を取り直すようにスウッと息を吸い、パチンと頬を張った。

 

≪行けるか?≫

 

「ーーーー六喰の好感度数値はまだ分からないし、記憶が封印されている十香の方は・・・・」

 

≪貴様が触れて、我が魔力を流し込めば戻るかも知れん。本来の十香が戻れば、彼女も引っ込むかもな≫

 

「よし・・・・一か八か、やってやるか!」

 

士道は『インフィニティウィザードリング』を嵌めて、辺りを見回すと、周りの観光客は、どうやら琴里達と話している間に避難が終わったようだ。

『インフィニティリング』をベルトに翳した。

 

[イィィンフィニティー!! プリーズ!]

 

ーーーーギャォォォォォォォォォォンッ!!

 

士道の隣身体から光り輝くドラゴンが飛び出し、士道と一体化すると、士道の身体を水晶が包み砕け散った。

 

[ヒースイフードー! ボーザバビュードゴーーン!!]

 

〈仮面ライダーウィザード インフィニティスタイル〉に変身完了すると、折紙へと顔を向けると。

 

[コネクト プリーズ]

 

『コネクト』でスピリッドライバーを取りだし、折紙に差し出す。

 

「・・・・頼む、折紙。俺達2人だけじゃ、あの2人を押さえるのは難しい。・・・・手を貸して、くれないか」

 

「五河くん・・・・」

 

すると折紙は、ニコリと笑いながらドライバーを手に取って首肯した。

 

[ドライバー セット!]

 

「当たり前じゃない。五河くん達だけを行かせたりなんてしたら、後で『私』とケンカになっちゃうよ」

 

折紙はそう言うと、ドライバーを両手で挟んで、指を組み合わせながらクルリと背を向け、続けた。

 

「それに・・・・嬉しいよ、私を頼ってくれるなんて。私を、五河くんの役に立たせてくれるなんて。ーーーー女の子は、守られるだけが幸せじゃないんだから」

 

「折紙・・・・」

 

ウィザード<士道>が名を呼ぶと、折紙は肩越しにチラとこちらに視線を送った後、悪戯っぽく微笑んだ。

そして、スピリッドライバーを腰に巻いた。

 

[ドライバーセット! シャバドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪]

 

音が流れ、折紙は右手中指に、翼に包まれた王冠の装飾がされた白いリングである『メタトロンリング』を嵌めると、リングが突如ーーーー『黒い翼に包まれた王冠の装飾がされたリング』へと変貌した。

が、折紙は構わず。

 

[デビル プリーズ!]

 

折紙の背後に白銀の魔法陣が展開され、折紙の身体を通過すると、折紙の身体が漆黒の結晶に包まれ砕けると、折紙が《仮面ライダー》となった。

ーーーーしかしそれは、〈仮面ライダーエンジェル〉ではなかった。

ダイヤモンドのように輝くプロテクターは黒いブラックダイヤモンドになり、所々の箇所が刺々しくなり、籠手に1枚ずつ、両肩に2枚ずつ、両足に1枚ずつ、両腿に1枚ずつ、アーマーに4枚、全14枚の羽『メタトロンウィンガー』も漆黒となった、別の〈仮面ライダー〉であった。

 

「お、折紙・・・・その、〈仮面ライダー〉は?」

 

「えっ? えぇぇぇぇっ!? 何これっ!? これじゃあ〈エンジェル〉じゃなくて〈デビル〉だよぉ!!」

 

折紙自身も驚いたような声を漏らした。

そして、ドラゴンが口を開く。

 

≪恐らく。中身が違うから別の姿になったのだろう。さしずめ、〈仮面ライダーデビル〉、と言った所か・・・・≫

 

「あぅ・・・・悪魔なんて、ちょっと嫌だなぁ・・・・」

 

デビル<折紙>が情けない声を上げる。確かに普段の折紙の方がデビル(野獣?)のようで、今目の前にいるデビル<折紙>の方がエンジェルに見えた。

 

「あぁ、その・・・・折紙、頼りにさせて貰うな」

 

「ーーーーうん・・・・五河くん」

 

改めて協力を頼むと、ウィザード<士道>とデビル<折紙>は、空の戦場へと躍り出た。

 

「ドラゴン! 他の皆は!?」

 

≪抜かりはない!≫

 

 

 

 

 

 

ー四糸乃sideー

 

ーーーー街に空間震警報のサイレンがけたたましく鳴り響き、シェルターに急ぐ人の波から離れた所から、天宮タワーに走りながら向かう四糸乃&よしのんと七罪がいた。

 

「あいたたたたた・・・・たくっ、ドラゴンってば、もう少し優しくチョップしてくれってのよ・・・・!」

 

「だ、大丈夫ですか? 七罪さん?」

 

「あぁ大丈夫大丈夫。しっかし、『士道に関する記憶』だけを『閉じ』ちゃうなんて、話に聞いた狂三って奴とはまた違った意味で反則的な能力よねぇ・・・・!」

 

「こ、この警報って・・・・十香さんと“六喰さん”でしょうか・・・・?」

 

「多分ね。“ドラゴンから連絡があったし”・・・・」

 

四糸乃の不安そうな声で推察すると、あまり考えたくない事だが、その可能性は十分あるので、七罪も同意するように答える。

 

「よっしー! なっつーん!」

 

と、そんな時、特徴的な名前で呼んでくる人がいた。視線を向けると、弱冠服に黄色い汚れが着いた二亜であった。さらに、別ルートで十香達を探していた他の精霊達も揃っていた。

 

「二亜さん・・・・!」

 

「アンタ、唐揚げ工場は?」

 

「いやー、漸く原稿終えて唐揚げ工場から解放されて家で寝ようと思ったら、“ドラくん”がやって来て頭にチョップを受けたら、『戻った』みたい。見てよ、服にちょっと卵黄が着いちゃってるし!」

 

そう。二亜は勿論。四糸乃&よしのんと七罪も、八舞姉妹に美九も、既にドラゴンによって記憶は戻されていたのだ。

反転が起こった十香に驚き、琴里が「私に任せて」と言ったが、それで大人しくしているような精霊は、あの中には1人もいない。それぞれ別れて十香を探していると、人間体のドラゴンが自分達の頭にチョップをして、その瞬間に記憶が戻り、「天宮タワーに向かうんだ」と指示を受け、全員が向かっていたのだ。

 

「くぅっ! 屈辱である! 士道に関する我らが記憶をこうもあっさりと忘却の海に封じれるとは・・・・! 颶風の巫女たる八舞が、なんたる失態・・・・!!」

 

「無様。自分自身がここまで間抜けだと思うと頭にきます・・・・! 十香とマスター折紙は本能的に士道の事を覚えていたのに・・・・!」

 

プライドの高い八舞姉妹は、六喰に記憶を『閉じ』られた事や、自力でとは言わないが、士道の事を思い出した十香と折紙に対して悔しい気持ちを吐露した。

 

「ですよねー! 私も身体の疼きがやっと分かりましたー! あぁん! 早くだーりんとハニーと折紙さんと合流して! 十香さんを元に戻して! 六喰さんも封印して! 早くハニーに簡単に記憶を奪われた不甲斐ない私に、た~っぷりと『お仕置き』して欲しいですぅ~♥️(できれば今度はお尻の方を・・・・♥️♥️♥️)」

 

ある意味、こちらも本能的に覚えていたのか、自分の身体を抱いてクネクネする美九を、全員は取り敢えず無視して、遠くに聳える天宮タワーに目を向けると、タワーの近くの空で小さな爆発が起こっているのを見て、全員が視線を交わして、コクリと頷くと、タワーに向かって駆け出した。

 

 

 

 

 

ー十香(反転)sideー

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

「小癪ーーーー!」

 

鍵の天使と剣の魔王が、幾度となく交差する。

その度に、1撃1撃に込められた霊力同士が弾け合い、小さな爆発を生み、閃光と衝撃波が辺りに撒き散らされる。

それだけでやく、錫杖から戟へと姿を変えた〈封解主<ミカエル>〉は、超小型の『扉』を生じさせては、十香(反転)の死角から攻撃を繰り出す。

常人であれば剣閃を捉える事さえ不可能な神速の世界。否ーーーー並の精霊でさえ、自分とここまで切り結ぶ事はできないだろう。十香(反転)は、相対する相手に仄かな賞賛を送ってさえいた。

恐らく〈封印主<ミカエル>〉で霊力を『閉じて』いたか、一時的に潜在能力を『開いた』のだろう。まるで固く閉じていた蕾が満開の花を咲かせたかのような、美しき昇華。純粋な殺意と敵意で固められた、必殺の戟。

十香(反転)と六喰が足場としていた展望台のガラスが、戦闘の余波で次々と弾け飛んでいく。十香(反転)は身を翻すと、展望台の更に上ーーーー鉄塔部分に移動すると、六喰が攻撃の手を微塵も緩めず、呻くように叫びを発した。

 

「うぬは、むくを『1人』にするつもりか。また、むくを『孤独』にさせるつもりか。ーーーー殺す。殺す。むくの主様を奪おうとする輩は全て殺してくれる・・・・!」

 

「ふん、ならば吠えずに我が身を穿ってみろ、鍵の女。できるものならば、だがな」

 

「言われずとも・・・・ッ!」

 

十香(反転)の声に呼応するように、六喰が〈封解主<ミカエル>〉を構える。

するとそれに合わせるようにして、十香(反転)の身体を『奇妙な感覚』が襲った。

まるで見えない粘液にでも飲み込まれたかのような感覚と共に、身体がズンと重くなり、手足を動かすのが億劫に感じた。

 

「・・・・何だ?」

 

一瞬六喰の仕業かと思ったがーーーー違う。六喰も身体に『違和感』を覚えたように眉根を寄せ、十香(反転)に「一体何をした」と言う視線を向けていた。

 

「(恐らく、士道、折紙と呼ばれていたあの人間達・・・・もしくはその仲間と言った所か)」

 

とは言え、だからと言って十香(反転)のする事は変わらない。目の前に立つ敵を、屠る。それだけだった。

 

「喰らうのじゃッ!」

 

六喰も同じ考えだったのだろう。空を蹴るように加速し、〈封解主<ミカエル>〉を五月雨の如く繰り出す。十香(反転)は細く息を吐くと、〈封解主<ミカエル>〉の柄を叩くような格好でそれらの刺突を弾いた。

 

「・・・・ふん?」

 

が、十香(反転)はそんな攻防の中、小さく眉をひそめた。

六喰の1撃が、それぞれ必殺の威力を持っている事は違いない。が、この攻撃で勝負を決めようと思っていない、『本命』に至る道を丁寧に敷いているようーーーーと、十香(反転)の勘が告げていた。

十香(反転)が思考していると、六喰に小さな動きがあった。力を込め、〈封解主<ミカエル>〉を抉り込むように強力な刺突を放ってきた。

だが、荒い。十香(反転)は身を捩ると、その1撃を紙一重で避ける。

しかし、次の瞬間。

 

「〈封印解主<ミカエル>〉ーーーー【開<ラータイブ>】!」

 

避けられた〈封解主<ミカエル>〉を捻ると、十香(反転)の背後の空間に『扉』を生じさせた。

 

「ーーーーっ」

 

一瞬、背後から攻撃がくると思ったがーーーー違う。

その『扉』は、まるで呼吸するかのように急激に当たりの空気を吸収し始め、鉄塔に足を着けていた十香(反転)の身がフワリと浮き、空に投げ出される。恐らく、気圧差の大きい空間と『扉』を繋げたのだ。

とは言え六喰は、これで決着が付けれると思ってはいないだろう。これはあくまでも一瞬の隙を生じさせるーーーー。

 

「【開<ラータイブ>】!」

 

さらに六喰の声が響いた瞬間、十香(反転)の頭上に巨大な『扉』が開き、ソコから、直径100メートルはあろう鉄と石材、木材の塊が落下してきた。恐らく、何かの建造物だろう。

 

「ちーーーー」

 

〈暴虐公<ナヘマー>〉を下段に構えて、建造物目掛けて刃を振り抜き、巨大な塊を一閃し、十香(反転)を避けるように2つに分かれて地面へと落ちていく、

が、まさにその時。

 

「〈封解主<ミカエル>〉ーーーー【解<ヘレス>】!」

 

身体スレスレを落下していく建造物と十香(反転)の間に『扉』が生じたかと思うと、ソコから鍵の形をした戟が突き出された。

 

「ーーーー」

 

剣撃を放ったばかりの体勢。寸での処で身を翻すが、一瞬対応が遅れた。

〈封解主<ミカエル>〉は十香(反転)の霊装の端を貫くと、そのまま落下する建造物の1部を突き刺した。

そしてーーーー。

 

「何・・・・?」

 

十香(反転)は思わず眉をひそめた。

〈封解主<ミカエル>〉が穿った巨大建造物が、そして、十香(反転)が纏っていた霊装が、一瞬にして消滅してしまった。

ーーーーただその場から、霧のように消えてしまったのだ。

とは言え、悠長に考えを巡らせている暇はない。『扉』が広がり、ソコから〈封解主<ミカエル>〉の主たる六喰が突撃を仕掛けてきた。

 

「はぁッ!」

 

「面妖な真似を・・・・!」

 

十香(反転)は〈封解主<ミカエル>〉の攻撃を防ぎ、その勢いに乗るようにしてその場から離脱した。

そのまま地面に降り立ち、消し去られた霊装を再度顕現させた。

とは言え、完全に元に戻った訳ではない。如何に精霊とは言え、霊装を形作るには相当量の霊力を要する。1度顕現させた霊装が霊力に還元される事なく失われたと言う事は、そのまま霊力の総量を削られたと言う事だ。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

十香(反転)は油断なく六喰の挙動を監視しながら、自分の身を微かに纏わり付いた霊子の残梓を感じ取っていた。

 

「霊装を構成していた霊子が空気中に残っていると言う事は、消滅ーーーーと言う訳ではなさそうだな。察するに、分解・・・・分子や霊子の結合をその鍵で解除した、と言った所か。成る程、これが貴様の本命か」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

六喰は答えず、十香(反転)と目線を合わせるように地面に足をつけた。

しかし十香(反転)は構う事なく、〈暴虐公<ナヘマー>〉を構えた。

今目の前にいるのは、それに値する相手である。

思考も行動も殺意に塗る込められていると言うのに、本能とも言うべき部分が、冷静に相手の隙を窺っている。言うなればーーーーそう、冷静に、狂っている。

 

「ーーーーふん。童のような顔をしていると思えば、一端の戦士ではないか」

 

十香(反転)は薄い笑みを浮かべると、〈暴虐公<ナヘマー>〉の切っ先を愛しき好敵手に向けた。

しかし、2人が再び切り結ぼうとした瞬間。

 

ーーーーガキィィィィィィィィィンンッ!!

 

ーーーーバシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!

 

〈暴虐公<ナヘマー>〉の刃を竜の斧が受け止め、〈封解主<ミカエル>〉の戟を刃の生えた黒い羽が連携して防いだ。

 

「待ってくれ、2人共!」

 

「お願いします! 落ち着いて下さい!」

 

十香(反転)と六喰の間に割って入るように、ウィザード<士道>・インフィニティとデビル<折紙>が現れた。

と、その時ーーーー。

 

『あ~ぁ、もうおしまい? 士道くんに折紙ちゃんも空気読んで行動して欲しいなぁ~』

 

「「「「っ!」」」」

 

突如、頭上から声が響き、4人がそちらに目を向けると、魔法陣に立ちながらこちらを見下ろしているグレムリンとメデューサ、大量のインプ、そしてーーーー『シスター・ファントム』とその前にいるワイズマンがいた。

 

「ファントムっ!」

 

「こんな時にっ!」

 

『こんな時だから出てきたんだよん♪ さぁて、そっちの十香ちゃんは、久しぶりだねぇ☆』

 

「貴様らは・・・・」

 

十香(反転)は折角の楽しい一時を邪魔されて、不機嫌そうに舌打ちをすると、気を取り直すように〈暴虐公<ナヘマー>〉の柄を握り直した。

 

「どいつもコイツも、邪魔立てをするか。・・・・まあいい。どの道、全員打ち倒すつもりだったからなッ!」

 

叫び〈暴虐公<ナヘマー>〉を振り、漆黒の三日月状の剣閃が、ファントム達の首魁であろうワイズマンに向かう。

が、ワイズマンは片手をスッと突きだして何とーーーー魔王の剣閃を掴み取ったのだ。

 

「・・・・何?」

 

予想外の出来事に、十香(反転)は目を細めた。

 

『ーーーーふん』

 

ワイズマンは十香(反転)の剣閃を、まるで空き缶でも捨てるかのような様子で、ウィザード<士道>へと放り投げた。

 

「ふん!」

 

が、ウィザード<士道>もまた、シャイニングカリバーで剣閃を粉砕し、霊子が塵のように消えた。

 

「ほうーーーー」

 

それを見て、十香(反転)は目の前の相手達の認識を改めた。いくら本気ではないとしても、自分の剣を訳もなく防ぎ、粉砕した『異形』と『魔法使い』。

 

「ふん・・・・本当に、どいつもコイツもーーーー」

 

十香(反転)は視線を鋭くすると、〈暴虐公<ナヘマー>〉を振りかぶり、地面を蹴り、ワイズマンへと向かった。

 

「ーーーー私を楽しませてくれるッ!」

 

『ふん』

 

メデューサが十香(反転)の前に出て、そのまま2人の獲物がぶつかり合い、霊力と魔力の余波が周囲に広がる。

 

「十香・・・・!」

 

「五河くん! 十香さんは私に! 六喰ちゃんを!」

 

デビルはそう叫ぶと、魔王〈救世魔王<サタン>〉に良く似た漆黒の『メタトロンウィンガー』、否、『サタンウィンガー』を翔ばし、グレムリンとインプ達に闇色の光線を放った。

 

≪さて、こちらこちらで、彼女を止めるか!≫

 

「ああ!」

 

ウィザード<士道>とドラゴンは、前髪で目を隠し、ブツブツと小さな声で呟いている六喰に意識を向けた。

 

「六喰!」

 

ウィザード<士道>は仮面を解除して、六喰の名を叫んだ。




戦いは更に泥沼化する!

ー〈仮面ライダーデビル〉ー

もう1人の折紙が変身するとなる。変異型の仮面ライダー。アーマーが漆黒になり、随所が鋭くなった、一見するとダークライダー風の姿。能力はエンジェルと変わらない。武装は〈メタトロンウィンガー〉を黒くし、攻撃力が増した〈サタンウィンガー〉。
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