デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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いよいよクライマックス!


お前は俺で、俺はお前で

ー士道sideー

 

十香(反転)が手助けしてくれたのか、はたまた本当に気まぐれか、あの1撃が活路を開いてくれた。六喰に至る道を作ってくれた事に感謝する士道は身体を浮かし、残った左腕で六喰を力一杯抱き締めた。

身体に上手く力が入らず、もたれかかると言った方が適当だがーーーー構わず、士道は喉を絞り上げた。

 

「六喰! 六喰! 戻ってきてくれ! 駄目だ。ソッチに行っちゃあ駄目なんだ!」

 

士道は、身体に僅か残った力を全て使い尽くすように、六喰の身体を抱き締めながら叫んだ。

ーーーー士道には、分からなかった。

六喰が、何故彼処まで皆を排斥し、士道を独占しようとするのかが。無論、嫉妬や独占欲は誰しもが持つ感情だが、六喰の場合、その大きさが尋常なレベルではなかった。

だが、今は。〈封解主<ミカエル>〉を通じて、六喰の記憶を共有したならば、分かる。

何故ならーーーー。

 

「六喰・・・・お前はーーーー俺だ」

 

士道は、漆黒に染まりつつある六喰に訴えかけるように、そう言った。

そう。六喰は、まさに士道だった。それこそ、最初に六喰の過去を夢に見た際、自分の過去を思い出してしまったのではないかと思う程に。

士道もかつて、本当の母に捨てられ、物心ついた頃には独りぼっちであった。そして五河家に引き取られ、父の、母の、きょうだいのーーーー家族の温かさを初めて知ったのだ。

だからこそ、分かる。

 

「六喰・・・・お前は不安だったんだよな。心細くて、仕方なかったんだよな」

 

士道が掠れた声で言うと、六喰が肩が、ほんの少しだけ揺れた気がした。

そう。六喰は、不安だったのだ。記憶の原点に『愛』と言うものが存在しなかったから。

ある日突然与えられたその温かな物が、心地よくて、眩しくて、でも何処か掴みきれなくて。

それは本当は夢幻のように存在していないもので、ふとした拍子に目を覚ましたなら、直ぐ様消えてしまうのではないかと思えてしまって。

幸せの中にいる筈なのに、常に心の中に一抹の不安が残っていたのだ。

だから家族が、自分以外の誰かと親しげに話していると、自分の知らない世界に属している事を知ると、心が締め付けられるような感覚を覚えてしまう。

所詮自分は、あの人達の人生に接ぎ木された存在であって、あの人達のもっと大切なものは、他にあるのではないだろうか、と。

六喰ほど極端でないにしろ、その感情は、幼い士道も抱いた事があったのだ。

 

「でもな、六喰。・・・・大丈夫なんだ」

 

士道は、霞ゆく視界の中、手探りで六喰の頭を撫でながら、続けた。

 

「そんな心配、いらなかったんだよ。父さんも、母さんも、きょうだいも・・・・どんなに遠く離れたって、繋がっているんだ。だってそれがーーーー家族ってもんなんだから」

 

そう。士道はそれを、父に、母に、そして琴里に教えて貰った。

けれどもし士道が、それを知る前に六喰と同じ力を持ってしまっていたなら、どうなっていたか分からない。もしかしたら、いや、きっと、六喰と同じようになっていただろう。

 

「・・・・、・・・・っ」

 

士道の言葉に、六喰が小さく息を詰まらせるのが聞こえる。

 

「でも・・・・むくは・・・・むくには・・・・もう・・・・」

 

「・・・・俺が!」

 

今にも消え入りそうな六喰の声に答えるように、士道が声を張り上げる。

 

「俺が・・・・お前の、『家族』になる。だから、もう心配しなくていいんだ。何があったって、俺は、お前の事を忘れたりしない。どんな事をしたって、俺は、お前の事を嫌いになったりしない・・・・!」

 

激しく咳き込み、喉の奥から血塊が溢れそうになるが、そんなものには構わず言葉を続ける。

 

「ああ・・・・いや、それだけじゃ足り、ないな。六喰、お前にも・・・・約束してもらうぞ。一方通行の愛じゃ、意味がない。だって俺達は・・・・『家族』なんだからな」

 

「・・・・! 主様、むく、はーーーー」

 

六喰が小さく唇を動かし、声を発する。

するとその瞬間、汚泥のように黒く濁っていた涙の色が、元の透き通った物に戻った。

しかし、未だ、周囲に充満する霊力はその勢いを増している。今がまさに、六喰がこちら側に戻ってくるか否香の瀬戸際、分水嶺である。

 

「六喰・・・・俺が、お前のーーーー『最後の希望』だ」

 

六喰が士道を受け入れてくれたかどうかは分からない。しかし、時間も方法も無い。最後の力を振り絞って、士道は六喰の顔を上げさせるとーーーー。

 

「んっ・・・・」

 

「ーーーーーーーー」

 

その唇に、自分の唇を触れさせた。かっけつの後の血の味のキス。愛を語らうには閉じ通り少々血腥過ぎる口づけ。

士道は祈るような気持ちで、両の目をキュッと瞑った。

するとやがて、触れた唇を介して、何か温かな物が士道の身体に流れ込んでくる。

いくども繰り返した封印の感覚。六喰の身体から、霊力が士道へと移っていく。同時に、六喰の纏っていた霊装や、背後に顕現しつつあった鍵型の魔王が輝きを失い、空気に溶け消えていった。

 

「・・・・っ、六喰!」

 

「あ・・・・う・・・・」

 

一糸纏わぬ姿となっあ六喰が、力なくもたれ掛かってくる。

士道は限界を越え、今にも気を失いそうになるのを堪えながら、地面にゆっくりと降り立つと、姿勢を崩し、その場に仰向けに倒れしまった。

 

「げふっ・・・・!?」

 

背を、そして後頭部を強かに打ち付け、さらに傷口に振動が与えられ、士道は情けない声を上げた。

何とか天使の力で応急措置をしているが、普通ならば致命傷ーーーー否、即死していてもおかしくない大怪我だ。のたうち回らないだけ褒めて欲しい位だ。

 

「・・・・、・・・・」

 

泣き疲れたのか、力を使い果たしたのか、士道の血に濡れた胸の上で、六喰がスゥスゥと寝息を立てる。

士道はそれを見ながら、大きく息を吐き、六喰の頭をポンポンと叩いた。

 

「六喰・・・・ありがとうな、俺を、信じてくれて・・・・」

 

しかし、途轍もない大仕事を終えたばかりだが、まだ終わりじゃない。まだ十香(反転)の封印もあるし、ワイズマン達ファントムをどうにかしないといけない。

と、士道がそう思って天を仰ぐとーーーー。

 

ーーーードゴォォォォォォォォォォォォンンッ!

 

ーーーーズガァァァァァァァァァァァァンンッ!

 

空に2つの大きな爆発が炸裂した。

 

「やったん、だな・・・・真那・・・・ドラゴン・・・・!」

 

察しがついた。ビーストH<真那>とドラゴンが、二亜と六喰のファントムを撃ち破ったのだろう。

と、一瞬安堵した士道の視界に広がった空から、士道目掛けて何かが凄まじいスピードで落下してきた。

 

「な・・・・ッ!?」

 

思わず目を見開いて驚愕の声を上げる士道だが、その飛来物の正体は分かっている。

 

ーーーー十香(反転)だ。

 

十香(反転)は地表の寸前で急速に減速、士道の頭の側に降り立つように静かに着地した。闇色のスカートが風にはためき、士道の視界を撫でる。

 

「ーーーーふん。少しは見処があるかと思ったが、結局はその様か、女」

 

「十、香・・・・!」

 

今し方までワイズマンと切り結んでいた十香(反転)から、胸の上で眠る六喰を守るように姿勢を変えた。

 

「一応・・・・ありがとうよ、お前のお陰で、六喰を止める事が・・・・できた・・・・」

 

「ふん。知った事か。どうせ2人まとめて屠るのだからな」

 

言って、十香(反転)が剣呑な目を向けてくる。士道は力なくそれに視線を返した。

霊力を封印され、意識を失った六喰に、十香(反転)に抗う力などある筈がない。今の士道も、意識を保っているのが奇跡と言える程の満身創痍だ。

 

「くーーーー無事!?」

 

「そこまでよ十香!」

 

「兄さま!」

 

と、十香(反転)から数秒遅れて、少し離れた位置にデビル<折紙>とイフリート<琴里>とビーストH<真那>が降り立つ。

しかし、それぞれのアーマーも傷や小さな煙を上げている。幹部級と巨大ファントムを相手取っていたのだ。苦戦は当然であろう。

 

「・・・・・・・・」

 

十香(反転)が、デビル<折紙>の方を一瞥してから辺りを睥睨するように見回し、再び士道と六喰に視線を戻してくる。

士道は、背中がジットリと湿るのを感じた。

それはそうだ。先程の1撃は、十香(反転)にとって見ればほんの気紛れ。同じように、今十香(反転)が気紛れを起こすだけで、士道は、そして何より六喰や折紙までもが、殺されてしまう可能性がある。

 

「く・・・・」

 

士道は六喰の身体をできるだけ優しく地面に横たえると、目眩と痛みに耐えながら立ち上がろうとした。

確かに身体の状態は最悪。デンジャラスゾンビな気分だが、十香(反転)を元に戻せるのは士道だけである。気力だけで身体を持ち上げ、膝を立てる。

 

「ぐ・・・・う、お・・・・」

 

「ーーーーふん」

 

十香(反転)はそんな士道を冷め切った目で見下ろすと、そのまま腰を折り、士道の胸倉を掴み上げた。

 

「ぐあ・・・・っ!?」

 

「五河くん!」

 

「士道!」

 

「兄さま!」

 

『士道(さん)!』

 

「だーりん!」

 

「少年!」

 

デビル<折紙>達や、遠くから〈封解主<ミカエル>〉の侵食が収まったのか、四糸乃達も駆けつけ、十香(反転)に攻撃を仕掛けようとした。

が・・・・。

 

『待て』

 

魔人形態のウィザードラゴンが全員の前に降り立ち、片手を上げて止めた。

 

『ドラゴン(さん/ハニー)!?』

 

『黙って見ていろ』

 

ドラゴンはそう言ってから成り行きを見守る。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・///」

 

十香(反転)は一瞬、ウィザードラゴンを一瞥すると、うっすらと頬を紅くしてから、士道に再び目を向けた。

痛みに顔をしかめる士道さに構わず、その身体を軽々と吊り上げた。

そして地面に寝転んだ六喰をチラと見、冷たい声を発してくる。

 

「ーーーー折角の戦士を、童にしたな」

 

「ぐ・・・・」

 

剣のような眼光に射竦められる。

が、次の瞬間、十香(反転)はフウと息を吐くと、何処か寂しげに言葉を続けた。

 

「・・・・興が冷めた」

 

「えーーーー?」

 

その、らしくない調子に、士道は思わず目を丸くした。

しかし、その驚きはすぐに、さらに大きな驚愕によって塗り潰される。

一瞬ドラゴンをチラ見した十香(反転)が、士道の胸倉を引き寄せたかと思うと、士道と自分の唇を押し当てたのである。

 

「んん・・・・ッ!?」

 

『きゃーーーーっ!?』

 

士道と、それを目撃した精霊達の大半の声が重なり合うが、十香(反転)は狼狽える様子も見せず、士道の胸倉を掴んでいた手を離した。

 

「・・・・痛っ!」

 

臀部を強かに打ち付け、その振動と痛みが全身を襲う。しかし士道は顔をしかめながらも、十香(反転)から視線を外す事ができなかった。

ーーーー十香(反転)が纏っていた闇色の霊装が、キラキラと輝く光の粒となって、風に吹かれていく。

十香(反転)はこれまで通り冷淡な、しかし何とも不思議な色を映す双眸で士道を見下ろしながら、小さく呟いた。

 

「ーーーー私を」

 

「え・・・・?」

 

「『十香』を、あまり、悲しませるな」

 

十香(反転)はそう言うと、プツリと意識が途切れたかのように、その場にガクンと倒れそうなる。

 

『ーーーーおっと』

 

「と、十香っ!?」

 

が、寸前でドラゴンが十香を抱き止めると、ゆっくりと横たわらせる。

 

ーーーーパチン!

 

そして、ドラゴンが指を鳴らすと十香と六喰の身体を魔法陣が通過し、十香はいつもの学校の制服に、六喰は時代劇に出てくるお姫様のような和服になった。『ドレスアップ』の魔法だろう。

士道が十香の顔を覗くと。

 

「ん・・・・むぅ・・・・」

 

その、険の取れた、穏やかな寝顔を。

顔の造形自体は、先ほどまでも何ら変わらっていない。しかし、ソコから醸し出される雰囲気が、皆が良く知る十香に戻っていた。

フウと安堵の息を吐く士道。

 

「五河くん、大丈夫!?」

 

「ぎゃー! 兄様の腕がーっ!!」

 

そんな様子を見てか、変身解除した折紙達が駆け寄り、真那は目をひん剥いた。琴里は急いで医療用顕現装置<メディカル・リアライザ>の準備をさせる為に〈フラクシナス〉に連絡を、四糸乃達は士道のケガを見て茫然自失してしまっていた。

 

『ーーーーどうやら、今回の騒動はこれで終わり、だな』

 

「ああ、そうだな・・・・」

 

と。そこで、士道の言葉は強制的に止めさせられた。

ーーーー不意にその場に起き上がり、士道の唇を塞いできた六喰によって。

 

「ぷ・・・・っ、む、六喰!?」

 

「・・・・むふ、油断大敵じゃの、主様」

 

驚愕の色に表情を染めた士道を六喰はよろめきながらも、不敵な笑みを浮かべていた。

 

「い、一体何を・・・・」

 

「今、十香とキスをしておったじゃろう」

 

「え・・・・」

 

六喰の言葉に、士道はピクリと眉を揺らした。

 

「(まさか、また俺を独占しないと気が済まないって言うんじゃーーーー)」

 

しかし六喰は、そんな士道の考えを見透かしたようにクツクツと笑った。

 

「安心せよ。もう・・・・大丈夫じゃ。士道が何をしようと、むくはもう不安がる事はない。何しろ・・・・『家族』じゃからの//////」

 

言って六喰が、少し恥ずかしそうに頬を染める。

それを見て、士道は頬を緩めながら細く息を吐いた。

 

「六喰・・・・」

 

「じゃが」

 

士道の言葉を遮るように言うと、六喰は今し方口づけした唇を指でなぞる少し色気のある仕草をした。

 

「これくらいのスキンシップ構わんじゃろう? 『家族』じゃからの」

 

そう言って、イタズラっぽく笑った。

 

「・・・・ええと(・・・・『家族』って、なんだっけドラゴンさん?)」

 

『(知るか行き当たりばったりのアホんだら。自分の言った言葉なのだから『責任』を持て。このセアカゴケグモ)』

 

「えっ? どういう事でやがります? 真那に妹ができたんでやがりますか?」

 

≪背丈的には真那が姉っぽいの≫

 

≪でも、あの膨らみを見るとよぉ≫

 

≪真那ちゃんの方が妹かもね≫

 

≪つか、何かややこしい事にやったんじゃないか?≫

 

≪ンモ≫

 

少しだけ、色々と不安になってきた士道であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~士道が六喰の封印をする少し前~

 

 

 

 

 

 

ー十香(反転)sideー

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

十香(反転)と、ワイズマンは、空中で激しい剣激を繰り広げていた。しかも、十香(反転)が魔王〈暴虐公<ナヘマー>〉を神速とも言える速度で、命を切り落とす必殺の刃で斬りかかる。並の魔術師<ウィザード>ならばとっくに細切れになっていても不思議ではない。

だが、

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ワイズマンはその空中から数ミリも動かず、十香(反転)の剣撃を全て防ぎ、いなし、殺していき、更に十香(反転)の攻撃後の僅かな隙から、まるで針の穴を通すような刺突で、絶対の鎧して城である霊装に傷をつけていく。

 

「(・・・・・・・・何だ? コイツは・・・・?)」

 

十香(反転)は怪訝そうにワイズマンを見据える。霊装を傷つけた事ではない。目の前の異形のーーーー“異質さ”にだ。

鍵の精霊は殺気や怒気、そして闘気がヒシヒシと感じる一種の心地好さがある戦いだった。

蛇の異形からは氷のように冷酷なまでの殺意が吹雪のようち、死神の大鎌のように、こちらの命を刈り取ろうとするのを感じた。

 

「(ーーーーしかし、目の前のこの白い異形は何だ? 殺気も殺意も、怒気も闘気もない。まるでーーーー“人形を相手にしているような”・・・・)」

 

そう。ワイズマンから感じる空虚な気配が、十香(反転)に奇妙な不気味さを感じさせていたのだ。

1撃を塞がれ、距離を空ける十香(反転)が、ワイズマンに向けて声を発する。

 

「貴様・・・・一体何だ?」

 

『ふっ』

 

ワイズマンは十香(反転)に冷笑を浮かべたかと思うと、指をパチン! と鳴らした瞬間ーーーー小さな魔法陣が空中に幾つも現れ、十香(反転)をドーム状に包むと、その魔法陣から紫色の雷撃が放たれた。

 

「くっ!」

 

十香(反転)〈暴虐公<ナヘマー>〉を振るって魔法陣を破壊するが、間に合わなかった雷撃を浴びて顔をしかめる。

身体が痺れた十香(反転)を尻目に、ワイズマンはウィザード<士道>の方を見てすぐーーーー。

 

ーーーードゴォォォォォォォォォォォォンンッ!

 

ーーーーズガァァァァァァァァァァァァンンッ!

 

2体の巨大ファントム達が爆散したのを見た。

 

『ーーーーここまで、か。まぁ、それなりに楽しめたな』

 

「待て・・・・逃がすと、思うのか?」

 

痺れた身体を動かす十香(反転)だが、ワイズマンは気にも止めず、転移魔法陣を展開した。

 

『生憎だが、私は君にあまり興味がない。ーーーーまた、遊んであげよう』

 

そう言って、ワイズマンは魔法陣を潜って戦場から消えた。

 

「~~~~~~~!!」

 

自分を歯牙にもかけていないワイズマンの態度が、プライドがチョモランマ並に巨大な十香(反転)に、とてつもない屈辱を与えた。

 

 

 

 

 

 

 

ー折紙sideー

 

そしてここに、目の前の敵に『違和感』を感じている少女、デビル<折紙>がいた。

 

「(何なの・・・・? このグレムリンって・・・・?)」

 

デビル<折紙>は『サタンウィンガー』を駆使して、加速するグレムリンを狙い撃っていた。

 

『はっはぁ! やるね折紙ちゃん♪』

 

グレムリンはまるで遊具で遊ぶ子供のように無邪気な態度だった。しかし、それではない。

 

「(何なの? この『違和感』・・・・?)」

 

デビル<折紙>の『魔獣ファントム』との戦闘経験はそれほど多くない。しかし、目の前にいるグレムリンに、これまで遭遇してきたファントム達とは違う、奇妙な『違和感』を感じた。

 

「ーーーーグレムリン・・・・!」

 

『もう、できる事なら、『ソラ』って呼んでよぉ!』

 

グレムリンが文句を言うが、デビル<折紙>は構わず問いかける。

 

「あなたは、何が目的で戦うの?」

 

『魔獣ファントム』に今さらこんな質問をするなど馬鹿らしいが、デビル<折紙>は思わずそう言った。

グレムリンは、何故だろうか、ニヤリと笑みを浮かべてような声を発する。

 

『僕には、『希望』があるんだ』

 

「っ!」

 

絶望の化身である『魔獣ファントム』が、『希望』を口走った。ソコにデビル<折紙>は、『違和感』がさらに大きくなるのを感じた。

がーーーー。

 

ーーーードゴォォォォォォォォォォォォンンッ!

 

ーーーーズガァァァァァァァァァァァァンンッ!

 

『あらら、もう終わりか。ーーーーじゃあね折紙ちゃん☆ 君の髪の毛がもう少し長かったら、遊んであげるね♪』

 

そう言って、グレムリンの背後に転移魔法陣が展開され、グレムリンはそれを潜る。

 

「・・・・五河くん・・・・!」

 

敵を逃がすなんて愚行だが、腕を飛ばされた士道が気になり、デビル<折紙>は士道の元へと飛翔した。

 

 

 

 

ー琴里sideー

 

「くっ! ふっ! はぁっ!」

 

『っ!』

 

イフリート<琴里>はメデューサとぶつかり合いながら、カマエルブレイカー・バズーカモードで砲撃し、メデューサは髪の蛇達を伸ばして目の前で渦の形をした盾で防御した。

 

「たぁぁぁぁっ!!」

 

が、高速で近づいたイフリート<琴里>が、蛇の渦を破り、メデューサに刃を叩きつけようとする。

が、メデューサがか弱い女の子のように怯えた声を発した。

 

『ーーーーまた私の人生を奪うの!? この化け物!!』

 

「っっ!!!?」

 

メデューサの演技だと言うのは分かっている。しかし、その言葉が、『稲森美紗』の言葉のように感じたイフリート<琴里>の身体をビクッ! と、制止させた。

 

『ーーーーフッ』

 

メデューサが頭の蛇達をイフリート<琴里>へと向かわせると、イフリート<琴里>の鎧の隙間に噛みつき、毒を注入した。

 

「ああああああっ!!」

 

身体中にメデューサの毒が侵食していく。

 

≪狼狽えるな。直ぐに解毒する≫

 

ドラゴンからの念話が聞こえると、経路<パス>を通して、霊力が体内を駆け巡り、魔力の毒を中和していく。

 

「くっ・・・・!」

 

『イフリート。私は一応、貴様に感謝しているのだ』

 

「何ですっ、て?」

 

『貴様が、私の『ゲート』の人生を壊してくれたから、私はこの世界に顕現できた』

 

「っ!・・・・黙れ・・・・!」

 

メデューサか『稲森美紗』の姿に戻りながら発する言葉に、イフリート<琴里>は息を詰まらせ、『カマエルブレイカー』を持つ手がフルフルと震えながら、堪えるように声を震わせる。

 

『ーーーー感謝しているぞ、イフリート』

 

「黙れ黙れ黙れ黙れ!! 黙れぇぇぇぇっ!!」

 

メデューサの言葉を遮るように怒鳴ると、カマエルブレイカー・バズーカモードを構え、最大出力の焔の奔流を発射した。

 

ーーーードゴォォォォォォォォォォォォンンッ!

 

ーーーーズガァァァァァァァァァァァァンンッ!

 

それと同時に、巨大ファントム達が爆散した。

 

『ちっ』

 

それを確認したメデューサが、舌打ちをすると、転移魔法陣を展開して、その場から去った。

目標を失った焔の奔流は、そのまま空中で鎮火した。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

 

まだ終わっていない。が、イフリート<琴里>はメデューサに言われた言葉が、脳裏に焼き付いてしまった。

 

【貴様が、私の『ゲート』の人生を滅茶苦茶にしてくれたから、私はこの世界に顕現できた】

 

【ーーーー感謝しているぞ、イフリート】

 

「ーーーーうっ、うぅっ・・・・!」

 

仮面越しから、イフリート<琴里>は嗚咽を漏らしていた。

 

 

 

 

 

 

ー真那sideー

 

『Oooooooooooooooooooo!』

 

シスター・ファントムが雄叫びをあげると、周りに浮遊していた本が開き、ソコから黒い影の異形が次々と現れる。

 

「うへぇ、またゾロゾロと出てきやがりましたね!」

 

≪真那! 儂らも出るぞ!≫

 

「行くでやがりますよ!」

 

ビーストH<真那>は『ビーストキマイラ』の姿が掘られた『リング』を取り出して、バックルに嵌めた。

 

[ミラクル! ゴー!]

 

「ふっ!」

 

『ガァオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンッ!!』

 

ビーストH<真那>に魔法陣が浮かび、ビーストに戻ると魔法陣から、ビーストキマイラが飛び出し、影の異形達を蹴散らしていく。

 

『行け! お前達!!』

 

ライオンビーストが叫ぶと、ファルコ、ドルフィン、カメレオン、バッファの頭部が飛び出て、それぞれの魔力の光の身体を形成すると、他の影を翼で切り裂き、尾びれで叩き、舌で凪ぎ払い、角の突進で粉砕していく。

そして、ライオンビーストがシスター・ファントムに襲い来ると、多方向から、ファルコ達を襲いかかり、シスター・ファントムを攻撃する。

 

『Oooooooooooooooooooo!!』

 

『真那! これでキメじゃ!』

 

「あいよ!」

 

[ハイパー! GO! ハイッ ハイッ ハイッ ハイパー!]

 

「さあ! ご飯の時間でやがります!」

 

直ぐにビーストキマイラ達がビースト‹真那›の中に戻ると同時に、ビーストHに変わり、ミラージュマグナムを構えて必殺技を放つ。

 

[ハーイパー! マグナムストライク!]

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

ーーーーガォオオオオオオオオオオオオオオオ!!

 

『OOoooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!』

 

ーーーー『シューティングミラージュ』

 

ーーーードゴォォォォォォォォォォォォンンッ!

 

シスター・ファントムが爆散した。

 

「ふぅ~・・・・」

 

ビーストH<真那>はミラージュマグナムの銃口に息を吹き掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

ードラゴンsideー

 

そしてここは魔人形態となったドラゴンとゾディアック・ファントムの戦い。

 

『Kiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii!!』

 

ゾディアック・ファントムが両手の鍵で空間に『扉』を開け、ソコに向けて光弾を放つと、ドラゴンの死角に開いた『扉』から、光弾が出てきた。

 

『ふん!』

 

が、ドラゴンはおさげのように垂らしていたドラゴンテイルを軽く振ると、迫る光弾を霧散させた。

 

『Kiiiiiiiiiiiii!!』

 

ゾディアック・ファントムは更に無数の『扉』を開くと、ドラゴンの周囲にも『扉』が開き、両手の鍵から光弾を次々と乱射する。

ドラゴンに迫る無数の光弾が迫りくる。

 

『ーーーーはぁぁぁぁっ!!』

 

ドラゴンは身体から魔力を放出して、光弾を打ち消す。   

 

『Kiiiiii!?』

 

ゾディアック・ファントムは驚いたように声を上げるが、ドラゴンは一瞬、ヒュンッ、と消えると、ゾディアック・ファントムの横顔が拳を叩き込んだ。

 

『Kiiiiiiiiiiiiiii!?』

 

ゾディアック・ファントムが悲鳴を上げる。

 

『Kiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii!!』

 

ゾディアック・ファントムは両手の鍵を鉾のような形に変えると、2つの『扉』を開いてソコに両手を挿し込んだ。六喰の身体から生まれたファントムだ。恐らくあの鍵を差し込まれたら、身体の箇所が消えてしまう必殺の1撃だろう。

しかし、ドラゴンは平然とし、死角から迫る2つの鉾がドラゴンの身体を挿そうとした次の瞬間ーーーー。

 

『ーーーー狙いは良いが、害意が隠せていないな』

 

何と、ドラゴンテイルで鉾の1本を絡め封じ、片手でもう1本の鉾を止めていた。

 

『Kiiiiiiiiiii!?』

 

『この『扉』が、貴様の弱点でも、あるぞ!!』

 

ドラゴンが2つの『扉』に火炎と雷撃を放つと、『扉』の向こうにいたゾディアック・ファントムの両腕を破壊した。

 

『Kiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii!!!』

 

両腕が破壊され、悲鳴を上げるゾディアック・ファントム。

 

『これで、フィナーレだ』

 

ドラゴンが全身に魔力を纏って突撃した。

 

ーーーー『ドラゴンダイバー』。

 

ゾディアック・ファントムの身体に大穴が開き、ソコから亀裂が走っていき、

 

『Kiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii!!!!!』

 

ーーーーズガァァァァァァァァァァァァンンッ!

 

爆散した。

 

『ふぃ〜・・・・さて、向こうにも急がねばな』

 

一瞬息を吐いたドラゴンは、士道に向けて剣を振るっていた十香(反転)を見据えると、ドラゴンウイングを羽ばたかせた。

 

 




次回で、六喰編が終わります。
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