デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
ー士道sideー
「・・・・と言う訳よ」
20分後、落ち着きを取り戻した琴里が説明を終えて、リビングに居並んだ精霊達を見回す。四糸乃と七罪が、少し緊張した様子でコクンと喉を鳴らした。しかし、それも当然だ。
学校に、『最悪の精霊』と呼ばれる時崎狂三が現れた事。そしてーーーーその狂三が、士道に勝負を持ちかけていた事。
無論、十香に折紙、八舞姉妹は学校にいたし、令音も〈フラクシナス〉からそれを見ていた為詳しい事情を知っていたのだが、来禅高校に通っていない二亜に四糸乃、六喰と七罪と美九はそうはいかないので、今後の事を考えて、皆にも事情を説明しておこうと考えたのだ。
「一応、注意をしておいてちょうだい。狂三の目的は精霊の霊力。皆の前に現れる可能性も、ゼロとは言えないから」
「は、はい・・・・」
「ふむん」
「・・・・分かった。家から出ない」
怯えたような様子で膝を抱く七罪に群がるプラモンスターズ。その様子に琴里が苦笑する。
「いや、ソコまでとは言わないけど・・・・一応、〈ラタトスク〉でも警戒は強めておくし」
以前、エレンが五河家に不法侵入していたのを期に、〈ラタトスク〉は警備を上げていた。しかし、あの狂三を相手に〈ラタトスク〉の警備が役に立つかは、甚だ疑問ではあるが。
すると七罪の隣に座っていた少女ーーーー六喰が、唸るように小さな声を発した。
「ふむん・・・・しかし解せぬの」
言って、可愛いらしい仕草で首を傾げる。先日士道が軽く毛先をカットしたが、それでも精霊の中で最長の髪をしている。
「ん? 六喰、何がだ?」
「精霊の霊力を求むる・・・・まあ、それは良い。じゃがその狂三とやらは、その霊力やドラゴン‹おじ様›の力で何をしようとしておるのじゃ? まさか、力そのものを有する事が目的という訳ではあるまい」
「それは・・・・」
『・・・・・・・・』
言われて、士道はウウムと唸り、ドラゴンも思案を巡らせるように黙る。
確かに六喰の言う通り、狂三が士道の前に姿を現してから、既に半年以上。敵であった事もあれば、力を貸してくれた事もある。
しかし、彼女が力を集めて何をしようとしているかは、1度も聞いた事がない。まぁ、仮に聞いたとしても、あの狂三が素直に教えてくれたのかと問われれば返答に困る所だが。
「ふっ、我は分からなくもないがな。精霊として生を受けた以上、『最強』を求めるのは道理ではないか!」
耶俱矢が、ピシッと格好いいポーズを取りながら言う。隣に座った夕弦がハアとため息を吐いた。
「嘆息。狂三が耶俱矢くらいシンプルであれば分かりやすくて良いのですが」
「ばっ、馬鹿にすんなし!」
「否定。馬鹿になどしていません。世の中シンプルな物が1番強いのです。シンプル・イズ・ベストです。つまり耶俱矢は最強です」
「え、ホント!? く、くく・・・・! であろう! 夕弦も分かっているではないか!」
耶俱矢が再び、得意気にポーズを決める。夕弦がチラと士道とドラゴンに「でしょう?」と言うような視線を向けてきた。何と応えたら良いものか分からず、曖昧な苦笑を浮かべてお茶を濁す。
と、ソコで士道達は、いつもなら面白可笑しく話に乗っかってくる二亜が、何やら思案を巡らせるように真面目な顔をしているのに気づいた。
「・・・・? どうした二亜、コロッケ工場に行き過ぎた恐怖で可笑しくなったか?」
「ふっふっふっふっ、甘く見て貰っちゃ困るぜ少年。もうコロッケ工場の恐怖には打ち勝ったよ!」
『では唐揚げにされる工場にまた連れて行かれても、大丈夫だな?』
「ーーーーいや、まだ唐揚げは流石に・・・・ってこら」
士道の言葉にドヤ顔を浮べ、ドラゴンの言葉に顔面蒼白になってブルブル震える二亜がすぐに正気に戻り、ビシッと手首のスナップを効かせツッコミを入れてくる。士道はホウと安堵の息を吐いた。
「良かった。いつもの二亜だ」
「どーいう意味よ少年ー?」
「いや、つい・・・・」
二亜が半眼になって言うと、士道は頭を下げた。
「まあ良いけどさ。それよりアタシ、その狂三‹くるみん›の目的ってやつにちょーっとばかし心当たりがあってさー」
「・・・・! な・・・・!」
二亜の言葉に、琴里が驚愕の表情を作る。二亜はさもあらんといった様子で肩を竦めた。
「そりゃ驚くよねぇ。ごめんごめん、隠していた訳じゃないけど・・・・」
「二亜、あなた狂三の事を『くるみん』って呼んでるの・・・・!?」
「って、そっちかーい!」
二亜が再びビシッとツッコミを入れると、士道だけでなく、他の精霊達もパチパチと拍手をした。
「ああもう妹ちゃんまで! 皆のアタシに対するイメージは何なのさー!」
不服そうに唇を尖らせる二亜だが、士道達は苦笑しながら顔を見合わせる。
「だって・・・・」
「ねぇ・・・・」
『日頃の行いの賜物だ』
「んもー!」
プンスカ! プンスカ!と、漫画のような仕草で手をバタつかせる二亜を宥めるように、琴里が声を発した。
「悪かったわよ。・・・・それより、本当なの? 狂三の目的を知っているって。それって、完全な〈囁告篇帙‹ラジエル›〉を持っていた時に調べたって事?」
「ん・・・・ああ、そうね、半分当たりって感じ」
二亜は気を取り直すようにコホンと咳払いをし、話を続けた。
「確か、少年に霊力を封印される前、妹ちゃんから漫画の売り上げ勝負を受けてすぐだったかな。・・・・あの後に『人類最凶の編集者』に原稿を渡して、部屋で恐怖に震えていたアタシの目の前で、突然影の中から黒い精霊が出てきてねぇ」
「! 二亜、お前、狂三と会っていたのか!?」
「しかも話を聞く限り、偶然って感じでもなさそうね。一体何の為に・・・・」
士道と琴里が驚愕の声を上げるが、二亜は落ち着いて、と言うように手の平を広げ、後を続ける。
「何かねー、アタシの〈囁告篇帙‹ラジエル›〉で調べて欲しい事があったみたい。やー、正直突っぱねてやろうかと思ったんだけど、くるみんの天使調べたてみたら、奇妙な冒険シリーズのラスボス達くらいに超強そうでさー。ああこりゃ勝てないわと思って素直に調べてあげちった。ヘタレですみません」
『いや気にするな。二亜の天使はサポート特化の能力だ。〈刻々帝‹ザフキエル›〉と渡り合うのは分が悪い』
「・・・・いいえ、賢明な判断よ。それで、一体狂三は何を知りたがってたの?」
琴里が問うと、二亜はクイと眼鏡の位置を直しながら言う。
「ーーーー始原の精霊の、情報」
「始原の・・・・」
「精霊・・・・?」
『・・・・・・・・』
二亜の言葉に、精霊達が頭に疑問符を浮べ、首を傾げた。
「うん。30年前、この世界に初めて現れたって精霊よ。くるみんは、それが現れた正確な位置と日時、うんでもってその力を知りたがってた見たい。
ーーーーソイツを、ぶっ殺す為に」
「な・・・・」
『・・・・・・・・』
二亜の口からもたらされた不穏な情報に、士道は思わず眉根を寄せ、ドラゴンは視線を鋭くした。
「殺す・・・・? 始原の精霊を? それが狂三の目的だって言うのか?」
「少なくとも、アタシが知ってる範囲でね。まあ尤も、どうして殺したいかまでは分かんないけど。あの時は〈囁告篇帙‹ラジエル›〉をブン取られるなんて夢にも思わなかったからなー。・・・・あれ? 何かくるみんに情報を教えたその後、恐ろしい事が起こって、宇宙的な何かを見た気がしたんだけど思い出せないーーーーアレ? 何でアタシの身体、震えてんの・・・・?」
何やら二亜がガタガタと震え始めた。
か、琴里はそれを一旦無視して、内包を解いたチュッパチャップスを口に放り込み、その棒をピコピコと上下に動かしながら難しげな顔を作った。
「『始原の精霊を殺す』・・・・か。でも、始原の精霊の力を知りたがってたのは分かるとして、この世界に現れた位置と日時まで知りたがったって言うのは・・・・」
「ーーーー30年前の時点で、その精霊の存在を『無かった事』にする為」
琴里の呟きに答えるように、折紙がそう言った。琴里は驚いたように顔を上げ、折紙は静かな口調で答える。
「え? 何か知ってるの?」
「そう言うわけではない。でも、以前ーーーー『改変前の世界』で私が狂三を頼った時、彼女はそんな事を言っていた」
折紙の言葉に、琴里は推測を並べる。
「そうか・・・・狂三の天使〈刻々帝‹ザフキエル›であれば、時間を超える事ができる。その為に士道とドラゴンの霊力と霊力と魔力の混合エネルギーが必要った訳か。そして30年前に現れた『始原の精霊』を殺して、その事実を歴史から消し去る・・・・」
ソコまで言った所で、琴里は難しげな表情をして頭をワシワシとかいた。
「アア、もう。分からない事が増えたわね。狂三が霊力を求めるのは過去に戻る為の【12の弾<ユッド・ベート>】を使う為で・・・・その目的は、『始原の精霊を殺す為』? 一体何でそんな事を」
「ソコから先は推測の域を出ない。情報が少ない段階で深入りすると危険。今何が分かっていないかの輪郭がハッキリしただけでも意味はある」
折紙が淡々と、しかしジッと琴里の目を見つめながら言い、琴里は溜め息交じりに首を前に倒した。
「・・・・ええ、そうね。忠告感謝するわ」
心を落ち着かせるように深呼吸をし、トントンと自分の額を小突く。
「でも、狂三と戦う為には、早めにその点をハッキリさせておかないといけないわね。こっちの目的がバレてるのに、向こうの希望は霧の中って言うんじゃあ、幾ら何でも不利過ぎるでしょう」
「う・・・・(バシィイイイイインンッ!!) ぬぐぅおおああああああああああっっ!!」
琴里の言葉に、士道が汗を滲ませる。相手にデレた方が負け、と言う勝負において、相手が求めている事を知っているのは強力なアドバンテージだ。
自分の軽率さを改めて自覚し、苦々しく顔を歪める士道の脳天に、ドラゴンのド突き(強)が炸裂した。
『いつもより0.5倍の情けない顔をするでない。あの状況では他に選択肢が無かったのだ。やってしまった事をウジウジクヨクヨしている暇と思考があるなら、これからどうする事かに使え』
「あ、ああ・・・・!」
痛みに悶えながら、士道は気合いが入ったかのように首肯する。ーーーーこの期に及んで不安そうな顔をするとは、自分はまだまだだと痛感する。
と、ソコで士道は、ある事を琴里に聞いた。
「そう言えば琴里、あの時の通信途絶って、一体何があったんだ?」
「ああ・・・・」
琴里が、何やら難しげな顔をして腕組みする。
「そう言えばまだ話してなかったわね。・・・・ちょっと〈フラクシナス〉のレーダーに変な反応があったのよ」
「変な反応?」
「ええ。俄には信じられないんだけれど・・・・」
「ーーーーそれは、私がお話ししやがります」
と。琴里の言葉を遮るように、後方からそんな声が聞こえてくる。
士道はその声の方向に顔をやり、そこにいた人物を見て目を丸くした。
「真那!? それに仁藤さんにキマイラズまで!?」
士道の実妹を名乗る崇宮真那と、〈国安0課〉の仁藤功平、そしてその仁藤の肩に乗っているビーストキマイラであった。しかし、真那の方はその身体のアチコチに湿布と絆創膏を貼り付けていた。
「いつの間に・・・・ってそれより、どうしたんだよその傷! 大丈夫なのか!?」
「大した事ねーです。かすり傷ですよ」
真那が笑いながらヒラヒラと手を振ると、琴里が不機嫌そうにその様を睨み付けた。
「あなたねぇ・・・・メディカルポッドに入ってなさいって言った筈だけど? 仁藤捜査官。あなたもどうして」
「申し訳ありません。しかし、口頭で説明すべきと判断したのです。ご安心下さい、話が終わり次第すぐにメディカルポッドに連れ戻しますから」
仁藤は琴里の視線を軽く受け流し、空いていた席を開けると真那がその席に座り、仁藤は執事の如くその後ろに控える。何故だろうか、〈フラクシナス〉の艦橋にいる時の琴里と神無月と似たような感じなのに、何かこちらの方が絵になる風景であり、大半が苦笑を浮かべた。
そんな周囲の心境に構わず、席に座った真那はスッと笑みを消し、真剣な眼差しで士道達を見つめてくる。
「ーーーー兄様達に、伝えておきたい事がありまして」
「伝わっておきたい事・・・・?」
「ええ。兄様達が〈ナイトメア〉ーーーー時崎狂三と屋上で話をしている時、何が起こっていたのかを」
真那が話を始めた。
ーーーー士道を狙って、エレン・メイザースが現れ、彼女が、無数の少女達を召喚した事を。
「な・・・・!」
予想外の言葉に、士道は息を詰まらせた。否、ソコに居並んだ精霊達も、皆驚いたような顔をしている。
「な、何と・・・・!」
「そんな事が起こってたんですか・・・・?」
「ぐむう・・・・人知れず皆の危機を救うとは・・・・くそう、格好いいなあ。私もそういうのやりたいんだけど」
「苦笑。無理です耶俱矢。耶俱矢には"人知れずやる能力"がありません。目立ちたがり屋ですから」
「どういう意味じゃコラァっ!!」
八舞姉妹がギャイギャイ騒ぐのを無視して、士道は真那に問う。
「でも、そのエレンが召喚した女の子って言うのは一体・・・・」
真那はその問いにゆっくりと頭を振った。
「分からねーです。ただ、キマイラズはその少女達に、“魔王の気配がしている“って言ってやがりました」
『っ!!』
その言葉に、士道達全員が肩を震わせた。DEMが所有する魔王、それは二亜から奪った〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉の事である。
「あぁ、きっとアタシの力で作られた存在だろうね。多分、"自分がイメージした存在を具現化させる能力"だろうね」
「戦闘力はソコまで高くはねーですが、それでも数の暴力で来られれば厄介な能力でやがりますよ。〈ナイトメア〉の分身体みたいな鬱陶しい能力です」
真那がお手上げ、と言わんばかりに肩を竦める。
しかし琴里は、そんな真那に再び問いを発した。
「分かったわ。こっちも警戒しておく。ーーーーで、まさか、それを言うだけに来た訳じゃないでしょう? あなたは士道に似て向こう見ずな所はあるけれど、必要不必要の判断がつかない程馬鹿じゃないもの」
琴里が言うと、真那はフッと唇の端を上げた。
「琴里さんにそう言ってもらえるとは光栄ですね。ーーーーまあ実際、その通りです。まだ琴里さんに話してねー事が1つ、ありやがります」
「ーーーー何故エレンの襲撃を予測できたのか、ね」
「ご名答」
微かに目を細めながら琴里が言うと、真那が頷いた。
「・・・・? どういう事だ? 白い魔法使いが襲撃を教えてくれたんじゃないのか?」
「ーーーーいえ、先日の〈ゾディアック〉、もとい星宮六喰さんの攻略の為に皆さんが宇宙に飛び立つ際、真那さんと白い魔法使い、そして我々0課で〈ラタトスク〉の基地の局員達を避難させる為に、『魔獣ファントム』やDEMインダストリーと交戦を行い、白い魔法使いはワイズマンとアイザック・ウェスコットと戦いました。彼はその時の負傷が完治しきれていません。彼は今動けない状態なのです」
士道の問いに仁藤が淡々と応えた。それに続くように真那が説明する。
「だけど、私達はエレンの襲撃計画を事前に知っていやがりました。決行時刻から、エレンが現れる正確な座標に至るまで」
「それが分からないのよ。白い魔法使いは動けない上に、エレンは完全なステルス状態にあったわ。それこそ、戦闘に始まるまで〈フラクシナス〉のレーダーでも捉えられない位に。真那、仁藤捜査官、キマイラズ、あなた達は一体どうやってそれを知ったっていうの?」
琴里が問うと、真那達は静かに息を吐いた。
「理由は簡単なものでいやがります。教えられたんですよ」
「"教えられた"? 誰に?」
「ーーーー〈ナイトメア〉、時崎狂三に」
「は・・・・?」
士道は思わず目を点にした。
「ちょ、ちょっと待て。狂三にって、どういう事だ?」
「どういう事と言われましても。そのままでいやがります。ーーーー昨日、私が下宿している仁藤さんのマンションの部屋で夕食を食べている時、突然あの女が現れやがりまして。遂に決着‹ケリ›を付けに来やがったのかと思い、問答無用で変身して、ダイスサーベルで首を斬り落としてやりやがりましたが・・・・」
『・・・・・・・・・・・・・・・・えっ?』
何やら真那が、サラッと聞き捨てならない単語と凄まじい事をいう。因縁深い相手とは言え、相変わらずアグレッシブな少女だ。
否、それよりも士道はーーーー。
「ま、真那・・・・、お前、仁藤さんと同棲してるのかっ!?」
「ええ。兄様だって精霊の皆さんと同棲しているようなもんでやがりましょう? 仁藤さんには栄養管理や運動管理。仕事でも報告書作成と言った事務仕事もやって貰って、至れり尽くせりでやがりますよ♪」
「一応パートナーとして、真那さんの体調や栄養管理は当然の事です。美味しい料理の作り方を覚えて調子に乗り、太らせるような愚かな事はしません」
「うっ・・・・!」
仁藤の言葉に、士道は胸を抑えて蹲る。
「で、でもよ・・・・! 年頃の女の子が、成人男性と同棲なんて・・・・!」
一応お兄ちゃんとして言葉を発するが、真那も仁藤も難なく返答する。
「兄様も心配症でやがりますなぁ。大丈夫ですよ。確かに私としても仁藤さんは頼れるし、人間性も好みのタイプでやがりますが、歳が10歳以上も離れてやがりますし」
「私の方も、真那さんの人間性は好みですが、ロリコンではありませんから」
『『『『『ーーーーチィッ!』』』』』
2人の言葉に、キマイラズが舌打ちをした。
「し、しかしなぁ・・・・」
「そうですよ真那さん! 男の人は狼になりますよー! 何でしたら、私の家でルームシェアしましょうよー!」
食い下がる士道に便乗するように、美九が声を張り上げるが、真那は半眼で見据えると。
「美九さんと同棲するより、何億倍も安全だと思います」
『・・・・・・・ああ、うんうん』
「あぁーん、いけずー!」
真那のその場にいた全員が同意するように頷き、美九が騒ぐが無視して話を戻した。
「そうしたら何本目かに現れた分身体が、話をしたいと言いやがるもんで。まあ辞世の句くらい読ませてやらうと喉元にダイスサーベルの切っ先を突きつけながら喋らせた所ーーーー」
「エレンの襲撃の事を話した、と」
「そう云う事です」
「情報元が情報元だったので、我々としても半信半疑だったのですがね」
真那と仁藤の話に、琴里はため息を吐いてから話をする。
「一体狂三はどうして真那達にエレンの襲撃を教えたのか。そもそもどうやってその情報を手に入れたのかしら・・・・」
琴里が言うと、折紙が微かに顔を上げた。
「エレンの襲撃情報を提供したのは、単純に真那達にそれを阻止して欲しかったからではないの? 時崎狂三の士道とドラゴンの力を狙っている。それをDEMに横取りされるのは彼女としても面白くないはず。彼女は無数の分身体を使って、常に諜報活動を行っている。その過程でDEMの襲撃計画を知ったとしても不思議はない」
折紙が淡々と答えてくる。士道は小さく唸り、ドラゴンも思案を巡らせるように考える。
折紙の言う事は理に適っている。しかし、今日見た狂三の顔が過ると、妙な違和感を感じてしまう。恐らくドラゴンは、これまでの情報から、狂三の目的を推理しているのかも知れないが、ドラゴンと視線が一瞬交わると、曖昧な理由て推理で皆を混乱させる訳にはいかず、お互いに頷いて黙る。
「ーーーー兎に角、今は明日に備えよう」
「ええ。コチラでも引き続き調査は続けておくけれど、最重要課題は士道、あなたが狂三に絆されないようにする事よ。ドラゴン、士道が狂三に惑わされないようにしっかり手綱握っておいてよ」
『当然だ』
「・・・・分かってるよ」
何やら今一信用されていないようで腑に落ちない士道だが、とりあえず頷いた。
狂三には未だ、謎が多い。そんな彼女との勝負に不安を覚えないと言えば嘘になる。だが、士道が勝ちさえすれば、彼女の霊力を封印する事が出来るのである。
士道は、心を落ち着けるように首を前に倒した。