デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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十香達に足りない物です。


大人の魅力・精霊達

ーーーー『大人の魅力』。

それはあらゆる男を惑わす魔性の色香。その色香を使えば、とある世界的な大怪盗の三世を操り人形にしてしまう女盗賊のように、男を手玉に取ってしまうようなもの。思春期のチェリーボーヤである士道ではその色香に抗えるとはとても思えない。

 

「十香達は昼に見てたから分かると思うけど・・・・狂三最大の脅威は、やっぱりそれよ。男を手の平の上で転がす悪女の余裕。妖艶な仕草で誘う夢魔の手管。士道が今まで封印した精霊の中にそう言ったタイプはいなかったから、今の内に慣れさせて置かないと」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

琴里がざわめく皆を制するように言うと、精霊達がゴクリと息を呑む。

と、そんな空気を打ち破るように、元気良く手を挙げた者が2名、いた。士道の1つ上の美九と成人女性の二亜である。

 

「はいはーい! 私だーりんの1個上ですー! お姉さんですー!」

 

「アタシもアタシもー! 『大人の魅力』ムンムンです!」

 

言って2人は揃って自慢げに豊満な胸と平坦な胸を反らしてみせる。

だがしかし、琴里は渋い顔をしながら首を横に振って、(一応)お姉さん2人に向けて声を発する。

 

「数字の話じゃないのよ。大人って言うのは精神性の話。中身が伴ってなかったら、それはただの身体が大きいだけの子供でしょ」

 

「うぎゅっ!」

 

「あばっ!」

 

無慈悲な言葉のシャイニングカリバーが突き刺さり、美九と二亜が撃沈する。

 

「ううう、容赦ないです琴里さぁん・・・・私、スタイル的には年上感あるじゃないですかー・・・・」

 

「アタシだってほら、その・・・・お酒飲めるしぃ、夜更かし得意だしぃ・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

と、美九と二亜がくだを巻いていると、その肩を、何故か折紙がポンと叩いた。

 

「「うわーん!」」

 

2人が感極まったように折紙に抱きつく。・・・・まあ、美九の方から何故かやたらと手つきが怪しかったが、その手は折紙に片手で極められていた。

そんな3人を無視して、会議は進んでいった。

 

「中々に厄介よ。どんなに強がっていても、男子には大人のお姉さんに弄ばれたい欲求や、甘えたい気持ちがあるものだしね」

 

「呵々、男はいつまで経っても子供と言う事か」

 

「首肯。耶俱矢は男の子でしたか。道理で」

 

「どーいう意味よそれっ!? って言うか道理でって何!?」

 

「落ち着きなさい・・・・って、あら? 折紙達、何処に行ったの?」

 

「む?」

 

言われて、十香は折紙と美九と二亜の姿が、いつの間にか消えている。

 

「さあ・・・・」

 

「厠ではないかの」

 

皆が首を捻る。琴里はフム、と扉を一瞥した後、言葉を続けた。

 

「まあいいわ。すぐ戻ってくるでしょ。ーーーー兎に角、その感覚を一時的にでも満足させてしまえば、狂三がどんな手を使ってこようと、いくら士道のチョロい心でも平穏なままの筈よ。だから私達が士道のお姉さんになって、耐性を付けてあげようって訳」

 

「で、でも琴里さん、私達、士道さんよりも小さいです・・・・」

 

四糸乃が眉を八の字にしながら言う。琴里は難しげな顔をして頷いた。

 

「ま、それはね。でも大人の余裕を身につけさえすれば、実年齢に拘わらず年上の魅力を得る事は可能な筈よ。勿論本当に大人になれれば効果は高いでしょうけど、流石にーーーー」

 

「・・・・あのさ」

 

と。琴里が言った所で、1人の少女がオズオズと手を挙げた。

 

「もしかしたら、何とかなるかも・・・・?」

 

《ーーーー皆、こんな夜更けにまで起きているのは感心しないぞ。夜更かしは美容の大敵だ》

 

『っ!』

 

と、ソコでドラゴンからの念話が届き、琴里達がビクッ、と身体を震わせた。

 

「な、何ドラゴン、こんな夜更けに?」

 

聡明なドラゴンは、自分達がバレンタインデーに対策会議をしている事は知っている筈である。それなのにわざわざ念話をしてくるというのがおかしい。

 

《・・・・小僧の寝込みを襲いにきた、"ケダモノ3匹"を捕まえたから引き取りに来てくれ》

 

「えっ・・・・はっ!」

 

それを聞いて、琴里が察した。ここにいつの間にか消えていた精霊という名のケダモノ3人の事を。

 

 

 

 

 

 

五河家に戻った琴里が見たものは、折紙と二亜と美九が縄で簀巻きにされ、下から美九、折紙、二亜の順に重ねらており、目を擦って眠そうにしている士道と、士道の頭サイズのドラゴン(思念体)だった。

 

「おう琴里・・・・ふぁ〜」

 

『突然小僧に夜這いに来たのでな。とりあえず全員縛り上げたのだ。縄の下はベビードールやガーターベルト等といって破廉恥な下着に身を包んでいる。防音部屋に放り込んでおけ』

 

それだけ言うと、ドラゴンは尻尾の先端で士道の背中を突っつきながら、部屋に戻らせた。

 

「・・・・んで、何やってるのよあなた達?」

 

「いや〜、少年に『大人の魅力』を教えてやろうと思ってねぇ」

 

「ですですー、だーりんが私達の艶姿に慣れれば、狂三さんの魔性の色香にも対抗できると思ったんですー」

 

「士道が狂三に惑わされないようにするにはコレが1番効果的」

 

悪びれる事のない3人に、琴里は頭痛を堪えるように額に指を押し当てる。恐らく折紙の提案だろうが、どうして彼女はこう・・・・強引というか、狂っているというか、下手をすれば女として大事な物を捨てるような行動を平然と取るのか果てしなく謎である。

 

「皆、連れていきましょう」

 

十香が折紙を、八舞姉妹が美九を、琴里と六喰が二亜を引きずるように精霊マンションに連れ帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー士道sideー

 

ドラゴンは士道の体内に戻り、寝息を立てているが、士道はすぐには眠れなかった。

中途半端な時間に起こされ、さらに脳裏にあのエロ過ぎる下着姿の折紙達の姿が残っており、やたらと心臓が高鳴っているのだ。

とーーーー。

 

「・・・・ん?」

 

不意に眉をひそめる。窓の外ーーーーベランダの方から、何やらコツコツという小さな音がしている。

 

「何の音だ・・・・?」

 

《くぁぁ〜・・・・何だどうした?》

 

まるで誰かが窓をノックしているかのような音に、士道は顔を訝しげにし、ドラゴンも欠伸をしながら起きた。

 

《・・・・小僧。ドライバーとリングを持て》

 

「え?」

 

《万一に備えてだ》

 

ノソノソとした動作でベットから起き上がり、机の上に置いてあるドライバーをつけ、リングチェーンも持って窓の方に歩いていき、カーテンに手をかける。

 

「まさか、狂三・・・・?」

 

こんな真夜中に士道の部屋の窓をノックする来訪者、ドラゴンがいつでもウィザードに変身できる用意をさせるという異常性に、寝ぼけていた士道の頭は漸く気づいた。

ドラゴンから、とてつもない緊張感が漂っている事に。

 

「・・・・・・・」

 

[ドライバーオン プリーズ]

 

ウィザードライバーを召喚して、すぐに変身できるように『フレイムドラゴンリング』を嵌めた。

1度深呼吸をしてから、意を決してカーテンを開け放った。

しかし。

 

「あれ・・・・?」

 

窓の外には何も見当たらなかった。窓を開けてベランダに出て周囲を見ても、誰もいない。

一瞬気の所為かと思ったその瞬間、

 

「ーーーーふふ、ふふ」

 

「・・・・!?」

 

何処からかそんな笑い声が聞こえてきて、士道はビクッと身体を震わせた。

するとその声に次ぐように、幾つもの声が次々と聞こえてきた。

 

「へぇ、これが例の五河士道?」

 

「ふうん・・・・割りと普通なのね。何だか意外」

 

「そう? 結構カワイイじゃない」

 

《小僧! 上だ!》

 

「っ!」

 

見上げた士道の目が捉えたのは、空からヒラヒラと落ちてくる数枚の紙だった。

 

《離れろっ!!》

 

ーーーーバシィィンンッ!!

 

「ぐほわぁっ!?」

 

ドラゴンからのド突きを正面から受けたような衝撃に、士道は落ちてきた紙から距離を作った。

その時、ベランダに落ちたか紙がボンヤリと光を放ったかと思うとーーーー。

 

「はぁい♪」

 

ソコから、少女が飛び出した。

 

「な・・・・っ!?」

 

驚く士道は、以前真那から聞いた、"紙の中から現れる少女"の事を思い出す。

 

「君は、まさかDEMの・・・・ッ!?」

 

士道は戦律しながらも、ドライバーを起動させた。

 

[シャビドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪]

 

「変身!」

 

[フレイム! ドラゴン! ボゥー!ボゥー!ボゥーボゥーボォー!! コネクト プリーズ!]

 

『フレイムドラゴンスタイル』にすぐに変身したウィザード‹士道›は、すぐにウィザーソードガンを構えると、辺りに散らばっていた紙の中から、全く同じ顔をした少女達が次々て這い出た。

あまりの異常な出来事に、ウィザード‹士道›は一瞬だけ言葉を失う。

 

「ふぅん、アタシの事知ってるんだ?」

 

「でも、DEMの、ってのは随分な呼び方じゃない?」

 

少女達が不満げに口を尖らせ、四方から発される無数の言葉の中、1人の少女が、信じられない事を呟く。

 

 

 

「そうそう、アタシ達だって・・・・一応"精霊"なんだから」

 

 

 

その言葉に、ウィザード‹士道›は混乱しそうになる。

が、

 

ーーーーバシィィンッ!!

 

「くぉっ!?」

 

ドラゴンのド突きが炸裂した。

 

《惑わされるな。彼女達から二亜の『神蝕篇帙‹ベルゼバブ›』の気配がしている。魔王の力で生まれた『精霊もどき』と言った所だ。敵の言葉に一々動揺するでない》

 

「お、おおっ!」

 

ドラゴンの言葉にウィザード‹士道›は正気に戻り、ウィザーソードガンを構え直す。

 

「ふぅん。アタシ達と戦うんだ?」

 

「でも、あんまり意味ないんじゃない?」

 

「ねぇ。だってキミーーーーここで死んじゃうんだから」

 

そして少女ーーーー〈ニベルコル〉はあまりにさり気なく、その言葉を吐いた。

悪意はおろか、殺意さえも微塵も感じ取れない。何気なく交わされた挨拶か、家を出る際ついでに買い物を頼まれたようか気安さである。

 

「ッッ!!」

 

幾度となく戦いを繰り広げてきたウィザード‹士道›は、すぐに臨戦態勢を取って、先手必勝とばかりに〈ニベルコル〉に斬りかかる。

が、〈ニベルコル〉は、わざとらしく大声を上げる。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 殺さないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

「っ!?」

 

《馬鹿者っ!!!》

 

演技だとは分かる。しかし、少女の姿の〈ニベルコル〉の悲鳴を聞いた瞬間、ウィザード‹士道›の動きはビクッと、停止してしまった僅か一瞬、

 

ーーーーザクザクザクザクザクザクザク!!

 

〈ニベルコル〉の攻撃が、無慈悲にウィザード‹士道›の全身を穿った。

 

「ぐ・・・・あ、ああああああああああああああああああああああああッ!?」

 

身体から夥しい血を流しながら、ウィザード‹士道›は悲鳴を上げた。

 

「勝てると思ってるの?」

 

「駄目駄目。だってお父様に言われてるんだから」

 

「キミ、ここでお終いなのよ」

 

夥しい量のウィザード‹士道›の返り血を顔に浴びてなお、顔色1つ歪めず、変わらず気安げな調子で続ける〈ニベルコル〉。

 

「が・・・・うぅ・・・・!」

 

喉から小さな悲鳴を上げ、意識が飛びそうになるウィザード‹士道›。

 

《・・・・小僧ーーーー身体をかりるぞ!》

 

ドラゴンのその声を最後に、ウィザード‹士道›の意識は闇へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁ(バシィンッ!)ビグザムっ!?」

 

《喧しい!》

 

喉が潰れんばかりの絶叫を上げそうになる士道の脳天に、ドラゴンの尻尾ド突き(強)が炸裂した。

 

「っーーーー!」

 

痛みでベッドの上で身悶えていた士道は、痛みが収まると呆然と目を見開いて辺りを見回すと、ソコは見慣れた自分の部屋。窓から随分と高い位置から陽が差し込んでいた。

 

「・・・・・・・・」

 

一拍置いて、士道は自分の身体をペタペタと触り始めた。

穴の空いていない腹と胸と足と、それを確認する両手がある事を確認し終えると、ドラゴンに話しかける。

 

「ーーーードラゴン、寝る前に、俺に何かあったか・・・・?」

 

《・・・・・・・・折紙と二亜と美九が破廉恥な下着姿で襲いに来たのをフン縛って、琴里達に預けた後、「眠れない」とほざく貴様を我が尻尾で殴って眠らせたのだろうが》

 

「そう、なのか・・・・?(悪夢にも、程があるだろう・・・・!)」

 

士道が額を拭うと、服の袖がビッショリと濡れてしまっていた。最早寝汗というレベルではなく、水でもぶっかけられたような様相だ。

士道は今の今まで見ていた悪夢をーーーー思い出したくもないのだが半ば強制的にーーーー反芻し、思わず身を震わせた。

一体どんな心の不安を抱えていれば、あんな悪夢を見ると言うのだ。というか、どこまでが夢なのか。

士道は未だ脳裏にこびり付いた激痛と恐怖を振り払うように頭を振り、シャワーを浴びようと湿った布団を押しのけて1階へと降りていく。

 

「・・・・ん?」

 

と、階段を、下りている所で、何やら1階のリビングから、フワリといい匂いが漂い、トントン・・・・と包丁でまな板を叩く小気味の良い音が聞こえてきた。まるで、誰かが朝食の準備をしているかのように。

 

「琴里か?」

 

《アホ。料理の腕はイマイチの琴里が、包丁を軽快に扱えるか》

 

と、ドラゴンと話しながらリビングに入ると、知らない女性がいた。

 

「・・・・へ?」

 

《はぁ・・・・》

 

士道ら目を点にし、ドラゴンは頭を押さえながら溜め息を吐いた。

 

「ーーーーん? ああ、おはよう士道、ドラゴン」

 

ソファに腰掛けた女性が、ヒラヒラと手を振って挨拶をしてくるが、士道は呆然と目を見開いて口をポカンとしていた。

そこにいたのは、どう見ても"士道より年上になった琴里"だった。

 

「(ドラゴン、これって・・・・?)」

 

《七罪の〈贋造魔女‹ハニエル›〉だろう。またしょうもない訓練だろうな》

 

呆れているドラゴン、言葉に納得した士道は、改めて年上になった琴里を見やった。

20歳くらいになり、手足はスラリと伸び、貌は大人びて、髪は括っておらず、黒リボンは手首に結んでいた。だが何よりも目に付いたのは、その胸元だ。同年代と比べても若干控えである琴里の乳房が、不自然なまでに膨張している。

そんなお姉さん琴里が、裸身にワイシャツ1枚のみを纏った状態でソファに腰掛け、何処か気怠げにテレビを眺めており、出社前のOLと言った風情だ。

 

「何よ、ボーッとして。ーーーーあ、さてはおねーちゃんの生足に見とれてた? へぇ、士道も男の子ねぇ」

 

士道が驚愕に目を見開くと、琴里が悪戯っぽい笑みを浮かべながらわざとらしく足を組み替えた。ワイシャツの裾からチラチラと艶めかしい脚線美が覗き、思わず息を詰まらせる。

 

「・・・・っ! じ、じゃなくて! 琴里・・・・だよな? ですよね? いやいや、え? 一体どういう事だ・・・・?」

 

「ええ? どうって?」

 

「いや、いきなり成長するにしてもその胸元は不自然過ぎーーーーげふっ!?」

 

言葉の途中で、琴里が投げたクッションが顔面に炸裂した。

 

「士道さん」

 

と、今度はキッチンの方から四糸乃の声が聞こえ目をやると、これまた成長を経た四糸乃が、朝食の用意をしているのが見て取れた。

髪を1つに纏め、腕まくりをし、シンプルなデザインのエプロンを纏ったその姿は、まさに若奥様であった。ついでその足元には小さな女の子になった折紙と二亜と美九が『私達は抜け駆けしました。とてもすみません』と書かれた札を下げていた。

さらに言えば、よしのんが何故かつけ髭を付けて手招きをしてくる。

 

『士道、母さんが味見をして欲しいそうだよ。ちなみに私はお父さんだよ』

 

《(ちょっと待て。四糸乃がお母さんでよしのんがお父さんでは、我はお爺ちゃんか?)》

 

「あの・・・・お願い、できますか? じゃなくて、あの、できる・・・・?」

 

「へ・・・・? あ、ああ・・・・」

 

士道は呆気に取られながら、言われるがまま四糸乃の手から小皿を受け取り、味噌汁の味を見てみる。

 

「うん・・・・美味いよ。ちゃんと出汁も取ってあるし」

 

「本当? なら・・・・あの、良かった」

 

言って、いつもの四糸乃とは違う、嫋やかで包容力に溢れる微かな笑みに、思わずドキリとなる士道。

そして、

 

《よ、四糸乃・・・・! 立派になって・・・・!!》

 

美しく成長を遂げた四糸乃を見て、ドラゴンが男泣きをしており、そのシュールな姿に士道は動揺していた気持ちが少し収まり、冷静さを取り戻す。

 

「・・・・んで、これって何なんだよ?」

 

その問いに、足元の折紙が答える。

 

「訓練の一貫。来たる14日、士道が時崎狂三の色香に惑わされないよう、耐性を付けておく」

 

その言葉で、ドラゴンは涙混じりに声を発する。

 

《成る程な・・・・小僧は、年上のお姉さんに、迫られ、コロッといってしまう、チョロ坊やだ。七罪の天使で大人の姿に変身した皆が普段通りに過ごす小僧に迫り、大人の女の色香への耐性を付けようと言う訳か・・・・》

 

「失礼にも程がある! いくら俺でも命がかかってる時にーーーー」

 

《ーーーーあぁ? 今までそう言う威勢のいい事をほざいて大丈夫だった事が、ただの1度でもあったのか貴様? もしや、美九との女装デートや初めて六喰の攻略をした時の醜態の数々をもう忘れたのか?》

 

「うっ・・・・!」

 

途端、冷酷かつ高圧的なドラゴンの言葉に、士道は言葉を詰まらせた。

 

《毎度毎度、「俺は大丈夫だ!」とか、言っておいて、昨日は〈ナイトメア〉に良い様に弄ばれていたのは何処のチョロいヘタレ童貞僕ちゃんだったんだ? あぁ? 我が殴っていなかったら鼻の下を伸ばしまくっていたのは何処のヘナチョコ魔法使いだぁ?》

 

「・・・・・・・・はい。俺です・・・・」

 

思念体のドラゴンがいる訳でもないのに、情けない顔をした士道はその場に正座し、虚空に向かって項垂れていたが、琴里達の目にも、今まさに士道の目の前にドラゴンがその場にいて説教している幻覚が見えていた。

 

「ーーーー話を戻して、士道は普段通りにしていれば良い。ただ、士道の心拍数、興奮度をモニタリングしてもらい、その値が一定値を超えないように平常心を保って欲しい」

 

「ペナルティもあるわよ。興奮度が要注意にはいってから10秒経つごとに1枚ずつ、士道が昔描いてたイラストがSNSにアップロードされるから」

 

「ちくしょう! 最近無いと思ってたのに!」

 

折紙の説明に補足する琴里に、士道は甲高い声を上げた次の瞬間、そんな士道の視界に現れたのは。

ーーーー眼鏡をかけ、やたらと胸元が強調された少しサイズの小さいスーツを着た20代に成長した十香。

 

「シドー・・・・ではなかった! 五河くん! 授業を始めるぞ・・・・ますよ!」

 

《十香ぁぁぁぁぁぁっ!! 何という格好をしとるんだぁぁぁぁぁぁっ!!!》

 

ドラゴンが悲鳴を上げた。

士道が顔を洗うと言って洗面所につけば、今度はシャワー上がりなのか、タオルを1枚身体に巻き付けた大人モードの七罪だった。

 

「うふふ、おはよう、士道くん。惜しかったわね。後1分早かったら、タオルを巻いてなったのに」

 

「・・・・っ! お、お前、何言って・・・・」

 

《(あぁ、これはまた後でネガティブモードになって落ち込むな・・・・)》

 

大人七罪が士道の手を引いて自分の胸元に連れて行こうとするが、士道が手を引っ張ると、勢い余ってそのまま後方に倒れ込むと次に現れたのは、スーツの上に白衣を纏った女医ルックの耶俱矢と、やたらとスカートの短い看護婦姿の夕弦だった。

 

「くく、どうした。何処か痛むのか。我にみせてみるがよい」

 

「指摘。耶俱矢、折角七罪に大人にしてもらっても、その喋り方では台無しです」

 

「・・・・っ! う、うっさいし! それ言うなら夕弦だって一緒じゃない!」

 

《ーーーー早く起きろこのムッツリスケベ!》

 

いつもの如く小競り合いを始める2人の短いスカートの中身が見えそうになり、ドラゴンに言われて起き上がると、一旦外に出ようと玄関を目指すが、ソコにはーーーー。

 

「むん。何処に行こうと言うのじゃ、主様」

 

「六喰・・・・っ!?」

 

《六喰・・・・君まで何という格好を・・・・!》

 

大人の身体となった六喰が、和服を着込んで通せんぼしていた。しかも、煌びやかな意匠に前面に結ばれ、大胆にはだけられた肩の、花魁スタイルだった。ただでさえ小さい身体に不釣り合いな肉感的な身体付きをしていたのに、大人の身体になったそれは、【ドラゴンシャイニング】級の破壊力だった。

 

ーーーーブー! ブー! ブー!

 

先ほどからブザーが連続で鳴り響く。士道は六喰を避けて玄関の扉を開けたその瞬間、後方から六喰にズボンの裾を踏まれ、前方につんのめってしまい、倒れそうなるとーーーー。

 

「な・・・・は・・・・えっ!?」

 

「・・・・ん?」

 

扉を開けた先に立っていた女性ーーーー村雨令音がいた。

美九をも上回る豊満な胸元に、勢い良く顔面を埋めてしまう。

 

「れ、令音さん・・・・! すいませーーーー」

 

「・・・・ああ」

 

すぐに顔を上げる士道が言葉を終わる前に。令音は何やら納得したように頷くと、士道の後頭部に手を当て、再び士道の顔を自分の胸部に押し当ててきた。そしてついでに、優しく頭を撫でてくる。

 

「・・・・よしよし」

 

「ーーーーーーーーーーーーーー!?」

 

『おおー・・・・』

 

士道が混乱と困惑の中、後方から精霊達の尊敬の声と、パチパチという拍手の音が聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ードラゴンsideー

 

『大人の色香ではなく、コイツは包容力に弱いだけではないのか? このマザコン坊やは・・・・』

 

ドラゴンは、"令音の姿を見た瞬間アンダーワールドの奥に引っ込み"、士道の様子を伺いながら溜め息交じりに呟いた。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』 

 

『インフィニティスタイル』に到達してからずっと、ドラゴンは何故か、令音の側に現れようとしなかった。

まるでーーーー令音を警戒し、距離を取っているように。

 




ドラゴンが何故令音を避けるのか?
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