デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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それはまさに、血と汗と涙の結晶(笑)


乙女の真心と苦難が込められしお菓子

ー琴里sideー

 

「あっらぁ〜! 狂三ちゃんじゃなぁい! お久しぶり♪」

 

「あ、いらっしゃい狂三ちゃん☆」

 

「あら店長さんに店員さん。お久しぶりですわ♪」

 

と、製菓材料専門店を後にし、大通りを歩いていると、ソコで狂三に話しかけてきた人物を見て、琴里達は思わず目を見開いた。

そう、そこは精霊達(美九のような1部を除く)の行きつけの店、〈ど〜なつ屋はんぐり〜〉だったのだ。

 

「て、店長。狂三の事知ってるの?」

 

「えっ?ーーーーあっ、そう言えば琴里‹コト›ちゃん達と狂三ちゃんが来るなんて今までなかったわね! “去年の5月くらいだったかしら?" 十香ちゃん達がウチでドーナツを買うと、すぐ後に狂三ちゃんが来た買ってくれたり。十香ちゃん達が来ない日に来てくれたりしてくれているウチの隠れた常連さんなのよ狂三ちゃんって♪ もう、コトちゃん達とお友達ならなんでもっと早く一緒に来てくれなかったの〜?」

 

「うふふふ・・・・わたくし達、結構複雑なご関係なんですのよ」

 

店長達と朗らかに笑い合いながら会話を弾ませる狂三。

“去年の5月“、それはつまり、狂三が士道達のクラスに編入してきた時である。まさかその時から既に店長達と交流を持っていとは。

狂三の動向を調査していた〈ラタトスク〉と〈国安0課〉、〈DEMインダストリー〉に『魔獣ファントム』の面目丸潰れである。まさかこんな間近に狂三の行きつけの場所があったとは。

店長から『友チョコ』ならぬ、『友ドーナツ』を大量に貰い。十香などはスキップしながら喜び、『はんぐり〜』から離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーそして、それからおよそ1時間後。

 

「・・・・何よ、この状況」

 

精霊マンションの1室にやって来た琴里は、小さな声でそう呟いた。

だが、それも当然だ。何しろーーーー。

 

「あら、あら。ここが皆さんのお住まいになっている場所ですのね。うふふ、素敵な所ではありませんの」

 

琴里の後ろで、最悪の精霊・〈ナイトメア〉時崎狂三が、広いキッチンを見回しながら楽しげにそう呟いていたからだ。

そう。狂三からの提案。それはーーーー。

 

【ーーーーわたくしも、材料を揃えたら早速チョコレートを作ろうと思っていますの。よろしければご一緒致しません事?】

 

というあまりに予想外、かつ滅茶苦茶なものであった。

確かに狂三は精霊。〈ラタトスク〉にとって攻略対象兼庇護対象ではある。こちらへの警戒を解いて貰う為に、こういった交流が必要な場合もあるだろう。

だが彼女の場合、明らかに他の精霊とは少々事情が異なっている。

何しろ〈ラタトスク〉や士道の目的を知り、その上で勝負を挑んできているのである。何か裏があると思って然るべきだろう、

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

しかし。琴里はチラと狂三を見やった。

確かに狂三は危険な精霊だ。霊力を十全に備えた上、『数』の勝負となれば勝ちようがない。一瞬も油断も許されぬ相手である。

だがそれ故に、彼女の情報を収集できる機会は、得難い好機と言う事ができたのだ。

来る14日。士道と狂三の『決戦』の日。その時までに少しでも狂三の事を知っておきたい琴里としては、その提案を受けざるを得なかったのだ。

 

「・・・・琴里」

 

と、琴里がそんな事を考えていると、令音が声をひそめながら話しかけてきた。

 

「・・・・私は一旦、〈フラクシナス〉に戻るよ。滅多に無い機会だ。可能な限り狂三の感情値や好感度を観測しておきたい」

 

「ええ、お願い。ここは私が何とかするわ」

 

「・・・・ああ。頼んだよ。どうか、武運を」

 

令音がそう言うと、ユラリと顔を上げ、部屋を出ていった。

するとそんな令音の背を、狂三が不思議そうに見送り、首を傾げる。

 

「あら、村雨先生は帰ってしまわれますの?」

 

「ええ。用事があるみたいよ」

 

「ふうん・・・・」

 

琴里が適当に誤魔化すと、狂三は目を細めながら令音の消えた扉の方を見つめた。

一瞬、琴里の嘘が気づかれたのかと思ったがーーーー少し違う。はっきりとは分からなかったのだが、その視線に訝しげな色が見て取れるような気がした。

 

「どうしたのよ。何か令音と話したい事でもあったのかしら?」

 

「ああ、いえ。そう言う訳ではありませんけれど。ーーーーそれより、早速始めようではありませんの」

 

琴里が言うと、狂三はケロリてして様子で頭を振り、気を取り直すようにパンと手を打つと、製菓材料店の買い物袋を調理台に乗せた。

今精霊達がいるのは、精霊マンションの1室に設えられた厨房スペースだ。

精霊マンションには居室の他に、以前漫画を制作した執筆室だけでなく、娯楽用のシアタールーム。健康維持の為のフィットネスクラブといった、様々な施設が用意され、この厨房スペースもその1つであった。

無論各々の部屋にもキッチンはあるが、バレンタインデーやクリスマスといったイベントの際、精霊達が一緒に作業する機会がある事を見越して、こういったスペースが造られているのだ。

精霊達が並んで作業できる大型の調理台。洋の東西問わずに集められた様々な調理器具。業務用の大火力ガスコンロに業務用の石窯までもが備え付けられている。

去年マンションが完成した際、ここの内覧した士道が、まるでショーウィンドウ越しにトランペットを見つめる少年のような眼差しで、暫くの間この場所から離れようとせず、ドラゴンにド突かれ、琴里が首根っこを掴んで引きずらなければ帰らなかった程に恵まれた設備である。

 

「うふふ、お菓子作りだなんて久しぶりですわ。・・・・あら?」

 

と、楽しげに買ってきた材料を調理台に広げていた狂三が、他の精霊達が警戒に満ちた表情をしながら、部屋の隅に集まっているのに気づき、目を丸くした。

 

「むぐむぐぅ・・・・一体何を考えているのだ、狂三」

 

「や、やるなら相手になるわよ」

 

「参戦。弓弦も黙っていません」

 

口々に言って、狂三に剣呑な色を帯びた視線を向けるのも当然と言える。何しろ相手は士道を喰らってその霊力を奪うと明言し、初めて会った時には来禅高校の皆を巻き込むような大事件を起こした精霊である。警戒するなという方が無理だ。

しかし、そんな反応は狂三にとっても予想の範疇だったのか、フフッと口元を緩めると、先ほどよりも声を張るようにして続けた。

 

「あら、皆さんは作り始めませんの? うふふ、では士道さんのハートはわたくしが独り占めですわね」

 

『な・・・・っ!』

 

狂三の言葉に、精霊達は眉根を寄せた。

あまりに見え透いた挑発。しかしそうと分かっていても(1部分かっていない者もいたようだが)聞き捨てならない言葉であった。精霊達が憤然と息を吐き、ノシノシと料理台に歩いていく。

 

「そうはさせるか・・・・! シドーは私が守る! ングング」

 

「わ、私も・・・・頑張ります!」

 

「むん。むくの主様を、うぬの好きにはさせぬのじゃ」

 

言って、各々用意した材料を手元に並べ始める。

それを見てか、狂三が心底楽しそうに笑った。

 

「うふふ、わたくしも負けませんわよ」

 

狂三は腕まくりをすると、部屋に備え付けられていたエプロンを身に付け、手を丁寧に洗っていった。

民もそれに続くように調理モードにスタイルチェンジし、再び調理台の前に戻る。洗った手を胸元の高さに掲げながら台の前に立つ姿は、さながら大手術に臨む外科医のよう。

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

「・・・・・・・・ングング」

 

が、調理台の左右に立った執刀医、もとい精霊達は、一向に作業を始めず、数秒間フリーズ状態になってしまった。

十香が困り顔をして琴里に視線を向けてくる。

 

「琴里、ここからどうすれば良いのだ? ングング」

 

「え? ああ、そうよね」

 

琴里は一瞬目を丸くしながら、すぐにコクリと頷いた。ーーーーそう言えば、必要な材料は教えたものの、まだ詳しい作り方までは説明していなかったのだ。

 

「まあ簡単に言うと、このブロック状のチョコを溶かして、用意した型に流し込むの。そうしたら後は冷蔵庫で冷やして、固まったら好きにデコレーションすれば良いわ」

 

「ほう、成る程! ングング」

 

「・・・・って、十香。アンタ何さっきから口をモグモグさせてるの?」

 

と、ソコで七罪が半眼で十香を見ながら言う。

そう言えば、先ほどから十香の言葉が妙にくぐもって聞こえている気がする。琴里はチラッと十香の方に目をやりーーーーすぐに原因を発見した。

十香が買ってきたチョコの袋を開け、バクバクと中身を摘んでいたのだ。

 

「ちょ・・・・っ、駄目じゃない十香、士道にあげる分が無くなっちゃうわよ!?」

 

「む? は・・・・っ! いつの間に・・・・!?」

 

琴里が言うと、十香は今自分の手の動きに気づいたように愕然とした表情を作った。

 

「お、おのれ狂三・・・・! 何と恐ろしい攻撃を・・・・ングング」

 

「・・・・いや、明らかに違うでしょそれ。ていうかまた食べてるし」

 

「うふふ、どうやら効いてきたようですわね。もっと食べたくなぁーれっ、ですわ」

 

「むぅ!? と、止まらん・・・・! ングング・・・・」

 

「狂三も乗らなくていいから!」

 

琴里はひとしきり叫んだ後、十香の手からチョコ袋を取り上げ、疲れたように息を吐いた。

 

「はあ・・・・念の為多めに買ってきて良かったわ。ーーーーほら、始めるわよ」

 

「うむ!」

 

琴里が言うと、十香は力強く頷く・・・・が、すぐにまた首を傾げる。

 

「・・・・むう、琴里。これはどうやって溶かすのだ?」

 

「え? 何言ってるのよ。そんなの決まってるじゃない。チョコを・・・・」

 

言い掛けて、琴里は数秒間言葉を止め、否、言葉だけでなく身体の動きを一切停止した。ただ頬を伝う汗だけが、ツツ・・・・とゆっくり動く。

 

「・・・・琴里さん?」

 

「どうかしたんですかー?」

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待って」

 

不思議そうな顔をした精霊達に声をかけられ、漸く金縛りが解けた琴里。汗を拭いながら考えを巡らせ、昔母と一緒にチョコを作った時の記憶を、自分の記憶の本棚から検索し出したが、あの時は既に液状になったチョコレートを型に流し込んでいた。

 

「(・・・・そうだ! あの時は火を使うのは危ないからって、母さんがチョコを流してくれたんだった・・・・!)」

 

まさか、令音が〈フラクシナス〉に戻ってしまった弊害がこんな形で出てくるとは。琴里は額に手を当て、苦々しく歯噛みした。

するとそんな琴里の様子を見て察したのか、狂三がクスクスと笑ってくる。

 

「あら、琴里さん。テンパリングのやり方が分かりませんの? よろしければ手解き致しますけれど」

 

「・・・・ッ! う、うるさいわね。分かるわよそれくらい!」

 

琴里が憤然と息を吐くと、ピシャリと言い放つ。・・・・が、一瞬後に疑問符が頭の中を埋め尽くす。

 

「(ーーーーテンパリング? テンパリングって何よ? チョコ溶かす事?・・・・天パ・・・・)」

 

「・・・・な、何よ」

 

琴里がチラッと七罪を見ると、七罪はビクッと驚いたように肩を揺らした。

 

「い、いえ、何でも無いわ。ーーーー兎に角、チョコを溶かすわよ。要は溶けさえすれば良いんだから、そう難しく考える必要は無いわ」

 

琴里が虚勢を張ってそう言って、調理を開始した・・・・のだが。

鍋に直接チョコの塊を放り込み、コンロの大火力で熱して、黒い煙を上げ台無しにしてしまう。

琴里はあらゆる勝負をしてきて特技が豊富な八舞姉妹を頼るが、早食い勝負なら毎度していたが、チョコ作りはしていないと言った。しかし、八舞姉妹がテレビで見た知識で鍋に水を張ってコンロの大火力にかけ、すぐにお湯になり、チョコの塊を再び入れるが、チョコが溶けてお湯と混じってしまった。

琴里達が調理しようとすると、七罪が何か言いたげな顔になるが、それに構う余裕のない琴里は、「舐めて溶かしてチョコを固めましょー」と提案しようとする美九をチョップで黙らせる。

そんな風に、精霊達がワチャワチャやっている間に、狂三は余裕綽々な強者の笑みを浮かべ、順調にチョコを作っていった。しかも、ニコリと微笑んだその顔は、「いつでもお手伝い致しますわよ」と言いたげな笑顔だった。

狂三に教わるなんて琴里のプライドが許さないし、どんな見返りを要求されるか想像もしたくない。こうなったら最強兵器ーーーー完璧超人・鳶一折紙に頼もうとした(こっちもこっちで、見返りが恐ろしいが)。

しかしーーーー。

 

「何?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

いつの間にか持ち込んだパソコンと3Dプリンターで、自分の裸体を成形している折紙を見て琴里は、否、十香達や狂三ですら無言になった。

・・・・何だが、自分の持っているチョコ作りのイメージと、今まさに目の前でウィーンウィーンガシャコンガシャコンガッチャーンコ! している物体が、頭の中で上手く繋がらないのである。

 

「・・・・・・・・・・・・、頑張って」

 

「頑張る」

 

琴里が汗を垂らしながら言うと、折紙が真剣な表情でコクリと頷いてきた。

狂三も汗を垂らしながら、見なかった事にしたのか、何事も無かったかのように調理に戻るのを見て、琴里達は途方に暮れる。

今度の今度こその最終手段ーーーー陰険陰湿毒舌賢者的な竜・ウィザードラゴンに頼ろうかと思ったが、ドラゴンは士道の訓練を見てくれているし、性別的には男性のドラゴンに聞くのは乙女としてあまりにも情けない気がするので懊悩する。

すると、そんな琴里を見かねてか、七罪が物っ凄く遠慮がちに声を上げた。

 

「・・・・琴里」

 

「・・・・何?」

 

「・・・・いや、あの、合ってるかどうか分からないし、失敗しても全然責任とか取れないし、そもそも私の言う事なんて聞きたくないかも知れないけどーーーー」

 

「いや、だから、何が?」

 

琴里が眉根を寄せながら返すと、七罪は視線を逸らしながら答える。

 

「・・・・簡単な作り方位なら、私分かるけど」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・先生ッ!」

 

琴里はガシッと七罪の手を握りしめた。

 

「おお・・・・!」

 

「七罪さん、凄いです・・・・!」

 

次いで他の精霊達も、尊敬の眼差しを七罪に送り、美九が抱きつこうとするが、八舞姉妹が「余計な事をするな!」と言わんばかりに、クロスボンバーで黙らせた。七罪が驚いたのか、美九の魔の手から逃れたからか肩を震わせ、落ち着かない様子で目を泳がせた。

 

「い、いや、そんなに期待されても困るんだけど・・・・」

 

「先生! 先ずは何を!」

 

「・・・・えっと、ボウルに刻んだチョコを入れて、それを湯煎して。あ、温度はできるだけ一定に・・・・」

 

たどたどしい指示を発する七罪。精霊達はそれを興味深げに聞くと、早速チョコ製作を開始した。

とーーーー琴里はそこで、不意に眉をぴくりと揺らした。

 

「・・・・?」

 

「ーーーーうふふ、ふふ」

 

そんな精霊達の様子を見て、狂三が何やら楽しげに笑った気がしたのである。

自分に挑んでくる弱者を嘲笑うようなそれではなく、まるで、歳の離れた妹達を微笑ましげに見守る姉のように。

しかし琴里が狂三の方に向き直ると、彼女は既にこちらから視線を外し、チョコの製作に戻っていた。

 

「・・・・まさかね」

 

琴里は小さく肩をすくめると、チョコを入れる為のボウルを手に取った。

 

「よし、じゃあ皆、狂三に負けないチョコを作るわよ!」

 

『おーっ!』

 

琴里の声に呼応するかのように、狂三以外の精霊達(パソコンを操作していた折紙も)は拳を上げた。

 

 

 

 

 

 

ー士道sideー

 

そして迎えた2月14日。

聖ウァレンティヌスの名を冠した恋人達の日でありーーーー士道(とドラゴン)と狂三の決戦の日。

 

「ーーーーよし」

 

いつも通り洗面所で顔を洗い、気合いを入れようと頬を張ろうとする。

がーーーー。

 

ーーーーバシンッ!

 

「オッゴ!?ーーーードラゴン、お前なぁ・・・・!」

 

《頬を張るよりこっちの方が気合いが入るだろう》

 

「そりゃそうだけどよ・・・・!」

 

ドラゴンのド突きで気合いを入れ直した。

相手は難敵・〈ナイトメア〉時崎狂三。何ヶ月も前に出会っていながら、唯一封印できなかった精霊。簡単にデレさせられる甘い相手ではないだろう。

けれど士道とて、ドラゴンと心中で死ぬつもりはサラサラない。

決意を改め、リビングの扉を開けた所で、士道は足を止めた。

扉の先に、まるで士道を待ち構えていたかのように琴里が立っていた。

 

「うおっ!?」

 

思わず驚いてしまった士道のリアクションに、琴里は不満そうに唇を尖らせた。

 

「うおって何よ、うおって」

 

「い、いや・・・・ちょっと驚いただけだよ」

 

琴里は数秒間疑わしげに士道の顔を覗き込んできたが、すぐに肩をすくめ、後ろ手に持っていた物を、無造作に突き出してくる。

 

「まあいいわ。はい、これ」

 

「え?」

 

《ーーーーふむ》

 

士道は目を丸くし、ドラゴンは若干目を細め、琴里が差し出したそれを矯めつ眺めつ眺め回した。

綺麗にラッピングが施さた、小さな箱が2つ。赤い包装紙に巻かれた黒いリボンが、まるで軍服姿の琴里のようだ。

 

「あ・・・・もしかして、チョコレートか?」

 

士道が言うと、琴里はフンと鼻を鳴らしながら微かに頬を染め、視線を逸らした。

 

「・・・・一応ね。妹からなんて自慢にもならないでしょうけど。ドラゴンの分も一応あるわよ」

 

「何言ってんだよ。ありがとうな、琴里」

 

士道は微笑みながらチョコを受け取ると、琴里が更に顔を赤くしながらプイとそっぽを向いた。

 

「はいはい。それより、ほら/////」

 

「ん?」

 

士道が首を傾げると、琴里が何やら手を軽く上げ、リビングに向かって手招きのような仕草をする。

するとそれに合わせるようにして、リビングに控えていたと思しき四糸乃、七罪、六喰、美九、二亜の5人の精霊達が、手に思い思いの箱や袋を持って士道の元に集まってきた。

 

「わっ、何だ皆、来てたのか? 今日は随分早いな」

 

「はい・・・・士道さんとドラゴンさんに、これを渡したくて」

 

「・・・・まあ私はどっちでも良かったんだけど、一応・・・・」

 

「むん。受け取るのじゃ、主様。おじさま。あのオナゴに負けるでないぞ」

 

「大丈夫ですよー。変なモノなんて入ってませんからねぇー」

 

「そうそう、ちゃんと自然物だから」

 

「何か後半の発言が怖いんですけど!?」

 

悲鳴じみた声をあげると、美九と二亜がカラカラと笑った。

ともあれ、士道の手の中に、次々とチョコが積まれ、ドラゴンへのチョコは思念体化したドラゴンとガルーダ達プラモンスターズが受け取る。あははと苦笑しながら、士道は皆に礼を言った。

 

「はは・・・・ありがとうな、皆。こんなにチョコを貰ったのなんて生まれて始めてだよ」

 

《ホワイトデーを期待しておいてくれ。この感謝の気持ちを盛大に返す》

 

「ど・・・・どういたしまして」

 

「ねーねー、開けてみて下さいよー!」

 

「お、いいのか? じゃあ・・・・」

 

美九に促され、士道は受け取った箱や袋をテーブルの上に置くと、その包装を順番に、丁寧に解いていった。

ハート形や星形、トリュフなど様々なチョコレートがお目見えする。一目で既製品ではない事も見て取れる。

 

「おっ、もしかして手作りか!?」

 

士道が言うと、精霊達が何処か誇らしげに首肯した。

 

「大丈夫だったか? 琴里、鍋に直接チョコ入れたり、お湯の中に突っ込んだりしなかったか?」

 

「そッ、そそそそそそそそそそんな事する訳ないでしょ!?」

 

《これはやってるな。盛大にやらかしたな明らかに》

 

あからさまに動揺して目を泳がせる琴里の様子に、ドラゴンが半眼になって呆れ混じりに言った。他の精霊達が何やら可笑しそうに笑っているのを見て、どうやら似たような事をやったようだ。

 

「(琴里も別に料理ができない訳じゃないけど、少し大雑把で強情な所があるからな)」

 

とは言え、今目の前に並んだチョコレートの出来映えは、素人ながら見事な物だ。

キチンとムラなく仕上がっているし、デコレーションも各々の特徴が出ていて可愛らしい。

琴里はオーソドックスなハート形。

四糸乃はよしのん形。

七罪はトリュフチョコ。

六喰は大小様々な星形。

美九は音符模様。

そして二亜は、半円形のブロンドミルクチョコの先端にイチゴチョコで突起をつけたおっぱいチョコ。

 

ーーーーバシンっ!

 

『卑猥な物を作るなっ!』

 

「ほんのお茶目じゃん!」

 

ドラゴンが二亜にオシオキをしていた。

1部リアクションに困る物もあったものの、こんなにも沢山のチョコを貰えるだなんて、男冥利に尽きると言うものだ。士道ドラゴンはもう1度皆に礼を言うと、チョコを一口ずつ味わっていった。

 

「うん、美味い! はは、こりゃプロ負けだな」

 

『うむ。皆美味しく出来上がっている』

 

士道とドラゴンの言葉に、精霊達が嬉しそうな顔をする。

するとそんな中、琴里が少しホッとした様子を見せながら肩をすくめた。

 

「お気に召したなら何よりよ。今日は頑張って貰わないといけないしね」

 

「ああーーーーそうだな」

 

士道は力強く頷くとチョコをもう1かけ口に放り込んだ。糖分という即効性のエネルギーと、皆が士道の背を押してくれるという実感が合わさり、身体中にやる気が満ちてくる。

そんな士道を見てか、琴里が苦笑しながら肩をすくめる。

 

「その様子をじゃ、心配はいらなさそうね。ーーーーああ、でも、あんまり食べすぎない方が良いかも知れないわよ?」

 

「え?」

 

琴里の言葉に、士道はタラリと汗を垂らした。

 

「まさか、本当に何か入れて・・・・」

 

「ないわよ! 十香達学校組が残ってるんだから、お腹いっぱいにしない方がいいでしょって言ってるの!」

 

琴里は士道の額をペシ、と叩きながらそう言った。




七罪って、本当に頼りになるやつだぜ!
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