デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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第十七章、これにて完結。


最悪の精霊、仇敵と相対する

ー士道sideー

 

「な・・・・」

 

《むぅ・・・・》

 

眼帯狂三の話を聞いて、士道は呆然と、ドラゴンは唸るような声を発した。

思わず、胸元と首を触ってしまう。無論、胸に風穴は開いていないし、首もキチンと繋がっている。

 

「俺は・・・・俺達は・・・・何度、死んだ?」

 

非現実な感覚に眉根を寄せながら、士道は絞り出すように言った。

たかがその1言を発するのに、イヤにエネルギーを使ったような気がする。ソレを己の口で認める事で、自分の命を否定してしまうかのような錯覚さえ覚えた。

が。眼帯狂三はそんな士道の目を見据えながら応えた。

 

「ーーーー204回」

 

「え・・・・?」

 

「それがーーーーこの6日の繰り返しの中で、士道さん達がDEMインダストリーの手にかかった回数ですわ」

 

「ーーーーーーーー」

 

《(・・・・予想よりも多いな)》

 

冷静なドラゴンと違い、士道は声すらも出なくなる。

204回。予想外の数字に、暫し呆然となる。

構わず眼帯狂三が続ける。

 

「わたくし達も気を張っていたのですけれど・・・・げに恐ろしきは魔王〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉ですわ。巧妙にコチラの隙を衝き、創意溢れる工夫を以て、士道さんの命を刈り取りに来ましたの。士道さん達が、『インフィニティスタイル』で応戦できる時も何度かありましたが、〈二ベルコル〉が悲鳴を上げる、もしくは命乞いをする度に攻撃の手を緩める刹那の瞬間に、士道さん達が殺されましたわ。ドラゴンさんが士道さんの身体の主導権を奪って戦う時は、〈二ベルコル〉達を躊躇なく倒して行きましたが、士道さんが〈二ベルコル〉達を憐れと思ったのか、ドラゴンさんが殺していくのを無理矢理止めた瞬間に、殺されましたわ」

 

《足を引っ張れて心中とは、最悪だ・・・・》

 

「お、おいドラゴン。狂三の言っている事が・・・・!」

 

《愚物めが。我らはかつて〈ナイトメア〉の手によって時間を遡り、歴史を改編しただろうが》

 

「うっ・・・・」

 

そう。如何に荒唐無稽な話であろうと、士道に眼帯狂三の話を否定する事はできなかった。

 

《ーーーーソレに何より、本体の〈ナイトメア〉の顔を良く見てみろ》

 

「えっ・・・・・・・・・・・・っ」

 

ドラゴンに言われて、気を失った本体狂三を改めて見やった。

いつも超然とした彼女からは考えられない位に疲弊した、その顔を。

例え士道とドラゴンの持つ『力』が目的であったとしても、狂三が大きな犠牲の上に士道とドラゴンの命を救ってくれた事が事実であるなら、それは、士道が発して良い言葉では無かった。

そんな士道の思考を察したのだろう。眼帯狂三が隻眼を伏せながら小さく首肯した。

 

「『わたくし』はその度、【6の弾‹ヴァヴ›】を使って過去へと意識を飛ばしましたわ。何度も、何度も。ーーーー無論、時を超えるのは意識のみ。使用した時間や死んだ分身体も、元の状態に戻りますわ。・・・・ですが、常に心を張り詰め続け、幾度も幾度も同じ時を繰り返した『わたくし』の精神は、限界を迎えつつありましたの」

 

言って、眼帯狂三が本体狂三の髪を優しく撫でる。

 

「だからーーーーお願いです、士道さん。ドラゴンさん。今だけは、『わたくし』を、休ませてあげて下さいまし」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

《・・・・・・・・・・・・・・・・》

 

士道もドラゴンも、無言のまま息を吐くと、再び眠る本体狂三に視線を落とした。

その貌は相変わらず美しくーーーーしかし何処か、弱々しく儚げに見えた。

理解は・・・・できる。狂三の目的を達する為には士道達の身体に封印された霊力と融合エネルギーが必要不可欠であり、DEMによって士道とドラゴンが殺される事は絶対に避けねばならない。狂三が何度もトライアンドエラーを繰り返し、士道とドラゴンを救ったのも道理ではある。

けれど、1つ分からない事があった。

狂三の閉じられた目を見つめながら、呟くように声を零す。

 

「何で・・・・お前は、すぐに俺達を『喰おう』としなかったんだ・・・・?」

 

それが不可解だった。

確かに士道は〈仮面ライダーウィザード〉であり、精霊達や

、一応〈ラタトスク〉が付いている。如何に狂三とは言え、そう簡単に事は成せないだろう。

だが、狂三は【6の弾‹ヴァヴ›】で以て、何度か同じ時を繰り返していたと言うのである。ドラゴンならまだしも、士道の隙を衝く事は不可能では無い筈だ。

しかし、狂三はそれをしなかった。

最初に交わした約束を守り、デートをしてーーーー己の秘密を全て明かしてまで、士道に理解を求めてきた。

士道にーーーー助けを求めてきた。

普段は見せない寝姿を士道に晒す位にまで、精神を疲弊させながらも。

 

「・・・・士道さん」

 

眼帯狂三が、フッと口元を緩めながら士道に視線を寄越してくる。

 

「野暮な事を聞かないで下さいまし。『わたくし』はーーーー」

 

《ーーーーおっと》

 

ーーーーと。

眼帯狂三が言おうとした瞬間、横たわっていた本体狂三の手が動いたかと思うと、ドラゴンが士道の身体を動かして、本体狂三から距離を開けた時、本体狂三のその手に短銃が現れ、タン、と銃弾が放たれ、漆黒の影に固めたような銃弾は眼帯狂三の頬を掠め、壁に弾痕を刻んだ。

一瞬後、眼帯狂三が驚いたように目を丸くする。

 

「・・・・わたくしが眠っている間に、随分とお喋りを楽しんだようですわね、『わたくし』」

 

本体狂三が半眼を作りながら、ユラリと身を起こす。傍に控えていた分身体が心配そうに手を差し伸べるが、ソレを無視して立ち上がった。

 

「・・・・失礼しましたわね。士道さん。年若い『わたくし』が、粗相を致しましたようで」 

 

狂三がフラつきを抑えるように額に手を当てながら言ってくる。

いつもの狂三の余裕に溢れる言動だがーーーー士道とドラゴンには、それが強がりだと分かった。思わず狂三を支えようと手を伸ばす士道。

 

「狂三ーーーー」

 

「・・・・っ」

 

狂三は士道の手を避けるように後ろに退いた。その表情には、嫌悪は見て取れず、どちらかと言うとーーーーそう、その手に触れる事を恐れているかのような様子だ。

狂三はそんな自分の表情に気づいたかのようにハッと肩を揺らすと、不敵な笑みを浮かべてみせた。

 

「ーーーー勘違いしないで下さいまし、士道さん。わたくしがお2人を助けたのは、その身に封印された『力』が失われては困るからですわ」

 

「あ、ああ・・・・分かってるよ」

 

気圧されるように士道が答えると、狂三はクルリと身を翻し、士道に背を向けた。

 

「・・・・興が削がれましたわ。今日はここまでに致しましょう」

 

「えーーーーお、おい、狂三!」

 

士道は慌てて叫びながら手を伸ばしたがーーーー狂三はそのまま、分身体達と共に影の中へと消えていった。

 

「・・・・っ、狂三ーーーー」

 

士道は暫しの間、狂三が消えた床を見つめながら、ドラゴンに問いかけた。

 

「・・・・ドラゴン・・・・!」

 

《・・・・正直、あの女が最終的にやろうとしている事は、我は容認できん。ーーーーだが、あの女に『借り』を作ったままなのは気分が悪い。貴様の好きにやってみろ》

 

「・・・・・・・・」

 

ドラゴンからの了解を得て、士道は拳を握った。

狂三。時崎狂三。

誰よりも恐ろしく、誰よりも冷酷でーーーー誰よりも、優しい少女。

幾度となく彼女に救われた少年は、ゆっくりと顔を上げた。

その双眸に、決意の光を灯しながら。

 

「今度は俺が・・・・俺達がお前を、救う番だ・・・・ッ」

 

 

 

 

 

 

ー狂三sideー

 

月明かりに照らされたビルの屋上に、インクを零したようにジワリと影が広がっていく。

狂三はその中から顔を出すと、そのまま一気に身体を外気に晒した。

 

「・・・・ふう」

 

少々フラつきが残っている。静かに深呼吸をしながら、フェンスに背を預ける。

すると狂三に続くようにして、左目に眼帯をした5年前の狂三の分身体が影から這い出てきた。

勿論士道の元には護衛として十分な量の分身体を残しているし、あんな話を聞いたなら、ドラゴンも感知範囲を限界まで広げた警戒心MAXでいるだろう。今狂三の分身体は5年前の眼帯狂三を始めとした数体を随行させている。

狂三は、先程気を失っている間に、士道達に要らぬ事を吹き込んだ犯人である眼帯狂三を不機嫌そうな視線で睨み付けた。

 

「ーーーー余計な真似をして下さいましたわね、『わたくし』」

 

「あら、あら」

 

狂三が言うと、眼帯狂三はおどけるように、或いは惚けるように、顎に人差し指を当てながら視線を外した。

 

「一体何の事か分かりませんわ。わたくしは、士道さん達が退屈していらっしゃると思って、世間話をしていただけですわよ?」

 

眼帯狂三が白々しく言う。狂三はピクリと眉の端を動かしながら喉を震わせた。

 

「・・・・『わたくし』」

 

が、それは眼帯狂三に向けた呼び声ではない。

その言葉に応えるように、狂三の足元の影が蠢き、先程まで狂三の身体を支えていた分身体が、すまなさそうに顔を出す。

 

「・・・・はい。あの眼帯の『わたくし』は、士道さんとドラゴンさんに、この数日の事を洗いざらい話しておられましたわ」

 

「きひっ!?」

 

まさかの同胞の裏切りに、眼帯狂三が甲高い声を上げる。狂三は半眼を作ると、再度彼女を睨め付けた。

 

「申し開きはありまして、『わたくし』」

 

狂三が腕組みしながら言うと、眼帯狂三は暫しの間唸った後、開き直ったように肩を竦めてみせた。

 

「お言葉ですけれど、寧ろ何がいけないのか分かりませんわ、『わたくし』。『わたくし』の決意は、苦労は、並大抵のモノではありましたわ。それこそ、警戒心の強い『わたくし』が、一時とは言え士道さん、それによりにもよってドラゴンさんの前で寝姿を晒してしまう程に」 

 

「・・・・う」

 

痛い処に『ライダースティング』され、狂三は微かに眉をひそめた。眼帯狂三が、その隙を逃さず、畳み掛けるように勢いに任せて続ける。

 

「ならば、それを士道さん達に報せる事を誰が咎められましょう。それに士道さんだって、幾度となく命を救われたとなれば、『わたくし』に感謝の念を抱くでしょうし、あの! 士道さんと違ってつけ入る隙の全く無いドラゴンさんにも『借り』を作る事ができましたわ。一体何の不都合がありますの!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

眼帯狂三が、演説ぶるように大仰な身振り手振りをしながら、まるで逆転する裁判よろしく、狂三を指さしながら訴えかけてくる。

狂三は暫しの無言に後、微かに頬を染めながらそれに返した。

 

「・・・・ではありませんの///」

 

「はい? 何と仰いまして?」

 

「誤解されてしまうではありませんの! わたくしと士道さんの勝負は、デレた方が負けなのですわよ! そんなーーーー士道さん達を助ける為にそんな事をしていた等と知られれば、まるでわたくしが士道さんに絆されてでもいるみたいではありませんの・・・・ッ!///」

 

「・・・・っ、わ、『わたくし』・・・・?」

 

眼帯狂三は驚いたように目を見開いた後、やがて肩を震わせて笑い始めた。

 

「ふふ・・・・あはははっ、そうですわね、確かにその通りですわ」

 

「・・・・何だか、馬鹿にされている気がするのですけれど」

 

「気のせいですわ」

 

眼帯狂三が肩を竦めながら言うと、狂三は不機嫌そうに眉根を寄せた。

 

「(ーーーーわたくしとした事が、下手を打ちましたわ・・・・! 【6の弾‹ヴァヴ›】を撃って倒れる前に戻りたいですが、まだ士道さんが死んでいないから〈刻々帝‹ザフキエル›〉は力を取り戻していませんわ・・・・! かと言って、生きている状態の士道さんにキスをしようものなら、逆にわたくしの残った霊力を封印されてしまうかも知れませんわ・・・・!!)」

 

懊悩する狂三を見て、分身体の1人が苦笑しながら問いかける。

 

「それで・・・・これからどういたしますの、『わたくし』。今を切り抜けたとしても、時間はあまりありませんわよ?」

 

「・・・・そうですわね」

 

狂三は渋面を作る。

 

「(ーーーー士道さんとドラゴンさんが生きている以上、作戦は続行ですわね。しかしこのままでは、士道さん達を『喰らう』事はーーーー)」

 

と。

 

【・・・・悩んでいるようだね】

 

「・・・・ッ!?」

 

瞬間、夜闇に分身体以外の声が響き、狂三は息を詰まらせた。

高いのか、低いのか、男なのか、女なのか。それすら分からない奇妙な声音。それには聞き覚えがあった。

ずっとーーーー“何も知らない狂った精霊を演じてきた”。しかし、ソレももう終わりだ。即座に分身体を展開させ、古式銃を2つ、影から出現する。

 

【・・・・おや、あまり歓迎されていないようだね。私は助言に来ただけなのだが】

 

声を発している者の姿は、その声と同様、掴み所がない。

いつの間にか屋上の一角に、全身にモザイクを纏ったような影が立っている。存在の解像度が粗いとでも言うのだろうか。確かにソコに立っている筈なのに、何がいるのかが分からない。

そう。精霊〈ファントム〉である。

狂三はかつてこの精霊に、幾度か情報提供を受けた事があった。実際、五河士道、〈仮面ライダーウィザード〉の存在自体、この〈ファントム〉からもたらされた情報だった。

けれど今の狂三にとって〈ファントム〉は、もう協力者ではない。

否。明確にーーーー『敵』である。

 

「・・・・歓迎、ですって? わたくしが? あなたを? 冗談は休み休み言って下さいまし」

 

狂三が視線を鋭くしながら睨み付けると、数秒の後、〈ファントム〉は全てを察したように息を吐いた。

 

【・・・・ああ、そうか。君は知ってしまったのか。ーーーーならば仕方ないね。残念だ。助言をしたいと言うのは本当だったのだけれど】

 

言って〈ファントム〉が、微かに動きを見せる。

 

「逃がすとーーーーお思いですの・・・・ッ!?」

 

狂三の声に従い、分身体達が一斉に引き金を引き、弾を放つ。

何発もの黒い銃弾が闇夜を駆け、〈ファントム〉に襲い掛かった。

 

【ーーーーーーーー】

 

〈ファントム〉が分身体達の弾を避け、上空へと飛び上がる。が、ソレこそが狂三の思う壺である。

この時の為に、幾つかの相手の回避のパターンを思考し、対策し、備えていたのだ。これもその1つ。

逃げ道を作ってやる為、敢えて分身体達に上方を狙わせなかったのだ。

 

「〈刻々帝‹ザフキエル›〉ーーーー【7の弾‹ザイン›】!」

 

狂三は吠えると同時、時間停止の弾丸の引き絞り、〈ファントム〉に突き刺さる。

瞬間、空中にそのモザイク模様が、ピタリと静止した。

 

「『わたくし達』!」

 

次いで、分身体達の銃口を上に向け、一斉に銃弾を放つ。

哀れ〈ファントム〉は、100発近い銃弾の雨を浴び、物言わぬ屍と成り果てた。ーーーーかに見えた。

 

「・・・・やれやれ、油断したね」

 

「なーーーー」

 

前方から響いた声音に、狂三は思わず眉を寄せた。

上空には未だ静止するモザイクの塊がある。けれどその声は、その塊の直下から聞こえてきた。

屋上の床に、1人の女性が蹲るような格好で膝を突いている。

まるでそう、【7の弾‹ザイン›】によって停止させられた『服』を空中で脱ぎ捨て、ソコヘ着地したように。

 

「それが・・・・あなたの本当の姿、と言う訳ですの?」

 

狂三は油断なく銃を構えながら、その女性を睨んだ。

 

「・・・・まあ、そう言う事になるね。まさかこうも鮮やかに障壁を剥がされるとは思わなかったよ。流石だねーーーー狂三」

 

女性がそう言いながら、ゆっくりと顔を上げる。

その、顔を見て。

 

「ーーーーッ」

 

狂三は目を見開いた。

綺麗な藤色の長い髪を無造作に纏めた、20歳くらいの女性。病人のように蒼白の貌。分厚い隈に彩られた双眸。身に纏った服のポケットからは、ツギハギだらけのクマのぬいぐるみが顔を出していた。

 

 

 

「“村雨ーーーー先生”」

 

 

 

「・・・・・・・・」

 

女性ーーーー村雨令音は、無言を以てそれに返した。

そう。月光を背に浴びながらそこに現れたのは、狂三がその学校にいた時の教師、村雨令音だったのだ。

無論、彼女がただの教師ではなく、士道を支援する〈ラタトスク〉の機関員である事も知っている。

が、それを加味してもなお、令音の存在は意外過ぎた。勿論、〈ファントム〉が七罪の〈贋造魔女‹ハニエル›〉のような変身で誤魔化していると言う可能性もあったが。

 

「(ーーーー意味が分かりませんわ。〈ファントム〉の中身が村雨先生? ならば、わたくしが知ったあの情報はーーーーーーーーーーーー)あ、あ・・・・」

 

コンマ数秒ほど思考を巡らせていた狂三は、絞り出すように声を漏らす。

 

「そう言う・・・・事でしたの。嗚呼、嗚呼ーーーー漸く、全てが繋がりましたわ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

狂三の言葉に、令音は僅かに目を細めると、たん、と床を蹴った。

そして人間のモノとは思えない跳躍力を以て、後方へと離脱しようとする。

 

「ーーーー! 『わたくし達』!」

 

反射的に、狂三は叫んでいた。

すると、床の上を影が蠢いていき、令音が着地した瞬間、無数の『手』がその身体を捕らえた。

 

「・・・・くーーーー」

 

令音が表情を歪め、その『手』から逃れようと藻搔く。

しかし、多勢に無勢である。やがて令音は幾重にも『手』に拘束されーーーーそのまま影に、『喰われて』いった。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

狂三は暫しの間、令音が飲み込まれた影に視線を落とした後、吐き捨てるように呟いた。

 

「ーーーーあなたには、落ちる地獄すらありはしませんわ」

 

月が雲に覆われ、夜の街にさらに闇に満ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーウェスコットsideー

 

DEMインダストリー日本支社のウェスコットの執務室。

ソコにある応接用のテーブルの上座にあるソファに座ったウェスコットが。左側のソファにワイズマンが。そして、右側のソファにはーーーー。

 

[サモン ナウ!]

 

ウェスがリングで自分のバックルに読ませると音声が響き、ウェスコットの身体に4角形の魔法陣が展開され、その中から、

 

ーーーーグルルルルルル・・・・。

 

豪腕を持った2足型のドラゴン型のファントム、ウェスコットの〈ドレイク・ファントム〉が、唸り声を上げながら身体を発光させ、その体躯を小さくさせると、『魔人形態』となり、右側のソファに座った。

 

「フフフフ。Mr.ワイズマン。我が半身ドレイク・ファントムよ。ーーーー間もなくだ。間もなく、我らの目的が果たされる!」

 

エレンもアルテミシアも連れず、2人に知られず、『魔獣ファントム』の首魁に自分が中の魔獣と生身で会話等、マトモな神経の持ち主なら発狂するような状況である筈なのに、ウェスコットは欠片も怯えた様子を見せず、テーブルにワイン(ゼロが6つ付く額)を淹れたグラスをそれぞれに渡して話を続ける。

 

『Mr.ウェスコットよ。その態度から察するが、遂にーーーー『アレ』が完成できたのか?』

 

「あぁ。本社で研究開発していた『アレ』が、漸く完成してね。コチラに向かってくるのさ。・・・・『彼女達』も引き連れて、ね」

 

ウェスコットがパチンッと指を鳴らすと、テーブルの真上に魔法陣が展開され、その魔法陣から、ある『小箱』を持って来る真っ黒いダークスーツを着用した3人の女性達が映し出された。

それを見て、ワイズマンもドレイクもコクリと頷いた。ウェスコットは亀裂のような笑みをさらに濃くして、ワインの入ったグラスを手に取り、椅子から立ち上がってからグラスを高らかに掲げ、それに倣うように、ワイズマンとドレイクもグラスを手に取って立ち上がる。

 

「さぁ、乾杯しよう。乾杯しようじゃあないか。間もなく生まれるーーーー」

 

その瞬間、ウェスコットの言葉と重なるように、ワイズマンとドレイクの声が、異口同音に重なる。

 

『『「『新たな世界』に!」』』

 

ーーーーチン・・・・!

 

3人のグラスが静かにぶつかり合った音が、執務室全体に小さく響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーグレムリンsideー

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

グレムリンは人間の姿で、DEMインダストリーの日本支社のーーーー外壁に張り付き、ウェスコットの執務室の窓からウェスコットとドレイク・ファントム。そしてワイズマンの会合に耳を傾けていた。

高層ビルの外壁に張り付くなど、イカれているとしか言いようの無いと事なのたが、グレムリンは腕だけ怪人体に変えて、外壁を掴んで執務室の様子を伺っていた。

ワイズマンもウェスコットも、お互いの側近である筈のエレンとメデューサを連れず、自分達だけで何かを話し合っているのだ。

 

「・・・・ふぅ〜ん。そ~言う事、か」

 

グレムリンはその目に、何かの『確信』を得たような光を宿し、不気味に微笑んでいた・・・・。

 

 

 

ー『狂三リフレイン』・FINー

 




遂に怨敵を倒した狂三。しかし、これで終わった訳では無い。




次回、デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚

自らを犠牲に士道とドラゴンを救ってきた狂三。彼女の本当の想いを皆に伝える士道。

「皆・・・・狂三は・・・・」

しかしドラゴンは、『誰かの過去の記憶』を見る。

『この記憶は・・・・まさか・・・・!?』

最悪の未来を回避する為に奔走する狂三を救いたいと思う士道。
しかし、ウェスコット達とワイズマン達が、総力を結集して、士道とドラゴンの抹殺に動きます。

「ーーーーさあ、始めようか〈二ベルコル〉。俺とお前の、戦争‹デート›の時間だ」

士道は奇策を用いて、疑似精霊〈二ベルコル〉を攻略する。


第十八章 『狂三ラグナロク』

『ーーーー”澪“。君はそうか・・・・彼の為に・・・・!』
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