デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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遂に、核心へとーーーー。


記憶の少女

ー???sideー

 

ーーーー1面の、白。

『ソレ』を1言で表そうとしたら、そんな表現になってしまうだろう。

信心深い者なら神の審判。陰謀論者なら敵性国家の核攻撃。常人なら幻覚か白昼夢と思う。ーーーーそんな異常な光景。

爆発。

そう、恐らくは爆発・・・・だったのだろう。

しかし『ソレ』は、少年の頭の中にある『爆発』のイメージと規模が違い過ぎる為、その現状に相応しい言葉が見つからなかった。

ほんの数秒前にまで、彼はいつもと何ら変わらぬ『日常』の中にいた。

本を買おうと商店街にノンビリと向かいながら今日の夕飯のメニューに想像を巡らせていると、前方に広がる見慣れた街並みが、突如として目映い光に包まれ、否、正確には、その街を含んだ、数十キロに及ぶであろう広大な領域が、だ。

一瞬後には、辺りに凄まじい轟音と衝撃波に吹き荒れ、彼の身体は木の葉の如く軽々と吹き飛ばされてしまった。

 

【く・・・・あ・・・・っ!】

 

地面に、崩れた塀に叩きつけられ、苦悶の声を発する。

数瞬の後、衝撃波が収まり、辺りに静寂が満ち、否、先程の轟音に聴覚が一時的に麻痺したようだ。

 

【ぐ・・・・】

 

身体の上に降り注いだ建物の砕片や小石を払い、痛みを堪えて身を起こす。

 

【何だ・・・・一体・・・・、何が起こったって言うんだ・・・・?】

 

少年は霞む目を擦りながら顔を上げ、そしてーーーー。

 

【なーーーー】

 

前方に広がる景色を見て、言葉を失った。

何があった訳では無い。

ーーーー“何もなかったのだ”。

ビルも、家々も、車も、電信柱も、信号機も、街路樹も、道路も、そしてーーーー人の姿さえも。

ほんの数分前まであった『街』の1分が、存在しなかった。

あるのは綺麗に削り取られた地面と、吹き荒ぶ風のみ。

あれだけの大爆発が起こったのだからそれも当然と思えたがーーーー違う。

強烈な、違和感。彼は目を見開いたままもう1度辺りを見やった。

明らかに瓦礫の数が少ないのだ。

コレが隕石の衝突や爆弾、或いはガス爆発等によるものだとしたなら、ソコにあるものを破壊はしても、その残骸は周囲に撒き散らされる筈。しかし周りに散らばった瓦礫は、爆発そのものではなく、その余波によって壊された建造物の物ばかりだった。

車も残骸も、木々の破片もーーーー人の死体も。爆心地と思しき場所には、当然そこにあるべき物が、存在しなかった。

そう。数十キロに及ぶやも知れない広大過ぎる領域が更地になっているというのに、ソコに在ったであろう膨大な物資が、生物が、何処にも見当たらない。

まるでーーーーその範囲だけが消去されてしまったかのように。

 

【・・・・・・・・・・・・】

 

否ーーーー少年はゴクリと唾液を飲み下し、自分の考えを否定した。

確かに異常。常識では考えられない事態だ。

しかし、この現象に全く心当たりが無いかと問われれば、答えは『否』だった。

ーーーー空間震。

“数ヶ月前”ユーラシア大陸に大穴を開けたて言う、原因不明の大災害。

その世紀の大事件は、連日のようにテレビや新聞を賑わせていた。そして、それに続くように世界各地で小規模な空間震が発生している。

今彼の目の前に広がった光景は、テレビで見た空撮映像とそっくりだったのだ。

 

「コレが・・・・空間震・・・・?」

 

少年は呆然と呟くと、再度その光景を見渡し、身震いした。

人類史に類を見ない極大災害だと知ってはいた。対処法も回避法も分からない悪魔のサイコロだと認識した。

けれどそれを目の前にーーーーしかも、後数分家を出るのが早かったなら、巻き込まれていてしまっていたやも知れない状況でーーーー示されると、何処か作り話‹フィクション›めいていた感覚に、途端に血が通い始めたのだった。

だが。

 

「・・・・ッ!?」

 

次の瞬間、彼は恐怖以外の感情で身体を震わせた。

遥か前方ーーーーマッサラになってしまった大地の上に、小さな小さな人影のような物が見えたからだ。

あの爆発の中、生き残りがいたとは考えづらかったが、建物の地下に潜っていた人が這い出てきたのかと思った。

 

【ち・・・・】

 

彼とて、今し方原因不明の大爆発が起こった場所になど足を踏み入れたくはない。また爆発が起こるかも知れない。

しかし。もしかしたらあの人は怪我をしているかも知れない。もしかしたら、その場からの動けずにいるかも知れない。ーーーーそんな想像が頭を掠めた瞬間、彼の足は半ば自動的に動いた。

早くあの人影の状態を確認しなければと言う思いと、もしもの場合はその人物を担いで此処を離れなければと言う焦燥が、少年の足をいつもより早く動かしていた。

ーーーーが。

 

【ソコのあなた! 大丈夫でーーーー】

 

漸くその人影の実像がハッキリと捉えられる距離まで来た所で。少年は、思わずその場に足を止めた。

 

【えーーーー】

 

喉から、半ば無意識の内に声が漏れる。

理由は、至極単純なものだった。

あらゆるモノが消し去られた大地に蹲った、一糸まとわぬ姿の少女。

その存在が、彼をその場に釘付けてしまった。

視線を、注意を、心をも、・・・・一瞬にして、奪い去られ。

それくらいに、あまりにも、尋常でなく、彼女は、“暴力的なまでに、美しかった”のである。

 

【君、は・・・・】

 

 

【・・・・・・・・・・・・・・・・】

 

少年の言葉を聞いて、初めて彼の存在に気づいたかのように、少女がユラリと顔を上げる。

 

ーーーードクン・・・・!

 

と、心臓が収縮する。

 

【・・・・・・・・・・・・・・・・】

 

少女の唇が、微かに動く。

少年は、その声をーーーー。

 

 

 

 

 

ー士道sideー

 

『「・・・・・・・・君は」』

 

ボウッとした意識の中に、そんな声が聞こえた。

それが自分とドラゴンの声だと気づいたのは数秒後だ。

 

「へ・・・・? あれ、ここ(バシンっ!)Hi-νっっ!!?」

 

強烈な激痛が頭を襲い、滲んでいた視界が一気に覚めてきた。痛みが引き、部屋を見回すと、〈フラクシナス〉の医務室で寝ていたようだ。

 

「・・・・ああ、目が覚めたかい、シン」

 

ベッドの上で悶えていた士道の頭上から声が聞こえ、顎を上げる要領で視線をそちらに向けた。

ベッドの枕元に令音が立っており、士道の位置からだと、顔より先に、夕弦に六喰に美九の巨乳3人を上回る、暴力的な豊乳が目に入ってしまった。

 

「んな・・・・っ!?」

 

「・・・・ん? どうかしたのかね」

 

「あ、いや、何でもないです・・・・」

 

頬を赤くしながら、気まずげに顔を横に逸らす。

 

《このムッツリ童貞スケベエロ坊や》

 

「(うるせぇ! さっきの痛みは忘れないなからな!)」

 

ドラゴンの嘲笑の声が響き、悪態をついた。

すると、ベッドの横で士道を見守っていたらしい精霊達の姿が目に入った。

 

「シドー! ドラゴン! 大丈夫か!」

 

「無理・・・・しないで下さい」

 

心配そうな顔をした精霊達が士道の元に駆け寄り、口々に言ってくる。士道は困惑気味に返した。

 

「な、なんだなんだ。どうしたんだよ、一体」

 

「どうしたんだよ、じゃないし! いきなり倒れたもんだからビックリしたし!」

 

「首肯。〈封解主‹ミカエル›〉を頭に差し込んだ後、暫くブツブツ言った後、気を失ってしまったのです。しかも、ドラゴンまで音信不通になりましたし」

 

「え・・・・あ」

 

《ふむ・・・・》

 

八舞姉妹の言葉に、士道は首を傾げた後、声を零し、ドラゴンを思案するように声を漏らす。

そうだ。彼女らの言う通り士道の記憶は、〈封解主‹ミカエル›〉を頭に差し込んだ所で途絶えたのである。

 

「(そうだ・・・・。俺、〈封解主‹ミカエル›〉を頭に差し込んだ辺りで記憶が・・・・ドラゴン、お前は?)」

 

《・・・・・・・・いや、我も記憶が途切れている》

 

何やら歯切れの悪い言い方をするドラゴンに、怪訝そうになる士道だが、再び精霊達に声を発する。

 

「皆ゴメン。心配かけちまったな」

 

「いえ、目覚めて何よりよ」

 

「そうですよー。大事がなくて良かったですー」

 

「流石私のキス。眠り姫が目覚めた」

 

「え・・・・っ!?」

 

《遂に寝込みを襲ったか》

 

皆の声に紛れて、肉食獣‹折紙›がシレッととんでもない事を言う。士道は驚愕に目を見開き、ドラゴンは半眼になった。が、すぐに琴里が折紙の側頭部をコンと小突いた。

 

「何適当な事言ってるのよ! 士道も信じないの!」

 

「だが待って欲しい。この空間には数多の分子が浮遊している訳で、私の呼気に含まれる分子が士道の口に触れていないとは言い切れない。つまり間接キスをしていたと見なしても問題ないのでは」

 

「!? ちょ、ちょっと待って下さい教授! と言う事は、先程からずっと同じ部屋にいる私と皆さんは・・・・!」

 

「組んずほぐれつディープキス状態」

 

「在野にこんな天才が! 学会は一体何をしているんですかー!」

 

鳶一教授の画期的学説に、誘宵研究員が興奮気味に賛同を示す。琴里が額に手を置きながらハアと吐息し、他の皆もとりあえず無視する。

と、そんな中、1人申し訳無さそうに肩をすぼませている少女ーー六喰がいた。

 

「むん・・・・」

 

「六喰?」

 

士道が声を掛けると、六喰はピクッとを身体を震わせてから言葉を続けた。

 

「・・・・すまぬのじゃ、主様。おじさま。むくが〈封解主‹ミカエル›〉を使等と言ったばかりに・・・・」

 

言って、六喰がすまなさそうに表情を曇らせる。

 

[ドラゴライズ! プリーズ!]

 

ドラゴンが士道の腕を動かして自分を六喰の頭くらいの大きさで召喚させると、ドラゴンは近くの机に置いてあったミネラルウォーターのペットボトルを士道に渡してから、六喰の頭を優しく撫でる。

 

『ーーーー気にするな六喰。〈封解主‹ミカエル›〉を使う事に賛成したのは我も同じだ。君だけが責を背負わなくて良い』

 

「おじさま・・・・」

 

ドラゴンがチラッと士道に目配せをすると、士道はフッと息を吐き、ミネラルウォーターを少し飲んでから、ペットボトルを机に置き、六喰に大丈夫! と言うように身体を起こして見せた。

 

「ほら、見ての通りだ。何も問題ないって。ていうかそもそも、六喰のせいなんかじゃないよ。実は今朝から寝不足で調子が悪かったんだ」

 

「主様・・・・」

 

2人の意を察したのか、六喰はコクンと首を前に倒した。その様子に、精霊達も頬を緩めた。

すると、それから数秒後。皆の話が一段落するのを待っていたかのように、仁藤やキマイラズと共に壁際の方にいた真那の声が聞こえてきた。

 

「ーーーーで、起き抜けに悪ーですけど、兄様。どうだったんですか?」

 

「え?」

 

「だから、〈封解主‹ミカエル›〉の結果ですよ。見た処人格が変わったりはしてねーみたいですけど・・・・何か、思い出しやがりましたか?」

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

真那の言葉に、皆がゴクリと息を呑む。精霊達の視線が、一斉に士道とドラゴンに集まる。

真那の質問も尤もである。そもそも士道は、失われた過去の記憶に『崇宮澪』の手掛かりが無いかを探す為に〈封解主‹ミカエル›〉を使い、ドラゴンもその影響を受けた。

そしてーーーー2人は見た。

士道の物でありながら、士道の物でない記憶を。目にした事が無い筈の、既知の光景を。

 

「ああ、それは・・・・」

 

が。士道はソコで言葉を止めた。別に勿体ぶろうとしている訳では無いし、秘密にしようと言う意図もない。

ただ単純にーーーー何を見たのかが良く思い出せないのだ。チラッとドラゴンを見ると、ドラゴンも肩を竦め、どうやら士道と同じようだ。

 

「あれ・・・・おかしいな。確かに・・・・俺達は、何かを見たんだ」

 

額に手を当てながら、唸るように声を発する。しかし頭の中で霧散した光景は、幾ら考えを巡らせても実像を結ぶ事は無かった。

例えるならば、夢から醒めた後のような感覚。確かに一瞬前まで夢を見ていた筈なのに、目を覚ました瞬間、その世界が砂糖菓子のように砕けてしまい、『何かを見ていた』と言う夢の残骸のような実感だけが頭に残っているのだ。

 

「・・・・くそ、一体何なんだ。何で俺は、こんな大事な事を・・・・」

 

と、士道が頭を抱えていると、ふとその肩に優しく手が置かれた。

ーーーー令音だ。

 

「・・・・落ち着くんだ、シン。焦る事は無い。また別の方法を考えれば良いさ」

 

「令音さん・・・・」

 

士道が頭を上げると、部屋にいた精霊も、それに同意するようにウンウンと頷いてきた。

ドラゴンは、精霊達の邪魔にならないように少し離れる。

 

「そうだぞシドー。きっと何か方法がある筈だ!」

 

「・・・・まあ、別にゼロがゼロになっただけだし、気にしなくて良いんじゃない」

 

「ねー、少年たら焦らし上手ー」

 

「・・・・ああ、そうだな。ありがとう、皆」

 

皆に言われ、吐息と共にそう応える。

正直な処、無力感と軽い自己嫌悪に苛まれていたのだが、そんな姿を見せて皆を不安がらせる訳にはいかない。士道は気を取り直そうとドラゴンに目を向けると。

 

「ドラゴン(バシンっ×2)ナイチンゲールっ!?」

 

ドラゴンは一瞬で士道の両頬を尻尾で同時に叩くと、珍妙な悲鳴を上げるが、お陰で気合いが入った。

 

「よっしゃ。気合いが入ったぜ・・・・!」

 

「その意気です、兄様。ーーーーついては、1つ提案がありやがるんですが」

 

と、真那が指を1本立てながら言ってくる。士道は不思議そうに首を傾げた。

 

「提案?」

 

「ええ。さっき使った天使ーーーー〈封解主‹ミカエル›〉って言ってやがりましたよね。あれ、今度は真那の頭に刺して見てくれねーですかね?」

 

「え・・・・?」

 

言われて、目を丸くする。

だが、真那の言わんとしている事はすぐに分かった。

記憶を無くしているのは士道だけではない。真那もまた、過去の記憶が封印されているのだ。

そして、士道の実妹である以上、彼女の記憶の中にも『崇宮澪』の情報があるかも知れない。確かに、その提案は理に適っているように思えた。

 

「成る程、確かに・・・・」

 

しかしソコで、そんな真那と士道の間に入るように、琴里がスッと前に進み出て、仁藤が真那の肩に手を置いた。

 

「はいはい、それはまた今度ね。とりあえず、士道の回復を待ちましょ?」

 

「真那さん。士道くんも疲れています。休ませてあげましょう」

 

「え? いや俺なら(バキィンッ!!) アクシズっ!?」

 

士道が声を上げようとしたが、ドラゴンが尻尾ド突き(威力激強)でベッドに沈めた。

ピクピクと動く士道に、何かを察したらしい二亜が割り込む。

 

「そうそう、男の子は1回出したら暫く休憩しないといけないんだから。少年が若いからって無理させちゃ駄目だよマナティ。あ、天使の事だかんね?」

 

等と言いながら、チラと士道の方に視線を送ってくる。

士道は痛みに悶えながら、漸く察した。

 

「あ・・・・」

 

確かに真那の記憶は封印されている。

しかしそれは、士道達が望む『崇宮澪』の情報のみでは無く、真那がかつてDEMインダストリーに捕まり、身体に魔力処理を施された際のものも含んでいるのだ。

それこそ、二亜程の凄惨ではないにせよ、決して愉快な物でない事は確かだろう。

〈封解主‹ミカエル›〉が記憶を選択して解錠してくれる保証がない以上、真那への使用は避けた方が良さそうだ。

 

「・・・・そうだな。悪い、真那。また今度にしてくれないか?」

 

「ふむ・・・・」

 

士道が言うと、真那は口をへの字に結びながら顎を撫でた。

士道達の意図を完全に理解した訳では無さそうだったが、何か理由がある事は察したのだろう。フウと息を吐き、ヒラヒラと手を振る。

 

「分かりました。兄様達がそう言うのなら、そうしておきましょう」

 

言って、存外アッサリと引き下がる。相変わらず物分りが良いと言うか、さっぱりとした少女である。見た目は中学生なのに、思慮が深く大人の貫禄があるように見える少女、それが真那だ。

 

「ああ・・・・悪いな、真那」

 

「いえ。こちらこそ無理を言って申し訳ねーです」

 

真那の言葉に、琴里が安堵の息を吐く。こちらの妹様もまた、士道よりずっと頭の回転が早く、頼りになる司令官。

 

「ま、兎に角今は休んでちょうだい。『何かを見た』っていう感覚が残っているみたいだし、もし問題無いようだったら、今度は脳波を測定しながら〈封解主‹ミカエル›〉を使ってみましょう。もしかしたら何か分かるかも知れないわ」

 

「ああ、そうしてくれ」

 

士道が言うと、琴里は首肯を以てそれに返し、パンパンと手を叩いて見せた。

 

「はい、じゃあ皆、一旦戻りましょ。あんまり賑やかだと、士道達がゆっくりと休めないわ」

 

「大丈夫。気配を消すのには自信がある」

 

「はーい! 私子守歌歌えまーす!」

 

「はい! アタシ少年とドラくんの寝顔スケッチできます!」

 

「ソコの3人はトイレ行く時は監視付きよ。強行手段に出たら仁藤捜査官に突き出してしょっぴいてもらうからね」

 

「鳶一折紙さんは五河家への『住居侵入罪』に盗聴機等を仕掛ける『建造物侵入罪』の容疑に、五河士道くんへの『わいせつ罪』。誘宵美九さんは七罪さん等の精霊達や同業のアイドル達への『同性に対する不同意わいせつ罪』の容疑に、去年の『天央祭』で天宮市全体を巻き込んだ『騒乱罪』。本条二亜さんも五河士道くんへの『セクハラ』の疑いがありますからね。ブタ箱にしょっぴく理由なら叩けばかなり出てきそうですが?」

 

琴里が半眼で言い、仁藤もすまし顔で警察手帳に書かれている、これまでの折紙達がやらかしてきた事をツラツラと読み上げながら言うと、折紙(「チッ」と舌打ち)と、美九(ピィピィ〜♪と口笛を吹きながら大きな汗を垂らす)と、二亜(タハハと苦笑しながら汗を流す)は明後日の方向に顔を逸らす。

琴里と真那と仁藤と令音が精霊達の背中を押して医務室を出ていく。

士道はそんな彼女らの背を苦笑しながら見送った後、ゆっくりとベッドに背を落ち着けた。

 

『ーーーー今日は色々と起き過ぎたな。今は気持ち等を落ち着ける為にも、ゆっくり眠るといい』

 

「・・・・あ、ああ」

 

と、珍しくドラゴンが毛布を士道にかけながら優しい言葉を持ちかけてくると、士道は若干の気持ち悪さを感じながら、天井を見上げ小さく呟いた。

 

「・・・・崇宮、澪・・・・」

 

そしてその名を呟きなから、天井に向かって手を上げ、指を1本ずつ動かして拳を握る。

ーーーー1つだけ。

そう、1つだけ士道達は、琴里達に言っていない事があった。

別に情報を偽った訳では無い。何かを見た感覚があるのに内容を思い出せないのは本当である。

 

「(けれどーーーー何故だろう・・・・)」

 

記憶に無い筈の『崇宮澪』の名を聞く度、思う度、唱える度。

心臓がキュウと引き絞られるかのような感覚を覚えてしまう。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

士道は無言で手を下ろすと、布団を被って目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ードラゴンsideー

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

ドラゴンは士道を見てから、ペットボトルに残った水に浮かぶ自分の顔を見る。

 

『(ーーーー時は近づいている、か・・・・)』

 

その姿がーーーー“士道を少し大人にしたような容姿”となっていた。




簡単には核心に近づけない。
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