デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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DEMの暗躍。???の過去

ーエレンsideー

 

「・・・・・・・・」

 

エレンは会社の1室で椅子に腰掛けながら、苛立たしげな様子で足を小刻みに動かし、その精霊達にも負けない可憐な顔は今、過度なストレスで不快そうに歪んでいた。

原因はーーーー。

 

「ーーーーねぇねぇ、エレンってお父様の幼馴染みなのよね?」 

 

「昔のお父様ってどんな感じなの?」

 

「ていうかアルテミシアって言いづらくない? 愛称とか無いの?」

 

「何になるの? アルミ?」

 

「キャハハハハハハハハ」 

 

「ねぇねぇ、この前グレムリンに、【髪の手入れなら僕がしてあげるよ☆】って言われたんだけど?」

 

「やだもぉ〜、私達の事を口説いてんのかなぁ?」

 

「そういえばエレン、シャンプー何使ってるの?」

 

「あ、枝毛発見♪」

 

・・・・等と。

普段は静かな部屋の中が、まるで女子校の教室のような姦しい喧騒に包まれていた。

部屋の中には今、魔王〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉の力とDEMインダストリーの超常技術で生み出された『擬似精霊』である〈ニベルコル〉が20名がワイワイガヤガヤと犇めいていた。

そんな彼女達が、容貌も声も全く同じで、四方八方からキャアキャアと無遠慮に世間話を投げかけてくるのだ。しかも、彼女達が誕生してからはほぼ毎日がこの調子である。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

元々あまり大らかな性分ではないエレンにとっては、実に耐え難い環境である。

 

「・・・・〈ニベルコル〉。もう少し静かにできない物ですか」

 

エレンがコメカミに血管をピクピクっと浮かばせながら苛立たしげに言うと、〈ニベルコル〉達は目を丸くする。

 

「ええ? 別に普通に話してるだけだけど?」

 

「ねえ。やっぱり歳食うとそう言うの気になるものなのかしら?」

 

「ヒステリーってやつ? こわーい」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

騒々しい〈ニベルコル〉の声に、エレンはピクリと眉の端を動かした。

すると向かいに座っていたアルテミシアが苦笑しながら、エレンを宥めるように手の平を広げていく。

 

「まあまあ・・・・悪気は無いみたいだし」

 

「それはそれで問題です。躾のなっていない子供は猿と変わりません。悪意の有無ではなく結果を見るべきでしょう」

 

エレンが憤然として調子で言うと、〈ニベルコル〉達が不満そうにブー、と唇を突き出した。

 

「何よその言い草。それならエレンだって問題あるじゃない」

 

「そうよそうよ。普通に話してるだけなのにイチャモン付けてさあ」

 

「いっつも上から目線の物言いだしい」

 

「若さへの嫉妬も大概にして欲しいわよねえ」

 

「顕現装置‹リアライザ›無かったら常人以下の癖に」

 

「もやしっこー部長ー」

 

「! 待ちなさい、最後のあだ名、一体誰に聞いたのですか・・・・ッ」

 

『キャハハハ!』

 

エレンがガタッと音を立てて席を立つと、〈ニベルコル〉達は楽しそうに笑いながら部屋中をヒラヒラと飛び回った。

 

「あんまり怒るとシワが増えるよお!」

 

「そんな簡単に怒るから、〈仮面ライダーウィザード〉に敗けるんだよぉ!」

 

「(ピキッ)この、いい加減にーーーー」

 

と。エレンが『ヘルドライバー』と顕現装置‹リアライザ›を起動させようとしーーーーすんでの所で思いとどまった。

エレンが立ち上がった瞬間、部屋の扉が開き、ウェスコットと、ワイズマンとメデューサ‹ミサ›とグレムリン‹ソラ›が入ってきたのだ。

 

「ーーーーああ、皆揃っていたかい。丁度良かった」

 

『お父様!』

 

その姿を認めた瞬間、部屋中にいた〈ニベルコル〉達が一斉にウェスコットの元に集まっていく。

 

「お仕事は終わったの?」

 

「ねえねえ聞いて、エレンったら酷いのよ」

 

「そうそう。あたし達は何も悪くないのに、言いがかりをつけてくるの」

 

「怒ったら手がつけられないわ」

 

「見た目はモヤシ、頭脳はゴリラ、その名はエレン・メイザース!」

 

「誰が・・・・ッ!」

 

今度は思いとどまらず、怒号と共に、随意領域‹テリトリー›を展開し、手近にいた〈ニベルコル〉の身体をギュウと締め付け、〈ニベルコル〉が苦しげな声を発して消え去り、1枚の古びた紙がヒラヒラと床に落ちる。

彼女達は元々書の魔王〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉のページより生じたものだ。生命活動を断たれて元の姿に戻ったのだ。

とは言え、〈ニベルコル〉達は記憶や人格を全員で共有する、『個』と言う感覚が曖昧な魔導生命体だ。

彼女達にして見ればこの程度は『死』の内に入らない。精々、指先を軽く叩かれた位の感覚である。実際に他の〈ニベルコル〉達は、仲間の消滅を悲嘆する様子もなく、不満そうな顔をエレンに向けてくるだけである。

 

「きゃー、ひっどーい」

 

「ぶっちゃけ、ありえなーい」

 

「エレンちゃんはもう少し『寛容』って言葉を覚えたら良いんじゃなーい?」

 

『ねー☆』

 

等と、グレムリンまで交ざって気に障る声でキャンキャン騒ぎ立てる。エレンは今度こそ変身しようかとリングを嵌めようとする。

が、ソコでウェスコットが、至極落ち着いた声を発してくる。

 

「落ち着きたまえ、エレン。味方の手数を減らす事は無いだろう」

 

「・・・・は。申し訳ありません、アイク」

 

言われて、エレンは苛立ちは収まらないが、ご尤もと思い武器を納めた。

 

[テレキネシス ナウ!]

 

ウェスコットは薄い笑みを浮かべると、リングを嵌めた手をドライバーに読み込ませれると、数秒前まで〈ニベルコル〉だった紙を浮かせて手に取る。

瞬間、紙が淡い光を帯び、その中から、ニュッとエレンに殺られた〈ニベルコル〉が出てきて、エレンに向かって下を出した。

 

「べーっ!」

 

「・・・・・・・・」

 

もう1度絞め殺したいが、ウェスコットの背後に隠れられたので、どうにか心を落ち着けて息を吐くと、気を取り直すようにコホンと咳払いをすると、ウェスコットの方に視線をやった。

 

「・・・・それで、アイク。丁度良かった、とは」

 

「ああ」

 

エレンが言うと、ウェスコットは思い出したように頷くと右手を掲げ、ソコに漆黒の本、二亜より奪った全知の魔王〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉を顕現させた。

 

「少々時間を取られてしまったが、漸く調べが付いた。ーーーーやはり、〈ナイトメア〉は我々の襲撃計画を知った上で妨害工作を行ったようだ」

 

「・・・・どういう事ですか?」

 

「そのままの意味さ。〈ナイトメア〉は、既に襲撃の事実を知っていた・・・・否、正しく言うのなら、実験に体験していたのさ。そして、既知の事象を覆していた。イツカシドウに訪れる死の運命を回避していた。ーーーー時の天使〈刻々帝‹ザフキエル›〉の力によってね」

 

「な・・・・」

 

ウェスコットの言葉に、エレンは思わず眉をひそめた。

 

「時の天使〈刻々帝‹ザフキエル›〉の権能と言った所、か」

 

ミサの言葉に、エレンは納得したように頷いて言葉を発する。

 

「・・・・成る程。それは厄介ですね。こちらがどんな手を打とうと、アチラは対策を打たれてしまうと言う事ですか」

 

「ふーん。やっぱりかー」

 

「なんかあの子、おかしかった物ね。まるでアタシ達が出るタイミングを知っているみたいだったし」

 

「ね。でなければ、エレンはまだしもアタシ達やソラが失敗するなんてありえないものね」

 

「ふふっ♪ ありがとう〈ニベルコル〉ちゃん♪ 僕の事『ソラ』って呼んでくれるのは君達だけだよ☆」

 

「・・・・今日は羽虫が五月蝿いてすね。殺虫剤でも撒きましょうか」

 

「キャー!」

 

「お父様こわーい!」

 

「助けてソラー!」

 

「ワイズマーン!」

 

「・・・・・・・・」

 

エレンがギロリと睨み付けると、〈ニベルコル〉はわざとらしい悲鳴を上げてウェスコットやグレムリン、さらにワイズマンに縋り付いた。

 

「兎に角。〈ナイトメア〉の手に〈刻々帝‹ザフキエル›〉がある限り、我々は後手に回ってしまうと言う事ですね」

 

「そうなるね。ーーーーしかしまあ、それは不利な事ばかりではないさ」

 

「と、言いますと?」

 

ウェスコットは唇の端を歪める。

 

「我々にとっては数度目の作戦が、〈ナイトメア〉にとっては数百度目。同じ事の繰り返しと言うのは想像以上に精神を疲弊させる。その度、愛しい相手の死に顔を見ているとなれば尚更ね」

 

「・・・・・・・・」

 

エレンは思い描いて見ると、自分が親愛を覚える相手が幾度となく殺され、それを回避する為に終わりを知れぬトライ&エラーを繰り返す。

ーーーー(元)最強のエレンでも、怖気を震う。それに今まで耐えてきた〈ナイトメア〉に、敵ながら敬意を覚える。

 

「・・・・〈ナイトメア〉が諦めるのを待つ、と言うか事ですか?」

 

「・・・・そんな事をせずともーーーー我々が先に〈ナイトメア〉を仕留めれば良い」

 

ミサがメデューサの姿に変貌しながらそう言った。確かに精霊の天敵である『魔獣ファントム』ならば、〈ナイトメア〉を始末できるだろう。

しかし、ワイズマンが口を開く。

 

『ーーーーいや、ソコまでして『指輪の魔法使い』を守っていたのに、それでも守れなかったとなれば、彼女の『絶望』がどれ程のものか・・・・楽しみだ』

 

「しかし、彼女がコチラの思いも寄らない解決法を導き出さないとも限らない。ーーーーならば、少しでも早く諦めてくれるよう、コチラも全力を尽くさねばならないだろう」

 

「全力、ですか」

 

「ああ。文字通りさ。ーーーーDEMインダストリーの持つ実行力を全て振るい、イツカシドウを完全に叩き潰す。〈ナイトメア〉が全てを知っていたとしても、絶対な回避不可能と思わせる位に、『希望』も、『理想』も、一切合切ね」

 

そう言って、ウェスコットが笑みを濃くする。

すると、その瞬間。部屋の天井の通気口から数枚の紙、〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉の紙が変貌し、〈ニベルコル〉の姿へとなった。

 

「お父様、お父様。見て見て」

 

「こんなの捕まえたわ」

 

「・・・・っ」

 

「これは・・・・」

 

言って、〈ニベルコル〉が後ろ手に持っていた『モノ』をウェスコットの前に掲げ、それを見て、エレンは微かに眉根を寄せ、アルテミシアもまた、驚きに目を見開く。

〈ニベルコル〉が持っていたのはーーーー時崎狂三(分身体)の首が、切られて間もないのか血がボタボタと垂れていた。

 

「ほう、お手柄だね、〈ニベルコル〉」

 

「えへへ」

 

ウェスコットが言うと、〈ニベルコル〉が嬉しそうにはにかんだ。マトモな人間から見たら吐き気を催しそうな光景だ。

 

「ヒュ〜♪」

 

「諜報か暗殺で来ていた個体か。まだ残っていたとはな」

 

ファントム達は別段驚かなかった。ウェスコットと共に遅れてきたのは、このビルに来ていた分身体達の始末していたのだ。

 

「でも、『白い魔法使い』が現れてね。何人かと一緒に転移魔法で逃げちゃったの!」

 

「ほう。もう傷は癒えたようだね。まあ構わないさ。彼女の手に時の天使がある以上、いつかは知られる事だ。良いじゃあないか。我々と〈ナイトメア〉、互いに手の内を知り尽くした上で総力戦といくとしよう」

 

ウェスコットは、芝居がかった調子で両手を広げると、天を仰ぐように顎を上げた。

 

「まだ1人位は残っているかな、〈ナイトメア〉の尖兵よ。もしいるのなら君の主に伝えておくれ」

 

[チェンジ ナウ!]

 

そして、ニイッと笑みを浮かべ、〈仮面ライダーソーサラー〉に変身し続ける。

 

「ーーーーイツカシドウは、私がころす。

君が幾度時間を遡ろうと。

君が幾度世界を繰り返そうと。

君が幾度歴史をやり直そうと。

覆しようがない位に徹底的に。

さあ、抗って見た前ーーーー『最悪の精霊』」

 

その宣言に応える声は無く。しかし、エレンは辺りに蟠った影が、怒りを覚えるようにザアッと揺れるのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

「・・・・ヤバイかなあ、やっぱり」

 

謎の大爆発から1時間後。

自宅の部屋で、少年は頭を抱えていた。

 

「・・・・むう」

 

少年はチラと目の端で部屋の隅ーーーーベッドの方を見やった。

正確には、ベッドに腰掛ける、1人の少女を。

 

「・・・・・・・・」

 

作り物のように美しい少女が、ボウッとした様子で部屋の中をゆっくりと見回している。先程まで少年の着ていた上着を羽織っているが、その下は何も着ておらず、彼女が動作する度に艶かしいお肌がチラチラと覗いていた。

少年はあろう事か、その現場のド真ん中にいた少女を、自室に連れ込んでしまったのである。

 

「・・・・いや、いや、いや」

 

少年はやましい動機ではない。不可抗力と言うか、仕方ない事なのだ。言い訳がましい言葉を頭の中で繰り返しながら1時間前の出来事をボンヤリと思い出していた。

爆心地の中、天使か女神と見紛うばかりの少女に目を奪われ、漸く金縛り状態から抜け出して、頬を赤くしながら、努めて少女の裸身を目を向けないようにし、ユラリと視線を寄越して来たが、そのままジッと少年の顔をその宝石のような双眸で見つめるのみだ。

一層頬を赤くし、少女が口を開くが、「あ・・・・、う・・・・」と、言語を発せず、喉を震わせているだけだった。

あの爆発のショックで喋れなくなったのか。それに巻き込まれ服を失ったかと思っても、肌に傷1つ付いてない。

頭の中でゴチャゴチャ考えたが、何でも良いと思い。上着を少女に着せると、少女は微かに震え、少年が弁明するが、ホッとした表情を浮かべ、そのまま自宅まで連れ出したのだ。

病院はこんな街が状態じゃ混乱しているので、爆発の被害から免れた自宅を選んだのだ。

やましい事はしていないと、少年は自分に言い聞かせる。

4人家族で、両親は長期出張で家にいないから大丈夫ーーーー。

 

「ーーーー兄様! 無事ですか!」

 

瞬間。そんな声と共に、部屋の扉が勢いよく開け放たれた。

見やると、見覚えのあり過ぎる少女がいた。1つに括られた自分と同じ髪と特徴的な泣き黒子。休日だが部活があったのか、黒のセーラー服を纏って肩に鞄をかけ、竹刀袋を握り、走って帰ってきたのか、額には玉のような汗が浮かび、肩は激しく上下に揺れている。

 

「ーーーー真那・・・・ヒッ」

 

少年は少女、妹の名を呼び、無事だった事に安堵の息を吐く。が、すぐに息を詰まらせた。

少年の顔を見てホッとした様子を見せた妹の顔が、みるみる内に怪訝そうな色に染まる。

兄の部屋に半裸の美少女がいればそんな顔になる。

 

「あ、あのだな真那、これは」

 

「・・・・・・・・」

 

真那は少年と美少女を交互に見た後、暫し黙り込んだ後、ゆっくりと少年の元に歩いてきて、その肩に、ポン・・・・と優しく手を置いた。

 

「・・・・大丈夫。真那は兄様の味方です。これからしっかりご自分の罪を数えていきましょう」

 

「何も大丈夫じゃない!?」

 

堪らず叫びを上げるが、聞いておらず、誤解を解こうとブンブンと首を横に振る。

 

「待て、待て! 何でそうなるんだよ! 誤解するにしてもせめて、『きゃっ、兄様ったら彼女連れて来てたんですねこれは失礼!』とかあるだろ!?」

 

「兄様に限ってンな事ある訳ねーでしょう! 妹辞めてやがるんですか!」

 

「言い切りやがったなコノヤロウ!」

 

「じゃあ、そうでいやがるんですか?」

 

「・・・・・・・・違いますけども」

 

「ほら見た事じゃねーですか!」

 

真那の問いに、視線を逸しながら答えると、真那は憤然と息を吐き、竹刀袋から愛用の竹刀・貪狼丸(真那命名)を抜いて少年に斬りかかってきた。少年は慌てて、白刃取りよろしく竹刀を止めた。

 

「白状しやがりなさい! 一体何処から攫って来やがったですか!」

 

「ぬおッ!? だ、だから誤解だって! ただ1人でいたから連れて来ただけだよ!」

 

「それを攫ったって言うんですよぉぉぉぉッ!」

 

「今自分で言っててそう思ったわぉぉぉぉッ!」

 

真那の叫びに、これまた絶叫で返す。

 

「と、兎に角話を聞いてくれ! この子・・・・あの爆発があった場所にいたんだよ!」

 

「・・・・えっ?」

 

訴えかけるように叫ぶと、真那は漸く竹刀を握る力を弱めた。

 

「どういう事でいやがりますか?」

 

「そのまんまだよ。さっき俺があの爆発に巻き込まれた時ーーーー見つけたんだ」

 

少年は、少女と出会った時の状況と、ここに連れてくるに至った経緯を掻い摘んで説明した。

すると真那は考えを巡らせる仕草を見せながら、少女の方をチラと見た。

 

「ふむ・・・・成る程。兄様が頭を打ったか幻覚を見たかしてねー事を前提に考えると・・・・」

 

「あ、嘘を吐いてる可能性って言うのは考えないんだな」

 

「兄様が真那に嘘を吐く訳ねーでしょう。真那の兄様ですよ」

 

少年が口を挟むと、真那はキッパリとそう言っていた。・・・・兄を信じているのかいないのか分からない妹だ。

 

「兎に角、その前提で考えた場合、異常が多過ぎます。その子は一体何者で、何でそんな所にいやがったんですか?」

 

「さ、さあ・・・・そんな事俺に言われても」

 

少年が困り顔で答えると、真那は視線を鋭くしながら少女を睨んだ。

 

「・・・・まさか、この子があの大爆発を起こした、何て事はねーですよね?」

 

「は・・・・? ば、馬鹿言うなよ。人間にあんな事できる訳がーーーー」

 

「ーーーークシュンっ」

 

と、兄妹が話し込んでいると、不意にベッドの方から、少女が可愛らしいクシャミをしたようだ。上着を羽織らせただけなら仕方ないだろう。

 

「だ、大丈夫か?」

 

「ああもう、何やってるんですか兄妹。仕方ねーですね。真那の部屋着を持ってきやがりますからちょっと待ってーーーー」

 

「・・・・ん、あ・・・・」

 

と。

真那が自分の部屋に向かおうとした所で、少女がズズッと鼻を啜りながら真那の方をジッと見つめた。

すると次の瞬間、少女の周りに淡い光の粒子が纏わり付いていったかと思うと、彼女の身体に、真那が着ているのと同じデザインのセーラー服が出現していった。

 

「は・・・・?」

 

「へ・・・・?」

 

目の前で起こった超常現象に、少年と真那は口をアングリと開けて顔を見合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー士道sideー

 

「・・・・グフッ!」

 

《ウグっ・・・・!》

 

腹部への強い衝撃で、士道とドラゴンは目を覚ました。

 

「・・・・へっ!? へ・・・・っ!? な、何だ!? 敵襲か!?」

 

暫しの間意味が分からず、目を白黒させる。

すると、自分の腹の上に、何やら見覚えのあるシルエットが屹立していた。

 

「ドラ(バシッ!)いでっ!」

 

ドラゴンから気付けのド突きを浴びて、脳が覚醒すると、琴里(妹モード)が自分の腹の上に立ち、チッチッと指を揺らしていた。

 

「あ、起きたー。でも駄目だよおにーちゃん。グフはもうやったでしょ。せめてキュベレイにしたら?」

 

どうやら荒っぽく起こされたようだ。最近はドラゴンのド突きによる起床ばかりだったから油断した。

辺りを見やると、家の自室に戻っていた。あの後医務室で一休みした後、皆と一緒に食事を摂り、地上に戻ったのだ。

 

「とうっ」

 

「うぎゅっ」

 

琴里が士道のお腹を蹴って床に飛び降り、見事な着地を決める。その際に再び衝撃が加わり、短い悲鳴と共に身体を折る。

文句を言おうとするが、琴里は半眼を作り、ジトーッとした視線で士道を見つめる。

 

「な、何だよ」

 

「んー・・・・そう言えばおにーちゃん、さっき寝言で『真那』『誤解だ』『邪悪の王!』『爆上ゲット!』って呟いてたなーって思って。一体どんな夢見てたの? 何で私じゃなくて真那なのー?」

 

「いや最後の何!? 俺そんな事言ってたの!?」

 

《一々反応するな阿呆。最後の方は琴里の冗談だ》

 

ドラゴンに言われて琴里を見ると、楽しげにアハハと笑っていた。

ハアとため息を吐いてスマホの時計を見ると、もう9時を回っていた。

「遅刻だっ!」と騒ぎ立てる士道に、ドラゴンが尻尾ド突き(威力激強)をおみまいすると、「カイラスギリーっ!!!」と悲鳴を上げ床をゴロゴロと転がると、琴里が『司令官モード』に切り変わり、痛みが引いた士道に言い聞かせるように言葉を発する。

 

「あのねぇ。今あなたとドラゴンは本格的にワイズマン達やDEMに命を狙われているーーーーいえ、狂三の言葉を信じるなら、本来もう死んでるのよ? 何でわざわざ警備が手薄、かつ周りに被害が出そうな所に行こうとするのよ」

 

《そんな知恵も回らないとはな》

 

「あ・・・・」

 

言われて、士道は目を見開いた。全くもってその通りだ。この緊急事態に、学校もへったくれも無いだろう。

 

「すまん・・・・でも」

 

事態を重々承知したがそれでも。

 

《ーーーー〈ナイトメア〉は貴様ごときと違って迂闊な真似をする間抜けな訳がなかろう。既に〈フラクシナス〉が自律カメラを、ガルーダ達やグリフォンのプラモンスターズが飛んでいる》

 

そう、狂三にちゃんとお礼を言っていない。それを気にしているからだ。

 

「ドラゴンの言う通り、狂三が士道並に馬鹿じゃないと思うけど。もし姿を認めたら、特例でコンタクトを認めてあげる。登下校時のリスクを避ける為に〈フラクシナス〉から直接学校に降りて貰う事になるけど」

 

「お前ら俺を貶す事から話を始めるなよ・・・・でも、ありがとう。十分だよ」

 

言って、士道は琴里に頭を下げた。琴里がポリポリ頬を掻きながら、少し恥ずかしそうに視線を逸らす。

が、次の瞬間。

 

《ーーーーむっ! この気配は・・・・!》

 

「ーーーーあら、あら。嬉しいですわ。『わたくし』の為に随分と気を回して下さいますのね」

 

「はーーーー」

 

「え・・・・?」

 

突然予想外の声が響いてきて、士道と琴里は全く同時にソチラを向いた。するといつの間に現れたのか、ソコに1人の少女の姿があった。

艷やかな黒髪。白磁の肌。そしてその足は、未だ膝下まで、床に蟠った影に浸かったままだ。

 

「・・・・狂三!?」

 

その顔を見間違える筈がなく。士道は驚愕に目を見開き、その名を呼んだ。

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