デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
ー七罪sideー
「わ、私は遠慮しようかな・・・・なんてーーーー」
「七罪さんも・・・・やりましょう。一緒なら、きっと楽しいと思います」
「え、や、あ、あの」
四糸乃に言われて、七罪はしどろもどろになり、ドロリとした汗が全身から噴き出し、心臓がバクバクと鳴り出す。
別に七罪はオニギリを作るのが苦手でも米アレルギーでもないし、士道達に差し入れをしたくない理由でもない。
それはーーーーオニギリを七罪自身の手で直接握るのだ。
七罪はソコで、ネガティブブンブンブン回せ! な、思考が頭を支配し、七罪は顔色を悪くしながら頭を振った。
「いや、いや・・・・私の握ったオニギリが皆に紛れるなんて、それはもう毒物混入事件よ。法に触れるわ」
言いながら、七罪が1歩後退る。
「そんな事・・・・」
すると四糸乃が何かを言いかけた後、キッと決意に満ちた眼差しを七罪に向けてきた。
「七罪さん、手を見せて下さい」
「へ・・・・? こ、こう?」
七罪は戸惑いながらも、言われるまま右手を四糸乃の前に差し出した。すると四糸乃はソレをジッと見つめた後、
「あむっ」
と、七罪の指を甘噛みした。
「うひゃっ!? よ、四糸乃!?」
突然の事に思わず声を裏返らせる。するとよしのんが、口をパクパクと動かしてきた。
『えー、四糸乃が取り込み中の為、よしのんが代行させていただきます。七罪さんは毒なんかじゃないです! 的な事を言ってるよー! 格好いいね! 惚れんなよ!』
「ひ、ひえぇ・・・・」
恐れ多いやら罪深いやら尊いやら、様々な感情が頭の中でない交ぜになり、顔中から色んな種類の体液を滲ませ、表情がデロデロになる。
「おお!」
が、それだけで終わらず、それを見ていた十香が何かを察したように手を打つと、七罪の左手を引っ張り、四糸乃と同じようにパクリと指を咥えてきた。
「ギャーーーーーーーーッ!?」
両手を押さえられ、七罪は目を白黒させる。
「ふむん?」
すると六喰も興味深げに1歩足を踏み出してくる。
しかし、両手は四糸乃と十香に塞がれ、一瞬迷うような仕草を見せーーーー。
「むん」
何を思ったのか、六喰は七罪の頬を両手でホールドすると、そのまま大きく口を開け、ゆっくりと顔を近づけてきた。
「・・・・ッ!? わ、分かった! 分かったから! 私も一緒にやるからストップ・・・・ッ!」
七罪が必死の形相で訴えかけると、皆が表情を明るくして姿勢を元に戻した。
「うむ! では始めるとしよう!」
「むん、手はそこで洗うのじゃ」
「あ、あの・・・・すみません、七罪さん。でも私、どうしても七罪さんと一緒にやりたくて・・・・」
「・・・・や、あの、うん。ありがとう」
七罪が頬を真っ赤にしながら返すと、四糸乃はパアッと表情を明るくし、嬉しそうに微笑んだ。
七罪は四糸乃と共に手を洗い、よしのんに調理用の特製カバーを掛けてから、再び十香と六喰の元に舞い戻る。
「さて・・・・じゃあ始めましょうか。十香達は幾つ位作ったの?」
「私も六喰も、この1つだけだ! まだ始まったばかりだったからな!」
「むん」
言って2人が、先程手にしていたオニギリを示してくる。六喰の方はまだしも、十香の方はやたらとサイズが大きいが。
「どうだ? 上手くできているか?」
「ええ、まあ・・・・形は良いんじゃない? 十香のオニギリは流石に大き過ぎるとは思うけど」
「むう、そうか。ならばこれは私用にして、シドー用とドラゴン用は別に作るとしよう」
十香はそう言うと、巨大なオニギリを大皿の上に横たえ、その真ん中に指先でグリグリと穴を開け始めた。
「十香さん?」
『何してるのー?』
「うむ、中に具を入れるのだ。本当はシドーのように一緒に具も握り込んでしまいたいのだが、アレが中々難しくてな。仕方ないので1度形を作ってから中身を入れる事にしたのだ」
「ああ、成る程」
七罪は納得を示すように頷いた。具を一緒に握り込むと、米だけの時よりも形がまとわりづらくなる。
見やると、調理台の上にはオカカに昆布の佃煮、ぶつ切りタラコに何故か大量に用意されたツナマヨ。変わり種に作り置きと思しき鳥の唐揚げや1口大に切られた豚の角煮等、オニギリの具オールスターズがあった。
「MAGIC TIME♪ トリックじゃない♪ 魔法を披露ハンパないぞ♪」
十香が楽しげに歌を歌いながら、具を物色していく。
が、その途中、小さく肩を震わせたかと思うと、十香は歌を止めた。
「・・・・よし」
そして、何やら意を決したような様子で頷き、とある皿を手に取る。ソコに乗っている物を見て、七罪と四糸乃は目を丸くした。
「ちょ、それ梅干しよ?」
「十香さん、苦手じゃありませんでしたか・・・・?」
2人の言葉に、十香は深く首を前に倒した。
そう、精霊の中で1番の健啖家である十香の唯一苦手な食べ物は『酸っぱい食べ物』なのだ。
「うむ・・・・確かに酸っぱいので少し苦手だった。だが、だからこそ今克服すべきなのだ! 梅干しにも勝てない私が、ワイズマン達やDEMに勝てるものか!」
『お、おぉ〜・・・・』
言って、十香がグッと拳を握る。その力強い様に、七罪達は思わず拍手してしまっていた。
「な、成る程・・・・うん、理屈は良く分からないけど覚悟は伝わったわ」
「十香さん、凄いです・・・・!」
「ふむん・・・・やりおるの、十香。ならばむくも覚悟を決めよう」
と、六喰がユラリとした足取りで歩くと、調理台の上からとある皿を手に取る。
「わさび漬けよ。うぬとの長きに因縁に終止符を打つ時が来たようじゃ」
「え、六喰、わさび漬け苦手だったの?」
「むん。漬け物自体は総じて好きなのじゃが、これはどうも辛くての。あまり食べない様にしていたのじゃ。ーーーーじゃが、十香の意気やよし。確かに、戦に向かうむくが、このようなものを恐れている訳にはいかぬじゃろう」
十香の熱に当てられたように、六喰が力強く宣言し、十香がそれを見て、グッと親指を立てた。
すると四糸乃もそれに同調するように、フンフンと頷いて見せた。
「わ、私も・・・・頑張ります! 私は・・・・その、生のセロリが少し苦手です」
『ーーーーん? 今何処かで、【セロリ嫌い! セロリゴーホーム!】って聞こえたような?』
よしのんが妙な電波を受信したような事を言ったが、十香達が口を開く。
「おお! ならばやるか四糸乃!」
「セロリか。確か冷蔵庫にあった筈じゃ」
「・・・・いや、セロリ入りのオニギリとか、セロリ大丈夫な私でもあんまり食べたくないけど」
「「「それもそうか(じゃの/ですね)! 流石七罪(さん)!」」」
頬に汗を垂らしながら言う七罪に、3人が尊敬の眼差しを向けた。
七罪は正直居心地が悪い。
「所で七罪は、何か苦手な物はあるのか?」
「え? 苦手な物か・・・・何だろ」
七罪が考えを巡らせていると、よしのんが口をパクパクと動かした。
『あ、確か七罪ちゃん、人の目が苦手って言ってなかったー?』
「ふむん。ならばそれを入れてみるかの?」
「いやいやいや、それ苦手の意味違うから・・・・! て言うかそれ以前に色々おかしいでしょ!」
「そうだぞ六喰。人の目を抉る訳にはいかない。ここは代用品として、マグロの目玉を入れるとしよう。『DNA』たっぷりで頭が良くなるらしいぞ」
「むん、名案じゃの」
「それを言うなら『DHA』! ていうかそうじゃないでしょっ! ツッコミが不足よぉぉぉっ! ドラゴーン! ヘルプミーィィィっ!!」
至極真面目な顔で、今すぐ『DHA』を摂取して欲しい会話を交わす2人に、思わず声を上げる。
予想通り、差し入れの準備は難航しそうだった。
ー耶倶矢sideー
「・・・・えー、古今東西、『エロくないのに何だかエロく聞こえる言葉』ー。『ちんすこう』」
五河家のリビングに、唐揚げ工場から命からがら生還してきた二亜の間延びした声が響く。
するとそれに応えるようにして、次々と回答が聞こえてきた。
「えぇー。そうですねー、『いっぱい』」
「回答。『サックス』」
同様に美九と夕弦がリズム良く言う。
すると次の回答者である耶倶矢に、皆の視線が集まった。
「え・・・・っ!? え、ええと・・・・その、・・・・ま、『マチュピチュ』・・・・?////////」
「「「・・・・!」」」
耶倶矢が頬を赤くしながら回答すると、ソファに身を沈ませていた皆が、急にガバッと起き上がってきた。
「えっ、ちょっと詳しく聞かせてかぐやん。『マチュピチュ』のどの辺がエロいの? 二亜ちゃん純真だからわっかんないにゃあー」
「私も教えて欲しいですー! 是非ご教授を! おねがい☆耶倶矢先生‹ティーチャー›!」
「要請。説明を求めます。耶倶矢はインカ帝国の何処に性的興奮を覚えるのですか」
「何で私の時だけそんなツッコミ入るのよ!?」
耶倶矢は堪らず叫び声を上げたが、3人‹イジリキャラ達›は取り合ってくれなかった。グイグイと身を乗り出し、回答を求めてくる。
「う、うう・・・・」
その異様なプレッシャーに耐えかね、耶倶矢‹イジられキャラ›は諦めたように言葉を続けた。
「・・・・そ、その、音・・・・みたいじゃない、なんか」
「えぇー? 何の音ー?」
「じぇんじぇんわかりませぇーん!」
「請願。詳しくお願いします」
しかし3人‹イジリキャラ達›は矛を収める事無く、それ処かさらに興奮した調子でそう言ってくる。
耶倶矢‹イジリキャラ›は観念して、顔を真っ赤にしながら蚊の鳴くような声を発した。
「・・・・、き、キスした時の・・・・////////」
「「「・・・・・・・・・・・・っはー!」」」
すると次の瞬間、3人‹イジりキャラ達›が一瞬黙り込んだかと思うと誰からと無く息を吐いた。
「成る程、成歩堂龍○介! そっちかぁー!」
「やーん! 耶倶矢さん可愛いですぅー!」
「容赦。まあ、本気で言っているようですし、それで良しとしておきましょう」
「わざわざ解説させといて何その歯切れの悪い感じ! じゃあ皆も説明してよね! ほら二亜、『ちんすこう』の何処がエロいのよ!」
「え? そりゃあ、ちんーーーー」
「説明しないでくんない!?」
サラリと答えようとした二亜に、耶倶矢は悲鳴染みた声を上げた。
「ええー、自分で説明しろって言ったのにー」
二亜は肩をすくめながら言うと、皆と元いた位置へ戻っていき、再び声を響かせた。
「まあいいや。じゃー続きね。『チンチラ』」
「えっとぉ、『しっぱい』ですー」
「回答。『シックス』」
瞬く間に耶倶矢の順番が回ってくる。耶倶矢はまたも頬を紅潮させながら、震える声で呟くように言った。
「・・・・ち、『チュッパチャップス』・・・・////////」
「「「・・・・!」」」
言った瞬間、またもや3人‹イジリキャラ›がズバット参集してきた。
「ねえねえかぐやん何でそれがエロいの!?」
「教えてくださぁーい!」
「困惑。耶倶矢は常日頃から琴里を性的な目で見ているのですか?」
「もうヤダこのメンバーぁぁぁッ!」
再度3人‹イジリキャラ達›に食いつかれ、耶倶矢‹イジられキャラ›は悲鳴染みた叫びを上げた。
「ていうかそもそも何なのこれ! なんか流れで付き合わされてたけど、何でいきなり古今東西始まってるの!?」
「えー、だって暇なんだもーん」
耶倶矢の言葉に、二亜が足をブラブラさせながら答える。
美九と夕弦も、明確に言葉にこそしなかったものの、二亜の言葉に同意を示すように肩をすくめていた。
「く・・・・っ」
耶倶矢が忌々しげに歯噛みする。耶倶矢も暇を持て余してここにいるのだ。
間もなく決戦が待っているが、どんな作戦を発表されても驚かないように、心の準備をするように琴里に言われているが、何をしていいか分からず、この場所に集まっていたのだ。
「ここに来れば何かしらする事があると思ったんですけどねー・・・・」
「首肯。まさか、士道達まで家を空けているとは思いませんでした。〈フラクシナス〉でしょうか」
「そうじゃなーい? 妹ちゃんもいないし。おりりんとマナティは陸自の基地に行くって言ってたっけ? 取材も兼ねて付いてければ良かったかなー」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
何くれとない会話が交わされたかと思うと、またも沈黙が流れる。すると、そんな空気を居心地悪く思ったのか、二亜が声を上げた。
「・・・・えー、じゃあ、古今東西、『ドラくんのカッコ良いシーン』」
「え?」
予想外のテーマに、目を丸くする耶倶矢。
「アタシはやっぱ、怪人形態になっての戦闘シーンかなぁ。いやぁ、ダークヒーロー系って妙に漫画家の心を刺激するのよねぇ」
耶倶矢は二亜の意見に同意するように頷いた。確かにあの姿は耶倶矢の心を刺激したのだ。
「そうですねー。あの時のハニーもカッコ良かったですけどー。私的にはー、私に歌を熱唱したハニーですねー。もう私、歌で敗北感味わったのあの時だけでしたー。もしかしたら私、あの時からハニーに屈服していたのかも知れませんー♥」
美九は両頬を手で押さえて身悶えした。
「追憶。夕弦はやはり、『インフィニティスタイル』になった時のドラゴンです。士道との絆が生んだ奇跡と思いました」
『絆』と言うよりも、『腐れ縁』の方があの2人にはしっくりくると思う耶倶矢であるが、耶倶矢も思案をしてから口を開く。
「私は、そのーーーードラゴンって、いつも格好良いから・・・・」
と、言うと、3人‹イジリキャラ›達が目をキラーンとさせて耶倶矢‹イジられキャラ›に詰め寄る。
「何何? かぐやんって、ドラくんの事いつも格好良いと思ってるの!?」
「きゃー! 流石耶倶矢さん! そうですねー! ハニーはいつも格好良いですものねー!」
「追求。具体的に教えて下さい。耶倶矢と同じ口調にですか? 士道だけに見せる辛辣毒舌セメント対応にですか?」
「だから何で私にだけそう言うリアクションすんだしっ!?」
耶倶矢がうがー! と叫ぶと、3人は元の位置に戻り、二亜が口を開く。
「そんじゃ次は、『少年の格好良かったシーン』」
「へっ?」
またもや予想外のテーマに、耶俱矢は目を丸くした。
「アタシはねー、んーと、やっぱアタシが死にかけた時、諦めずキスしてくれた事かなー。こう、がばっ、ぎゅっと」
「////////」
言って、二亜が近場にあったクッションを手に取り、んチュー! と顔を押し付けるのを見て、耶俱矢は思わず顔を赤くした。
「そうですねぇ、私はアレです、DEM日本支社で、反転して十香さんの攻撃から身を挺して私を守ってくれた瞬間・・・・! 【約束ーーーーしたからな】って! きゃー! もう思い出しただけで格好良いですぅ!」
次いで美九が、足をパタパタさせながら興奮した調子で言うと、今度は夕弦が、顎に指を1本当てながら答える。
「思案。夕弦は、夕弦と耶倶矢の喧嘩を、〈鏖殺公‹サンダルフォン›〉の1撃で以て止めてくれた時です」
「あ・・・・っ、ずるっ! それ私が言おうとしたヤツ!」
「否定。ずるくありません。順番です」
「そもそも順番決めた覚えもないんだけど!?」
「迂闊。こういうのは早い者順です。さ、次は耶倶矢の番ですよ。それとも、耶倶矢は士道の格好良いシーンが1つしか思い浮かばないのですか?」
「ぐ・・・・」
腑に落ちない物を感じるが、そう言われては黙っている訳にはいかない。耶倶矢は頬を紅潮させながらたどたどしく言葉を吐いた。
「・・・・私はその、2人でボウリング行って・・・・私が泣いちゃった時、黙って頭をなでてくれたのが・・・・///////」
と、ソコまで聞いて、再び3人‹イジリキャラ達›が目をキラメーイさせて身を乗り出して来た。
「キュピーン! 乙女反応感知!」
「その話詳しくお願いしますー!」
「詮索。と言うかそれはいつの話ですか。夕弦は知らないのですが」
「結局同じパターンじゃん! だからヤだったんだし!」
涙目になりながら叫びを上げる耶倶矢。すると身を乗り出してきていた3人‹イジリキャラ達›はアハハと笑ってソファへと戻った。
そして暫しの間無言になった後、ふと二亜が声を発する。
「・・・・死なせたくないよねぇ、少年とドラくん」
するとそれに応えるように、耶俱矢と夕弦と美九も静かな、しかし力強い調子で言葉を続けていく。
「ええ、勿論ですー。だーりんがいなかったら私は、今でも人を信じられないままで、ハニーがいなかったら、自分しか楽しめない陳腐な歌しか歌っていなかったかも知れません」
「肯定。士道とドラゴンがいなかったら、夕弦と耶俱矢はどちらか片方しかこの世にいなかったでしょう」
「ねー。アタシも少年とドラくんがいなかったら間違いなく死んでるし。まぁ今は別の意味で死にかけてるけどねぇ。あはははっ」
二亜が、明らかに笑い事ではない事を笑いながら言う。そのあまりに朗らかな様に、耶俱矢も苦笑してしまった。
「・・・・ま、そうよね。私も、まだ全然恩を返せてる気がしないし」
耶俱矢はそう言うと、軽く反動を付けてソファから起き上がり、バッと手を顔の前に翳し、あたかも♣の仮面ライダーの変身ポーズを取ってみせた。
「然らば我は漆黒の守護者となりて彼の者達を護らん! この煉獄の牙に触れし者、死神の誘いを受けると知れ!」
「「「おー」」」
そして高らかにそう宣言すると、二亜達がまばらな拍手をする。
「相変わらずカッコいいねえ。・・・・で、ゆづるん。かぐやんは今なんて言ったの?」
「翻訳。大大大好きな士道と憧れのドラゴンが死んじゃったら耶倶矢もう生きていけない! 士道とドラゴンを護る為に耶倶矢、せいいっぱい頑張る! でもってご褒美にチューをしてもらって、ウルトラハッピーな幸せゲットでトロピカっちゃう! と言っています」
「きゃー! 大胆絶好調ナリですぅ!」
「いやーん。かぐやんったら! キュンキュンするぅ!」
「訳者に悪意を感じて堪忍袋の緒が切れそう!」
と、耶倶矢が抗議するように声を上げると、それに合わせるようにして、各々のスマホからほぼ同じタイミングで着信音が鳴り響いた。
「ん・・・・何、って、十香?」
そしてチラッと画面を覗いて発信者の名前を確認してから通話ボタンを押すと、電話口から十香の元気の良い声が響いてきた。
《耶倶矢か! 今マンションのキッチンで、シドー達に差し入れのオニギリを作っているのだが、一緒にどうだ!?》
すると他の面々の電話からも、何やら似たような話題が漏れ聞こえてきた。
《あ、あの・・・・四糸乃です。夕弦さん、今士道さん達に差し入れを作ってるんですけど、良かったらーーーー》
《二亜か。むくじゃ。手を貸すが善い》
「あーん! 七罪さん、どうして1人だけ電話じゃなくてメールなんですかぁー! 可愛いお声を聞かせて下さぁぁぁぁぁぁいっ!」
どうやらマンションに集まった精霊達が、一斉に耶倶矢達に連絡をしてきたようだが、美九だけメールのようで、悲しみに噎び泣いている。
耶倶矢はソレを笑いながら見ると、電話口の声に返した。
「くく、良かろう、眷属よ。その召喚に応じてやろう。暫し待つがよい!」
《おお! 待っているぞ!》
十香の声を待ってから、電話を切る。二亜と夕弦も、これまた同じタイミングで通話を終える。ふと目が合い、誰からともなく笑ってしまう。因みに、美九だけは物凄い速さで指を動かし、メールをフリック入力していた。
「絶妙なタイミングだったわね」
「首肯。正直、小さな子供でも士道達の役に立てるのはありがたいです。行きましょう」
「ですねぇ。皆さんとオニギリ作りなんて楽しそうですー!」
「よっし、じゃあマンションに着くまでラストの古今東西ね。お題は、『今まで経験したエロい』・・・・」
「絶対ヤだかんね!!」
自然な調子でお題を提案してきた二亜に、絶叫染みた叫びを上げた。
ー士道sideー
そして、精霊達が差し入れのオニギリを作る少し前、〈フラクシナス〉にあるシミュレーションルームにて。
「ぎゃぁあああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!」
〈仮面ライダーウィザード〉に変身した士道の悲鳴が響き、さらにシミュレーションルームの床を十回近くバウンドしてから、ゴロゴロと転がり、漸く止まると仮面の中で目がグルグルと回っていた。
「あ・・・・あぁ・・・・、せ、世界が、グルグル回って・・・・」
『全く不甲斐ない』
ボロボロになったウィザード‹士道›に近づくのは、『アバター』によって顕現した『ウィザードラゴン 怪人形態』だった。
「ーーーード、ドラゴン・・・・な、何で俺は、こんな所で、お前と特訓、してんだよ・・・・」
ヨロヨロになりながら立ち上がりそう言うウィザード‹士道›に、ドラゴンはヤレヤレだぜと言わんばかりに、肩をすくめてから言う。
『阿呆が。これから起こるのは最終決戦だ。DEMもワイズマン達も最早『お遊び』抜きで本腰を入れて戦いに赴いてくる。作戦が決まるまでは、貴様の平坦な牙を少しでも研ぎ澄ませておくべきだ。我のお陰で戦えてはいるが、貴様とエレン‹ヘルキューレ›にアルテミシア‹ヘルキューレⅡ›の間には拭い切れない実力差があるのだ。この特訓で僅かでもその差を埋める。使える時間が少ない分有効に使うぞ』
「そ、それは分かるけどさ、もう少し穏やかなやり方でも・・・・」
『ヌケサクめが。温いやり方で埋まる程度の差ならこんな特訓などせんわ。『殺す気で掛かってくる格上の人間』を相手にするのに、貴様は『不殺』で戦おうとしているのだ。それを貫く為には、何を置いても『力』を持たなければならん』
「うぅ・・・・」
『さ。続きだ続き』
「いやぁあああああああああああああああっっ!!!」
ドラゴンがボキボキと拳を鳴らしながらウィザード‹士道›を首根っこを引っ張りながら、特訓を再開させた。
あのメンツでは耶倶矢がイジられるのは自明の理。