デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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投稿しようと思ったらサイバー攻撃。迷惑だからやめて欲しい。暇潰しに周りを巻き込まないで。


決戦ショータイム

ー士道sideー

 

〈フラクシナス〉艦橋の空気をビリビリと震わすその迫力に、士道は思わず身を反らした。

 

「凄い熱気だな・・・・」

 

「うむ、琴里も格好良かったぞ」

 

隣にいた十香も、同意を示すように頷く。すると琴里は肩を竦めながら振り向いてきた。

 

「もし他の皆もそう感じてくれていたなら御の字ね。皆の戦意を高揚させるのも司令官の仕事だから。ーーーーでも、ただ熱狂するだけじゃあ駄目。頭はクールに、ハートは苛烈に、が理想ね」

 

言って、指を1本立てて見せる。

士道は細く息を吐く。その姿は、我が妹ながらやたらと格好良く見える。

 

『ーーーーしかし、現実的に、精神論でどうにかできる物ではないぞ。この圧倒的な戦力差は』

 

ドラゴンの言葉に、琴里は微かに眉根を寄せながら続けてきた。

 

「ーーーーまぁね。お世辞にも有利な状況と言えないわ。敵空中艦はおよそ30に対し、〈ラタトスク〉艦は〈フラクシナス〉を含めて5隻。精霊の天敵『魔獣ファントム』のほぼ全軍が集結しているし、魔術師‹ウィザード›の数は10倍近い差があると見てもいいわ。しかもそれに加えて、アチラには恐らく数千の〈バンダースナッチ〉、グールにインプ、そして〈ニベルコル〉に至っては、一体どれくらい湧いて出てくるか分からないときたものよ。顕現装置‹リアライザ›の性能でこそ勝っているとは言え、正面から殴り合ったらまず間違いなく敵わないでしょうね」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

琴里の言葉に、艦橋に居並んだ精霊達がゴクリと息を呑む。

琴里は皆の方に向き直った。

 

「でも、その戦況を打破しうる存在ーーーーそれが、あなた達よ」

 

そして精霊達の顔を順に見つめ、言葉を続ける。

 

「・・・・精霊を守る組織の司令官が、精霊に助力を乞うなんて、情けなく歪な事をしてるって言うのは重々承知してる。本当、恥ずかしくて仕方ないわ。でもーーーーお願い。力を貸してちょうだい。〈ラタトスク〉司令官として・・・・ううん、違うわね・・・・」

 

琴里が頭を下げる。

 

「士道の妹として、お願い。ーーーー私のおにーちゃんを、助けて」

 

「当然だ!」

 

1歩足を踏み出した十香が声を張り上げる。すると、それに続くようにして、精霊達がコクリと頷いた。

 

「私達にも・・・・手伝わせて下さい」

 

「そうですよー! 寧ろ私達を除け者にした怒っちゃいますぅ!」

 

「戦意高揚させるのが司令官の仕事だって? アハハ、じゃあ妹ちゃん、今メッチャ司令官じゃーん」

 

「皆・・・・」

 

皆の言葉に、琴里が目に涙を滲ませかけーーーーすぐに手の甲でそれを拭い、気を取り直すように咳払いをすると、再び決意の表情と共に顔を上げた。

 

「ーーーーありがとう。でも、だからこそ、ココからの行動が重要となるわ。ーーーー二亜、ここでの会話は〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉に覗かれていないと考えて良いのね?」

 

「ん、今の〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉は検索にエッライ時間かかるし、もう大丈夫。・・・・で、どんな悪巧みすんの? ムックちんの天使で『どこでもドア』していきなり本丸攻めして首魁を落とすの?」

 

「むん・・・・」

 

琴里の問いに、二亜が大仰に首を前に倒してから、シャドーボクシングのような動きをしながら言うと、六喰が眉を八の字にした。

 

「すまぬが、それは無理かも知れぬのじゃ。霊力を封印されてから、長距離の移動は難しくてなっての・・・・」

 

「ありゃ、そーなの?」

 

「て言うか、可能だとしても許可しないわよ。向こうも当然警戒してるでしょうし、どんな罠を張っているか分かったもんじゃないわ。『孔』を通った瞬間エレンやワイズマンに感知されて首を落とされるーーーー何て事もあり得るしね」

 

琴里は肩を竦めながら言うと、折紙と真那の方に目をやった。

 

「それより、聞かせてもらいましょうか、折紙、真那。あの目障りな〈バンダースナッチ〉を無力化しうる『案』って言うのを」

 

「分かった」

 

折紙が真那と視線を交わしてから小さく頷き、琴里の言葉に応える。

 

「でもその前に、マリアに1つ確認したい事がある」

 

『? 何でしょうか、折紙』

 

折紙の声に応え、艦橋のスピーカーからマリアの声が響く。折紙は『MARIA』の文字が表示された画面を見ながら言葉を続けた。

 

「ーーーー前にも言った通り、〈バンダースナッチ〉は、DEMの新型顕現装置‹リアライザ›〈アシュクロフト-β〉によって稼働してる。その詳細な構造が判れば、ジャミングを飛ばしてその行動を阻害する事は可能?」

 

折紙が言うと、マリアは数瞬考え込むように黙ってから言葉を返した。

 

『理論的には可能ですが、あまり現実的とは言えません。もしもDEMから詳細な設計データでも盗み出せるというのならば話は別ですがーーーー』

 

「〈アシュクロフト-β〉が、魔術師‹ウィザード›アルテミシア・アシュクロフトの脳をモデルに作られていると言ったら?」

 

「・・・・何ですって?」

 

折紙の言葉に表情を歪めたのは琴里だった。士道もまた、訝しげち眉をひそめた。

 

「アルテミシア・・・・って、あのエレンと一緒にいたヘルキューレⅡの変身者の?」

 

「ええ。元英国対精霊部隊‹SSS›のエース魔術師‹ウィザード›です」

 

真那が、腕組みしながら答える。

 

「DEMの顕現装置‹リアライザ›は、人間の脳で以て外部から制御しなければならねーものでしたが、彼女の脳をトレースする事によって、顕現装置‹リアライザ›内に制御機能を組み込む事に成功しやがったんです」

 

「ーーーーもしも彼女を捕縛する事が出来たなら、その脳波データを元に〈アシュクロフト-β〉へのジャミングコードを組成する事は可能?」

 

『・・・・・・・・、多分、可能です』

 

『おおっ!』

 

数秒の沈黙の後、マリアがそう言う。その答えに、精霊達やクルーが色めき立つ。

しかし、すぐにマリアがそれを制するように続ける。

 

『ですが、それはあくまでアルテミシアを捕縛する事ができれば、の話です。彼女の魔力値はエレンに次ぎます。いくらこちらに〈仮面ライダー〉に精霊がいるとは言え、そう簡単には』

 

「ーーーーソレについては、考えがある」

 

「考え?」

 

士道が言うと、折紙と真那は同時にコクリと頷いた。

 

「彼女はどちらかと言うと、DEMのやり方に懐疑的でした。ああも従順にDEMに従うとは考えづれーです。私や折紙さんの事を覚えていない事から見ても、何らかの記憶処理を施されている可能性がたけーかと」

 

「そう。だからーーーー皆の力を借りたい」

 

折紙が淡々と作戦を述べる。

その提案に、精霊達は目を見開いた。

 

「呵々、面白い。確かにそれならば可能やも知れぬわ」

 

「首肯。流石マスター折紙。素晴らしい案です」

 

「ふむん・・・・良かろう。やってみるのじゃ」

 

口々にそう言って、精霊達が賛同を示す。琴里は暫しの間考え込んでいる様子だったが、やがて決断したように顔を上げた。

 

「ーーーー分かったわ。でも、くれぐれも気を付けて」

 

「うむ!」

 

「・・・・うん、分かった。絶対無理しない」

 

十香が力強く、七罪が目を逸らしながら頷く。

琴里はそれに首肯を返すと、次いで『MARIA』の画面に目をやった。

 

「さ・・・・次はあなたよ、マリア。もし仮に今の作戦が成功したとしても、まだ向こうには〈ニベルコル〉の大軍がいる。アレを何とかしない事には、ウェスコットこと〈仮面ライダーソーサラー〉とワイズマンの元に向かうのは、『インフィニティスタイル』になった士道とドラゴンでも、結構難しいわよ」

 

『分かってます』

 

マリアが静かな声でそう答えると、言葉を続けた。

 

『〈ニベルコル〉は、〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉の力をベースに生み出された擬似精霊。それは解析結果から見ても間違いありません。ならばーーーー』

 

マリアが、〈ニベルコル〉の対策に説明する。すると、その話を聞いていた皆の表情が、次第に驚愕の色を帯びていった。

 

「な・・・・本気か、マリア」

 

『・・・・・・・・・・・・オェッ』

 

「そ、そんな・・・・大丈夫なんですか・・・・?」

 

「何言ってるのよ、マリア! 状況を理解してるの!? そんな事許可できる訳ないでしょう」

 

皆が動揺を露わにし(ドラゴンは何故か吐きそうになっていた)、琴里が絶叫染みた声を上げた。それ程、マリアの提案は意外に過ぎる物だったのだ。

 

『勿論、理解しています。今の状況も。私の提案がどれくらい非常識かも。ーーーーですが、琴里の言った通り〈ニベルコル〉をどうにかしない限り、私達の勝利はあり得ません。そして〈ニベルコル〉をどうにかしない限り、私達の勝利の確率は限りなくゼロに近いです。そして〈ニベルコル〉を無力化する方法は、他にないと断言します』

 

「でも・・・・そんなのってーーーー」

 

「ーーーーいや」

 

『かなり気持ち悪いが、向こうとの戦力を少しでも削れるならやるべきだ』

 

それまで黙って話を聞いていた士道とドラゴンは、琴里の声を遮るように声を上げた。

そして顔を上げ、拳を握る。

 

「やろう。それしか方法がないなら」

 

『寧ろ、この上なく我々らしいやり方でもある』

 

「士道・・・・。ドラゴン・・・・」

 

琴里は一瞬不安そうな顔で2人を見てきたがーーーーすぐにパンと頬を張ると、キッと視線を鋭くしてきた。

 

「・・・・そうね。ええ、その通りだわ」

 

そしてバッとジャケットを翻し、再び前方を向く。

 

「各艦に通達! 作戦を共有するわ! 必ず成功させるわよ!」

 

『了解!』

 

琴里に応えるクルー達の声が、艦橋をビリビリと震わせる。それを一身に浴びながら、琴里はニッと頬の端を上げた。

 

「ーーーー先ずは、教えてあげようじゃない。天宮市‹この街›で私達と戦うというのが、一体どう言う事かを」

 

 

 

 

 

 

ーウェスコットsideー

 

天宮市上空に迫る鉄の悪魔、DEMインダストリー空中艦隊。

その最奥を航行する旗艦〈レメトゲン〉の艦内には今、クルー達の声が響き渡っていた。

 

「ーーーー天宮市上空に空中艦の反応を5隻確認」

 

「識別反応解析。全て〈ラタトスク〉の艦です」

 

そしてそれに混じって、通信機越しの音声がスピーカーから発される。

 

『〈ホノリウス〉、戦闘準備完了』

 

『〈アルマンダル〉、〈バンダースナッチ〉射出準備完了』

 

『〈ガルドラボーグ〉、魔術師‹ウィザード›部隊、コチラも準備完了です』

 

「ーーーーよろしい」

 

鼓膜を震わす無数の報告を受け、ウェスコットは大仰に首肯した。

そしてモニタに目をやり、狙い澄ましたようにコチラに船首を向ける〈ラタトスク〉の艦を見て、唇の端を上げる。

 

「どうやら、〈ナイトメア〉は私の伝言を伝えてくれたようだ。ーーーーそれとも、我々が気づいていないだけで、この世界は既に彼女がやり直した世界なのかな?」

 

クツクツと笑いながら、顎を撫でる。

すると隣に控えていたエレンに、前方のモニタに目をやりながら声を発してくる。

 

「5隻ーーーーですか。〈ラタトスク〉も総力を投入してきましたね」

 

「ああ。良い判断だ。私が司令官でもそうするだろう。ここで攻めねば、彼らに勝ち目は無いだろうからね」

 

「攻め、ですか? 寧ろ彼等は五河士道を守る側なのでは?」

 

エレンが不思議そうに首を傾げてくる。

すると、近くにいたグレムリンがその場に似つかわしくない陽気な声を発する。

 

「これまで狂三ちゃんが僕達の邪魔して、士道くんを守っていたからねぇ。士道くんはそんな恩人が逃げろと行ったから、見捨てて逃亡するなんて、聞き分けの良いお利口さんな頭なんて乗っかてないよ★ ていうか、エレンちゃんの愛おしい『宿敵』は、そんなしょっぱいヤツだと思ってるの?」

 

グレムリンの言葉に、エレンはキッと睨みながらも、確かにと思いながら納得した。

ウェスコットはクツクツと笑いながら、親指で自分の心臓を指してみせた。

 

「彼らは恐らく、私とワイズマン、そしてエレン。君の首を取るつもりでいるよ。だからこその布陣だ。私とエレンがいなくなればDEMは自壊し、首魁を失った魔獣ファントムは烏合の衆と化す事を良く理解している」

 

ウェスコットが言うと、エレンは微かに眉根をひそめ、訝しげな調子で口を開いた。

 

「ソコまで予測できていたのなら、アイク、やはりあなたは安全な場所にいた方が良かったのでは」

 

しかし、ウェスコットはゆっくりと首を横に振った。

 

「彼らが総力を以てコチラに向かってくれるのは、ここに私がいるからさ。千に1つ、万に1つだろうが、希望の光には変わりないからね。ーーーーもし襲撃を退けても逆転の目がないのなら、彼らは逃げる事を選ぶだろう。イツカシドウの願いを無視してもね。しかしコチラとしてはそうなったら面倒だ。いくら〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉があるとは言え、彼を隠匿したまま逃げ回られては骨が折れる」

 

ウェスコットが言うと、それに同調するように、艦長席の周囲にいた〈ニベルコル〉達が声を上げた。

 

「そうよそうよ」

 

「エレンたら、そんな事も分からないの?」

 

「脳が老化してるんじゃない? 脳トレってヤツしてみたら?」

 

「無理無理、脳ミソが筋肉で構築されてる脳筋ゴリラに脳トレなんて意味ないって!」

 

「・・・・・・・・」

 

「落ち着いて、エレン。戦闘前に味方を減らしてどうするの」

 

エレンが無言でゆっくりと手をあげようとするが、後方にいたアルテミシアが止め、不機嫌そうにフンと鼻を鳴らし、憮然とした様子で腕組みした。

 

「ふ、機嫌を悪くしないでくれ、エレン。何もそれだけが理由という訳じゃあない」

 

「・・・・と、言いますと?」

 

「これは我々の戦いだ。私達が始めた、世界を変える革命だ。ーーーーならばその場に、君だけを立たせる訳にはいかないだろう」

 

「・・・・・・・・」

 

エレンは暫しの間無言になってウェスコットの目を見つめると、やがてフッと目を伏せて首肯した。

 

「・・・・ええ、そうですね。そうでしたね、アイク」

 

「ああ」

 

『むぅ〜』

 

ウェスコットは短く答えると、自分に分からない会話をされて少し面白くなさそうな顔をする〈ニベルコル〉の頭を撫でながら、グレムリンに声をかけた。

 

「ーーーーMr.ソラ。ワイズマン達の方はどうだい?」

 

「・・・・ほぼ完了。だってさ」

 

「結構」

 

ウェスコットはグレムリンの言葉を聞き、笑みを浮かべてから前方に顔を向けた。

 

「さて。でははじめようか。ーーーー艦長」

 

「は」

 

ウェスコットの声に応え、〈レメトゲン〉の艦長が首肯する。

その艦長が各艦の艦長達に指示を飛ばすと、無数の〈バンダースナッチ〉が射出されていき、さらに無数のインプ達が雄叫びを上げて翅を広げ、天宮市の空に広がっていく。まるで蝗害のようだ。

 

「〈ノトリア〉、〈ピカトリクス〉、〈アルベール〉、魔力砲発射準備。目標、〈ラタトスク〉空中艦ーーーー」

 

ーーーードゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴォォォォォンン!!

 

が、艦長が砲撃指示を発しようとした瞬間、艦橋に幾つもの爆音が響いてきた。

 

「ーーーーっ、な、何事かぁっ!?」

 

「は! インプ達と〈バンダースナッチ〉隊が攻撃を受けた模様です!」

 

「なんだと? 〈ラタトスク〉艦か?」

 

「いえ、これはーーーー」

 

 

 

《ーーーーきひひ、ひひひひひひひひひ》

 

 

 

と、クルーが状況。報告しようとした所で、艦内スピーカーから笑い声が響き、次いでモニタの1つに、少女の顔が大きく映し出される。

ーーーー〈ナイトメア〉こと、精霊・時崎狂三である。どうやら、〈バンダースナッチ〉の頭部カメラを覗き込んでいるらしい。

 

《アテンションプリーズ。聞こえていますかしら、性悪な魔術師‹ウィザード›さんに悪徳な魔獣さん》

 

「・・・・〈ナイトメア〉」

 

「あらら♪」

 

エレンは視線を鋭く、グレムリンは面白そうにすると、メインモニタに映し出された空の映像の中に、何人もの『狂三』が姿を現した。

 

《これよりわたくしは、あなた方を狩りに参ります。既に恐ろしくて失禁してしまってるかも知れませんけれど、どうか逃げないで下さいまし》

 

「何をーーーーッ」

 

エレンが憤然と声を上げると同時、バヂッ、と言う音と共にカメラがひしゃげ、映像と音声が途絶した。怒りをぶつけ処を失ったエレンが、苛立たしげに拳を握りしめる。

何人もの〈ナイトメア〉によって、インプと〈バンダースナッチ〉が破壊されていく様が、モニタに映し出され、艦長が援護をするように指示を出そうとする。

しかし、その瞬間ーーーー地上から砲撃が来た。

 

「なーーーー」

 

メインモニタの1部、下方にある街の風景。しかし、屋上から魔力砲を覗かせたビル、否、幾つもの民家や街路、果ては商業施設と思しき建物までもが、驚異の変形機構で以てその姿を変え、その砲門を上空に向けている。

あまりに予想外の光景に、艦長が目を丸くした。

 

「一体何なのだ、この街は・・・・ッ!」

 

 

 

 

 

 

ーグレムリンsideー

 

グレムリンは戦況を第三者ポジションで見据えながら、ワイズマンに念話を送る。

 

「(ワイズマン。状況は予想通りだったよ。ソチラはどうだい?)」

 

《ウェスコットが用意した『贄』は指示通りの場所に行っている。もう間もなくだ》

 

「(そうーーーー間もなく、か・・・・)」

 

グレムリンは誰にも気づかれず、含み笑いをした。

 

 

 

 

 

ー士道sideー

 

「西天宮市4丁目ビル砲、敵空中艦に着弾!」

 

「ーーーーっし!」

 

クルーの報告を聞いて、艦長席の琴里、小さくガッツポーズを取る。

そしてメインモニタに映し出された敵艦隊を見ながら、咥えていたチュッパチャップスの棒を揺らす。

 

「流石にこれは予想してなかったかしら? 4丁目から5丁目、そのまま砲撃を続けてちょうだい!」

 

《『了解!』》

 

通信機越しに返答が響き、地上からDEM艦に向けて、再び魔力砲が放たれる。まさか自分達の街にこんな武装が設られていた事におど。

それを見て、琴里がフフンと得意気に腕組みしてくる。

 

「〈フラクシナス〉が改装中だった時、臨時司令部として天宮市の地下施設を使ってたでしょ? 地下にあれだけの設備を張り巡らせているって言うのに、地上には何も用意してないと思った?」

 

「あー・・・・」

 

言われて思い出した。無論、行動や私有地を勝手に弄っていないだろうが、〈ラタトスク〉が所有している土地なのだろうが、まさかこんな設備を作っていようとは。

 

「とは言え、地上の砲台にできるのは、牽制と相手戦力の分断よ。ーーーー各艦、展開。敵艦への攻撃を開始。魔術師‹ウィザード›部隊は、精霊達の援護を」

 

《『了解』》

 

指示を受け、〈ラタトスク〉の空中艦が行動を開始する。それを確認しながら、琴里は艦長席後方に居並んだ精霊達に目を向けた。

 

「ーーーー皆、お願い。手筈通りに」

 

「うむ!」

 

「呵々、漸く我らの出番出番であるか」

 

「出陣。待ちかねました」

 

「むん、では行くかの」

 

十香達は力強く首肯すると、順に転送装置の上に乗った。

 

 

 

 

 

 

ーウェスコットsideー

 

DEM旗艦〈レメトゲン〉艦橋に、幾つもの報告が乱れ飛ぶ。

 

「〈ホノリウス〉恒常随意領域‹パーマネント・テリトリー›、10%減少!」

 

「再砲撃、来ます!」

 

「〈バンダースナッチ〉隊、次々とやられていきます!」

 

「く・・・・」

 

奇襲をかけたつもりが、逆に奇襲で返され、艦長が微かに表情を歪め、どう対応したものかと一瞬思い悩む。

が、後方に佇むウェスコットは、心底楽しげに身を捩り、ドライバーを起動させた。

 

[ドライバーオン!]

 

「ーーーーはは、はははは」

 

「・・・・? Mr.ウェスコット?」

 

「いいじゃあないか。受けて立ってあげよう。混乱、混戦は寡兵のフィールドだ。我々は落ち着いて、渾身の力を以て拳を振り下ろせば良い。ーーーー出し惜しみは無しだ。〈バンダースナッチ〉第2陣と、魔術師‹ウィザード›部隊を出動させたまえ。ああ、現地の対精霊部隊には、街の周囲で待機させ、精霊達が逃げようとしたら攻撃するよう命じてくれ。最早彼女達がこの戦場に来ても、活躍できるとは思えないからね。それどころか、こちらの戦力である『ファントム』達を攻撃してくる可能性もある」

 

「はーーーー!」

 

ウェスコットの言葉を受けて、艦長が各艦に指令を発するのを確認してから、ウェスコットは振り向くと、DEMが誇る最強戦力達と、同盟相手の魔獣に目を向けた。

 

「聞いての通りだ。エレン、アフテミシア、〈ニベルコル〉、Mr.ソラ。我々は全力を以て、敵を磨り潰す。指令は1つだ。ーーーー目に付く者、全てを屠れ。彼の者達が〈世界樹の栗鼠‹ラタトスク›〉を名乗るならば、今日をその終焉の日‹ラグナロク›にするとしよう」

 

[チェンジ ナウ!]

 

ウェスコットがソーサラーに変身すると、エレンとアルテミシアめ変身する。

 

「ええ。勝利を、あなたに」

 

「了解」

 

「はーい、お父様。ま、アタシ達だけで十分だと思うけど」

 

「フフフ、コレで全てが終わり、新たな始まりになる、かな☆ さぁ、君達も動きなよ♪」

 

グレムリンが自分の影に向かってそう言うと、『再生ファントム』達がウゾウゾと影から這い出てくる。

可憐な悪魔達と絶望の魔獣は、空へと舞って行った。

 

 

 

 

 

 

ー狂三sideー

 

「ーーーーきひひひひひひ。さあさ、参りますわよ『わたくし達』。淑やかに、艶やかに、敵を蹂躙いたしましょう」

 

「ええ、ええ!」

 

「滾りますわ、滾りますわ!」

 

狂三の号令に応え、無数の分身体達が影より這い出て、手にした銃より影の弾丸を放ち、空中に展開したインプと〈バンダースナッチ〉の軍団を次々と撃ち落としていった。

分身体とインプと〈バンダースナッチ〉。共に物量を身上とする軍勢ではあるが、個々の力を見れば狂三側に軍配が上がる。インプも〈バンダースナッチ〉も応戦するが、抵抗虚しく分身体達に胸を貫かれ、腕をもがれ、首を落とされていく。

 

「きひッ! ひひひひひひひひひひひひひひひッ!」

 

「このような手勢でわたくしを止めよう等とは、舐められたものですわね」

 

「ソチラにその気がないのならば、一気に大将首を取って差し上げましてよーーーーッ!」

 

がーーーー次の瞬間。

〈バンダースナッチ〉を堕とした分身体目掛けて、何枚もの紙のような物が飛来して来たかと思えば、その中から、濃い灰色の髪を靡かせながら、何人もの少女達が飛来し、鋭い抜き手で分身体を貫いた。

 

「ぎーーーーッ!?」

 

分身体が短い断末魔を上げ、そのまま地面へと墜ちていく。

 

「『わたくし』!」

 

「ふん・・・・出ましたわね、量産型」

 

狂三が言うと、無数のニベルコルは血に濡れた手をペロリと舐めながら視線を向ける。

 

「量産型ぁ? アンタにだけは言われたくないんですけど?」

 

「前から思ってたんだけど、アンタ達アタシとキャラ被ってるのよね」

 

「かかってきなさいよ。どちらが真の群体か、決めようじゃない」

 

〈ニベルコル〉の軽口に、狂三は凄絶な笑みを浮かべる。

 

「ーーーー上等ですわ。あなた方の大好きな『お父様』の前に、その首を並べて差し上げましてよ」

 

そしてーーーー分身体達と共に、〈ニベルコル〉に銃口を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーワイズマンsideー

 

『ワイズマン。始まりました』

 

ワイズマンとメデューサは、天宮市を一望できる場所にて、今まさに行われている決戦を眺めていた。

 

『ーーーーふむ。メデューサ。進捗は?』

 

『現在、予定のポイントにてーーーー『贄』の準備は出来ています』

 

メデューサが魔法陣を出し、ソコから映し出される、ソコにはDEMの第2執行部の『アイリーン・フォックス』と言う女性を含んだ4人の魔術師‹ウィザード›が、〈仮面ライダーメイジ〉の姿で、ウェスコットに指示された所定ポイントにいた。

4人共、エレンとアルテミシアの足元にも及んでいないが、ジェシカ・ベイリーよりも魔力が僅かに上の魔術師‹ウィザード›達だ。

彼女達はーーーー“この日の為に用意されていたのだ”。

 

 

 

『ーーーーさぁ、始めよう。我らが種族が、この星の頂点に立つ時を!』

 

 

 

ワイズマンは大仰に両手を広げて、宣言するように言った。




士道達が正面でDEMとやり合う中、ワイズマンは・・・・!
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