デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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さぁ戦争の景色を見よう。


決戦ショータイムⅡ

ー燎子sideー

 

「な・・・・何なのよ、この地獄絵図は・・・・!」

 

燎子は、あまりに現実離れした、異常な光景が広がる戦場を見て、呆然と喉から声を漏らした。

天宮市の空に、幾つもの火花が散り、空には何隻もの巨大戦艦に、無数の〈仮面ライダーメイジ〉。さらには羽虫の如く視界を横切る影は、〈アンノウン‹インプ›〉と人型を模した機械人形。

地上からは変形した建造物が引っ切りなしに砲撃を放ち、艦を攻撃しているかと思えば、〈アンノウン〉と機械人形が精霊〈ナイトメア〉によって破壊されていく。

さらに異常と言えば、DEMのメイジが〈アンノウン〉を引き連れて行っているのだ。

燎子もASTの隊長の魔術師‹ウィザード›として、〈プリンセス〉や〈ハーミット〉など何体もの精霊と戦い、さらには〈アンノウン〉達とも戦い、挙げ句DEM日本支社を舞台とした乱戦。それら全てを、無傷とは言わないまでも生き残った。

しかし、この光景は異常が過ぎた。

規模が違い過ぎる。街の上空全域を舞台とした大混戦に加え、敵方とされる反応の中には、精霊や〈アンノウン〉だけでなく、メイジや空中艦までも含まれていた。

最早、ASTの主任務である精霊との戦闘などではない。今目の前に広がっている光景は、紛れもない『戦争』であった。

こんな大混戦の直中、自分達は周囲で逃げようとする精霊や〈アンノウン〉が来たら迎撃しろ、と言う命令なのが少しホッとしている。が、困惑の感情を拭えた訳ではない。

 

《隊長・・・・》

 

ヘッドセットに搭載された通信機より、美紀恵の声が響いてくる。

 

《折紙さんの言っていたのってコレの事・・・・ですよね》

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

その言葉に、暫し無言になる。確かにこれは2日前に折紙によって予言された通りのものであった。そして、DEMは〈アンノウン〉達と秘密裏に同盟を組んでいるという話も、これで俄然真実味が出てきた。

 

《ど、どうしましょう・・・・?》

 

「・・・・どんな形であれ、任務には変わらないわ。精霊や〈アンノウン〉がいる以上、ソレを倒すのが私達の仕事でしょう」

 

《でも・・・・》

 

美紀恵が尚も食い下がる。

上官として部下を叱責すべきたが・・・・燎子はフンて鼻を鳴らすだけにした。心情的には美紀恵の考えに近かった。

今までの様々な出来事から、DEMインダストリーには相当な『疑念』と『不信感』が募っていたし、精霊も個体によっては意思疎通が可能ではないかと思われる者もいないでも無かった。

しかしASTの隊長としての責任と矜持が、溢れたがる感情をギリギリの所で押し止め、否、それもあるがもっと正確に言うならば。折紙の言葉を信じた瞬間、今まで自分のしてきた事は誤りであった事になってしまう。それを認めるのが、堪らなく恐ろしいのだ。

余談だが、『前の世界の折紙』も、燎子と同じ葛藤の果てにDEMのスカウトを受けたようなものなのだ。

と。その瞬間。そんな思考を停止するような事態が起こった。

ーーーー自分達の目の前で、蝙蝠の群れが集まっていき、人型へと京成されていくと、以前〈ディーヴァ〉の時に現れた蝙蝠の〈アンノウン〉‹ヴァンパイア›が現れた。

 

『・・・・(ベロリ)』

 

〈アンノウン〉が燎子を見て舌なめずりするのを見て、燎子は背筋にゾゾゾっと悪寒が走るのと同時に、

 

『シャァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

〈アンノウン〉が襲いかかったが、その瞬間、〈仮面ライダー〉、精霊〈ハーミット〉が変身した個体が、自分と〈アンノウン〉の間に立って、自分を守ったのだ。

 

『ヴァァアアアアアアアアア!!』

 

〈アンノウン〉は身体を無数の蝙蝠にして、〈ハーミット〉に襲いかかる。

 

「うわっとぉ!!」

 

が、ハーミットが足元から雪を放出して飛んで回避すると、蝙蝠の群れがそれを追いかける。

がーーーー。

 

[ザフキエルファング!]

 

「はっ! はぁぁぁ・・・・おりゃぁぁぁぁ!!」

 

〈ハーミット〉が兎の篭手を左手に装備すると、ソコから、とてつもない冷気を纏った氷雪を放ち、蝙蝠の群れが一瞬で巨大な氷塊となり、重力に従って天宮市の街中に落下していく。

 

「六喰ちゃん! よろぴく〜♪」

 

「ーーーーふむん」

 

が、〈ハーミット〉が声をあげると、氷塊の真下に、長い金髪をした美紀恵よりも小柄な、しかし、美紀恵よりも圧倒的な質量をした胸元をした女の子が立っていた。

 

[ドライバーセット シャバドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪]

 

「変身!」

 

ドライバーを装備し、左手中指にリングを嵌めた左手で髪を払うと、ドライバーに翳した。

 

[ゾディアック プリーズ!]

 

女の子の頭上に魔法陣が展開され降りてくると、女の子の身体が琥珀‹アンバー›の塊に包まれ、それが砕けると、今まで確認された事のない〈仮面ライダー〉が現れた。

ピンク色のチャイナドレス風の衣装に星空や星座が描かれた羽衣を纏わせ、何処か天女のような雰囲気があるが、金色の軽装のアーマーを装備し、顔には琥珀‹アンバー›の仮面を付けた〈仮面ライダー〉だ。

 

[ミカエルワンド!]

 

〈仮面ライダー〉がバックルに手を翳すと、その手に『鍵の形をした長い杖』を取り出す。

 

[マジイイネ! ミカエル! ステキー!]

 

「ーーーーはぁっ!」

 

落下してくる氷塊に杖の切っ先を突き出すと、氷塊にまるで鍵を鍵穴に挿し込むように入り、氷塊が重力を無視して、宙に浮く。

 

「ーーーーふっ!」

 

〈仮面ライダー〉が杖を動かすと、氷塊が近づいてきて、その氷塊に回し蹴りを叩き込んだ。

 

ーーーー『スターダストエンド』。

 

ーーーービギビギビギビギ! ドガァァァァァァァァァンン!!

 

その瞬間、氷塊に激しいヒビが入り、内部の蝙蝠達もろとも爆散した。

 

「ーーーーふぅ」

 

「いやー! 六喰ちゃん、〈仮面ライダーゾディアック〉としてのデビュー戦としては、中々上々じゃん♪」

 

『カッコよかった、です』

 

「うむ。相手が少し物足りない処じゃがのうーーーーん?」

 

と、そこで〈仮面ライダーゾディアック〉と呼ばれた精霊が、燎子達の存在に気づいたようだ。

 

「ーーーーふむん。他の連中とは装いが違うようじゃの。もしや、ウヌらが折紙が申しておった『えいえすてー』とやらか?」

 

「え、ええ・・・・」

 

ーーーー精霊に、助けられた?

予想外の事態に、燎子が呆然と答えると、〈ハーミット〉が声を発する。

 

「折紙さんから事情は聞いています。・・・・どうか、離れていて下さい」

 

『そーそー。仕事熱心なのは良いけど、納得できない仕事にはお断りするのも、1つの勇気って言うよー』

 

「は・・・・な、何を・・・・」

 

「むん、行くかの、四糸乃、よしのん」

 

燎子が困惑していると、精霊達は頷き合い、空を駆けていった。

そして、暫しの間辺りに沈黙が流れる。燎子を始め、皆、今起こった事に理解が追いついていない様子だ。

 

《・・・・! た、隊長、大丈夫ですか!? お怪我は!?》

 

数秒の後、美紀恵が正気に戻り、声を上げ、燎子も我に返る。

 

「え、ええ、大丈夫よ。問題ないわ。・・・・精霊の、お陰で」

 

《・・・・・・・・》

 

燎子が言うと、隊員達はまたも黙り込んだ。やはり今のは見間違いや幻覚ではないようだ。

燎子は、頭をガリガリと頭を掻いた。自分達は今、〈アンノウン〉、『魔獣ファントム』に襲われ、精霊に助けられた。

 

【精霊が破壊意思しか持たない生物であると言う情報自体、DEMのプロパガンダであると捉えるべき、分からず達は初めから、DEMの手の平の上で良いように踊らされていただけ】

 

折紙の言葉が思い起こされる。頭の中で、理性と感情がせめぎ合いを起こす。

今まで燎子は、ASTは、今まで世界の為に、人類の為に、精霊と戦ってきたのだ。幾度も傷を負い、命を危険に晒してなお、その矜持を胸に今まで生きてきた。ソレを簡単に否定できない。

けれど、目の前に示された状況が、積もりに積もったDEMへの疑念が、燎子の胸に燻っていた恐れを押しのけていった。

 

「ーーーーッ」

 

ーーーーガン!

 

『っ!』

 

燎子が手にしていたレイザーカノンに、額を打ち付ける。

隊長の突然の行動に、隊員達が驚いたように目を丸くした。

 

「・・・・・・・・アンタ達」

 

十数秒。人生の中で最も凝縮された熟慮を経て、燎子は口を開いた。

 

「・・・・再就職の準備、しときなさい」

 

『・・・・・・・・!』

 

隊員達から返ってきたのは困惑と驚きーーーーそしてそれにも勝る位の、高揚と奮起だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー折紙sideー

 

『ギャァァァァァァァァァァっ!!』

 

ーーーードガァァァンン!!

 

「ふーーーーッ」

 

〈仮面ライダーエンジェル トリニティスタイル〉となった折紙は、『ガーゴイルファントム』を倒し短い息を吐くと同時、眼球を眼窩の中でグルンと巡らせ、周囲の敵を補足した。

すると、折紙の周囲に浮遊していた『メタトロンウィンガー』が目にも止まらぬ速さで空を駆け、その先端から光線を放ち、〈バンダースナッチ〉てインプ達の頭を貫き、爆発する。

しかし、幾ら屠ってもまるでゴキブリか蛆虫のように湧いて出てくる。数の暴力は純粋に脅威である。

 

「全く鬱陶しいでやがりますね」

 

そんな声と共に〈仮面ライダービーストH‹ハイパー›・フルアームドスタイル〉となった真那が話かける。

 

『真那!』

 

「ほいっと!」

 

ライオンの声に反応したビーストH‹真那›が左腕を突き出すとカメレオンが舌を伸ばすと、長く伸ばした舌がインプの頭を貫通し、さらに襲い来る〈バンダースナッチ〉をバッファを装備した両足で膝蹴りで1体吹き飛ばすと、ピンポン玉のように次々と跳ね飛んでいく。

 

「ーーーーやっぱり、元を絶たねー事には」

 

「分かっている」

 

「ーーーー折紙さん! 真那さん!」

 

「むん、待たせたの」

 

と、エンジェル‹折紙›が小さく頷きながら答えると、後方からハーミット‹四糸乃›とゾディアック‹六喰›がやって来る。

 

「随分遅かったですね、何かあったのかと心配しやがりましたよ」

 

ビーストH‹真那›が視線をやりながら言うと、ハーミット‹四糸乃›が申し訳無さそうに頭を下げた。

 

「す、すみません・・・・」

 

「ウヌらの旧友がファントムに襲われておってな」

 

が、ゾディアック‹六喰›がそう言うと、ビーストH‹真那›は全てを察したように頬をポリポリとかいた。

 

「あー・・・・成る程。やっぱ来ちまいやがってましたか」

 

言って、ビーストH‹真那›がエンジェル‹折紙›の方をチラッと見てくると、エンジェル‹折紙›は目を伏せる事を返答に変えると、気を取り直すように唇を開いた。

 

「ーーーーともあれ、コレでチームが揃った。作戦に移る」

 

そう。作戦を並行し、効率的に行う為、エンジェル‹折紙›達は今、数名ごとにチームを組んでおり、今結集した折紙、真那、四糸乃、六喰は、アルテミシア捕獲班である。

一刻も早くアルテミシアを無力化し、〈フラクシナス〉へ護送し、その脳波データを以て〈バンダースナッチ〉の稼働を停止する事を目的としたチームだ。

〈フラクシナス〉には、全体の戦況を見て指示を発する琴里に、解析を補助する二亜。その側には〈破軍歌姫‹ガブリエル›〉を持つ美九と、〈贋造魔女‹ハニエル›〉でそれを模した七罪が控え、天使の演奏で皆の能力を向上させる。

そして〈ニベルコル〉対応班として、十香と八舞姉妹、そしてーーーー。

 

「ーーーー! 折紙さん!」

 

「・・・・ッ!」

 

ビーストH‹真那›の声に弾かれるように、反射的に手を振り上げる。

すると次の瞬間、エンジェル‹折紙›の眼前に『メタトロンウィンガー』を盾のような陣形をとると、凄まじい衝撃が加わる。

天空から超高速で飛来した〈仮面ライダー〉が、手にした剣で斬りつけてきた。

腕に伝わる重圧。肌がチリつくかのような濃密な魔力で編まれた随意領域‹テリトリー›。そして、折紙でさえ肉薄されるまで気づかなかった圧倒的なスピード。

それらを全て併せ持つ相手など、エレン・メイザース、そしてーーーー。

 

「アルテミシア・・・・!」

 

折紙がその名を呼びながら光線を放つと、剣戟を放ってきた〈仮面ライダー〉が回避する。

アルテミシア・アシュクロフトが変身する〈仮面ライダーヘルキューレⅡ〉は、エンジェル‹折紙›から距離を取った。

 

「ーーーーや、久しぶり。宇宙で会って以来だよね?」

 

偶然友人にでも会ったかのような調子で、ヘルキューレⅡ‹アルテミシア›が言ってくる。エンジェル‹折紙›達は思わぬターゲットの登場に驚きながらも、臨戦態勢を取る。

しかしヘルキューレⅡ‹アルテミシア›はそんな4人を前にしても気安い調子を崩さず、言葉を続ける。

 

「鳶一折紙ーーーーで良いんだよね。君の事を少し調べてみたんだけど、やっぱり記憶に無いんだ。でも何だかムズムズするんだよね。もしかして、何処かで会った事あるのかな?」

 

言って、ヘルキューレⅡ‹アルテミシア›は可愛らしい仕草で首を傾げる。エンジェル‹折紙›は彼女を見据えたまま返答を返した。

 

「・・・・あなたはDEMインダストリーの手によって記憶処理を受けている。私達ならば、多分それを治す事が可能」

 

「ーーーーえ?」

 

エンジェル‹折紙›が包み隠さず言うと、ヘルキューレⅡ‹アルテミシア›は意外そうな声を発した。

 

「ええ・・・・それって、DEMが私を騙しているって事?」

 

「そう」

 

「うーん・・・・」

 

ヘルキューレⅡ‹アルテミシア›は数秒考えを巡らせる仕草を見せた後、フウと息を吐いてきた。

 

「ゴメンね。信じられないや。ーーーーだって君達、精霊だし」

 

言うが早いが、ヘルキューレⅡ‹アルテミシア›の姿が一瞬て肉薄する。

 

「ふっ!」

 

ビーストH‹真那›がフリンジスリンガーを伸ばして、ヘルキューレⅡ‹アルテミシア›の1撃を防ぎ、空に幻想的な火花が散る。

 

「っ!」

 

エンジェル‹折紙›が距離を空ける。驚きや落胆はない。記憶処理を受けた者が敵の話を鵜呑みにするなんて、そんな士道のような単純・・・・もとい、純粋な人間であれば、こんな面倒な事はしない。元より交戦を考慮しての編成だ。

そして、〈バンダースナッチ〉やインプ、メイジ達が大挙して押し寄せ、ヘルキューレⅡ‹アルテミシア›に攻撃を仕掛けようとしていたビーストH‹真那›やハーミット‹四糸乃›、ゾディアック‹六喰›に襲いかかる。

 

「ちーーーー!」

 

「よしのん・・・・!」

 

『はいよー! 悪い子は凍らせてお仕置きよー!』

 

「むん・・・・!」

 

散開し、雨のように降り注ぐ魔力砲や火炎と氷雪と風刃と岩石を避けながら、敵を堕とし、撃破していく。

エンジェル‹折紙›は『メタトロンウィンガー』を操作し、四方八方からヘルキューレⅡ‹アルテミシア›に砲撃を放つが、ヘルキューレⅡ‹アルテミシア›は『イージス』を使って光線を逸らすようにして躱す。

やはり簡単に倒せるとは思えず、小さく溜め息を吐いてからを、レイザースピア〈エインヘリヤル〉を持って、目にも止まらぬ速度で斬撃を繰り出す。

 

「はーーーーッ!」

 

「とりゃっ」

 

ヘルキューレ‹アルテミシア›は、豪速の突きを正確に捌き、その隙を衝いて足を蹴り上げてくる。

エンジェル‹折紙›はそれを足の裏で踏みつけるようにガードする。が、一瞬ソチラに意識を向いた隙を狙って、ヘルキューレ‹アルテミシア›が『ダーインスレイブ』を上段から攻める。

 

「ーーーー」

 

何とか〈エインヘリヤル〉を振り上げて弾くが、軽すぎる感触に違和感を感じた次の瞬間ーーーー。

 

「ひゅーーーーッ」

 

「く・・・・!」

 

剣の柄から手を離してヘルキューレⅡ‹アルテミシア›の鋭い抜き手でエンジェル‹折紙›の顔面に向けて繰り出す。

躱すのが間に合わないと思い、『メタトロンウィンガー』を操作して、自分に向けて光線を放ち、一条の光がヘルキューレⅡ‹アルテミシア›の抜き手よりも一瞬早く、エンジェル‹折紙›の肩に着弾し、その衝撃で身体のバランスを崩し、ヘルキューレⅡ‹アルテミシア›の1撃がエンジェル‹折紙›の頬を掠める。

 

「はぁっ!」

 

エンジェル‹折紙›は肉薄したヘルキューレⅡ‹アルテミシア›の腹部を蹴り、距離を取った。

ヘルキューレⅡ‹アルテミシア›はその勢いに逆らわず後方に飛ぶと、空中に放り投げた『ダーインスレイブ』が戻ってきて手に取る。

 

「流石に、やるね。今のは恐れ入ったよ。まさか、〈仮面ライダーウィザード〉以外にも、こんな相手が、いんなんてね」

 

「・・・・・・・・」

 

相手の含みの無い賞賛に、微かに表情を歪める。

 

「(ーーーーやはり、強い)」

 

対象を生かしたまま捕縛は、抹殺よりも遥かに難しい。しかも相手は格上の相手だ。折紙1人では非常に困難だ。

どうにかこのギリギリの拮抗状態を維持しつつ、他の皆が雑魚を片付けて駆けつけてくれるのを待つしかない。

 

「(1秒。たった1秒で良い。彼女からそれだけの時間を奪い取れればーーーー)」

 

《ーーーーオリリン!》

 

と、思考するエンジェル‹折紙›の通信機から〈フラクシナス〉にいる二亜の声が響いた。

 

《ちょーっとマズいかも。オリリン達の方に、強い反応が近づいてるっぽい。これ・・・・エレンだね》

 

「・・・・・・・・っ」

 

その絶対的な情報に、エンジェル‹折紙›は息を呑んだ。

 

 

 

 

 

 

ーウッドマンsideー

 

天宮市上空に展開する5隻の〈ラタトスク〉空中艦。

その内の1隻、〈フラクシナス〉の姉妹艦〈ウルムス〉の艦橋のモニタを見ながら、円卓会議‹ラウンズ›議長エリオット・ウッドマンは、細く、そして長く息を吐いた。

 

「来たかーーーーエレン。良い判断だ。成長したな」

 

レーダーの反応を見ながら、感慨深く言う。

エレン・メイザースこと、〈仮面ライダーヘルキューレ〉を示す反応は、真っ直ぐに折紙達が交戦している向かっていた。

恐らく五河士道が出てくるまで、邪魔になりそうなヤツらを潰しておこうと考えたのだろう。しかし、コチラとしては不味い状況だ。

敵は元へとSSSのエースに加え、無数のメイジと〈バンダースナッチ〉と魔獣ファントムとインプにグール、さらに〈ニベルコル〉。

どうにか拮抗を保っている戦場に、ヘルキューレ‹エレン›と言う猛毒が流れ込む。その後に残るのは、精霊達の『死』だ。

かと言って、コレを五河士道に教えれば、彼は作戦を無視して折紙達の元に行くだろうし、『国安0課』も〈ラタトスク〉にも、あのヘルキューレ‹エレン›を止められる者はーーーーただ1人しかいなかった。

 

「カレン」

 

「・・・・・・・・」

 

ウッドマンが名を呼ぶと、隣に控えていたカレンが微かに肩を揺らした。

 

「後を頼む」

 

「・・・・・・・・・・・・、はい」

 

冷静沈着な彼女らしからぬ間を置いて、重苦しい調子で返してきたが無理もない。

彼女は、そしてこの艦のクルー達は、ウッドマンの発した言葉の意味を、よく知っているからだ。

カレンは静かに息を吐くと、ウッドマンの背後に回り、ゆっくりと車椅子の向きを変えながら声を発する。

 

「エリオット。1つ、場を和ませる為のジョークを披露しても宜しいでしょうか」

 

「ほう、君が? 珍しいな。是非聞かせてくれ」

 

ウッドマンが言うと、カレンは平坦な調子のまま言葉を続ける。

 

「ーーーー逃げましょう、エリオット。精霊も、〈ラタトスク〉も、何もかも捨てて。そしてのどかな田舎に家を買い、静かに暮らしましょう。山間のーーです花畑があるような場所が良いですね」

 

「・・・・・・・・」

 

「子供は3人以上が希望です。性別は問いません。男であれ女であれ、あなたと亘っての子ならば、優秀に違いありませんから。そして賑やかな、少し騒がしい日々を過ごしましょう。小さな幸せを積み重ねて、緩やかに歳を取りましょう。そしていつか天に召される時はーーーーどうか、私の膝の上で」

 

「・・・・・・・・カレン」

 

ウッドマンは静かに言うと、車椅子を押す彼女の手にソッと手を重ねた。

 

ーーーーズズッ・・・・!

 

ーーーーうぅっ・・・・!

 

耳を澄ますと、艦長席や艦橋下段から、微かにクルー達かわ鼻を啜るような音が聞こえてくる。

しかしカレン本人は表情をピクリと変えないまま、言葉を続けた。

 

「無理せず笑っていいのですよ。渾身のジョークです」

 

「ああ・・・・君には喜劇女優‹コメディエンヌ›の才能がある」

 

「どうも」

 

カレンは短く答えると、そのままウッドマンの車椅子を転送装置の上まで押した。

 

「カレン」

 

「はい」

 

「すまんね」

 

「そんなあなただから惚れたのです」

 

「・・・・はは」

 

ウッドマンは小さく笑う。

 

「(・・・・すまないなカレン。しかし、やらなければならない。それが私の『責任』だから)」

 

懐から金色に輝くドッグタグーーーー緊急着装デバイスを取り出して、ウッドマンは転送装置の光に包まれたーーーー。

 




次回、ドラゴンの具合が凄まじく悪くなります(笑)。



 

ー『仮面ライダーゾディアック』ー

スーツは〈仮面ライダーマリカ〉をウィザード風にして、防御にも使える夜空と星座が描かれた羽衣を纏い、マスクは琥珀にした感じです。
『ミカエルワンド』
錫杖としても使え、差し込んだ相手の動き、もしくは能力を一時的に封印するだけでなく、引力と斥力を与え、六喰の思う通りに動かせる。本来の〈封解主‹ミカエル›〉のように、封印と解除もできる。必殺技は、空間の孔を作ってミカエルワンドで動きを封じ、引力で引き寄せてから回し蹴りで粉砕する『スターダストエンド』。
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