デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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氷雪のショータイム

ー士道sideー

 

「はぁっ!」

 

士道はヘルハウンドがいる屋上に跳び移ると、ヘルハウンドに向けてウィザードソードガン・ソードモードの刃を振り下ろす。が・・・・。

 

『フッ』

 

「なっ!?」

 

刃を振り下ろした瞬間、ヘルハウンドの姿が突如消えた。

 

「消えた? 何処に・・・・」

 

ズバンっ!

 

「うわぁっ!?」

 

ヘルハウンドの姿が消えて辺りを見渡すウィザード<士道>の背中に衝撃が襲った。

振り向くとヘルハウンドは剣を振り下ろしたポーズを取っていた。

 

「いつの間に!? くそっ!」

 

反撃でソードガンを振るが、またもやヘルハウンドの姿が消えた。

 

「またかよ!? 一体・・・・」

 

バシュッ! バシュッ! バシュッ!

 

「ぐあああああああっ!!?」

 

今度は背後から火炎弾が背中に命中して吹き飛ぶ。

 

『ククククククク』

 

ヘルハウンドが嘲笑うかのように身体を震わせると、またもや姿が消えた。

 

「ど、どうなってんだよ・・・・?!」

 

《士道、聞こえる?》

 

仮面の中の右耳に付けたインカムから、琴理の声が聞こえてきた。

 

「琴理か?」

 

《ソイツの消える原理が分かったわ。こっちはカメラで見ていたから気づけたの》

 

〈フラクシナス〉で上空から士道の戦いを見ていた琴理は、士道にヘルハウンドの姿が消えるカラクリを伝えた。

 

《姿を消してるでも、瞬間移動しているでもないわ。そのファントムは、“影の中を移動しているのよ”!》

 

「な、なに?」

 

≪なるほど影の中をか、姿が消えた訳でも無いならばどうにでもなるな≫

 

「・・・・確かにな」

 

ウィザード<士道>は、ウィザードソードガンをガンモード に変えると、手形を開けた。

 

[キャモナシューティングシェイクハンズ! キャモナシューティングシェイクハンズ! キャモナシューティングシェイクハンズ!]

 

音声が辺りに響くと、ウィザード<士道>は集中力を高めて、ヘルハウンドの殺気を探った。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

本当なら一刻も早く四糸乃の元に行こうと思っているが、コイツは、このファントムだけはこの手で撃破しなければ気がすまない。

四糸乃の大切な友達のよしのんの偽物で、四糸乃の心を踏みにじり、四糸乃の優しい思いを、清らかな心を汚したコイツを、士道は許せなかった。

 

「っ! ソコだ!!」

 

[フレイム・シューティングストライク! ヒーヒーヒー! ヒーヒーヒー! ヒーヒーヒー!]

 

『グォアアアアッ!!』

 

影から飛び出し、ウィザード<士道>に斬り込もうとしたヘルハウンドの身体に、炎の弾丸が撃ちこまれた!

ヘルハウンドはそのまま屋上の床に倒れる。

 

「良し。すぐに四糸乃の元にーーーー」

 

≪気を抜くな愚か者! まだだ!≫

 

「えっ?」

 

ズバンっ!

 

「あぁあっ!?」

 

ウィザードが振り向くと、ヘルハウンドが剣を振り下ろしたポーズで立っていた。

 

「な、なんで・・・・?!」

 

『ハハハハハハハハハハっ!!』

 

ヘルハウンドがさらに攻め立て、ウィザード<士道>は紙一重で回避し、ヘルハウンドと距離を開けた。

 

『フフフフフフフ』

 

するとヘルハウンドは再び影の中に入って姿を隠し、声だけが響いた。

 

『残念だったな、魔法使い。影に潜むことができるこの俺、ヘルハウンドの能力を見抜いた事は褒めてやるよ』

 

≪なるほどな。ヤツはどうやらあの能力で、〈ハーミット〉の情報を探りだしたようだな≫

 

「っ! お前、まさかその能力で、四糸乃を・・・・!」

 

『その通り! 俺はあの時、貴様にやられたと見せて、俺はずっと貴様の影の中に潜んでいたのだ! 運が良かったぜ! 貴様が〈プリンセス〉と〈ハーミット〉に合流した時、〈ハーミット〉を襲って絶望させようかと思ったが、それよりももっと効果的なやり方を見つける事が出来たからなぁ!』

 

つまり、自分の迂闊さで四糸乃がああなってしまった。ウィザード<士道>は自分へと怒りと悔しさで拳をきつく握った。

 

「(俺が・・・・! 俺がヤツをちゃんと仕留めておけば四糸乃は・・・・!)」

 

バシンっ!

 

「あでっ!? 何すんだよドラゴン!!」

 

体内のドラゴンが、またもや尻尾で士道の頭を叩いた衝撃と痛みで、ウィザード<士道>は正気に返る。

 

≪喧しいわ、このすぐウジウジする蛆虫が。今優先するべき事は、さっさとこの愚犬を始末する事だろうが。後悔も慚愧もこの愚犬を片付けて、〈ハーミット〉を助けて封印してから、後で腐るほどやれば良いが、今はやるべき事をやれ。このすぐ横道に逸れるポンコツが≫

 

「たくっ・・・・もう少し優しく言えねえのかよ。この毒舌トカゲ・・・・サンキュー」

 

決して優しく無いドラゴンの言葉に悪態を付くが、ウィザード<士道>も冷静さを取り戻したのか、最後の方はボソッと小さく呟き、ウィザードソードガンをソードモードに切り替えて構えた。

 

「さて、あの隠れているヤツを見つけるには、どうすれば良いドラゴン?」

 

≪影に使って移動するファントムか。ならば、影を消せば良いだけだ≫

 

「なるほど、コイツだな」

 

士道は、ベルトの左側に付けたチェーンから、先日輪島から貰ったリングの内の1つ、『ドラゴンの目が光ったリング』を取り出し右中指に嵌めると、ベルトを右手側に変えた。

 

[ルパッチマジックタッチゴー♪ ルパッチマジックタッチゴー♪ ルパッチマジックタッチゴー♪]

 

軽快な音声が流れると、ウィザード<士道>は先日輪島に言われた言葉が頭に浮かんだ。

 

【このリングが、きっとお前の行く道を照らしてくれる。もう1つのリングは、お前の力にきっとなってくれる。だから士道、負けるなよ】

 

「(ありがとう。おっちゃん)」 

 

ウィザード<士道>は内心で輪島に感謝しながら、リングを翳した。

 

[ライト プリーズ]

 

ウィザード<士道>が右手の上に伸ばすと、魔法陣から光が溢れ、影を消した。

 

『なにっ!?』

 

「ソコだぁッ!!」

 

ウィザード<士道>に斬り込もうとしていたヘルハウンドは、突然の光で影が消えた事に驚き、身体を硬直させると、ウィザード<士道>は空かさず、ヘルハウンドの身体を、ウィザードソードガンで斬る。

 

『ぐぉあっ!!』

 

「まだまだぁっ!!」

 

ウィザード<士道>と剣技と蹴りを織り混ぜて、ヘルハウンドに攻め立てた。

 

『バ、馬鹿な・・・・なぜこんな光が・・・・!』

 

ヘルハウンドは『ライト』で目がくらんでいた。

 

「これが、前に進む為の魔法だ!」

 

ウィザード<士道>は『ライトウィザードリング』を見せるように構えて、ウィザードソードガンで斬り込んだ。

 

 

 

ー琴理sideー

 

「影の中を移動するファントム。一体どんな原理なんだか・・・・」

 

「しかし、なぜ士道君の決め技が通用しないのでしょうか?」

 

「令音、わかる?」

 

〈フラクシナス〉の司令室で、ウィザード<士道>の戦況、インプと交戦しているASTの動き。そして暴走した四糸乃の様子ををモニタリングしていた琴理は、ヘルハウンドの能力に渋面を作り、神無月はウィザード<士道>の『シューティングストライク』が効かない事に難しい顔色を浮かべ、琴理は解析していた令音に話しかける。

 

「・・・・おそらく属性、“エレメントの相性”が原因だね」

 

「“エレメントの相性”?」

 

「以前シンから聞いていた。シンの変身する魔法使いの姿は、ファントムの属性に合わせてスタイルを変えていく。今のシンのスタイルは四つのスタイルの中でバランスが良く、かつ攻撃力に優れた『フレイムスタイル』。そして、相手のファントムの属性も、おそらく『火』の属性・・・・」

 

「なるほど。相手ファントムも同じ『火の属性』。同じ属性だから攻撃力が半減したって訳ね?」

 

「・・・・そう言う事だね」

 

「では、どうすれば?」

 

令音の説明に琴理が理解し、令音も肯定した。神無月は対応策を聞こうとした。

 

「・・・・シンには、他にまだ見せていないスタイルがある」

 

それに反応したのは、〈次元を越える者<ディメンション・ブレイカー>〉である中津川だ。

 

「なるほど。『火属性のフレイムスタイル』、『風属性のハリケーンスタイル』、『土属性のランドスタイル』とくれば、次は・・・・」

 

「・・・・そう、『水』だよ」

 

 

ー士道sideー

 

『グアッ!!』

 

「さぁ、お次はコレだっ!」

 

ヘルハウンドを蹴りと剣撃で叩きのめしたウィザード<士道>は、チェーンから『青いウィザードの顔のリング』を嵌めて、ベルトを左手側に向けて翳した。

 

[ウォーター プリーズ]

 

ウィザード<士道>は、頭上に左手を上げると、左手から『水でできた青い魔法陣』が現れ、ウィザード<士道>の身体を上から下へ降りて来て、ウィザード<士道>の身体を新たな姿に変身させた。

 

[スイ~スイースイースイ~♪]

 

身体と複眼は菱形で、色は蒼玉<サファイア>の『青』となり、属性が水へと変化した。

4スタイルの中では最も魔力に優れている。変幻自在の水流の魔法使い、『仮面ライダーウィザード ウォータースタイル』。

 

「さぁ、水の魔法を見せてやるぜ!」

 

ウィザードW<士道>は、『ディフェンドリング』を嵌めて、ベルトを右手側に変えた。

 

『己ぇっ!!』

 

ヘルハウンドが火炎を放つが、ウィザード<士道>は『ディフェンド』を翳した。

 

[ディフェンド プリーズ]

 

「ふっ、はっ!」

 

ウィザードW<士道>の前に水分が集まり水の魔法陣の障壁を生み出し、ヘルハウンドに向けて押し出すと、ヘルハウンドの放った火炎を消しながら、水で魔法陣がヘルハウンドに当たり、ヘルハウンドはびしょ濡れになった。

 

≪これでもう・・・・≫

 

「炎は使えないなっ!」

 

『あ、うぅっ・・・・!』

 

「どうだ犬ッコロ。追い詰められた者の恐怖が、少しは理解できたかっ!?」

 

『黙れっ! 俺は『ヘルハウンド』! 『地獄の猟犬』だっ! 追い詰められるのは・・・・貴様の方だっ!!!』

 

ヘルハウンドが剣を持ってウィザードW<士道>に襲いかかるが、ウィザードW<士道>は冷静に、ソードガン・ソードモードを構えて、迫り来るヘルハウンドの攻撃を、まるで流れる流水の如くいなし、流し、ヘルハウンドの体制が僅かに崩れるのを見図って、ヘルハウンドの身体を切り裂いた!

 

『ぐあああああああっ!!』

 

「いやっ!」

 

『ガアっ!!』

 

突きをお見舞いされ、ヘルハウンドは大きく吹き飛び、屋上の床を転がると、ウィザードW<士道>は、ソードガンの手形を開けた。

 

「フィナーレだ」

 

[キャモナスラッシュシェイクハンズ! キャモナスラッシュシェイクハンズ! キャモナスラッシュシェイクハンズ!]

 

必殺のメロディが流れると、ウィザードW<士道>は『ウォーターウィザードリング』を翳した。

 

[ウォーター スラッシュストライク! スイースイースイー! スイースイースイー!]

 

≪斬り裂けっ!≫

 

「はぁっ!!」

 

横一文字に振った水流の斬撃が、ヘルハウンドの身体を斬り裂いた!

 

『ヌゥアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』

 

断末魔の悲鳴を上げるヘルハウンドの身体を、青い魔法陣が現れ、青い炎を上げて爆散したかと思うと、魔法陣が弾け、水となって炎を鎮火させた。

 

「四糸乃・・・・!」

 

[ハリケーン プリーズ]

 

ウィザード<士道>はすぐにハリケーンスタイルにチェンジすると、暴走する四糸乃の元へ向かった。

 

 

ー琴理sideー

 

「バランスが取れていて攻撃力に優れたフレイムスタイル。魔力の扱いに長けたウォータースタイル。飛行とスピード特化のハリケーンスタイル。パワーと防御力に優れたランドスタイル。この4つのスタイルでも万能型な力を有しているね」

 

「そのようね。四糸乃の方は?」

 

琴理が聞くと、艦橋下のクルーが、四糸乃の様子を解析していた。

 

「『ゲート』の皹はなおも侵食中。しかし、士道君が到着するまでは、まだ大丈夫のようです」

 

「司令。ASTがそろそろ量産型を殲滅しそうです」

 

クルーの報告を聞いて、ASTが映るモニタを見ると、ちょうど折紙がインプをレイザーブレイドで切り裂いた映像が映し出された。

残りのインプは後十数体位の数。

このままではウィザード<士道>が四糸乃の体内のファントムを倒すまでに、ASTが四糸乃を攻撃してくる可能性が高い。

 

「不味いわね。このままじゃ士道が四糸乃の体内のファントムを倒す前に、ASTがやって来るかも知れないわ・・・・」

 

士道が四糸乃のアンダーワールドに入った瞬間、〈フラクシナス〉に回収しようかと琴理が考えたその瞬間。

 

「し、司令!」

 

「どうしたの?」

 

クルーの一人が慌てたような声を上げた。

 

「と、十香ちゃんが・・・・!」

 

「・・・・!?」

 

モニタに映し出された映像を見た瞬間、琴理も驚愕の様相を浮かべた。

 

 

ー士道sideー

 

ウィザードH<士道>の進行方向から先回りした、鈍重なシルエットを見据える。

滑らかで無機質なフォルム。頭部にはウサギのような長い耳。四糸乃が顕現させた天使・〈氷結傀儡<ザドキエル>〉で間違いない。

 

≪それでどうするのだ?≫

 

「(決まっている・・・・!)」

 

地上に降りたウィザードH<士道>は、変身を解除して、喉を潰さんばかりに声を張り上げた。

 

「ーーーー四糸乃ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」

 

「・・・・・・・・!」

 

猛スピードで迫る人形の背に張り付いていた四糸乃が、ぴくりと反応した。

どうやら士道に気づいてくれたようだ。

凍りついた路面を滑るように移動していた〈氷結傀儡<ザドキエル>〉が、士道の目の前に停止する。

そして鈍重そうな人形が身を屈めたかと思うと、その背に張り付いていた四糸乃が、涙でグシャグシャになり、紫色の皹が少し入った顔を上げた。

 

「おう、四糸乃。久しぶりだな」

 

「・・・・士道さ、ん・・・・!」

 

四糸乃が身を起こし、ウンウンと首を縦にふる。

その際、四糸乃が〈氷結傀儡<ザドキエル>〉の背に開いた穴に差し込んでいた腕が抜かれ、四糸乃の指にそれぞれ指輪のような物が輝いており、そこから〈氷結傀儡<ザドキエル>〉の内部に、細い糸のようなものが伸びていた。

 

≪(なるほどな。あの糸のような物で、天使をまるで操り人形のように動かしていた訳か・・・・)≫

 

「四糸乃、お前に渡したい物があるんだ」

 

「・・・・?」

 

四糸乃が、袖で涙を拭って、問うように首を傾げた。

士道は、ポケットから四糸乃の友達のパペット、よしのんを取り出して、四糸乃に見せた。

 

「よ、し、のん・・・・っ・・・・」

 

『は・あ・い』

 

よしのんを見た瞬間、四糸乃の耳に、よしのんが答えてくれたように声が聞こえた。

 

「で、でも・・・・さっき・・・・」

 

「そのよしのんは偽物だよ。本物は俺が見つけてきたんだ」

 

士道にそう言われて、四糸乃も冷静にさっき燃えたよしのんだと思っていた人形をよーく思い返してみると。

確かに目の前のよしのんと、さっきの人形は細部が異なっていた。

よしのんを無くして不安で、恐くて堪らなかった心境だったから、本物と偽物の区別がつかなかったのだ。

 

「よ、よしのん・・・・! うぅっ!!」

 

四糸乃は思わずよしのんを持つ士道に近寄ろうとした瞬間、『ゲート』としての亀裂の痛みで倒れ、〈氷結傀儡<ザドキエル>〉も姿を消した。

 

「四糸乃・・・・!」

 

士道が四糸乃に駆け寄る。

 

「し、士・・・・道、さん・・・・」

 

息も絶え絶えの状態の四糸乃が士道に目を向けた。

 

[シャバドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪]

 

「変身っ!!」

 

[フレイム プリーズ。ヒー! ヒー! ヒーヒー、ヒィー!!]

 

士道はウィザード・フレイムスタイルへと変身した。

 

「大丈夫だ、四糸乃。言ったろ。俺がお前の、最後の希望だ」

 

ウィザード<士道>は、よしのんを四糸乃の左手に嵌めて、四糸乃の右手薬指に『エンゲージウィザードリング』を嵌めて、ベルトに翳させた。

 

[エンゲージ プリーズ]

 

音声が流れると、四糸乃の身体に魔法陣が現れ、ウィザード<士道>は、魔法陣の中に飛び込んだ。

 

「必ず助けるぜ、四糸乃! よしのん!」

 

ついでに、〈フラクシナス〉の浮遊カメラも、ウィザード<士道>についていった。

 

 

 

ー折紙sideー

 

その頃折紙達ASTは、アンノウン<インプ>を殲滅し終えて、〈ハーミット〉殲滅の為に向かおうとした。その瞬間、耳にビーッ、ビーッ、という耳障りなブザーが届いた。

 

「これはーーーー」

 

《折紙! せ、精霊反応が増えたわ! この反応はーーーー》

 

燎子の声を聞き終えるより早く、折紙は10メートルクラスまで拡大していた随意領域<テリトリー>を2メートルにまで凝縮させた。

その瞬間ーーーー折紙の目の前に、夜色の髪が踊った。

 

「・・・・っ!」

 

範囲を狭めて防性を高めた随意領域<テリトリー>に、強烈な負荷がかかった。

理由は簡単、目の前に現れた少女が、剣で折紙に斬りかかってきたからだ。

 

「ふん、防いだか」

 

「・・・・っ、夜刀神ーーーー十香」

 

折紙は目の前の少女の名をうめくように呼ぶと、腰からレイザーブレイド〈ノーペイン〉を抜き、十香に斬撃を放つが。

 

「っとーーーー」

 

十香はその一閃をかわすと、近くのビルの屋上フェンスの上に、足を落ち着けた。その手には、十香の天使・〈鏖殺公<サンダルフォン>〉が握られていた。

 

十香の姿は、〈プリンセス〉としての鎧を付けたドレスのような霊装を纏っておらず、来禅高校の制服に、まばらな霊装を纏った姿であった。

 

「なぜ、あなたがここに」

 

「うむ、分かったーーーーふん、〈仮面ライダァ〉の邪魔はさせんぞ」

 

「・・・・・・・・(〈仮面ライダー〉がここに来ている?)」

 

誰かに相づちを打ったように頷き、雨に濡れた髪をかき上げて不敵に笑う十香に、油断なく光の刃を向けた折紙は、識別名〈仮面ライダー〉が来ている事に疑問を抱くも、燎子は『弱虫〈ハーミット〉』よりも危険度が高い〈プリンセス〉である十香の方を先に殲滅するように折紙達に命令を出し、十香は小さく笑うと折紙に剣を構えて、向かってきた。

 

 

 

ー士道sideー

 

「うわっ!? ここが四糸乃のアンダーワールドかよ!?」

 

四糸乃のアンダーワールドについたウィザード<士道>とおまけの浮遊カメラは、一面銀世界になった四糸乃のアンダーワールドに驚いた。

何処かの田舎町のような場所で、『巨大なウサギ』のような魔獣ファントムが、猛吹雪を口から放っていた。

 

大きさは『プリンセスファントム』と同じくらい。

〈氷結傀儡<ザドキエル>〉の耳やギザギザの歯が氷のようになっており、四足には氷のような爪が鋭く伸びており、胴体は裂け、中に人型が、まるで毛皮でも被っているような姿で、姿を隠しているような感じだ。

 

まさに隠者、ハーミットのようなその姿は、『ハーミットファントム』と名称できる。

 

「コイツが、四糸乃のファントムかっ・・・・!」

 

[ドラゴライズ プリーズ]

 

『グオオオオオオオオオオオオオッッ!!!』

 

[コネクト プリーズ]

 

ウィザード<士道>は、ウィザードラゴンを召喚し、マシンウィンガーを取り出して跨がる。

 

『Giiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiッ!!』

 

『ハーミットファントム』は、周囲に大きめの雹や鋭い氷柱が混じった猛吹雪の竜巻が巻き起こり、ウィザード<士道>とドラゴンの接近を阻んだ。

 

「これって・・・・?」

 

『さしずめ吹雪の結界といった所か、下手に接近すれば雹と氷柱が襲い来ると言う訳だ』

 

「これで俺達を倒すつもりなのか?」

 

『いや、おそらく時間稼ぎだ』

 

「時間稼ぎ?」

 

ドラゴンの言葉にウィザード<士道>は首を傾げた。

 

『“『精霊の霊力』と『魔獣<ファントム>の魔力』は反発しあう”。〈プリンセス〉の時は2つの力が安定しない影響でファントムはマトモに力を使えず、結果は我等に倒された。だが、今回のファントムは時間を稼いで、自分の力を馴染ませるつもりだな』

 

「もしも、ファントムが力が馴染ませる事が出来たら・・・・」

 

『その時は、我等が勝算がかなり低くなるな』

 

「・・・・・・・・ドラゴン」

 

ウィザード<士道>は、マシンウィンガーのエンジンを唸らせた。それを見てドラゴンも察した。

 

『お前な、もう少し考えて行動できないのか?』

 

「そんな事してる暇はない。四糸乃を助ける。その為にも俺はやる・・・・!」

 

こう言ったら聞かない頑固な所が有ることを、この一年の不本意の付き合いで散々見てきたドラゴンは、ハァアアアアア・・・・。と、大きくため息をこぼした。

しかしーーーー

 

《士道、待ちなさい。何をするつもり?》

 

右耳に付けたままのインカムから、琴理の静止の声が入るが、ウィザード<士道>は構わずマシンウィンガーに乗ったままジャンプし、マシンを翼の形体に変形させると、ドラゴンの背中と合体した。

 

《ーーーーっ、生身で結界に入るつもり? 回復力頼りで? 無謀過ぎるわ、やめなさい》

 

「おいおい・・・・俺が撃たれた時は、全然動揺しなかった司令官様が、随分殊勝な事を言うな?」

 

《あの時とは状況が違うわ。吹雪が吹き荒れている領域は、結界内の外周およそ20メートル地点まで、20メートルよ? その距離を、散弾銃に撃たれながら進むようなものよ。いくらドラゴンのスピードでも、霊力を感知すれば凍り付くかもしれないわ》

 

捲し立てるように、琴理が続ける。

 

《言ってる意味わかる? 結界外縁部にいる間は、傷が治らないかもしれないのよ。一発きりの銃弾とは違うわ。途中力尽きたら、間違いなく死ぬわよ!?》

 

「・・・・霊力ーーーーか。俺のあの回復能力は、精霊の力なのか?」

 

《・・・・ッ》

 

『(成る程な、これで合点がいった・・・・)』

 

琴理が息を詰まらせるのを聞いて、ドラゴンは回復能力と、士道の内部にある“赤いエネルギーの正体”が分かった。

 

「ドラゴン、ウチの妹様はお前のスピードでも、無理だって言ってるみたいだぜ?」

 

『・・・・・・・・その妹に伝えておけ、寝言は寝てほざけ! 寝てるならとっとと目を覚ませ! とな』

 

ドラゴンはウィザード<士道>を乗せて上昇する。

士道自身、馬鹿な行動をしていると思う。しかし、止められなかった。

約束したのだ四糸乃と、救うと。自分がーーーー四糸乃のヒーローになると。

ドラゴンは結界の上空で停止すると、勢いを付けて急降下し、結界へと突撃した!

 

《士道ーーーー! 士道! 止まりなさい!》

 

琴理が、いつになく必死な様子で叫んでくる。

 

《ーーーー止まって・・・・ッ、おにーちゃーーーー》

 

しかしそんな声を最後に、士道の耳には、凄まじい吹雪の音しか聞こえなくなった。

 

 

 

 

身体に雹がすごい勢いでぶつかる。

腕や足に氷柱が突き刺さる。

手足の感覚が無くなりそうだ。

寒さで骨の髄まで凍りそうだ。

意識が遠退く感じがする。

 

『これで死ぬのか小僧?』

 

「し、死んで堪るかっ!」

 

『ふん、しぶとさだけは大したものだな!』

 

ドラゴンの声に応えると、猛吹雪で閉ざされたウィザード<士道>の視界が開けた。

外部は機銃掃射のような猛吹雪だと言うのに、中心部は実に静かで、まるでかまくらの内側のように感じたが、ウィザード<士道>はすぐに気持ちを切り替えた。

目の前に、『ハーミットファントム』が、こちらを睨んでいたからだ。

 

『さて、少し熱くしてやろうかっ!!』

 

ドラゴンが身を丸めると、身体を赤く発光させて力を貯め込むとーーーー。

 

『ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・』

 

すると、ドラゴンの身体から熱気が立ち込め、冷えきったウィザード<士道>の身体を暖め、突き刺さった氷柱を瞬間蒸発させーーーー

 

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』

 

ドラゴンの身体が爆炎を全方位に放出すると、猛吹雪の竜巻を吹き飛ばし、『ハーミットファントム』も、その勢いで吹き飛び、地面に倒れた!

 

「スッゲ、さすがドラゴン」

 

『当然だが後にしろ! 一気に決めるぞ!』

 

「おう!」

 

ウィザード<士道>は、ライトの他に、輪島から貰った、『ドラゴンが何体も重なったリング』を取り出し嵌めると、ベルトに呼び込ませた。

 

[コピー プリーズ]

 

呼び込ませると、ウィザード<士道>の後ろに魔法陣が現れ、隣に移動すると、なんとウィザード<士道>とドラゴンが、もう一組現れた!

 

[コピー プリーズ]

 

[コピー プリーズ]

 

[コピー プリーズ]

 

二組が四組に、四組が八組に、八組が十六組となり、今度は一斉ににベルトを右手側に変えた。

 

『ルパッチマジックタッチゴー♪ ルパッチマジックタッチゴー♪ ルパッチマジックタッチゴー♪』

 

すかさず、『キックストライクリング』を呼び込ませた。

 

『フィナーレだ!』

 

『チョーイイネ! キックストライク! サイコー!』

 

全ウィザード<士道>が飛ぶと、ドラゴンが身体を丸めるようになり姿を変えた。

巨大なドラゴンの足を模した姿、『ストライクフェーズ』へと変形し、その足の根にバイクモードのマシンウィンガーが乗り、ウィザード<士道>がキックをして、急降下した!

 

『Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaッッ!!!』

 

『ハーミットファントム』が被っていたウサギの口から猛吹雪を放つが、急降下するウィザード<士道>の身体が燃え上がり、巨大な炎のウィザードへとその姿を変えた!

吹雪が炎のウィザードに当たるが、炎の勢いは止まらない!

 

『我の炎を、この程度の吹雪で消せると思うな!!』

 

紅蓮の焔の蹴撃が、次々と『ハーミットファントム』の身体に吸い込まれた!

 

『ストライクエンド』

 

『Gaaaaaaoooooっ!!』

 

離脱したドラゴンとウィザード<士道>は、『ハーミットファントム』が爆散していくのを見た。

ふと、ウサギの毛皮を被っていたような人型の部分の口が開いた。

 

『ありがとう、士道君。助かったよ・・・・』

 

「っ! よしのん・・・・?」

 

その口調に、ウィザード<士道>は、先ほど令音から聞いた事を思い出した。

四糸乃とよしのんは別々の人格、『二重人格』だったのだ。

 

【なんとも信じ難いことに、この少女は自分ではなく、他者を傷つけまいとするために、自分の力を抑えてくれる人格ーーーー『よしのん』を生み出した可能性がある・・・・シン。彼女を救ってあげてくれ。こんなにも優しい少女が救われないなんて・・・・そんな悲しい話、嘘だろう?】

 

おそらく四糸乃の中にいたよしのんの人格が、『ハーミットファントム』に捕らえられていたのを、士道とドラゴンが助けたのだろう。

ファントムが倒され、アンダーワールドが修復された。

 

遠くで海を望む閑静な住宅街と、住宅街から伸びる長い坂道の上にある大きな病院があった。

 

「これが、四糸乃の記憶なのか?」

 

『さあな。もしかしたら〈ハーミット〉の深層心理にある記憶なのかも知れん』

 

すると、そのアンダーワールドの中心に、ウォータースタイルのように、蒼玉の大きな結晶体が現れた。

十香の時と同じく、精霊の核<コア>だろう。

 

「これで終了だな・・・・」

 

『とっとと戻るぞ。〈プリンセス〉に面倒事をやらせておく訳にもいかん』

 

「ん? 何で十香が出てくるんだよ?」

 

ウィザード<士道>とドラゴン、後ついでに浮遊カメラは、魔法陣を開いて、四糸乃のアンダーワールドから脱出した。

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

結晶体の中に、四糸乃と似た容姿の女の子が両膝を抱えて眠っていたが、士道達の姿を見ると、口元に笑みを浮かべて、再び瞼を閉じて、眠りについた。

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