デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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消えゆく仲間達

ー十香sideー

 

「真那!」

 

「真那さん・・・・!」

 

真那が消えた事で叫びを重ねるプリンセス‹十香›とハーミット‹四糸乃›。

すると次の瞬間、澪の身体が目映い光に包まれた。

 

「・・・・!?」

 

一瞬、澪がまた新たな攻撃を仕掛けてきたのかと思ったがーーーー違う。

澪の周囲にはいつの間にか、『メタトロンウィンガー』が現れ、澪目掛けて光線を放った。

そう。澪が世界の法則を書き換え、真那を抱き留めている間に、エンジェル‹折紙›はこの展開を見越していたのだ。

 

「ふーーーーッ!」

 

エンジェル‹折紙›の声と共に、四方八方から破滅の光が最大出力で放たれる。様変わりした世界の地面が抉られ、巨大なクレーターが形成される。

 

「折紙、油断するな・・・・!」

 

あまりに凄まじい威力だが、先程、ベルセルク‹八舞姉妹›とプリンセス‹十香›の最大技を受けても、ダメージを負っていなかった澪に、プリンセス‹十香›は警戒を緩めなかった。

と、その時。

 

「・・・・!」

 

エンジェル‹折紙›がピクっと反応すると、澪を覆っていた攻撃が止んだ。

 

「折紙?」

 

「ーーーー気をつけて。私は、攻撃を止めていない」

 

「何・・・・?」

 

プリンセス‹十香›が訝しげに声を発した瞬間、辺りに立ち込めていた煙が晴れ、澪の姿が見て取れるようになる。

ーーーーメタトロンウィンガーを手懐けるように手を置いた、その姿が。

 

「なーーーー」

 

「・・・・例え、ウィザードラゴンにコーティングにされているとは言え、ここまで近くに来てもらえれば、主導権を奪えるよ。ーーーー行って」

 

澪が、静かに指示し、手を掲げる。

すると、メタトロンウィンガーはその先端をプリンセス‹十香›達に向けて、幾条もの光線を放ってきた。

 

「く・・・・!」

 

「ーーーーさせません!」

 

と。光線が炸裂しようとした瞬間、ハーミット‹四糸乃›の声が響いたかと思うと、『アーマースタイル』となり、前方に分厚い氷の壁が生じた。

氷の壁はメタトロンウィンガーの光線に削られながらも、それ以上の速度でさらなる壁を生成し、防いでいく。

だが。

 

「・・・・フム。ではそれも、禁止しよう」

 

「えーーーー」

 

澪が言った瞬間、生成した氷の壁が砕け散り、メタトロンウィンガーの光線が、ハーミット‹四糸乃›の胸を貫いた。

 

「四糸乃!」

 

「十・・・・香、さんーーーー」

 

『わっ・・・・はー・・・・こりゃ・・・・参った・・・・ねぇ・・・・』

 

ーーーービキビキビキビキビキビキ・・・・ガシャァァァン・・・・。

 

その小さな身体が宙を舞い、それと同時に、アーマーも砕け散り、粒子となって消えてしまった。

地面に倒れ込んだ四糸乃の胸から、青い霊結晶‹セフィラ›が浮かび上がり、澪の胸に吸い込まれてしまった。

 

 

 

 

 

ー琴里sideー

 

そしてその頃、天宮市上空で空中艦での戦いをしていた琴里は、日下部燎子達を回収し(燎子が元上司の神無月‹変態›を見て狼狽していたが、琴里がしばいたのを見て崇敬の眼差しを向けていたが)、DEM艦を片付けて澪に1発かまそうとしていた。

マリアはオペレーターが神無月なのが心底不快のようだが。

しかし、今は一刻も早く精霊達の元に駆けつけねばならない。

ーーーー突如として現れた謎の球体。

そして天を突く大樹とそれを中心に形成された異空間。 それは恐らく、令音ーーーー澪が顕現させた天使である。

その異空間に囚われてから、精霊達との通信が途絶えてしまっていた。中で何が起こっているのかは分からないが、かなりのピンチであるのは間違いないだろう。

と。琴里がそう考えていると、

 

「ーーーーうっわぁ」

 

クルー席に座った二亜がそんな声を上げた。

戦闘に参加できない自分でも、皆の役に立ちたいと訴えた彼女は現在、見習いクルーとして艦橋に座っていた。

しかも幸か不幸か、令音に付いて観測機器の使用法を重点的に習っていた為、未熟だが今は令音の代わりに解析官の席に収まっている。

 

「どうしたのよ、二亜」

 

「どうしたもこうしたも、何あの・・・・天使? ヤバ過ぎハザードなんてレベル超えてるでしょ?」

 

二亜は眉根を寄せてモニタを見つめながら続けてきた。

 

「空の丸っこい花みたいなヤツ、あれから出た光を浴びた生物は恐らく再生怪人っぽいファントム達も含めて例外なく死んで、物体は全部壊れてる。ダメージを負って・・・・とか言う問題じゃないわコレ。なんて言うの? そのものが持ってる生命とか、寿命とか、耐久限界とか? そう言うのを一瞬で0にしているって言うか・・・・1言で言うと絶対死ぬビーム? こんなん漫画に描いたら絶対ボツるわ。どうやって倒すんだっつーの」

 

「何ですって・・・・?」

 

「もう1つの方に関しては・・・・なんかもう、あの1帯だけ完全に別の世界だよありゃ。数値狂い過ぎてて意味分かんにゃい。内部を目視できる距離まで近づければもう少しなにか分かるかも知んないけど・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

二亜の言葉に、琴里はゴクリと息を呑んだ。

するとそんな琴里の意図を察したように、スピーカーからマリアの声が響く。 

 

『ーーーー琴里。もうすぐ敵横列を抜けます。それに察して、先程収容した意識不明者及び非戦闘員が乗る区画を切り離し、〈ウルムス〉へと射出するプランを具申します』

 

「マリアーーーー」

 

『無論、負けるつもりは毛頭ありません。あくまでリスクの分散です。加えて、〈ウルムス〉にはカレン・メイザース女史が搭乗しています。アルテミシアの脳波解析も上手くやってくれるでしょう』

 

「・・・・・・・・」

 

琴里はマリアの言葉に、数瞬考えを巡らせた後、フッと唇を緩めた。

 

「・・・・悪いわね、マリア。あなたに提案させちゃって」

 

『いえ。AIの処理速度が人間より速いのは当然です』

 

マリアが冗談めかすように言ってくる。何とも人間臭い人工知能だ。琴里は小さく息を吐くと、後方にいた元AST隊員達に視線をやった。

 

「ーーーー日下部隊長。聞いての通りよ。たらい回しにして悪いのだけれど、射出する区画の敬語をお願いできないかしら」

 

「それはーーーーいえ、了解しました。お任せを」

 

燎子は眉をピクリと動かしたが、すぐにその言葉を飲み込み敬礼をする。それを見て、琴里は目を細める。

 

「隊長さん。あなた、素敵な人ね。是非とも部下に欲しくなったわ」

 

「それはどうも。ただ。私達は少々高いですよ」

 

「あら怖い」

 

琴里が笑うと、燎子もそれに返すように頬を緩めた。

 

「マリア。彼女達の網膜フィルターに、目的地までのルートを表示してあげて」

 

『了解』

 

マリアが言うと、燎子達の視界に艦内の道筋が表示されたのか、ピクリと眉を動かした。

 

「ーーーーでは、ご武運を」

 

「ええ」

 

短い挨拶を交わして、燎子達が艦橋から出ていく。その背を見送ってから、琴里は艦橋下段にいるクルー達に目を向けた。

 

「ーーーーさ、悪いけど、地獄に付き合ってもらうわよ。もし逃げ出したいなら、今すぐ彼女達の後を追いなさい」

 

琴里が言うと、二亜やクルー達が一瞬驚いたような顔をした後、フフンと不敵な笑みを浮かべてきた。

 

「何言ってるんですか、司令」

 

「そうですよ。マリアがいるとはいえ司令と副司令を2人にするなんて危険すぎます」

 

「分かる」

 

「いざとなったら私達で副司令の息の根を止めます」

 

「コレだけの戦場なら名誉の死を偽装する事も簡単です」

 

等と、口々に言ってくる。

 

「あなた達ねぇ・・・・」

 

琴里は渋面を作りながら頭を掻いたが、クルー達は微かに震える手や、額に滲む汗を見て、フウと息を吐いた。

 

「・・・・わかったわ。行きましょう。ーーーー愛してるわよ、皆」

 

『はッ!』

 

クルー達が声を揃えて答えたその瞬間、艦体が激しく揺れた。

 

『ーーーー敵艦。随意領域‹テリトリー›を強行突破しました。琴里、主砲用意を』

 

マリアの声がスピーカーから響き、艦橋の1部が変形する。

精霊霊力砲〈グングニル〉・改のコア・ルーム。

琴里はコクリと頷くと、スピリッドライバーを巻き付けリングを翳す。

 

[イフリート プリーズ!]

 

〈仮面ライダーイフリート〉に変身した琴里は、コア・ルームニ足を踏み入れ、カマエルブレイカー・バズーカモードを前方に設えられたユニットに接続する。

するとその瞬間、艦橋のクルーの声が聞こえてくる。

 

「・・・・! 当該空間の内部がカメラにて確認できました! 中央に令ーーーーいえ、崇宮澪! 十香ちゃんと鳶一さんがそれに対しています!」

 

「! 他の皆は?」

 

琴里が問うと、クルーは一瞬言葉に詰まらせてから続ける。

 

「周囲に・・・・四糸乃ちゃん、耶倶矢ちゃん、夕弦ちゃん、六喰ちゃんが倒れています!・・・・せ、生命反応ーーーーありません・・・・ッ!」

 

「・・・・っ」

 

クルーの報告に、琴里は息を詰まらせた。

皆が危機に瀕している事は、全く予想していなかった訳では無いが、それを改めて耳にすると、心臓をギュウと締め付けられるような感覚を覚えずにはいられなかった。

それを在ろう事か、令音がやった事を考えると更に。

 

『ーーーー精霊霊力砲〈グングニル〉・改。発射準備整いました。目標、異空間内の精霊・崇宮澪。ーーーーよろしいですね、琴里』

 

マリアが静かな、しかし念を押すような強い口調で言ってくる。

マリアとて分かっている。今自分が取っている行動の矛盾を。

〈ラタトスク〉は精霊を保護する組織。澪もまた、精霊である以上、例外では無い。否、それどころか、ウッドマン卿が〈ラタトスク〉を創設した経緯を思えば、彼女を救ってこそ〈ラタトスク〉と言っても過言ではない。そんな彼女に砲門を向けるなど、論外中の論外だ。

だが、彼女は今、無慈悲な牙を以て精霊達をーーーー琴里の大事な友達を殺そうとしているのだ。そんな行為を許容する訳にはいかない。

 

「・・・・令音ーーーー」

 

誰にも聞こえぬであろう小さな声がで呟く。

そう、それが例えその相手がーーーー親友であろうとも。

ギリッと奥歯を噛み締めて顔を上げた。

 

[マジイイネ! カマエル! ステキー!]

 

「ーーーー勿論よ、マリア。全力全開でぶっ放すわよ」

 

『それでこそです』

 

マリアが、短く答えてくる。

イフリート‹琴里›は画面に示された目標目掛けて、持てる力の全てをーーーーそれこそ、最後の1滴まで絞り出し、紅蓮の大砲を放った。

 

 

 

 

 

ー十香sideー

 

「・・・・おや、どうしたね、2人共」

 

澪が、プリンセス‹十香›とエンジェル‹折紙›に順繰りに視線を向けながら、静かに呟く。

 

「「・・・・・・・・」」

 

2人は無言のまま、警戒を滲ませ、澪を睨んだ。

ーーーー状況は最悪に近い。

頭上には、万物を殺める死の天使〈万象聖堂‹アイン・ソフ・オウル›〉。

眼前には、あらゆる条理をねじ曲げる法の天使〈輪廻楽園‹アイン・ソフ›〉。

まさしく最強の矛と盾を併せ持つ始原の精霊。プリンセス‹十香›はどう動いて、どう攻めるべきかを幾度も思い描いたが、自分の胸を貫かれる以外の想像に行き着くことは無かった。

恐らくエンジェル‹折紙›も同様だろう。否ーーーー自分より頭の回る彼女の事だ。もしかしたら、更に絶望的な状況を想定しているのやも知れない。

 

「・・・・ふむ」

 

そんな2人を見て、澪は顎に手を触れさせる。

 

「・・・・来ないのなら、コチラから行かせて貰うよ」

 

言って、澪が手を掲げる。緊張と戦慄が全身に走る。

 

「く・・・・!」

 

がーーーー次の瞬間。

 

「・・・・!」

 

天がキラリと輝いたかと思うと、空から地上の澪に向けて一直線に、極大の紅蓮の炎が、まるでプロミネンスのように落ちてきた。

それは紛れも無く、〈フラクシナス〉の主砲〈グングニル〉である。どうやら琴里達が援護してくれるようだ。

 

「ーーーー」

 

膨大にして濃密な力の奔流が、澪を一瞬で呑み込んだ。大地が抉られ、熱風と炎が、周囲に凄まじい衝撃波と共に撒き散らされる。

 

「・・・・折紙!」

 

「ーーーー分かっている」

 

しかし、プリンセス‹十香›とエンジェル‹折紙›は互いに視線を向け合い、一瞬で意図を察し合うと、全く同時に地面を蹴った。

〈グングニル〉・改の威力は強大。しかしそれで澪を仕留め切れるか分からないが、コレは好機でもあった。

 

「サンダルフォンブレード・最大出力!」

 

プリンセス‹十香›が叫んだ瞬間、サンダルフォンブレードが光ると、その形状を流線型に変形させた。

 

「ーーーー〈エインヘリヤル〉」

 

次いでエンジェル‹折紙›が『トリニティスタイル』となると、サンダルフォンブレードの上に乗り、槍型武装〈エインヘリヤル〉に、これまでの戦闘で周囲に撒き散らされ、満ちている魔力と霊力を収束させる。

 

「ーーーーおおおおおおおおおおおおおおおッ!」

 

「ーーーーーーーーっ!」

 

裂帛の気合いと共に、プリンセス‹十香›は澪目掛けて、猛スピードで武器を射出した。

その上に乗ったエンジェル‹折紙›は、周囲のエネルギーを一点集中させた槍を構える。

言うなればソレは、強力過ぎる巨弓‹バリスタ›。二人の持てる全てを結集した渾身の1撃が、今、澪を貫いた。

ーーーーかに、見えた。

 

「ぁ・・・・・・・・」

 

小さな。聞き逃してしまいそうなくらい小さな声が、エンジェル‹折紙›の唇から漏れる。

 

「!? 折、紙ーーーー?」

 

1拍置いて光が晴れ、プリンセス‹十香›は気づいた。

エンジェル‹折紙›の構えた〈エインヘリヤル〉が澪に阻まれ、逆に澪の手から伸びた光の槍に、エンジェル‹折紙›が貫かれている事に。

 

「・・・・ん、君達が私を倒そうとするなら、ソレを使ってくると思っていた。ーーーーだから、私も真似させてもらったよ」

 

ーーーーピシピシピシピシピシ、ガシャァァァァァァァァァンン・・・・。

 

言って、エンジェル‹折紙›の身体を貫いていた光の槍を消え、エンジェルのアーマーがヒビ割れて砕け散る。支えを失った折紙の身体がグラリと揺れ、力無く地面に横たわる。

その胸元から、純白の霊結晶‹セフィラ›が現れ、澪に吸い込まれていく。

そう。澪はプリンセス‹十香›達の奇襲を予想した上で、自らも周囲に満ちた霊力を再収束しーーーー折紙の攻撃を止めてみせたのだ。

 

「ーーーー」

 

絶望が、プリンセス‹十香›の肺腑を満たす。

思いつく限り全ての手を打った。

考えつく限り全ての方法を試した。

その結果が、眼前に広がった地獄であった。

 

「ぐーーーー」

  

だがソレでも、プリンセス‹十香›は諦めなかった。ギリッと奥歯を噛み締め、澪に立ち向かおうとする。

しかし、次の瞬間。

 

ーーーーゾプ。

 

「く、は・・・・ッ!?」

 

地面から伸びた光の帯が、プリンセス‹十香›の胸を貫いた。

 

ーーーーピシピシピシピシピシ、ガシャァァァァァァァァァァァァンン!!

 

無意識の内に、喉から声が漏れ、纏っていたアーマーが砕け散る。

不思議と痛みはなく。ただ猛烈な眠気が襲ってきて、その場に立っていられなくなり、膝から崩れ、地面に突っ伏す。

 

「ーーーーっ」

 

十香するどうにか意識を失わないよう舌を噛んだがーーーーあまり効果はない。

霞む視界の中、十香が見たのは、澪の天使〈万象聖堂‹アイン・ソフ・オウル›〉から放たれた光の粒によって、ボロボロの残骸と成り果て、地に墜ちていく〈フラクシナス〉の姿だった。

 

 

 

 

 

ー琴里sideー

 

「あ・・・・う・・・・、・・・・っ」

 

途方もない痛みと灼熱感によって、琴里は目を覚ました。

どうやら、少しの間意識を失ってしまっていたようだ。

ハッと、混濁していた記憶を取り戻し、琴里はハッと目を見開くと、状況を確かめる為に辺りを見回した。

ーーーー地面に広がる、見渡す限りの残骸。それが勇猛なる空の覇者〈フラクシナス〉の成れの果てである事は容易に想像に難くなかった。

持てる力の全てを使い果たし、変身が解除され、生身をさらし、酷い有様であった。大小様々な傷から夥しい血の痕。天使の光を浴びてしまったらしい腹部と足はとうにその機能を失っていたが、自分の焔の天使〈灼爛殲鬼‹カマエル›〉がソレを無理矢理蘇生しようとし、身体の各所がゴウゴウと炎に焼かれていた。まるで火刑に処された魔女のようだ。

だが、琴里は悲鳴も涙も漏らさなかった。

 

「な・・・・」

 

ーーーー視界の中に、有るものを見てしまった。

幻想的な霊装を纏った精霊ーーーー澪が、悠然とその場に立っている。

否、それだけではない。その足元にはグッタリとした二亜の身体が横たわっており、澪の手には、彼女から奪い取ったと思しき小さな霊結晶‹セフィラ›の欠片が輝いていた。

力の大半をウェスコットに奪われていたが、僅かに残った霊力を回収されたのだろう。

無論ーーーーこの場にもう1つある霊結晶‹セフィラ›も、同様に。

 

「・・・・・・・・」

 

と、そこで、澪が琴里に気付いたように視線を寄越してくる。琴里はその目を見据えながら、掠れる声を発した。

 

「・・・・ハイ、令音。いえ、澪って呼んだ方が良かったかしら?」

 

「・・・・どちらでも構わないさ」

 

琴里は自分でも虚勢を張っていると自覚しながらも軽口を叩くと、澪は軽く目を細めながらそう返した。

その反応を見て、琴里は自嘲気味に笑った。

 

「・・・・見るに堪えないかしら? ごめんなさいね。何処かの誰かさんに手酷くやられちゃったものだから」

 

言いながら、フウと息を吐く。

 

「・・・・・・・・」

 

澪はそんな琴里を、黙って見ているだけだった。

 

「・・・・令音」

 

全身を襲う痛み。灼熱の炎。溢れ出そうになる涙。これから来る死の気配ーーーーそれら全てに耐えながら、琴里は言葉を続けた。

 

「全部、嘘だったの? 私を助けてくれた事も。私を支え続けていてくれた事も。ーーーー私を、親友だと言ってくれた事も。全部、全部嘘だったの?」

 

澪は数瞬琴里を見つめた後、唇を開いた。

 

「・・・・嘘ではないよ。私の言葉に、気持ちに、嘘は一切なかった。私は精霊達を大切に思っているしーーーー今でも、君を無二の親友と思っている。ただ・・・・シンを取り戻す為ならば、私は親友でも喰らう。それだけだ」

 

澪がそう言うと同時に、琴里は胸に鋭い痛みを感じた。

 

「ーーーー」

 

地面から光の帯が伸び、琴里の胸を貫いている。それを確認すると同時、地面に倒れ込む。

力が消え、炎が消え、やがて痛みさえも消えていく。

けれど琴里に、恐怖は無かった。

それよりも大きく、言いようの無い感情が心を支配する。そう。長年苦楽を共にしてきた友だからこそ、分かってしまった。

ーーーー令音が、一切嘘を吐いていない事が。

彼女は、このような悪魔の所行を行いながら、本当に精霊達を慈しんでいる。

本当に、琴里の事を親友と思っている。

嗚呼、なんてーーーー歪。

 

「・・・・ふざ、けるな。何よ、それ・・・・」

 

消えゆく意識の中琴里は、友に遺すには酷薄過ぎる最後の言葉を残した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー真士(過去)sideー

 

【・・・・・・・・】

 

ーーーーデート当日の日曜日。駅の前で澪を待つ崇宮真士。

同じ家に住んでいるのだから2人で出ようと思っていたが、真那に女の子には支度が必要、と言われ、家を追い出された。

人生初のデート、それも初恋の人とだ。真士は心臓が激しく脈動しているのを自覚する。落ち着きなく、昨日の夜から入念に準備していた時刻表のメモに地図を取り出そうとする。

 

【ーーーーシン!】

 

と、真士がそんな事を考えていると、不意に澪の声が響く。ドキン、と心臓が跳ね、バッと顔を上げると、愛しの君の姿があった。

 

【ーーーー】

 

そして一瞬、真士の時が止まった気がして言葉を失う。

澪の姿は白いワンピースを纏い、藤色の髪は綺麗に編み込まれ、フワフワと揺れる。

元より、神に愛されたとしか思えない程に美しい少女が、普段の真那を模したボーイッシュな格好から女の子然とした姿はあまりに衝撃的だった。

周りの独り身の男性や女性だけでなく、デート中のカップルさえも見惚れていた。

中には澪に情欲の視線を向ける者(男女関係なく)もいたので、真士は視線を鋭くする。

 

【・・・・シン? どうしたの、怖い顔をして】

 

【は・・・・っ】

 

澪に顔を覗き込まれ、ハッと肩を揺らす真士。

 

【す、すまん。そんな顔をしてたか?】

 

【うん。まるでこれから戦争にでも行くみたい】

 

澪の物騒な言葉に、思わず苦笑してしまう。

確かに今の真士の心境は、初陣に臨む新兵であった。

 

【戦争‹デート›・・・・か。はは・・・・】

 

【え?】

 

【い、いや。ちょっとボーッとしていたんだ。その・・・・澪が、あまりに、か、か・・・・///////////】

 

真士は顔がカァっと熱くなるのを感じなからも、必死の思いでその言葉を発した。

 

【・・・・可愛、くて///////////】

 

【当? ふふ、嬉しいな/////】

 

【ーーーー】

 

真士の言葉に一瞬キョトンとした後、仄かに頬を染めて微笑んできた。

その様が、表情が、声が、言葉が、あまりに愛おし過ぎて思わず抱き締めたくなってしまう。

が、真士は自分を抑え込む様に大きく深呼吸する。

 

【それで、シン。今日はどこへ行くのかな?】

 

【あ、ああ・・・・ちょっと、澪に見せたいものがあってさ】

 

【見せたいもの?】

 

小首を傾げる澪の動作にすら、一々心臓を撃ち抜かれながらも、真士はどうにか首肯した。

 

【それは見てのお楽しみだ。さ、行こう】

 

【うん、そうだね】

 

と、澪は真士の側に寄り添うように歩み寄ってきた。

 

【・・・・ッ!?】

 

そして次の瞬間、真士は全身に電流が流されたかのように、身体をビクッと震わせた。何故なら、隣に立った澪が、至極自然な所作で、真士の手を握ってきたのだ。

しかもただの手繋ぎではない。互いの指と指を絡ませた、所謂『恋人繋ぎ』である。

 

【み・・・・ッ、澪サン・・・・? どうかいたしましたでしょうかはい・・・・////////////】

 

脳の処理が追いつかず、妙な敬語になる。恐らく自分の顔はトマトのように真っ赤になっているだろう。

すると澪は、その反応を不思議に思ったように眉を歪めた。

 

【・・・・間違ってたかな? やっぱり知識と実践は勝手が違うね。デートの時はこうするものって真那に聞いたんだけど】

 

【!あ・・・・いや、違わないと、思います、です・・・・】

 

澪の言葉に全てを察し、真士は目を見開きながらそう言った。

どうやら真那はこのデートを色々とバックアップしてくれているようだ。

 

【(ありがたいが。まさかここに来てこれとは・・・・! 真那。後で頬ずりの1つでとしてやるかな!)】

 

真士がそう思っていると、澪が話しかける。

 

【本当? ふふ、それは・・・・良かった。もし間違っていたなら、やり方を変えないといけなかったから】

 

【え?】

 

【ーーーーこの行為は、なんと言えば良いんだろう。非常に・・・・好ましい。シンと手を繋いでいると、安心感がある。けど、心が休まるだけじゃない。微かな興奮・・・・高揚? 心拍が少し上昇している感覚を覚えるんだ。きっとシンは、不思議な力を持っているんだね】

 

【・・・・・・・・】

 

あまりにストレートで明け透けな澪の表現に、真士齒目眩を覚える程身体を熱くしてしまった。

 

【シン? どうしたの、少し辛そうだけれど】

 

【い、いや・・・・何でも・・・・】

 

真士は適当にお茶を濁そうとしーーーー言葉を止めた。

澪は覚えたばかりの言葉で、一生懸命に自分の思った事を真士に伝えようとしてくれている。それなのに真士が言葉を飲み込んでしまうのは、とても卑怯な行いであるような気がしてならなかった。

真士は脳が茹だるのを覚悟で、澪に顔を向けた。

 

【お、俺も・・・・同じだよ。澪と手を繋げるのは・・・・嬉しい。こうしてるだけでドキドキして・・・・なんかもう、生まれてきて良かったって感じだよ】

 

【ふふ、大袈裟だよ】

 

澪はそう言うと、手をクイと引っ張ってきた。

 

【ーーーーさ、じゃあ始めようか。私達の、戦争‹デート›を】

 

【へ?】

 

どうやら先程までの呟きもしっかりと聞かれていたらしい。真士は一瞬キョトンとした後、澪と顔を合わせて笑うと、2人並んで駅へと歩いてい

 

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