デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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今、2人の魔法使いの戦いが始まる。


希望‹ウィザード›VS絶望‹ソーサラー›

ー士道sideー

 

折紙達が十香の元に辿り着くのとほぼ同じ頃。

 

「「「「「ーーーーーーーー」」」」」

 

ーーーー5人のウィザード‹士道›は意識を研ぎ澄ました。

眼前には仇敵、アイザック・ウェスコットこと、〈仮面ライダーソーサラー〉。

その周囲には眷属、〈ニベルコル〉。

 

『ーーーー変身できない貴様であれば手に余りまくる布陣だな』

 

「だけど、俺にはお前がいる。だろ? ドラゴン?」

 

『ふん。さっさと蹴散らすぞ!』

 

『応!!』

 

ドラゴンの言葉に力強く応じるウィザード‹士道›達。

 

「ーーーーふーーーーーーーーッ」

 

戦いを火蓋を切るように、アックスカリバー・カリバーモードを横一閃に振るうと、凄まじい光の斬撃を放たれた。

剣閃が一直線にソーサラー‹ウェスコット›と〈ニベルコル〉に向かう。

 

『キャァァァァァ!!』

 

「ふーーーー」

 

剣閃を受けた〈ニベルコル〉達は消えるが、ソーサラー‹ウェスコット›は、トンと後方に跳びながら漆黒の本ーーーー魔王〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉を掲げた。

次の瞬間、〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉の中から幾枚ものページが舞い踊り、それが層となって剣閃を受ける。勢いの弱まった1撃が、先程までソーサラー‹ウェスコット›のいた地面を浅く抉った。

 

「ふむ。やはり戦闘向きでない魔王では分が悪いかな。ーーーー〈ニベルコル〉」

 

「はーいっ!」

 

「任せて、お父様!」

 

「絶対五河士道なんかに負けたりしない!」

 

ソーサラー‹ウェスコット›のことばに応え、〈ニベルコル〉達がウィザード‹士道›達に襲いかかってくる。

だが、彼女らが飛びかかってきた瞬間、ウィザード‹士道›達は仮面を解除して流れる様な動作で唇に指を置くとーーーー。

 

『んーーーーちゅっ』

 

『ぐーーーーおぇっ』

 

と、投げキッスを放ち、ドラゴンは吐きそうになる口を抑える。

 

『きゃーーーー』

 

瞬間、〈ニベルコル〉達がビクンと身体を震わせて腰砕けになる。

士道達はその隙に距離を詰めると、目にも止まらぬ速さで〈ニベルコル〉の唇を奪った。

 

「はにゃ・・・・っ!?」

 

「やぁ・・・・お父様の前で・・・・っ」

 

「やっぱり五河士道には勝てなかったよ・・・・」

 

甘い声を上げて、キスをされた〈ニベルコル〉達、及びそれを見た他の個体が消滅していく。

しかし、不死の尖兵が消し去られていると言うのに、ソーサラー‹ウェスコット›は至極落ち着いた様子で顎に手を当てるのみだった。

 

「ーーーーふむ、成る程。急に〈ニベルコル〉の数が減ったのは確認していたが、これは盲点だったな。興味深い現象だ」

 

その余裕ぶった態度が、士道とドラゴンの癪に無償に障る。眉を歪めながら士道は叫びを上げた。

 

「残念だったな。ご自慢の〈ニベルコル〉は俺には通じない・・・・!」

 

「ほう? そう思うかね?」

 

ーーーーパチン・・・・!

 

ソーサラー‹ウェスコット›はそう言うと、手を高く掲げ、指を鳴らした。

 

『・・・・!』

 

すると士道達の周囲を取り囲んでいた〈ニベルコル〉がピクリと眉を揺らしたかと思うと、整然と隊列を組むように整列し、数名単位の一団となって順に士道達に飛び掛かった。

 

『無駄ーーーーだっ!』

 

士道達は視線を鋭くすると、〈ニベルコル〉目掛けて投げキッスを放った。

がーーーー〈ニベルコル〉達の進行が止まらない。

 

「何・・・・?」

 

と、士道は気づいた。

飛び掛かってくる〈ニベルコル〉達の目に〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉のページが張り付き、その視界を封じていた。

〈ニベルコル〉が士道の投げキッスに怯むのは、ソレを認識により動揺させるのだ。

ならば、至極単純だが、その目を封じれば良い。が、これで一糸乱れぬ連携は取れなくなる。

 

「くっ!」

 

が、ここには士道の投げキッスに怯まない『目』が1人、いる事に。

 

「ーーーーどうかな? 単純だが、悪くない手だろう」

 

言って、〈ニベルコル〉の『目』ーーーーソーサラー‹ウェスコット›がいるのだ。

それと同時に、目隠しをした〈ニベルコル〉達が、再度攻撃を仕掛けてきた。

 

「きゃははははは!」

 

「今までよくもやりたい放題してくれたわねぇぇ!」

 

「責任取って貰うんだからぁ!」

 

次々に飛び掛かり、鋭い形に変形させた〈神蝕篇帙・頁‹ベルゼバブ・イエレッド›〉を放ってくる。

 

「ちっ!」

 

『小僧! ここはやらせてもらうぞ!』

 

士道が仮面を展開すると、ドラゴンがそう言い、一瞬、ウィザード‹士道›達の目が真っ赤になると、

 

[イィィンフィニティー!!]

 

ウィザード‹士道›が光ると、一瞬で回避し、周囲の〈ニベルコル〉達をアックスカリバーで切り裂いていく。

 

『キャァァァァァァァァッ!!』

 

けれど直ぐに、辺りに舞い散った〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉のページから、無傷の〈ニベルコル〉達が這い出てきた。

 

「いったぁい!」

 

「やったわねぇ!」

 

「きゃはは、でもそんな攻撃じゃ死なないーーーー」

 

と、ソコでーーーー。

 

[スラッシュストライク!]

 

[シューティングストライク!]

 

フレイムドラゴン‹FD›とウォータードラゴン‹WD›が炎の斬撃と水の銃撃を放ち。

 

[ビッグ プリーズ!]

 

[エクステンド プリーズ!]

 

ランドドラゴン‹LD›とハリケーンドラゴン‹HD›が、巨大化した刀身と、鞭のようにしならせた刀身が、〈ニベルコル〉達を薙ぎ払う。

 

『キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

さらに分身ウィザード達が〈ニベルコル〉達を倒そうと動く。

 

「いやぁぁぁっ!!」

 

「やめてぇぇぇ!!」

 

「助けてぇぇぇ!!」

 

「殺さないでぇぇぇ!!」

 

〈ニベルコル〉達が悲鳴を上げる。分身体とは言え、中身は士道なのだ。女の子が悲鳴を上げれば簡単に隙を見せる。その隙を突いて、始末しようとする算段だろう。

がーーーー。

 

ーーーーザン!

 

ーーーードォン!

 

ーーーーズバッ!

 

ーーーーダァン! 

 

『え・・・・?』

 

4人の分身ウィザードは一切の躊躇なく、〈ニベルコル〉の首を斬り捨て、頭を撃ち抜く。

 

『『『『ーーーー悪いが、我には通じない』』』』

 

分身ウィザード達から、ドラゴンの声が響いた。

そう、4人のウィザード達の主導権をドラゴンが操る事で、〈ニベルコル〉達を討ち破っているのだ。

こう言う時程、敵に対して全く容赦しないドラゴンが本当に頼もしい。しかし、1度に4人のウィザードを操作するのだ。全く別の作業をする4つのパソコンを寸分の狂いなく操作するより困難な筈なのだが。

 

『そう思うなら、早く奴を仕留めろ!』

 

と、ドラゴンに尻を叩かれ、ウィザード‹士道›はソーサラー‹ウェスコット›にアックスカリバーを突き立てようとするが、ディースハルバードでその切っ先を防ぐ。

 

ーーーーガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ・・・・!

 

強烈な火花が飛び散る。

 

「ーーーーほう。流石に、“何度も〈ニベルコル〉達に無様に殺されていれば、対抗策も思いつくか”」

 

「・・・・っ、テメェーーーー」

 

ソーサラー‹ウェスコット›の言葉に、ウィザード‹士道›を睨み付けた。

するとソーサラー‹ウェスコット›は、何を今更と言うように肩をすくめて見せた。

 

「“私の魔王を忘れたのかい”? 全知の〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉だよ。精霊が持つ天使の力を識ろうとするのは、至極当然の事だと思うがね」

 

「・・・・・・・・」

 

ソーサラー‹ウェスコット›の言葉に、ウィザード‹士道›は顔を顰めた。

人の死を嘲笑うような態度が、子供に講釈するような口調が腹が立たせる。というのではない。

1番気に入らないのはーーーー。

 

「訂正しろ。それはお前の魔王じゃない。“二亜の天使だ”」

 

ウィザード‹士道›はアックスカリバーを力強く押し出す。

 

「ーーーーふ。させてみたまえ」

 

それに対するように、ソーサラー‹ウェスコット›は不敵に笑うように言う。

アックスカリバーをディースハルバードで弾くと、2人は激しい剣閃の嵐を繰り広げる。

そしてーーーー。

 

[エクスプロージョン ナウ!]  

 

[ブリザード サイコー!]

 

ソーサラー‹ウェスコット›が爆裂を起こすと、ウィザード‹士道›は吹雪を放って相殺する。

 

[ブラスト ナウ!]

 

[サンダー サイコー!]

 

放たれる衝撃波を緑色の雷撃で砕き。

 

[デュープ ナウ!] 

 

[エクスプロージョン ナウ!]

 

[グラビティ サイコー!]

 

ソーサラー‹ウェスコット›の姿が5人となり、一斉爆裂魔法を使うが、グラビティの重力操作で明後日の方向に飛ばす。

 

[バニッシュストライク ナウ!]

 

[ハイタッチ! シャイニングストライク!! キラキラ! キラキラ!]

 

ソーサラー‹ウェスコット›が巨大な光球を生み出してウィザード‹士道›に向けて放つが、【シャイニングストライク】で粉砕する。

お互いに一進一退の魔法のせめぎ合いが続いた。

 

「ーーーーえ・・・・?」

 

と、その瞬間。ウィザード‹士道›に途方も無い違和感が襲い、ソーサラー‹ウェスコット›と距離をとって止まった。

 

「(ドラゴン、今のは・・・・)」

 

『・・・・六喰・・・・!』

 

ウィザード‹士道›の中から、『何か』が消えてしまったかのような感覚。まるでさっきの、耶倶矢と夕弦の時のようなとても嫌な感覚。ドラゴンに問うと、その嫌な感覚の真実を告げられた。

 

「ーーーーふむ。もう少し君と戯れていたい処だが、〈デウス〉と遭遇する前に、残る霊力を手に入れておかねばならないのでね」

 

まるで自分との戦いを暇潰しと言わんばかりのソーサラー‹ウェスコット›を、ウィザード‹士道›は憎々しげに、その顔を睨み付ける。ウィザード‹士道›は仮面を解除して声を発した。

 

「・・・・お前は」

 

「ん?」

 

「お前は、一体何なんだ。一体何の為に、精霊の力を求めるんだ。一体何の為にーーーー沢山の人を傷つけるんだ・・・・ッ!」

 

時間稼ぎの言葉だが、問いに込められた思いは紛れもない本物である。吐き捨てるように叫び、ギリッと奥歯を噛み締める。

するとソーサラー‹ウェスコット›は、フム、と1拍置いた後、返してきた。

 

「“新しい世界を創る為さ”」

 

「“新しい・・・・世界”」

 

「ああ。エリオットから聞いているかも知れないが、私達は人造魔術師‹ウィザード›とは違う。純正魔術師‹メイガス›と呼ばれる者達の末裔でね。ある時、その力を恐れた人間達によって集落を焼かれ、家族や仲間を皆殺しにされたのさ」

 

「なーーーー」

 

「ーーーーだから私は始原の精霊〈デウス〉の隣界を以て、世界を上書きする。私達の同胞を殺した人類に復讐する為にーーーー」

 

と、ソーサラー‹ウェスコット›は仮面を解除すると、何処か芝居がかった調子で言った後、フッと唇の端を歪めた。

 

「ーーーーという理由なら、君たちにも納得して貰いやすいかな?」

 

「・・・・・・・・、何だと?」

 

『・・・・・・・・』

 

士道は困惑するように眉根を寄せ、〈ニベルコル〉達と戦うドラゴンも目を細める。すると、ウェスコットは、気安い調子で言葉を続けてきた。

 

「一説によると、人間が最初に得る情報は、『快』と『不快』の2種らしい。成長していくに従い、喜怒哀楽等の様々な感情に分化していく訳だが・・・・どんな感情も基本的には『快』か『不快』に属し、人は『快』を好み『不快』を嫌う」

 

「何を・・・・言っている」

 

「実の処、そう大層な理由ではないんだ。例えば社会的地位を得る事を『快』とする者が仕事に精を出すように。人に愛される事を『快』とする者が誰かに施しを与えるように」

 

ウェスコットは、大仰に両手を広げながら続けた。

 

「私の場合は、それが少し人とズレていた。それだけなんだ。後は何も変わらない。自分の『目標』と『好奇心』の為に、出来る限りの努力をしているだけさ。ーーーーイツカシドウ。君は、玩具を買う為にお金を貯めた事は無いかね? 恋人が欲しくて身嗜みを整えた事は無いかね? それと特に変わりないよ。ーーーーそう言った意味では、私は極めて平凡な『人間』だ」

 

「ーーーーーーーーっ」

 

ウェスコットの言葉に、士道は息を詰まらせた。戦慄が肺腑を満たす。本能的な拒絶感。

士道は今になって漸く、眼の前の男、ウェスコットに覚えていた『違和感』の一端が分かった気がした。

彼は異常なのでも、狂っているのでもない。寧ろこの上ない程に、極めて真っ当な人間であったのだ。ーーーー但し、士道とは別の倫理観に置いて、人間とは相容れない死生観において。

 

「ーーーーさて、話が長くなってしまったね」

 

ウェスコットはそう言うと、仮面を再展開し、〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉のページを円錐状に手に纏わせ、士道の胸元に向ける。

 

「さぁ、続きと行こう、イツカシドウ。そしてタカミナシンジ」

 

「ぐ・・・・!」

 

言って、ソーサラー‹ウェスコット›が士道の胸元に向けて放ーーーーとうとした、その瞬間。

 

 

ーーーー♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜!!

 

 

天から巨大な音が響き渡り、地震のように辺りの空気をビリビリと震わせた。

 

『・・・・ッ!?』

 

否、ソレは最早『音』と言うよりも、振動兵器に近かった。分身ウィザードと戦っていた〈ニベルコル〉達の身体がビクッと痙攣したかと思うと、〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉を突き刺そうとしていたソーサラー‹ウェスコット›も、突然の衝撃に一瞬動けなくなっているようだ。

 

『・・・・!』

 

が、振動を浴びたのはウィザード‹士道›も同じだ。他のウィザード達はドラゴンが操作して動かすが、ウィザード‹士道›は身体が思うように動いていてくれない。

 

「ーーーーおわ・・・・ッ!?」

 

しかし次の瞬間、ウィザード‹士道›は何者かに首根っこを掴まれたかと思うと、そのままグイと上方に引っ張られ、驚愕の声を上げるが、すぐにそれが誰の仕業であるか気付いた。

 

「大丈夫ですか、だーりん達にハニー!」

 

「・・・・うわぁ〜、乱戦ね」

 

「ーーーー美九、七罪!」

 

そう。後方で皆のサポートをしていたディーヴァ‹美九›とウィッチ‹七罪›であった。

どうやらディーヴァ‹美九›の『ガブリエルキーボード』で〈ニベルコル〉達を怯ませ、その隙にウィッチ‹七罪›が助けてくれたようだ。

 

「すまん、助かった。それに、無事で何よりだ・・・・!」

 

「ええ、それは良いんですけどぉ、一体今戦いはどうなってるんですかー? 皆さんと通信途絶えてしまって・・・・って、だーりんがいっぱいいて最高ですー!」

 

『落ち着け美九・・・・』

 

「・・・・ていうかあれ、敵の大将なんじゃないの? 何でこんな最前線に出張ってきてるの? いやまあ、それ言ったら士道もそうなんだけど」

 

ディーヴァ‹美九›とウィッチ‹七罪›が不安そうに言ってくる。ウィザード‹士道›はグッと拳を握ると、声は張り上げた。

 

「詳しくは後だ! 始原の精霊が現れた! 一刻も早くコイツを倒して皆の所へ行かなきゃならない! 力を貸してくれ!」

 

「・・・・!」

 

「な・・・・」

 

2人はその言葉に驚愕の表情をしたがーーーーすぐにその意を理解してか、キッとした声を発する。

 

「それは急がないといけませんねー。だーりん達とハニーと皆さんの為にバクアガっていきますよー!」

 

「また面倒な事になってるわね。仕方ない、付き合ってあげるわよ、もう・・・・!」

 

言って、2人はそれぞれの武器を構える。

するとそれを見てか、ソーサラー‹ウェスコット›が含み笑いを上げる。

 

「ほう。〈ディーヴァ〉に〈ウィッチ〉か。ーーーー嬉しいね。イツカシドウの持つ霊力と併せて手に入れれば、完全な状態の霊結晶‹セフィラ›を2つも得る事ができる」

 

ソーサラー‹ウェスコット›と〈ニベルコル〉を足止めできたのは一瞬。既に彼らは視線をこちらに向け、臨戦態勢を取っていた。

 

「兎に角、あの男の人を倒せば良いんですねー?」

 

「・・・・でも、あの〈ニベルコル〉っての、士道が倒さないと無限湧きするんでしょ? 4人の士道達が周りをやっつけている間に私達で親玉叩くって感じ? それとも、私の能力で隙をついて後ろからブスリ?」

 

「ーーーーいや」

 

2人の言葉に、ウィザード‹士道›は首を横に振る。

全知の魔王〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉を持つソーサラー‹ウェスコット›を相手では、コチラの能力は既に知られているだろうから、搦め手は逆効果になりかねない。

もしもそれを打ち破ろうとしたならーーーーやり方は恐らく2つ。

ソーサラー‹ウェスコット›が想像できない方法で攻撃を仕掛ける事。〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉の弱点は、“使用者が求めない限り、その権限が発揮できない”。

つまり、ソーサラー‹ウェスコット›が識ろうとさえしなかった方法でなら、ヤツの隙をつける可能性がある。

そしてもう1つはーーーー。

 

「・・・・美九、演奏してくれないか。とびきり勇猛でーーーー俺の身体を限界まで強化してくれるようなやつがいい」

 

「! だーりん、それって・・・・」

 

「七罪も、美九の能力をコピーして、同じように頼む。それとーーーー」

 

「・・・・士道、アンタ」

 

ウィザード‹士道›が言うと、ディーヴァ‹美九›とウィッチ‹七罪›は、ポカンとした声を上げた後、その意図を察したようにゴクリと息を呑んでからウィッチ‹七罪›はウィザード‹士道›に『何か』を投げてから演奏を始めた。

右から、左から、勇ましい音楽が鳴り響く。

 

ーーーードクン!

 

「・・・・ッ!」

 

その演奏を浴びて、ウィザード‹士道›は思わず息を詰まらせた。

心臓が高鳴り、全身に熱い血潮が巡る感覚。【行進曲‹マーチ›】の二重奏をたった1人に集中させているのだから、その効果は凄まじい。

 

「ーーーー〈ニベルコル〉」

 

それを黙って見ていてくれる優しい相手ではない。ソーサラー‹ウェスコット›の号令に従い、100人近い〈ニベルコル〉達が一斉に襲い掛かってくる。

 

「何しようが無駄よ!」

 

「全員纏めてお父様に跪かせてあげる・・・・ッ!」

 

叫び、〈ニベルコル〉が〈神蝕篇帙・頁‹ベルゼバブ・イエレッド›〉を円錐状に変化させ、矢の如く放ってくる。

しかしーーーーこちらとしても想定内だ。

 

『最大出力だっ!!!』

 

[[[[スラッシュストライク!]]]]

 

[[[[シューティングストライク!]]]]

 

「「「「ハァァァァァァァァッ!! タァァァァァッ!!!」」」」

 

4人の分身ウィザード達がそれぞれのエレメントの斬撃を幾つも放つと同時に、さらにそれぞれのエレメントの銃弾を何発も放った。

すると、炎の翼の炎竜。氷の翼の水竜。雷の翼の風竜。土石の翼の土竜。マグマの竜。吹雪の竜。と、それぞれのエレメントやエレメントが合体した臨戦態勢達が、〈ニベルコル〉達を撃破していく。

 

『キャァアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!』

 

消滅していく〈ニベルコル〉達。そしてその最奥に、ソーサラー‹ウェスコット›の姿を認めると、ウィザード‹士道›はアックスカリバーをアックスモードにしてから、ウィッチ‹七罪›から受け取った『ハニエルリング』を指に嵌めて、ハンドタッチさせた。

 

[ハニエェェェル! ハイタァァァッチ! ミラージュストライク! ヘンゲンジザーイ! ヘンゲンジザーイ!]

 

ハニエルリングでタッチする度になんと、ウィザード‹士道›の姿が幾人にも増えていく。

 

「何・・・・?」

 

ソーサラー‹ウェスコット›もコレには驚いたようだ。そして更に、ウィザード‹士道›達はアックスカリバーを振り回すと巨大化し、『シャイニングストライク』の体勢に入る。

ウィザード‹士道›はディーヴァ‹美九›とウィッチ‹七罪›によって限界を超える強化をし、身体がバラバラになりそうな激痛に耐えながら、『ハニエルリング』で造った分身体と共に、最大出力を更に超えた超越の必殺の【ドラゴンシャイニング】をソーサラー‹ウェスコット›目掛けて振り下ろした。

 

『[ハイタッチ! シャイニングストライク! キラキラ! キラキラ!]』

 

『ーーーーうおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーッ!!!』

 

ーーーーギャォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーッ!!!

 

そう。コレこそが、ソーサラー‹ウェスコット›を打倒しうる、もう1つの方法。

ーーーー知っていようが、防ぎようも、受け止めようもない、渾身の1撃の大瀑布を叩き込む事だ。

ウィザード‹士道›の持つ、精霊をも凌駕する最大にして最強の1撃である【ドラゴンシャイニング】。

それを限界を超えた力で、複数人で放ったのだ、目映い光のウィザードラゴンの軍団が、ソーサラー‹ウェスコット›を呑み込まんと、その大顎を広げた。

 

「ふーーーーはは、はははははははははははははははははははは・・・・ッ!」

 

迫りに来る絶大な光の魔竜達を前にして、ソーサラー‹ウェスコット›は哄笑を上げた。

視界を埋める凄まじい魔竜の群れ。人の身でありながら、精霊の力を超える五河士道の、恐らく最大最強の1撃。

まるでおとぎ話か神話に出てくる竜に立ち向かう英雄のような心地。霊結晶‹セフィラ›を奪いさえすれば、コレと相当の力が己のモノになるという高揚と、己の身に迫る『死』に対する興奮とで、ソーサラー‹ウェスコット›の脳内には快楽物質が溢れ返っていた。

ウィザード‹士道›の考えはあながち間違っていない。力任せの1撃を数に物を言わせた質量にて防御ごと屠り去るのは、シンプルながら最適解と言える。

実際、ソーサラー‹ウェスコット›とはいえ、コレほどの魔竜の群れを防げるものでは無い。

だがーーーー。

 

「ーーーーソチラが『質量』でくるならば、こちらは『物量』で対抗してみようではないか」

 

ソーサラー‹ウェスコット›がそう呟いた瞬間ーーーー。

 

『お父様ぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』

 

周囲にいた何体もの〈ニベルコル〉達が、ソーサラー‹ウェスコット›を守る為に集まってきた。無論、疑似精霊に過ぎない〈ニベルコル〉が、この光の魔竜の群れを抑え切れる筈はなく、徐々に喰われていき光と消える。

しかし、〈ニベルコル〉の力は『数』。そして〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉がある限り、死してなお復活し、膨大な数の〈ニベルコル〉達がソーサラー‹ウェスコット›の前に幾重にも壁を作る。

そしてーーーーソーサラー‹ウェスコット›は『識って』いた。

自身が尤も信頼する『最強の魔導師‹ウィザード›』が自分の『愛馬』を解き放っている事に。

 

ーーーーヒヒィィィィィィィィィィィィンン!!

 

ソーサラー‹ウェスコット›の前に『ヘルスレイプニル』が飛び出し、両手を広げて光の魔竜達を防ぐ。その間に、別の〈ニベルコル〉達の手によって、左方に逃れ、ヘルスレイプニルの身体は崩れ消えていった。

 

ーーーーギャォオオオオオオオオオオオオオ!!

 

が、1体のウィザードラゴンが突っ込んできて、〈ニベルコル〉ごとソーサラー‹ウェスコット›を呑み込んだ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・ぐぅっ!」

 

けれどーーーーウェスコットは生き延びていた。

 

鎧は粉々に砕け散り、変身は解除され、片腕と両足が灼かれており、半死半生の状態。

しかし、残った手にはまだ、〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉が残っていた。

ーーーーやがて、猛威を振るった魔竜達が消えていった。

 

「うぁ・・・・!」

 

魔力を使い果たし、片膝をついたウィザード‹士道›が、『インフィニティスタイル』から『フレイムスタイル』へと戻ると、周りの分身体ウィザード達も消えてしまった。

 

「ふ・・・・はは、はははははははは!」

 

新しく召喚した〈ニベルコル〉達に支えられながら立ち上がると、ウェスコットは笑った。

 

「くっ・・・・!!」

 

ウィザード‹士道›がソードガンの引き金を引いて、銀の弾丸を数発放つが、弾丸はウェスコットの身体をギリギリ掠れ、後ろの瓦礫に当たった。

最早ウィザード‹士道›には、もうウェスコットに抗う術が残っていない。

この勝負、ウェスコットの勝利は疑いようが無かった。

だがーーーー。

 

「・・・・・・・・・・・・ああ、避けると思ってたよ、アンタなら」

 

「ーーーー?」

 

土煙の向こうから士道の声が響いてきて、ウェスコットは眉を動かした。

 

「ーーーー確かに〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉を手に入れたら、簡単に仕留められる訳ねぇよな。俺の動きなんてすぐに解るだろうよ。ーーーーでもな」

 

風が吹き、立ち込めていた土煙が晴れる。ソコには、仮面を解除してニヤリと笑みを浮かべる士道の姿があった。

 

「『全知の魔王』ですら『識る』事ができない、『この世界の理の外の魔獣』が、俺らの中にいるんだぜ・・・・!」

 

「なに・・・・?ーーーーっ!」

 

言われて、ウェスコットは小さく、しかし確かに、眉をひそめ、察した。

先程、五河士道が撃って外した銀の弾丸。まさか、アレが、と振り向いた眼の前に翼を広げたーーーー白金の龍人がいた。

 

『この時をーーーー待っていたぞぉおっ!!』

 

魔人形態となったウィザードラゴンが、カッと全身を光らせ、口に当たる部分から。

 

「ーーーーカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

次の瞬間。

 

「なーーーー」

 

凄まじい魔力と霊力が混合した凄まじいエネルギーの奔流が。

ーーーー【ドラゴンシャイニング】で疲弊しきったウェスコットを呑み込んだ。

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