デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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〈仮面ライダー〉総出撃

ー亜衣sideー

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーッ!」

 

教室に響いた裂帛した気合いと共に、亜衣の前方に立っていたロボットの身体が、綺麗に左右に断ち分かたれた。

 

「へ・・・・?」

 

突然の事に、思わず目を丸くすると、バチバチと音を立てながら左右に倒れるロボットの陰から、夜色のアメジストの仮面と、これまたアメジストのアーマーを纏う1人の戦士が姿を現すと、その戦士が仮面を解除した。

 

「えーーーー」

 

その顔を認めて、またも目を剥く。何しろソコにいたのはーーーー。

 

「ーーーー無事か、亜衣、麻衣、美衣、それに殿町とタマちゃんも。それと岸和田! 良く皆を守ってくれた!」

 

ヒーローのような鎧を纏い、その手に夜色の刃をした剣を握ったクラスメート、夜刀神十香だった。

 

 

 

 

 

 

ー燎子sideー

 

「ふーーーーッ」

 

細い吐息が聞こえたかと思うと、それに合わせるように一条の光が煌めき、燎子達に向けられていた〈バンダースナッチ〉の腕が弾け飛んだ。

 

「な・・・・っ!?」

 

思わず息を詰まらせる。ソコで、美紀恵が何かに気づいたように声を上げた。

 

「お、折紙さん!?」

 

その声に弾かれるように、美紀恵の視線を追う。

するとソコには美紀恵の言う通り、白銀のダイヤモンドのようなアーマーを付け、周りに白銀の羽根を浮遊させ、仮面を被っていないが、〈仮面ライダー〉のような姿をした折紙だった。

 

 

 

 

 

 

ー日依sideー

 

「ーーーーは~い、呼びましたか、日依さん?」

 

「え・・・・?」

 

頭上から響いた声に、日依は目を開けた。

すると、自分を取り囲むように迫ってきていたロボット達が、音符が付いた五線譜によって拘束されていた。

そして、バッと顔を上げ、声のした方向を見ると、ソコにはーーーー。

 

「み、美九さん・・・・!」

 

淡い輝きを放つ、紫色のタンザナイトの宝石の装飾を付けたアーマーを纏い、紫色の宝石でできたキーボードギターを持った美九が、浮遊していた。

 

 

 

 

 

ー士道sideー

 

「良しーーーーっ!」

 

〈フラクシナス〉の艦橋で十香達の奮戦を見ながら、士道はグッと拳を握った。

そう。分割された両面の1つ、士道のクラスメート達が映し出されていた箇所に、〈仮面ライダー〉となった十香達が、それぞれの友人達の元へ〈仮面ライダー〉となって駆けつけ、その窮地を救っていた。

分割された画面が光り輝き、幾体もの〈バンダースナッチ〉をスクラップと化していく。

無論、今〈フラクシナス〉が浮遊しているのは天宮市の上空ではなく、真士と澪の思い出の海の上だ。幾ら精霊達とは言え、普通ならばこんな一瞬で友人達の元に駆けつける事等できない。

それが可能となったのはーーーー。

 

「ーーーーむん。長距離の移動は不安じゃったが・・・・どうにか上手くいったようじゃの」

 

〈仮面ライダーゾディアック〉となった六喰の力があればこそだった。

そう。友人達の危機を察した精霊達は、ゾディアック‹六喰›が開けた空間の『孔』を通って、皆の元へと瞬間移動したのだ。

とは言え、他に皆を救う方法が無かったから仕方ない事だが、最善手とは言えなかった。周目の前に姿をさらした〈バンダースナッチ〉を討ち倒すと言う事はーーーー。

 

《と、十香ちゃん・・・・よね?》

 

《折紙!? アンタ、その格好ーーーー》

 

《美九さん、なぜここに・・・・!? て言うかそれステージ衣装・・・・じゃないよね?》

 

《きゃあああああああああああああああ! 美ぃぃぃ九たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!!》

 

《は・・・・はぁっ!? 四糸乃さんに七罪さん!?》

 

《我が盟友耶倶矢! まさか遂に暗黒のオーラに目覚めたのか・・・・!?》

 

《えっ夕弦さん!? どうしたんですかそのゴツい格好》

 

等と、それぞれの画面から精霊の友人達の狼狽と困惑、後は所々興奮の声が響く。

精霊達は友人を救う代償に、その正体を晒さねばならなかったのである。

 

「・・・・ああ、もう。いくら〈ラタトスク〉でも、こんなの誤魔化しきれるかしら。今から胃が痛いわ」

 

 

琴里が俄にざわめき出す画面の中の人々を見て、やれやれだぜ、と額に手を置く。しかし、琴里はキッと視線を鋭くした。

 

「でもーーーー凌いでみせたわよ、アイザック・ウェスコット」

 

《ーーーーふむ》

 

するとウェスコットは、小さく唸るようにそう言ってから続けた。

 

《実に鮮やかな手並みだ。称賛に値する。ただ、言わなかったかな? “私としてはどう転んでも構わない”、と。ーーーー奥の手は常に隠しておくべきだよ》

 

「・・・・なんですって?」

 

琴里はウェスコットの言葉に、怪訝そうに表情を歪める。

ーーーー次の瞬間。まるでその声に呼応するかのように凄まじい爆発音が響き、〈フラクシナス〉の艦体が大きく揺れた。

 

「・・・・!? 琴里!」

 

「く・・・・! DEM艦の攻撃!? マリア、状況は!?」

 

《はい。これはーーーー》

 

琴里が忌々しげな様子で問うと、マリアが困惑するように声を響かせてきた。

 

《〈フラクシナス〉にDEM艦が突撃、そのまま随意領域‹テリトリー›を同化させて横付けしているような格好です》

 

「随意領域‹テリトリー›を・・・・同化!? そんな事が可能なの!?」

 

《理論上は可能です。相手の随意領域‹テリトリー›組成を完全把握する解析力と、超高出力で以て展開された随意領域‹テリトリー›があればの話ですが》

 

「・・・・っ」

 

マリアの言葉に、琴里は息を詰まらせる。するとそれに合わせるようなタイミングで、外の自律カメラがメインモニタに映像を送ってくる。

〈フラクシナス〉の真横に食らい付くような格好で密着した、流線型の艦体を誇る美しい空中艦の姿を。

 

「〈ゲーティア〉・・・・ッ!」

 

琴里が忌々しげにその名を呼び、士道も聞き覚えがあった。

エレンが駆る専用艦にして、『改編前の世界』で〈フラクシナス〉を完膚無き敗北を与えて、地面に堕とした艦。

〈フラクシナス・エクス・ケルシオル〉として復活した後、精霊達の力を借りても、薄氷の勝利で何とか雪辱を果たしたと聞いていたが、今はその精霊達の大半は天宮市各地に散らばってしまっている。

 

「く、マリア、振り切ってーーーー」

 

と、琴里が指示を発しようとした瞬間、〈ゲーティア〉のハッチか開き、ソコから目にも止まらぬ速さで『何か』が飛び出してきて、〈フラクシナス〉の艦体に飛び付いた。

次の瞬間、凄まじい爆発音と共に、艦橋の天井が引き裂かれ、目映い魔力の光の刃をした剣が閃き、艦橋に夕日が差し込む。空中艦が随意領域‹テリトリー›に覆われていなかったら、その場の全員が気圧差で外に吸い出されていただろう。

 

「なーーーー」

 

「嘘でしょ・・・・!?」

 

一瞬の狼狽が艦橋を満たす。

そしてその一瞬は、その戦士にとって十分過ぎる隙であった。

 

「艦の中が安全と言うのは幻想ですよ」

 

ーーーーエレン・メイザースが変身する〈仮面ライダー〉、〈仮面ライダーヘルキューレ〉。

艦の外装を破壊し艦橋に乗り込んできた白金の侵入者の姿を認識した時にはもう、彼女のその手は、士道に迫りつつあった。

 

「ーーーーこんな所ではなく、もっと広い所で決着と行きましょう」

 

と、刹那の間にヘルキューレ‹エレン›がそう言った。しかし、今の士道にはドラゴンがいない。通常の4スタイルにしかなれない状態で、このヘルキューレ‹エレン›を相手にす!ば1分、逃げに徹しても3分でその刃が心臓を貫くか、首と胴体を永遠に切断されるか、跡形もなく粉砕されるだろう。

だがーーーー。

 

「ーーーー奥の手は常に残しておく。人でなしのド腐れ外道の社長にしてはいい言葉でいやがります」

 

何処からかそんな声が響いたかと思うと、次の瞬間、士道に迫っていたヘルキューレ‹エレン›の手は引っ込み、もう片方の手に握られたダーインスレイヴを持ち上げると、士道の顔の横から伸びた剣の切っ先を防ぐ。

 

「はーーーー」

 

一拍置いて、理解する。

自分が、誰かに助けられたのかを。

 

「ーーーー真那!」

 

「はい。ーーーー奥の手、参上です」

 

そう。ソコにいたのは、士道のーーーー否、真士の実妹、崇宮真那が変身する〈仮面ライダービーストハイパー・アームズ〉だった。どうやら万一に備えて、艦内に控えていたらしい。

 

「はぁーーーーッ!」

 

裂帛の気合と共に飛び出すと、そのままヘルキューレ‹エレン›に組み付き、身体に魔力を迸らせると、艦内が目映い光に包まれ、2人の身体が天井に開いた穴から艦外へと飛び出していく。

 

「真那・・・・ッ!」

 

[ドライバーオン プリーズ]

 

如何に真那とは言え、ヘルキューレ‹エレン›相手では苦戦は間違いない。士道はせめてサポートくらいはと思い、ウィザードライバーを召喚し、『ハリケーンウィザードリング』を読み込ませる。

 

[シャビドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪ ハリケーン プリーズ フー! フー! フーフー、フーフー!!]

 

ハリケーンスタイルとなると、身体に風を纏う。

 

「士道! やめなさい、奴らの標的はーーーー」

 

琴里が制止しようとするが、ウィザード‹士道›はソレを最後まで聞かず、天井に開いた穴から艦外へと飛び出した。

高度15000メートルと言う目も眩む高度。艦体を包み込む随意領域‹テリトリー›のお陰で、周囲の気温と空気の薄さや風などは、さほど気にならなかった。白と紫でカラーリングされた滑らかな〈フラクシナス〉の外装に足を落ち着け、ビーストHAとヘルキューレ‹エレン›の姿を探し、すぐに見つけた。

 

「ーーーーっ!」

 

しかし、ソコにいたのは、2人だけでは無かった。

 

「キャハハハハハ!」

 

「あらあら兄妹お揃いでー」

 

「アタシも混ぜてくれるぅ?」

 

緊張感のない声を響かせながら、〈フラクシナス〉の外装の上に浮遊する幾人の少女達がキャハキャハと姦しく笑う。

 

「〈ニベルコル〉!」

 

魔王〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉とDEMの技術が作り出した擬似精霊〈ニベルコル〉だ。

そしてその笑い声の波を割るようにして、2人の〈仮面ライダー〉が仮面を解除して進み出てくる。

1人は、エレンと同じDEMの魔術師‹ウィザード›、アルテミシア・アシュクロフトが変身する〈仮面ライダーヘルキューレⅡ〉。

そしてもう1人はーーーー漆黒の本〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉を携えたDEMの長であり、士道の、否、崇宮真士と真那と因縁深い怨敵、アイザック・ウェスコットが変身する〈仮面ライダーソーサラー〉であった。

 

「ウェスコット・・・・!」

 

仮面を解除した士道が叫び、戦慄に表情を染めた。

何しろソコに、DEMインダストリーの最高戦力の3人が揃っていたのだ。彼ら全員が本隊を離れ、こんな場所に現れるなど、正直予想だにしていなかった。

遠くの空では未だ、澪がDEMの空中艦を屠り続けている。その光景を視界の端に捉え、士道は理解した。恐らく奴等は澪の出現を予見し、事もあろうにあの大艦隊を囮として使い潰して見せたのだ。

全てはーーーー士道の身体に眠る霊力を掠め取り、澪の力を我が物にせんが為に。

 

「やあ、イツカシドウ。いや、タカミヤシンジと呼んだ方がいいかな? それにマナまで。ーーーーふ、運命を司る神なる者がいるならば、何とも洒落た取り合わせじゃあないか。まるで30年前に戻ったかのようだ」

 

ウェスコットが気安い調子で話しかけてくる。だがその目の奥には、無機質な金属のような冷たい光が見て取れた。

 

「・・・・ああ、本当だな。お前もエレンも、何1つ進歩しちゃいない。30年もあったら、普通何らかの成長はするもんだけどな」

 

ウィザード‹士道›が皮肉げな口調で言うも、ウェスコットはその顔に薄い笑みを張り付けたままだ。まるでその貌の方が仮面に思える。僅かながら怒気を放っているヘルキューレ‹エレン›の方が、幾分か人間的に見えた。

そして、ウェスコットはクックッと小さく笑うと再び、ウィザード‹士道›の神経を逆撫でする声を発した。

 

「覚えているかな? イツカシドウ、嫌、タカミヤシンジ。30年前、君が私の忠告を無視して、愚かにも〈デウス〉を連れて逃げ出した時の私の言葉を」

 

【ーーーー無力な子供の口先だけの行動が、このような『結果』を生む】

 

「ーーーーとね? 君の方こそまるで進歩していないんじゃあないかね? あの時と同じく、君の浅はかな考えと行動によって、今まさにこのようなーーーー『愉快な状況』が創り出されてしまったのだからね」

 

「ーーーーっっ!!!!」

 

ウィザード‹士道›は、仮面の中で貌が憤怒で歪む、腸が煮えくり返る。今すぐあのニヤけた顔面に、ウィザーソードガンの銀の弾丸を全部ぶち込んでやりたい。ベラベラとよく回るあの口の中に、ウィザーソードガンの刀身をねじ込んでやりたい。

『未来の世界』でこの男と同じになりたくないから『殺し』という選択肢を選ばなかった。だが、この男の悪辣な思考と、ソレを『愉快な状況』と言ってのける異常性が、ウィザード‹士道›の拳をキツく握りしめるが、例えどんな苦痛を与えてやったとしても、この男の貌が歪む事は無いだろうという確信があった。

常に超然とした態度を崩さず、薄ら笑みを浮かべて嘲笑い、コチラを見下し切っている姿が容易に想像でき、ソレが更にウィザード‹士道›の心に筆舌に尽くしがたい苛立ちと不快感と嫌悪感と、『この男は生きててはいけない生き物だ』と言う思考が湧き上がってくる。

恐らく崇宮真士としても、五河士道としても、〈仮面ライダーウィザード〉としても、ここまで敵意と殺意を抱いた人間は、後にも先にもこの、アイザック・ウェスコットただ1人だけであろう。

しかし、ウェスコットはそんなウィザード‹士道›の心情など、まるで気に止めず、アルテミシアと共に仮面を展開して声を発する。

 

「さて、本当ならば昔話にでも花を咲かせたい所だがーーーー生憎コチラも時間がある訳では無いのでね。兄妹仲良く出迎えてくれた所悪いが、精霊達が戻って来る前に片を付けさせて貰うよ」

 

ソーサラー‹ウェスコット›の言葉と動作に合わせ、ヘルキューレ‹エレン›が、ヘルキューレⅡ‹アルテミシア›が、そして〈ニベルコル〉が、2人を囲うように展開する。

 

「くーーーー」

 

「ち・・・・」

 

多勢に無勢。ウィザード‹士道›とビーストHA‹真那›は背中合わせになるような格好で応戦態勢を取った。

状況は非常に悪い。ビーストHA‹真那›だけが全力で戦えるが、ウィザード‹士道›は十全に力を振るえない。 敵は(元)人類最強エレン・メイザースが変身する〈仮面ライダーヘルキューレ〉。彼女に次ぐ実力者、アルテミシア・アシュクロフトが変身する〈仮面ライダーヘルキューレⅡ〉。そしてインフィニティスタイルに匹敵する魔力を有する上に、魔王〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉を駆るアイザック・ウェスコットの〈仮面ライダーソーサラー〉と、奴の眷属、擬似精霊〈ニベルコル〉。

明らかに手数が足りない。このままではーーーーと。

 

「ーーーーあら、『兄妹仲良く』って言うのなら、1人忘れているんじゃあないかしら?」

 

[マジイイネ! カマエル! ステキー!]

 

その瞬間、下方から声と音声が響いたかと思うと、外装に空いた孔から、赤い影が飛び出し、紅蓮の業火を放った。

 

『ーーーーキャァアアアアアアアアアアアアア!!』

 

「「「っ!」」」

 

〈ニベルコル〉達は焼却されるが、ソーサラー‹ウェスコット›達は障壁やイージスで防いだ。

 

「・・・・!? 琴里!?」

 

その姿を視界の端にとらえ、思わず声を上げる。

そう。ソコにいたのは〈フラクシナス〉艦長にして士道のもう1人の妹、五河琴里が変身する〈仮面ライダーイフリート〉が、『カマエルブレイカー・バズーカモード』で先制攻撃を仕掛けていたのである。

 

「何を驚いてるのよ。六喰は皆が戻って来る為の『孔』を維持しないといけないし、二亜は戦える力は残っていない。となれば、後は私しかいないじゃない」

 

「だけどよ、いくら何でもいきなり攻撃は・・・・」

 

「ふん。少しは憂さ晴らししなきゃ腹の虫が収まらないのよ」

 

当然と言うか、イフリート‹琴里›もソーサラー‹ウェスコット›に腸煮えくり返っていたようだ。

 

「「(・・・・コクリ!)」」

 

ウィザード‹士道›とビーストHA‹真那›は一瞬視線を交わすと、どちらからともなく頷き合った。

 

[コネクト プリーズ]

 

[ミラージュマグナム!]

 

[ダイスサーベル!]

 

そしてウィザーソードガン、ミラージュマグナムとダイスサーベルを合体させて構える。

 

「ーーーー行くぞ、アイザック・ウェスコット。お前はこっちの隙を衝いたつもりかも知れないが、これが最悪のタイミングだったって事を思い知らせてやる」

 

「その通り。私達兄弟の力、見せてやります。ーーーーね、琴里さん?」

 

「・・・・! ええ!」

 

ウィザード‹士道›とビーストHA‹真那›が言うと、イフリート‹琴里›は小さく目を見開いてからカマエルブレイカーをアックスモードに切り替えて、柄を強く握り締める。

ウィザード‹士道›と、ビーストHA‹真那›と、イフリート‹琴里›。ウィザード‹士道›を介した3人の兄妹が肩を並べた。

するとソレを見てか、ソーサラー‹ウェスコット›が大層可笑しそうに笑う。

 

「ーーーー面白い。抗って見たまえ、人間」

 

瞬間。

 

「ーーーー!」

 

その声に弾かれるようにして、ヘルキューレ‹エレン›が、ヘルキューレⅡ‹アルテミシア›が、そして無数の〈ニベルコル〉が、一斉に襲いかかってきた。

 

 

 

 

 

 

ーウッドマンsideー

 

〈フラクシナス〉のさらに上空に浮遊した姉妹艦〈ウルムス〉。

その艦橋は今、緊急死体を示すアラームや、スピーカー越しの爆発音、そしてクルー達の絶叫染みた報告が飛び交っていた。

だがソレも当然だ。前方空域では、霊装と天使を顕現させた始原の精霊〈デウス〉とDEM艦隊が戦闘を繰り広げ、その隙にウェスコット率いる別働隊が、〈フラクシナス〉を襲撃しているてと言うのだ。

加え、〈フラクシナス〉の主戦力たる精霊達は今、その大半が各地に分散してし、さらに〈国安0課〉から、『伝承の魔獣ファントム』達が、『儀式‹サバト›』を始めようしている報告も来ている。

 

「・・・・・・・・」

 

艦橋の中心で車椅子に座った〈ラタトスク〉円卓会議‹ラウンズ›議長、エリオット・ウッドマンは、表情を険しい色に染めながら、ヒゲに生えた顎を撫でた。

状況は非常に厳しい。〈フラクシナス〉の外装上で戦闘を繰り広げる〈仮面ライダー〉達はよく健闘しているが、圧倒的な戦力に圧されつつあった。しかも、いつソコに〈デウス〉が襲い来るやも知れないと言うオマケ付きだ。

 

「・・・・〈デウス〉ーーーー澪、か」

 

ウッドマンは、朧気な視界でメインモニタに映る精霊の輝きを見た。

視力の衰えた目でもーーーー否、純正魔術師‹メイガス›であるウッドマンには、目で見ずとも、その膨大な霊力はハッキリと感じる事ができた。

ーーーー間違いない。あの時の精霊だ。

30年前。ウッドマンが人類の復讐の為、ウェスコット、エレン、カレンと共に呼び出しーーーー心を奪われた存在。〈ラタトスク機関〉誕生の遠因。全ての因縁の起点にして原点。

〈フラクシナス〉クルーの村雨令音が澪の仮の姿であり、五河士道こそが、彼女に再組成された崇宮真士である、と報告を受けた時は驚いたが、不思議と納得感もまた、ウッドマンの中に生じていた。

精霊への恋。精霊を守る機関の発足。霊力を封印する力だけでなく、『伝承の魔法使い』の力を持った少年の発見ーーーー奇跡とした言いようない巡り合わせと思っていたが、もしかしたら澪は、ウッドマンの存在や行動さえ計算に入れて、全ての絵図を描いていたのかも知れなかった。

 

「・・・・やれやれ、とんだ悪女に惚れてしまったものだ」

 

ウッドマンは自嘲気味に呟くと、改めて思案を巡らせた。

琴里達からの報告によれば、始原の精霊〈デウス〉・澪は、五河士道を崇宮真士に戻す為、残る霊結晶‹セフィラ›を回収し、全ての精霊を殺すつもりだと言う。

ーーーーかつて恋した精霊と、自分が守り続けてきた精霊達。その2つが敵対したなら、自分は一体どちらに付くべきなのかーーーー

 

「・・・・はっ」

 

ソコまで考えて、ウッドマンはもう1度笑った。

 

「(ーーーー知れた事。“両方だ”)」

 

30年前の恋心から、かつて兄弟同然、否、兄弟以上の絆で結ばれ、共に過ごしてきた仲間と袂を分かってまで、精霊を守る道を選び〈ラタトスク〉と言う組織を作り上げた。

そんな最低で我儘でエゴイストな男が、素直に二者択一の選択肢など選ぶ筈がない。

振り向いてくれるどころか、一瞥すらくれる筈もない、30年の恋心をいつまでも女々しくて引きずって来て再会した、かつて恋した精霊まで守りたいなどと、我ながら愚か過ぎる上に、滑稽過ぎてて笑えてくる程に未練たらしいが。

少なくとも五河士道ならーーーーあの優しい少年ならば、自分の答えに賛同してくれるだろうという確信があった。

 

「ーーーーならば彼の為にも、先ずは精霊達を守らねばな」

 

静かに言うと、後方に控えているカレンに声を投げた。

 

「カレン。ーーーー〈ヴォーダン〉の準備を」

 

〈ラタトスク〉の技術の結晶であるCRーユニットである〈ヴォーダン〉。神々の王の名を冠した、金色の鎧。純正魔術師‹メイガス›にして人造魔術師‹ウィザード›たるウッドマンでさえ、顕現装置‹リアライザ›を以て身体を全盛期に戻さねば扱えない、超出力ユニットである。

そしてソレを使用すると言う事はーーーーーウッドマンに残された命の火を燃やし尽くすという事と同義であった。

 

「・・・・行くのですね、エリオット」

 

カレン・メイザースが、平坦な、しかし何処か寂しそうな声音で言う。

 

「すまんね。しかしウィザードラゴンがいない現状、アイクに、エレンに、アルテミシア。あれ程の最悪の戦況を覆せる戦力は、〈ラタトスク〉にはもう私しかいない。ならばーーーー行くしかないだろう。女々しい恋心から、精霊を守る為に仲間を裏切った最低な男が、その使命に殉じないだなんて、滑稽の極みと思わないかい?」

 

ウッドマンが言うと、カレンは数瞬の沈黙の後、溜め息混じりの声を零してきた。

 

「悩ましい所ですね。心情的には止めたい所ですがーーーーあなたがもしここで、他の円卓会議‹ラウンズ›の俗物共のように保身に走る輩‹クズ›ならば、そもそも私はこの世で唯一の肉親である姉‹エレン›を裏切ってまで、あなたに付いて来ていなかったでしょう」

 

「ーーーーふ。・・・・では、行こうか」

 

他の円卓会議‹ラウンズ›の幹部は、この重要な戦いでも、あくまで自分達は裏方に徹し目立たず、戦いの勝敗によってはすぐにでもDEMインダストリーに跪く準備までしていると報告を受けていた。

そんな俗物共に心底呆れ果てているカレンの言葉に、ウッドマンがの頬を緩めると、首肯した。クルー達が見守る中、カレンが、ウッドマンの車のロックを外す。

がーーーーその時。

 

「・・・・!? お、お待ち下さい、ウッドマン卿! これは・・・・この反応は・・・・!」

 

艦橋下段にいたクルーの1人が、何かに気づいたように甲高い声を上げた。

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