デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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自分を選ばせる

ー士道sideー

 

「ーーーーーーーー」

 

破滅的な1言であると共に、士道が澪の記憶から思い至った可能性だった。

澪自身が、心の何処かで思いながら、蓋をしていた事実。もしかしたらと考えながらも、無視せざるを得なかった可能性。

士道はソレを敢えて掘り起こす。

 

「真士の姿をして、真士の記憶を持った人間。でも、それは真士じゃない。真士の魂は、ソコに存在しない。・・・・きっとお前はソレを分かってしまっている。分かっていながら、縋らざる得なかった! でもーーーーソレで本当に、お前の心は満たされるのか、澪・・・・ッ!?」

 

「・・・・・・・・」

 

士道の言葉に、澪は暫しの間無言になりーーーーやがて悲しそうに唇を開いてきた。

 

「・・・・どうして、そんな事を言うの、シン・・・・?」

 

澪の言葉に合わせるようにして、士道達を包む空間が微かに蠢動する。

 

「私には、シンしかいないのに、シンともう1度会う為だけに、今まで生きてきたのに」

 

「ーーーーふざけるな!」

 

思わず士道は大声を張り上げた。突然の事に驚いた精霊達が、ビクッと肩を震わせる。

 

「シンしかいない・・・・? 馬鹿言うなよ! 俺が! 精霊達が! いるだろうが! 俺達と過ごした時間は、真士と過ごした時間に劣るものだったのか・・・・!?」

 

ーーーーいや、そんなの比べるまでも無いだろう。『お友達か子供のような存在達との時間』と、『心の底から愛する人との時間』など・・・・。

 

「・・・・・・・・」

 

士道の訴えに、ドラゴンの呆れた言葉が過ったような気がした。そして澪は、さしたる反応を示さなかった。ーーーーまるで、そんな問答などとうに済ませたとでもいうように。

その代わり、涙を滲ませながら澪が呟く。

 

「・・・・ああ、そうか。シンじゃないから、そんな事を言うんだよね。早く、シンに戻してあげないと。ーーーー今までありがとう、“士道”。でも、もうお別れだ」

 

ーーーー瞬間。

ザワリ、と空気が震えたかと思うと、澪の背後に浮遊していた大樹がザワリと蠢動し、その『枝』と『根』を天地に伸ばして見せた。

ソレらは触手のように蠢くと、目にも止まらぬ速さで、士道目掛けてその先端を躍らせてくる。

 

「なーーーー」

 

「く・・・・っ!」

 

「危ない・・・・!」

 

プリンセス‹十香›がサンダルフォンブレードを、テンペスト‹耶倶矢›がラファエルランスを振るい、士道に迫る『根』を斬り伏せ、吹き飛ばす。

 

「すまん、助かった・・・・!」

 

「気にするな! だがこれからどうする!?」

 

ブレードを構えながら叫ぶように言ってくる。士道は、小さく頷きながら澪の方を見やった。

元より、逃げられはしない。それにーーーー“気付いてしまった”士道には、やらねばならない事があった。

 

「澪に・・・・もう1度、キスをする」

 

「何・・・・?」

 

「は・・・・!? 好感度が足らないってあなたか参ったんじゃない!」

 

士道が言うと、仮面を展開したイフリート‹琴里›が意味が分からないと言った調子でそう叫んできた。

確かにその通りだ。だがーーーー否、だからこそ、士道は行かねばならないのだ。

 

「だからーーーー“今回は真士じゃない”。“俺を、五河士道を、選ばせる”。真士じゃなくて、五河士道を好きになってもらう。でないと、きっと澪はーーーー」

 

士道の言葉は最後まで発されなかった。再び下方から『根』が、士道の身体を捉えんと伸びてきたのだ。

 

「シドー!」

 

「ぐーーーー」

 

否、今度はそれだけではない。澪の霊装が蠢いたかと思うと、光り輝く帯のようなものが、精霊達に向かって伸ばされた。

ソレは『未来の世界』で、士道の捕縛を目的とした『根』や『枝』とは違う。精霊達を刺し貫き霊結晶‹セフィラ›の残滓を抜き取らんとする必殺の1撃であった。

 

「避けろ、皆! ソレを喰らっちゃ駄目だ!」

 

『ーーーー!』

 

既に『メモリー』の魔法で教えている士道の声に応えるように、精霊達が外装を蹴り、或いは帯を打ち払う。だが、ソレによって生じた一瞬の隙に、無数の『根』が、変身解除してしまっていた士道を襲う。

 

「くーーーーっ!」

 

「主様!」

 

「だーりん!」

 

「っ! やっと来ましたわね・・・・」

 

精霊達の悲鳴が鼓膜を震わせるが、唯1人、狂三だけが安堵したような声を上げたその瞬間。

 

「(シュル、グィっ) ぐおぇぁっ!!」

 

だが、『根』が士道に至ろうとした瞬間、上空から士道の首に何かが巻き付いてきて、グイッと引っ張り上げられた。頭上にいつの間にかいた魔人形態のウィザードラゴンであった。

一瞬後、状況を理解する。ーーーー士道は寸での所で、おさげのようになドラゴンテイルを伸ばしたドラゴンに助けられたのだ。

 

「ど、ドラゴン・・・・!」

 

『フン。また思い上がった考えを持ったな』

 

ドラゴンは引っ張り上げた士道をそのままぶら下げ、士道は根性でしがみつく、『根』や『枝』が迫ってくるが、ドラゴンが手を向けると、『根』と『枝』の先端が燃えて灰燼となり、凍てつき砕け、稲妻で焼かれ、重力で潰されると、滑らかに浮遊して離れた。

 

「・・・・俺の扱い、いつも思うけど酷くね?」

 

『貴様のような最低なクズ男、コレくらいの扱いが当然だ』

 

などと話していると、狂三が士道に近づいて、士道の目を覗き込んだ。

 

「狂三?」

 

「ーーーー面白い事を仰っておられますわね。澪さんに、もう1度キスをするとか」

 

「・・・・ああ。そのつもりだーーーーうぐっ!?」

 

士道が答えると、ドラゴンの士道の首に巻き付いた尻尾の力を弱冠強め、狂三は意外そうに、しかし面白がるように目を歪めた。

 

「とは言え、士道さんは1度封印に失敗しているのでしょう? 勝算がありますの?」

 

「・・・・それはーーーー」

 

尻尾の締め付けが弱まると、士道は一瞬の逡巡の後、“ソレ”を告げた。

澪の記憶を共有した事により得て気づいた。

ーーーーその、“もう1つの可能性”を。

 

『・・・・・・・・』

 

「・・・・・・・・」

 

ソレを聞いたドラゴンは一瞬目を伏せ、狂三は一瞬目を丸くし、

 

「・・・・あら、あら」

 

と、苛立たしげに、しかしどこか悲しげに、目を細めた。

 

「・・・・それが、澪さんの『本当の望み』、ですの? 自分勝手もソコまで極まると笑えてきますわね。そんな事をする為に、わたくし達は精霊にされたと仰いますの?」

 

狂三は吐き捨てるようにフンと鼻を鳴らすと、小さな吐息の後、もう1度士道の顔を覗き込んできた。

 

「ーーーー士道さん」

 

「なんーーーー、・・・・ッ!?」

 

『・・・・・・・・』

 

士道は、途中で言葉を止めた。否、正確に言うならば、止めさせられた。

ーーーー狂三の、柔らかな唇によって。

そう。狂三は士道を抱きかかえた姿勢のままーーーー士道に、キスをしていたのである。

 

「・・・・、・・・・!?」

 

突然の事に、頭が混乱する。だが、やがて触れ合った唇を通じて温かいものが流れ込んでくる感覚を覚え、士道は状況を理解した。

ーーーー狂三が。あの『最悪精霊』が、士道とドラゴンに霊力を託してくれたのだと。

 

「ーーーー勘違いしないでくださいまし、士道さん」

 

士道のお花畑な思考など読んでいると言わんばかりに、狂三がツンと顔を逸らす。

 

「この空間に囚われた以上、逃げ場はないでしょう? みをさんが未来の情報を有してしまった以上、〈刻々帝‹ザフキエル›〉での時間遡行も止められてしまう可能性が高いですわ。ーーーーならば、悲願の霊結晶‹セフィラ›を抱えて死ぬより、少しでも生存率の高い可能性に賭ける方が利口ではありません事?」

 

狂三の霊装が光を帯び、空気に溶け消えていく。が、狂三はさして恥じらう様子もなく、続けた。

 

「わたくしがここまでしたのですわ。キチンと、やり遂げて下さいまし」

 

狂三が士道に向き直り、目を見つめなから言ってくる。時計のように時を刻んでいた左眼は、いつしか普通の瞳へと変貌していた。

 

「ーーーーああ。ありがとう、狂三」

 

[コネクト プリーズ!]

 

士道はコクリと頷くと、予備の『スピリッドライバー』を『コネクト』で取り出し、『エンゲージウィザードリング』を狂三の右手の薬指に嵌めてからもう1度キスをし。

 

「ーーーー行こうぜ、ドラゴン!」

 

『もう1度言っておくが、我は『彼女』の攻略には手を貸さんからな』

 

[イィィンフィニティー!! プリーズ!]

 

ーーーーギャォォォォォォォォォォォンッ!!

 

[ヒースイフードー! ボーザバビュードゴーーン!!]

 

士道の身体から光り輝くウィザードラゴンが飛び出し士道と一体化し、士道の身体を水晶が包み砕け散り、〈仮面ライダーウィザード・インフィニティスタイル〉へとなり、アックスカリバーを携えると、身体を空に躍らせた。

 

 

 

 

 

 

 

ー狂三sideー

 

「ーーーーあら、あら」

 

ウィザード‹士道›の背中を見送りながら、狂三は指で唇をなぞった。

 

「随分とやるようになりましたわね、士道さん」

 

そしてクスクスと笑いながら、小さく息を吐く。

 

「・・・・にしても、綺麗に持っていきますのね。何割かでも霊力が残れば、格好も付いたでしょうに」

 

先程士道が言った言葉を、頭の中で反芻させる。ーーーー精霊の力を封印する条件。心を開かせ、キスをする。

ならば、ここまで見事に霊力を封印されてしまった狂三はーーーー。

 

「ーーーー全く。我ながら、困ったものですわね」

 

狂三はフッと頬を緩めた後、他の精霊達と同様に、スピリッドライバーを腰に当てて巻き付けた。

 

[ドライバーセット ドライバーセット シャバドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪]

 

狂三は指輪を嵌めた手を開き、左眼の前に晒すように動かしてから、その言葉を発する。

 

「変身」

 

[ナイトメア プリーズ!]

 

狂三は頭上に黒い魔法陣が展開され、ソレが下に行き狂三を通過し、狂三の身体は黒いオニキスに包まれると、ソレが砕け散り、〈仮面ライダー〉となった。

影のように黒いインナーにオニキスのアーマーをⅠ〜Ⅻの数字が入った縁が走り、マスクの左眼の部分には、文字盤の眼帯を付けた姿〈仮面ライダーナイトメア〉となると、ドライバーに両手を翳した。

 

[ザフキエルトリガー!]

 

音声が響き、黒い魔法陣が展開され中から、黒い銃身に赤いラインが走り、さらに小さな文字盤が付けられたオートマチックピストル、『ザフキエルトリガー』が2丁が召喚された。

 

「ーーーー古式銃よりは、扱い易いですわね」

 

妙に手に馴染む拳銃を少し回してから、ナイトメア‹狂三›は再び、戦いへと身を投じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー士道sideー

 

「ーーーーーーーー」

 

ーーーー漲る力が、身体を満たすと、インフィニティスタイルの各所の宝石が彩りに光り、別の宝石へとなる。

白銀のダイヤモンド。灰色のアレキサンドライトスピネル。黒色のオニキス。青色のサファイア。赤色のルビー。金色の琥珀‹アンバー›。緑色のエメラルド。黄色のトパーズに橙色のオレンジサファイア。紫色のタンザナイト。夜色のダイヤモンドとなる。

ーーーー名付けるのなら、〈仮面ライダーウィザード・インフィニティジュエルスタイル〉。

狂三の霊結晶‹セフィラ›と、二亜の霊結晶‹セフィラ›。今まで封印した皆のモノと合わせて10の力をその体内に取り込んだウィザード‹士道›は、万能感にも近い感覚を覚えていた。

 

『ーーーー余計な自惚れを抱くでないぞ』

 

「っ、お、応」

 

一瞬、調子に乗りそうだった気持ちをドラゴンの1言で引き締める。

 

[アックスカリバー!]

 

「ハァァァァァァ!!」

 

ウィザード‹士道›はアックスカリバー・カリバーモードにし、『根』と『枝』を全て斬り裂きながら突き進む。

茨のように生い茂る『根』や『枝』を斬り捨てて進む際、ウィザード‹士道›とドラゴンは視界の端に、奇妙なものを捉えた。

それは、〈輪廻楽園‹アイン・ソフ›〉の幹、そして〈万象聖堂‹アイン・ソフ・オウル›〉の中心にあった少女の像。

今のウィザード‹士道›の超感覚がなれば気づかないような、小さな差異。

2人の目にはその2体の少女像が、何処か悲しげに微笑んでいるように見えた。

まるでーーーー澪をよろしく、とでも言うかのように。

 

「ーーーー任せろ」

 

『ーーーーふん』

 

士道は誰にともなくそう呟くと、空を蹴って、文字通り瞬く間に澪の元へ至った。

 

「ーーーー! シンーーーー」

 

澪が、驚いたように目を丸くする。

ウィザード‹士道›は仮面を解除し、有無を言わせぬまま澪を抱き締めるとーーーー。

 

「んーーーー」

 

「ーーーーーーーー」

 

その唇に、自分の唇を、重ねた。

 

「(ーーーードラゴン・・・・お前は俺が『やろうとしている事』、澪の『本当の願い』を・・・・)」

 

『(ーーーーあぁ、分かっている)』

 

「(それじゃ・・・・澪の『願い』を叶えるつもりか?)」

 

『(・・・・・・・・『最後の手段』として、な)』

 

「(そうか・・・・なら、ここまでだ!)」

 

ウィザード‹士道›が念話でそう言うと、背中に魔法陣が展開され、何とーーーーウィザードラゴンを自分の体外へと追い出した。

 

『・・・・・・・・』

 

「(此処からは俺がやる! 俺が澪のーーーー『最後の希望』になってみせる!!)」

 

そして、士道は光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が、士道は1つだけ、勘違いをしていた。2体の少女像が言った相手は士道ではなくーーーーもう1人と、“その中にいる『存在』に向けてだったのだ”。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーウェスコットsideー

 

「アイクーーーーアイク! 大丈夫ですか、アイク!」

 

随意領域‹テリトリー›でウェスコットの身体を抱えながら戦場を離れたエレンは仮面を解除して、止血と鎮痛、そして治癒促進を施しながら、ウェスコットに絶え間なく呼びかけていた。

傷は間違いなく致命傷。だが、エレンは随意領域‹テリトリー›を精緻に編み込み、傷を塞ぎつつあったのだ。

とは言え、それはあくまで身体面の話だ。傷を綺麗に治ったとしても、意識を失ってしまったなら再度目覚めるかどうかは分からない。そうならない為に、エレンはウェスコットに呼びかけ続けていた。

 

「・・・・ああ、聞こえているよ、エレン」

 

ウェスコットは、小さく、しかし確かにそう応えると、微かに震える指で血に染まった胸元を撫でた。

 

「・・・・ふ、成る程。生きながらにして霊結晶‹セフィラ›を抜かれるのはこういう感覚なのか。貴重な体験ができた」

 

「冗談を言っている場合ですか・・・・!」

 

エレンが泣きそうな声で怒鳴ると、ウェスコットはソレを宥めるように微笑んだ後、隣にいたアルテミシアに視線を向けた。

 

「・・・・ソレで、状況は?」

 

「ーーーー〈デウス〉が来訪。〈ナイトメア〉が五河士道に力を託し、〈仮面ライダー〉へと変身。〈デウス〉に向かったみたいです」

 

「・・・・〈ゲーティア〉は?」

 

続けて、ウェスコットが問うてくる。今度はエレンが応じる。

 

「・・・・、未だ〈フラクシナス〉の横に。遠隔操作は途切れていません」

 

「・・・・成る程」

 

エレンの言葉に、ウェスコットが満足気に頷く。

 

「ーーーー“順調”、と言う事だね?」

 

そして、ウェスコットは笑った。

あたかもーーーー全てが、自分の描いた絵図の通りに進んでいるとでも言うかのように。

と。その時ーーーーウェスコット達の近くに魔法陣が展開され、ソコからワイズマンとメデューサが出てくる。

 

「ーーーーやぁMr.ワイズマン。『儀式‹サバト›』は、失敗したようだね?」

 

『・・・・・・・・』

 

「まぁ、良いだろう。しかし、私は霊結晶‹セフィラ›を失い、〈神蝕篇帙‹ベルゼバブ›〉を失い、〈ニベルコル〉も失った」

 

改めて自分の現状を冷静に分析すると、ワイズマンへと目を向けた。

 

「と言う訳だ。私に『アレ』を渡せワイズマン。嫌ーーーー『カーバンクル』」

 

そう命令した。

『アレ』と言う物とワイズマンを違う名前で呼んだ事に首を傾げるエレンとアルテミシア、そしてメデューサ。

しかしワイズマンはーーーー。

 

『ーーーー承知いたしました』

 

ーーーーズボッ!!

 

まるで従僕のように恭しく頭を下げると即座にーーーー自分の胸元を刺し貫いた。

 

「「っっ!!??」」

 

『ワイズマン! 何をっ!?』

 

[チェイン ナウ!]

 

メデューサがワイズマンに駆け寄ろうとするが、ウェスコットが魔力でできた黄金の鎖で縛り上げられた。

 

『メデューサ、無駄な好奇心は時として不幸を招く。時に真実は知らない方が幸せなのだよ・・・・!』

 

そう言うとワイズマンは自分の身体を貫いた腕を動かし、グチュグチュと肉を抉るような音を響かせてから、その腕を引き抜くと。

その手にーーーー“桃色の光を放つ、魔法石を抉り出した”。

 

『なっ!? そ、ソレは!?』

 

「アイク・・・・これは一体・・・・?」

 

「ああ、コレは私がワイズマンに与えた物だよ。我が先祖、“『魔獣ファントム』を生み出す方法『儀式‹サバト›』と、『人工ファントムの生成方法』を創り出した偉大な魔術師‹メイガス›が生んだ”、高純度の魔力の塊とも言える『究極の魔法石』・・・・・」

 

ソコまで言ってから、ウェスコットはワイズマンから手渡された『魔法石』を天に掲げた。

 

「そうーーーー『賢者の石』さ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ー琴里sideー

 

雲海の上。〈フラクシナス・エクス・ケルシオン〉の外装上で、イフリート‹琴里›は声を張り上げる。

 

「士道!!」

 

士道が澪の元に至ってキスをした瞬間、澪の背後や頭上に浮遊していた巨大な天使達がその姿を変容、士道と澪を包み込もうとした瞬間、士道の背後からドラゴン(魔人形態)が、まるで追い出されるように飛び出て来ると同時に、大きな球体を形作り、つい先程まで辺りに嵐のような暴威を振るっていた澪の攻撃が、完全に鳴りを潜めたのだ。

 

「これは・・・・」

 

「怪訝。一体何が起こったと言うのでしょうか」

 

八舞姉妹‹ベルセルク›が、この場にいる全員の感想とも言える声が辺りを通り抜ける。

大きさは直径10メートル程、光の加減によって様々な色を映す宝石のような外装に覆われた、滑らかな球体。その姿は巨大な繭か或いは、発芽を待つ植物の種子を思わせた。

 

『・・・・・・・・』

 

すると、ドラゴンが魔獣形態から魔人形態となって、こちらに向かって降りてきた。それを見て全員が仮面を解除した。

 

「ドラゴン!? 何で外に出たのよ!?」

 

『小僧が1人で『彼女』を攻略すると言って、我を追い出したのだ。しかも、我の本体丸々な』

 

「えっ・・・・? ソレ大丈夫なの?」

 

『ドラゴンくん追い出した士道くんって、大概失敗フラグ乱立させちゃうのがお約束じゃん?』

 

七罪と『ザドキエルファング』となったよしのんが少々呆れが混じった声を発した。

 

『ま。お手並み拝見だな』

 

「ソレでドラゴン。シドーは無事なのか?」

 

十香が不安そうな声で言ってくると、ドラゴンは一瞬瞑目すると、大きく首を前に倒して目を開いた。

 

『ーーーー大丈夫だ。我とあの田吾作は例え離されても、見えない経路‹パス›で繋がっている。あの自惚れ屋に何かあれば、即座に我が感知できる』

 

「ーーーーそうか。・・・・そうなのだな!」

 

ドラゴンの言葉に、十香は心底ホッとしたような声になった。

とは言え、この状態では余りに手がかりが少ない。琴里は耳の裏に装着しておいた通信機に向けて声を発する。

 

「ーーーー艦橋、聞こえる? 観測装置で中の様子を探って見てちょうだい」

 

「はいはーい、ちょっと待ってね妹ちゃーん」

 

と、琴里の指示に応えるように、耳に直接、そんな声が響いた。

〈フラクシナス〉の外装から開いた穴から、〈ラタトスク〉の軍服を着た二亜がヒョッコリと顔を出し、さらにガルーダ達プラモンスターズも出て来たのだ。

 

「どもー、呼ばれて飛び出る二亜ちゃんデース」

 

「二亜!」

 

『誰も読んでない』

 

『(クイッ)』

 

琴里が名を呼び、精霊達の大半がそうツッコむが、二亜は気にせず気安い調子でヒラヒラと手を振ると、ドラゴンが指を一本動かすと、『グラビティ』を使ったのか、二亜がフワフワと宙を浮いてコチラに運び込んだ。

 

「うっひゃー! 怖っえぇぇぇぇ! ここが高度15000メートルの世界!? ドラくん落とさないでね! あー、でも寒さと風は大丈夫なんだ。やっぱ随意領域‹テリトリー›半端ないね! 科学の力ってスゲー!」

 

等と、キャイキャイとはしゃぎながら、二亜が地上を覗き込む。場違いな様子に、琴里は思わず半顔を作る。

 

「どうしたのよ二亜。いくら戦闘が中断しているからって、こんな所に出てくるのは危険よ?」

 

「ん? ああ、そうだった。コレよコレ」

 

思い出したように、二亜が背負っていたバックパックの中から、手の平大の機械を取り出す。

 

「んーと、ガルちゃん達。これ、あの繭みたいなやつに張り付けてくれる?」

 

『ーーーー!』

 

ソレを受け取ったプラモンスターズは、繭へと向かった。ソレを見て、琴里が問う。

 

「アレは?」

 

「観測装置の端末。随意領域‹テリトリー›で覆うだけでも解析はできるけど、コレを対象に張り付けると、より正確に内部構造を把握できるらしいよ」

 

「成る程、でも言ってくれれば受け取りに行ったけど?」

 

「えー。だって精霊皆で総力戦感出してるのに、アタシ1人だけ艦橋でお留守番ってなんかアレじゃん。真の仲間じゃない感あるじゃん」

 

一応の責任感はあったようだ。すると、観測装置を張り付けたプラモンスターズが戻って、四糸乃と七罪の両肩に座ると、二亜に向けて声を発した。

 

『ーーーー!』

 

「サンキュー。さーて、どうかなー?」

 

言いながら二亜がその場に座り込み、バックパックの中からタブレットを取り出し、その画面を見ると、同じく画面を覗き込むように精霊達が二亜の背後に集まる。

が、二亜が画面を叩くも、画面は砂嵐となっていた。

 

「んー・・・・ダメか。じゃあ今度はこっちの方式で・・・・」

 

と。

 

「ーーーーウフフ、『全知の精霊』ともあろうお方が、お労しいですわね」

 

二亜が頭を掻きながら画面を叩いていると、その前方に、すとーーーーと、1人の〈仮面ライダー〉が降り立つと、変身を解除した。

ソコには、左右不均等に結われた美しい黒髪に、時計の左目。そしてーーーーゴシックロリータ調のドレスと、修道衣が合わさったような霊装を纏った少女だ。

 

「狂三!」

 

琴里が思わずその名を呼んだ。

そう。ソコに現れたのは、『最悪の精霊』とも呼ばれた少女・時崎狂三その人であった。

が、その霊装の形は異なっていた。限定的霊装に、まるで二亜の霊装の1部を合わせたような。

 

「その姿は・・・・」

 

『二亜の霊結晶‹セフィラ›を取り込んだ影響か』

 

「ゴスロリに十字架・・・・十字架だと? くっ・・・・」

 

「理解。耶倶矢のツボを多段ヒットですね」

 

「・・・・・・・・」

 

狂三の装いに精霊達は口々に呟き、真那は不機嫌そうに狂三を睨みつけているが、取り敢えずここで戦り合おう気はないようだ。

狂三としても、今は敵対するつもりはないようだ。先程霊力を士道に託したことからも一応信じていいだろう。意図こそ完全に分からないが、実際士道が澪と対する事が出来たのは、他ならぬ狂三のお陰だ。

狂三は表情が読めないドラゴン以外の複雑そうな顔と様子に、クスクスと笑うと、おもむろに右手を掲げ、呼ぶ。

そのーーーー天使の名を。

 

「ーーーー〈囁告篇帙‹ラジエル›〉」

 

「なぬぃ・・・・っ!」

 

その天使の名に、元々の所持者である二亜が目を剥く。

狂三の掲げた手の中に、巨大な本が姿を現す。その本は自動的に開くと、その紙面に光り輝く文字を表示させていく。

ソレを見て、二亜が悲鳴染みた声を上げる。

 

「うわー! マジでマジかマジだなのかよくるみんそんなんアリ!? 嫌まああの悪徳悪辣で吐き気を催す邪悪な社長からアタシの霊結晶‹セフィラ›を取ったんなら、そうなるんだろうけど、なんか2重の意味でアタシの立場無くない!? アイデンティティークライシス帝国!!」

 

「お静かに。初めて扱う天使ですので、集中させてくださいまし」

 

「うぐぅ・・・・うわーん! ドラくーん! コレがNTR‹ネトラレ›なの!? 悔しい・・・・!!」

 

二亜がわざとらしく肩を抱いてドラゴンに寄りかかり、ビクンビクンと身体を震わせる。

琴里は二亜は無視して、何やら沈黙して光の繭を見据えているのが気になるが、狂三の方に視線を向けた。

 

「ーーーーで、どう? 士道は?」

 

「士道さんは・・・・ええ、ドラゴンさんの言う通り、ご無事のようですわね」

 

『・・・・!』

 

狂三の言葉に、精霊達はパァッと表情を明るくし、琴里も、出来るだけ表情に出さないようにしながらも、ホウと安堵の息を吐いた。

が、ソコで。

 

「・・・・、コレは・・・・?」

 

〈囁告篇帙‹ラジエル›〉の紙面を視線でなぞっていた狂三が、微かに眉をひそめ、そう呟いた。




ドラゴンを追い出した士道は、どうなってしまうのか。


ー〈仮面ライダーナイトメア〉ー
狂三が変身する仮面ライダー。影を操り相手を拘束したり、武器を持たない自分の複製‹コピー›を作ったりする。
『ザドキエルトリガー』
オートマチックピストル・2丁。銃身に文字盤があり、矢印で指した文字によって、刻々帝‹ザドキエル›のような能力が使える。勿論、通常の銃(連射可能・弾切れなし)として使える。
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