デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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ようやく第二章が終わります。


精霊の住まうマンション

ー士道sideー

 

「な・・・・なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

四糸乃の力を封印してから早2日。

検査を終えた士道と十香は、ようやく家に帰ってきての翌日の朝には、五河家の隣に、マンションのような建物が聳えていた。

2日前までは空き地だったスペースに、ドン、と突如として。

狐か狸に化かされた気分の士道の後方から、琴理が眠たげに目を擦りながら、マンションの事を話す。

 

「何って・・・・言ってなかったっけ? 精霊用の特設住宅を造るって」

 

「琴理、まさかこれがそうだって言うのか・・・・?」

 

「ええ。見た目は普通のマンションだけれど、物理的強度は通常の数百倍、顕現装置<リアライザ>も働いているから、霊力耐性もバッチリよ。多少暴れても外には異常が漏れないわ」

 

≪成る程な。精霊の生活のサポート“だけ”は役に立つな≫

 

「いや、そういう事を聞いてるんじゃなくてだな・・・・! 一体いつの間に造ったんだよこれ・・・・! 1日2日じゃできねえだろこんなの!」

 

「やあねえ。陸自の災害復興部隊だって、破壊されたビルを一晩で直しちゃうじゃない」

 

≪顕現装置<リアライザ>とやらを使った結果だ。やれやれ。こんな事にも推察できないとは、お前の脳みそは本当に使い物にならんな≫

 

どうしてこの妹様と魔獣は、自分を嘲る時は息ピッタリなんだろうか、と、士道は渋面を作る。

 

「・・・・ってことは、“住宅ができるまで”、ってのは結構な詭弁だったわけだ」

 

「人聞きの悪い。十香が外部で暮らすための試用期間でもあるって言ったでしょ」

 

≪それに女と付き合った事が無い=年齢のお前の訓練の為にもなっただろうが≫

 

「・・・・ぬ」

 

色々腑に落ちないが、きっと言い返しても無駄だろう。

琴理は身を翻すと、家の方に足を向けた。

その際十香が引っ越す事を伝え、少し寂しい気がした士道に琴理が、「間違いを起こしたいなら、今日明日あたりが最後のチャンスよ」と言うと、ドラゴンが、≪このボンクラにそんな度胸と甲斐性がある訳ないと分かっているだろうが≫と言い出し、士道が琴理(&ドラゴン)に顔を赤くして怒鳴ると、琴理がピョンと跳ねて家の中に退散し、ドラゴンは欠伸をして聞き流した。

 

「・・・・ったく、どうして琴理とドラゴンは俺を虚仮にする時だけ・・・・!」

 

士道がブツブツと文句を垂れながら家に足を向けようとすると、可愛らしいワンピースを纏い、頭に顔を覆い隠すようなキャスケットを被った少女が、飛び跳ねるように走ってきた。

 

「! 四糸乃!?」

 

士道は少女の名を呼んだ。霊装出はなかったが、左手にウサギのパペットを着けている少女など、四糸乃しかいなかったからだ。

 

『やっはー、士道くん』

 

よしのんがパクパクと口を動かしながら、甲高い声を響かせる。

 

『やー、やっと会えたねえ。助けてもらったのにお礼言えなくてごめんねー』

 

「あ、いや・・・・それはいいんだが。もう検査は終わったのか?」

 

『んー、第一検査だけはね。まだあるらしいんだけど、士道くんにお礼が言いたくてさ。特別に少しだけ外に出してもらったんだー』

 

言って、〈フラクシナス〉を見るように、よしのんが空を仰ぐ。

 

『ま、そういわけで、検査終わったらまたデートしよーねー』

 

「あ、ああ・・・・そうだな」

 

『ふふ、うんじゃ、まーたね』

 

よしのんが小さく手を振る。

と、四糸乃がピクリと肩を揺らすと、躊躇いがちに顔を士道の方に向けてきた。

 

「ん・・・・? どうした?」

 

「ーーーあ、の・・・・」

 

四糸乃が地声を出したことに士道は少し驚き、ドラゴンは黙って四糸乃を見据えていた。

 

「また・・・・お家に、遊びに、行っても・・・・いい、ですか・・・・?」

 

恐る恐るといった様子で士道の方に視線を送って、四糸乃が言った。

 

「お・・・・おう、いつでも来い!」

 

士道が答えると、四糸乃は顔を明るくしてから頭を下げ、パタパタと走っていった。

 

『ふふっ、偉い偉い。頑張ったねー』

 

「・・・・うんっ」

 

なんて会話を、よしのんと交わしながら。

 

「・・・・はは」

 

≪・・・・ふん≫

 

士道は小さく息を吐くと、唇の端に笑みを浮かべ、ドラゴンも笑ったような声を上げた。

そう言えば、よしのんがある状態で『四糸乃』が喋ったのは、初めてかもしれない。

何故か分からないけれど・・・・少し嬉しかった。

 

「さて・・・・と」

 

軽く伸びをしてから家に入り、階段を上がって自分の部屋に入ろうとしたところで、廊下の奥の客間の扉が微妙に開いて、そこから十香が顔を半分覗かせて士道の方を見て、扉の隙間から手を出して、チョイチョイと手招きしていた。

士道は困惑した表情を浮かべながら、ゆっくりそちらに歩き、一応ノックをしてから扉を開け、部屋の中程にいる十香と向き合う。

 

「何か用か? 十香」

 

「・・・・ん。琴理から聞いているかもしれないが、明日から、隣の家に住むことになった」

 

「あ、ああ・・・・そうらしいな」

 

「それで・・・・ん、今のうちに、シドーと話しておきたいことがあるのだ」

 

「話?」

 

「・・・・うむ」

 

十香が、何か言い出しづらそうに、目線を微妙に逸らす。

 

「昨日、検査の時、琴理や令音に色々と、聞いた」

 

「ーー! え、ええと・・・・色々って言うと・・・・」

 

「ん・・・・琴理達は、私たち精霊を助けようとしてくれていて・・・・シドーもそれに協力しているのだと」

 

「(バレちまったか・・・・)」

 

≪デパートでのやり取りである程度察していたのだろう。〈プリンセス〉はお前が思っているよりも賢いからな≫

 

心拍を落ち着かせたようと深呼吸した十香は、士道に向き直った。

 

「話と言うのは、それに関連してだ。ーーーシドー。お願いだ。もし今後、私や四糸乃のような精霊が現れたなら、救ってやってほしい」

 

「え・・・・」

 

≪フム・・・・≫

 

士道は目を見開き、ドラゴンは十香の意図を察した。

 

「琴理が言うには、まだ精霊は数体確認されているらしい。きっとその中には、私達のように、望まぬままに戦いに巻き込まれている者もいる筈なのだ。ーーーそんなのは、可哀想ではないか」

 

どことなく寂しそうな笑顔を作る十香は言う。

 

「だから頼む。シドーが魔獣達と戦って大変なのは知っているが、シドーの力で、そういう精霊達を救ってくれ。・・・・あの時、私を、助けてくれたように」

 

「・・・・・・・・っ、ああ。そのつもりだ。十香と四糸乃が、魔獣ファントムを生み出す『ゲート』だったからな。他の精霊達も、そうである可能性があるなら、俺は、魔法使い<ウィザード>として、精霊達を助ける。精霊達を守る」

 

「・・・・・・・・」

 

望み通りの答えを得られた筈なのに、なぜか複雑そうな顔をして、十香は笑った。

 

「ん・・・・恩に着る。あと・・・・もう一つ、良いだろうか?」

 

「おう、なんだ。言ってみてくれ」

 

「ん・・・・」

 

十香は、何かモゴモゴ口を動かしながら、ふっと顔を俯かせてしまった。

 

「え? 何だって?」

 

何かを言っているようだが聞き取れず、士道は耳を澄ませて、十香の方に足を踏み出しーーー。

 

「・・・・っ!?」

 

急に顔を上げた十香に身体を寄せられ、息を詰まらせる。

十香は士道の首に腕を回すと、そのまま士道を近くにあったベッドに押し倒すとーー。

 

「んぐ・・・・っ!?」

 

≪ほほぅ~≫

 

一瞬、逡巡のようなものを見せてから、十香はおもむろに自分の唇を、士道の唇に合わせてきた。

 

「~~~~~~~!」

 

≪やるな〈プリンセス〉≫

 

突然の事に士道の脳が混乱して悲鳴を上げた。

鼻腔をくすぐる女の子特有の甘い香り。

目前に迫った十香の顔。

身体全体にのし掛かった心地よい負荷。

思わず抱き締めたくなってしまうような、柔らかい肢体。

そしてーーー唇に伝わる、えも言われぬ感触と、自分のものではない唾液の味。

それらがない交ぜになって、士道の脳細胞を蹂躙していった。

抵抗も順応もできぬまま、数十秒の時が過ぎる。

そこでようやく、十香が唇を離して顔を上げた。

 

「ぷは・・・・っ」

 

どうやらキスの間中、息を止めていたらしい。息継ぎでもするように、十香が息を吐く。

そしてマウントポジションを取ったまま、士道の目をジッと見てくる。

 

「と、十香・・・・何を・・・・」

 

「・・・・今回は、これで手打ちにしてやる」

 

「え・・・・?」

 

士道が間抜けた声を返すと、十香は恥ずかしそうに目を逸らした。

 

「・・・・何故だろうか。ただ唇を触れさせるだけなのの行為なのに・・・・悪くない感じがする。不思議とーーーシドー以外の人間とは、したいとは思わないのだ。・・・・それと同じ・・・・なのかどうかは分からないが、シドーが・・・・その、ビルとやらの中で四糸乃とキスをしていたときは、なんと言うか・・・・嫌な感じがした」

 

≪ほほぅ~。なるほど、なるほど≫

 

士道が反応できないが、ドラゴンは何かを察したように頷き、十香は構わず続けた。

 

「・・・・だから。その、なんだ。・・・・もう、私以外とは、するな」

 

「・・・・・・・・っ、え、ええとーーー」

 

どうやら、十香は精霊の力を封印するための方法は聞かされていないらしい。なんと言う二律背反。無茶な要求をしてくれる。

 

「返事っ!」

 

「お・・・・おうっ」

 

しかし十香に気圧されて、士道はそう言ってしまった。

 

 

ードラゴンsideー

 

『こりゃ完全に尻に敷かれているな。・・・・まぁあのボクちゃんの方はどうでもいいとして・・・・』

 

ドラゴンは2日前から士道の体内、ドラゴンがいる真っ暗な空間の中に新たに入ってきたものを一瞥する。

四糸乃を封印した時に現れた『青い霊力の塊』。

十香を封印した時に現れた『夜色の霊力の塊』。

そして1年前、ウィザードラゴンが士道の体内に顕現した時から存在していた、『赤い霊力の塊』を見据える。

 

『・・・・これまでの情報から推察するに、この『赤い霊力の塊』もまた、“精霊の霊力”、そしてこれが小僧の“治癒能力の源”であり、そして、“あの娘”の態度からするとこれは・・・・』

 

思考していたドラゴンは、不意に三つの霊力の塊をジッと見ると、ペロリ、と舌舐めずりをする。

 

『ーーー少し、試してみるか・・・・』

 

ドラゴンは三つの霊力の塊に向かって、大口を開けたーーー。

 

 

ー折紙sideー

 

陸上自衛隊・天宮駐屯地の一角にあるブリーフィングルームには、非戦闘員をも含めたASTメンバーが居並んでいた。

先日の作戦の報告会と、新たな精霊反応に関する作戦会議の為、燎子によって集められた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

そんな中で、自衛隊常装姿の折紙は、不機嫌な心地を抑え込むように、机の上に置いた手を眺めていた。

2日前に、〈プリンセス〉の妨害によって結局〈ハーミット〉を取り逃がし、さらに新たに飛行型アンノウン(インプ)まで現れたからだ。

飛行型の力は、これまでの雑魚アンノウン<グール>と大差ないが、飛行能力を有しており、さらに雑魚と同じくように、随意領域<テリトリー>の影響を受けない異質な存在。

そして、雑魚を指揮しているアンノウン<ミノタウロスとヘルハウンド>やらはASTの装備でも対処できない。

精霊を打ち倒せず、雑魚以上のアンノウンを倒す事もできず、何か大きな成果を上げられず帰投したのだ。不機嫌になるのも仕方ない。

しかも、『識別名〈仮面ライダー〉』と思っている士道からは何も聞けず、さらに士道が折紙の家から逃げられないように仕掛けたトラップ(トリモチが発射されて動けなくなる)にも掛かっておらず、ついでに先日拾ったウサギのパペットが、何故か家から無くなっていた。・・・・少し気に入っていたのにだ。

もちろん折紙は士道を疑っていないし、もし士道が折紙の私物を盗んで行ったのだとしたら、まあそれはそれでアリなので、問題にするつもりはない。

と、そこで部屋の扉が開き、ASTの隊長である燎子が顔を出した。

ブリーフィングルームにいた隊員達が一斉に立ち上がり、敬礼をする。

 

「あー、いいわ。座って座って」

 

燎子は煩わしげにそう言うと、皆の前に立つ。

 

 

「さて、皆集まってるわね。ーーーじゃ、早速始めようと思うけど・・・・その前に。皆には愉快で最低な知らせがあるわ」

 

『・・・・?』

 

メンバー達が不思議そうな顔を作ると、燎子は、はあとため息を吐いた。

 

「・・・・天宮は精霊現界と、アンノウン出現が多いわりに、今一つ成果が上がってないってんでね。補充要員が充てられることになったの」

 

「補充要員・・・・ですか」

 

「ええ。バリバリのトップエースよ。顕現装置<リアライザ>の扱いにかけちゃ、世界でも五指に入るんじゃないかしら。ーーー実際、単独で雑魚以上のアンノウンと、精霊を“殺した”事があるそうよ」

 

『・・・・!?』

 

燎子の言葉に、メンバー達はざわめいた。ASTの隊員10人がかりでも手に余る精霊とアンノウンを、たった1人で倒してしまったと言うのである。

燎子は、メンバー達の予想通りの反応に肩を竦めてから、今し方入ってきた扉の方をチラッと見やった。

 

「ーーー入ってきて」

 

「はっ」

 

燎子の声に応えたのは、随分と可愛らしい声音だった。

そして再度扉が開き、1人の少女が部屋に足を踏み入れてきた。

 

『・・・・っ!?』

 

瞬間、ブリーフィングルームに並んだAST隊員達が、一斉に眉をひそめた。

何しろ入ってきたのが、中学生程度の女の子だったのだ。

後頭部で髪を一つに括り、利発そうな顔をし、左目の下にある泣き黒子が特徴的な少女だった。

 

「・・・・・・・・」

 

折紙は、ピクリと眉を動かした。彼女の顔に、見覚えがある気がしたからだ。

 

「『崇宮真那』三尉であります。以後お見知り置きを」

 

コスプレにしか見えない自衛隊常装を翻し、ベルトに“両開きの扉のようなバックル”を付けて敬礼をした。

 

「日下部一尉・・・・彼女は?」

 

隊員の1人の質問に燎子は、予想通りみたいな顔を作って口を開いた。

 

「さっき言ったでしょ。“件のトップエース様”よ」

 

『はぁ・・・・ッ!?』

 

隊員達が一斉に眉を寄せ、真那はそんな皆の反応を不思議がるように首を傾げた。

 

「どうかしたでやがりましたか」

 

なんとも奇妙な敬語で話してきた。

 

「ど、どうかって・・・・き、君、まだ子供じゃーーー」

 

隊員の1人が言うと、真那はフウと息を吐いた。

 

「何か問題がありやがるでしょうか。年齢は個人の資質に関係ねーです。ーーーそれとも、この中に1人でも、私に勝てる方がいやがるのでしょうか?」

 

別に嫌味とかではなく、ただ真実を述べるように、真那が言った。

 

「・・・・なっ」

 

そんな返しをされるとは思っていなかった隊員が目を丸くする。

 

「そうですね。この中だとーーー」

 

値踏みするように隊員達を見る真那が、折紙の方に視線を向けてきた。

 

「ーーーあなたくらいでしょうか。ほんの数パーセントでも見込みがありそうなのは」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

折紙は何を答えるでもなく、無言でその視線に対した。

 

ポカンっ。

 

すると燎子が、真那の頭を小突いた。

 

「無駄口叩くんじゃないの。一昨年の映像流すから、空いてるところにでも座りなさい」

 

「はっ」

 

真那は短く言うと、綺麗な足取りで、折紙の隣に座ると、少し顔を伏せて、蚊の鳴くような小さな声でブツブツと呟きだした。

 

「・・・・?」

 

折紙だけがそれに気づいて、耳を澄ませるとーーー。

 

「分かっているでやがりますよ、少し態度が悪かったでやがります。でも舐められないようにちょっと凄んだだけでやがりますから・・・・あぁもう反省してやがりますよ。そんな“みんな”でギャイギャイ言わなくても良いでやがります・・・・!」

 

「・・・・???」

 

見るからに通信機器を持っていないのに、まるで“誰か”と話し込んでいるような真那の態度に、折紙は小さく首を傾げた。

 

「さて・・・・と」

 

燎子や折紙を除いた他の隊員達は、燎子が壁際のボタンを操作して、天井から下がってきたスクリーンに目をやると、部屋の照明が落ちた。

燎子は手元の端末を操作して、2日前の戦闘の様子を映し出させた。

〈ハーミット〉を追いかけようとした時、アンノウン<インプ>が襲い掛かってきて、〈ハーミット〉を取り逃がし、さらに何故か〈プリンセス〉が乱入してきたのだ。

燎子は天使を顕現させた〈ハーミット〉の映像をズームアップさせると、〈ハーミット〉の前に、1人の少年の姿が確認できた。

折紙は小さく息を詰まらせた。間違いない。あれは、士道だ(ちょうど士道が変身を解除して、四糸乃と接触した時の映像だったのだ)。

と。

 

「・・・・・・・・っ」

 

隣に座った真那が不意に頭を押さえ、小さなうめきを発した。

真那は少しの間、頭痛を抑えるように側頭部に手を当てていたが、すぐにガタッ、と音を立ててその場に立ち上がった。

 

「ん・・・・? 何、どうしたのよ」

 

燎子が訝しげに声を発するが、真那は答えず、画面に映った士道を見つめて、小さく口を開いた。

 

「ーーー兄様・・・・っ?」

 

「・・・・っ?」

 

折紙は眉をひそめ、真那の顔と、頭痛を抑える時に見えた、指に嵌められた指輪を見やって、先ほどの違和感に気づいた。

この少女は、あの五河士道と、雰囲気が似ており、彼の嵌めている指輪と同じ感じのする指輪を付けていたのだ。

 

 

 

ーファントムsideー

 

「おい、ヘルハウンドが失敗したようじゃねぇか?」

 

「構わん。元々〈ハーミット〉は“奴”のついでに絶望させようとしていたに過ぎん。今回の戦闘でインプが使える事が分かっただけでも上々だ。『ワイズマン』もさして気にしてはいない」

ひと気のない夜のビルのフロア内にて。

ユウゴ<フェニックス>が、ヘルハウンドの失敗を嘲笑うように話し出すが、ミサ<メデューサ>は静かに聞き流した。

 

「でもよ、そろそろ目障りになってきたんじゃねぇか? ウィザード<指輪の魔法使い>・・・・」

 

「・・・・確かにな。しかし、今我々が優先すべきは“奴”だ。指輪の魔法使いごときいつでも始末できる」

 

ミサが冷淡に応えると、ユウゴは苛立たしげに口を開いた。

 

「あああっ! イラつくぜっ!! あんな雑魚なんざ、俺がいつでも燃えカスにできるのによぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!!」

 

ユウゴはフェニックスに変身すると、膨大な熱量を周囲に巻き散らかすと、ビル内部が炎の海に変わった。

 

ジリリリリリリリリリ・・・・!

 

けたたましく鳴り響くサイレンと、天井からスプリンクラーが起動して、ビルの炎を消火しようとするが、あまり効果がなかった。

メデューサに変身して障壁を張って防御したミサは、降りしきるスプリンクラーの水を気にする素振りもなく、イラつくフェニックスを冷徹に見据える。

 

『フェニックス。今は“奴”の追跡が最優先だ。勝手な行動は許さんぞ』

 

『~~~~っ!! 分かってるよ!!』

 

苛立たしげに返事したフェニックスは、メデューサと共にその場から消えた。

 

 

 

ー???sideー

 

深夜の天宮の大通り。満月の光が照らすその場には1人の少女がいた。

赤と黒のゴシック系のドレスを着て、その両の手には、古式の歩兵銃と短銃が握られ、足元にはーーー。

 

自分を狙って襲いかかってきた、『魔獣 グールファントム』が死屍累々と倒れており、少女の影が少女を中心に大きく広がると、グール達は影の中に沈んでいった。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

その少女は、グールが消えるのを確認すると、その口元に、三日月のように亀裂の入った笑みを浮かべ、左目が金色に輝くと、影の中に沈み、消えた。

 

 

ー『四糸乃パペット』・FINー




次回、デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚。

「わたくし、精霊ですのよ」

士道の通う学校に突然やって来た新たな精霊。

「兄様。兄様の中の魔獣と兄様に付きまとう精霊は、真那が倒しやがります!」

士道の妹と名乗る少女が『野獣の魔法使い』となる。

「行くでやがりますよ『キマイラ』達! 変~身!!」

そして遂に、フェニックスが動く。

『ようやく戦れるなぁ、魔法使い!』

士道は『最悪の精霊』とデートして、デレさせる事ができるのか?

「士道さんにお願いがありますの」

第三章 『狂三キラー』

≪これは、今までで一番ヤバいな・・・・≫

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