デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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各々の決着が着きます。


因縁の決着

ードラゴンsideー

 

士道がウェスコットに拳を叩き込もうとするその刹那の刻。

 

『カァァァァァァァァァァァッ!!』

 

『ガァァァァァァァァァァァッ!!』

 

ドラゴンはドレイクと激しい交戦を繰り広げていた。

ドレイクが己が剣『タイラント』を振り下ろすと、ドラゴンは両手にクローを展開してソレを防ぎ、口から紅蓮の炎を浴びせるが、ドレイクは炎に耐えながら蹴りで口を塞ぎ、態勢が崩れたドラゴンをにタイラントで横薙ぎに斬り裂き、ドラゴンの胸元に横一閃の傷ができる。

 

『ガフゥゥッ!!』

 

『カァァァァァ!!』

 

『グァァァァァッ!!』

 

更に魔力を込めた蹴りをドラゴンの全身に叩き込み、骨が砕ける音がドラゴンの身体から響く。

 

『ーーーーフン!』

 

ドレイクが目を光らせると、ソコから魔力のレーザーが、ドラゴンの首に向けて発射された。

 

『っっ!』

 

レーザーが当たる寸前、ドラゴンは『グラビティ』を自分にかけて、回避するスピードを上げるが、レーザー左肩と左胸(心臓に当たる部分はギリギリ外れた)を貫通し、五百円玉大の大きさの穴を作る。

 

『グハァッ!!ーーーーガァァァァっ!!』

 

激痛に悶えながらも、ドラゴンは両翼から雷と氷を纏った青と緑の竜巻を放つ。

 

『フッ!ーーーーハァァァァッ!!』

 

今度はドレイクが金色の竜巻を放つと、ドラゴンの竜巻とぶつかり合うが、ドレイクの竜巻ドラゴンの竜巻を押し返す。

 

『グゥゥゥゥゥゥゥゥ!! な、何だ、この力は!? まるで、『始原の精霊』に匹敵するぞ・・・・!』

 

『ーーーー教えてやろうか?』

 

『っ!!』

 

その時、初めてドレイクが声を発した。そして、自分の胸元から、凄まじい魔力を内包している桃色に輝く『魔宝石』か現れた。

 

『っ! それは、まさかーーーー『賢者の石』かっ!?』

 

『ああ。ウェスコットがカーバンクルに与えていた物だ』

 

『成る程・・・・! ケダモノ共‹ビーストキマイラ›に比べて多少マシ程度の力しか無い模造品に、アレほどの魔力があったのは、『賢者の石』の恩恵と言う訳か・・・・!』

 

『そう言う事だ。純粋種の魔獣‹ファントム›。それもウェスコットと言う超一流の魔術師‹メイガス›から生まれた俺様が使えばーーーーこれ程の力を生み出せる!!』

 

ドレイクが力を込めると、金色の竜巻がドラゴンの竜巻を押し返し、ドラゴンの身体を呑み込んだ。

 

『グォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

大回転しながら、雷と風刃と氷塊によって身体がボロボロになっていくドラゴン。

 

『死ねぇぇっ!!』

 

竜巻の真上から、ドレイクがタイラントで突き殺そうとした。

 

『舐める、なァァァァァァァ!!』

 

しかし、寸前で白刃取りで止めるドラゴン。

再び力の差し合いとなる2体の魔獣‹ファントム›。そんな中、ドラゴンが声を発する。

 

『ーーーー先程自分を『純粋種』と言ったな! 貴様、ウェスコットが生み出した魔獣‹ファントム›か!?』

 

『その通り! 奴は逸材だったぞ! この俺様を生み出し、さらに共生する事を望み、こんな力を与えてくれたのだからな!』

 

『はっ、あんなイカれた狂人に尽くすとは、とんだ物好きな魔獣‹ファントム›だなっ!?』

 

『貴様のそうだろう? あのような脆弱かつ凡庸極まりないウェスコットと比べれば、2流の魔法使い気取りの小僧に付き従っているとはな!』

 

ドレイクが再び目を光らせ、ソコからレーザーを乱射し、ドラゴンは急所だけは避けつつも、身体中に幾つもの穴を空けられた。

 

『グワッハァ!』

 

『フンンッ!!』

 

ダメージで力が弱まり、ドレイクが少しずつ押されていき、胸元にタイラントの切っ先が入ってくる。

 

『グゥッ!・・・・ヌゥゥゥ!!』

 

『これでーーーー終わりだぁぁぁぁ!!』

 

ドレイクが渾身の力を込めて押し出そうした。

ーーーーその瞬間。

 

『ーーーーふっ』

 

ーーーーバコォォンンッ!!

 

『グガハァァァァァッ!!』

 

突如、ドレイクの後頭部に衝撃が入り、ドレイクの意識が一瞬刈り取られ、タイラントに流れていた力が緩まる。そして、ドラゴンにとっては、その一瞬が十分過ぎる隙である。

 

『ドォラァァァァァァァァァァァ!!』

 

ーーーードゴォォォォンン!!

 

『ガハァッ!!』

 

即座に己の拳をタイラントから離し、渾身の力を込めた拳をドレイクの胸元に叩き込み、ドレイクの強固な竜の体皮を貫いた。

 

『ゲホッ! な、何が・・・・!?』

 

『ーーーー普段からの積み重ねとは、大事なものだな』

 

口から黒い血を吐き出したドレイクが、自分の後頭部の衝撃の正体を見ようと振り返るとソコにはーーーー尻尾の先端があった。

その尻尾の元を辿ると、ドラゴンのおさげとして垂れていたドラゴンテイルであった。

ドラゴンが貫通していた腕をドレイクの胴体を踏みつける勢いで引き抜くと、風穴が空いた胴体から黒い血が噴水のように流れた。

 

『グガハッ! まさか、こ、こんな・・・・! くだらん小細工で・・・・!』

 

『だらしない奴だな。貴様の言った脆弱な凡庸でド底辺極まりない、3流の魔法使い気取りの鼻垂れ童貞小僧ならば、先程のド突きで意識を失う事などーーーー無かったろうよ!』

 

ーーーードンッ!!!

 

『グワバっ!!』

 

ドラゴンの右脚に魔力を集中させると、回し蹴りでドレイクの首と胴体を、永遠に分けた。

 

ーーーーチュドォォォォォォォォォォォォンン!!

 

ドレイクの首と胴体が大爆散するのを確認したドラゴンは、致命傷とも言える重傷を負っているのだが、直ぐに士道の元へと戻っていった。

何故なら、自分は澪にしなければならない事があるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー真那sideー

 

そしてカーバンクルを相手にしているビーストHA‹真那›と輪島は。

 

[チェイン ナウ!]

 

「はぁ!」

 

カーバンクルが生み出した宝石が、まるで珊瑚礁か、ヒカリゴケのように自分達の身体を覆い、身体を動けさせられ、輪島は両足と右腕を覆われ動けなくされ、ビーストHA‹真那›の両足も覆われて動けなくされそうになったが、輪島が魔力の鎖でカーバンクルを手足を拘束した。

 

「真那ちゃん! 新作リングだ! 使え!!」

 

「了解!!」

 

[ハーイパー! トーテムバスター!!]

 

ビーストHA‹真那›が『ビーストキマイラ達が縦に重なったリング』を押し込むと、手脚のアーマーとなっていたキマイラーズが宝石を破って飛び出し、まるでトーテムポールのように下から、バッファ、ドルフィン、カメレオン、ファルコと重なり、カメレオンから舌が伸ばされミラージュマグナムに巻き付いてミラージュマグナムを収納すると、ファルコの頭部がカーバンクルに向かい、まるで肩で担ぐバズーカ砲のようになり、ファルコの口が開いて、ソコに魔力を充填、収束されていく。

そして臨界となった。

 

「『トーテムバスター』!!」

 

ーーーーグガァアアアアアアアアアアアアア!!!

 

ビースト‹真那›が引き金を引くと、凄まじい魔力の本流が放たれ、それがキマイラーズの頭部となって、カーバンクルの身体を喰らい尽くす。

 

『バカ、な・・・・! 旧式が、アーキタイプふぜい、が・・・・!』

 

「アーキタイプでも、魂のないお人形なんかに、負けねーですよ!」

 

ーーーードゴォォォォォォォォォォンン!!

 

カーバンクルが爆散すると、ビーストの魔法陣が現れ、ビーストドライバーに吸い込まれていった。

 

「ごちそう、『さまでした!』」

 

真那と共に、ビーストキマイラが叫んだ。

 

 

 

 

 

ー琴里sideー

 

「やったわね、真那!」

 

『シャァァァァッ!!』

 

「っ! メデューサ・・・・!」

 

ワイズマンと呼んで忠誠を誓っていたカーバンクルが、たった今真那に倒されたというのに、構わず自分に向かって、アロガントを振り下ろしてくるメデューサに、ハルバードの形となった〈灼爛殲鬼‹カマエル›〉で迎撃する琴里。

 

『シャァァァァ! シャァァァァ!!』

 

「くぅーーーーっ」

 

精霊化した自分の破壊衝動に呑まれないように、意志を強くする琴里を、まるで獰猛な蛇のように執拗な攻撃を仕掛けてくるメデューサ。

 

「メデューサ・・・・」

 

しかし、琴里はそんなメデューサに、憐れんだ視線を向けていた。

敵の魔獣‹ファントム›にそんな感傷を抱くなど、愚の骨頂である事くらい琴里も重々理解している。しかし、琴里はメデューサから目を逸らす訳にはいかなかった。

メデューサがこの世に生まれた遠因となり、メデューサの『ゲート』の人生を歪めた原因であり、5年前の『天宮大火災』を引き起こした元凶として、自分はメデューサに向き合い続けなければならない『責任』があるからだ。

 

「メデューサ・・・・可哀想ね、あなたは」

 

『フシュゥゥゥゥ〜〜っ!!』

 

もはや琴里の言葉すら届かなくなってしまった因縁の相手に、琴里は静かに呟く。

 

「ーーーー正直に言って、あなたの中にまだ、『稲森美紗』の意識が僅かでも残っていて、私の事を憎んでいるのなら、この手足の1本か2本くらいは、くれてやっても良いかな、って思ってたわ。ーーーー士道達は許さないでしょうけどね・・・・」

 

『シャァァァァァァァァァァ!!』

 

ほんの一瞬だけ、フッと笑った琴里に、メデューサの髪の蛇達がその口に牙を大きく伸ばして、琴里の白い肌に深く喰らいついて、魔力の毒を流そうとした。

だがーーーー琴里は、すぐにその双眸に強い意志を宿らせる。

 

「でも、ワイズマン、いいえ、カーバンクルとウェスコットに利用され、記憶を壊された操り人形へと落ちぶれたあなたにくれてやる程、この命は安くないわっ!!」

 

全身に焔を纏い、噛み付いた蛇達を燃やし、その蛇達を伝って、メデューサの全身を燃やした。

 

『ギャァァァァァァァァァァァァァァァァッッ!!??ーーーーーーーーあ、あぁっ・・・・?』

 

メデューサは全身の焔を見ると、アロガントを手放し、何故か、自分の身を灼こうとする焔を見据えていた。

 

「ーーーーメデューサァァァァァァァ!!」

 

『・・・・・・・・』

 

ーーーーザシュッ!

 

琴里は〈灼爛殲鬼‹カマエル›〉の刃をメデューサの腹部に叩きつけると、そのまま渾身の力で振り抜き、メデューサの身体を2つに断ち切った。

 

「・・・・・・・・」

 

『・・・・忘れるな・・・・貴様の、『罪』・・・・を・・・・』

 

「っ!」

 

琴里はメデューサの方を振り向くと、分かたれたメデューサの上半身と下半身は焔に包まれ、その姿を焼失していく。

その際、琴里は見えた。炎の中にーーーー“1人の女の子”がいたのだ。

蹲って泣いていた女の子が顔を上げると、その視線の先に、自分と同じ容姿をした妹がおり、その女の子の手を取り立ち上がらせると、姉を連れて走り出す。そして走る先にいたのはーーーー2人の両親らしい男女だった。その女の子は顔を喜色に染めて、妹と共に両親の胸に飛び込んだ。

もうお互いに離さないと言わんばかりに涙を流しながら喜び合う家族は、そのまま炎と共に消えた。

 

「・・・・・・・・」

 

琴里は戦場であるにも関わらず、涙を流した。流さずにはいられなかった。

自分の脳が生んだ都合の良い妄想が、炎の中の幻想として現れた陽炎なのかも知れない。だが、それでも、思ってしまう。彼女は、稲森美紗は、救われたんだとーーーー。

 

「琴里・・・・」

 

事の顛末を見ていたマリアの1人が声を掛けると、琴里はすぐに涙を霊装の裾で拭い取ると、顔を引き締める。

 

「マリア。まだ終わっていないわ。行くわよ!」

 

「はい」

 

視線の先には、ドラゴンがウェスコットの魔獣‹ファントム›、ドレイクを抑えて空の向こうに飛んでいった。

ドラゴンがいない今、自分達が士道をフォローしなくてはならない。

そしてふと、琴里の脳裏に、メデューサの今際の際の言葉がよぎる。

 

【・・・・忘れるな・・・・貴様の、『罪』・・・・を・・・・】

 

「(ええ。忘れないわメデューサ。稲森美紗の事も、彼女の家族の事も、5年前の被災者達の事も。そしてーーーーあなたの事も)」

 

奇妙な因縁によって生まれた宿敵に、琴里はそう思うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ー澪sideー

 

「・・・・・・・・っ!」

 

ーーーー震動が、澪の全身を通り抜ける。

とは言え、〈輪廻楽園‹アイン・ソフ›〉が〈永劫瘴獄‹ベリアル›〉に競り負けた訳でも、敵に攻撃を受けた訳でもない。

空の中心。2つの『魔王』を従え浮遊していたウェスコットを、士道が天使の力を以て殴りつけたのだ。

その凄まじい衝撃は空気を伝い、〈輪廻楽園‹アイン・ソフ›〉と〈永劫瘴獄‹ベリアル›〉が形作った鳥籠の中を駆け巡った。周囲にいた精霊達も、ハッとした様子で士道の方を見やる。

 

「ーーーーーーーーかーーーーっ、はーーーーッ」

 

ウェスコットの苦悶が響くと同時、彼の背後に屹立していた大樹が、頭上に浮遊していた花が、ギシリと軋みを上げた。〈輪廻楽園‹アイン・ソフ›〉とせめぎ合っていた空間に歪みが生じ、バラバラと崩れ落ちていく。

ーーーー落葉。絶対なる魔王の至る所に、次々と罅が入っていった。

とは言えソレも当然だ。何しろ、天使10体分、そして澪の力を込めた1撃を叩き込まれたのだ。如何にウェスコットが始原の精霊の力を持ったとは言え、ただでは済まない。

 

「ーーーーーーーー」

 

士道が血の滲む拳を握り直し、皆に勝利を示すように天に突き上げる。

 

「おお・・・・っ!」

 

「士道!」

 

「きゃぁぁぁぁ! だーりぃぃぃぃんっ!」

 

「・・・・ふう」

 

辺りから、精霊達の声が響き渡る。澪もまた、〈輪廻楽園‹アイン・ソフ›〉にかかっていた負荷が軽減するのを感じて、小さく息を吐いた。

だがーーーー。

 

「ふ・・・・ははーーーーーーーー、は、ははーーーー、見事だーーーーイツカシドウ。だがーーーー“一歩足りなかったようだね”」

 

「なーーーー!?」

 

前方から響いたウェスコットの声に、士道はハッと肩を震わせた。

全身に衝撃を叩き込まれ、口と鼻から血を流したウェスコットが、忘我の淵にいるような調子で、喉の奥からその名を零したのである。

 

 

 

 

「ーーーー〈■■■‹ケメテイエル›〉ーーーー」

 

 

 

 

「ーーーーーーーーっ」

 

瞬間。

ゾワリ、と澪の全身を悪寒が襲った。その『魔王』の権能を、恐ろしさを、誰よりも知っているのは、他ならぬ澪自身なのだから。

しかもウェスコットがその名を呼ぶと同時、彼の体の周りに、嵐のようなマナの奔流が渦を巻いていった。ーーーー身体に深刻なダメージを負った状態で『最後の魔王』を顕現させたが故の、臨界状態。あんな状態では、ウェスコット自身が魔王を御しきれるかさえ怪しいものだった。

ーーーー瞬き程度の間に、思考を巡らせる。『自らの持つ権能』、『士道の天使』、『精霊達の助力』、『ウィザードラゴンの力』、どれをどう使えばこの状況を打破できるのか考える。ーーーーどうすれば士道を無事に帰せるのかを考え抜く。

それは思えば久方ぶりの感覚である。30年前、真士の亡骸を前にした時のような思考のスピード。

けれど違う。あの時の自分には『絶望』しかなかった。だがーーーー。

 

「(今は、まだ、士道が生きている。まだ何とかなる。だが一体何をすれば良いんだ。何をーーーー)」

 

と、ソコで士道の背を見た澪は、スウッと脳の思考が染み渡るかのような感覚を覚えた。ソレと同時、経路‹パス›を通じて共有された、士道の未来での記憶が過ぎる。

士道が時間遡行をする前の歴史。澪がその目的を達する寸前まで至った世界。澪はその未来の自分自身の姿を、士道の記憶を通じてみていたのだ。

けれど、いざ真士を取り戻そうとしていると言うのに、その澪はーーーー満たされているようには、見えなかった。

 

「ーーーー」

 

嗚呼、そうだ。

『答え』はーーーー既に示されていたのかも知れない。

 

 

 

 

 

ー士道sideー

 

「な・・・・」

 

空の中。士道は愕然と目を見開いていた。

全身を悪寒が凄まじい勢いで通り抜ける。周囲の温度が一瞬にして下がるかのような錯覚。

その感覚には覚えがあった。未来の世界の記憶。澪の力を奪い、澪に肉薄した十香に澪が用いた最後の天使。

人も、精霊も、魔獣も、全てを零‹ゼロ›に帰してしまう無の天使ーーーー〈 ‹アイン›〉。

士道の予想を示すように、ウェスコットの前に闇が集い、植物の種子のような、小さな塊が形作る。

澪がソレを顕現させた際には光りに包まれてその全貌を見て取れなかったが、どうやらそ正体はこんな小さな塊だったようだ。

そんな、不思議な感慨に肺腑を満たすと同時に、その場から逃れようとする士道。だが、咄嗟の事にーーーーまるでその小さな種子に縛られてしまったかのように、身体が動かない。

 

「あーーーー」

 

直感する『死』。仮に飛び退いた所で、その空間ごと消し去られてしまうのではないかという予知じみた感覚。

 

「ーーーーーーーー!」

 

「・・・・・・・・!」

 

後方で、精霊達が「逃げろ!」と、叫んでいるのが分かる。しかし、ソレでも動けない。仮にドラゴンがいれば、すぐにド突きで正気に戻してくれるが、今はいない。

そうこうしている内に、黒い種子が発芽するかのように、ジワリと空間に広がっていった。

 

「あーーーーーーーー」

 

士道は、そんな声のみを残した、闇に呑み込まれようとしーーーー。

 

 

 

「ーーーー駄目だよ、士道。君には、待っている子達がいるんだから」

 

 

 

次の瞬間、そんな声と共に、グイと後方に引っ張られた。

 

「・・・・っ!」

 

一拍置いて、理解した。遥か後方から伸びた〈輪廻楽園‹アイン・ソフ›〉の枝が、自分の腹部に絡みついていた。

そして、そんな士道と入れ替わるように、1人の精霊がウェスコットに向かっていった。

ーーーー澪だ。

 

「澪・・・・!? 一体何を!?」

 

士道が叫ぶと、澪は士道の方を見ながら告げる。

 

「ーーーー霊力が暴走している。アレを放置しておいたら、辺り一帯を消し飛ばしてしまうよ。それこそ、余波だけで『ユーラシア大空災』の比じゃあない。ーーーーでも、〈

‹アイン›〉で相殺して対消滅を起こせば、あるいはーーーー」

 

「なーーーー」

 

澪の言葉に、士道は心臓が握り潰させるかのような感覚を覚えた。

澪の声から、表情から、ソレが何を意味するかが察せられてしまったのだ。

 

「何だよソレ・・・・ッ! そんな事したら、お前はーーーー!」

 

「・・・・・・・・」

 

澪は、何も答えない。だが構わず、士道は悲鳴じみた声を張り上げた。

 

「ふざけるな・・・・何でだよ! 真士だって言ってたじゃないか! 澪に、もっと世界を見せたいってーーーー! なのに、何でーーーー」

 

士道は叫ぶと、澪を止めるように手を伸ばした。その手は澪の身体にこそ届かなかったが、その霊装の端を辛うじて掴んだ。

が、その瞬間、士道の触れていた部分が、光と共に溶け消えていった。まるで、霊力が封印された時のように。

 

「ーーーーっ!」

 

士道が息を詰まらせると、澪はフッと口元を緩めた。

 

 

 

「ーーーー士道。君は本当に素敵だよ。私は、君の事が大好きだ」

 

 

 

そして、そう言って、冗談めかすようにパチリと片目を閉じる。

 

 

 

「ーーーーただし、シンの次にね」

 

 

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 

『ーーーーフラれたならば潔く去るぞ・・・・!』

 

澪の優しげな微笑みを見て、また叫びそうになった士道の身体をドラゴンが抱えて、光速で後方へと離脱される。

否、他の精霊や真那や輪島達もまた、〈輪廻楽園‹アイン・ソフ›〉の枝によって引き寄せられ、半ば強制的に離脱させられる。

そして皆を引き寄せた〈輪廻楽園‹アイン・ソフ›〉は、そのまま大きくその姿を変容させると、先程澪と士道を包みこんだ時のように、〈フラクシナス〉ごと士道を包みこんでいった。

恐らくはーーーー『天使』と『魔王』の激突の余波から、士道達を守る為に。

 

「ーーーー澪ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーッ!」

 

士道は、〈輪廻楽園‹アイン・ソフ›〉によって閉ざされる夜空の景色に向かって、遠く、遠く、その名を呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

ー澪sideー

 

激流の如く渦を巻くマナの流れの中心でーーーー澪とウェスコットが対峙する。

ウェスコットは澪の姿を認めると、口元の血を拭う事もなく笑みを浮かべてきた。

 

「・・・・〈デウス〉か。介添人が君とは豪華な事だ。私としては、ここでイツカシドウを消しておきたかったのだがね」

 

澪はそんな言葉を目を伏せながら聞くと、ポツリと零すように返した。

 

「きっと、コレからの世界にいてはいけないんだ。君も、私も。ーーーー丁度いいじゃない。厄介者を纏めて処理できるだなんて」

 

「は、は、はーーーー」

 

ウェスコットは大仰な調子で肩を揺らすと、額に手を置き、天を仰いだ。

 

「ーーーー何処だ? 一体何処で私は間違えた? 魔術の秘奥を漁り、精霊術式に辿り着き、顕現装置‹リアライザ›を作り上げ、魔獣の禁術を用いたり、秘匿の魔宝石も使ったと言うのに。ーーーー今こうして、始原の精霊の力を手にしたと言うのに」

 

ウェスコットの言葉に、澪はスッと目を細めた。

 

「・・・・そもそも精霊‹わたし›等、生み出すべきではなかったんだ。顕現装置‹リアライザ›もね。こんな力、人間には過ぎたものだよ」

 

ーーーー澪・・・・。

 

「・・・・・・・・!」

 

瞬間。

澪の背後からそんな声が聞こえてきて、後ろから澪を優しく抱き締めた。その背後の声の主を見て、ウェスコットですら目を見開いた。

澪は背後にいる声の主を見て、目を見開き、目に涙を浮かべた。

だってソレはーーーー澪が30年もの間、焦がれてやまなかった声だったのだから。

 

「シンーーーー」

 

 

 

 

『ーーーーああ、ゴメンな、澪。随分長い間待たせちまった』

 

 

 

澪がその名を呼ぶと、その姿を現した。ソレはまさに、『崇宮真士』、その人であった。

 

「・・・・何故、君が生きている? タカミヤシンジ?」

 

ウェスコットも、訳が分からないと言わんばかりであった。

 

『ーーーーうるさい。今俺と澪の2人で話をしているんだ』

 

「ーーーー私とシンの時間の邪魔は、やめて貰うよ」

 

澪は涙を堪えなから真士と重ねた右手を前に突き出すと、真士と共にウェスコットに言った。

 

「ーーーー君は私の好みではないんだ」

 

『ーーーー人の恋路を邪魔する馬鹿は、とっとと地獄に逝け』

 

2人の言葉に、ウェスコットは呆然とするように目を丸くし、

 

「・・・・は、はは、ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははーーーーっ」

 

やがて可笑しくして仕方無いと様子で、笑い始めた。

 

「成る程、成る程。ソレでは仕方がないな」

 

ウェスコットは笑い疲れたように身体を揺らめかせると、ゆっくりと澪のように右手を前に向けてくると、澪と真士は最後の天使の名を共に唱えた。。

 

 

 

「ーーーー【 ‹ケメテイエル›】」

 

『「ーーーー〈 ‹アイン›〉」』

 

 

 

次の瞬間ーーーー『無』と『無』の力が、ぶつかり合った。

 

 

 

 

 

 

 

ードラゴンsideー

 

光速で離脱した士道とドラゴンは、〈フラクシナス〉の外装に着地し、その船体を〈輪廻楽園‹アイン・ソフ›〉に包まれていく。

 

「シドー!」

 

「士道さん・・・・!」

 

〈フラクシナス〉の外装に下ろされた精霊達が、士道とドラゴンの元に集まる。

が、士道はそんな精霊達に構わず、ドラゴンの胸元を掴んで叫ぶ。

 

「ドラゴン出せ! 俺をここから出せ!! 澪が! 澪(バキッ)がはっ!」

 

必死にドラゴンに縋る士道に、輪島が殴り飛ばした。

 

「ーーーー士道。よく見ろドラゴンを」

 

「っ・・・・!?」

 

『っ!?』

 

士道も、そして精霊達のドラゴンの身体を見て目を見開いた。

身体に大きな横一閃の傷や、幾つもの五百円玉大の穴が貫通し、全身も打撲創や切創だらけで、今にも身体の何処かが千切れても不思議じゃない程の重傷だった。

ほんの数分にも及ばない時間帯で、まるで何十時間もの決死の戦いを繰り広げてきたと言わんばかりの状態である。コレで倒れるどころか、片膝すら突かないのは、ひとえに、ドラゴンの精神力が為せる事だろう。

 

『・・・・ゴフッ』

 

しかし、口からも血のようなものを流れている。何とか回復させようとしているが、かなりの時間を有しなければならないようである。

 

「何で・・・・これじゃ、澪が・・・・!」

 

何もできない無力感が士道に、否、精霊達に襲い来る。

 

『そうか・・・・全ては、我が生まれたのは・・・・この時の為にーーーー』

 

が、しかし、ドラゴンはまるで悟ったかのように呟くと、満身創痍の身体を動かし、両の手の平を前面に押し出す。

 

「ドラゴン・・・・何をするのだ?」

 

十香の言葉に、全員がドラゴンに目を向けると、ドラゴンは全身に魔力を迸らせながら、『ある魔法』の名を口にした。

 

『『アバター』!』

 

と、そう呟いた瞬間、ドラゴンの手の平から、濃密な魔力と霊力の混合エネルギーが放出され、ソレがアメーバのように不形容な姿をしていたが、徐々にソレがーーーー人間の形となっていった。

 

「これって・・・・」

 

何故か分からなかったが、士道がソレが『何者』なのか、分かりかけた。そして段々形となり、その身体には澪が女神のような装いなら、こちらはローマの神のような装いをした少年ーーーーそれも、士道に良く似た少年だった。

 

「アレは・・・・まさか・・・・」

 

「兄様・・・・?」

 

士道の言葉を紡ぐように、真那がボソッと呟いいた。

そうソレはまさにーーーー崇宮真士、その人だった。

ドラゴンは持てる力の全てを使い切ったようによろけながらも、崇宮真士に向かって声を張り上げる。

 

『ーーーーーーーーさぁ、行くんだ! 『彼女』の元に!!』

 

『・・・・・・・・(コクン)』

 

『崇宮真士』はドラゴンの言葉に頷くと、一瞬だけ真那を一瞥してから、小さく笑みを浮かべて声を発する。

 

『ーーーー幸せになれよ、真那』

 

「っっっ!!?? 兄さーーーー」

 

真那が目を見開いて声を返そうとしたが、ソレより早く、『崇宮真士』は飛んでいき、〈輪廻楽園‹アイン・ソフ›〉の1部が開き、ソコから外に飛び出して行く。

すると、〈輪廻楽園‹アイン・ソフ›〉で覆われた空が、まるで〈フラクシナス〉の艦橋のメインモニタのように、外の映像を見せると、ウェスコットと対峙する澪を背中から抱きしめる真士。そして真士の姿を見ると、士道ですら見なかった、否、澪を知る狂三や、令音を知る琴里達ですら見た事がないくらい、幸せに満ち満ちた貌をする澪だった。

 

「・・・・どういう事なんだ? ウィザードラゴン?」

 

唖然となる士道達に変わって、輪島が聞くと、ドラゴンは小さく呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『簡単な事だ。我はーーーー崇宮真士から生まれた魔獣だったのだ・・・・』




次回、物語最大の謎である。ウィザードラゴンと崇宮真士の事を話し、第二十章が終わります。
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