デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
ー夕弦sideー
「反応。くーーーー」
「へ・・・・?」
夕弦が眉根を寄せながら身を捻り、【縛める者‹エル・ナハシュ›】を縦横に走らせて自分の身を鎧う。
一拍置いて、七罪は漸く気付いた。ーーーー夕弦を攻撃した者の正体に。
「ほう、避けたか。だが褒めはせぬぞ。我が半身ならば、これくらいの攻撃で沈む筈がないからな!」
高らかに言って、その場に現れた少女が、顔を得意げな笑みの形にする。ーーーーその、夕弦も瓜二つの顔を。
そう。夕弦の双子の姉妹にして、夕弦と同じ天使の片割れを持つ精霊・耶俱矢である。
無論、耶俱矢の夕弦と瓜二つのスタイルの良さをしていながら、大きな夕弦と違い、普通サイズの「なんか言った!?」ーーーー形の美しい胸をした身体を、これまた夕弦と同じく拘束具のような霊装で身を包み、巨大な突撃槍〈颶風騎士‹ラファエル›〉【穿つ者‹エル・レエム›】で以て夕弦を攻撃したのである。
「応戦。意外ですね。耶俱矢が七罪を助けるとは」
「は! 勘違いするな。我は、夕弦が獲物を前に油断していないかを確かめてやっただけの事。それにーーーー」
耶俱矢が【穿つ者‹エル・レエム›】の先端を夕弦に向けながら、ニッと微笑む。
「ーーーー夕弦を打ち負かした時、他の精霊から受けたダメージが原因で負けたと言う言い訳をされては敵わぬからな!」
耶俱矢の言葉に、夕弦がフッと口元を緩めた。
「愉快。少し会わない間にユーモアのセンスが磨かれたと見えます。ーーーーいいでしょう。相手をしてあげます。七罪は耶俱矢を倒した後にーーーー」
と、地面の方を見やった夕弦がソコで目を丸くする。耶俱矢に気を取られていた隙に、ステルス能力の長けた七罪が姿を消していた。
「呵々! どうやら逃げられたようだな!」
「・・・・悔恨。耶俱矢のせいです。この鬱憤は、耶俱矢を華麗に葬り去って晴らす事にします」
「面白い、やってみせよ。ーーーー或美島で付けられなかった決着、今こそ付けてくれるわ!」
「・・・・提案。どうでしょう耶俱矢。士道への告白権とは別に、夕弦から1つ、勝者の特権を出そうと思います」
「なぬ?」
「解説。簡単に言えば、夕弦達八舞だけの決め事です。八舞の勝負で勝って優勝した方が、『士道へ告白』だけでなく、さらに、『負けた方に何でも言う事を聞かせる権利』を得るのです」
「ほう」
耶俱矢が夕弦の提案を面白そうと思い、目をキランと光らせた。
「ーーーー良かろう! 士道への告白と夕弦が我の命令に聞くとは、面白いではないか! 我が勝てば今度こそ我を姉と呼ばせてくれるわ!」
「同意。夕弦が勝ちます。勝って士道に告白し、耶俱矢共々士道を愛してあげます」
「ほう。夕弦、中々洒落た事をーーーー」
「補足。そして、士道と耶俱矢の2人と共にベットインします」
「ーーーーん?」
と、夕弦の言葉に、少し照れ臭い顔をした耶俱矢が、フリーズベンドした。しかし夕弦は止まらず、更に言葉を続ける。
「奥義。そして士道をマスター折紙伝授の(ピー!)で(ピー!)して、(ピー!)を(ピー!)し、夕弦無しでは(ピーー!!)できない身体にします」
「ちょっ! ゆゆゆゆ夕弦!?////////」
フリーズベンドから回復した耶俱矢が顔を赤くして声を発するが、夕弦は止まらない。
「野望。そして耶俱矢も勿論(ピー!)して、耶俱矢の(ピー!)を士道に(ピー!)してもらい、夕弦が(ピー!)を(ピー!)して、耶俱矢の(ピー!)に(ピー!)し、存分に(ピー!)した後は、最終的に士道と共に耶俱矢を(ピーーーー!!)です」
「なっ、ななっ、ななな何言ってんのよ夕弦!? いや、マジで何言ってんのっ!!??////////」
耶俱矢が【穿つ者‹エル・レエム›】で身体を隠し、貌を熟したトマトか塗り立てのポストのように真っ赤っ赤にして、カッカッカ、と怒鳴り声をあげるが、夕弦は決意を込めた瞳で耶俱矢を見据える。
「決意。何を言うのですか耶俱矢。勝者の特権です。折角『 鬼の保護者‹ドラゴン›』がいない今こそチャンスです。必ず夕弦が耶俱矢に勝利し、このバトルロイヤルにも優勝し、士道と耶俱矢を夕弦無しでは満足できない身体にしてあげますよ」
「そんなんゴメンだわーっ!! 絶対負かしたるからね! 『頼りになる保護者‹ドラゴン›』がいない今! 私と士道の貞操を守る為にも! 絶対に夕弦を優勝させないからねーっ!!」
耶俱矢が疾風の天使を構えて、まるで最終決戦に赴くような覚悟で夕弦に巨大な突撃槍の切っ先を向けた。
「拒否。いいえ、必ず夕弦が優勝し、耶俱矢と士道を骨の髄まで愛してあげます!」
「だからそんな愛し方はイヤだっての!!」
耶俱矢と夕弦が身体に風を纏わせ、同時に空を蹴る。
2つの暴風はぶつかり合い、絡み合い、辺りに破壊を撒き散らせながら、空へと消えていった。
ー七罪sideー
ーーーー八舞姉妹がいなくなってから数分後。
「・・・・・・・・・・・・・・・・ぷはっ」
周囲の安全が確認された所で、ベコベコになってしまった地面に横たわっていた街灯が淡く輝きーーーー七罪の姿へと変貌していった。
如何に耶俱矢に気を取られていたからと言って、夕弦の作った風の壁がある以上、七罪があの場から逃げられる筈はない。七罪は一瞬の隙を衝き、〈贋造魔女‹ハニエル›〉で壊れた街灯に変身していただけだったのである。
「た・・・・助かった・・・・」
七罪はブワッと汗を垂らしながら息を吐くと、他の精霊に見つからぬよう、コソコソと林道に走っていった。
ー二亜sideー
「(『情報を制する者は世界を制する』。なぁんて言葉があるし、ソレに異を唱えるつもりは無いし、実際ある意味では正しいとも思っているんだけどさぁ。ーーーーどんだけ情報を握っていてもどうしようも無い事もあるじゃんかよ〜・・・・)」
自然公園の端で木陰に隠れた二亜は、渋い顔を作りながらそう思った。
「んー・・・・どうしたもんかにゃあ・・・・」
書の天使〈囁告篇帙‹ラジエル›〉の紙面を指でなぞりながら、大きな溜め息を吐く。先程から天使を使って皆の動向を探っているのだがーーーー調べれば調べる程、絶望的な戦力差を突きつけられてしまうだけであった。
「うっわ何さ妹ちゃんとオリリンの戦い。ほぼ怪獣王と三つ首の金竜による怪獣大戦争じゃん。かぐやんゆづるんもやっべぇ。こんな中に参戦するのなんて、ミキサーの中にパンイチでダイブするようなもんじゃん・・・・」
等と呟きながら、額に脂汗を滲ませる。
確かに〈囁告篇帙‹ラジエル›〉は規格外の力を持った天使だ。この世のありとあらゆる事象を『識る』事のできるその権能は、何の冗談でもなく世界のバランスを崩しかねない。
けれどソレは天使の権能を総合的に見た場合の話であって、単純な殴り合いっことなると、話は変わってくる。
恐らく二亜自身の素の戦闘能力は、精霊の中でも1、2を争う程に低い。〈囁告篇帙‹ラジエル›〉の力で皆の力量や動向のつぶさに知る事が出来たとしても、=‹イコール›ソレで倒せる訳では無い。
〈囁告篇帙‹ラジエル›〉の権能である『未来記載』も、かなりの時間と手間がかかる上、完全な霊装を顕現した精霊に十全の効果を発揮するとは思えない。となると、僅かでも二亜に勝ち筋があるとすればーーーー。
「・・・・何ですか、その卑屈な小悪党のような目は」
二亜がチラッと視線を送ると、隣に立ったマリアが、胡散臭いものを見るような半眼で返してきた。
そう。先程から二亜の隣には、マリアが腕組みしながら控えていたのである。とは言え、態々〈フラクシナス〉から連れてきた訳では無い。〈囁告篇帙‹ラジエル›〉を使って、マリアを“もう1人実体化”させたのだ。マリアとしては意思を共有する、謂わば子機のようなものである。
マリアは〈フラクシナス〉のAIだ。が、その身体を実体化するに当たって〈囁告篇帙‹ラジエル›〉の権能を使用している為、半分は二亜の能力でできていると言っても過言ではないのだ。
「ーーーーなら、アタシを手伝ってくれても、レギュレーション違反にはならないよねぇ・・・・?」
二亜は目をパチパチさせながら“しな”を作って、マリアにしなだれかかろうとした。が、手が触れる寸前でマリアが1歩身を引き、ソレをかわす。
「確かにそうかも知れませんが、その作戦には1つ、『大切なもの』が欠けています」
「え? 何?」
「私のやる気です。ーーーー何故私が好きこのんで二亜の手伝いなとしなければならないのですか」
マリアが不機嫌そうな顔で吐き捨てるように言ってくる。二亜は不満げにブンブンと手を振った。
「えー! 良いじゃんかちょっとくらい手伝ってくれてもー! 念願のリアルボディを手に入れられたのはアタおかげでしょー!?」
「訂正を求めます。二亜ではなく〈囁告篇帙‹ラジエル›〉のおかげです」
「アタシとラジえもんは少年とドラくんと同じ一心同体だしー!? そんな事言ってると実体化の為の霊力貸してあげないぞー!」
「ご自由に。現在〈バンダースナッチ〉の技術を応用した自律稼働型端末の開発も進めています。〈囁告篇帙‹ラジエル›〉程の精度とは行きませんが、時期に顕現装置‹リアライザ›のみで皆と触れ合う事が可能となるでしょう。ーーーー二亜が1人で何処まで戦えるか見物です。骨くらいは拾ってあげましょう」
「ん、んもー! 小粋な二亜ちゃんじゃないと、なジョークじゃーん! マリアちゃんたら真面目ちゃんなんだからぁ☆」
二亜は頬に汗を垂らすと、人差し指でマリアの鼻をチョンとつついた。
「・・・・全く、情けない限りですね。まるで普段から士道の『飼い主』をしているドラゴンの気持ちが今なら理解できますよ」
するとマリアはくすぐったそうに眉根を寄せた後そう言うと、ハアと溜め息を吐いてきた。
「仕方ありません。少しだけ力を貸してあげます」
「! マジで!?」
二亜が目をキラメーイと輝かせながらズイと身を乗り出すと、マリアはそんな二亜の顔を手で押さえながら続ける。
「ただし、『条件』があります。『優勝賞品』である『士道への告白権』。勝利の暁には、私もその権利をいただきます。ーーーー私を『二亜の1部である』と言う解釈で使おうと言うのなら、その権利も認められて然るべきでしょう」
「えっ、マリアも少年への『告白権』、欲しいの?」
マリアの言葉に、二亜は目を丸くした。
「いけませんか?」
「い、いや・・・・駄目じゃないけども。なんて言うつもり?」
「そうですね。ーーーー『貴方の脳をデータ化して永遠に一緒にいたい』とか」
「こわっ! 実現可能っぽい所が余計こわっ!」
「小粋なマリアじゃないと、なジョークです。冗談が通じない人ですね」
先程の二亜の言葉を真似るように、マリアが言ってくる。どうやら意趣返しのつもりだったらしいのだが・・・・目が笑っていないのが少し気になった。けれど、あまり指摘してはいけない気がしてならなかった。
「コホンーーーーとは言え、二亜」
と、マリアが話題を変えるように咳払いをする。
「その協定自他あ、無駄になる可能性が高いです。仮に私が助力をしたからと言って、ソレだけで勝てる程、精霊は甘くありません」
「え? いやまあ、そりゃそうかも知れないけど・・・・」
「確かに〈囁告篇帙‹ラジエル›〉は、非常に強力な天使です。諜報目的としてならば『最強』と言っても良いでしょう。ですが、その権能も完全無欠ではありません。相手の位置を常に把握しながら、私でヒット&アウェイを繰り返すのが常道です。二亜自身は決して表にではいけません。精霊とかち合った瞬間、終わりだと思って下さい」
「ちょいちょいちょいちょいちょーい、突然どうしたのさマリア。始まる前からそんな弱気なーーーー」
二亜が眉を顰めながら言うと、マリアは表情を変えないまま、ちょいちょい、と二亜の後方を指差した。
「ん・・・・?」
二亜はその指の先で追うようにグルリと後方を向きーーーー。
「ーーーーふむん。話は終わったかの、二亜、マリア」
ソコに現れた少女の姿を見て、暫しの間身体を硬直させた。
琴里達くらいの小柄な体型なのに、出る所はとても出ているトランジスタグラマーな肢体に女仙を思わせる霊装を纏った、金色の長い髪をした少女である。右手に鍵のような形をした錫杖を握り、左手を腰に当てながら、二亜を悠然とした調子で眺めてきている。どうやら律儀に、二亜とマリアの会話が終わるのを待っていたらしい。
ーーーー星宮六喰。その少女の名と存在を認識した瞬間、二亜は全身にブワッと汗が噴き出すのを感じた。
「む・・・・ッ、むむむむむムックちん・・・・!? 何でここにーーーー」
言いかけて、二亜はハッと息を詰まらせた。
確かに先程皆の位置を調べた時、六喰は遥か離れた場所にいた。けれど、
空間に『孔』を空ける〈封解主‹ミカエル›〉にかかれば、距離なんて壁は無いに等しい。その気になれば地球から月面に行く事すら可能だ。正に、〈囁告篇帙‹ラジエル›〉の天敵とも呼べる権能である。
だからこそ二亜は、〈囁告篇帙‹ラジエル›〉で常に彼女の動きを把握していなければならなかった。〈囁告篇帙‹ラジエル›〉は全知の権能を持つ天使ではあるが、使用者が求める情報を、“使用者が触れている間しか与えてくれないからだ”。
だが二亜は、マリアを仲間に引き込むのに夢中になり、数秒の間〈囁告篇帙‹ラジエル›〉から手を離してしまっていた。
たかが数秒。されど数秒。結果二亜は六喰の動きを感知するのが遅れ、接近を許してしまったのである。
「では早速始めるのじゃ。天使を構えるがよい。マリアも二亜の力の1部、無論手を貸しても構わぬぞ」
言って〈封解主‹ミカエル›〉を構え、その先端を二亜に向けてくる。
「ちょ・・・・ッ!」
二亜は手を広げると、六喰を制止するように前に突き出した。とは言え、そんなものに効果が無い事は二亜が1番よく分かっていた。必死に思考を巡らせる。相手は六喰。並み居る精霊の中でも、恐らく二亜にとって最悪の相手。マリアが時間を稼いでいる間に逃げおおせようとしても、〈封解主‹ミカエル›〉がある限り無駄に終わるだろう。
だからといって正面切って戦うなどと言うのは論外。自慢ではないが二亜は弱いのだ。
「(どうしよう! いや、あのサイコな編集者達に比べればムックちんの方が可愛い方だけど! どうすれば生き延びれるのよ!? どうすればーーーー)」
「ーーーーゆくぞ、二亜」
「ヒッ・・・・!」
六喰が地を蹴るように姿勢を低くする。二亜は息を詰まらせながら地面に尻餅を突きーーーー裏返った声を上げた。
「ま、待ったムックちん! あたし達・・・・手を組まない!?」
「・・・・ふむん?」
苦し紛れの二亜の提案に、六喰は不思議そうに首を傾げた。
ー八舞sideー
「でぇぇありゃぁぁぁぁーーーーッ!」
「応戦。ていやー!」
ーーーー2つのハリケーンが、自然公園を蹂躙していた。
八舞耶俱矢と八舞夕弦。共に風の天使〈颶風騎士‹ラファエル›〉を持つ双子の精霊が、渾身の力を以て幾度もぶつかり合う。1撃1撃を交わし合う度、風が啼き、空が嘶き、天が軋んだ。
その様は正に意思を持った災害。精霊が精霊たる所以を、2人は全身を以てこの上ない程明確に知らしめていた。
これ程まで派手に戦っているのだ。恐らく他の精霊達にも八舞姉妹の戦いは知られてしまっているだろう。巻き込まれるのを嫌ってか、今の所茶々を入れてくる者はいなかったが、この戦いが終結した時、疲弊した勝者を狙って誰かが現れる可能性は十分あった。
けれど、耶俱矢も夕弦も、一体合切に力を抜いたりはしない。後先など考えていない。今この瞬間に自分の全てを使い尽くすかのように、相手に霊力をぶつけ合う。
確かに『士道への告白権』に、八舞姉妹の間で決めた『お互いの命令を絶対聞く権利』と言うのも魅力的なご褒美だ(耶俱矢は自分と士道の貞操を夕弦から守ると言う使命感があるが)。耶俱矢も夕弦も士道を憎からず思ってはいるものの、具体的な気持ちを伝えた事は無かったのである。
だが、今はただひたすらにーーーー己の半身と全力で戦うのが楽しくて仕方なかった。
ーーーー嗚呼、思えばソレは、100度に渡って競い合ってきた中でも初めての感覚かも知れない。
2人はかつて、どちらが八舞の主人格となるかを競って、幾度も力比べ合ってきた。けれどソレは、互いが互いを生き残らせようとする、『殺し合い』ならぬ『生かし合い』であったのだ。
負けた方が勝ちという歪な勝負。そしてソレが終着した時、どちらかが消えてしまうと言う逃れ得ぬ運命。そんな悲しい戦いを、八舞姉妹は繰り返してきた。
しかしーーーー今は。
「うおおおおおおおおおーーーーッ!」
「旋風。とおっ」
そんな憂いなどなく、己の全力をぶつけ合える。
その奇跡に、2人は途方も無い感謝と感激を覚えていた。
「呵々! そろそろ息が上がってきたのではないか? 動きが遅くなってきたぞ」
「指摘。ソレはコチラの台詞です。先程より風の勢いが衰えていますよ」
「ほざきよる」
耶俱矢は笑いながらそう返すと、何処か感慨深げに続けた。
「ーーーーよもやこんな機会が巡ってこようとはな。覚えているか。あの或美島での事を」
「当然。忘れられる筈がありません。ーーーー勿論、士道とドラゴン、あの2人のお陰で最後の勝負に決着を付けなくて良くなった事も」
「ん・・・・士道にもドラゴンにも感謝してる。お陰で私と夕弦は、どっちも消える事なく2人でいられるようになったんだから」
「首肯。そうですね。感謝してもしきれません。ですがーーーー」
夕弦の言葉に応えるように、耶俱矢は大仰に頷く。
「応とも、あの最後に勝負が付かなかった事だけは心残りであった。ーーーーだが、今なら」
「同意。漸く、決着を付けられます。そして士道と耶俱矢の(ピー!)の貞操をーーーー」
「絶対奪わせないからね!!」
と、最後に漫才をしてから、2人は同時にニッと笑うと、身体に纏っていた風を払い、静かに天使を構え合った。
ーーーー2人の間に、合図は必要ない。耶俱矢と夕弦は全く同じタイミングで空を蹴ると、超高速で互いに向かって突進していった。
がーーーーその瞬間。
「な・・・・!?」
「驚愕。これはーーーー」
2人は目を剥くと、狼狽に満ちた声を漏らした。
しかしソレも当然だ。何しろ2人がぶつかり合おうとした瞬間、空にポッカリと『孔』が空に空いたかと思うと、その中からーーーー。
『ーーーーマリア大隊、突撃です』
何百人と言う数のマリアが現れ、2人に突撃してきたのだ。
「ちょ・・・・っ!? マリア!?」
「困惑。何が起こっているのですか。意味がーーーー」
耶俱矢と夕弦は困惑と狼狽の中、マリアの波に押し潰されていった。