デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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精霊バトルロワイヤル・親友同士の対決

ー士道sideー

 

遠くの方から爆発音が聞こえた気がして、士道は身体を震わせながらソチラを向いた。

 

「な、なんだ、今の音・・・・」

 

「ーーーー気にするな」

 

驚愕する士道とは対照的に、天香は至極落ち着いた様子でそう言ってきた。

 

「“お節介共がはしゃいでいるに過ぎん”。貴様は十香とのデェトを続ければよい」

 

「へ・・・・? 天香、今のってーーーー」

 

「貴様の足らん脳みそで余計な事を考えている暇があるならば、十香を楽しませる事のみを考えろ」

 

困惑する士道に、天香はドラゴンを少しマイルドにしたような毒舌を吐き、話しを終わらせた。

と、士道が“お節介共”の事を考えようとすると、十香がキュッと手を握ってきた。

 

「十香?」

 

士道が驚いてソチラに顔を向けると、十香は先程の轟音に狼狽えた様子もなく、穏やかな笑みを浮かべてきた。

 

「ーーーーなあシドー、次は私に任せてほくれないか? この街には天香に見せたい場所が沢山あるのだ」

 

「そ、ソレは構わないけど・・・・」

 

「そうか! ならば行こう!。さあシドー、天香の手を取ってくれ」

 

「へ・・・・?」

 

言いながら、十香が縁台から立ち上がり、士道は目を見開きながら天香の方を見た。すると天香が、不機嫌そうに睨み返してくる。

 

「だから、私は良いと言っているだろう。2人で手ーーーー」

 

「ーーーー良いではないか。・・・・こんな機会は、もうないのだから」

 

天香の言葉を遮るように言って、十香が何処か寂しげに微笑む。

 

「ーーーーーーーーっ」

 

ソレを見て、士道はキュウと心臓が引き絞られるかのような感覚を覚え、先程までの考えが遥か彼方に消え去った。

すると次の瞬間、士道の左手がムンズと掴まれる。どういう風邪の吹き回しか、先程まで難色を示していた天香が、自分から士道の手を取ってきたのだ。

 

「・・・・ふん。行くなら早くしろ、人間。デェトの時間は限られているぞ」

 

「あ、ああ・・・・」

 

士道は呆気にとられながらも、十香と天香に手を引かれ、立ち上がった。奇しくも、先程2人を桜並木に連れて来た時とは逆の構図である。

ソレに気づいてか、十香が嬉しそうに目を輝かせた。

 

「良し、では行こう! 先ずはコチラだ!」

 

言って、十香が足取りも軽く歩き始める。天香もまた、十香に並ぶように足を動かした。右手が優しく、左手が若干荒々しく引っ張られる。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

そんな2人に手を引かれ、桜並木を歩きながら、士道は先程の十香の言葉を反芻していた。

 

【ーーーーこんな機会は、もうないのだから】

 

ソレはときっと、“十香と天香が2人同時にいられる機会はもうない”、と言う事を意味しているのだろう。

けれど、何故だろうかーーーー。

一瞬、その言葉が、別の意味を孕んでいる様に聞こえてしまぅたのはーーーー。

 

 

 

 

 

ー四糸乃sideー

 

「大丈夫かな、美九さん・・・・」

 

『んまー心配ないっしょ。ドラゴンくん曰く、【美九は無駄に頑丈だから雑に扱って良し】って言ってたし。気を失ってるだけっぽいし』

 

四糸乃が心配そうに言うと、ソレに応えるように、〈氷結傀儡‹ザドキエル›〉に宿った『よしのん』が、くぐもった声を上げてきた。

四糸乃は今、〈氷結傀儡‹ザドキエル›〉に跨り、気を失った美九を自分の後ろに乗せて、ノシノシと公園内を移動している所だ。その身には、先程砕かれた筈の霊装が再度現れている。

四糸乃は美九の油断を誘う為、ワザと一旦天使と霊装を解除し、美九の注意を引き付けている間に、再顕現させた〈氷結傀儡‹ザドキエル›〉を遠隔操作して、美九を背後から急襲したのだ。・・・・正直、あまり褒められた方法ではないかも知れなかったが、今の美九それ程までに油断できない相手だったのだ。

辛くも勝利を収めた四糸乃は、霊装を失い精霊の中で1番大きな胸と抜群のプロポーションを半裸状態で晒している美九を放っておけず、安全な場所へと移動させている最中であった。

 

「ん・・・・うぅん・・・・だめですったらぁ四糸乃さん・・・・そんなに吸ってもまだ何もでませんよぉ・・・・」

 

「きゃ・・・・っ!」

 

ーーーーポーン・・・・ベチャ!

 

と、そんないかがわしい寝言を美九がほざいていると、不意にニュッと手が伸びてきて、四糸乃の身体を弄り、四糸乃は思わず肩をビクッと震わせる。

するとその際、〈氷結傀儡‹ザドキエル›〉を操る糸に振動が伝わり、美九の身体が〈氷結傀儡‹ザドキエル›〉の背から放り出され、顔面から地面に突っ伏した。

 

「す、すみません・・・・!」

 

四糸乃は慌てて〈氷結傀儡‹ザドキエル›〉から降りると、美九の身体を担ぎ上げ(本来ならば体格差で無理なのだが、今は霊装を纏っているので問題無し)、再び〈氷結傀儡‹ザドキエル›〉の背に乗せた。

・・・・実は、このやり取りはコレで3回目なのだ。美九は〈氷結傀儡‹ザドキエル›〉が少し歩く度にイカれた寝言を呟き、四糸乃に抱きついてきていたのだった。

 

『んもー、美九ちゃんホントに気絶してるー? ウチはお触り厳禁なんだけどー?』

 

「すぴー・・・・すぴー・・・・」

 

〈氷結傀儡‹ザドキエル›〉となったよしのんが問うも、美九は穏やかに寝息をたてるのみである。

・・・・普通ならば狸寝入りを疑う所だが、この情欲の妖怪(女の子もしくは士道とドラゴン限定)は、以前〈フラクシナス〉の仮眠室で見せた寝相の凄まじさを目の当たりにしている四糸乃として、苦笑するしか無かった。

 

『もういっその事、氷漬けのオブジェにして日当たりの良い場所に放置しておく?』

 

よしのんが口から冷気を発しながらそう言い出したので、四糸乃が苦笑して抑える。コレ以上寝相が悪化すれば、よしのんは本気で美九を氷のオブジェにしそうなので、早く何処かに寝かせてしまおうと、適当な場所を探して〈氷結傀儡‹ザドキエル›〉を歩かせる。

 

「あ・・・・」

 

と、暫く進んだ所で、四糸乃は木製の長椅子とテーブルが置かれ、その上に簡易的だが屋根が設えられた休憩所のような場所を発見した。

脱落者は〈ラタトスク〉が保護してくれるという話だったし、少しの間なら大丈夫だろうと判断し、美九を〈氷結傀儡‹ザドキエル›〉から下ろし、長椅子に寝かせてやる四糸乃。

するとーーーー。

 

「・・・・? スンスン・・・・」

 

寝ている筈の美九が何やら鼻をヒクヒクと動かしたかと思うと、椅子から転げ落ち、そのままB級映画のゾンビよろしく、地面を這うように移動していった。

 

「美九さん・・・・?」

 

『またスッゴい寝相だねぇ・・・・ていうか何処行くの?』

 

2人が驚いていると、美九はやがて動きを止めーーーー休憩所の脇に立っていた街灯にピョンっと飛び付き、そのまま街灯に・・・・。

 

ーーーーんぢゅぅぅぅぅぅぅぅぅ!

 

と、情熱的なキッスをする。

 

「っ、美九さん、何してるんですか・・・・!?」

 

四糸乃は慌てて美九を引き剥がそうとした。

が、次の瞬間。

 

「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」

 

と言う何度か聞いた事のある甲高い悲鳴と共に、美九が抱き着いていた街灯が光を放ったかも思うと、コレまた見た事ある小柄な少女の姿に変貌した。

 

「な、七罪さん!?」

 

四糸乃は思わず目を丸くし、大切な友人と思っている少女の名を呼んだ。

 

 

 

 

 

 

ー七罪sideー

 

七罪は自分の迂闊と油断を心底呪った。

・・・・しかし、本来ならば、美九の化け物じみた嗅覚を呪うべきなのかも知れなかったが、ソチラは何やら『呪詛返し』的なものが恐かったので、そう言う事にした。

ーーーー二亜と六喰の協力関係を解消させる事に成功した七罪は、二亜の始末を八舞姉妹に任せ、次なる行動の方針を定めようと、〈贋造魔女‹ハニエル›〉を〈囁告編帙‹ラジエル›〉にコピーさせて、精霊達の動向を探っていた。

聡明な七罪が先ず警戒しているのは、〈囁告編帙‹ラジエル›〉を持つ二亜と狂三の2人だ。搦め手に置いて真価を発揮する七罪の〈贋造魔女‹ハニエル›〉の天敵と言える全知の天使〈囁告編帙‹ラジエル›〉の存在は脅威だ。

どんなに変身しても、すぐに正体がバレてしまう。だから先ず最初に、簡単そうな二亜を潰そうと、六喰との協力関係を解消させたのだ。2人が四糸乃と美九の戦いに介入しようとしていたのも、確かにあったが。

何にせよ、戦場の全てを見渡す二亜と、何処にでも兵力を派遣できる六喰が組んでいるのは、脅威以外の何物でもない。

 

「(・・・・あ、二亜、狂三にやられている。でもその狂三は、ほぼ無傷のまま生存か・・・・厄介だなぁ・・・・)」

 

と、公園の休憩所で状況を確認しているとーーーーソコで何やらガサゴソと、草木を掻き分ける音が聞こえてきた。

 

「(・・・・・・・・!)」

 

見やると茂みの向こうに、大きなウサギの耳の先端ーーーー間違いなく、四糸乃の〈氷結傀儡‹ザドキエル›〉が見えた。

まだコチラには気付いていないようだが、この休憩所に近づいてきているようである。

 

「(く・・・・)」

 

下手な動きをすれば気付かれる。一瞬悩んだ七罪は、〈贋造魔女‹ハニエル›〉を発動させて、自分の姿を街灯に変化させた。できれば四糸乃と戦いたくなかったので、このままやり過ごそうとしたーーーーが、七罪は忘れていた。四糸乃の対戦相手が、自分の天敵である美九‹変態›だったと言う事を。

 

【ーーーー良いか七罪。美九のセクハラと不同意わいせつが酷い時は、遠慮なしでスタンガンやらその辺にある物で脳天を殴れ】

 

「こん、のぉ!!」

 

以前から、美九‹妖怪›のわいせつ行為の数々でノイローゼになりかけた七罪を見かねたドラゴンが教えた事を思い出し、〈贋造魔女‹ハニエル›〉を『ドングリの形をした小型ハンマー』に変えて、未だにタコのように頬に吸い付いてくる美九‹怪物›の脳天に叩き込んだ。

 

ーーーーゴォンンッ!!

 

[ネバーギーブアッープ!!]

 

「ーーーーギャンっ!?」

 

情欲が暴走した美九はパワーと耐久力と身体能力が数倍に跳ね上がるが、流石に完全霊装の七罪の膂力から繰り出される1撃に耐えられず、頭に大きなタンコブを作って、そのまま後方にコロンと転がっていった。

強◯魔に襲われそうになった女性が、思わず反撃して殺人を犯してしまった心境を心の底から理解した七罪だが、一瞬心配そうに美九を見やると。

 

「あぁん・・・・七罪さんのいけずぅ・・・・」

 

どうやら大事ないようで、ムニャムニャとそんな寝言を呟く美九。

眠っているというのに、個人の区別まで付いている事に、七罪はブルッも全身をゲジゲジが這いずり回るような悍ましい悪寒に身体を震わせてから、自分はもとより、世の中の女性達の清らかな身体を守る為にも、いっその事この美九‹化け物›にトドメを刺して、コンクリート漬けにして、御札やしめ縄で縛り付けて封印し、富士の樹海の地中深くに埋めるか、マリアナ海溝の海底奥深くに沈めるべきではないか、と『ドングリの形をしたハンマー』に変身した〈贋造魔女‹ハニエル›〉を握る手に力を込めそうになるが、近くに四糸乃がいたので取り敢えず美九を長椅子に改めて横にさせ、そこら辺に落ちてた蔦を太い縄に変えて、美九の身体を長椅子に縛り付けてから、四糸乃に向き直った。

 

「・・・・四糸乃」

 

七罪は四糸乃の名を呼んだ。

・・・・が、二の句が継げない。その後に何を言えば良いのか分からなかった。

元よりここは戦場。精霊達が相争う場。顔を合わせてしまったならば、『いざ尋常に勝負』以外の言葉は必要ないだろう。

けれど、できる事なら七罪は四糸乃とは出会いたく無かった。優しく尊い女神四糸乃に刃を向けるだなんて事はしたくなかったし、四糸乃が本気で『士道への告白権』を欲しているのなら、例え僅かでもその邪魔をしたくないという気持ちが、七罪の心の何処かにあった。

七罪の中に、士道へ『伝えたい想い』が無いとは言わない。しかしそんな物、きっと四糸乃が抱いている想いに比べればスーパーな戦隊の巨大ロボットと雑魚戦闘員位の差があるチッポケで取るに足らない物に違いなかった。ソレに士道だって、どうせ告白されるならミジンコのような自分よりも、女神の四糸乃や他の精霊の方が嬉しいに決まっている。

 

「(・・・・そうだ。別に私はここで脱落しても良いじゃん。四糸乃にとっても悪い話じゃない。折角ドラゴンと言う過保護で士道じゃ私達に釣り合わないとか言って邪魔してくる『保護者』もいないチャンスだし、きっと理解してくれる。そうと決まれば、できるだけ痛みを感じないよう霊力を消費してーーーー)」

 

ーーーーと。

 

「・・・・っ」

 

七罪は頭の中でグルグルと思案を巡られせ口から出そうとした所で、息を詰まらせた。

四糸乃がトンと地を蹴ったかと思うと、側に控えている〈氷結傀儡‹ザドキエル›〉に跨りーーーー。

 

「残っていたんですね、七罪さん。ーーーー嬉しいです」

 

と、ニッと微笑みながら構えを取ってきたのだ。

 

「え、ちょ・・・・四糸乃ーーーー」

 

思わぬ好戦的な対応に、七罪はたじろいだ。

 

「(嘘でしょ!? 四糸乃がこんな、悪徳刑事の蟹ライダーや、戦いをゲームと考えてるクソガキなサイライダーや、欲望全開のカメレオンライダーや、百戦錬磨の殺人鬼コブラライダーみたいな事を!? 戦場の空気とはソコまで人を変えてしまうと言うの!? それとも、よっぽど『士道への告白権』が欲しいのーーーーいや・・・・)」

 

ソコまで考えて、七罪は唇を噛んだ。

どちらの理由も無くはないが、それ以上に四糸乃の表情からはーーーー七罪と競い合える喜びのようなものが感じ取れてしまったのだ。

瞬間ーーーー七罪の脳裏に、先程自分が発した言葉が蘇る。

 

【私は私の行動を後悔してない。例え此処でやられたとしても本望よ。ーーーーアンタはどうなの、六喰。二亜の口車と手に乗って最後まで勝ち上がって、ソレで『告白権』を獲得したとして、堂々と胸を張って士道の前に立てるの?】

 

適当に並べ立てた、八舞姉妹がやって来るまでの時間稼ぎの為の出任せの言葉だった筈なのに、六喰はその言葉で気付かされたと言った。七罪の言葉で・・・・心から誇れる勝利を掴み取る事にすると言ってくれた。

ーーーーならば、七罪は? 出任せとは言えその言葉を吐いてしまった七罪は、ソレに悖ってしまって良いのかーーーー?

 

「・・・・ああ、もう、クソ、クソ。・・・・こういうの、絶対ガラじゃないのに」

 

七罪は吐き捨てるように言うと、『ドングリの形をしたハンマー』から箒型の天使に戻しーーーーソレをクルクルと回転させてから、ビシッと四糸乃に向けて見せた。

 

「・・・・精霊・七罪。天使は〈贋造魔女‹ハニエル›〉。ーーーーーいざ、尋常に」

 

そして、霊装の帽子の鍔をグッと下方に摘みながら、そう宣言する。

 

「・・・・!」

 

すると四糸乃は嬉しそうに笑みを濃くすると、〈氷結傀儡‹ザドキエル›〉を前傾させながら返した。

 

「精霊・四糸乃。天使は〈氷結傀儡‹ザドキエル›〉。ーーーー勝負、です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

暗い海中のような空間で、泡のような物に閉じ込められたその『者』は、少しずつ身体を癒していく。

“先の死闘”にて身体が九分九厘で滅びる寸前の状態からココまで身体を再生させるのに時間を食った。

『焔の天使』があればすぐに再生されただろうが、今はソレができず、こうして時間を費やしていたのだ。

そして間もなく目覚める。士道のーーーー『最強の相棒』が・・・・。

 




四糸乃と七罪の決戦が始まる!
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