デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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明けましておめでとうございます。

ようやく投稿できました。リアルの忙しさと他の作品の作成に追われていました。


接触・狂三

ーファントムsideー

 

「ここにいたか『ケットシー』」

 

「んあ? メデューサ様にフェニックス様? いったいなんですかぁ~・・・・?」

 

『メデューサファントム』こと『ミサ』は、『フェニックスフェニックス』こと『ユウゴ』を連れて、廃車置き場に捨て置かれた廃車の上に日向ぼっこしているように寝そべる外国人風の黒人男性、いや、その男性が『ゲート』となった、『魔獣ファントム ケットシー』に話しかける。

『ケットシー』と呼ばれたファントムは、気だるそうに起き上がった。

 

「“ヤツ”が現れた。これより“始末”するための準備に取りかかる。お前も戦列に加われ」

 

「チョ~、面倒なんすけどぉ~。あんな“あぶねえヤツ”と戦ったり、人間を絶望させて仲間を増やさなくても、人間殺しまくった方が良いと思うんすけどぉ~?」

 

「おっ! 良い事言うじゃねえか!」

 

めんどくさそうに呟いた『ケットシー』に、ユウゴが同意するように声を発するが、ミサが睨むと黙った。

 

「『ケットシー』、これは命令だ従え。さもなければ・・・・」

 

「わ、わかったっすよ!」

 

ミサが冷徹な殺気を放ちながら『メデューサ』に変化しようとすると、『ケットシー』は慌てて車から降りて、姿勢正しく立ち、ミサはユウゴと『ケットシー』を連れてその場を離れる。

 

「所でよミサ。『ノーム』と『リザードマン』が消えたそうじゃねえか、何かあったのか?」

 

「・・・・不明だ」

 

ユウゴが、ここ2週間の間に行方をくらませた2体のファントムの事を聞くが、ミサは不愉快そうに目を鋭くして呟いた。

 

「不明ってどういう事だ? 指輪の魔法使いか?」

 

「いや、生き残ったグールが言うには、“魔法使いではあるが”、“我々の知っている指輪の魔法使いとは別の魔法使い”との事だ」

 

「あ?」

 

「つまり、我々ファントムを倒す力を持った魔法使いが、指輪の魔法使い<ウィザード>の他にいると言う事だ・・・・」

 

 

 

ー士道sideー

 

ホームルームが終わり、タマちゃん先生が教室を去ると、「私は精霊だ」と一般人からすればイタい事この上ない不思議ちゃん発言をしたにも拘わらず、狂三の席の周りには人だかりができ、ひっきりなしに質問が飛び交い、噂の美少女転校生を一目見ようと、他のクラスからも生徒が集まった。十香の転校初日の様相と似ていた。

 

「(琴里に連絡した方が良いな)」

 

ポケットの中の携帯を取りだし、琴里に連絡しようとした士道は、不意に狂三と目が合い、ニコリと笑みを向けられたが、士道の心境はその麗しい微笑みに赤くなる余裕など無かった。

 

≪・・・・・・・・・・・・≫

 

現在進行形で、体内のドラゴンが狂三を睨んでいたからだ。ドラゴンの全身から漏れている攻撃的な威圧感が士道に、「ヤツ<狂三>に隙を見せるな」、と無言の圧力を出していた。

士道は琴里に連絡し、狂三の事を話すと、『妹モード』からすぐに『司令官モード』に切り替わった琴里が、「一応調べてみましょ」と言い、士道が了承して電話を切ったその瞬間、1限目開始のチャイムが鳴り響いた。

左右の席を見ると、十香は狂三を訝しそうに見据え、折紙も何処かに連絡をしていたようだが、携帯を切っていた。

 

 

ー真那sideー

 

「ふぅ~。これでしばらくは満腹でやがるでしょう? この天宮市に来てから“食べ物”には、事欠かないでやがりますからな」

 

≪まあのぅ。しかしこの街は一体どうなっておるのだ? あんなに“食い物”がウヨウヨしているなど≫

 

≪しかも“雑魚”だけじゃなくてそれなりに魔力の強い奴らもいやがるぜ≫

 

≪ちょ~っと不自然よね?≫

 

≪でもさ。飯がいっぱいあるのは良い事じゃないの?≫

 

≪うんうん≫

 

“食事”を終えた真那は、ボソボソと『キマイラ』と話しをながら、天宮駐屯地の廊下を歩いていると、南関東圏全域の霊波情報を統括する観測室の前を通るとーーー。

 

『ーーー精霊が転入? 笑えないジョークだわ』

 

「っ?!」

 

『っ!?』

 

真那と『キマイラ』は、ピクッ! と反応すると、観測室に入室すると、そこではAST隊長の燎子が渋面を作っていた。

 

「隊長? どうかしやがりましたか?」

 

燎子がチラッと後方の真那に目をやる。

 

≪真那、画面を見よ・・・・!≫

 

≪あんのド腐れ腹黒!こんな所にいやがったかぁ!≫

 

「ん?」

 

『キマイラ』に言われ画面を見た真那は、忌々しげに眉をひそめた。

 

「・・・・なるほど、やはり出やがりましたか、〈ナイトメア〉」

 

「〈ナイトメア〉・・・・?」

 

怪訝そうに問う燎子に、真那は眉を寄せ、忌々しげに息を吐いた。

 

「識別名〈ナイトメア〉。私が追っている、最悪の精霊です」

 

「最悪の・・・・精霊」

 

「ええ。現在までで1万人以上の死者を出しやがった精霊です。判明してねー被害者も含めれば、その数はさらに膨れ上がるでしょう」

 

「1万人・・・・!? あ、あり得ないわ。避難指示は出ていなかったの? それとも、そこまで大きな空間震がーーー」

 

「ちげーます」

 

燎子の言葉を遮るように、真那が重苦しく声を発する。

 

「〈ナイトメア〉の起こす空間震の規模は標準程度です。死者もいねーことはねーですが、その数は100人にも満たねーです。単純な理由で、“直接、その手で殺しやがるんです”。1万人以上の人間を」

 

「・・・・っ」

 

燎子は息を詰まらせたが、真那は構うことなく軽く伸びをして殲滅に向かおうとしたが、市民の避難が出来ていないので、勝手な行動を許さないと、隊長権限で真那の腕をがっしと掴んで止めた。

 

≪真那。さっさとヤツを始末したい気持ちは解るけどさ。ここは堪えてよ≫

 

≪そうね、あの悪辣の事だから市民を盾にする事もやりかねないし、無用な犠牲を出さないためにも、ここは一先ず様子を見るべきじゃない?≫

 

「・・・・・・・・」

 

『キマイラ』からも進言され、しばし思案を巡らせるように黙った真那は、小さく手を上げる。

 

「了解、従います」

 

が、すぐに燎子を値踏みするような視線を向ける。

 

「でも、くれぐれも忘れねーでください。私は『“会社”』からの出向です。その気になれば陸幕長の公認付きで行動を起こす事もできますので」

 

「・・・・わかってるわよ」

 

燎子は面白く無さそうに顔を歪めると、真那の手を離し、真那から目線を画面に戻した。

 

 

ー士道sideー

 

下校時刻となり、帰りのホームルームが始まり、タマちゃん先生が教卓に出席簿を開き、連絡事項を伝える、一見なんの変哲もない光景だが、士道は今、異様な緊張に苛まれていた。

なぜなら・・・・

 

「・・・・!」

 

狂三が先生の隙をついて士道の方にチラッと視線を寄越して、小さく手を振ってくる。

 

「え、と・・・・」

 

流石に何も返さずにいるのも失礼かと思い、苦笑しながら手をヒラヒラさせる。

 

「「・・・・・・・・」」

 

≪・・・・・・・・≫

 

すると士道の両隣に座る十香と折紙が、皮膚炎か何かになってしまいそうな苛烈な視線を士道に浴びせ、体内のドラゴンが、今日1日中も狂三に放っている半端ない威圧的な魔力で、士道も畏縮してしまっていた。

 

「・・・・ど、どうしろってんだよ(と、とりあえずドラゴン、さん。十香に一応事情の説明をしてくれないかなぁ・・・・なんて)」

 

士道の体内のドラゴンは、十香と四糸乃、士道の経路が繋がっている精霊に、その経路を伝ってテレパシーを送る事ができる。

 

≪・・・・・・・・≫

 

「(あ、あの~・・・・)」

 

黙り決めているドラゴンに、士道は恐る恐る返答も求めようとするが・・・・。

 

「ぬ?・・・・・・・・フムフム、わかったのだ」

 

突如、左側にいる十香から威圧感が薄まると、十香はこっそりと鞄の中から、ネックレスチェーンを括った、『剣と玉座が装飾された夜色のアメジストの指輪』、十香専用のウィザードリング、『サンダルフォンリング』(命名琴里)を取り出して、首に巻いた。

 

「(あれ? ドラゴン、十香は何をしてんだ?)」

 

≪昼休みにお前の妹が、あの女<狂三>が精霊であると観測結果が出たと伝えた。ついでにファントムが襲いに来たときの用心の為に持たせていた『サンダルフォンリング』をいつでも使えるように首に巻いておけと伝えたのだ≫

 

「(何でそんな事を・・・・)」

 

≪危機感0の怠惰で蒙昧な貴様には分からんか。・・・・あの女、おそらく危険だ≫

 

「(狂三が? 何でだよ?)」

 

≪ヤツは何故高校に転校してきたのだ? なんの思惑があってお前に接触したのだ?≫

 

「(そんなの・・・・普通に学校を生活したいとか、たまたま案内を俺に頼んだとか・・・・)」

 

≪・・・・貴様に問うたのは間違いだったな≫

 

士道は狂三が接触してきたのは不自然さを感じてはいるが、もしかしたら“偶然”と考えを言ってみたら、ドラゴンはそんな士道を心底馬鹿にしたような声色で切り捨て、そのまま再び狂三に、警戒心MAXで睨んでいた。

 

「(なんだよ・・・・)」

 

いつもドラゴンは自分の事を見下している。

たとえお互いに不本意極まりない関係と言えど、1年も共に魔獣ファントムと戦ってきたのだから、少しは自分の事を認めてほしいと、士道は不満気な気持ちでいると、起立の号令が響き、それに従って椅子から立って礼をする。タマちゃん先生がさよならを言って教室を出て行き、他の生徒が席を立ち談笑を聞き流しながら、士道はポケットから小さなインカムを取り出して右耳に装着した。

 

《ーーー時間ね。用意はいい? 士道》

 

鼓膜に、すでに〈フラクシナス〉に乗り込み、艦橋の〈ラタトクス〉の(一応)精鋭達と、精霊攻略の準備を万端にした司令官モードの琴理の高圧的で甲高い声が響いた。

 

《まさか、本格に精霊だなんてね。ーーー正直、士道の妄言かと思っていたわ》

 

「・・・・おい」

 

《まあ、でも好都合よ。向こうからお誘いかけてくれるなんてね。警報が鳴っていない以上、ASTもちょっかい出せないでしょうし、願ったり叶ったりじゃない。今の内に好感度を上げて、デレさせちゃいなさい》

 

「・・・・ん、そう・・・・だよな」

 

《何よ、その腑抜けた返事は。》

 

「嫌な。あまりに狂三の意図が掴めないし、ドラゴンが滅茶苦茶警戒心MAXで狂三を睨んでいるからさ。少し気になるんだ・・・・」

 

歯切れ悪く答える士道は、失念していた。琴理にドラゴンの事は禁句だと言うことにーーー。

 

《ふんっ。いずれ自分を絶望させて殺そうとしている魔獣のトカゲの態度で腑抜けるだなんて、情けないわね》

 

「っ、べ、別にそういう・・・・!」

 

琴理が不機嫌な声色で吐き捨てるように言って、士道は内心不味いと焦りながらフォローしようとするが。

 

≪おい、妹との会話はそれくらいにしておけ。・・・・来たぞ≫

 

ドラゴンが言うと、士道の肩がちょんちょん、とつつかれた。

 

「士道さん、士道さん」

 

「うぉ・・・・ッ!?」

 

「ごめんなさい、驚かせてしまいました?」

 

突然の事に驚く士道の目の前に立つ少女、狂三が、申し訳無さそうに言ってくる。

 

「と、時崎・・・・」

 

「うふふ、狂三で構いませんわ」

 

「あ、ああ・・・・じゃあ、狂三」

 

士道が言うと、狂三は嬉しそうに微笑んで言葉を続ける。

 

「学校を案内してくださるのでしょう? よろしくお願いしますわ」

 

「お、おう」

 

作り物のように美しい貌。高貴さ漂う仕草。優雅な所作。それら全てが士道の感覚器を通って、彼女の存在を強烈に印象づけて、士道の胸の鼓動が早まる。

がーーー。

 

バシンッ!!

 

「痛ってぇっ!!」

 

急に士道の頭に、鈍器で頭を強烈に殴られた感覚に襲われ、我に返った士道が頭を抑えるようにうずくまるが、周りを見ると、狂三も、左右の席に座っている十香と折紙も、何事かと目をパチクリさせていた。

 

≪このワラジムシが。どこまでの平和ボケの腑抜けで役立たずな醜態を晒しおって。少し色香を振り撒かれただけで平常心を乱し、情けなく鼻を下を伸ばしてしまうヘタレ童貞が。この女の前で隙を見せるなと言っているだろうが!≫

 

「(い、いつものより強烈な・・・・!)」

 

いつものドラゴンの体内からのド突きであると理解した士道だが、いつものド突きよりも力が入った一撃に悶えた。

 

「あ、あのだな・・・・」

 

士道が弁明するように声を発しようとする。

 

「さ! 早く参りましょう。ふふ、楽しみですわ」

 

だが、言葉を終えるより先に、狂三が足取りも軽やかに廊下に歩いて行ってしまい、士道は十香を見ると、ドラゴンに聞かされていた十香は、行けと言わんばかりの様子で狂三の方に指さし、士道は「すまん!」と一言残し、狂三のあとを追って廊下に出ていった。

 

 

 

 

それから、どこを案内するか決めあぐねていた士道は、〈フラクシナス〉にいる琴理の指示で食堂と購買部を案内しようと歩いていくと、道中にいた下校中の生徒達から。

 

「わー、何あの子、かわいー。転校生?」

 

「隣にいるのって四組の五河君だよね、なんで?」

 

「ああ、なんか直接案内役を指名されたんだってさ」

 

「え、五河って夜刀神さんのダンナじゃなかったん?」

 

「いや俺は鳶一に囲われてて、将来ヒモになる予定って聞いたぞ」

 

「おいおい二股じゃ飽きたらず転校生までってか?」

 

「うそー、五河君たらお猿さーん!」

 

それを聞いて士道は、好き勝手言ってくれる、と思い頬を痙攣させたり、狂三が士道の方をジッと見つめ、士道の横顔に見とれていたと言われ士道が顔を真っ赤に染め、琴理から《あなたが口説かれてどうするのよ》、ドラゴンから≪チョロい童貞小僧が≫とため息混じりの呆れ声を上げたり。

琴理が〈フラクシナス〉が出した【狂三は今、どんなパンツを穿いてるんだ?】の選択肢に神無月が選択し、琴理が呼んだ筋骨隆々の巨漢に連れ去られ、思わず琴理が口走り、士道が聞いた選択の内容を考えずうっかり狂三に口走りそうになり、ドラゴンから≪お前には思考能力が皆無なのかこの塵屑!!≫と、強烈なド突きをお見舞いされ、痛みに悶えた。

改めて狂三に、『私は精霊だ』の意味を聞くとーーー。

 

「うふふ、とぼけなくても良いのですのよ、士道さん。あなたはちゃんと知っているのでしょう? 精霊の、事を」

 

「・・・・・・・・っ」

 

《・・・・何なの、この女は?》

 

≪・・・・・・・・≫

 

ふふっ、と微笑んで見せてそう言った狂三に士道は息を詰まらせ、琴理が訝しげな声を響かせ、ドラゴンは警戒心を高めた。

 

「な、なんで俺のこと、知ってるんだ・・・・?」

 

「ふふっ、それはーーー秘密ですわ」

 

「え・・・・?」

 

「でも、わたくしは士道さんに会うために、この学校に来ましたの。士道さんの事を知ってから、ずっと焦がれていましたわ。士道さんの事を考えない日は無いくらいに。だからーーー今は、凄く幸せですわ」

 

「・・・・・・・・ッ!!」

 

狂三が桜色に頬を染めて言ってきて、士道は酩酊感に襲われていた。

まさに百戦錬磨の悪女の手玉に捕らわれている無知でウブな僕ちゃんである。デレさせる筈が完全に立場が逆であった。

琴理に怒鳴られ我に返るが、それからも士道は完全に狂三に主導権を握られていた。琴理達が主導権を取り戻させようと反撃として、士道に狂三の手を握らせようとするが、逆に士道が狂三に手を握られた。

 

「ど、どどどどどどどどうかしたのか?」

 

見やると、士道の手を握った狂三は、少し気恥ずかしそうに目を伏せ、顔を背けていた。

 

「やっぱり・・・・ご迷惑でして?」

 

「・・・・ッ!! そ、そんなことは・・・・無い、けど・・・・」

 

「やっぱり士道さんは、優しいお方」

 

「っ、い、いや・・・・イッデェッ!!」

 

照れくさそうに微笑んでくる狂三に狼狽しそうになるが、ドラゴンのド突きで正気に戻った。

 

「あら? どうしました士道さん?」

 

「い、いや・・・・(ドラゴン、少しは加減をだな・・・・)」

 

≪喧しい塵が。シャンとしろ、精霊を口説いてデレさせるくらいしか役に立たない屑が、本物の役立たずに成り下がるつもりか?≫

 

「ーーーねぇ、士道さん」

 

痛みが引いた士道に、改めて狂三がその小さな唇を蠢かせる。

 

「な・・・・ん、だ?」

 

「わたくし、士道さんにお願いがありますの。・・・・聞いてくださいまして?」

 

≪気を抜くなよ、便所虫≫

 

もしも体内にドラゴンがいなければ、狂三のこの魔性とも言える魅力に、無条件で首を縦に振ってしまいそうな不思議な感覚だ。士道はどうしようかと惑っているとーーー。

 

「ぬわ・・・・っ!」

 

「・・・・っ」

 

そんな叫びとともに、ドンガラガッシャンという音が響き、廊下に設えられていた掃除用具入れが倒れ、そこから犯人と思しき生徒二人が重なるように倒れていた。

 

「と、十香・・・・折紙!?」

 

「あらあら? お二人して何をなさっておられますの?」

 

士道の手を握ったままの狂三が不思議そうに首を傾げ、十香と折紙がバッと立ち上がる。

 

「そ、それはあれだ!」

 

「時崎狂三。学校案内で手を握る必要はないはず。今すぐ離すべき」

 

「! そう、それだ!」

 

珍しく十香が折紙に同意した。

 

「実はわたくし、ひどい貧血持ちですの。そこで優しい士道さんが、わたくしの手を取ってくださったのですわ。士道さんを責めないであげてくださいまし」

 

狂三は士道を一瞥してから二人に目を向けると、芝居がかったしなを作り、十香と折紙が士道に「本当か?」と目を向け、士道も何故か誤魔化さねばと思い首肯した。

すると、折紙が貧血を訴え、士道に謎のプレッシャーに気圧され、もう片方の手を差し出し折紙は士道の隣にぴったりた寄り添い。

十香も、折紙に意図に気付き貧血を訴えるが、士道の両手はふさがれていた。

 

「ぐぬぬ・・・・」

 

今にも泣いてしまいそうな十香は士道の真ん中に立ち、まるで飛びかかってくるかのように腰を低く落とす。

 

「お、おい、まさかーーー」

 

しかし、折紙のポケットから携帯のバイブ音が鳴り響き、折紙が取り出して話し始め、電話相手に淡々と相づちを打ったのち、狂三に鋭い視線を送った。

 

「折紙?」

 

驚く士道を余所に、折紙は静かに電話を切る。

 

「・・・・了解。急用ができた」

 

折紙が名残惜しそうに士道の手をきゅっと強く握ったあと、手を離した。

その瞬間、十香がそこに滑り込み、士道の手にしがみつく。

 

「・・・・・・・・」

 

折紙はそんな十香を一瞥したあと、もう一度狂三に刺すような眼光を向け、歩き去る際、士道の耳元に「時崎狂三に気をつけて」と言う言葉を残した。

 

「な、なんだぁ・・・・?」

 

≪察せんのかこの愚図が。ASTからの連絡で、狂三<この女>が精霊であると分かったのだ≫

 

「っ!?」

 

「士道さん? どうしたのですの? 参りませんの?」

 

「あ、ああ・・・・」

 

狂三に促されて、士道は両腕を拘束されたまま歩き、周囲から注がれる視線がより一層濃厚なものになった。

 

≪・・・・・・・・≫

 

しかし、士道はそんな視線よりも、警戒心MAXのドラゴンの威圧感に晒され、胃がキリキリと痛み始めていた。




ドラゴンは狂三をバッチリ警戒しています。こういう危機感が士道には(ファントムとの戦闘時以外)皆無ですから、その分ドラゴンが警戒しています。

ありがたい事に、『メンツコアラ』さんの『戦士開眼シンフォギアゴースト』とのコラボが決まりました。

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