デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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祝え! 原作小説『デート・ア・ライブ』の完結と! アニメ新シリーズ制作の決定を!!
そしてまだ、『バレットシリーズ』や『アンコールシリーズ』が終わってないから、まだまだデアラの歴終は終わらない!


デート・狂三

ー士道sideー

 

《まったく、輪島のおじさんに感謝しなさいよね。バッチリのタイミングで最高の魔法リングを作ってくれたんだから》

 

「分かってるよ。おっちゃんには感謝してる。それじゃ宜しく頼むな、“俺達”」

 

「ああ」

 

「任せておけよ、“俺”」

 

士道の目の前には、“士道が二人も立っていた”。

 

ーーー『アバター ウィザードリング』。

士道が新たに得た魔法リング。

能力は“士道の分身体を2体まで作る”。

それだけならば複数生み出せる『コピー』に劣る能力と思われるが、『コピー』は“士道<ウィザード>と同じ動きをする虚像を生み出す”が、この『アバター』は“士道と寸分違わない思考と性格を持った分身体を生み出す能力”。

つまり同じ動きをする『コピー』と違い、分身体が個々に自由に行動する事ができる、文字通り士道の自身を生み出す。

もちろん弱点がある。

先ず士道そのもののような分身体を作る為、魔力も相当の量を使う。『アバター』の分身体を出現させている間、魔力経路で分身体に魔力を送っているので、“他の魔法が使えない”、つまり、“変身もできなくなってしまう”。

しかし、分身が消えれば、分身が見聞きした情報が本体の士道にフィードバックし、分身が消えると分身を構築するために使っていた魔力が本体に戻ってくるので、分身に送られていた魔力の許容にもよるが、魔力が回復する事ができる。

 

《まず本体士道は、狂三と一緒にデートをして、アバター士道1号が十香とデートをし、アバター士道2号が、鳶一折紙とデートする。〈フラクシナス〉の方でもなるべくフォローするけど、最優先目標は狂三をデレさせてキスまで行っちゃうことだけれど、十香の機嫌を損ねても駄目だし、鳶一折紙に勘づかれるのも上手くないわ。アバターの士道達が本体士道と同一のようであっても、油断するんじゃないわよ》

 

「「「り、了解・・・・」」」

 

十香と折紙を騙すみたいで正直気が引けるが、『アバター』を使わなければ士道1人で三人とデートしなければならない。『アバター』の事を知った琴理が、効率的に考えてこの方法を考えたのだが、あまり乗り気でないのか、頬に汗を流す士道達。今は人目に触れないように男子トイレの個室にギュウギュウ詰めになってかくれていた。

 

《さ、そろそろ時間よ。ーーー私たちの戦争<デート>を始めましょう》

 

「「「お、おう」」」

 

琴理の決め台詞を聞いた士道達は、次々と間隔を空けて個室を出ていった。

 

 

ー士道1号sideー

 

士道1号は天宮駅東口に行き、『パチ公』と呼ばれる犬の銅像前についた。

 

「シドー!」

 

声の方向に振り向いて、目をやるとそこには、もう太陽よりも眩しいと言っても良いと思えるほどの満面の笑みを浮かべた十香が立っていた。

装いをバッチリお洒落にした格好だった。

 

「こ、これは・・・・」

 

《・・・・ああ、十香から、何を着ていけばいいのかと訊ねられたんだ。悪くないだろう?》

 

「は、はい・・・・」

 

インカムから令音の声を聞きながら、ボウッとして様子で口を開く。一瞬目を釘付けにされるほどだ。悪くないどころかとても良い。

 

「シドー?」

 

「あ、ああ・・・・! 悪い。ボーッとしてた。・・・・ん、似合っている。可愛いぞ、十香」

 

「な・・・・っ」

 

士道1号が言うと、十香は顔を真っ赤に染め、あたふたと手と首を動かしてから、クルリと踵を返す。

 

「い、いいから行くぞ! ほら、早く!」

 

「お、おお!」

 

士道1号はなるべく狂三や折紙に遭遇しないように、十香と一緒にその場を離れ、水族館がある天宮クインテットへと向かった。

 

 

ー士道2号sideー

 

士道2号は物陰から士道1号と十香が去るのを確認したあと、駅前から道路を隔てた広場にある噴水前に向かうと、私服姿で肩に小さな鞄をかけ、マネキンのようにピクリとも動かずに直立不動で立っていた。

折紙との待ち合わせ時刻には、まだ一時間足らずも先についていたようだ。

 

「折紙のヤツ、気が早いな・・・・」

 

士道2号は苦笑いを浮かべて、折紙の方へと歩を進めた。

 

 

ー士道本体sideー

 

士道本体は天宮駅東口改札の前に向かう途中、ドラゴンが1号と2号の気配を探知していた。

 

≪・・・・アバター達は上手く立ち回っているな≫

 

「(そうか、でもなんか騙しているみたいで、十香と折紙には悪い気がするな・・・・)」

 

≪このシラミふぜいが、まだグダグダ言っているのか? この方法が1番効率的なのだ。お前は三人の間を行ったり来たりしたいのか?≫

 

「(・・・・それは・・・・)」

 

≪ほれ、あの女がいたぞ≫

 

「っ! ま、待たせたな・・・・!」

 

改札前には既に狂三の姿があった。

高級そうなブラウスとロングスカートという出で立ちで、まるで深窓の令嬢のような雰囲気がだが、それらの全てが黒で統一されており、まるで喪服でも来ているかのようにも見えた。

 

「いいえ、わたくしも今来たところですわ」

 

そう言って狂三がニコリと微笑む。

 

「悪い・・・・待たせたか?」

 

「うふふ、そんなに急がなくても大丈夫でしたのに」

 

「い、いや、まあ・・・・はは」

 

《ーーーさ、今日はこれが本命よ。しっかりね》

 

琴理がそう言い、士道はインカムを軽く小突いて了解を示す。

今日の最大の目的、狂三とキスをし、精霊の力を封印する事。

改めてそれを自覚した士道は、思わず狂三の唇が目に入り、気まずげに頬をかくが、ドラゴンが「気を抜くな」と告げるように士道の体内で士道の頭を尻尾でド突いたような衝撃が走った。

 

「っっ!(おいドラゴン! いつも思うけど、もう少し優しくできないのかよっ!?)」

 

≪そう言う台詞は、すぐに気を抜いてしまう自分の迂闊さと危機感0のナマコのような脳ミソを少しはマトモにしてからほざけ≫

 

士道がドラゴンと心の中で口喧嘩していると、狂三がペコリと頭を下げてくる。

 

「今日はお誘いいただきありがとうございます。とても嬉しいですわ。それで、まずはどちらに行かれますの?」

 

「ん・・・・そうだな」

 

士道が言うと同時に、右耳に琴理の《待ちなさい》と言う言葉が聞こえてきたが、士道は内心、体内のドラゴンは露骨に渋面を作った。何しろ〈フラクシナス〉のサポートはほとんどモラルから離れた指示しか出さないからほとんどアテにできないからだ。

最悪、ドラゴンに罵倒・毒舌・暴言付きのアドバイスの方がまだマシなアドバイスが聞けるので、罵倒・毒舌・暴言を我慢して聞こうかなとすら思っていた。

 

 

ー琴理sideー

 

〈フラクシナス〉のメインモニタに選択肢が表示された。

 

①【ショッピングモールでブラブラお買い物デート】

 

②【二人で甘い恋愛映画を】

 

③【ランジェリーショップで彼女の試着を観賞】

 

「総員、選択!」

 

言うと、琴理の手元の小型ディスプレイに集計結果が表示された。

 

「ふむ・・・・」

 

琴理が唸っていると、艦橋下段からクルーの声が響くが、琴理は③の選択肢を見る。

 

「③って、さすがにちょっと引かれない・・・・?」

 

琴理もこの選択肢には辟易した調子で言うと、下段から令音が声を上げる。

 

「・・・・いや、だが数値や昨日の反応を見る限り、絶対に断られるとも言えないんだ」

 

「ふむ・・・・」

 

琴理は眉をひそめて唸る。リスクは高いが、これが通るなら、狂三がよほど士道に心を許している証拠にもなると考えた。

 

「士道、③よ。駅ビルのランジェリーショップを案内してあげなさい」

 

《・・・・・・・・・・・・》

 

スピーカーから、士道が唸るような声が響いた。

 

「ちょっと士道?」

 

「どうやら、体内のドラゴンと会議を始めたようだね」

 

「・・・・なんですって?」

 

琴理の眉がピクンッと不愉快そうに動くが、普通に考えればこんな指示を出されれば当然とも言えるが、それでも自分たちよりも、体内の魔獣をアテにしている士道に、琴理は不機嫌な気分となりーーーーー。

 

「フンッ!!」

 

「あふんっ! 素敵な理不尽ありがとうございますぅっ!」

 

とりあえず憂さ晴らしに神無月の鳩尾に肘鉄を当てると、神無月は恍惚とした表情で倒れるが、琴理は一瞥も与えずに、不機嫌そうに艦長席に座り直した。

 

 

ー士道sideー

 

「(それでドラゴン? どう思うよ?)」

 

≪・・・・まぁ、行き先は1番近い天宮クインテットになってしまう。ショッピングモールをうろついていると、〈プリンセス〉か無表情女と出くわす可能性がある。映画館は暗がりだからな、この女が何をしてくるか分からん。消去法だが、ランジェリーショップに行くしかあるまい≫

 

「(・・・・了解) え、ええと・・・・狂三。何か買いたいもの・・・・と言うか、見たいものってないか? た、例えばこう、身につけるもの・・・・とか」

 

「お洋服ですの? ああ、それは見たいですわね」

「や、洋服というか・・・・その下に着けるものというか・・・・」

 

「その下・・・・?」

 

そこで士道の言っていることに気付いたのだろうか、狂三がほんのりと染める。

 

「い、いや、やっぱりおかしいよな! よし、とりあえず別のーーーえ・・・・?」

 

士道の服の裾をきゅっと摘まれた。見やると、狂三が上目遣いになりながら、視線を士道に向けてきていた。

 

「士道さんが・・・・選んでくださいますの?」

 

「え!? あ・・・・あ、ああ・・・・」

 

士道が困惑気味に頷くと、狂三ははにかんだような笑みを浮かべた。

 

「ふふっ、ではーーー可愛らしいのを、お願いしますわ」

 

「え、ええと・・・・はい」

 

≪しゃんとせんか、このガラクタロボット≫

 

士道はドラゴンの言うとおり、ロボットのような挙動で歩き出した。

 

《驚いた。本当に乗ってくるなんて》

 

≪お前の義妹は本当にいい加減な指示しか出さんな。これではあの汚物<神無月>と大差ないのではないか?≫

 

「(・・・・前者の方は俺もそう思う。それで、1号と2号はどうだ?)」

 

アバター士道達の様子は、魔力経路でドラゴンには筒抜け状態なので、様子を聞く。

 

≪1号は〈プリンセス〉と水族館を回っている。どうやら〈プリンセス〉は生きて泳いでいる魚達に興奮しているようだ。2号は無表情女と水族館近くのコジャレたレストランで食事中だ≫

 

「(十香と折紙が近くにって、大丈夫なのかよ?)」

 

あの犬猿の仲と言うか、水と油の二人が出くわしたら、核爆弾に核爆弾をぶつけるようなものだ。まさに『ヤベーイ!』な状況である。

 

≪一応お前の義妹の組織もフォローに回っている。まぁこれくらいしか役に立たんのだから、存分に働いてほしいものだな≫

 

〈ラタトスク〉に対して、辛辣なコメントを言うドラゴンに苦笑いを浮かべる士道。

 

「(ガルーダ達にも来て貰えば良かったかな?)」

 

≪仕方あるまい。プラモンスター達は〈ハーミット〉の相手をしているのだからな≫

 

 

ー四糸乃sideー

 

士道の使い魔であるプラモンスター、レッドガルーダ、ブルーユニコーン、イエロークラーケンは、〈フラクシナス〉の個室で保護されている、識別名〈ハーミット〉・四糸乃と、四糸乃の左手に装着された『よしのん』と戯れていた。

 

『ピィー! ピィー!』

 

『ヒヒィィィィン!』

 

『キュゥ! キュゥ!』

 

『フムフム、ガルーダちゃん、ずっと前に〈ファントム〉の追跡をしていたらカラスに襲われて大変だったんだね。ユニコーンくんも野良犬さんに絡まれたり、クラーケンくんも野良猫さんに食べられそうになったりしたんだねぇ?』

 

「ふふふ・・・・」

 

なぜかよしのんはプラモンスター達の言葉が分かるようで、プラモンスター達とコミュニケーションをし、四糸乃はその光景を楽しそうに微笑んでいた。

 

 

ー士道sideー

 

「士道さん、どうかしまして?」

 

足を止めていた士道を不審に思ってか、狂三が声をかけてくる。

 

「や・・・・な、なんでもない」

 

駅のすぐ近くに聳えるビルに入り、エスカレーターを使って三階のランジェリーショップについた。

入り口からやたらとセクシーな下着が並べられており、当然、店員も客も全員女性。

士道が店に入ると、一瞬辺りから好機の視線が注がれる。狂三が隣にいるのが幸いしたが、あまり気持ちのいい空間ではない。

 

「まあ! 可愛らしいですわね! 士道さん、どちらが良いと思いまして?」

 

さっそくお気に入りを見つけた狂三が、上下セットの下着を2着示してくる。どちらも精緻なレースで飾られた可愛らしいデザインで、士道は思わず顔を赤くする。

 

「そ・・・・そうだな。ええと・・・・」

 

《士道、ちょっと待ちなさい》

 

 

ー琴理sideー

 

艦橋のメインモニタに、選択肢が表示される。

 

①【右手側。ピンク地に黒レースの妖艶なデザイン】

 

②【左手側。淡いブルーの爽やかデザイン】

 

③【「俺はもっと露出度の高い方が・・・・」後ろにかかっている下着を指差す】

 

「総員、選択!」

 

琴理が叫ぶと、すぐさま集計結果が表示されたが、僅差で多いのは以外にも、③だった。

 

「ここまで来たなら攻めに出ましょう! 最初に感覚を麻痺させておいて、キスへの抵抗を少なくするんです!」

 

クルーの声が響いてくる。琴理はフムと顎に手を当てた。

 

「ま、AIがあえて第三の選択肢を提示してきたんだし、試してみる価値はあるのかしらね。ーーー士道、③よ。狂三の後ろの下着を選びなさい」

 

 

ー士道sideー

 

「そ、そうだな・・・・どっちも良いけど、俺はあっちの方が・・・・」

 

≪おい、お前はああいうものが良いのか?≫

 

琴理の指示通りに指差したそれは、シースルー素材の、なんともきわどいセクシーランジェリーであり、士道は頬をピクリと動かした。

 

「士道さんはこれがよろしいんですの・・・・?」

 

「い、いや、なんと言うか・・・・」

 

士道がしどろもどろになっていると、狂三は手にしていた下着を元の場所に戻し、躊躇いがちに、士道が示したセクシーランジェリーを手に取った。

 

「や、狂三、何も無理にーーー」

 

「いえ、せっかく士道さんが選んでくださったのですもの。ーーー試着してみますわ。似合っているかどうか見てくださいまして・・・・?」

 

「え、と・・・・お、おう・・・・」

 

士道が頷くと、狂三は目の前にあった試着室に入り、カーテンを閉めた。

 

≪周囲の視線が強くなっているぞ、このムッツリスケベ≫

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

と、そこで居心地の悪い空気に辟易する士道の肩がちょんちょん、とつつかれた。

 

「ん・・・・?」

 

不思議に思って振り向いてみると、そこには確か、クラスメートで十香と仲良くなった亜衣・麻衣・美衣トリオだ。

 

「やーやー五河くん。なんでこんなとこいんの? 女装癖?」

 

「ていうか今日は十香ちゃんと水族館デートじゃないの?」

 

「え、まさかすっぽかしたの? 死にたいの? マジ引くわー」

 

亜衣、麻衣、美衣の順に口を開いてくる。

 

「え? あ、いや・・・・」

 

士道は思わず口ごった。なぜこの三人が十香との約束を知っているのかも気になったが・・・・今はそれどころではない。今狂三と一緒にいるのを見られたら、後々厄介な事になる可能性があった。

するとそんな士道を見てか、三人が一斉に士道を睨んできた。

 

「え? ちょっとマジ? ぶっちゃけあり得ない。十香ちゃんのお誘い断るとかーーー」

 

≪おい、なんでコイツら〈プリンセス〉が誘った事を知っているのだ?≫

 

確かにそこは気になるが、それどころではない士道は、慌てて首を振る。

 

「い、いや、そんな事ねえって! 今から行くところだよ!」

 

三人が疑わしげな眼差しを送ってくる。

 

「本当でしょうね? もし嘘だったら許さないかんね。私のお父さん、黒魔術結社の幹部なんだから。女の子に触れるたび寿命が一年縮む呪いとかをかけてもらうわよ」

 

≪そんな局地的な呪いが存在するのか?≫

 

「そうよ。十香ちゃん泣かせたりしたらタダじゃ済まさないわ。私のお母さんSMの女王様なんだから。泣きながらありがとうございますって言うまで調教してもらうわよ」

 

≪そう言うのはあの排泄物<神無月>の方が喜ぶな≫

 

「本気で骨も残らないと思いなさい。私の叔父さん、外国でヒットマンやってるんだから。この前誕生日にもらった『一人殺したらもう一人サービス券』使うわよ。マジ引くわー」

 

≪そんなサービス券を姪っ子のプレゼントに渡すとは、中々愉快な叔父だな≫

 

「そんな紳士服のサービスみたいな券で殺されてたまるか! て言うか一人殺してんのかよ!?」

 

三人の台詞にドラゴンは律儀にコメントし、士道はたまらず叫んでから、はあ、と息を吐いた。

 

「と、とにかく。十香との約束は破ってねえから安心ーーー」

 

≪できそうに無いな≫

 

「え?」

 

ドラゴンの言葉に嫌な予感を感じた士道の後ろで、試着室のカーテンが開かれる。

 

「どうですかしら・・・・?」

 

なんて、狂三が少し恥ずかしそうに足を摺り合わせながら、高校生にあるまじき布面積の下着と、それに申し訳程度に覆われた白磁の肌を晒した。

 

「・・・・ちょっと、五河くん?」

 

瞬間、周囲の温度が下がった気がしたのは気のせいではない。

 

「あ、あの、これはだな・・・・っ!!」

 

士道がなんとか弁明しようとしたら、身体にゾクッとした寒気を感じた。それは冷たく、鋭く、そして恐怖を感じる感覚・・・・殺気だ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

士道がバッ! と、ランジェリーショップの入り口を見やると、ゆったりとしたローブを纏った長い黒髪の少女がこちらを睨んでいた。

 

「っ!!? (ドラゴン・・・・アイツは・・・・?)」

 

≪ああ。ファントムだ≫

 

その少女が入り口から外に出ると、士道は意を決して、「あいたたたた・・・・!」と腹を押さえた。

 

「すまん狂三! ちょっと腹具合が悪い! トイレに行ってくるからしばらく待っててくれ! ちなみにその下着似合ってる! 可愛いぞ!」

 

「まっ/////」

 

士道はそう言って駆け出すと、後方で狂三が頬を赤くした。

だが、その二人の展開に三人が凄まじい怒声を士道の背中に放ってきた。

 

「ちょっと待てコラァァァァッ! なんで時崎さんがいるわけ!?」

 

「しかももうこんなエロ下着を選ぶ仲!? 十香ちゃんとは遊びだったの!?」

 

「今私は、貴様を刺し殺すか撃ち殺すか迷っている! マジ引くわー!!」

 

士道は泣きそうになるが、先ほどの少女を追う。インカムから琴理の声が響く。

 

《ちょっと士道! どこに行くつもりよ!?》

 

「〈ファントム〉だっ! さっきショップの入り口にいた女の子だ!」

 

《なんですって!?》

 

「アイツ! 俺に露骨に殺気を飛ばしてきた! 『アバター』達も回収する! 十香と折紙へのフォローを頼むっ!」

 

琴理が文句を言いそうになったが、士道はインカムを外して『ドライバーオンリング』を嵌めて、さっきの少女を追う。こんな事をしている場合ではないことは分かっているが、簡単な理由だった。あの少女を一目見たときに、士道は直感した。

 

「(あのファントムは、危険だっ!!!)」

 

伊達に一年も魔獣ファントムと戦ってきたわけではない。あのファントムから発せられる殺気、威圧感、存在感、そして虫けらを踏み潰すように人間の命を消し潰す事に何の躊躇いも持っていないような冷酷な危険性が、士道を動かした。

 

≪・・・・向こうの角を曲がったぞ! すぐに追え!≫

 

そしてドラゴンも、あのファントムの危険性を察したのか、さっきからファントムの気配を探索していた。

しかし、士道とドラゴンは気づいていない、あのファントムが殺気を放っていたのは、“士道<仮面ライダーウィザード>だけでは無かった事に・・・・“。

 

 

 

ー狂三sideー

 

「ふぅ・・・・士道さんたら。せっかくのデートですのに、忙しないですわね」

 

士道が去ってすぐに、狂三はランジェリーショップで士道が選んだ下着を買って、ビルの廊下に設られたベンチに腰かけていた。士道が選んだ下着を選んで買ったならば、士道も自分を意識するだろうと打算的な思考があったからだ。

ちなみに、亜衣・麻衣・美衣からは、【五河くん、あとで、泣かす】と伝言を言付かっていた。

 

「それにしてもまさか、『メデューサさん』が来るだなんて、あの方も一応女性ですから、下着でも買いに来たのでしょうか?」

 

狂三は顎に手を当てて思考しながら、“今自分の正面の先に現れた男性を見据えた”。

 

「どうなのでしょうか? 『ユウゴさん』、とでもお呼びしましょうか?」

 

狂三はクスッも小さく笑みを浮かべて、『ユウゴ』に問うた。

 

「はっ! 知ったことかよ、そろそろ目障りになってきた指輪の魔法使いの下見にでも来たんじゃねえか?」

 

「アラアラ、今メデューサさんに士道さんを始末されたら、こちらとしても都合の悪いのですけど?」

 

狂三がにこやかに目を鋭く見据える。

 

「だったら、決着と行くか・・・・なあ、〈ナイトメア〉!?」

 

「それも良いかも知れませんわね、『フェニックスさん』?」

 

狂三とユウゴ、『フェニックスファントム』は、ただならぬ雰囲気でお互いを睨んでいた。




ーオリジナルリング・『アバター』ー

能力

①士道の思考と性格を完全にコピーした分身体を構成する。
補足・分身体の数は士道の魔力の量によって精製される。現在の士道では2体まで。

②士道とは精霊達のように魔力の経路を伝って魔力を送られ構築されているので、士道は分身体に常時魔力を送っていなければならない。そして今の士道では2体の分身体を構築していると他の魔法(変身も含む)を使えない。

③分身体は本体士道の意思か、一定以上のダメージを受けると消滅する。
補足・消滅した分身体を構成していた魔力と、分身体が学んだ経験と知識は、本体士道にフィードバックされる。

こんな所ですね。
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