デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
士道の頬を張った琴理は鋭く士道を睨んだ。
「【俺には? 無理だ・・・・?】 ふん、あの程度で泣き言言ってるんじゃあないわよ! 昔の方が度胸があったんじゃあないの・・・・ッ!?」
「何の、話・・・・」
琴理の言っている事が良く分からず、頬を押さえながら訊き返す。
しかし琴理は答えず、士道の胸ぐらを掴んで続ける。
「貴方は・・・・っ、もっと恐ろしい精霊にだって立ち向かって見せたじゃない! 救って見せたじゃない! 無理だなんて軽々しく言わないで。貴方が諦めたら、狂三はもっと沢山の人を殺すわ。真那は狂三と・・・・自分の心を殺し続けるわ・・・・! 貴方にしか・・・・止められないのよ・・・・ッ」
「・・・・っーーー」
士道はゴクリと唾液を飲み込んだ。
琴理の言う『もっと恐ろしい精霊』というのが分からなかったが、後半の言葉を言われた瞬間、脳に染み渡った。
そう。殺しても死なない狂三が人を殺し、その度に真那が狂三を殺す。
真那は言った。それはずっと前から繰り返されていたことだと。
そしてそれはきっと・・・・狂三に精霊の力がある限り、これからもずっと繰り返されるのだろう。
そして、その精霊の力を封じれるのは、士道しかいない。
「・・・・・・・・」
士道は無言で、手を額に当てた。
もう絶対に、狂三に人を殺して欲しくない。
そして、真那に、狂三を殺して欲しくない。
ドラゴンが聞けば≪我が儘な独善小僧≫と言われるだろうが、これは士道の本当の真意だった。そしてその意思を成すためにどうすれば良いか、これも分かりきっている。
「・・・・そうだな」
言って、フラフラする足取りで先に進む。
「あ、ちょっと・・・・!」
琴理が慌てた様子で後を追ってくる。
「・・・・狂三にこれ以上人を殺させない為には、力を封印しなきゃならないもんな。真那にこれ以上狂三を殺させない為には・・・・俺がやるしかないもんな。分かったよ。・・・・それで満足だろ?」
「・・・・・・・・ええ」
なぜか、琴理の声は少しだけ、不安そうだった。
≪(ふん。こんなヤケクソな心境でどうにかなるのか?)≫
ドラゴンはまるでイジケた子供になっている士道の心境を敏感に察しており、冷めた態度で士道を見据えていた。
◇
その日の夜。士道はリビングのソファで横になり、グルグルと思考を巡らせる。
琴理は今日は仕事で〈フラクシナス〉に泊まると言っていた。
「・・・・・・・・」
ぼんやりと天井を眺め、細く長い息を吐く。
「(なあドラゴン・・・・)」
≪・・・・なんだガキ?≫
「(明日、狂三は学校に来るかな?)」
≪来るだろうな。ヤツの天使の能力が未だ分からんが、ヤツはまた何事も無かったように現れるな≫
「(そしたら仕事再開だ。狂三の好感度を上げて、キスをして、力を封印する。そうすれば全部解決だ)」
≪ふん。そんなビクビクと恐がっている小動物のように脅えているヤケクソな状態で、どうにかできると思っているのか?≫
「(なんだと・・・・?)」
≪今の貴様は、ただ恐いものから必死に逃げる方法を模索している、“臆病者”! にしか見えんな≫
「ーーーーーーっっ!」
重い身体を起こした士道は、臆病者の部分だけ大声で発したドラゴンに怒鳴ろうとするが、そこでリビングの扉が開き、十香がおずおずと顔を出した。
「十香・・・・?」
「・・・・うむ。入って良いか?」
「お、おう、もちろん」
十香は小さく頷き、リビングに入り士道の方に走り寄る。
「シドー。・・・・身体に触っても大丈夫か?」
「あ・・・・ああ、大丈夫だよ」
士道が答えると、十香はソファによじ登り、ソファと士道の間に入り込んだ。
「何してんだ・・・・?」
「いいから、少し黙っていろ」
十香はそう言って、士道の身体に手を回し、後方からぎゅうー、と抱きしめてきた。
「と、十香?い、一体何を・・・・」
背中の柔らかい感触に、士道は額に汗を浮かべて言った。
「・・・・ん。寂しい時や怖い時は、こうするのがいいとテレビで言っていた。・・・・『おかあさまといっしょ』・・・・という番組だったかな」
「・・・・・・・・」
比類なきまでに幼児番組だった。思わず苦笑する。
だけど、その言は正しいようだ。確かに、少し落ち着いた気がする。
≪ま、精神年齢がその番組の対象年齢よりも下回っているコヤツには、丁度良いかもな≫
「ぬ? 士道は幼子なのか?」
「十香、この冷血トカゲの言葉は、真に受けなくて良いからな・・・・」
「むぅ?」
腑に落ちない十香は首を傾げ、士道はドラゴンに対して頬をピクピクと動かし、ドラゴンは大きな欠伸をもらした。
そしてそのまま少しして、不意に、十香が唇を開いた。
「・・・・令音とドラゴンにな、話を聞いた」
「え・・・・?」
「狂三と真那の話だ。気になってドラゴンに問いただしていたら、令音もやって来てな。話してくれた」
「・・・・っ、そ、うか・・・・」
士道は唾液をゴクリと飲み下し、その言葉を吐いた。
前に訊いてみたが、ドラゴンは十香と四糸乃&よしのんには結構甘いようだからだろうが、令音は十香の精神状態を乱さないように、あまり十香に精霊とASTに関連の話はしないはずだが。
≪それほどまでに。今の貴様の精神状態が不安定だったからだろうが、それくらい察せよ、このションベン垂れのアホガキ≫
「(お前な・・・・!)」
ドラゴンと喧嘩しそうになる士道に、十香が口を開く。
「シドー。私がこの家に厄介になっていたとき言った事を覚えているか・・・・?」
「え・・・・?」
士道が訊き返すが、十香は続ける。
「【私と同じような精霊が現れたら・・・・きっと救ってやって欲しい】」
「ああーーー」
士道は小さく頷く。その言葉は良く覚えている。士道のその言葉に応と答えた。その気持ちに嘘はないし、その決意も変わらない。
「でも狂三は「ーーー変わらない。私と」え?」
十香は士道の背中に顔を押し付け、十香の腕に力が入る。
「・・・・私には、シドーがいてくれた。シドーが、私のキボーになってくれた、救ってくれた。ーーーでも狂三には、誰もいなかった。私よりもずっと長い間、誰からも手を差し伸べられずにいたのだ。もしシドーがいなくて、私がふた月前のあの状態のまま、ずっとずっと殺意と敵意だけに晒され続けていたらーーー私は、狂三のようになっていたかもしれない」
「・・・・・・・・」
そんな事ないと言おうとしたが、士道はやめた。
初めて会った十香は、今では考えられないくらい荒んでいた。終わりの見えない戦いに飽き、憔悴し、疲弊し、心が摩擦する寸前の絶望。
それを軽々しく断じるのは許されないと感じたからだ。
十香は首に巻いた『サンダルフォンリング』を取り出す。
「本当に、もう救いようがないほど、狂三が悪い精霊だったら、私がシドーを守る」
「え・・・・?」
「だから・・・・シドー。お願いだ。狂三の事を、もう一度だけ見てやってくれ。狂三にもう、人を殺させないでくれ。これ以上、心を摩りへらさせないでくれ・・・・」
「・・・・っ」
士道はゴクリと唾液を飲み込む。
≪少しは理解したか? この綺麗事大好き僕ちゃん?≫
「(ーーーああ。ようやくな)」
士道は狂三が人を殺すのが堪らなく嫌だった。
真那が狂三を殺すのが絶対に嫌だった。
この輪廻を終わらせる為に、“狂三を止める事”だと決意したが、重要なピースが欠けていた。
「・・・・ありがとう、十香」
「む・・・・ぬ? 何故だ? 私は礼を言われるような事は・・・・」
「・・・・いや、お前のお陰だ」
そう。狂三にキスをして力を封印せればならないのに、考えていたのは“狂三に殺される人”や、“真那の事”ばかりだった。
『狂三を救う』
あまりに許容から逸脱したものを見たから、頭から抜け落ちた、当たり前の事。
狂三は何人もの人間を殺してきた精霊。どんなに償っても許されない事をしてきた。
しかし、十香の力を封印する時、士道は十香を救いたいと心から思った。
理不尽に殺意を向けられる少女を助けたいと願った。
四糸乃の力を封印する時、士道は四糸乃を救いたいと心から思った。
敵意を向けられてなお相手を慮る少女が報われないのは嘘だと思った。
だから士道は行動し、ファントム達から守った。
確かに士道には、魔獣ウィザードラゴンの力を貰って戦う力と人智を越えた回復能力。そして精霊の力を封印する力を持っている。
狂三を、救う。
殺しの連鎖と輪廻に囚われた少女を、救う。
そして、真那も。
自分の妹だと言うあの少女にも、もう狂三は殺させない。あれ以上、自分と同じ魔法の力で、心を摩滅させたりしない。
妄想でも空想でもいい。
それができると信じなければ、士道が手を伸ばす事など不可能だ。
「ーーー十香。もう、大丈夫だ」
「む・・・・もう、寂しくないか?」
「ああ」
「もう、怖くないか?」
「・・・・それはちょっとまあ、怖いけども、・・・・でも、大丈夫だ」
「ん・・・・そうか」
十香は士道から離れ、士道は立ち上がると同時に、腹が空腹を訴えた。
「・・・・何か作るか。十香、食べていくだろ?」
「うむ! おぉそうだ! 昼に食べ損ねたドォナッツも食べよう! テンチョー殿からオスペを貰ったのだ!」
「そうか、じゃそうするか」
十香は機嫌良くマンションに戻るのを見送ると、士道は窓に映る自分を見る。
しかし、窓に映されているのは士道の姿ではなく、ウィザードラゴンだった。
≪なんだ、腰抜けで臆病な僕ちゃん?≫
「うるせぇこの性格悪の腹黒トカゲ。明日、狂三を狙って、メデューサがやって来ると思うか?」
≪ヤツの態度からして、〈ナイトメア〉と対立しているようだな。おそらく現れるだろう≫
「・・・・ドラゴン。俺は、狂三を救いたい」
≪はぁ、つい数時間前に殺されかけた精霊を救いたいとは、どこまでお花畑な脳ミソをしているのだ?≫
「何とでも言えよ。でも、俺が死ぬとお前も困るよな? 解放されていない以上、俺の肉体と同調しているお前は、俺が死ねばお前も死ぬんだからな・・・・」
≪・・・・腹立たしい事にな≫
「じゃ力を貸せ。俺が死ぬのはお前にも都合が悪いだろう?」
≪ふん。他力本願めが、良いだろう。不本意極まりないが、“我自身の為にも”、力を貸してやる≫
そう言うと、ドラゴンの姿は消え、士道の姿が窓に映っていた。
“ドラゴン自身の為”、が少し気がかりだったが、士道はもうすぐ来る十香の為に、台所に立って料理を始めたーーー。
ー琴理sideー
「令音」
琴理は〈フラクシナス〉艦橋でら琴里は艦長席から比較的近い位置に座っている令音の名を呼ぶが、返事が無いのを不審に思って、令音の手元を覗いて首を傾げた。
令音の手元のディスプレイには、何故か真那の顔と『ビースト』の姿が、画面一杯に拡大されていたのだ。
令音も集中していたようで、いつになく難しい顔をしていた。
「令音? 真那がどうかしたの?」
「・・・・・・・・!」
そこでようやく琴里の存在に気づいたのか、令音が隈まみれの目を向ける。普段から冷静沈着な令音にしては珍しい事だった。
「・・・・琴里か。ーーーん、少しね」
そう言って、令音は慣れた手つきでコンソールを操作し、真那が映った画面をズームアウトさせた。
「・・・・それより、シンの様子はどうだい?」
「ええーーーちょっと不安だったんだけど、十香と話して吹っ切れたみたい」
「・・・・そうか」
令音は小さく頷き、顔をフッと上げる。
「・・・・ああ、そうだ。頼まれていた解析が済んだよ」
令音の言葉に、琴里はピクリと眉を動かした。
先日入手した真那の毛髪と唾液を渡し、令音にDNA鑑定を依頼していたのである。真那が、本当に士道の妹であるかどうかを。
「で・・・・どうだったの?」
「・・・・ん、真那は、シンの実の妹と見て間違いない」
「ーーーっ、そ、そう・・・・」
琴理はゴクンと唾液を飲む。予想していなかったわけではないのだが・・・・やはり、少し胸がざわついてしまい、胸の辺りに手をやった。
「本当の・・・・妹、か。そんな子が、どうしてASTに入った上に、あんなに魔法の力を得たの?」
「・・・・いや、少し調べてみたが、正確には違う」
琴里の言葉を遮るように、令音が声を上げる。。
「どういうこと?」
「・・・・彼女はもともと自衛隊員ではなく、『DEMインダストリー』からの出向社員だ」
「ーーーっ、それって、DEM<デウス・エクス・マキナ>社・・・・?」
DEMインダストリー社。
英国<イギリス>に本社を構える世界屈指の大企業であり、〈ラタトスク〉母体のアスガルド社を除けば、世界で唯一顕現装置<リアライザ>を製造できる会社である。自衛隊ASTのみならず、世界中の軍や警察に秘密裏に配備されている顕現装置<リアライザ>は、全てこのDEM社製と考えていい。
精霊を狩ることにも非常に積極的であり、精霊保護の〈ラタトスク〉とは商売敵と言う事できる。
無論、同社にはCR-ユニットを扱う魔術師<ウィザード>も在籍しているのだがーーーその練度は、各国の特殊部隊員を上回るとさえ言われている。
「ちょっと待ってよ。余計意味が分からなくなってきたわ。士道の妹が、なぜDEMなんかで魔術師<ウィザード>をやってるの? それにあの『ビースト』って士道の〈仮面ライダー〉の力に匹敵し、精霊を殺せる力、DEMが持っていただなんて、〈ラタトスク〉の情報網にも入ってきた覚えもないわ」
「・・・・それはまだ分からない。だが・・・・」
令音は言葉を切ると、ギリと奥歯を噛み、怒りに震えるように拳を握った。
琴里は眉をひそめた。長い付き合いだが、こんな感情を露らにする令音は初めて見たからだ。
「一体何があったの?」
「・・・・これを見てくれ」
令音がコンソールを操作すると、画面に真那の写真と、士道を路地裏から離す際に、顕現装置<リアライザ>を使ったときに計測された細かな数値が表示されていた。
「っ・・・・これはーーー」
「・・・・ああ、全身に特殊な魔力処置が施されている。・・・・だが代償も大きい。恐らく。あと十年ほどしか生きられないだろう」
「ーーーっ、何よ、それ・・・・!」
琴里は忌々しげに呻いた。
そもそも、DEM社製の顕現装置<リアライザ>は完璧ではない。未だ演算核<コア>の処理能力が追いついていないため、“人間の脳で”それを補わなければならないのだ。
ゆえに脳波を増幅する為に、外科手術で小さな部品を埋め込むことが必要とされている。折紙達AST隊員も、髪に隠れて角のような突起が頭から出ている。
だがーーー真那の身体は、そんなレベルを遥かに超えていた。
それこそ・・・・身体の数割が精霊となっていると言っても良い状態だ。
「・・・・彼女がどんな決意でこれを受け入れたかはわからない。だが・・・・まだシンには明かさない方が・・・・いいだろう」
令音が重々しい口調でそう言い。琴理は、ゴクリと唾液を飲み込み唇を噛んだ。
「・・・・それで令音、あの『ビーストキマイラ』は、一体何なの? まさか士道のように・・・・」
「いや、彼女の変身状態を詳しく解析してみたが、どうもシンのウィザードと、彼女のビーストは似て異なる結果が表示された」
「それって・・・・?」
「まだ解析中だが、恐らくビーストキマイラは、何かしらの誓約で彼女に従っているのかも知れないね・・・・」
琴理と令音は、ビーストに変身した真那と、ビジョンで現れているビーストキマイラを難しい顔で見据えていた。
ー士道sideー
次の日の朝、教室に入った士道は、既に席に着いている狂三の姿が目に入った。
明らかな異常。一度体験しているが、やはり違和感があった。
死んだはずの少女が、何食わぬ顔をして登校してきている、なんてのは。
士道の姿を認めると、穏やかな微笑を作った狂三がペコリと頭を下げた。
「あら、士道さん。ごきげんよう」
「・・・・おう、おはよう」
その姿は、昨日と何ら変わらなかった。
だが、そこまで驚きはない。予想していた事態であり、士道は静かに挨拶を返した。
「昨日は楽しかったですわね。また是非誘ってくださいまし」
「そう・・・・か。楽しかった、か」
「ええ、とても」
狂三は、再びニコリと微笑む。それは士道とのデートの事なのか、路地裏の事なのか、士道には判別がつかない。
狂三はそんな士道の思案に気づいているのかいないのか、可愛いらしい微笑を顔に張り付けたまま言葉を続ける。
「でも、少し驚きましたわ」
「・・・・? 何にだ?」
「士道さんはてっきり、お休みになると思っておりましたので」
「っ・・・・!」
≪気後れするな≫
士道が訊き返すと、狂三は微かに目を細める。
一瞬、言葉が途切れそうになるが、ドラゴンに叱咤されて思い直し、唇を動かす。
「そいつは・・・・悪かったな。来ない方が良かったか?」
「いえ、士道さんがちゃんと登校してきてくれて、とても嬉しいですわ」
屈託のない笑顔でそう言った。
士道は動悸を抑えるように胸元を軽く叩き、狂三の真ん前に足を進めた。
「ーーー狂三」
「? なんですの?」
「俺は、お前を、救う事に決めた」
「・・・・? 救う?」
士道が言った瞬間。狂三の表情から温度が失ったのがわかった。
「・・・・おかしな事を仰いますのね、士道さん」
「もういいだろう、そういうのは。ーーーもうお前に、人を殺させない。もう真那に、お前を殺させない。それが、俺が昨日出した結論だ」
「価値観を押し付けないでいただけます? わたくし、甘っちょろい理想論は嫌いですの。貴方の中のドラゴンさんもそうだと思いますけど?」
「ああそうだな。アイツもこれを聞いて、『頭の中が性善説に酔っ払った幼稚な理想論小僧』って言ってたよ。ーーーでも悪いが、もう決めた事だ。お前は、俺が救う。何をしようと、絶対にーーー」
士道は『ドライバーオンリング』を嵌めた右手を握り、その拳を狂三に向けて突き出した。
「俺がお前の、最後の希望になってやる・・・・!」
士道がそう言うと、狂三は眉をひそめた。
だが数瞬の間何かを考え込むような仕草をした後、唇を開いてきた。
「ーーーなら、貴方が言っている事が、“希望になる”と言う言葉が本当かどうか、確かめて差し上げますわ」
「あ・・・・?」
「今日の放課後、屋上に来てくださいまし」
狂三はそうとだけ言って、士道から視線を外し、そのまま教室から去っていった。
≪大口を叩きおって、また腰を抜かして惨めな醜態を晒すのではないか?≫
「(んな事しねぇよ。絶対に狂三を、救ってみせる・・・・!)」
ドラゴンの嫌味を、士道は気を引き締めて答えた。
≪・・・・ふん。まあ〈ナイトメア〉の前に厄介な連中を片付けなければならないがな≫
「(ん? なんのことだ?)」
「見つけたわよ女の敵五河士道っ!!」
「首は綺麗に洗ってきたかっ!!」
「お命頂戴! マジ引くわーっ!!」
「げぇっ!!」
ドラゴンの忠告に首を傾げる士道の後ろから、亜衣麻衣美衣トリオが親の仇を見つけたような目で迫ってきた。
そう言えば昨日狂三とのデート中に彼女達と遭遇したのを忘れていた。激しく嫌な予感しかしないので、一目散に逃げる士道。
「待てや五河士道! その命、神に返しなさいっ!」
「逝きなさい・・・・! 華麗に激しく・・・・っ!」
「マジ引くわー! 私の判決を言い渡す、死だっ!」
「キバって行き過ぎだろお前らっ!!!」
≪ウェイクアップしているな≫
亜衣が剣とナックルダスターを持ち出し、麻衣がカギ爪を両手に装備し、美衣が鞭のようにしなるサーベルを持って士道に襲いかかり、士道は1限目の授業が始まるチャイムが鳴るまで、死ぬもの狂いで逃げたのであった。