デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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遂にフェニックスと士道が戦闘する。


窮地・狂三

ー士道sideー

 

士道は屋上で、両手をバッと開き、狂三に問いかける。

 

「狂三・・・・お前、一体何をしたんだ!? 何なんだ、この結界は・・・・!」

 

狂三は士道の反応が楽しくて仕方ないと言った様子で、笑みを濃くする。

 

「うふふ、素敵でしょう? これは『時喰みの城』。わたくしの影を踏んでいる方の『時間』を吸い上げる結界ですわ」

 

「時間を、吸い上げる・・・・?」

 

怪訝そうに言う士道に、狂三はクスクスと笑いながらゆっくりと歩み、優雅な仕草で髪をかき上げると、常に前髪に隠されていた左目が露にされた。

無機質の金色に数字と針の左目、時計そのもののような異様な目だった。そしておかしな事に、その時計の針がクルクルと逆回転していた。

 

≪・・・・・・・・≫

 

「な・・・・。それは?」

 

「ふふ、これはわたくしの『時間』ですの。命、寿命と言い換えても構いませんわ」

 

狂三は言いながら、その場でクルリとターンする。

 

「わたくしの“天使”は、それはそれは素晴らしい力を持っているのですけれど・・・・その代わりに、酷く代償が大きいのですわ。一度力を使う度に、膨大な私の『時間』を喰らっていきますの。だから、時折こうして、外から補充する事にしておりますのよ」

 

「な・・・・っ」

 

≪(奴の“天使”の能力は、『時間』か・・・・。だが、それならばあの復活能力は何だ? “『時間』を巻き戻して殺される前の状態に戻す能力”なのか? いや、それだけではない筈だ・・・・)≫

 

それが本当ならば、結界内で倒れている人達は今、狂三に残りの命を吸い上げられている事である。その事に戦慄する士道とは別に、ドラゴンは冷静に狂三の“天使”の能力から、狂三の復活の秘密を推察していた。

狂三は士道の表情を見ると、何故か寂しそうな顔になるが、すぐにその顔に凄絶な笑みを貼り付け、指先で士道の顎を持ち上げる。

 

「精霊と人間の関係性なんて、そんなものですのよ。皆さん、哀れで可愛い私の餌。それ以上でもそれ以下でもありませんわ」

 

士道を挑発するように眉を歪め、続ける。

 

「ああーーーでも、でも、士道さん、ドラゴンさん。あなた方だけは別ですわ。あなた方だけは特別ですわ」

 

「・・・・俺と、ドラゴンが?」

 

≪・・・・・・・・≫

 

「ええ、ええ。あなた方は最高ですわ。あなた方と1つになる為に、わたくしはこんなところまで来たのですもの」

 

「何だって・・・・? “1つになる”って・・・・どういう事だよ」

 

士道が眉をひそめる。

 

「そのままの意味ですわ。あなた方は殺したりしませんわ。それでは意味がありませんもの。わたくしが直接あなた方を“食べて”差し上げるのですわ」

 

“食べる”と言う表現が文字通りなのか比喩的なのか、それに判別はつかないが、士道の胃に冷たいものが広がった。

だが、そんな事で怯んでいられないと思い、グッと拳を握り、喉を震わせる。

 

「俺達が、目的だって言うなら、俺達だけを狙えばいいじゃねえか! 何でこんなーーー!」

 

士道が叫ぶと、狂三が愉快そうに言葉を続ける。

 

「うふふ、そろそろ『時間』を補充しておかねばなりませんでしたし、それに」

 

狂三はフッと、視線を鋭くして士道を射貫く。

 

「士道さん、あなたとドラゴンさんを食べる前に、今朝方の発言を取り消していただかないとなりませんもの」

 

「今朝の・・・・?」

 

「ええ。わたくしの、“希望になる”だなんて、世迷い言を」

 

「・・・・っ」

 

狂三の、あまりの視線の冷たさに、思わず唾液を飲み込む。

 

「ーーーねえ、士道さん。そんな理由で、こんな事をするわたくしは恐ろしいでしょう? 関係ない方々を巻き込むわたくしが憎いでしょう? 救う、希望になる、だなんて言葉をかける相手でないことは明白でしょう?」

 

狂三は、役者のように大仰に手振りして続ける。

 

「だから、あの言葉を撤回してくださいまし。もう口にしないと約束してくださいまし。そうしたなら、この結界を解いて差し上げても構いませんわよ? 元々わたくしの目的は、士道さんとドラゴンさん、あなた方お二人だけなのですもの」

 

「な・・・・」

 

≪ほお・・・・≫

 

士道は目を見開き、ドラゴンは面白そうに吐息を漏らす。その条件はあまりに簡単だ。たばかっているのではないかと疑うほどに。

 

《・・・・狂三は本気だ》

 

士道の懸念を察したのか、インカムから令音の声が聞こえ、狂三は嘘を吐いている形跡がなく、狂三は士道が条件を呑んだら本当に結界を解くと教えてくれた。

そして狂三は薄気味悪い笑みを浮かべて身をくねらせる。

 

「きひひ、ひひ。さあ、早く止めなければなりませんわよねぇ。急がないと手遅れになってしまう方といらっしゃるかもしれませんわよォ?」

 

「・・・・っ」

 

≪やるな。貴様の嫌いな事を的確に突いている≫

 

士道は狂三と目を合わせる。

士道が、言葉を撤回する。たったそれだけで。何も難しい事ではない。

逆にそうしなければ、結界の中にいる皆の命が危険に晒される。選択の余地は無かった。

 

「(ドラゴン、お前はどうする?)」

 

≪この学舎の奴らがどうなろうが我の知った事ではないし、関係ない事だ。それに貴様ごときと心中するなど、豚の尻に口づけした方が幾らかマシだな≫

 

「(ああそうかい! 俺もお前と心中するくらいなら殿町の奴の頬にキスした方がまだマシだよっ!)」

 

お互いに悪態を吐くと、士道は意を決して、唇を開く。

 

「・・・・結界を、解いてくれ」

 

狂三はまるで安堵したかのように息を吐く。

 

「なら、言ったくださいまし。もうわたくしを救うだなんて言わないと」

 

士道は言葉を続ける。

 

「それは・・・・できない」

 

「は・・・・?」

 

士道がそう言った瞬間、狂三はポカンと瞼と口を開く。何とも間抜けな有り様か。今まで士道は、狂三のそんな顔を見たことがない。

 

「・・・・あら、あら、あら?」

 

だが、すぐに狂三の顔が、不機嫌そうに曇る。

 

「聞こえませんでしたの? それを撤回しない限り、私は結界を解きませんわよ」

 

「・・・・っ、それは、解いてくれ。今すぐ!」

 

「なら」

 

「でも、駄目だ! 俺はその言葉を撤回できない!」

 

士道は叫び、首を振る。

 

≪我が儘なガキだな・・・・≫

 

ドラゴンが呆れたように声を発するが、それを撤回してしまったら、何も変わらない。

きっと士道はもう二度と、狂三に手を伸ばす事ができなくなるから。

 

「ーーー聞き分けがない方は嫌いですわ・・・・ッ!」

 

狂三は叫び、トン、トン、と軽やかにバックステップし、士道と距離を取り、そして右手をバッと頭上に掲げ、その手を中心に、空気がビリビリと震える。

ーーーその瞬間。

 

ウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーー

 

空間震警報がけたたましく街全域に鳴り響く。

士道は戦慄に顔を染めて呻く。

 

「(ドラゴン・・・・これって・・・・!)」

 

≪あの女、〈ナイトメア〉の仕業だ≫

 

士道とドラゴンは、狂三の狂気に満ちた笑みを見て確信する。

この空間震は、狂三が意図的に起こそうとしている。そんな事ができるだなんて聞いたことがないが、今この状況が全てを証明していた。

 

「きひ、きひひ、きひひひひひひひひひひひひッ、さぁさ、どォうしますの? 今のこの状態で空間震が起こったなら、結界内にいる方々は一体どうなりますでしょうねぇ」

 

「・・・・!」

 

このままでは近隣の住人はともかく、結界内の人々が犠牲になる。

ーーーのだが。

ふと・・・・士道は疑問が浮かんだ。

そんな士道の様子に気づかず、狂三は勝ち誇ったように唇を舐める。

 

「ーーーさあさ、士道さん? いかがですの? わたくしが恐ろしいでしょう? わたくしが憎いでしょう? これでも同じ事が言えまして? 弱き肉が! 強き捕食者に!」

 

「・・・・・・・・」

 

≪妙だな・・・・≫

 

ドラゴンの言うとおり、士道の頭は冷静に1つの疑問が浮かんだ。

なぜ狂三はそんなにも士道の言葉を撤回させたがるのか、士道が何を言おうが、そんな言葉を。

士道を『食べる』事が目的ならば、そんな言葉に構わなければ良いのに、それなのになぜ、そこまで気にするのか。

ーーー彼女曰く強き捕食者である筈の狂三が。弱き肉の士道の言葉を。

そこで令音の通信が入る。

 

《シン・・・・狂三の精神状態が変化している。まるで君を・・・・恐れているかのような数値だ》

 

「ぇ・・・・?」

 

ーーー狂三が士道を恐れている?

そのあまりに現実味の無い言葉に士道は一瞬混乱し、すぐに納得した。

 

「ああーーーそう、か」

 

士道は細く息を吐き、狂三を見る。

怖くて恐ろしくて仕方ない、精霊。

だけれどーーー。

 

「さあ! 士道さん、どうしますの? 貴方が言葉を撤回しなければ、何人もの人が死ぬ事になりますわよ!?」

 

狂三は士道から視線を逸らさないまま、高く掲げた右手をくっと握った瞬間、キィィィィィーーーン・・・・と言う耳鳴りのような音が辺りに響く。まるで空間が悲鳴を上げているかのように。

 

「く・・・・」

 

この空間震を何とかしないといけない。士道は必死に思考を巡らせ、ふと先程の狂三の言葉を思い出す。

 

「・・・・狂三」

 

「何ですの? ふふ、ようやく取り消す気になりまして?」

 

不敵に笑って言う狂三に、士道は構わず後を続ける。

 

「お前は、俺を食べるのが目的って・・・・言ってたな」

 

「ええ。そうですわ。殺したりしたら意味がありませんもの。貴方方はわたくしの中で、ずっと生き続けますのよ。うふふ、素敵でしょう?」

 

「・・・・・・・・」

 

狂三の一言で確信した。士道は内心でドラゴンに話しかける。

 

「(なぁドラゴン・・・・)」

 

≪好きにしろ。忌々しいが事に、あの回復能力があれば、挽き肉にならない限りは回復するからな≫

 

「(ああ)」

 

士道はその場から駆け出して、屋上の端までたどり着き、フェンスの頂点まで一気に跳んで着地した。こういう時ほど、ファントムとの戦闘で培った身体能力に感謝する。

士道の行動がわからない表情をする狂三に、士道は顔を向ける。

 

「・・・・っ、何のつもりですの?」

 

「空間震を止めろ。さもないとーーー」

 

ビッと校庭を指差す。

 

「俺は、ここから落ちて死んでやるぞ・・・・!」

 

「は・・・・はぁ・・・・っ!?」

 

さすがにこれは予想外だったのだろう、狂三が素っ頓狂な声を上げる。

 

「な、何をーーーっ!?」

 

と、そこで狂三が頭上をバッと見上げた。

 

「狂三・・・・?」

 

≪っ! 降りろ小僧! ファントムだっ!!≫

 

「何っっ!?」

 

士道が慌ててフェンスから降りて、屋上の床に着地するのと同時に、火の玉が屋上に落下した。

 

ドゴォオオオオオオオオンンンッ!!

 

「うおわっ!!」

 

「くっ!!」

 

士道は防御を取る暇もなく、衝撃波でフェンスに叩きつけられ、狂三は身を屈めて耐える。

煙が晴れるとそこには、無精髭を生やし、赤系統の派手な服を着た粗野な風貌の青年と、ラフな格好をした黒人男性が現れた。

 

「面白れぇ事してんじゃねぇかぁ? 〈ナイトメア〉よぉ??」

 

「ちっ・・・・!」

 

狂三が苦々しく舌打ちし、粗野な青年はフェンスから離れた士道をジロリと睨む。

 

「それに、おお! 会いたかっぜ、指輪の魔法使い!」

 

「っっっ!!!」

 

[ドライバーオン、プリーズ シャビドゥビタッチヘンシン~♪]

 

「変身ッ!!」

 

[フレイム プリーズ ヒー! ヒー! ヒーヒーヒー!!]

 

士道は青年に睨まれた瞬間、直ぐにウィザードライバーを起動させ、『フレイムウィザードリング』を翳し、フレイムスタイルへと変身した。

その男性を見た瞬間に、メデューサの氷のように冷徹な威圧感とはまた違った、焼きつくさんばかりの威圧感を感じたからだ。

 

[コネクト プリーズ]

 

「・・・・!!」

 

ウィザードに変身した士道は、ウィザーソードガン・ソードモードを構えた。

 

「おいケットシー。お前は〈ナイトメア〉の相手をしな」

 

『了解っす~』

 

黒人男性は、大きな白い猫の姿と身体に爪のような突起物が生えた容貌のファントム、『ケットシーファントム』へと変貌すると、両手に生やした爪で狂三に襲いかかる!

 

「あらあらあら? 猫のファントムですの? 少しやりづらいですわね~」

 

狂三はにこやかに笑みを浮かべているが、頬には一筋の汗を流していた。

 

「っ! 狂三!」

 

≪気を抜くなウスノロマヌケ! ヤツがくるっ!≫

 

その男性、ユウゴの姿が変貌した。

顔に両翼を広げた鳥の意図が見られる赤色の怪人。尖った嘴か爪のような金色の両肩に眼の色は水色。胸には小さな水晶が付いているファントム、『フェニックスファントム』。

 

『ようやく戦れるなぁ、魔法使い! 俺様の名は、フェニックス!!』

 

「っ! フェニックスって!?」

 

≪メデューサと同じ上位存在か。そんなヤツが現れるとは・・・・(〈ナイトメア〉にはそれほどの価値があると言うことか)≫

 

士道は思案するドラゴンに気づかず、大剣を持ち構えたフェニックスと切り結ぶ!

 

「ハァッ! テヤッ!!」

 

「ヘヘヘヘ!! オラ!」

 

「うわぁっ!」

 

士道は大剣ゆえに少々大降りになりがちなフェニックスの剣戟を受け止めようとするが、フェニックスのパワーに押されていく。

 

「ハハハハハハ!」

 

「お前、何が可笑しいんだよっ!?」

 

「可笑しいんじゃねぇ! 楽しいんだよっ!!」

 

「楽しいっ!?」

 

「ああ! 思う存分力を振り回して相手を痛め付けて、叩きのめして、潰しまくるっ! こんな楽しい事はねぇぜっ!!」

 

「ぐぁあっ!!」

 

フェニックスは大剣で士道の身体を何度も切りつけ、踏み蹴りでフェンスに叩きつける。

 

「ハハハハハハ!」

 

「うわっ!」

 

大降りに横切りをするフェニックスの大剣に転がって回避する士道。フェンスは大剣に切り裂かれ、切断面は焼け溶けていた。

 

「はっ!」

 

「オラァッ!」

 

さらに攻め立てるフェニックスの剣戟に、士道は横に倒れた。

 

「オラ立て!」

 

倒れた士道と大剣を振り下ろすフェニックス。

だが士道は両足を上げて大剣を押し返し立ち上がる。

 

「やるねぇ! そらっ!」

 

「うっ!」

 

大剣を振り回すフェニックスから士道は軽業師のような身のこなしで回避するが・・・・。

 

「オリャッ!!」

 

「うわぁぁぁぁっ!!」

 

フェニックスの大剣に切りつけられ、屋上の床を転がった。

 

「くそっ!」

 

[キャモナスラッシュシェイクハンズ! フレイム・スラッシュストライク! ヒーヒーヒー! ヒーヒーヒー!!]

 

「はーー! はっ! やっ!」

 

『フレイムスラッシュ』を十文字の炎の斬撃で放つ、が・・・・。

 

『フン!』

 

フェニックスは大剣で軽く防ぎ、炎が辺りに飛び、屋上の床を燃やした。

 

『ハハっ・・・・。その程度の火じゃ、効かねぇな』

 

「なっ! フレイムの炎が通じない・・・・!?」

 

≪魔力の次元が違うと言う事か・・・・!≫

 

驚愕する士道(とドラゴン)をフェニックスは指差す。

 

『魔法の火が使えるなら、この位やってみやがれ! ・・・・ハァッ!!』

 

「うっ! うっ・・・・あぁっ!」

 

フェニックスが身体から強力な火炎を放つと、士道は大きく吹き飛び、屋上の床を転がった。

 

『フフッ。これが地獄の、業火ってもんだ!』

 

炎の中で告げるフェニックスのその姿は、まさに炎から生まれる不死鳥、フェニックスだった。

 

「っ・・・・だったらこれだ!!」

 

[ウォーター、プリーズ スイ~スイースイースイ~♪]

 

士道は『ウォーターウィザードリング』を嵌めてドライバーに読み込んで、ウォータースタイルに変わった。

相手が火属性ならば、水属性で攻めようと考えたのだ。

 

[キャモナシューティングシェイクハンズ! ウォーター・シューティングストライク! スイスイスイ! スイスイスイ!]

 

「ハーッ! ハッ!!」

 

ソードガン・ガンモードで水龍の弾丸、『ウォーターシューティング』を放つ。

が・・・・。

 

『フンッ!』

 

これまでもフェニックスは大剣で余裕に切り捨てた。

 

『無駄だなぁ。それぽっちの水で、俺の炎が消せるかよ』

 

フェニックスが士道に近づく。

 

≪エレメントチェンジも意味をなさないか・・・・!≫

 

「なんて奴だ・・・・!」

 

[バインド プリーズ!]

 

『ん? ほっ!』

 

士道は[バインド]で水の鎖を生み出しフェニックスに巻き付けるが、フェニックスは身体の表面に炎を生み出し、水の鎖を瞬間蒸発させた。

 

『ヘヘヘヘ・・・・』

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・!!」

 

士道は自分の魔法がまったく効かないフェニックスの圧倒的な強さに、呼吸が荒くなる。

 

『ウリャ!!』

 

「っ!」

 

[ディフェンド プリーズ] [ディフェンド プリーズ!] [ディフェンド、プリーズ] [ディフェンド、プリーズ][ディフェンド、プリーズ]・・・・。

 

大剣を振りかぶるフェニックスに、士道は『ディフェンド』で水の壁を次々と作るが、フェニックスは難なく水の壁を炎の大剣で切り裂き、蒸発させていく。

 

『ハァッ!』

 

「ぐぁっ!!」

 

フェニックスが大剣を振り下ろすと、士道はソードガン・ソードモードで防ぐが、フェニックスに力に押され、片膝を床につく。

 

『テメェごときの魔力で俺に敵う訳ねぇだろ。オラッ!』

 

「ぐあぁっ!!」

 

遂に力負けして、フェニックスの大剣が士道の身体を何度も切りつけられ、士道の身体は膝立ち状態になった。

 

「あっ・・・・あぁっ・・・・!」

 

『もう終わりか?』

 

「うぅっ!」

 

フェニックスは士道の首を片手で掴み上げ、士道の身体は床から浮いた。

 

『だったら・・・・くたばれ!』

 

フェニックスは士道の首から手を離すと、業火を戻ったら大剣を士道に振り下ろしたーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまで、ですわよ、フェニックスさん・・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、大剣が士道に当たる瞬間、その声が響くと同時に、士道は床に倒れる。

 

「ゲホッ! ゲホッ! な、何が?・・・・っ!?」

 

士道が顔を上げると、フェニックスの身体に黒い影が纏わり付き、フェニックスの身体を拘束した。

 

『くっ、〈ナイトメア〉・・・・テメェ・・・・!!』

 

フェニックスが首を後ろに振り向かせると、ケットシーと相対していた筈の狂三が、肩で息をしながら立っていた。

 

「士道、さんは、わたくしの、獲物なの、ですわよ・・・・!」

 

「狂三? お前、どうやって・・・・?」

 

精霊の天敵であるファントム、それもたった今士道を圧倒したフェニックスを拘束した事に、士道は唖然となり、狂三も呼吸が落ち着いたのか、淡々と声を発する。

 

「簡単な事ですわ。確かに魔力の塊であるファントムには、精霊の力、霊力を反発する事ができますわ。ですが、“攻撃ではなく拘束”ならば、わたくしの影で動きを封じる事ができますわ」

 

《なるほど。影をファントム達の身体に巻き付けて拘束したと言う事か・・・・》

 

令音から聞いて周りを見ると、ケットシーもフェニックスと同じように影で身体を拘束されていた。

 

「・・・・狂三」

 

士道が仮面を部分解除して狂三に近づくと、狂三はキッと士道を睨み、興奮した様子で声を荒らげた。

 

「信じられませんわ! 信じられませんわ! わたくしがいなかったら間違いなく! 本当に殺されていましたわよ! このフェニックスもメデューサも! 人間の命を虫けらを踏み潰すよりも簡単に奪う事に欠片も慚愧を感じない! わたくしでもマトモに戦ったら危険な怪物何ですのよ!!」

 

「あー・・・・その、なんだ・・・・ありがとう」

 

「あああああああああ、もうッ! 馬ッ鹿じゃありませんの・・・・ッ!」

 

士道は頭をワシワシとかく狂三に向かって声を上げる。

 

「狂三、お前、何で俺を助けてくれたんだ?」

 

「・・・・っ、それは、貴方に死なれると、わたくしの目的が達せなくなるから・・・・」

 

「そっか、じゃあやっぱ俺には人質としての価値があるって事だな?」

 

「・・・・っ」

 

士道は、狂三に指をビッと突きつけた。

 

「さあ、じゃあ空間震を止めてもらおうか! ついでにこの結界も消してもらう! さもないと首を切って死ぬぞ!」

 

士道は首筋にソードモードの刃をつけた。 

 

「そ、そんな脅しがーーー」

 

「脅しと思うか?」

 

「ぐっ・・・・」

 

狂三は一瞬悔しげな顔を作った後、指をパチン鳴らすと、周囲に響いていた耳鳴りのような音と重い空気が消えた。

 

「ま、まあ、構いませんわ。もともとわたくしの狙いは士道さん達だけですもの。何も問題ありませんわ。何も問題ありませんわっ!」

 

狂三が自分に言い聞かせるように叫ぶと、バッと両手を開いて士道の方を向いた。

士道とて、黙っていない。

 

「じゃあもう一つ、聞いてもらおうか」

 

「ま、まだありますの・・・・っ!?」

 

狂三が困惑したように言う。

 

「ああ、一度でいい。ーーー狂三。お前に一度だけ、やり直す機会を与えさせてくれないか」

 

「え・・・・?」

 

狂三が驚いたように目を見開くが、すぐに眉をひそめる。

 

「・・・・まだそれを言いますの? いい加減にしてくださいまし。ありがた迷惑でしてよ。私は、殺すのも、殺されるのも、大ッ好きですの! あなたにとやかく言われる筋合いはありませんわ!」

 

士道を拒絶するように狂三が叫んでいる。何かに怯えているように聞こえた

それを感じた士道は静かに声を発する。

 

「狂三、お前さ。誰も殺さず、命を狙われずに生活した事って・・・・あるか?」

 

「・・・・っ、それは・・・・」

 

「それじゃ、分かんねえじゃねえか。殺して、殺されるだけ日々がいいだなんて。もしかしたら、そんな穏やかな生活を、お前も好きになれるかも知れねえじゃねえか・・・・っ!」

 

「でも、そんなことーーー」

 

「できるんだよ! 俺になら!」

 

士道が叫ぶと、狂三は気圧されたように息を詰まらせ、士道はさらに続ける。

 

「お前がやってきたことは許されることじゃねえよ。一生かけて償わなきゃならねえ! でも・・・・ッ! お前がどんなに間違っていようが、狂三! 俺がお前を救っちゃいけない理由にはならない・・・・ッ! 俺がお前の、希望になっちゃいけない道理にはならないんだ・・・・ッ!」

 

「っーーー」

 

狂三が、数歩後ずさる。士道はそれを追うように踏み出す。

 

「俺はお前を助けたい。誰かが絶望に苦しんでいるなら、俺は手を伸ばしたい! 助けたい! それは狂三、お前だって同じなんだっ!」

 

そう言って、士道は手を伸ばす。

 

「わ、わたくし・・・・わたくしはーーー」

 

狂三が混乱したように目をぐるぐると泳がせて動かなくなった。

 

 

ードラゴンsideー

 

『・・・・何だ? この違和感は??』

 

士道の体内から状況を見ていたドラゴンは、狂三に対して、言い様の無い違和感を感じていた。

 

『プリンセス、今どこにいる?』

 

《ドラゴンか?! “今私の目の前に狂三がいる”が、士道は無事なのかっ!?》

 

『っっ!?? まさか・・・・!』

 

十香からの言葉で、ドラゴンは今まで狂三に抱いていた違和感に最後のピースが嵌まった。

 

『小僧! その女はーーー』

 

 

ー士道sideー

 

士道の体内からドラゴンの声が響くより一瞬早く、狂三が声を発する。

 

「士道さん、わたくしは・・・・本当に・・・・っーーー」

 

とーーー狂三が何かを言おうとした瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー駄ァ目、ですわよ。そんな言葉に惑わされちゃあ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこからともなく、そんな声が響くと。士道は眉をひそめる。だってその声はーーー

 

「ぎ・・・・ッ!?」

 

と、士道の思考を遮るように、目の前に立っていた狂三が、奇妙な声を漏らす。

 

「狂三・・・・?」

 

≪やはり、これは・・・・!!?≫

 

士道はそちらを見て、ドラゴンは推察が確信となり、凍りついた。

 

「ぃ、あ、ぁ・・・・」

 

狂三が目を見開き、苦しげに声が響く。

狂三の胸から視線を下へやると、一本の赤い手が生えていた。

 

「え・・・・」

 

そこでようやく、士道は状況を理解した。

いつの間にか何者かが狂三の後方に現れ、狂三の胸を貫いていたのだーーーーーーーー。




次回、狂三編終了。
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