デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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説明・琴里

ー輪島sideー

 

士道達が学校に行っている昼頃。

輪島は新しい『魔法リング』のカッティングを終えると、面影堂の扉が開いた音が聞えて店に出た。

 

「あ、あの、はじめまして・・・・」

 

「おや? 随分可愛いお客さんだな。それに、村雨さん?」

 

店に入ってきたのは、つばの広い麦わら帽子で隠した女の子、精霊〈ハーミット〉と呼ばれた少女、四糸乃と相棒のよしのん。〈ラタトスク〉の解析官である女性村雨令音だった。

 

「・・・・なるほど、この子も十香ちゃんと同じ精霊ですね」

 

「・・・・よく分かりましたね」

 

「まぁなんとなく十香ちゃんに似た雰囲気があったからね。それで君が、話に聞いた四糸乃ちゃんと、相棒のよしのんだね?」

 

「は、はい・・・・」

 

『ヨロシクね~、輪島のおじさん』

 

令音の後ろに隠れる四糸乃だが、よしのんを嵌めた左手を伸ばし、よしのんは両手をパタパタと動かしていた。

 

「それで、どうしたんですかな?」

 

「実は、レッドガルーダ、ブルーユニコーン、イエロークラーケンが指輪に戻ってしまって。シンはまだ学校ですから、輪島さんに聞いてみようかと」

 

令音はプラモンスター達の指輪を懐から取り出して差し出す。

 

「あっそれか、安心して良いよ。おそらく魔力が切れて元に戻っただけだからね。士道にもう一度召喚してもらえば大丈夫だよ」

 

「そうですか。それは良かった」

 

プラモンスター達が指輪に戻ってしまい、四糸乃が泣きそうになり、霊力が逆流しそうになっていたので安心する。

 

『ドラゴンくんの言うとおりだったね?』

 

「う、うん・・・・」

 

令音と輪島に聞こえないように、コッソリと話す四糸乃とよしのん。実は霊力が逆流しそうになった際、士道の体内にいるドラゴンから。

 

《安心しろ。輪島って男に会えばどうすれば良いか教えてくれる。村雨って無表情の女に聞けば連れていってくれるぞ》

 

と、念話を聞かされたのでここに来たのだ。実はドラゴンとは霊力を封印してからちょくちょくよしのんと共に話し相手になってもらっていたのだ。

 

「あっそうだ、四糸乃ちゃん。これを士道に渡してくれるかな?」

 

輪島は先ほどカッティングを終えたリングを四糸乃に渡した。

『紫色のゴツい人型が彫られたリング』だ。

 

「輪島さん。これは?」

 

「うん。多分新しいプラモンスターだと思う。ガルーダ達を復活させるついでに、ソイツも士道に渡した来てくれるかい?」

 

「は、はい・・・・」

 

四糸乃は恐る恐るといった感じで輪島からリングを受けとった。

 

『やったね四糸乃! 新しいお友達ができるよ!』

 

「う、うん・・・・」

 

「それじゃ輪島さん。私達はこれで・・・・」

 

「ああ。たまにはお客さんとして来てくださいね~」

 

令音はそのまま放課後に起きる作戦の為に四糸乃を連れて〈フラクシナス〉に戻った。

四糸乃達が店を出るのを確認した輪島は、工房に戻った。

 

「さて、コイツらもカッティングしちゃいますか・・・・」

 

昨日、海外に出張している女房が送ってきた『三つの魔法石』を見据える。

その魔法石は、青、緑、黄の光を放ち、強力な魔力を秘めている事が分かった。

 

 

 

 

 

ー士道sideー

 

燃える。家々が燃える。町々が燃える。世界が燃える。

パチパチ、メラメラ、ゴウゴウと、士道の視界の中で焔が躍り狂う。

それでも士道は、足を止めなかった。

 

【琴里・・・・っ! 琴理!】

 

ただひたすらに妹の名を呼びながら、地獄の化した町を走る。

11歳の士道には、今この状況が理解できなかった。家に戻ろうとしたら、見慣れた街が丸ごと炎に包まれていたのだ。

今日は琴里の9歳の誕生日だった。そのプレゼントを買いに、士道は駅前まで出かけていた。そのお陰で火災は免れたから琴里に感謝するが、肝心の琴里が家に残っている筈だ。

忙しい両親は娘の誕生日だと言うのに、いつものごとく仕事で家を空けている。今、家には琴里一人だ。

泣き虫の琴里はきっと逃げる事ができず泣いている。その姿が頭に掠めた瞬間、士道は走り出した。

琴里は“何もなかった”士道の家族になってくれた優しく可愛い士道の妹。

母親に捨てられ、絶望に沈みそうになっていた頃、士道の父母に、そして琴里に救われた。

だから今度は、士道が琴里を救う。琴里の為ならば、命すら惜しまなかった。

 

【琴里ーーーーッ!!】

 

幾度も喉を震わせて家へと走る。

だが、目の前の街並みで所々に燻っていた炎の残滓を残し、綺麗に舐め取られたように消え失せた事に、士道は足を止めた。

そして、その直中にに。一人の小さな女の子が、力無くへたり込み、泣きじゃくっていた。

 

【あれはーーーー】

 

焔がユラユラと揺らめくそこには、袖と裾が広がる和装、頭部に角と奇妙な出で立ちの少女だったが、その髪に括られた“白いリボン”が、可愛い妹であると士道は分かった。

 

【琴里!】

 

手にした鞄を放り、名を呼んで“泣いている妹”に、琴里に方に走る。

 

【ぅ、ぁ、ぁ、おにぃちゃん・・・・っ、おにーちゃん、おにーちゃん・・・・ッ!】

 

涙でグシャグシャになった顔を両手で拭い、琴里が士道を呼ぶ。

が、士道が近づいた瞬間、琴里の身体にまとわりついた焔が大きく膨み、琴里が目を見開き、肩を震わせ、喉を潰さんばかりに涙に濡れた大声を上げた。

 

【おにーぢゃん! 来ぢゃだめぇぇぇぇぇっ!!】

 

【ーーーえ?・・・・ぁーーーー】

 

呆然と声を発した士道は、体積を増した琴里の焔の奔流を受け、軽々と吹き飛ぶ。

ドサッ、と背中から地面に落ちた士道の身体は全身が大火傷を負って、身体はあまりの激痛に悲鳴を上げていたが、意識だけはボンヤリとして、空を見上げていた。

しかし、徐々に痛みに苛まれ、意識が遠くなっていく。

 

【おにーちゃん・・・・っ!】

 

這うように琴里がすぐに駆け寄り、士道の瞳には、大粒の涙を流す琴里の顔が映る。これ以上琴里を泣かせば士道はお兄ちゃん失格だ。

しかし、霞む視界。滲む琴里の顔。薄れゆく空の色。その全てが、どんどん実像を失う。

だが・・・・その時。

 

【ーーーーねえ、彼を助けたい?】

 

そんな声が、士道と琴里の上から響いた。

 

 

 

* * *

 

 

 

≪おい起きろ。とっとと起きろ、このクズノチビタマムシが・・・・!≫

 

バシンッ!

 

「ーーーーつっ・・・・ここは・・・・」

 

士道の蟠っていた微睡みを切り裂いたのは、ドラゴンのいつもの罵声&尻尾でのド突きだった。

しばしの間唸りを上げて目を開くと、そこは〈ラタトスク〉所有の空中艦〈フラクシナス〉の医務室だった。近くのテーブルにはリングとドライバーが置かれていた。

 

「あいたたたた・・・・」

 

士道は身体を動かそうとするが、節々が悲鳴を上げ、小さく顔をしかめた。

唇に微かな違和感を感じる。

 

「(おいドラ・・・・)」

 

≪・・・・・・・・≫

 

「・・・・・・・・あっ、十香・・・・?」

 

士道は気絶してから何があったかをドラゴンを聞こうとしたが口をつぐみ、ベッドにもたれ掛かるように十香が眠って事に気づいた。

その寝顔は冗談と思ってしまうほど美しく、見目麗しく、天使の寝顔と言っても過言ではなかった。・・・・口の端しから垂れた涎で、台無しにしていたが。

十香は士道が起きたのに気づかず、静かに眠っていた。

 

「なんで十香がこんなところに・・・・いや、それよりなんで俺はーーーー」

 

と、そこで医務室の入り口が開き、呟きを止めて目を向けると、令音と四糸乃とよしのんが令音の影に隠れるように立っていた。

 

『おー、士道くん。なぁーによ、元気そうじゃないの。心配してそんしちゃったわぁよー』

 

「無事で・・・・よかった、です」

 

「四糸乃によしのんまで。一本どうしたんだ・・・・?」

 

士道が視線を令音の方に戻す。

 

「それで、令音さん。なんで俺、こんなところに・・・・?」

 

「・・・・ん。昨日、時崎狂三との交戦の後、気絶した君をここに搬入してね」

 

「・・・・っ!」

 

狂三の名を聞いた瞬間、昨日の出来事が鮮明に思い出し、士道は取り乱して令音に詰め寄る。

十香の容態。

精霊の姿の琴里。

折紙と真那はどうしたか。

狂三はどうなったか。

いつもなら狼狽える士道を内部のドラゴンがしっぽでのド突きと罵詈雑言で強制的に黙らせるが、今回ドラゴンは何もせず、令音が士道の頭を抱えるように、ぎゅっと抱きしめた。

 

「んー! んー!?」

 

「・・・・よしよし」

 

言いながら令音が頭を優しく撫でてくるが、士道は顔に押し付けられた豊満で柔らかく、温かな感触に気が行っていた。

 

≪(まるで母親にあやされるマザコンボウヤだな)≫

 

ドラゴンの罵倒に気づかず、士道は降参を示すように令音の腕をタップした。すると数秒後に、令音は身を離した。

 

「・・・・落ち着いたかい?」

 

「は、はぁ・・・・」

 

大きく息を吐く士道。後ろで四糸乃が手で赤い顔を覆うが、指の隙間からしっかり見ていた。

 

それから令音が何が起こったかを説明してくれた。

近隣の病院はパンク状態だが、死者は出ておらず、琴里の攻撃を防ごうとした真那は衝撃波で吹き飛び、その時に気を失い変身が解け、折紙と共に後から現れたAST隊員に回収され、自衛隊天宮病院に搬入された。

十香も士道と一緒に回収され、自分の傷をおして、士道の看病をし、疲れて眠ってしまった。

しかし、〈ナイトメア〉こと、時崎狂三は、隙を衝いて逃げた事を聞いた。

 

「・・・・っ」

 

【大口を叩きおって、また腰を抜かして惨めな醜態を晒すのではないか?】

 

ドラゴンの言葉を思い出し、士道は奥歯を噛みしめ、拳を握る。

 

「(ーーーー何も、出来なかった)」

 

狂三も、真那も、誰も救えず助けられず、“希望になる”だなんて大口を叩いておきながら、フェニックスに完膚無く叩きのめされ、ドラゴンの思惑を聞かされて変身する事すらも躊躇い、その結果がこれだ。

狂三に重傷を負わせ、真那や折紙に〈仮面ライダー〉である事を知られ、その折紙や十香、学校の皆を巻き込んだ。そこまでやった挙げ句、狂三の力を封印する事も叶わなかった。

 

「く、そ・・・・っ」

 

自分の無力感に士道は悔しげに毒づき、ベッドを殴る。

 

「・・・・君はよくやった。あまり自分を責めないことだ」

 

「で、でも・・・・!」

 

「・・・・狂三があんな力を隠しているとは、誰も予想できなかったろう。むしろあの一件で死者が出なかったことを喜びたまえ。これで終わりではないんだ。まだ狂三を救いたいと思っているなら、その手は彼女の頬を叩いて叱りつける為にとっておきたまえ。勿論、指輪は外してね」

 

「・・・・はい・・・・っ」

 

押し殺すように言った士道は、ハッと目を見開いた。重要人物の事が欠けていたからだ。

 

「令音さん・・・・! 琴里は今、どこにいるんですか?」

 

「・・・・案内しよう。立てるかい?」

 

「は、はい」

 

士道は布団を足元に畳み、ベッドの脇に揃えてあった靴を履いて立ち上がると、軽い立ち眩み感じ、姿勢を崩しそうになるが、四糸乃が駆け寄り、士道の身体を支えてくれた。

 

「お、おう、悪い。ありがとうな、四糸乃」

 

「い、いえ・・・・」

 

『ひゅー』

 

恥ずかしそうに俯く四糸乃によしのんが口笛(?)を吹いた。

令音が様子を見て、休んだ方が良いと言うが、士道は早く琴里の所にと言って、ゆらりと踵を返して、足を進め、士道は四糸乃に支えてもらいながら、ドライバーとリングを回収して一緒に向かった。よしのんが器用にニヤニヤとしていた。

そのまま士道と四糸乃は令音に付いていきながら、〈フラクシナス〉の狭い通路を歩いていく。

〈フラクシナス〉の構造を士道はそこまで詳しくないが、令音に連れられて付いた扉は、まるで銀行の大金庫を思わせるほど、大きく頑強な造りとなっており、士道は思わず息を呑む。

 

「ここって・・・・」

 

士道の問いに令音は答えず、扉の横に設られた電子パネルを操作すると、扉が左右に開かれた。

 

「・・・・さ、来たまえ」

 

令音に連れられ部屋に入ると、士道は眉を寄せた。

薄暗い実験室のような風情。

奥はマンションの一室のような空間。

まるで猛獣を閉じ込めて監視する檻のような空間。

その奥に、ガラスに隔てた場所に、椅子に腰かけて優雅に紅茶を飲み、霊装ではなく、いつもの私服姿の琴里がいた。

 

「琴里!」

 

「・・・・こちらの音声は届かない。ーーーーシン。ここからは君一人だ」

 

令音はガラスの壁の一角の扉のような場所に進めた。

四糸乃に礼を言った後、よしのんがプラモンスター達が消えた事を告げ、輪島が作った新しいリングを士道に見せる。

士道は一瞬渋面を作るが、プラモンスター達を召喚した。

 

[ガルーダ プリーズ][ユニコーン プリーズ][クラーケン プリーズ]

 

プラモンスター達を召喚すると、プラモンスター達は四糸乃の肩に乗り、士道は新しいリングを読み込んだ。

 

[ゴーレム プリーズ]

 

新たなプラモンスター、紫色の人型『バイオレットゴーレム』を召喚した。

 

『ーーーー!』

 

ゴーレムは、士道達の顔を見ると、逃げるように物陰に隠れた。

 

「おいおい・・・・」

 

「し、士道さん。あの子は私達が・・・・」

 

『ああ。士道くん。あの子はよしのん達が相手をするから、琴里ちゃんの側に行ってあげなよ』

 

「あ、ああ」

 

士道は四糸乃短く礼を言うと、令音の方へ歩き、部屋を隔てるガラスの壁が開き、士道が部屋に入ると、緊張の糸が張り詰めた。

 

「・・・・ん? あら、士道じゃない。目が覚めたのね」

 

「お、おう・・・・」

 

士道の闖入に気づいた琴里が顔を上げ、士道は何故か気まずい気がして、ぎこちない調子になる。

 

「突っ立てないで座ったら? 案山子志望だって言うのならその夢応援するけど」

 

「あ、いや・・・・ん、そうだな」

 

言われるがまま、琴里の向かいに腰かけるが、そのまま二人は無言の時間が続いた。

それから琴里がチュッパチャップスをくわえて、自分の事を話した。

 

「私は、五河家に生まれた人間。それは間違いない。でも、今から五年前。ーーーー私は、精霊に“なった”。いえ、正確に言えば、精霊の力を持った人間って言った方が適当かもしれない」

 

その時、士道は先程の夢を思いだし、それを琴里に話すと、琴里は自分が士道から霊力を引き戻した影響かもしれないと思案するが、置いていかれそうになった士道が呼び止め、改めて話を進めるとーーーー。

琴里は自分が精霊になった五年前の出来事をほとんど覚えておらず、精霊の力も一応シミュレーションで訓練していたが、実際に使ってのは狂三との戦闘で初めてだったという。空間震も令音の計算で可能であっただけで、失敗すれば倍の被害になると言った。

琴里は、士道と琴里の記憶を、“誰かが消した”と推察した。が、あくまで可能性一つと言った。

その出来事で、琴里は〈ラタトスク〉に見出だされ、精霊を救いたいと思い〈ラタトスク〉に入った。

そして士道が精霊の説得役に選ばれたのも、原因は分からないが精霊の力を封印する力があるのが分かり、さらに士道の回復能力も、元々は琴里の〈灼爛殲鬼<カマエル>〉の能力であるであると言い。

自分が言ったのに狂三を守るために無茶をやった士道を殴り、長いお説教をした。

話を戻し、精霊の力は琴里でも制御できないほどに強力な破壊衝動をもたらし、今は薬でどうにか抑えている状況なのだと言う。

 

「・・・・怖いのよ。自分が何かをしてしまうのか分からないの。自分で、自分が、抑えられない。もしかしたら、記憶が残っていないだけで、五年前に、誰かを殺してしまっている可能性だってある。もしそうだったら、私はーーーー」

 

「琴里・・・・」

 

そこで琴里は恐怖を払うように首を振り、話を戻す。

琴里が言うには、士道から戻した琴里の霊力は、いつ暴走するか分からない状況であり、それを阻止するために、琴里の霊力の再封印。つまりーーーー

 

「ーーーー私を、デレさせてちょうだい」

 

「は・・・・はぁっ!?」

 

十香と四糸乃にしたように、自分の霊力を士道に封印することになった。

何かに耐えるように蹲る琴里を放って置けなかったが、令音が琴里の容態を見るために士道を部屋から出した。

数分後、令音が部屋を出て来てーーーー。

 

「・・・・二日後だ」

 

あと二日しか、琴里は自らの霊力に耐えられないと告げてきた。

今は薬で症状を抑え、状態が安定するのを待つと、二日後が条件が合致する日だと言い、それを逃すと二度とチャンスは無いと言う。

 

「・・・・お願いだ。今は、言うとおりにしてくれ」

 

「・・・・分かりました」

 

そして士道は、面会時間にまだ間に合うので、真那の様子を見てくるように言われ、最後に、琴里を頼みます、と礼をして、四糸乃と共に部屋を出た。

 

「あ、あの、士道さん・・・・」

 

「ん? どうした四糸乃・・・・ゴーレム?」

 

四糸乃の方に顔を向けると、バイオレットゴーレムが四糸乃の、兎と氷の結晶の装飾がされた青い指輪、『ザドキエルリング』を持って四糸乃の右手に乗っていた。

 

『なぁんかねぇ、ゴーレムくん四糸乃の指輪に興味を持ってね、これから輪島のおじさんの所に向かってくれって頼んできたから、悪いけどこれで失礼するね』

 

「あ、ああ。ゴーレムを頼む。俺は少ししてから行くから、先に行っててくれ」

 

「え、でも・・・・」

 

「大丈夫だからさ」

 

「は、はい・・・・」

 

四糸乃が小さく頷くと、プラモンスター達を連れて、転送ゲートのある場所へと向かった。

 

「・・・・・・・・さてと」

 

士道は『ドラゴライズウィザードリング』を取り出してドライバーに読み込ませた。

 

[ドラゴライズ プリーズ]

 

音声が響くと、士道の身体から光の粒子が漏れ出て、『ウィザードラゴン』の幻影が現れた。

 

「本当に幻影として召喚できるんだな。ドラゴン本人なのか?」

 

『・・・・・・・・今は意識だけの状態と言えるな。本体は貴様の体内にいる。身体は寝ているが、意識だけが身体から出て現世に出ているような物だ』

 

「・・・・お前気づいていたのかよ。琴里が精霊だって・・・・?」

 

自分よりも頭が切れるドラゴンが気づいていないと思った士道は、沸き上がる感情を抑えながらドラゴンに問うた。

 

『五年前の出来事に対する貴様の義妹の態度。あの回復能力を知っていた素振りで、ある程度考察していたがな』

 

「なんで、教えなかったんだよ・・・・!」

 

『推察の域をまだ出ていなかったからな。それに貴様は、お前の義妹は精霊だ、と言われたら信じていたのか?』

 

「っっ・・・・・・・・」

 

ドラゴンの言葉に士道は押し黙るが、それでもドラゴンに声を発する。

 

「信じなかっただろうな。・・・・でもな、お前は十香や四糸乃の霊力が目当てで協力していた事を隠していただろう!」

 

『・・・・・・・・都合の良い脳ミソをしているな。知ってはいたが』

 

「なにっ!?」

 

『貴様が今、“誰のお陰で魔法使いの力を振るえていると思っているのだ?”』

 

「っっ!」

 

『貴様は我から魔力を使って、魔法を使い、それをあたかも自分の力と言わんばかりに振り回し、我まで付き合わせる始末、本当に好き放題使ってくれるな。我の力をさらに引き出せば、フェニックスに遅れを取ることは無かったが、それも出来なかった。理由単純、〈未熟過ぎるひよっ子魔法使い〉が、身の丈に合わん力を振ろうとしたからだ』

 

「・・・・・・・・」

 

ドラゴンの言葉に、士道は悔しそうに下唇の端を噛む。

 

『我が貴様の身体に顕現してから、貴様の体内に存在していた霊力。それがまさか貴様の義妹の霊力だったとはな。〈プリンセス〉と〈ハーミット〉の霊力が現れなければ、それを霊力と考えつかなかったな』

 

「ドラゴン。お前はこれからも、琴里だけでなく、狂三の霊力も狙うのかよ? そんなの、精霊の力を利用しようとしている、〈ラタトスク〉の上層部と同じだろう!?」

 

『・・・・確かにな。だが、我とその破廉恥な上層部と違う所がある』

 

「なんだよそれは?」

 

『我は人間ではなく、ファントムだ。人間なんかと同列扱いしないでほしいな』

 

「ーーーー!!」

 

ドラゴンはファントム、絶望の魔獣だと、士道は改めて、その事を自覚した。

 

「俺は・・・・ドラゴン、お前を信じられない・・・・!」

 

自分は精霊達を救いたいから戦う。精霊の霊力欲しさに戦う魔獣と共に戦えないと言う、士道の意思表示だった。

 

『フッ・・・・ならば、我も好きにさせてもらおうか。この状態でどこまで行けるか、少し試してみたいからな。ま、本体は貴様の体内にいるからそんなに遠くへは行けんと思うが、束の間の自由を満喫させてもらう。義妹を説得できるかどうか、精々ノンビリと拝ませもらうぞ』

 

そう言って、ドラゴンは〈フラクシナス〉の壁をすり抜けて、何処かに去ってしまった。

しかし、ドラゴン抜きで、琴里を。妹を。あの苛烈で強気な五河琴里司令をデレさせる。

改めてその言葉を思うと、なんとも難易度の高い作戦に思えて仕方なかった。

 

「・・・・・・・・・・・・クソッ・・・・!」

 

結局、士道は去って行ったドラゴンに対して、毒づく事しか出来なかった。




士道とドラゴン、二人の亀裂が何を生み出すか?
そして、『精霊の指輪』を手にしたバイオレットゴーレムが何を起こすのか?


ドラゴンとビーストキマイラのイメージCVを考えてみました。ドルフィンは他の4体と違って、別のCVです。

ドラゴン:鈴木達央

キマイラ(ライオン・ファルコ・カメレオン・バッファ):豊永利行

キマイラ(ドルフィン):渡辺明乃
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