デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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今回、アンダーワールドでの戦いはかなり短縮します。ごめんなさい。


告白・琴里

ー折紙sideー

 

忌々しい敵である夜刀神十香が士道と折紙の間に立つように足を落ち着け、油断なく折紙に視線を送る。

折紙は忌々しげに視線を研ぎ澄まさせ、唇を歪めると、背に負ったウェポンコンテナを展開させた。琴里との戦闘でかなりの弾幕を撃ったと言うのに、まだ弾薬は尽きていないようだ。幾つもの弾頭が覗いていた。

 

「邪魔をーーーー」

 

しかし、折紙がそれらを射出するよりも早く、右方から、折紙に向けて光線が放たれた。

 

「く・・・・」

 

折紙は上空に飛び立ち、すんでのところで攻撃を避ける。

ソコで士道は気付いた。今折紙に向けて放たれたのは光線ではなかった。それが通った地面が、一瞬にしてパリパリと音を立てて、凍てついていったのである。

 

「これは・・・・」

 

この力には、見覚えがあった。触れるもの全てを凍てつかせる、濃密な冷気の塊。

 

「大丈夫・・・・ですか、士道さん、琴里さん・・・・」

 

攻撃のあった方から、聞き覚えのある声が聞こえてくる。見やると、そこには前見た時よりも幾分小さなウサギの人形が控え。表面に紋様の描かれた滑らかなフォルム。氷柱のような牙が並んだ顎。そしてその背には、水着の周囲にぼんやりとした輝きを放つドレスを纏った四糸乃が張り付いていた。

 

「四糸乃!」

 

「はい」

 

士道は名を叫ぶと、四糸乃がコクリと頷いた。

 

「そ、その姿・・・・それに、〈氷結傀儡<ザドキエル>〉・・・・っ!?」

 

「は・・・・い。令音さんから、士道さんと琴里さんが・・・・危ないって連絡を受けて、更衣室に置いておいた、リングを嵌めて・・・・力を込めたら、こうなって・・・・こっちに来たんですけど・・・・」

 

と、そこで四糸乃が言葉を継ぐように、巨大なウサギ型の天使ーーーー〈氷結傀儡<ザドキエル>〉が低く吼える。

 

『ヤッハー、間一髪だったねー』

 

「て・・・・よしのん?」

 

〈氷結傀儡<ザドキエル>〉の口の動きに合わせて発せられた声は紛れもなくよしのんだった。すると〈氷結傀儡<ザドキエル>〉はまるで、アンダーワールドに出現するファントムのようなその恐ろしげな見た目にそぐわぬ仕草でワハハと笑って見せる。

 

『ま、感謝の言葉なら後で遠慮なく聞くよー。でも、今はーーーー』

 

瞬間、十香と四糸乃目掛けて、幾発ものミサイルが降り注いだ。

 

「ぐーーーー!」

 

「きゃ・・・・!」

 

二人が苦悶の声を漏らす。十香は剣で、四糸乃は氷の壁で砲撃を退けたもののーーーー双方その衝撃を全て殺しきることは叶わなかったらしい。

万物を切り裂く〈鏖殺公<サンダルフォン>〉と、何物をも通さぬ〈氷結傀儡<ザドキエル>〉も、現在はその力は恐らく全力の10分の1も出せていない状態である。流石に精霊とは言え、そんな状態で今の折紙と戦うのは

分が悪すぎた。

だが十香は顔を苦しげに歪ませながらも、士道に向かって叫びを発してきた。

 

「シドー! ここは私たちに任せて、早く逃げろ!」

 

「と、十香・・・・四糸乃」

 

「いいから早くするのだ!」

 

「そんなに・・・・長くは、保ちません・・・・っ!」

 

十香と四糸乃が士道を一瞥してきた。その目で二人は言ってくる。ーーーー琴里を連れて、早く逃げろと。

 

「くーーーーすまん・・・・!」

 

奥歯を噛み締め、息を荒くして、琴里を抱いて走り出した。

今士道がしなければならないのは、ファントムの亀裂が生まれた琴里を連れて、安全な場所で、琴里を救わなければならない。

 

「し、ど・・・・う・・・・」

 

ファントムの亀裂が生まれた激痛で、顔を青くした琴里が、士道の名を呼ぶ。

 

「大丈夫だーーーーすぐに、何とかしてやる・・・・ッ!」

 

走りながら士道が言うと、琴里は少しだけ安心したように小さく頷いた。

それを見た折紙が、忌々しげに十香と四糸乃を睨みつける。

 

「ッ・・・・! 邪魔をしないで。今は貴女達に構っている暇はない」

 

「ーーーーふん、琴里はシドーと同じく、我らの恩人だ。貴様に討たせる訳にはいかんぞ」

 

「・・・・です!」

 

十香が折紙を睨み返しながら言い、四糸乃が続くように頷く。

折紙は細く息を吐くと、レイザーブレードを握る手に力を込めた。

 

 

 

ー士道sideー

 

後ろから爆発音が聞こえてくる。十香と四糸乃は善戦しているがーーーーいくら2対1とはいえ、十香と四糸乃は霊力が完全に戻ったわけではない。あの巨大な兵装を身につけた折紙を相手取るのは分が悪い。それこそ、最悪殺されることだってあり得た。

そして、琴里にももうあまり猶予が無い。このままでは琴里の意識は破壊衝動に呑み込まれて暴れてしまうか、その前に絶望の亀裂が琴里の身体を砕き、絶望の魔獣・ファントムが生まれてしまうだろう。

ーーーーそう。士道は、ただ逃げるだけでは無いのだ。

琴里に、折紙に、十香に、四糸乃に、真那。全員を無事なまま終わらせなければ、意味が無いのだ。

そしてその為の手段はーーーー士道の指に嵌められていた。

 

「よし・・・・!」

 

士道は誰もいなくなったアトラクションの陰に身を隠し、抱きかかえていた琴里を地面に下ろす。それだけの動作で、琴里は辛そうに身を捩った。

 

「大丈夫か、琴里!」

 

「っ、ええ・・・・なんとか、ね・・・・うぅっ!!」

 

琴里はアトラクションに背を預けるようにして、力無く言った。

その瞬間、琴里の身体に浮かんだ亀裂がさらに広がった。

 

「・・・・ドラゴン!!」

 

『一々叫ぶな、うざったい』

 

士道が呼ぶと、士道と琴里の上から、思念体のドラゴンが飛んで来た。

 

「ドラゴン、力を貸せ・・・・!」

 

『報酬を忘れるなよ』

 

そう言うとドラゴンの身体が淡く光ると、士道の身体に小さな魔法陣が浮かび上がり、ドラゴンは魔法陣の中に突っ込み、士道の体内に戻っていった。

 

「士道・・・・! まさか、ドラゴンと・・・・!」

 

それを見て琴里は察するが、士道は真っ直ぐに琴里を見据えて唇を開く。

 

「悪い琴里。だけど、お前を助けるためなら、俺はコイツを利用する! お前を助けられるんなら、なんだってやってやる!!」

 

士道の目を見て、琴里はふぅぅ、とため息を吐いた。

 

「まったく、差し出すのは私の霊力なんだから・・・・コレが終わったら、十香や四糸乃にも・・・・」

 

「ああ、ドラゴンが、二人の霊力を掠め取っている事を伝えるさ」

 

これで十香達がドラゴンに失望するかもしれない。だが、何も教えず、知らせず、自分の霊力が魔獣の力にされているだなんて、十香達に隠しておきたくないと、士道は考えたからだ。

 

「琴里。必ず助ける。俺がお前の、最後の希望だ・・・・!!」

 

「ええ・・・・(バカ、おにーちゃんはいつだって、私の、希望なんだから・・・・)」

 

琴里は小さく笑みを浮かべて、内心呟き、士道は酷く久しぶりな気分で、『ドライバーオンリング』をバックルに翳すと、バックルが『ウィザードライバー』へと変わった。

 

[ドライバーオン プリーズ]

 

士道はベルトを起動させる。

 

[シャバドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪]

 

「変身っ!!」

 

左手を顔のところに上げて叫ぶと、『フレイムリング』のメガネを下ろし、ベルトにスキャンした。

 

[フレイム プリーズ]

 

音声が響くと、左手を横に向けて伸ばす。

 

[ヒー! ヒー! ヒーヒー、ヒィー!!]

 

左手の先に魔方陣が現れ、左から右に移動して、士道の身体を魔方陣が通過した。

 

赤い烈火の魔法使い、『仮面ライダーウィザード フレイムスタイル』。

 

「(何か本当に、凄く久しぶりな気分だな・・・・)」

 

一瞬だけ感慨にふけたウィザード<士道>は、すぐに琴里の右手薬指に『エンゲージウィザードリング』を嵌めて、ベルトに翳させた。

 

[エンゲージ プリーズ]

 

音声が流れると、琴里の身体に魔法陣が現れ、ウィザード<士道>は、魔法陣の中に飛び込んだ。

 

「頑張ってくれよ、琴里!!」

 

〈フラクシナス〉の浮遊カメラも、ウィザード<士道>についていった。

 

 

 

 

 

そしてここは、琴里のアンダーワールド。

火の海と化した町並みに、その巨大なファントムはいた。

マグマのような身体が紅蓮の炎に包まれた鬼神のような姿。頭には湾曲した角が伸びており、右手は燃え上がる戦斧と一体となり、左手は大砲のような形となり、大砲から炎の奔流が発射され、アンダーワールドの町を燃やし、破壊する。

 

『GOOOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』

 

琴里から生まれたファントム、名を『イフリートファントム』が、アンダーワールドを火の海としていた。

『イフリートファントム』が、最後の一撃を放とうと、左手の大砲に、業火を凝縮させ、巨大な炎の玉が、アンダーワールドの上空の空に放たれたーーーー。

その瞬間、放たれた炎の玉が突如として押し戻り、『イフリートファントム』の真上に落下した。

 

『GOOOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!??』

 

『イフリートファントム』は、自らが放った炎の玉に燃やされるが、自身へと炎を吸収し、何事かと上空を見ると、ソコにはーーーー。

 

ウィザードラゴンに股がったウィザード<士道>がいた。

 

『GOOOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』

 

『イフリートファントム』が左手の大砲で次々とウィザードとドラゴンを撃ち落とそうとするが、『イフリートファントム』が放った炎の玉を、ドラゴンは自身の放つ火炎で相殺する。

 

『まったく! 流石は貴様の義妹から生まれたファントムだな! 過激でとんだじゃじゃ馬だっ!』

 

「良いからさっさと終わらせるぞっ!! モタモタしてられないんだっ!!」

 

[ルパッチマジックタッチゴー♪ ルパッチマジックタッチゴー♪ ルパッチマジックタッチゴー♪]

 

すぐさま決めようと、『ドリルリング』を呼び込ませた。

 

「フィナーレだ!」

 

[ドリル プリーズ]

 

そして次に『キックストライクリング』を翳した。

 

[チョーイイネ! キックストライク! サイコー!]

 

ウィザードが飛ぶと、『ストライクフェーズ』に変形したドラゴンと合体したマシンウィンガーに足を乗せ、『ストライクエンド』を放とうと、『イフリートファントム』へと急降下した!

 

『GOOOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』

 

『イフリートファントム』が、左手の大砲の砲口から、紅蓮の炎の奔流を放つが、急降下するウィザードの身体が燃え上がり、巨大な炎のウィザードへとその姿となり、身体を螺旋状に回転させる!

炎の奔流の中を貫いて、ウィザードが『イフリートファントム』に迫る!

 

『我の炎の方が上だったなっ!!』

 

焔の螺旋の一撃が、『イフリートファントム』の焔の身体を貫いた!

 

『ドリルストライクエンド』

 

『GOOOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』

 

『イフリートファントム』が爆散すると、その爆風で、町を火の海へと変貌させた炎が全て消滅した。

 

「ここって・・・・!?」

 

士道はアンダーワールドを見て驚愕した、何故ならその町は、『天宮市南甲町』。

士道と琴里が5年前に住んでいた町で、折紙と折紙の両親が住み、そして、精霊に殺された町だった。

 

「ーーーー琴里・・・・それに、俺?」

 

アンダーワールドの記憶の世界で、幼い士道と手を繋いで町を歩き、笑顔を浮かべる幼い琴里。

そして、その二人の頭上で、炎のように輝く紅玉<ルビー>の結晶体。精霊の核であろう結晶体がソコにあった。

 

「琴里・・・・」

 

琴里にとって、自分と過ごした記憶が『1番の思い出』であることに、士道は仮面越しで、小さく笑みを浮かべた。

 

『感慨に耽っているな、まだ終わってないのだからさっさと戻るぞ』

 

「っ、分かってる!」

 

ドラゴンの呟きに、士道はハッとなって、魔法陣が開けると、アンダーワールドから脱出した。

 

「(そうだ。まだ終わっていない・・・・! 琴里の霊力を封印して、折紙を止めて、そして・・・・フェニックスを倒すまで!!)」

 

 

 

ー琴里sideー

 

魔法陣が展開されると、マシンウィンガーに乗ったウィザードは、すぐに顔だけを変身解除すると、亀裂は失ったが、苦しそうに呼吸を荒くする琴里を見る。

 

「し・・・・士道・・・・!」

 

やはりもう時間は無い。士道は未だ爆音が響いている広場を一瞥してから口を開いた。

 

「琴里」

 

琴里の肩に手を置き、吐息がかかるくらいの距離で、ジッと目を見据える。

 

「は・・・・っ、はい」

 

琴里が強張った面持ちで、いつもと違った返事を返してくる。

士道はゴクリと唾液を飲み込む。緊張で汗が滲む。喉が渇いてくる。

士道に残された、琴里を救う為の唯一の方法。それをーーーー今から、実行に移すのである。

 

「くぁ・・・・ッ!?」

 

と、背後から十香の苦悶が聞こえると同時に、折紙のユニットの駆動音が一層大きく聞こえてきた。

 

「見つけ、た・・・・ッ!」

 

そしてそのまま、凄まじいスピードで、折紙がこちらに迫って来た。

 

「ーーーー! くーーーー」

 

士道は息を詰まらせ、琴里に顔を近づける。が、そこで問題に気付いた。

そう・・・・好感度が分からないのだ。

このまま好感度が分からないと、琴里の力を封印できず、意識が精霊の力に侵食され尽くす。

士道の可愛い妹が、永遠に失われてしまう。

 

「(そんな事、絶対させるかよっ!!)」

 

腹を括った士道は、顔を近づける前に唇を開いた。

 

「琴里!」

 

急に大声を出したものだから、琴里がびっくりしたように目を丸くする。

だが、士道は構わず続けた。あまりにも稚拙な、しかし心からの思いを。

 

「琴里、琴里。お前は俺の可愛い妹だ。この世で一番の、自慢の妹だ! もうどうしようもないくらい・・・・大好きだ! 愛してる!」

 

「ふ・・・・ッ、ふぇーーーーっ!?」

 

琴里の顔が真っ赤に染まる。士道は同じような顔をしながら、言葉を続けた。

 

「琴里・・・・ッ! お前は、俺のこと、好きか!?」

 

「そ、そんにゃこと急に言われてもーーーー」

 

と、その瞬間、後方から鉄の礫が飛んできて、士道たちの隠れているアトラクションに着弾し、凄まじい火花を散り、次いで小型ミサイルが琴里に向けられた。

 

「琴里!」

 

「あ、ああっ・・・・もうッ!」

 

琴里が混乱したようにグルグルと視線を巡らせ、叫ぶように言ってくる。

 

「好き! 私も大好きよ! おにーちゃん大好き!! 世界で一番愛してる!!」

 

「・・・・!」

 

それを聞き届けーーーー士道は、意を決して琴里の唇に、自分の唇を触れさせた。

目眩に似た感覚が頭を襲う。何年も共に過ごした妹とキスをするだなんて背徳感に満ちた感覚が肺腑を満たし、得も言われぬ恍惚となって鼻から抜き出ていく。

そして士道は、唇を介して、自分の中、ドラゴンがいるアンダーワールドに、暖かいものが流れ込んでくるのを感じた。

十香や四糸乃の時にも経験した、精霊の力が自分の中に封印される感覚。

が、それと同時にーーーー。

 

「・・・・・・・・?」

 

士道と琴里の間に生成された経路<パス>を通って、琴里の霊力が移動した時にも起こった現象。

頭の中にぼんやりとした記憶が流れ込んできて、士道は小さく眉を動かした。

何故なら、琴里と口づけした瞬間、『5年前の情景』が

甦ったからだ。

 

「っ、今のーーーーは」

 

額に手を当てながら、士道は顔を歪めた。

琴里とキスをした瞬間、精霊の力と共に流れてきた、『過去の記憶』。

士道ではなく、琴里の目から見た『5年前の記憶』。それが、経路<パス>を通って士道と共有されたのである。

 

「思い、出した。あの時、私はーーーーあの、『何か』にーーーー」

 

琴里もまた、呆然と声を発する。

その瞬間、琴里の指に嵌めていた『エンゲージウィザードリング』が赤い光を放って変化した。

『フレイムリング』と同じように紅玉のリングに、『羽衣に包まれた炎と戦斧』が装飾されていた、『カマエルリング』へと変化し、身体を包んでいた羽衣や帯が光の粒子となって消滅し、琴里の白い肌が露わとなり、気を失ってしまう。

 

「ーーーー!?」

 

≪早く『ドレスアップ』を使え、このシスコン≫

 

「っ!」

 

[ドレスアップ プリーズ]

 

その光景に一瞬、言葉を失ってしまうが、ドラゴンの久しぶりの罵倒で正気に戻ると、『ドレスアップ』を使用し、先ほどまで着ていた私服に変わった。

霊装が搔き消える際、光に包まれた琴里のその裸身は、ぞっとするほどに美しかった。

が、そんな思考はすぐに放逐されることになった。

 

≪おい、義妹の裸体に鼻の下を伸ばしている場合か?≫

 

「く・・・・!」

 

ドラゴンの呟きと同時に、小型のミサイルが迫ってきて、士道は琴里の身体を抱くと、その場から飛び退いた。

 

「・・・・・・・・ッ!」

 

瞬間、琴里がいた場所にミサイルが着弾し、凄まじい爆風が士道を襲った。

灼けるような痛みが背に広がり、そのまま倒れ込んだ。琴里はどうにか無事のようだが、士道の背中は直視するのも躊躇われるほどの惨状になっていた。

 

「ぁーーーー」

 

「・・・・! 士道・・・・!」

 

士道の名を呼ぶ声は、折紙のものだった。すぐさま折紙が士道の傍に降り立ってくる。

 

「なぜーーーー、く、医療用ではないけれど、何とか処置を・・・・」

 

言いかけて、折紙は目を見開いた。

それはそうだろう。何しろ士道の身体に焔が這い、その傷を治癒させていったのだから。

 

「っ、ぁ・・・・」 

 

士道は背に手をやり、そこに肌がある事を確認すると、ゆっくりと身を起こした。

 

≪どうやら、再生能力も戻ったようだな≫

 

ドラゴンの言う通り、琴里の霊力を封印して、〈灼爛殲鬼<カマエル>〉の再生能力がようだ。

士道は顔を驚愕に染める折紙に視線をやる。

 

「な・・・・今のはーーーー」

 

「ーーーーそう。折紙。お前はさっき、言ったよな。自分の仇は炎の精霊〈イフリート〉であって、人間の五河琴里じゃないって」

 

言いながら、その場に立ち上がる。

 

「もう、琴里を殺したって意味がない。琴里は・・・・俺の妹は、人間だ・・・・! お前が殺したいのは、〈イフリート〉なんだろう? なら、俺とこのリングを狙え! 今は俺とこのリングが、〈イフリート〉だ!」

 

≪とんだ暴論だな≫ 

 

士道が叫びながら、『カマエルリング』を突き出す。

 

「な、に・・・・が、一体、これは・・・・」

 

折紙は、狼狽も露わに喉を震わせる。

だがそれも仕方のない事だ。いきなり精霊の力が、士道とリングに移ったというのだから。

 

「でもーーーー」

 

と、士道は言葉を続けた。つい今し方思い出した記憶。そこにあった真実を。

 

「その前に、俺の話を聞いてくれ。ーーーーやっと思い出したんだ。5年前の事を。あの時俺が何をしていたか。あの時、琴里が何をしていたか・・・・!」

 

「・・・・っ、五年前・・・・、〈イフリート〉はーーーー私の両親をーーーー」

 

士道は、静かに首を振った。

 

「琴里が、精霊の力を得てからそれが封印されるまでの間、辺りには俺ともう1人しかいなかった! 確かに火事が起こったのは〈イフリート〉の力が原因だ。でも、街に炎が撒かれたのは、琴里の意思じゃない・・・・! まして琴里は、自分の手で人を殺すことなんて、してなかったんだよ・・・・!」

 

「なに・・・・を、言っている、の・・・・」

 

士道が言うと、折紙は呆然と声を発した。

 

「そんなはず・・・・ない! あれは間違いなく精霊の姿だったーーーー!」

 

「そう・・・・きっと見たんだろう。だけど、それは本当に琴里だったのか・・・・?」

 

士道が言うと、折紙は訝しそうに口を開く。

 

「・・・・っ、じゃあ、あれはなんだったと言うの? あの日、私の両親を殺したのはーーーー」

 

「居たんだよ・・・・! あの場には! “琴里をこんな目に遭わせた精霊”が・・・・ッ!」

 

「な・・・・」

 

そうーーーー士道の記憶の中にいたのだ。“人ならざる者の姿”が。

折紙にその精霊の事を説明すると、折紙は一層怪訝そうに唇を噛みしめる。

 

「そんな言葉を・・・・信じろというの?」

 

「・・・・ああ」

 

士道は頷いた。もう、士道から言える情報は無い。もう後は、それを折紙に信じてもらうほかなかった。

しかし折紙は、下げかけていたレイザーブレードを再びまっすぐに突きつけた。

 

「・・・・本当は信じたい。でも、信じられるはずがーーーーない。そんな精霊の存在なんて。あなたが〈イフリート〉を、五河琴里を守るために嘘をついているとしか思えない・・・・!」

 

だが士道とて、ここで引くわけにいかなかった。再びその場に膝を突き、頭を下げた。

 

「ーーーー頼む。信じてくれ。もうどうしても信じられないなら、その時は〈イフリート〉をーーーーこの俺を討ってくれ。琴里は関係無い。あいつはもう、ただの人間なんだ・・・・!」

 

「そんな・・・・ことーーーー」

 

「折紙。お前、俺に言ってくれたよな。ーーーーもう、自分と同じ思いをする人は作らせないって。そのために、ASTに入ったって」

 

「・・・・っ、それ、は・・・・」

 

顔を上げ、折紙を見つめる。

その瞬間ーーーー折紙が顔を苦悶に歪めたかと思うと、光の刃にノイズが走り、背負っていたウェポンコンテナや砲門が、重さを取り戻したように地面に落ちる。

 

「く・・・・活動、限界? そんな、こんなところでーーーー」

 

が、折紙は左足のホルスターから拳銃を抜こうとした。対精霊装備でもないが、今の琴里には致命傷を負わせられる。

 

「折紙、お願いだ・・・・! 俺から、琴里を奪わないでくれ。あいつは、俺を救ってくれた。琴里がいなかったら、今の俺はいなかった。頼む・・・・! 生涯最後でも構わない! 俺をーーーー信じてくれ・・・・ッ!」

 

「・・・・・・・・」

 

数瞬の間、折紙は逡巡のようなものを見せて、力無く、その場に倒れこんだ。

 

「折紙・・・・!」

 

≪っ!! 止まれ小僧!!≫

 

倒れた折紙に駆け寄ろうとした士道に、ドラゴンが怒鳴り声を上げて止めたその瞬間ーーーー。

士道の隣を黒い影が凄い勢いで飛んで来た。

 

「なっ、なんだ!?」

 

士道が飛んで来たモノを追うと、それは床を転がって琴里の隣で止まり、その姿を露にし、見覚えのあるポニーテールの少女がいた。

 

「真那っ!?」

 

そう。自称士道の実の妹、崇宮真那だった。

士道は真那に駆け寄ると、真那は力無く笑みを浮かべる。

 

「に、兄様、どうやら上手くやったようで、やがりますね・・・・」

 

「真那っ! 一体どうした!?」

 

「すみません、カメレオンの能力を使ったヒット&ウェイで、何とか時間を稼いでやがったんですが・・・・」

 

『なんだなんだぁ? もう封印しちまったのか?』

 

「っっ!!」

 

[コネクト プリーズ]

 

士道は声のする方に目を向けると、ソコには、フェニックスファントムと再生ファントム達が悠然と歩いてきた。

士道は仮面を展開すると、ウィザードソードガンを構えた。

 

 

ー十香&四糸乃sideー

 

「シ、シドー・・・・!」

 

「士道、さん・・・・!」

 

折紙との戦闘で倒れた十香と四糸乃は、迫り来るフェニックス達を見て、魔獣ファントムに精霊の天使の力は通じなくとも、士道の力になりたく立ち上がろうとする。

 

『ピュィィィィッ!!』

 

『キュゥゥゥゥッ!!』

 

すると、ガルーダとクラーケンが、『ゴーレムの制作品』を持って飛んで来た。

 

「クラーケン・・・・?」

 

「ガル、ちゃん・・・・?」

 

クラーケンは十香に、ガルーダは四糸乃に、『ゴーレムの制作品』を渡した。

 

≪聞こえるか? 〈プリンセス〉、〈ハーミット〉≫

 

「ドラゴン?」

 

「ドラゴンさん?」

 

≪使いたいならば“使い方”を教えるが?≫

 

「教えてくれ!」

 

「お願い、します・・・・!」

 

2人はにべもなく言うと、ドラゴンは“使い方”を説明した。

 

 

 

ー琴里&真那sideー

 

「お、おにーちゃん・・・・!」

 

「に、兄様・・・・!」

 

2人の妹も、最愛の兄を助けようと、立ち上がろうとする。

その時、お互いの目があった。

 

「・・・・貴女には、言いたい事がある」

 

「こっちもで、やがりますよ・・・・」

 

「でも、今は・・・・!」

 

「ええ、兄様を、助けますっ!」

 

『ヒヒィィン!』

 

『ゴ、ゴ、ゴ・・・・!』

 

琴里の側に、ユニコーンに股がったゴーレムが、『制作品』を持って来た。

 

「ユニコーン? それに、話に聞いたゴーレム?」

 

≪おい〈イフリート〉よ、聞こえているか?≫

 

「っっ! ドラゴン・・・・!」

 

経路<パス>が繋がったからか、琴里にとって、聞きたくもなかった怨敵の声に顔をしかめる。

 

「何の、用よ?」

 

≪その『制作品』の事を教えてやる。それを使えば、あの綺麗事大好きの我が儘小僧の力になれるぞ?≫

 

「・・・・・・・・聞かせて」

 

普段ならば、聞くつもりはない。だが、士道を助けるためならばと、琴里にとっては苦渋の決断だった。

 

 

 

ー士道sideー

 

『おいおい、漸く変身したと思ったが、お前が相手になるのかよ? この前俺に惨敗した分際でよ?』

 

「くっ・・・・!」

 

フェニックスの言葉に、ウィザード<士道>は仮面越しで顔をしかめる。

 

「待て・・・・!」

 

「待って、下さい・・・・!」

 

『ちょっと待ったーーーー!!』

 

「待ち、なさい・・・・!」

 

「待ちやがるですよ・・・・!」

 

「っ!!」

 

ウィザード<士道>を守るように、十香と四糸乃&よしのん、琴里と真那が立ち塞がる。

 

「みんなっ! 何をしてるんだ! 早く逃げろ!」

 

ウィザード<士道>が叫ぶが、十香と四糸乃と琴里が、『長方形のコンパクト』を取り出すと、コンパクトを開き、逆に畳むと露になった鏡の部分を腰にあてた。

その時ーーーー。

 

[[[ドライバーセット]]]

 

音声が響くと『コンパクト』が、『コンパクト』をバックルとした『ベルト』へと変身した。

 

[[[シャバドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪]]]

 

「「えっ!?」」

 

『おぉっ!?』

 

士道と真那だけでなく、フェニックスも驚く。

それに構わず、琴里達は、それぞれのリング。『サンダルフォンリング』と『ザドキエルリング』と『カマエルリング』を右中指に嵌めて叫ぶ。

 

「「「変身っ!!」」」

 

そう叫んで、三人はリングを翳した。

 

その瞬間。

バックルにした鏡から、それぞれの魔法陣が映し出され、指輪を正面に突きだした十香の正面に夜色のウィザードの魔法陣が。

よしのんを頭上に突き立てた四糸乃の上に青色の魔法陣が。

バッと指輪を嵌めた右手を振り払った琴里の右側に赤色の魔法陣が現れた。

 

[プリンセス プリーズ!]

 

[ハーミット プリーズ!]

 

[イフリート プリーズ!]

 

魔法陣が三人を通過すると、夜色の結晶。青色の結晶。赤色の結晶に包まれ、ビキビキ、ヒビが入り砕けるとソコにはーーーー。

 

ウィザードのような宝石のマスクに、プロテクターがキラキラと煌めく軽装で、マスクにはメガネを付け、それぞれのマスクにはそれぞれの特徴が付けられた。

上部に王冠のようなティアラを付けた夜色のマスクに、夜色のロングコートを纏った戦士。

青色のマスクとウサギ耳を付けたパーカーを被った戦士。

赤色のマスクに角のような装飾が施され、赤色の上着を羽織った戦士。

 

士道と真那と同じ、識別名称〈仮面ライダー〉の姿となった。

 

≪・・・・マジで変身した≫

 

教えたドラゴンも、まさか本当にこうなるとは思わなってかったのか、呆然と呟いた。




勢いで書いてしまった。だが、後悔はしていないっ!

ー『スピリッドライバー』ー

ゴーレムが制作した、本来は精霊のリングを仕舞うコンパクトだったが、白の魔法使いの『インプルーヴメント <改良>』によって、精霊達の『対ファントム用装備』として、〈仮面ライダー〉に変身する事ができる。

〈仮面ライダープリンセス〉。変身者・夜刀神十香。ロングコート系。

〈仮面ライダーハーミット〉。変身者・四糸乃と言うよりもよしのん。『仮面ライダーゴースト』のようなパーカー。

〈仮面ライダーイフリート〉。変身者・五河琴里。司令官時のようなジャケットを肩に羽織った姿。ジャケットは盾としてもしよう可能。

変身した姿は、宝石はそれぞれのパーソナルカラーが『魔進戦隊キラメイジャー』のようなキラキラカラーとなり、ウィザードのような装備に、女性ライダーらしくスカート着用。


 
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