デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
動き出すDEM
ー十香sideー
十香は現在準備体操をしながら〈フラクシナス〉のトレーニングルームに来ていた。
体育館位の広さを持ったソコは、顕現装置<リアライザ>を使用することで、リアルな市街地が立体映像として視界に広がっている。
十香は自分の両隣に視線を向けると、琴里と四糸乃&よしのんが準備体操も終えていた。
「それじゃ準備は良い? 十香、四糸乃によしのん?」
「うむ!」
「は、はい・・・・」
『まっかせてよ!』
琴里は三人の声にコクンと頷くと、耳のインカムで艦橋にいるクルーに指示を飛ばすと、立体映像の市街地に、『グールファントム』と『インプファントム』が大量に出現した。
顕現装置<リアライザ>を使って作り出した、本物そっくりの仮想敵である。
琴里達はファントム軍団を見据えると、ゴーレムが作り出したコンパクト、『スピリッドライバー(琴里命名)』を取り出して開き、逆に畳むと露になった鏡の部分を腰にあてる。
[[[ドライバーセット シャバドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪]]]
士道の『ウィザードライバー』と違った、軽快な女性の声が響き、十香は『サンダルフォンリング』を、四糸乃は『ザドキエルリング』を、琴里は『カマエルリング』を右中指に嵌める。
『それでは! レッツ!!』
「「「変身っ!!」」」
[プリンセス プリーズ!]
[ハーミット プリーズ!]
[イフリート プリーズ!]
よしのんの号令で三人は叫び、『スピリッドライバー』にリングを翳した。
指輪を正面に突きだした十香の正面に夜色のウィザードの魔法陣が。
器用に腕をグルグル回すよしのんを頭上に突き立てた四糸乃の上に青色の魔法陣が。
バッと指輪を嵌めた右手を振り払った琴里の右側に赤色の魔法陣が現れ、三人を通過すると、三人はそれぞれのカラーである夜色の結晶。青色の結晶。赤色の結晶に包まれ、ビキビキ、とヒビが入り砕けるとーーーー。
『仮面ライダープリンセス』。
『仮面ライダーハーミット』。
『仮面ライダーイフリート』。
先日の戦いで変身した〈仮面ライダー〉の姿へと変わった。
「うむ! この鎧、着心地がとても良いな!」
「そうだねぇ~。この姿だとよしのんも自由に身体を動かせるしねぇ~」
≪よしのん、訓練頑張って・・・・!≫
「オーケー四糸乃! それで琴里ちゃん。これからよしのん達は何をすれば良いの??」
「今日は私を含めてみんなの〈仮面ライダー〉の時の能力検査よ。とりあえず、顕現装置<リアライザ>で作り出した雑魚ファントム達を倒すだけよ。簡単でしょ?」
「おぉ! ここにいるファントムを倒せば良いんだな?!」
「それなら良いよー!」
「それじゃ、私達の戦闘<デート>タイムよ!」
「「おぉーっ!!」」
三人はそれぞれの武器を召喚して、ファントム達に向かった。
ー士道sideー
「・・・・・・・・」
艦橋で三人の様子を複雑な表情でモニターを眺めている士道と、思念体のウィザードラゴンは近くにいる令音に近づき、三人の状態を確認していた。
『ふむ。どうやら、精霊達の〈仮面ライダー〉への変身には、“条件”があるようだな?』
「うむ。どうやら、精霊が〈仮面ライダー〉に変身するには、『シンに霊力を封印されている』事が条件のようだ」
「それって、どういう事ですか?」
中津川がそう聞いた。
「つまり、精霊の〈仮面ライダー〉の姿は、精霊の天敵とも言える魔獣ファントムに有効なダメージを与える事ができる。それは、シンと経路が繋がっている精霊の“霊力を吸収している存在”によって、霊力と魔力が混合し、それをドライバーとリングを使った鎧と装備とすることで、精霊達もファントムと闘う事ができると言うことだよ」
『つまり、この我が精霊の霊力を吸収し、小僧と経路が繋がっている精霊に、精霊達の霊力と我の魔力が混合した力が経路を伝い、ドライバーとリングが受信機となって、〈仮面ライダー〉へと変身すると言うことだな?』
「その通りだよ。精霊の〈仮面ライダー〉への変身は、『シンに霊力を封印され、自身のリングを生成する』。
『ドラゴンに霊力を吸収される』。
この2つの条件を満たし、ゴーレムと言うより、『白い魔法使い』が作った『スピリッドライバー』を使えば可能と言う事だ」
「・・・・・・・・・・・・」
令音の話を聞きながら士道は、ドラゴン&よしのんがゴーレムから、『スピリッドライバーを作った時、“白い魔法使い”が現れた』事を聞いた。
現在ゴーレムが『面影堂』で新たな『スピリッドライバー』を制作し、面影堂の外では、〈ラタトスク〉の機関員が影で監視している。
謎に包まれた『白い魔法使い』を確保する為だ。
「(『白い魔法使い』。アンタはなんで、十香達に〈仮面ライダー〉になる力を与えたんだよ・・・・!)」
十香達精霊達が〈仮面ライダー〉として戦う事に未だに納得していない士道は、モニターで仮想ファントムを倒してハイタッチしている精霊達を見つめながら、内心渋面を作り、『白い魔法使い』に悪態を吐いた。
ちなみに何故か黙っている神無月は、ドラゴンがここに来てすぐ。
【『貴様のような畜生か虫けら風情の排泄物が人型になって汚ならしく穢らわしく動き回っている汚物など、声を聞くだけでも虫酸が走るわ。ご主人様である〈イフリート〉が戻ってくるまで、口を開くな。声を発するな。ただ黙って木偶人形の案山子のようにつっ立っていろ。それだけでも果てしなく目障りだが。そこだけは妥協してやるわ』】
【くぅっ! そ、そんなご褒美のような罵倒には屈しま・・・・!】
【『おい小僧』】
【・・・・分かったよ】
【[バインド プリーズ]】
【はぅんっ!!】
と、現在『バインド』で芋虫のようにがんじがらめに締め上げ、逆さ宙吊り状態で艦橋にぶら下がっているが、全員なるべく視界に入れないようにしている。心なしか芋虫の神無月から、ハァハァと興奮しているような呼吸が聞こえているが、全員無視した。
ー折紙sideー
折紙は自衛隊天宮駐屯地の一室にて、数名の男達が居並び、部屋の中央に立って査問を受けていた。
理由は簡単。先日の一件で討滅兵装を持ち込んで公共施設で大暴れしたのだ。
査問なんて所詮形式。本当は折紙を懲戒処分にする為だった。
「・・・・・・・・」
折紙自身。懲戒処分は覚悟の上だった。しかし、両親の仇と思っていた〈イフリート〉・五河琴里ではなく、“もう一体”いたと言う精霊。
折紙は真犯人を追うチャンスと仇を討つ力を失う事の方が、滅多に動じない折紙の心臓をきつく締め付けた。
がーーーーその瞬間。
『・・・・?』
突然部屋の扉が開かれ、部屋に居並んだ男達の視線がそちらに注がれ、その闖入者の顔を見ると、息を呑んだような顔となった。
「ーーーーミスター・ウェスコット?」
折紙もチラッと視線をそちらに向けると、歳はせいぜい三十代半ばと言ったところだが、その雰囲気はどこか歳を経た老練さを感じさせる漆黒のスーツの男と、秘書の思しき少女を従えてが立っていた。
男の名は、『DEM社業務執行取締役<マネージング・ディレクター>』である、『サー・アイザック・レイ・ペラム・ウェストコット』という。
世界中に顕現装置<リアライザ>を製造し供給している世界的大企業、DEM<デウスエクスマキナ>社の、実質的なトップである。
「ーーーーああ、お取り込み中だったかな。これは失礼」
ウェスコットは流暢な日本語を言って、小さく肩をすくめた。
上官の武官が狼狽えた様子でここに来た事を聞くと、ウェスコットは目を向けと、ウェスコットはちょうど日本に来る予定であり、真那を激励のお見舞いするために来たが、〈ホワイト・リコリス〉を起動させた折紙の懲戒処分を撤回させようと来たのだ。
武官達は最初は突っぱねようとしたが、相手は顕現装置<リアライザ>と言う『魔術』を牛耳っている『DEM社』のボスである。下手をすれば顕現装置<リアライザ>を失う可能性だってある。
武官は忌々しげに呻くと、折紙の処分を『2ヶ月の謹慎処分』とした。
折紙は、自衛隊幹部が外国の一企業の要求に従うその決定に意義を唱えようとしたが、燎子が慌てて連れ去り廊下に出ると、他に誰もいない事を確認して燎子が声を発する。
「あんたね、下手なこと言って、また懲戒処分になったらどうするのよ!」
「・・・・困る」
折紙が言うと、燎子は頭をクシャクシャと掻いて、ハァと息を吐いた。
「なら、いいじゃないの。偶然でも何でも。神様が強面のエンジェルでも遣わしてくれたとでも思っときなさいよ。・・・・親御さんの仇、取るんでしょ?」
「・・・・・・・・」
燎子の言葉に、折紙は拳をキュッと握って頷いた。
燎子が頬を緩ませ、応ずるように首を前に倒す。
と。
「・・・・・・・・ん?」
そこで燎子が不意に眉をひそめ、通路の奥を見ると、それにつられて折紙も首を動かすと廊下の曲がり角から、小さな頭が二つの見えてそこに行くと。
折紙を慕っている実戦要員の『岡峰美紀恵』二等陸士と、整備士の『ミルドレッド・F・藤村』二等陸曹。ASTのメンバーでそれぞれ『ミケ』と『ミリィ』と愛称で呼ばれる折紙の数少ない友人だった。
二人とも折紙を心配しており、ミケに至っては折紙が免職していれば自分も辞職しようとしていたくらいだ。
謹慎で済んだ事を聞いてミケが折紙に感極まった様子で折紙に飛び付こうとしたが、折紙は応じず身を捻ってミケの体躯を受け流し、すれ違い様に後頭部にエルボーを打ち込んだ。折紙の染み付いた感覚が過剰反応を示しただけである。ミケの想いはおそらく一生折紙には届かないであろう。
そんなドタバタを繰り広げていると、廊下の先から二人の靴音が響き、一同が視線を向けると、アイザック・ウェスコットと秘書だった。
『・・・・・・・・』
一同は直立して、ペコリ、と頭を下げる。
「ーーーーああ」
ウェストコットもこちらに気付いたように眉を動かすと、折紙の脇を通る瞬間、その肩にポン、と手を置いた。
「期待しているよ、若き魔術師<ウィザード>。君ならきっと、精霊を討ち滅ぼせる」
「・・・・っ・・・・!」
折紙は、ゴクリと唾液を飲み下した。
敵意を感じるわけでも、殺意を感じる訳でも無い。だが、折紙の心臓は普段からは考えられないくらいに、激しく収縮を繰り返していた。まるでーーーー今しがた隣を通り過ぎた男に、得体の知れない恐怖を感じているかのように。
まるでーーーー『魔獣ファントム』のような、この世界とまるで異質な存在と遭遇したかのように。
「あれを」
ウェスコットがそう言うと、秘書が懐から小さな紙を取り出し、折紙に手渡す。
「どうぞ」
「・・・・・・・・」
折紙は無言でそれを受け取る。そこには『I.R.P.Westcott』の名と、電話番号と思しき数字の羅列、そしてメールアドレスが書かれていた。
「何か困ったことがあればいつでも言ってくれたまえ。ーーーーデウス・エクス・マキナは、君への“協力”を惜しまない」
「・・・・感謝します」
名刺を受け取り、静かな声で返す。だが結局、その目を見返すことはできなかった。
そんな折紙の様子に気づいているのかいないのか、ウェストコットは小さな笑みを浮かべてから、秘書を伴って歩み去っていった。
燎子達がウェスコットの事で何か話しているが、折紙は耳に入らず、手の平に残された名刺。そこに書かれた数字と文字の羅列を睨むように見つめーーーーもう一度、喉を唾液で湿らせた。
ーウェスコットsideー
ウェスコットは廊下を歩きながら、〈ホワイト・リコリス〉を起動させた折紙の希少性を理解していない陸自の上層部を嘲弄していると、それまで静かに応答していた秘書のエレンが、識別名称〈プリンセス〉が、来禅高校の1生徒として過ごしている事を伝えると、愉快そうにエレンが持っていたファイルを借りて、パラパラとページを捲ると、“ある2つの存在”が目に入った。
それは、〈アンノウン〉と識別された『魔獣・ファントム』。
そして〈仮面ライダー〉と識別された『ウィザード』であった。
「ほぉ・・・・まさか、伝承で伝えられた『魔獣』と『魔法使い』か・・・・。エレン。懐かしくないかい?」
「・・・・・・・・何がですか?」
口角を上げたウェスコットの言葉を、それまで能面のように無表情を貫いていたエレンの眉が、ピクッと動いた。ウェスコットはそれをくつくつと小さく笑う。
「昔、子供の頃に良く聞いた『絶望の魔獣と指輪の魔法使いの物語』。“里”の大人から聞かされた後、エレンはいつも魔獣に脅えて泣き出して、一晩中『ーーーーー』に抱きついてグズっていたねぇ」
「『アイク』ッ!!」
顔を赤くしたエレンが、ウェスコットに向けてそう叫ぶと、ウェスコットは愉快そうに笑みを浮かべる。
「それでエレン。君も気にならないかい? 識別名称〈仮面ライダー〉と呼ばれている。『伝承の魔法使い』にね。世界に二人と並ぶ者のない、『人類最強の魔術師<ウィザード>』、『エレン・ミラ・メイザース』よ?」
「・・・・・・・・・・・・」
ウェスコットにそう言われ、エレンの口が薄く笑みを浮かべると、一拍おいてから答える。
「確かに。少々興味が有りますね。まぁ、相手が『伝承の魔法使い』だろうと、『世界を殺す悪逆の存在』だろうと、私は負けません」
期待通りの返答に、ウェスコットも薄く笑みを浮かべると、想いだしたかのように口を開く。
「そう言えば、真那はどうしたんだい? 数日前から行方知れずと報告を受けたが?」
「はい。病院にも戻っていないそうです」
〈仮面ライダー〉こと、士道が『フェニックスファントム』を倒してすぐ、『オーシャンパーク』付近でファントムと交戦していたAST隊員達に折紙を預けた後、ファントムと交戦後、ビースト<真那>は「他に〈アンノウン<ファントム>〉の反応があるから退治して来やがります」と言って、そのまま行方不明となった。
「なるべく無事に戻ってきてほしいね。彼女と『ビーストキマイラ』は、“非常に希少で貴重なサンプル”なのだから」
ー時間は少し遡り・真那sideー
「ここは、何処でやがりますか・・・・?」
士道達と別れて十数分後。
ビースト<真那>は折紙を燎子達に預けグール達を全滅させた後、突然体内の『ビーストキマイラ』が他の場所にファントムがいる事を聞き、ビースト<真那>は『ファルコマント』を靡かせて飛び出した。
すると突然奇妙な浮遊感に包まれ、いつの間にか見知らぬ施設のような広い場所に付いた。
ビースト<真那>は警戒していると、部屋の扉らしき物が開き、そこから明らかに不健康な顔つきの折紙に負けず劣らずの無表情な女性が現れた。
「・・・・・・・・」
≪真那。大丈夫じゃ。変身を解除してくれ≫
「(キマイラ?)」
ライオンキマイラの言葉に首を傾げる真那だが、他の皆も解除してくれと頼み込むので、いつでも再変身する心構えで仕方なく解除した。
「貴女は・・・・?」
「・・・・・・・・」
真那の姿を見ると、女性の目が僅かに開いて、一瞬潤んだように見えた。
「はじめまして崇宮真那。私は村雨令音だ」
女性、令音は先ほどの僅かな表情の変化など無かったかのように口を開いた。
幕間終了。次回、『八舞テンペスト』スタート!