デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
ー士道sideー
カランカラ~ン♪
その日の夕方、士道はご近所の骨董品店『面影堂』の扉を開いた。
「おっちゃ~ん」
「おぉ士道! 遅かったな・・・・ん?」
「久しぶりおじさん」
「(ペコッ)」
士道と一緒に黒いリボンの琴里と令音が入ってきた。
「ありゃ? 琴里ちゃんが来るだなんて珍しいな。それに琴里ちゃんの担任の先生か家庭教師か?」
恰幅の良く、人柄の良い笑顔の壮年の男性『輪島シゲル』。士道と琴里の両親が学生時代の時の教師で、現在は教職を引退して『面影堂』の店長。後、世界中を飛び回っているキャリアウーマンな奥さんが要るが現在は奥さんが出張に出ており別居中。
「実はさ、おっちゃん・・・・」
「「・・・・・・・・・・・・」」
「あぁ・・・・バレちゃったのか?」
しどろもどろの士道とシリアスな顔の琴里と令音を見て察した輪島。
「おじさん。色々とツッコミたい所は多々あるけど、先ずはおじさんの隠している事を話して、士道の使っているリングの事を・・・・」
いつもの琴里と違う威厳のある声に少し面食らったが、すぐに輪島は平静になり、士道達をソファーに座ってもらい、人数分の烏龍茶を出して淡々と応える。
「・・・・あのリングはな。ウチの先祖が隠していた、“魔法石”って魔力を宿した原石を、俺がカッティングして作った物だよ」
「おじさんの先祖?」
「確かおっちゃんの先祖って、外国人だったんだよな?」
「あぁ。“古い魔術師の一族の末裔”だったらしくてな。俺も昔からその辺りの話や、魔法石でのリングの生成技術を伝えられてきたんだ。士道が一年前にそのベルトを持ってやって来た時は驚いたよ。じいさんから聞かされた『魔法使い』のベルトそのものだったからな」
輪島の話に令音も加わる。
「その『魔法使い』って言うのは?」
「・・・・じいさんから聞いた話では、古の儀式に生まれし『魔獣』を使役し魔法を駆使する存在、それが『魔法使い』だって言っていたな。あ、そうだ。士道に渡す物が有ったんだ」
そう言って輪島は店の奥の作業部屋に向かった。
「『魔獣』、つまり士道の中にいる『ファントム』の事かしら?」
「そうだろうね」
「(使役って、コイツを・・・・?)」
≪この我が! こんなマッチ棒にも劣る軟弱・貧弱・脆弱な、主夫能力以外はなんっっっの取り柄もないボンクラヘボ小僧に使役されているだとッ?!≫
琴里と令音がこっそり会話し、士道は半笑いになり、ドラゴンは“士道に使役されている”っと言う点に憤慨していた。
「さて、士道。新しいリングができたぞ。使ってみてくれ!」
すると輪島は新しいウィザードリングを士道に渡した。
「おっちゃん、今度は一体何の効力が有るんだよ?」
「俺はただ石の声を聴いて作るだけだからな」
「石の声ねぇ?」
「だからどんな効果が有るのかは、使ってみないと分からないんだ」
「この前に作ってもらった、指輪を付けた人間を眠らせる『スリープ』とか、強烈に臭い匂いを放つ『スメル』のようなヘンテコ魔法でない事を祈りたいよ」
「使用者を寝かせる魔法と、異臭を放つ魔法ね・・・・」
「あまり戦闘向きではなさそうだね」
「大丈夫。今回はたぶん役に立つ魔法だと思うぞ」
などと言いながらも、琴里と令音と輪島は士道から距離を取っていた。士道も不安だが、意を決して『蝶ネクタイを付けたドラゴン』のリングを右手に嵌めてベルトに翳した。
[ドレスアップ プリーズ]
士道の頭上に魔方陣が現れ、上から下へ士道の身体を通り過ぎると、士道の服装が燕尾服のマジシャン風の格好になった。
「うおっ! これは凄ぇっ!!」
「ふむ。どうやら着ている衣服を別の服にする魔法のようだね」
「これは使えそうな魔法ね」
「似合っているぞ士道」
≪今回の魔法を汎用性が有るな≫
その後『面影堂』を出た士道は、まだ〈フラクシナス〉で仕事がある琴里と令音と別れ、自宅に帰宅すると、ミノタウロスを見失ったらしいガルーダが戻ってきて、再びリングに戻し、そのままベッドにダイビングして即効で寝てしまい、ようやく休むことができた。
ー後日ー
「五河、お前昨日の空間震警報が鳴っていたのに何処に行ってたんだ?」
「あぁ、警報が鳴っていたとき学校から離れていてな。近くのシェルターに避難していたんだよ・・・・。皆は大丈夫だったのか?」
「まぁな、タマちゃんが俺達より慌てふためいていたからな。自分よりパニックになっている人を見ると逆に皆冷静になったみたいだぜ」
昨日、精霊〈プリンセス〉と遭遇した翌日。教室で殿町と談笑している士道に近づく人影がいた。鳶一折紙だ。
「来て」
「へ?」
突然士道は折紙に手を掴まれ素っ頓狂な声を発しながらガタンと椅子を倒し、折紙に引っ張られて教室を出ていく。後方で殿町が唖然となり、女子集団がキャーキャーと騒いでいた。
無言の折紙に連れてかれ、屋上に付き遠くで下校する生徒達の喧騒が聞こえ、まるで隔絶されたかのような寂しい空間だった。
「え、ええと・・・・」
昨日交戦し、ドラゴンが警戒心を持っている少女に呼び出され、まさか自分の正体が分かったのではないかと、士道は視線を泳がせた。
だが折紙は何の前置きもなく、士道の目をじっと見つめながら言う。
「昨日、貴方は学校に避難しなかったの?」
「あ、妹が警報発令中に街にいたみたいで、探しに・・・・」
「貴方のバイクと同じバイクが、空間震が起きた場所の近くにあった」
「えっ!?(あ! そう言えばバイクはあの場所に置いて有ったんだ!? どうしようドラゴン!?)」
≪こういう時に我を頼るなまったく・・・・。ハァ、我の言うとおりに言え≫
それから士道はドラゴンの言葉を伝えた。バイクに乗って妹を探していたらガス欠になり停めると、運悪く空間震の衝撃波で吹き飛んで近くの瓦礫に隠れた。
すると仮面のロングコートの変なヤツに化け物、黒い服の女の子とメカメカしい格好をした人達の戦闘を遠巻きに見てしまい、すぐに逃げて近くのシェルターの辺りに隠れていた。
騒動が終わるとそのシェルターが開き、妹を見つける事ができ、バイクは翌日に玄関前に置かれていた。
「とまぁこういう事何だけど・・・・」
「そう、昨日の事は誰にも口外しないで。昨日見たもの、聞いたもの。全て忘れた方が良い」
折紙は有無を言わせぬ迫力で言ってきた。
「(信じてくれたみたい、だよな?)」
≪半信半疑と言った所だろう。口外するなと言ったのは精霊の事も言っているんだろうな≫
「・・・・・・・・・・・・」
折紙が無言で見つめてくる、琴里達の組織と違った見解を持つ組織の折紙の考え方を持っているのではないかと、士道は思いきって聞こうとする。
「な、なあ・・・・鳶一。あの女の子ってーー」
「あれは、精霊。私が倒さなければならないもの」
「・・・・っ、そ、その精霊ってのは、悪いヤツなのか・・・・?」
士道の質問に、折紙は僅かにだが唇を噛みしめた気がする。
「ーーー私の両親は、五年前、精霊のせいで死んだ」
「・・・・なーーー」
≪ほぉ・・・・≫
「私のような人間は、もう増やしたくない」
「・・・・そ、うかーーー」
予想外の言葉に士道を言葉を詰まらせながら、自分の胸に手を置いて激しくなる動悸をなんとか抑えた。
そして鳶一に精霊の事を口外しないように話をつけると、折紙は屋上を出ていった。
「・・・・ふぃぃ~・・・・。なぁドラゴン、俺ってやっぱり甘いのかな・・・・?」
≪何を今更。貴様が綺麗事大好きな甘ちゃんで、人間皆良い人ばかりだ~なんて妄想に酔っぱらっているだけの世間知らずなクソガキなのは、今に始まった事では無かろうて≫
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
ドラゴンの暴言に反論する気力も起きず、はあ、と息を吐いた士道は、複雑な気持ちのまま階段を下りると、廊下から女子生徒の悲鳴が聞こえてそこに向かうと。
そこにいたのは、〈ラタトクス〉の解析官・村雨令音が、メガネと白衣を着用してのろのろと立ち上がる。白衣の胸ポケットには傷だらけのクマさんが覗いていた。
「何してるんですか? こんなところで・・・・」
「見て分からないかい? 教員としてしばらく世話になることにしたんだ。ちなみに教科は物理、二年四組の副担任も兼任する」
士道はそのまま令音を連れだってその場を去った。
「ええとーーー村雨解析官?」
「・・・・ん、ああ、令音で構わんよ」
「は?」
「・・・・私も君の名前で呼ばせてもらおう。連携と協力は信頼から生まれるからね」
令音はうんうんと頷き、士道の顔を見た。
「ええと、君は・・・・“しんたろう”、だったかな?」
「“し”、しか合ってねぇ!」
信頼もへったくれもあったものじゃない。
「・・・・さてシン、早速だが」
「何ですかその華麗なスルーは! て言うか変な愛称までつけられた!?」
≪・・・・・・・・・・・・・・・・くだらん≫
令音は士道をシンと呼ぶようになり、そのまま案内されると、途中で高校に来ていた琴里と合流し、物理準備室で士道が精霊をデレさせるための強化訓練が開始された。
~第一訓練~
恋愛シミュレーションゲームをやらされ、選択肢を誤れば琴里が隠し持っていた士道の中学時代の『黒歴史(ポエムやオリジナルキャラクターの設定集等)』を暴露される。
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!!」
≪ぎゃははははははははははははははははははははははははははははははははははははッッ!!!!!≫
士道はこの世の終わりのような悲鳴を上げ、ドラゴンは今まで聞いた事のないほどの大爆笑をした。
~第二訓練~
通信インカムを右耳に付けた士道は単独で、今度は女性を口説く訓練を行い、手始めに岡峰珠恵<タマちゃん>教諭を口説くが・・・・。
「本当ですか? 五河くんが結婚できる年齢になったら、私はもう三0歳越えちゃうんですよ? それでも良いんですか? 両親に挨拶しに来てくれるんですか? 婿養子とか大丈夫ですか? 高校卒業したらうちの実家継いで来てくれるんですか? ねえ五河くん、少し時間良いですか? まだ婚姻届を書ける年齢ではないので、とりあえず血判状を作っておきましょうか。美術室から彫刻刀でも借りてきましょうね。大丈夫ですよ、痛くないようにしますからね」
「すっ、すみません! やっぱりそこまでの覚悟はありませんでした・・・・! どうかなかったことに・・・・!」
≪この教諭、『ゲート』だったら簡単にファントムを産み出せただろうな・・・・≫
物凄く凄んだ顔でにじり寄りながらまくし立てる珠恵から、士道は悲鳴じみた声をあげて逃げ出し、ドラゴンは珠恵の暗い部分にドン引きしていた。
そして逃げていた士道はこともあろうか、鳶一折紙とぶつかり、転んだ拍子に鳶一折紙が尻餅をついてしまい、ちょうど士道の方へ向かってM字開脚していた。・・・・ちなみに色は白だった。
今度は鳶一折紙を口説けと、ドSで女王様な妹、琴里が命令を出してきた。絶讚ドラゴンが警戒している少女を口説く事に、士道は戸惑う。
「(鳶一を口説けって・・・・)」
≪まぁちょうど良いだろう。この小娘は不審な行動を取っていたからな。その辺りを少し探ってみろ。それにこの小娘を口説け無いようでは、〈プリンセス〉を口説くなどできんだろうからな≫
一年前から若干警戒していた鳶一折紙の真意を知るためにも、士道は覚悟を決めて、折紙に声を投げる。
「と、鳶一っ」
「なに」
「その服、可愛いな」
「制服」
「・・・・ですよねー」
≪お前にはセンスと言うものが無いのかこの便所虫≫
《何で制服をチョイスしたのよこのウスラバカゲロウ》
ただの虫の名前なのに、もの凄く罵倒された気がした。ふしぎ!
《手伝おうか?》
焦れたのか令音が助け船を出してきて、令音の指示に従い声を発する。
「あのさ、鳶一」
「なに」
「俺、実は・・・・前から鳶一の事を知ってたんだ」
「そう。私も、知っていた」
「ーーーーーー!」
≪・・・・・・・・・・・・≫
内心、やはり鳶一折紙が自分を監視していた事に、士道とドラゴンは警戒するが、さらに探ろうと令音の指示通りに喋る。
「ーーーそうなんだ。嬉しいな。・・・・それで二年で同じクラスになれてすげえ嬉しくてさ。ここ一週間、授業中ずっとお前を見ていたんだ」
≪・・・・・・・・なるほど、これがストーカーか、気持ちの悪い!≫
ドラゴンからの一声に心に傷が走る士道。しかし折紙は、
「そう。私も、見ていた」
真っ直ぐに士道を見つめながら、そう言った。それに士道は唾液を飲み込む。
「・・・・っ、本当に? あ、でも実は俺それだけでじゃなくて、放課後の教室で鳶一の体操着の匂いを嗅いだりしてるんだ」
「そう。私も、やっている」
「・・・・・・・・!?」
≪・・・・・・・・!?≫
士道もドラゴンも愕然となり、士道は頭が混乱し始め、ドラゴンはこれまでの会話から鳶一折紙と言う少女を考察推理していた。
「ーーーそっか。なんか俺たち気が合うな」
「合う」
「それで、もしよかったらなんだけど、俺と付き合ってくれないかーーーって急展開過ぎんだろいくらなんでも!」
たまらず後方を振り返り、叫び声を上げる。
《・・・・いや、まさか本当にそのまま言うとは》
「そのまま言えっつったのあんたじゃねぇか!」
≪言われる通りにくっちゃべった貴様のマヌケな迂闊さが招いたのだ。少しは考えてものを喋れボケナス≫
怨嗟した声を上げる士道にドラゴンが呆れ混じりにため息をついた。士道はすぐにハッとして折紙に向き直る。
折紙はいつもと変わらない無表情・・・・ではあったのだが、気のせいだろうか、先ほどよりも少しだけ、ほんの少しだけ、目を見開いているように見えた。
「あ、その、なんだ・・・・すまん、今のはーーー」
「構わない」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
≪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・本気か?≫
「な・・・・なんて?」
「構わない、と言った」
「な、ななななななななななにが?」
「付き合っても構わない」
「・・・・・・・・っ!?」
≪どういう神経をしているのだ?≫
「(いや待てドラゴン。もしかしたら鳶一は、何か勘違いしているんじゃないか?)」
士道も混乱する頭を何とか正気に戻す。
「あ、ああ・・・・どこかに出かけるのに付き合ってくれるって事だよな?」
「・・・・・・・・? そう言う意味だったの?」
折紙が小さく首を傾げる。
「え、あ、いや・・・・ええと、鳶一は、どういう意味だと思ったんだ・・・・?」
「“男女交際”のことかと思っていた」
「・・・・・・・・・・・・ッ!」
士道は頭に雷が直撃したかのように全身を震わせた。
「違うの?」
「い、いや・・・・違わない・・・・けど」
「そう」
折紙は何事もなったかのように首肯する。
≪お前は何をやっているのだ?≫
「(本当に俺ってば、何やってんだよ!? 何で“違わない”なんて言ってんだよ! 今ならまだ勘違いで通せたのに!!)」
ドラゴンは呆れ果て、士道は思いっきり後悔した。
と。
ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーー
「っ!?」
瞬間、空間震警報が鳴り響き渡った。
「ーーー急用ができた。また」
「お、おい」
折紙は踵を返して廊下を走り去っていってしまった。折紙が見えなくなったのを確認した士道も、気持ちを切り替える。
「・・・・・・・・ドラゴン、精霊か?」
≪あぁ、一度遭遇した今なら気配を感知する事ができる。あの時の精霊、識別名〈プリンセス〉だ≫
ほどなくして、インカム越しに琴里の声が聞こえてくる。
《士道、空間震よ。一旦〈フラクシナス〉に移動するわ。戻りなさい》
「精霊だな?」
《ええ。出現予測地点はーーーここ、来禅高校よ》
≪やれやれ、面倒な事になりそうだな≫
ドラゴンの言葉に士道は同意するように頷いた。
ー???sideー
とある場所で軍服を着用し、頭に包帯を巻いた男性が、人気のない通路でどこかに連絡を取っていた。
「〈プリンセス〉が現れました・・・・いえ、今しばらく様子を見ようと思います。そして機を見てヤツに仕掛けます。お任せください」
通信を切った男性の後ろから、同じ軍服を着用した隊員がやって来た。
「網野中佐! こちらに要らしていたのですね!」
「どうした?」
「空間震の発動を確認しました! 場所は天宮市来禅高等学校です!」
「(来禅高校、確か魔法使いの通う学校だな) よし。生徒達や教諭達の避難を優先させ、〈プリンセス〉の姿を確認次第、隊員達を出撃させろ。俺もすぐに司令室に行く」
「了解!」
隊員が敬礼して去るのを確認した網野中佐は、不気味な笑みを浮かべると、その顔の半分が異形の姿になっていた。
すみません。次回こそ〈プリンセス〉ちゃんを出します。輪島のおっちゃんの奥さんはいずれ出します。