デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
その代わり、助っ人が来ました。
ーエレンsideー
「っ!? あれは、新しい〈仮面ライダー〉? 氷を操る所を見ると、あれはまさか〈ハーミット〉ですか? これは今までの不運を無かった事にしても良いくらいですね」
『おいおい、随分余裕だなぁ?』
フェニックスと激しい剣撃を繰り広げているエレンは、新たに現れた〈仮面ライダー〉の能力から、〈ハーミット〉である推察する。
「これは失礼。しかし流石は『伝承の魔獣』ですね。私とここまで渡り合える存在は久しぶりです」
『テメェも人間にしては中々やるじゃねぇか!』
お互いの力を認め合いながら、二人のレイザーブレイドと大剣を振るスピードがさらに上がっていった。
ー士道sideー
「これって、ウォーターの強化スタイルと、それ専用のリングか、おっちゃん凄いタイミング良いな・・・・!」
≪良い仕事をする。どこかの役立たず共<フラクシナス>にも見習って欲しいものだ≫
ドラゴンが未だに連絡がつかない〈フラクシナス〉のクルー達に毒を吐くが、現在〈フラクシナス〉は士道達が交戦を始めるのと同時に、〈アルバテル〉と遭遇し、交戦に入っているのをドラゴンが知る由も無いが。
しかし、令音からの連絡がつかない状況を不審に思わない辺り、〈フラクシナス〉のクルーが『アマチュア上がり』であるのは明白だが。
『ウラァッ!!』
『ヒャッハァッ!!』
ふと、声が響くと、ガーゴイルが自身の身体を石化させてバスケットボールのように跳ね回りながら〈バンダースナッチ〉を次々と押し潰し、ヴォジャノーイは水鉄砲のような武器から水を噴射させ〈バンダースナッチ〉に浴びせると、その鋼鉄の身体が溶けたチョコレートのようにドロドロに溶け、さらにもう一体には身体を液状させ、僅かな隙間から入り込み、内部から破裂させるように破壊した。
『指輪の魔法使いに精霊共! 次はお前らの番ッスよ!』
『ヒヒヒヒヒ! 〈ハーミット〉まで現れるなんざ、俺らってラッキー♪』
「くぅっ!」
〈バンダースナッチ〉の一体を蹴り飛ばしたプリンセス<十香>は、先程のエレンにつけられたダメージが抜けておらず、苦悶の声を上げ、2体のファントムが迫る。
「っ! 十香っ!」
「任せて!!」
ハーミット<よしのん>がプリンセス<十香>のフォローに入った。
「十香ちゃん! フォローするよ!」
「す、すまない、よしのん・・・・!」
「まぁまぁ良いって事よ! そぉ~れっ!」
『ぐぁっ!』
『ぬぉっ!』
ヨロヨロと構えるプリンセス<十香>を守るように、ハーミット<よしのん>は『ザドキエルファング』の冷気弾を連射して、2体を凍り付けにし、さらに冷気弾を放って2体の氷が解けないようにした。
≪おい。そろそろ〈ベルセルク〉達の方がマズイぞ≫
「あっ!」
エレン達やフェニックス達に気をとられていたが、耶具矢と夕弦の方を見ると、二人の戦いはクライマックスを迎えようとしてた。
「(どうする!? どうする!? どうする!!??)」
エレンとフェニックスはお互いに戦闘をしているためこちらには来ないが、負傷し、『サンダルフォンブレード』を失ったプリンセス<十香>と、まだ戦闘に馴れていないハーミット<よしのん>を残して耶具矢と夕弦の元へ行くわけにはいかないウィザード<士道>が焦り出す。
なぜだろうか、狂三のーーーー自らの意思で人を殺す最悪の精霊の事を思い出す。
あの時感じた、自分にはどうしようもできなかった無力感。「希望になる」、だなんて大口を叩いておきながら結局・・・・狂三を救う事ができなかった情けない自分自身。
「(ーーーーもう、2度と、あんな思いはしたくない!)」
≪(むっ! これは・・・・やってみるか) プリンセス! 聞こえるかっ!?≫
「むっ? ドラゴン・・・・?」
ファントム達を足止めし、プリンセス<十香>はハーミット<よしのん>と共に、残りの〈バンダースナッチ〉の相手をしていると、ドラゴンからの念話が聞こえた。
≪すまんが、お前のリングを貸してくれ。先ずは〈ベルセルク〉達を止める。ファントムと鉄屑達を任せるが、できるか?≫
「うむっ! 分かったのだ!・・・・シドー!!」
プリンセス<十香>は『サンダルフォンリング』を外すと、ウィザード<士道>に向けて投げた。
「あっ! うわっ!!」
何とかキャッチしたウィザード<士道>。
「何考えてんだよドラゴン! 十香が「バシンッ!!」ぐぁっ!!」
十香のリングを外させる事に文句を言いそうになるウィザード<士道>の脳天に、ドラゴンのド突き(威力中)が炸裂した。
≪愚鈍めが。〈ベルセルク〉達の事が気になって目の前のガラクタにすら集中できなくなった貴様など、居ても邪魔になるだけだ。さっさと〈ベルセルク〉達を助けに行け≫
「で、でもよ・・・・!」
「シドー!!」
「っ! 十香っ!」
「ここは私とよしのん達で何とかする! 耶具矢と夕弦を早く!」
「ドラゴンくんから聞いてるよ! 早く助けに行きなって!!」
≪行ってください・・・・! 士道さん・・・・!!≫
「十香・・・・! 四糸乃・・・・! よしのん・・・・! ~~~! 分かった。ドラゴン! どうすれ良い!」
≪〈プリンセス〉のリングをバックルに翳せ≫
「ああ!」
ウィザード<士道>はウィザードライバーを起動させる。
[ルパッチマジックタッチゴー♪ ルパッチマジックタッチゴー♪ ルパッチマジックタッチゴー♪]
ウィザード<士道>は『サンダルフォンリング』を嵌めて、ドライバーに翳した。
[サンダルフォン プリーズ]
声が響くと、己の右手に夜色の魔法陣が展開され中から信じがたい物が現れた。
そこには。
ーーーー光り輝く剣が、握られていた。
「な・・・・これってーーーー〈鏖殺公<サンダルフォン>〉・・・・?」
それは間違いなく十香の天使、剣の天使〈鏖殺公<サンダルフォン>〉だった。
「シ、ドー・・・・? な、なぜ〈鏖殺公<サンダルフォン>〉をシドーが・・・・!?」
「うわぉ!」
≪わぁ・・・・≫
十香達も驚いた様子をした。
≪どうやら〈イフリート〉の治癒能力のように、小僧の身体に封印した精霊の力、天使をリングを使用する事で顕現できるようになったのだろう≫
「マ、マジかよ・・・・?」
≪実際そうなったのだからそうなのだろう≫
そしてそれは、鍔迫り合いをしていたフェニックスとエレンも見ていた。
『おいおい、あの雑魚魔法使い! 精霊の天使を出しやがった!』
「五河士道、『伝承の魔法使い』が、天使を? 一体何者なのですか?」
エレンはレイザーブレイドに力を込め、フェニックスを押し飛ばし、残った〈バンダースナッチ〉達を自分の元へ集めた。
『うぉっ!』
「少し予定が狂いましたが、彼も連れていきましょう。魔獣、あなたの相手はまた今度です」
『おいふざけーーーー』
「はぁっ!!」
「ソイヤッ!!」
『うぉっ!』
フェニックスがエレンを追うとするが、プリンセス<十香>がフェニックスに飛び蹴りを、ハーミット<よしのん>がドロップキックをお見舞いし、フェニックスが体制を崩して倒れる。
「貴様の相手は!!」
「よしのん達がやるよぉ!」
プリンセス<十香>が拳をフェニックスに、ハーミット<よしのん>がエレンに向かって『ザドキエルファング』の砲口を向けて立ち塞がった。
「・・・・良いでしょう。〈ハーミット〉も捕獲してーーーー」
エレンが〈バンダースナッチ〉に指示を飛ばそうとした瞬間。
ーーーーバヂッ!
「え・・・・?」
突然、火花が散ったような音が鳴ったと思うと、機械の人形達の頭部から火花が噴き、滑らかに動いていたのに、まるで電池の切れた電動玩具のような挙動をし、不可解そうに顔を歪めたエレンは、何かを察したように、耳に手を当てて唇を動かした。
「〈バンダースナッチ〉隊の反応が乱れています。何かありましたかーーーーーーーー遠隔制御室<コントロール・ルーム>に被弾? どういう事ですか。・・・・ッ、空中艦と戦闘? そんな指示を出した覚えはーーーー」
≪っ! 〈ハーミット〉! 今だ!!≫
≪っ!! よしのん・・・・!!≫
「あいよっとね!!」
「なぁっ!!」
ハーミット<よしのん>が『ザドキエルファング』の砲口から氷の結晶に溢れた吹雪を放出し、エレンの足止めをすると同時に、〈バンダースナッチ〉が壊れたマリオネットのように手足を出鱈目に動かし、エレンの上に倒れようとした。
「く・・・・何をしていうぐっ!?」
エレンが吹雪の風力で少し脚を後ろに引いたその時、突然地面が沈んで穴となり、思わぬ事態に足を取られて、穴に引き摺り込まれると大きな空洞が広がり、エレンが底に倒れた。
「な、なぜこんなところに穴が・・・・!? っ、ま、まさか、『高速穴堀り術』のーーーー」
ーーーー【エーレーンさぁぁぁん! あっそびっましょぉぉぉ! 答えは聞ぃいてなぁぁぁい!】
「あわわわわわわわわ・・・・っ!!!」
脳裏に“天敵”達の声が鮮明に、鮮烈に、そして凄絶に響き、『ガ~タガタガタ・キリッバ・ガタキリバッ!』と、恐怖に身体が震えるエレンが顕現装置<リアライザ>の使用を止めてしまったのが運の尽きか、倒れてきた〈バンダースナッチ〉達も穴から入り、エレンの上にもたれ掛かるように落ちてきた。
「え、う、うわっ!?」
気がついたエレンだが、時既に遅く、不意打ちを受けるような格好で重そうな機械人形達の下敷きになり、
「こ、こんな馬鹿な・・・・わ、私は最強の・・・・魔術ーーーーむきゅう」
珍妙な声を上げて、それきり動かなくなった。
≪・・・・何やらワケわからん事が起こったが、とりあえず〈ベルセルク〉の元へ行くか≫
「そうだな・・・・。二人とも! 必ず戻るから! 持ちこたえててくれよっ!!」
「任せろ!」
≪はい・・・・!≫
「オッキュー!」
ウィザード<士道>が、丸腰のプリンセス<十香>にウィザーソードガン・ソードモードを投げ渡し、三人の返答を聞くと、ウィザード<士道>は全速力で、ゴウゴウと風鳴りの中へ向かった。
『ケッ! 調子に乗るなよ精霊共!!』
起き上がったフェニックスに、ソードガンを構えるプリンセス<十香>と『ザドキエルファング』を構えたハーミット<よしのん>が果敢に挑んだ。
◇
十香達と別れて1分も経たず、ウィザード<士道>は、木々が放射状に薙ぎ倒された森の上空に、身体に紫色の皹を浮かべながら、激突を繰り返す耶具矢と夕弦の姿を見つけた。
「耶具矢! 夕弦! 二人とも! やめるんだ! もしかしたら二人とも生き残れる道があるかもしれない!」
≪・・・・駄目だな。二人が作った風の壁がこちらの声を遮断している≫
「く、どうすればーーーー」
言いかけて、ウィザード<士道>は自分の手にある〈鏖殺公<サンダルフォン>〉を見た。
「・・・・ドラゴン・・・・!」
≪天使の力のコントロールは我がしてやる。貴様が本当にあの二人を助けたければ、迷うな。惑うな。脅えるな。貴様が本当に『希望』になりたいならばな≫
「・・・・・・・・」
こちらの意図を察したドラゴンの言葉を聞きながら、ウィザード<士道>は上空で、容赦も手加減も無い“生かし合い”を続ける二人を見る。
口々に相手を讃え、一挙手一挙足相手を慮り、一撃ごとに愛を伝える二人を。
どうしようもなく互いが大好きで、どうしようもなく不器用者達の、どうしようもなく歪な戦いが続いている。
ーーーー自分自身を、殺す為に。
「そんなの・・・・許容できるかよ!」
ウィザード<士道>は叫ぶと、〈鏖殺公<サンダルフォン>〉の柄を両手で握りしめ、振りかぶる。
「ドラゴン・・・・! 力を貸してくれ! 耶具矢を、夕弦を、助ける為に!!!」
≪ならば貴様のその綺麗事大好きな心の願いを込めろ≫
ウィザード<士道>はゴクリと唾液を飲み込むと、目を伏せて細く息を吐き、周りの状況など埒外に置き、心を落ち着けて呼吸を整える。
耶具矢と夕弦。何の因果か、2つに分かたれてしまった精霊。
生まれたその瞬間、どちらかが消えてしまう事を運命づけられた存在。
しかしそれを知ってなおーーーー互いを生かそうと、最愛の半身を相手に戦う二人。
「ーーーーそんな事、させて、たまるか」
あんなにも、馬鹿みたいに優しい二人を、どちらか消してしまうだなんて、あってはならない。
二人の崇高な決闘とやらをぶち壊す、冒涜的で絶対的な一撃をーーーー。
≪・・・・今だっ!!≫
「・・・・っ!!」
ドラゴンの声と共に、カッと目を見開いたウィザード<士道>。〈鏖殺公<サンダルフォン>〉の刀身が目映く輝く。
上空で馬鹿騒ぎを繰り広げる不器用者共を視界に捉えた。
「おおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーッ!」
裂帛の気合いとともに、剣の天使を空目掛けて振り下ろした。
瞬間、凄まじい光が溢れーーーーそのの刀身が描いた斬撃が伸びていった。
そして剣の天使の斬撃は上空に吹き荒れていた風の城を容易く切り裂き、耶倶矢と夕弦の間を通るようにして空へと抜けていった。渦巻いていた雲が真っ二つに分かれ、今まで隠れていた月が顔を出す。
すると辺りに吹いていた風が嘘のようにピタリと止み、狼狽に満ちた声が聞こえてきた。
「なーーーー」
「焦燥。これは・・・・」
互いに槍とペンデュラムを向け合っていた耶倶矢と夕弦が目を丸くし、今の斬撃の出所を探ってか、下方へと目を向けてくる。
そして二人はそこにウィザード<士道>の姿を認めると、途端に眉をひそめた。
「士道・・・・!? もしかして今の、あんたが・・・・?」
「驚愕。まさか。凄まじい霊力でした」
ウィザード<士道>は両手に握った天使を地面に突き刺し、マスクを解除して素顔を晒すと、二人の問いに応ずるように口を開いた。
「耶倶矢・・・・! 夕弦・・・・!」
全身が僅かに軋むように痛んだ。
ただの一撃、それもドラゴンが調整をしてくれてもこれだ。もしドラゴンがいなければ身体がマトモに動かなくなっていたかもしれないとおもう。
だがその思考も後回し、今を逃しては二人に声を届かせることなどできない。喉が潰れても構わないと言わんばかりに、大声を張り上げる。
「頼む・・・・! 戦いを、やめてくれ!」
しかし士道が訴えかけると、耶倶矢と夕弦は不機嫌そうに顔を歪めた。
「・・・・あんた、聞いてなかったの? 私と夕弦は、どちらかがどちらかを取り込まないと存在出来なくなっちゃうの」
「同調。その通りです。邪魔をしないでください。今この分からず屋に、耶倶矢がどれだけ優れた精霊かを教え込んでいるのです」
「っ、まだ言うか・・・・! 私なんかが生き残ったって仕方ないって言ってるでしょ!? なんで分かんないのよ! 夕弦! あんたが生きるべきなの!」
「否定。そうは思いません。耶倶矢こそが生きるべきです」
「あんたは・・・・!」
「激昂。耶倶矢こそーーーー」
「ーーーー俺は!」
このままではまた決闘を再開してしまう二人の言葉を遮るように声を張り上げた。
「まだお前らの決闘の裁定役を降りたつもりはない! 俺がーーーー選ぶ! 真の八舞にふさわしい精霊を! 生き残るべきは誰なのかを!」
「「・・・・っ!」」
士道の言葉に、二人は驚愕に目を見開き、すぐに視線を鋭くしーーーーようとした瞬間。
「うぁあっ!?」
「激痛。ぁああっ!?」
「なっ!!」
≪どうやら皹が広がったようだな≫
ドラゴンの言ったその時、耶具矢と夕弦の身体を覆うように『絶望の亀裂』が広がり、二人は地面に向かって落下した。
「っ! 不味い!!」
[ハリケーン プリーズ フー! フー! フーフー、フーフー!!]
ハリケーンスタイルにチェンジしたウィザード<士道>は全速力で両脇に二人を抱えると、地面に横たわせた。
「耶具矢! 夕弦!」
「な、何よ、これ・・・・? 身体が・・・・」
「困惑、夕弦が、別の何かに、なにそうな感覚が、あります・・・・」
二人も自分の身体の異変に、“別の存在に変わっていく感覚”に困惑した。
≪不謹慎だが、これはまさにピンチが絶好のチャンスだな≫
ドラゴンの言うとおり、不謹慎だが、千載一遇の好機ともとれた。
「耶具矢、夕弦、落ち着いてよく聞いてくれ。このままじゃお前らは、俺が戦っている魔物達と同じ怪物になってしまう」
「「っ!?」」
「これから俺が、お前ら二人の中に入ってその元凶を倒してくるから、その間に、お前らに決めて欲しい事がある」
「な、何を・・・・」
「質問。ですか・・・・」
「精霊の力を失う代わりに、“二人とも生き残る”・・・・っ!」
「「・・・・っ!?」」
「は・・・・? 何です、って・・・・?」
「要求。今、なんと・・・・」
「俺は、お前達二人、両方を八舞として生きて欲しい! お前達二人とも、それぞれに違った良いところがあるから選びようがねえ!」
「な・・・・っ」
「・・・・・・」
息も絶え絶えな耶具矢は頬を赤くし、夕弦は半眼を作る。
「・・・・知った風な口、を利かないでよ・・・・ッ!あんた、なんかに何がーーーー」
「分かるさ。少なくとも、お前らより先に知ってることが一つずつな」
「・・・・質問。それは?」
夕弦の問いに、士道は答える。
「耶具矢は、夕弦の事を思う気持ちが夕弦自身よりずっと強くてーーーー夕弦は、耶具矢の事を耶具矢自身よりもずっと大切にしてるって事をな」
「ーーーーっ、それは」
「・・・・・・・・・」
二人が言葉を失ったように黙り、士道は続けた。
「ーーーー悪いが時間がない! 俺はお前達二人を救う! お前達が二人一緒に生きられるようにもする! だから、お前達も選んでくれ! この三つ目の選択肢を!!」
「何を・・・・言ってるの? そんなこと、可能なはずが、ないじゃない」
「疑念。そうです・・・・そんなの、聞いたことが、ありません」
苦し気の耶倶矢と夕弦が、疑わしげな目を向けてくる。当然だ。いきなり信じろと言われても信じられるはずがないだろう。
だがそれでも、士道は続ける。
「頼む! 信じてくれ! 一度だけでいい! 俺にお前達を二人とも生き残らせるチャンスをくれ・・・・ッ! もし失敗したら、その時は俺を八つ裂きにしてくれて構わない! だから・・・・!」
「そんな事ーーーーできる訳が・・・・」
「忘れたのかよ! 俺は、魔法使いだ! お前達二人を一緒に救うなんて奇跡の一つくらいを起こすことだって出来るっ!!」
士道は、マスクを展開して、耶具矢と夕弦の二人の右手中指に、『エンゲージウィザードリング』をそれぞれに嵌めて、二人の手を取って言う。
己の信念とも言える言葉をーーーー。
「俺が、お前達二人の、最後の希望だ・・・・!」
「っ・・・・・・・・・・」
「思案。・・・・・・・・」
耶具矢と夕弦は言葉を失い、目を見合わせる。士道の言葉です真意を探ろうとしていると言うよりも、急な事態に混乱している様子だった。
がーーーー。
「うぁあああああっ!!」
「激痛。くぅううっ!!」
「耶具矢! 夕弦!!」
そんな事お構い無しに、亀裂は徐々に二人の身体を蝕んでいった。
≪時間がないな。小僧、二人を同時にバックルに翳せ!≫
「わ、分かった!」
ウィザード<士道>はドラゴンの指示に従って、二人の手に『エンゲージウィザードリング』を嵌め、2つのリングを同時にバックルに翳した。
[エンゲージ プリーズ]
音声が響くと、耶具矢の身体にランドのような黄色の魔法陣が、夕弦の身体にオレンジ色の魔法陣が浮かぶ。
≪小僧。2つの魔法陣に手を伸ばせ!≫
「ああ!」
ウィザード<士道>が2つの魔法陣に、それぞれ手を伸ばす。
≪これを、こうする・・・・!≫
ドラゴンがウィザード<士道>の内部から魔法陣に向けた手へと魔力を送り、2つの魔法陣が強く輝くと、2つの魔法陣が1つとなり、それぞれの色が半分こになった魔法陣になった。
「ドラゴン! これって・・・・!」
≪元々1人だった精霊達だ。魔法陣を同調させる事が出来ると思ったんだが、上手くいったな。これで二人のアンダーワールドが繋げる事ができた≫
「これで二人を同時に救えるんだな?!」
≪しかし覚悟しておけ、精霊二人分の大型ファントムを相手にしなければならないからな≫
「・・・・そんな覚悟、とっくに決めてるぜ!」
そう言うと、ウィザード<士道>は魔法陣に飛び込もうとした。
「「士道・・・・」」
耶具矢と夕弦が、同時に士道の名を呟き、ウィザード<士道>を見つめる。
「戻ってくるまでに、決めておいてくれよ・・・・!」
そう言って、ウィザード<士道>は魔法陣に飛び込んだーーーー。
ー???sideー
ウィザード<士道>が魔法陣に飛び込んだ様子を、少し離れた位置にいる“二人の影”がいたが、この内の1人が、上空に現れた〈アルバテル〉に、“仮面に覆われた顔”を向けた。
『あれが〈アルバテル〉か。“奴ら”も動き出したようだな・・・・』
「・・・・・・・・・・・・」
もう1人の影は、〈アルバテル〉を仮面越しに睨んだ。
『アレは私が何とかしよう。君は彼の手助けをしてやってくれ、『ビースト』・・・・』
「了解でやがります! 兄様の手助け! 〈仮面ライダービースト〉がしやがります!!」
そう言って、〈仮面ライダービースト〉、“崇宮真那”は、横たわる耶具矢と夕弦に向かいまだ展開されていた魔法陣に飛び込んだ。
そして、彼女を連れてきた『白い魔法使い』が、〈アルバテル〉の方を仮面越しに見据えた。
『邪魔は止めて貰おう。『DEM』よ』
[タイム ナウ]
『白い魔法使い』が『時計の文字盤のリング』をバックルに翳すと、〈アルバテル〉の上に魔法陣が展開され、動きが止まった。
なぜ真那が『白い魔法使い』といるのか、それは次回に分かります。