デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
ウィザード<士道>が耶具矢と夕弦の二人を止めるようと向かったのと同時に、“ある人物”が行動を起こしていた。
ーゴーレムsideー
『ゴ、ゴ、ゴ!』
士道の家にいるよりも『面影堂』で制作作業に没頭しているのが多いバイオレットゴーレムは、十香達精霊が〈仮面ライダー〉に変身するアイテム、『スピリッドライバー』の予備を3つほど作り終えた。
夜の時間帯、輪島のおっちゃんは既に自室に戻っている。
『ゴ、ゴ・・・・』
と、そこでゴーレムの活動限界が来たのか、ゴーレムはリングに戻った。
それと同時に、作業部屋に設られた人間では入れない小窓の僅かに開いた隙間から、『白いガルーダ』と『黒いケルベロス』が入ってきて、予備の内2つを持ち出して行った。
ー『白い魔法使い』sideー
面影堂から少し離れた建物の屋上に『白い魔法使い』が静かに佇んでいると、使い魔達が戻ってきて、『スピリッドライバー』を渡した。
それを見て『白い魔法使い』が頷くと、耳元に手をやり、まるで通信でもしているかのように声を発する。
『フム・・・・そうか。『DEM』が動き出したか。それで、彼はどうだ?・・・・何? 〈ベルセルク〉達の方に? フム。ならば、こちらも少し手を貸そう』
[テレポート ナウ]
『白い魔法使い』か『テレポート』を使用すると、天宮市から別の場所にやって来た。
「のわっ!! だ、誰でやがりますかっ!?」
[ドライバーオン!]
テレポートした先に居たポニーテールの髪に左目下に泣き黒子が特徴的で、小柄ながら堂々と『リング』と『ドライバー』を構えた、勇壮な狼のような少女がいた。
『少女の部屋に不躾に入ってきてしまい申し訳ない。しかし、『アーキタイプの少女』よ。君の兄君である五河士道がピンチだぞ』
「え・・・・っ?」
『アーキタイプの少女』と呼ばれた少女、嵩宮真那は兄である士道の名を聞いて、僅かに警戒を緩めた。
~時間は戻り~
ー士道sideー
耶具矢と夕弦のアンダーワールドに到着したウィザード<士道>。
目の前には天宮市とは違った街並みの上空で、2体の大型ファントムが現れた。
オレンジ色の髪の毛がウネウネと蠢き、顔には右側に大きな角を伸ばした仮面を被り、身体は黒いエネルギー体に耶具矢の霊装のような拘束具を巻き付け、右肩から竜巻のような翼が発生し、右腕に巨大なドリルのように回転ふる突撃槍を装備し、左手に手枷を着けた巨大ファントム。
同じくオレンジ色の髪の毛を1纏めになって背中に垂れ下がり、顔には左側に大きな角を伸ばした仮面を被り、もう1体と同じように身体を拘束具を巻き付け、左肩から竜巻の翼が生え、左腕に太い鎖と鋭い突起物を着けたペンデュラムを垂れさせ、右手に手錠を着けた巨大ファントム。
「ファントムも2体。本当に纏める事ができた・・・・!」
≪元々1人だった〈ベルセルク〉達だからこそできた荒業だ。それよりも、我をさっさとこの情けないほどの貧弱ボディから解放しろ≫
「貧弱は余計だろっ!!」
[ドラゴライズ プリーズ!]
『グワァアアアアアアアアアアアッ!!』
『ドラゴライズ』で展開された魔法陣からウィザードラゴンが飛び出し、2体の大型に突撃しようとする。
がーーーー。
『HUUUUUUUUUUUUUUUUU!!』
『FUUUUUUUUUUUUUUUUU!!』
『何っ!? ヌォォォォォォォォォォ!!』
2体が手錠を着けたお互いの手を繋ぎ、その場で回転すると、超大型の竜巻を発生させ、アンダーワールドを破壊し、その竜巻の障壁に阻まれ、ドラゴンは地面に吹き飛ばされた。
『クゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッ!!』
しかしドラゴンは地面に激突する刹那、身体をクルンっと、捻って体制を整えると、地面を削りながら着地した。
「ドラゴン! 大丈夫かっ!?」
『コネクト』で持ってきたマシンウィンガーに乗り、フレイムスタイルにチェンジしたウィザード<士道>も合流する。
『まったくゲートの精霊達と同じようにとんだじゃじゃ馬だ。
槍付きが『ベルセルクファントム・レヒト』。
鎖付きが『ベルセルクファントム・リンク』。
って名称にするか・・・・』
「安直じゃね?」
ーーーーバシンっ!
「いってぇ! その図体でド突きは勘弁しろよっ!!」
威力弱めでも実体化して元の体格に戻ったドラゴンのド突きは強烈に痛いのか、ウィザード<士道>は文句を言う。
が、すぐに、気持ちを切り替える事になった。
『HUUUUUUUUUUUUUUUUU!!』
『FUUUUUUUUUUUUUUUUU!!』
竜巻を起こしてアンダーワールドを破壊しようとしていた2体は、竜巻を止めると手をほどき、それぞれの武器を持って襲いかかってきたからだ。
「やべっ!!」
ウィザード<士道>はマシンウィンガーを変形させ、ドラゴンと合体させると、2体の攻撃を上空に飛んで回避する。
その際、2体が突撃した場所から上昇風圧が発生し、ドラゴンの身体が僅かによろける。
『くぅ! 流石は風を司る精霊から生まれただけはあるな。攻撃の余波だけで凄まじい風を起こす!』
珍しく相手の力を賞賛するドラゴン。2体は凄まじいスピードでウィザード<士道>達に迫る。
「うおっ!」
『振り落とされるでないぞっ!!』
ドラゴンが旋回して回避し、2体に向かって火炎弾を放つが、2体は素早い動きで火炎弾を回避する。
『HUUUUUUUUU!!』
『FUUUUUUUUU!!』
『ベルセルク・リンク』がペンデュラムをドラゴンに向けて投擲し、『ベルセルク・レヒト』がペンデュラムの後を追うように槍を突き出して突撃してくる。
『ちぃっ!!』
ドラゴンが爪でペンデュラムを弾き飛ばし、突撃してきた『ベルセルク・レヒト』に向けて火炎弾を次々と放つが、『ベルセルク・レヒト』はスピードをまったく緩めず迫り来た。
[ビック プリーズ]
「うぉりゃぁっ!!」
ウィザード<士道>が『ビック』で腕を大きくし、『ベルセルク・レヒト』の槍を掴んで明後日の方向に放り投げたが、すぐに戻ってきて『ベルセルク・リンク』と合流し、悠々と空を泳ぐ。
まるで自分たちが勝つことを確信したかのように。
『やるな。〈プリンセス〉のファントムが格闘特化型。〈ハーミット〉のファントムが防御特化型。〈イフリート〉のファントムが広域殲滅型なら、〈ベルセルク〉達のファントムはスピード特化型のヒットアンドアウェイ戦法か、双子のファントム故に息も合っている』
「どうするよドラゴン・・・・」
ウィザーソードガンを十香に貸している上に、天使の使用による負担が抜けてない為、魔法で援護攻撃するしかないのでウィザード<士道>は決定打に欠ける。
これが“1体だけなら問題無い”が、2体による連携でそれが上手くいかない。
『せめて、後“1組の我らがいれば”良いのだがな』
「それなら、『コピー』で・・・・」
『浅慮。本体と同じ動きしかできない『コピー』では高速で縦横無尽に動き回る相手には不向きだ』
「~~~~! それなら、『アバター』なら!」
『短慮。『アバター』を使用するには相当量の魔力を消費するのだ。コヤツらを倒した後は、外にいるファントム達の相手をせねばならんのだ。余分に魔力を消費する訳にはいかん。そんな事にも考えが回らんのか? あまりに、低能。思わず、嘲弄。だな』
「夕弦みたいに二次熟語を使って、さらに韻を踏んだ罵倒をするなよなっ!!」
なんて早くも口喧嘩を繰り広げる二人に、『ベルセルクファントム』達が再び迫る。
『ふんっ!! ハァァァァァァッ!!』
ドラゴンが尻尾でペンデュラムを弾き飛ばし、続いて翼から緑色の稲妻を放出して、突撃してきた『ベルセルク・レヒト』はマトモに浴びてしまい、身体が痺れ硬直した。
『ーーーー!!』
『ベルセルク・リンク』がフォローに回ろうとするが、突如身体が、ガクンッと、よろける。左腕に装備したペンデュラムの先が凍りつき、巨大な氷塊になっており、重さでバランスを崩したのだ。
「ドラゴン! お前いつの間に・・・・」
『先ほど奴の武器を弾いた時に凍らせたのだ!』
2体の連携が崩した一瞬の隙に、ドラゴンが『ベルセルク・レヒト』を倒そうと飛翔した。
ーーーー次の瞬間。
ーーーードガンっ!
『ガッハァッ!!』
「うわぁっ!!」
突撃するドラゴンの腹部に凄まじい衝撃が襲いかかり、ドラゴンは体制を崩し、ウィザード<士道>もあまりの衝撃にドラゴンの背中から吹き飛んでしまった。
『な、にが・・・・!!』
衝撃で意識が朦朧としたドラゴンだが、腹部を襲った衝撃に目をやり理解した。
体制を崩したように見えた『ベルセルク・リンク』は、凍らせたペンデュラムの先をまるでハンマーのように振り回して、ドラゴンとウィザード<士道>の死角から攻撃してきたのだ。
それを理解したドラゴンは、地上に落下した。
『グゥゥゥッッ!』
[ハリケーン プリーズ フー! フー! フーフー、フーフー!]
「ドラゴン!!」
間一髪でハリケーンスタイルにチェンジし飛翔したウィザード<士道>は着地と同時にフレイムスタイルにチェンジしてドラゴンに駆け寄り、ドラゴンはヨロヨロと起き上がる。
『少々、油断した・・・・!』
「っ!!」
『ベルセルクファントム』達が再びドラゴンに襲いかかろうとしたーーーーーーーー。
その時ーーーーーーーー。
[キマイライズ ゴー!]
ーーーーガァオオオオオオオオオオオオンンッ!!
聞き覚えのある音声がその場に鳴り響くと同時に、“黒い影”が『ベルセルクファントム』達を凪ぎ払った。
『HUUUUUUUUUU!?』
『FUUUUUUUUUU!?』
突然の思いがけない攻撃に2体のファントムが吹き飛び、地面に落下した。
「あ、あれは!」
『なに・・・・?』
ウィザード<士道>もドラゴンも、落下した『ベルセルクファントム』達よりも、“黒い影の正体”に驚く、何故ならそれは・・・・。
「兄様ーーーー!!」
『助っ人に来てやったぞ!!』
士道の実妹(自称)の嵩宮真那が変身する『ビースト』と、その契約魔獣『ビーストキマイラ』だった。
「真那っ!!」
『ふん、ケダモノ共か・・・・』
ウィザード<士道>はドラゴンに再び股がり、空中を駆けるように飛ぶ『ビーストキマイラ』に股がるビースト<真那>と並んだ。
「真那! お前今までどこに居たんだよ!?」
「兄様! 感動の再会は後回しでやがります! 来やがりますよ!!」
ビースト<真那>が指差すと、『ベルセルクファントム』達が起き上がり、こちらに向かって飛翔してきた。
「くそっ! 真那! 力を貸してくれ!」
「勿論でやがりますよ! 兄様と真那の最強兄妹の力を見せてやりやがりましょう!!」
『・・・・・・・・・・・・』
『・・・・・・・・・・・・』
ビースト<真那>は意気揚々と答えるが、ドラゴンとキマイラはお互い横目で睨み合っていた。
「ド、ドラゴン・・・・?」
「みんな、どうしたでやがりますか?」
『言っとくが、腹が減ってマトモに戦えませんなんてほざくなよケダモノ共』
『そっちこそ、足を引っ張るでないぞ』
『トカゲ擬きが偉そうに』
『助っ人に来たんだから有難いと思いなさいよ』
『オイラ達が来なかったら危なかった癖に』
『モゥ』
それぞれの相棒達は目線でバチバチと火花を散らせていた。
「あぁもう! 止めろよドラゴン!」
『五月蝿い。一番マトモに戦えぬ能なしは黙っていろ』
「みんな、今は大型を倒すのが先決でやがりますよ」
『『『『『はぁ~い』』』』』
真那のキマイラ達は良い子達だなぁ、と、ドラゴンの暴言に泣きそうなるウィザード<士道>だが、『ベルセルクファントム』達が飛んで来るのが見えて切り替えた。
『『フンッ!!』』
ドラゴンとキマイラは2体の『ベルセルク』に近づくと、左右に別れ、2体はそれぞれを追って分断させた。
『ベルセルク・レヒト』は槍でドラゴンに迫るが、ドラゴンは槍を回避し、すれ違い際に爪で『ベルセルク・レヒト』の身体を切り着けた。
『HUUUUUUUUUUUUUUUUUッ!!』
『むっ?!』
少し身体を裂いただけで凄まじい悲鳴を上げる『レヒト』に、ドラゴンは怪訝そうに見つめる。
ー真那sideー
真那とキマイラ達は『ベルセルク・リンク』のペンデュラムの攻撃を回避すると、尻尾の位置にいるカメレオンが舌を伸ばし、ペンデュラムの鎖に巻き付け、武器を封じると、それぞれの顔の目からレーザーが発射され、『リンク』に当たった。
『FUUUUUUUUUUUUUUUUUUッ!!』
『ん? らんらあらゃ<なんだありゃ>?』
舌を巻き付けたままで舌っ足らずに喋るカメレオンも、大袈裟に痛がる『リンク』を訝しそうに見つめた。
ー士道sideー
それから高速で移動しながら交戦するが、『ベルセルクファントム』の2体が合流すると、2体は手を繋ぎ、再び巨大竜巻を生み出してウィザード<士道>達に迫る。
「ヤバい! また竜巻かよっ!」
『狼狽えるな。先ほどまでの勢いがない。おそらくダメージでパワーが弱まったんだろう』
「えっ? あれくらいでやがりますか??」
『多分だけどさ。あの大型って、見るからにスピード特化型だから、防御力が低いんじゃないの?』
カメレオンの言葉で、ウィザード<士道>も思い出す。
ハリケーンスタイルも4スタイルの中で防御が弱いし、耶具矢と夕弦の霊装も、精霊の最強の鎧して城だから気づかなかったが、十香達と比べると防御力が低そうなデザインだった。
まぁ、それでも人類にとっては、傷1つ付けられない鎧ではあるが。
『ヤツらは打たれ弱いのだ。さらに竜巻の欠点は、上空からの攻撃に弱い!』
「っ! 真那!!」
「了解です兄様!!」
ウィザード<士道>とビースト<真那>はドラゴンとキマイラと共に竜巻の上まで上昇し、竜巻の中心点が見える位置に到着して見下ろすと、『ベルセルクファントム』達の無防備な頭部を捉えた。
「よし真那! フィナーレだ!!」
「はいっ!」
『キックストライクリング』と『ビーストリング』を呼び込ませた。
[チョーイイネ! キックストライク! サイコー!]
[キックストライク ゴー!]
ウィザード<士道>とビースト<真那>が飛ぶと、ドラゴンが身体を丸めるようになり姿を変え、キマイラは全顔を分離させると、身体の形をまるで金色の四本の腕のようにすると、四本の指先にファルコ、ドルフィン、カメレオン、バッファの顔がくっつき、手のにライオンの顔が収まった。
ウィザード<士道>とビースト<真那>がそれぞれの相棒に足をつけ、赤と金色の膨大な魔力を纏うと、巨大なウィザードとビーストの幻影を現れた。
『ベルセルクファントム』達がそれに気づいたが、迎撃も防御も間に合わず・・・・。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「やぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ーーーー『ストライクエンド』
ーーーー『ストライクビースト』
『『ーーーーーーーーっ!!』』
二人の必殺キックを受けて、『ベルセルクファントム』は悲鳴を上げて爆散したーーーー。
竜巻が消え、修復されるアンダーワールドの中心に、トパーズやオレンジサファイアのような、色鮮やかな巨大な宝石が2つ現れた。
「兄様。もしかしてあれが・・・・」
「あぁ、精霊の皆のコアみたいなものだ」
ビースト<真那>に教えているウィザード<士道>だが、2つのコアの間に光の線が現れて、アンダーワールドが分離しようとしていた。
『どうやら荒業もここまでだな。すぐに戻るぞ』
「うん。真那!」
「了解でやがります!」
二人と2体は魔法陣を展開すると、アンダーワールドから脱出した。
◇
瞑目していた耶具矢と夕弦のヒビが消滅すると、二人の『エンゲージリング』が変化した。
トパーズのような黄色い宝石に、『風を纏った槍』が装飾されたリングを耶具矢が。
オレンジサファイアのような橙色の宝石に、『風を巻き付けたペンデュラム』が装飾されたリングを夕弦が。
しかし二人はリングの変化に気づいていないのか、静かに目を開けると、黙って夜空を見上げていた。すると、魔法陣から飛び出したウィザード<士道>とビースト<真那>は、横たわる耶具矢と弓弦を見た。
「真那、ここは俺に任せてくれ。十香とよしのんが戦ってるから、そっちの応援に・・・・」
「了解でやがります」
[ファルコ ゴー! ファ! ファ! ファ! ファルコ!]
ビースト<真那>はファルコマントを展開して飛んでいった。
そしてウィザード<士道>が仮面を解除して、二人を見据える。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
横たわったままの耶倶矢と夕弦はボンヤリと夜空をながめていたが、顔を横に向けてジッとお互いを見つめ合った。
そして耶倶矢が、静かに口を開く。
「お互い、無事のようね、弓弦・・・・」
「溜息。そのようですね、耶具矢・・・・」
「それでさ、士道がさ、精霊の力を封印できるって言ってたけどさ、どう思う? 夕弦」
「不信。信じられません。いくら彼が魔法使いでも、精霊から力を奪うなんて聞いたことがありません」
「だよねー・・・・私も同意見」
「ッ、お前ら・・・・!あでっ・・・・!」
≪黙っていろ≫
二人を説得しようとする士道を、ドラゴンが何かを察したのか黙らせた。
士道は二人の顔を見つめる。
ーーーー止めろ、止めろ。俺には、お前らを救える力があるのに。手を伸ばせば届くのに、掴めるのに。
しかし、士道が声を発せようとすると、ドラゴンに遮られてしまい。そして耶倶矢と夕弦が、互いの目を見据えながら言葉を続ける。
「・・・・まったく士道にも困ったもんね。二度も邪魔してくれちゃって」
「同意。まったくです。せっかく耶倶矢を倒せるところだったのに」
「何言ってんの。私こそ今必殺の一撃を放つとこだったし」
「嘲笑。シュトゥルム・ランツェ(笑)ですか」
「うッ、うるさい。もう一度言ったらマジで怒るかんね」
「応戦。どうぞ好きにしてください。どうせ勝つのは夕弦です。夕弦が、耶倶矢を生き残らせてみせます」
「そうはいかないもんね。私が勝つわよ。あんたは、生き残らなきゃなんないの」
「反論。耶倶矢こそ」
耶倶矢と夕弦が起き上がろうとする素振りを見せ、辺りに、再び風が吹き始める。
士道は『バインド』をドライバーに翳そうと構える。
ーーーーだが。
「・・・・ねえ、夕弦」
「応答。何でしょう」
「あくまでもしもの話。イフの話。可能性の話だけどさ。ーーーーもし士道の言うことが本当だったら、どう思う?」
「請願。考える時間を下さいますか?」
「認める。ただし三十秒」
「・・・・・・・・・・」
「はい、終わり。どう?」
「応答。・・・・とても、素敵だと思いました」
「・・・・ふうん。案外ロマンチストなのね」
「憮然。そういう耶倶矢はどうなのですか?」
「・・・・奇遇ね、私も同じこと考えてた」
「質問。もし二人とも生き残れたら、耶倶矢は何がしたいですか?」
「私? そうねえ・・・・あ、十香が言ってた、はんぐり~のオスペドーナツときなこパンっての食べてみたいかも。何でも究極と至高の美味らしいし」
「同意。それは美味しそうです」
「夕弦は?」
「回答。ーーーー夕弦は、学校に通ってみたいです」
「ああ・・・・いいわね。あはは、夕弦ならきっと学校中の男たちの憧れの的よ」
「否定。それはないと思います」
「へ? なんで?」
「応答。だって、耶倶矢も一緒だからです。きっと耶倶矢の方が人気が出ます」
「は、は・・・・私も一緒?」
「肯定。だって、もしもの話です。制限を与えられた覚えはありません」
「ああ・・・・そうだっけ。そうね、じゃあ放課後は街をぶらつこっか」
「同意。それは素敵です。喫茶店に入ってみたいです」
「はいはい分かってるわよ。でもちゃんと割り勘だかんね?」
「否定。それは不平等です。耶倶矢の方がいっぱい食べます」
「そ、そんなに変わんないし」
「疑問。そうでしょうか」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
その言葉を最後に、二人がしばしの間無言になる。
風鳴りが始まる中、声を再開させたのは、耶倶矢の方だった。
「・・・・ねえ、夕弦」
「応答。なんでしょうか」
「ごめん、私、嘘ついてた。・・・・私、」
耶倶矢の顔がクシャッと歪み、目から大粒の涙がこぼれ落ちる。
「私、死にたく、ない・・・・生きたい。夕弦と、もっと一緒にいたいよ・・・・!」
「応とーーーー」
次いで夕弦の瞳が潤み、頰に涙が一筋伝った。
「夕弦も・・・・です。消えたく、ありません。耶倶矢と、生きていたいです・・・・!」
「夕弦・・・・!」
「耶倶矢・・・・!」
二人が視線を合わせ、同時に唇を動かす。
「「ーーーーーーーー」」
だが、二人の喉から発された声は、互いに届くことはなかった。
「何・・・・?」
「注視。あれはーーーー」
耶倶矢と夕弦が空を仰ぎ見ると。
そこには後部から黒煙を噴いた、巨大な黒い戦艦が浮遊していた。
~捕捉~
『レヒト』はドイツ語で『右』。『リンク』はドイツ語で『左』です。