デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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遂に八舞編終了です。
後、原作ウィザードの要素が出てきます。


精霊との旅行の終わり

ーエレンsideー

 

「ゼェ! ゼェ! ゼェ! ゼェ!・・・・」

 

〈アルバテル〉が撃破された頃、どうにか意識を取り戻したエレンは、自分を下敷きにした〈バンダースナッチ〉から這うように抜け出し、落ちてきた穴からよじ登ってきた。

もはや呼吸は虫の息と言っても良く、今にも疲労で倒れそうになっていた。

〈アルバテル〉に連絡はするが、ノイズしか聞こえない。〈バンダースナッチ〉の一斉停止から十中八九やられたのだろう。

“〈アルバテル〉が跡形もなく全壊し、パディントン達も全員死亡しているなら良い”。しかし〈ラタトスク〉に〈アルバテル〉を渡してしまうわけにはーーーー。

と、思考を巡らせるエレンが小さく肩を揺らす。インカムから、『アイザック・ウェスコット』の声が聞こえたのだ。

 

「ーーーーアイク。申し訳ありません。全て私の責任です」

 

能力に余る玩具を与えられて受かれた無能<パディントン>とーーーー鬼か悪魔か厄災のような女学生達のせいと、腹の中では思っているが。

ウェスコットはエレンの思考をお見通しと言わんばかりに笑みを含んだ声を発した。

 

《それで、〈仮面ライダー〉と〈プリンセス〉は?》

 

「・・・・申し訳ありません。捕獲に失敗しました」

 

《彼女は精霊だったかね?》

 

「え? は、はい。それは確認しました。それと、“伝承の魔法使いと魔獣ファントム”の存在を確認できました」

 

エレンの報告に、ウェスコットは満足そうに喉を鳴らした。

 

《ふふ、何だ、ちゃんと判明したんじゃあないか。それが分かっただけでも今回の作戦には非常に大きな意義があった。ーーーーご苦労だったね。帰投してくれ。もうすぐ“面白い客人”が来るので、君にも同席して欲しいんだよ》

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

《不服かい?》

 

「そのような事は。ただーーーー最後に一つだけ質問が」

 

《ほう、何だい?》

 

エレンは静かに声を発する。

 

「ーーーー『伝承の魔法使い』は、精霊の力を扱う事ができると思いますか?」

 

 

 

 

 

ー折紙sideー

 

「・・・・く、ぁ・・・・」

 

うめきのような声とともに、折紙はうっすらと目を開けた。

視界に映るのは、四角い照明に照らされた旅館の一室の天井である。脇腹に鈍い痛みで先ほどの出来事が夢でない事を物語っていた。

顔をしかめながら胸元に触れてみると、湿布と包帯で手当が施されている事が分かった。

 

「一体、何が・・・・」

 

「・・・・ああ、目覚めたかい」

 

と、枕元から、眠たげな声が聞こえてきた。副担任の村雨令音だ。

 

「先生・・・・ここは」

 

「・・・・私の部屋だ。悪いが運ばせてもらったよ。他の生徒に見つかっては騒ぎになってしまうだろうからね」

 

「あの・・・・人形はーーーー」

 

「・・・・ああ、君が気を失った後、なぜか急に動かなくなった」

 

「ーーーーそう」

 

折紙は短く言うと、軋む体をどうにか起こした。

 

「・・・・無理をしない方がいい。今日は大人しくしていたまえ」

 

「この治療は、先生が?」

 

「・・・・ああ。運ぶ途中、旅館の従業員に見つかって、その人が救急箱を持ってきてくれたよ。大丈夫かい?」

 

「いえ。・・・・感謝します」

 

「・・・・礼を言うのはこちらの方さ。君のお陰で助かった。ありがとう」

 

言って、令音が頭を下げ、折紙はコクンと唾液を飲み下してから声を続けた。

 

「先生、あの人形のことは」

 

「・・・・誰にも言わないさ。その方がいいんだろう?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

折紙は無言で令音の顔を見返した。

・・・・この村雨教諭、いきなりあんな異常事態を目の当たりにしているにも関わらず、妙に落ち着いている気がした。その上、冷静に状況判断をして折紙に手当を施し、それを誰にも話していないと来たものだ。

確かに折紙としても、あの人形の事は無闇に広めて欲しくなかったのだが・・・・なんと言えば良いのか、少々優秀すぎる気がしないでもなかった。

そうーーーーまるで、CR-ユニットの存在を知っているかのように。

だが、折紙はそんな思考を中断し、もっと大事な事が頭を掠めた。

 

「ーーーー士道」

 

「・・・・ん?」

 

「士道は、どこ」

 

「・・・・ああ、無事だよ。今こちらに向かっているようだ」

 

その言葉で折紙は放念の息を吐きかけーーーー違和感に眉をひそめた。

 

「なぜ、そんな事がわかるの」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

折紙が言うと、令音は「しまった」と言うように目を泳がせて頬をかいた。そして暫く黙った後、唇を開いてくる。

 

「・・・・勘?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

ーーーーコンコン。

 

折紙が無言で布団から這い出ようとした瞬間、部屋の扉をノックされた音が響く。

 

「・・・・はい?」

 

「お客様。お連れのお客様の目が覚めましたでしょうか?」

 

扉の向こうから、若い男性の声が響いた。

 

「救急箱を持ってきてくれた従業員だよ。・・・・はい、どうぞ入ってきて下さい」

 

部屋の扉が開かれるとソコには、とても整った顔立ちの男性従業員だった。

人当たりの良さそうな貌は美麗と言っても良いくらいに非常に整っており、凛々しい目元に瞳は金色、褐色は肌に艶やかな黒髪は猫っ毛で襟足が長く、背も高く、従業員の制服の上からでも、アスリートのように適度に鍛えられた肢体をしていると分かり、旅館の従業員よりは、芸能人か男性モデルといった風体の美男子だった。

が、凛々しい目付きと黒髪と褐色の肌のせいか、まるで孤高の黒狼を彷彿させる雰囲気があった。

 

「お目が覚めて何よりです。先ほど他のお客様達も戻ってきました」

 

男性従業員の話から、士道(と不快な生命体)の事と分かり、折紙はその場に立ち上がた。

が、すぐに腹部に鈍い痛みが走り、折紙は膝をついてしまった。

 

「う・・・・っ」

 

「お客様・・・・!」

 

「・・・・大丈夫です。無理はいけない。なに、大丈夫さ」

 

「・・・・く」

 

折紙はその場に四つん這いになったまま、畳に拳を突き立てた。その衝撃でまたも腹部に軽い痛みが走るが、構わずもう一度畳を殴る。

ただの一撃。武器を使ったわけでもないただの一撃で。精霊でも魔獣でもない人形の一撃で、この様である。

顕現装置<リアライザ>が無ければ悲しいほど無力な人間。あまりにも、無力で、あまりにも弱い。折紙は自分の脆弱さを呪い、ぎりと奥歯を噛んだ。微かに血の味がした。

 

「・・・・では、私はこれで失礼致します。先ほど病院とも連絡が取れましたので、間もなく来ると思いますが雪も降ってきましたので、身体を暖めながらお待ち下さい」

 

折紙の様子から空気を読んだ従業員が一礼して部屋を出ると、折紙は従業員の言った事で気になる単語があった。

“南の島で雪”。

何をバカな事をと、部屋の窓を見ると、確かに窓に雪が付いていた。こんな異常な事、普通はあり得ない。と思ったが、折紙には心当たりがあった。

初日には緑色の雷、そして今回の雪、あまりにも奇妙な事態だが、聡明な折紙は理解した。おそらく士道が、〈仮面ライダー〉の力を使ったのだろう。

そしてもう1つ理解した。士道は今回の旅行で、さらに強くなった事をーーーー。 

 

「ーーーーたい」

 

「・・・・うん?」

 

自分に言い聞かせるように、折紙が唱える。無力な自分を叱咤するように。

 

「強く・・・・なりたい。何にも頼らず・・・・士道を、守れる・・・・くらいに・・・・ッ」

 

「・・・・・・・・」

 

その言葉が聞こえたのか聞こえなかったのかーーーー令音は、静かに目を伏せて折紙の肩に、優しく上着を掛けた。

 

 

 

ー???sideー

 

「はい。負傷した“鳶一折紙一曹”は現在、部屋で“村雨令音解析官”が看護をし、病院に搬送される予定です。“『DEM社』のエレン・メイザース”は或美島から離脱しました。“応援に来た〈ハーミット〉”、“封印が施された〈ベルセルク〉”も〈ラタクスト〉に保護されたようです。・・・・・・・・了解。“〈仮面ライダー〉・五河士道”、“〈プリンセス〉・夜刀神十香”の監視を続けます」

 

人気のない暗がりの旅館の通路で、“先ほどの従業員が誰かと連絡を取っていた”。

 

 

 

 

ー士道sideー

 

天宮市に帰るために空港にやって来た生徒達がロビーでお土産やフードコートの空港グルメを楽しんでいる間、士道は天使を使った疲労が僅かに残る身体で殿町と駄弁りながら、八舞姉妹の事を考えていた。

 

「(耶具矢と夕弦。大人しくしてるかな?)」

 

≪まあ〈フラクシナス〉でまたワチャワチャ騒いでいるのではないか?≫

 

士道は〈フラクシナス〉に保護された耶具矢と夕弦の事を思い返し、今朝がた令音との会話を思い出す。

ちなみにその時に折紙も〈バンダースナッチ〉に襲撃され、近くの病院に搬送されたと聞いた。

 

【えっ? 〈フラクシナス〉の方も戦闘をしていたんですか?】

 

【ああ。〈フラクシナス〉に装備された顕現装置<リアライザ>を用いた独立ユニット〈世界樹の葉<ユグド・フオリウム>〉を使って、君たちが遭遇した空中戦艦を相手にしていたんだ】

 

【それで、クルーの皆さんは?】

 

【それは大丈夫さ。神無月が〈フラクシナス〉を操って撃退したからね】

 

【えっ? “あの”神無月さんが?】

 

【意外だとは思うだろうが、神無月はああ見えて“元ASTの凄腕魔術師<ウィザード>だったんだよ”】

 

【『ほう、あの排泄物にも取り柄があったのか? せいぜい〈イフリート〉のストレス発散のサンドバッグくらいしか使い道が無いと思っていたがな』】

 

思念体のドラゴンの暴言に士道は半眼になりながら、「(いや、あの人だと逆にストレスにしかならないだろう・・・・)」と、思ったが、それを口にはしなかった。士道は思いやりのできる人間なのだ。

 

「(・・・・つうか、アイツら一体なんだったんだ? ASTと同じなのか?)」

 

≪さあな。あのカメラマンの女も消えていたしな≫

 

旅館に戻る前にエレンがいた地点に一応寄ってみたが、そこにエレンの姿はなく、機能停止した〈バンダースナッチ〉だけが残されていた。

すると、タマちゃん先生がそろそろ帰る時間だから集まるようにと声が聞こえて殿町と別れるとそれに合わせるように、バタバタッと言う足音が聞こえた。

 

「シドー! ドラゴン! たくさんお菓子を買ったぞ!」

 

昨日の大立ち回りの疲労などまるで感じさせない元気100倍! 勇気リンリン直球勝負! 太陽サンサン熱血パワー! な笑顔の十香が、両手に土産物屋の袋を提げて、ウルトラハッピーな笑顔で走り寄ってきた。

 

≪ウム。今日も健やかかつ元気一杯だな〈プリンセス〉。この不景気と言う言葉が全身から漏れ出ているうだつの上がらないサラリーマン風の将来絶望的な無能にも少しは見習って欲しいものだ≫

 

「うるせぇよ!」

 

「シドー! 早く行こう! 帰りは私が窓の方で良いか?」

 

「ああそうだ・・・・!」

 

「シドー!?」

 

歩き出そうとした士道だが、疲労で足がもつれ、よろけて十香を巻き込んで倒れそうになるーーーーしかし。

 

「おっと。大丈夫ですかお客様?」

 

颯爽と現れた褐色の肌と黒髪をしたイケメンな顔をした旅館の従業員が、士道の身体を受け止め事なきを得た。

 

「す、すみません! あれ? あなたは旅館の・・・・」

 

「あ、ちょうどこちらの生徒方の忘れ物を届けに来たので。・・・・お疲れならば慌てずゆっくりと身体を動かせば良いですよ」

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

「では、またのお越しをお待ちしております」

 

そう言ってイケメンの従業員は士道と十香に一礼して、タマちゃん先生に生徒の忘れ物を届けると、タマちゃん先生に何やらアプローチ的な事を言われたようだが、華麗にお断りして、その場から離れた。

タマちゃん先生がガックリしていたのは割愛しよう。

 

「ではシドー、ゆっくり行こうか?」

 

「ああ」

 

≪・・・・・・・・≫

 

十香に手を貸してもらいながら、ゆっくりと歩いて集合場所に到着すると、ちょうどタマちゃん先生が飛行機に乗り込むので順番に並ぶように声を響かせ、旅行の終わりを惜しみながら、事前に決めた席順に並んだ。

 

「シドー、さっきの話だが?」

 

「ああ、窓側は十香がーーーー」

 

「ーーーーそれは認められない」

 

「え?」

 

士道の言葉を遮るように、身体の各所に包帯を巻いて松葉杖を突いた折紙が声を発する。

折紙はそのまま平然と士道にぴとっと寄り添ってきて十香といつも通りのワチャワチャと喧嘩を始め、士道が平和的にジャンケンで決めようと言い、二人が了承した。

 

「勝負を着けてやる。ジャーンケーンーーポン!」

 

二人が同時に手を前に出したが、その場に出された手を

が、“二本ほど多かった”。

 

「え・・・・?」

 

≪ん・・・・?≫

 

グーを出した十香と折紙。そして脇から出された二つの手は、両方ともパーだった。

 

「くく・・・・漆黒の魔石<グー>は空裂の双剣<チョキ>に勝るが、破邪の呪符<パー>には敗北する」

 

「宣言。夕弦達の勝利です。士道の両隣の席はいただきます」

 

「耶具矢ーーーー夕弦!?」

 

士道はパーの主達、昨晩〈フラクシナス〉に収容された八舞姉妹だった。

その背後には、頭をユラリと揺らした令音がゆっくりと士道に歩み寄り、声を潜めて言ってきた。

 

「・・・・どうしても士道と一緒に飛行機に乗ると聞かなくてね。状態も安定しているようだし無闇にストレスを与えるのも良くないと言うことで、特別に許可を出したんだ。本格的な検査は天宮市に帰った後で行う。四糸乃も誘ってみたが、遠慮されてしまったよ」

 

「い、いや、それは良いんですけど・・・・」

 

そこで耶具矢と夕弦が、士道の両腕に絡み付いてきた。

 

「くく・・・・光栄に思えよ士道。最初は決闘の贄に過ぎなかったがーーーー我は存外御主を気に入った」

 

「寵愛。夕弦もです。ですが、せっかく和解した耶具矢と争う事はしたくありません」

 

「そこで、だ。士道、御主は我と夕弦との共有財産とする事が決定した」

 

「同意。そう言う事です。思うさま愛してあげます」

 

「は・・・・はぁッ!?」

 

≪はあぁぁぁぁ。・・・・・・・・ん?!≫

 

士道がたまらず叫び、ドラゴンがため息を吐いたが、すぐに何かを察したかのように声を上げたが士道はそれに構っていられなかった。十香と折紙に向かって、八舞姉妹がふふんと鼻を鳴らして、士道は自分達の物と宣言すると、十香と折紙がそれぞれ士道の両足を取った。

 

「ふざけるな! シドーは渡さんぞ!」

 

「いきなり現れて勝手な事を言わないで」

 

「くく・・・・良い度胸だ! 我ら八舞姉妹に挑もうとは!」

 

「応戦。受けて立ちます。夕弦と耶具矢の連携を見るがいいです」

 

言って、四人が四方から士道の手足を引っ張りーーーー。

 

「ちょ・・・・ッ、待っ・・・・!(ドラゴン! 助け・・・・!「バシンッ!」いってぇぇぇぇぇっ!!)」

 

≪五月蝿い。今取り込み中だ≫

 

「取り込み中ってぎゃああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!!」

 

士道の身体は、八つ裂きになるような激痛にとうとう悲鳴を上げた。

 

 

 

 

ー琴里sideー

 

琴里は真紅の軍服をキチンと着用し、口にキャンディも咥えていない姿で、広い廊下を歩き、今までも何度も訪れたと言うのに、どうも慣れていないのか少し緊張し、廊下の先にある扉をノックする。

 

「五河琴里、参りました」

 

『ーーーー入ってくれ』

 

「はい」

 

短く答えると、扉を開けて部屋の中に入ると、書斎のような部屋の最奥に、その男はいた。

 

「久しぶりだね、五河司令」

 

半ば白くなった髪と髭に、優しげな目元。50前後の年齢といったところの老人と言うには幾分か歳が足りないかもしれないが、好々爺と言った感じだ。

 

『円卓会議<ラウンズ>議長、エリオット・ウッドマン』。

 

〈ラタトスク機関〉の創始者であり、琴里の恩人でもある人物だ。

琴里は踵を揃えて綺麗な敬礼をした。

 

「ご無沙汰しております、ウッドマン卿」

 

「随分と活躍しているようじゃないか。円卓の連中も驚いていたよ」

 

「彼らは大仰に驚くのが仕事ですから」

 

琴里の辛口に、ウッドマンは愉快そうにくつくつと笑った。

 

「まあ、そう言わないでくれ。彼らは彼らで、〈ラタトスク〉に必要な人材だ。・・・・それより五河司令。〈灼爛殲鬼<カマエル>〉を使い、君の兄上と同じ姿に変身したようだが、大事ないかね」

 

「はい。ご心配をおかけしましたが、大丈夫です。〈仮面ライダー〉の姿も、私を含め、他の精霊達にも害はありません。寧ろ魔獣ファントムへの対抗手段として使用しようと思っています」

 

「そうか。いや、君や君の兄上には、随分と無理をさせてしまって申し訳なく思っているよ」

 

そう言って髭を撫でながら、静かな口調のまま続ける。

 

「・・・・ところで、つい先ほど報告があったのだがね」

 

「報告、ですか」

 

「ああ。〈フラクシナス〉がDEM社製と思しき空中艦に襲撃されたらしい」

 

「ええ。その報告は聞いています。しかし、艦には神無月がいます。問題は無いでしょう」

 

「そうだろうね。ーーーーどちらかと言うと問題は、もう一つの方だ」

 

「と、言いますと?」

 

琴里が問うと、ウッドマンはしばし逡巡するように見せてから口を開く。

 

「・・・・どうやら、君の兄上が、天使を顕現させたらしい」

 

「・・・・!」

 

琴里はピクリと眉を動かし、コクンと唾液を飲み下し、一瞬にして激しくなった心臓の鼓動を抑えるように胸に手を置き、呼吸を整えてから言葉を返す。

 

「そう、ですが。ーーーーもう」

 

「ああ。恐らく、君の霊力の再封印がきっかけになったのだろう」

 

「・・・・っ」

 

思わず奥歯を噛んだ琴里の様子に気付いたウッドマンが、申し訳無さそうに顔を歪めた。

 

「・・・・もしもの時は、“適切な対処”を迫られるかもしれない。でなければ、せっかく封印を施した精霊達に、また災いが降りかかる事になる」

 

「承知・・・・しています」

 

琴里が静かに目を細めると、ウッドマンが唸るように声を発してくる。

 

「・・・・嫌な役を押し付けてしまって、すまなく思っているよ」

 

「いえ、仕方ない事です。・・・・今後、もし最悪の事態に陥ったらーーーー」

 

そして、琴里は小さく頷いてからその言葉を発した。

 

「ーーーー“士道は、私が殺します”」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・≫

 

その言葉を聞いているのが、他にもいたことに気付かずに・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー白い魔法使いsideー

 

士道達が飛行機で或美島を飛び去っていくのを、白い魔法使いが空港の屋上で見つめていると、その隣に、“先ほど忘れ物を届けに来た従業員が立っていた”。

 

『すまなかったな。“わざわざ潜入までしてもらって”』

 

「いえ、こちらとしても、他の生徒達が動かないように見張っておかなければならなかったので」

 

従業員は先ほどまでの人当たりの良さそうな貌から、怜悧な顔つきとなり、雰囲気も冷徹な狼のようであった。

 

「それで、“彼女”の方はどうですか?」

 

『今は“君の上司”が対応してくれている。君もすぐ戻る事になるだろう』

 

「分かりました。では、旅館の方に退職をしておきます」

 

『しばらくは君に預ける事になるが、〈ラタトスク機関〉に気取られる事は?』

 

白い魔法使いの言葉に、従業員は鼻で笑った。

 

「フッ。実働部隊の〈フラクシナス〉のメンバーは、大半以上がアマチュア上がりの素人です。そんな連中に気取られるような者が、“この国を守れません”」

 

『そうか。では任せるぞ。〈国家安全局0課〉よ』

 

「ええ」

 

従業員は短くそう言うとその場を去り、白い魔法使いも『テレポート』でその場を去った。

 

 

 

ーフェニックスsideー

 

ーーーーボコボコ・・・・! ドガァァァァァァァァァァァァァァァァァァンンンッッ!!!

 

さらに時間は進み、士道達が天宮市に到着するのと同時に、大西洋のど真ん中の海面が突如沸騰すると、海底火山が噴火したような爆発が起きると、その爆心地の中心に、フェニックスが紅蓮の業火を放ちながら現れた。

 

『フフフフ、ははははは、はぁーーーあはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははッッ!!!!』

 

フェニックスは声高く笑い声を上げると、業火の翼を広げて、その場から飛び去っていった。

闘争の焔がさらに高まったようにーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

誰もいない静寂が支配するドームステージで、マイクを持ち、ステージ衣装をした1人の少女がステージ中央に歩いていく。

藤色の長髪に長身、薄い衣装から分かるほどの大きめのバストと抜群のプロポーション。

少女は静かに中央に到着すると、手に持っていたマイクを頭上に掲げると、ステージライトがカッと舞台を照らした。

 

「・・・・・・・・!!!」

 

少女は、“観客が女の子しかいないドーム”で、その美しい歌声を披露するが、その瞳には、どこか虚ろな輝きしか無かったーーーー。

 

 

ー『八舞テンペスト』・FINー




新キャラは公安0課所属で、デザインは『刀剣乱舞の大倶利伽羅』をイメージしてください。

次回、デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚。

天宮市内にある10の高校が行われる文化祭、『天央祭』が迫る中、実行委員として準備に大忙しの士道は新たな精霊と遭遇する、がーーーー。

「これは・・・・歌・・・・?」

無伴奏の独奏をする歌の精霊。

「何喋りかけてるんですかぁ? やめてくださいよ気持ち悪いですねぇ。息もしないでくださいー」

しかし、その精霊は絶望的に男嫌いなアイドルの精霊を攻略するために、ある奇策を行われた。

「これが・・・・俺?」

そして、更なる力を手にしたフェニックスが、とうとう暴走をするーーーー。

『ハハハハハハハハハハハハハ!! もう誰にも止められねぇぞっ!!!』

第六章 『美九リリィ』

≪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・気持ち悪い≫

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