デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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遂に、遂に彼女(?)の登場です!


ハッピーバースデイ・士織ちゃん

ー士道sideー

 

人気アイドル誘宵美九こと、精霊〈ディーヴァ〉は、百合っ子、同性愛者、レズビアン。

いや、別に個人の嗜好についてどうこう言うつもりはないのだ。士道も腐っても高校2年生。世の中には様々な愛の形がある事も理解しているし、脊髄反射的に自分と異なるものを排斥するような、幼稚な真似はしない。

だが、精霊が女の子にしか興味がないのはまずい。非常にまずい。

理由は簡単だ。士道は、〈ラタトスク〉は、精霊の力を封印して安全な状態にすることによって、空間震を防ぐと同時に精霊を保護している。

その際に必要なのが士道の力ーーーーキスを介して霊力をその身に封印する能力なのだ。

しかも、ただ唇に触れただけでは意味がない。少なくともキスを拒まれないくらいまでに好感度を高めなければならない。

 

「そ、それじゃどうしようもないじゃねぇか・・・・!」

 

『どうしようもないな。諦めるしかあるまいな。なんちゃって魔導師<AST>達かファントム共が始末する事を祈るしかあるまいな』

 

士道は絶望的な心地で呻き、ドラゴンは最早打つ手なしと言わんばかりに早々と見切りをつけた。今までにも攻略困難な精霊は何人もいたが、流石に生物学的な隔たりはどうにもできないので、今回ばかりは手の施しようがない。

しかしそんな凸凹コンビの反応に、琴里は不思議そうに目を丸くした。

 

「何言ってるのよ。士道は天央祭の実行委員なんでしょ? てことは、開催までは美九と会話する機会があるって事じゃない」

 

「んなこと言ったって、美九は男に興味がねえんだろ?」

 

「興味がないというより、嫌悪感を抱いていると言った方が正しいわね」

 

「余計駄目じゃねえか!」

 

士道が叫ぶと、琴里はやれやれだぜ、と、帽子のツバをつかむようなポーズをとって肩をすくめてきた。

 

「私が何の考えもなしにそんなこと言うと思ってるの?対策くらい考えてあるわ」

 

「対策・・・・?」

 

『(・・・・まさか)』

 

士道の言葉に琴里は頷き(ドラゴンはとてつもなくおぞましい予感を感じた)、パチンと指を鳴らした。すると、何処からともなく神無月が現れた。・・・・何故か、ずぶ濡れの状態で。

 

「神無月さん・・・・? なんで濡れてるんですか?」

 

『生臭いからこっちに近づくな。排泄物だから異臭を放つのは当然だが・・・・』

 

「いやはっは、少々スイミングを」

 

あっけらかんとした調子で神無月が笑う。ドラゴンは、≪(また気色悪い事をやらかしたのだな)≫と確信し、士道は頰を掻きながら話を戻した。

 

「で、対策ってのは・・・・」

 

「これです」

 

答えたのは神無月だった。背後に回していた手をバッと士道達の方に出してくる。

 

『「・・・・・・・・・・・・・・・・」』

 

この手に握られたものを見て、士道は一瞬その場に凍き、ドラゴンの神無月を見る目はブリザードにまで冷めきっていた。

神無月が持っていたのは、士道の通う来禅高校の制服だった。

ーーーーただし、“女子”の。

一瞬「おいおいついにやっちまったか神無月さん・・・・」と思った士道と、『ようやくこの排泄物を処分できるな・・・・』と、士道の懐からスマホを取り出して器用に操作し警察に連絡しようとするドラゴンだったが、すぐに違和感に気づいた。

その制服は新品であり、随分とサイズが小さかったのである。

そう。丁度“士道くらいの身長の女の子が着た”ならば、ぴったりかもしれなかった。

 

「・・・・ええと」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

何やら不穏なものを感じて、ドラゴンは士道から距離を取り、士道は一歩後ずさった。が、そこで背中が何かに触れる。

次の瞬間、士道はガッと両腕を拘束された。首を回して見やると、背後には〈早すぎた倦怠期<バッドマリッジ>〉川越と〈社長<シャチョサン>〉幹本がいることが分かる。

 

「ちょ・・・・っ、な、何してるんですか・・・・? は、離してくださいよ」

 

士道が顔中に脂汗を浮かばせながら言うと、今度は前方ーーーー神無月の両サイドに、両手指に様々な化粧道具を投擲武器のごとく挟み込んだ〈藁人形<ネイルノッカー>〉椎崎と、数種類のウィッグを手にした〈保護観察処分<ディープラブ>〉箕輪が現れた。

 

「な、何ですかそれっ!」

 

たまらず叫ぶ。だがそんな士道の声には構わず、神無月が二人を引き連れながらジリジリと距離を詰めてきた。

 

「大丈夫、怖くありませんよ。最初は少し足元がスースーするかもしれませんが、なに、そのうち快感に変わります。先輩が言うのですから間違いありません」

 

『(先輩・・・・)』

 

言って、ニィ、と唇を歪める神無月を、ドラゴンは塵屑を見るような視線を向けると、その視線に気付きビクンビクンとなる神無月。

 

「こ、琴里・・・・?」

 

士道は、命乞いをする敗残兵のような調子で琴里に視線を向ける。

すると琴里はにっこりと愛らしい笑みを浮かべ、

 

「グッドラック。ーーーー“おねーちゃん”」

 

なんの躊躇いもなく死刑宣告を下し、ビッと親指を立ててきた。

 

「ど、ドラゴン! 助けて・・・・!」

 

『そんなに嫌なら“最終手段”があるぞ』

 

「“最終手段”!? なんだそれ!!?」

 

ドラゴンの言葉に、士道だけでなく、琴里達も目を向けると、ドラゴンはどこからか取り出したのか、ウィザーソードガン・ソードモードの柄を尻尾で巻き付けて士道の下腹部よりも下の方に、その切っ先を突きつける。

 

「えっ、と・・・・ど、ドラゴン・・・・さん?」

 

士道は全身から嫌~な汗を滝のように流しながらドラゴンに声をかける。琴里達、特に神無月達男性クルーも嫌な予感を感じた。

 

≪手っ取り早く、その将来使い道の無さそうだが、負の遺伝子を巻き散らかす可能性の有る『管と玉』・・・・切り捨てようか?≫

 

「ひぃぃいいいいいいいいいっ!!!!」

 

ソードガンで斬り下ろすような動きをして瞬間、士道は恐怖に飲み込まれ声高く悲鳴を上げた。

男性クルーも想像したのか思わず顔を青ざめて内股となり(神無月だけは「あれ? でも切り落とされるってどんな風に痛いのかな?」と若干興味あり気だったが)、琴里達女性クルー(令音はいつも通りの無表情だが)も、「何もソコまで・・・・」と言わんばかりの顔となった。

 

『それが嫌なら・・・・分かるな?』

 

冷徹に。冷酷に。冷血に。一切合切の慈悲も情けも容赦も皆無なドラゴンの視線に、士道は抵抗するのを諦め頷くしかなかった・・・・。

 

 

 

 

 

 

それから3時間後。

 

「・・・・お、お前は誰だ!」

 

鏡を見ながら、士道は思わず声を張り上げていた。

 れはそうだ。鏡の前で自分を見返しているのは、まるで見覚えの無い“少女”だったのだから。

背をくすぐる程度に髪が伸ばされ、可愛らしい髪飾りなぞ付けている。顔にはうっすらとファンデーションが施され、マスカラとビューラーでボリュームアップされた目は、桜色の唇と相まって、もはや男のものと思えない。

ちなみに胸には詰め物をされ、ブラまで付けられている。手足は産毛に至るまで完全に脱毛されており、ツルツル美肌にされていた。

確かに一見すると女にしか見えないが、元々比較的に女顔だった士道だったので、言われたり、よほど勘の鋭い人でなければ、否、人によっては言われても冗談と笑う者もいるかもしれない。

少なくとも、一目で士道と見抜けるものはそうはいないだろう。

 

「・・・・・・・・(でも、ちょっと・・・・)」

 

「ひゅう、案外似合ってるじゃないの」

 

女装した自分に一瞬見惚れそうになる士道だが、琴里が目を丸くしながら言ってきて正気に戻り、恨みがましし視線を返した。

 

「・・・・てめぇ、覚えてろよ」

 

「女の子はそんな言葉遣いしちゃ駄目よ。そうそう、仕上げにこれをつけてちょうだい」

 

「あ?」

 

士道は眉をひそめながら、琴里から絆創膏のようなものを受け取った。

 

「それを喉に貼り付けてみて」

 

「ん?・・・・こうか?」

 

言われるがままに士道がそれを喉に貼り付ける。すると、

 

「これがどうか・・・・って、な、なんだこの声!?」

 

士道は混乱に思わず喉を押さえた。

その絆創膏を貼った瞬間、士道の声が可愛らしい女の子のそれに変化したのである。

 

「どうよ。〈ラタトスク〉の先端技術が可能にした超高性能変声機よ。数値を弄れば、小学生名探偵のようにヘボ迷探偵の声真似だって出来るわよ」

 

「いや何の用途と意図があってこんなの作ったのかわかんねぇけども」

 

「まあ、何はともあれ上出来よ。これなら少なくとも、士道を男だと思う人はいないでしょうよ」

 

琴里がフフンと鼻を鳴らし、他のクルー達もウンウンと頷き、好き放題に女装士道を評価し始めた。

調子に乗った事を言い出し始めた神無月と幹本の頭を叩いた琴里が、メインモニタに映し出された誘宵美九を一瞥し、士道に説明を再開した。

 

「さ、後はこの士道を美九が気に入ってくれるかどうかだけど・・・・士道、次に彼女と会えるのはいつ?」

 

「え?、あ、ああ・・・・確か次の月曜から、放課後に設営準備が始まるはずだから、その時には多分・・・・」

 

「そ。ふむ・・・・あんまり猶予はないけど仕方ないわね」

 

琴里はバッと身を翻すと、士道やクルーの面々に手をかざした。

 

「明日1日で士道は、自分1人で女の子モードに変身できるように訓練しなさい! 『ドレスアップ』を使えば衣装はともかくメイクアップはできないから、椎崎と箕輪は化粧を教えてあげて。それと、会話法と女の子らしい仕草も学ぶこと! 月曜の放課後からは本格的な攻略に入るわ!」

 

そして、高らかに宣言する。

士道は大きなため息を吐いてから呟くように口を開く。

 

「了解・・・・ん?・・・・っっっ」

 

そこで士道は、先ほどから会話に入ってこないドラゴンのいる方に目を向けると、即後悔と恐怖で身を竦めた。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

なぜなら、ドラゴンの自分に向ける視線が、まるで四糸乃の天使・〈氷結傀儡<ザトキエル>〉とウォータードラゴンの『ブリザード』を同時に放ったような絶対零度の視線と、神無月を見るような汚物を見る嫌悪と侮蔑の視線を送っていたからだ。

こんな視線、誘宵美九・〈ディーヴァ〉とヴァンパイアに向けられた時以上だ。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

「あ、あの、ドラゴン・・・・さん? いや、ドラゴン、様・・・・?」

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・やらせておいて何だが』

 

ようやく口を開いたドラゴンだが、その汚らわしくも穢らわしい生命体を見るような視線を変えず・・・・。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・気持ち悪い』

 

「ぐっはぁぁぁあああああああああああああああっっ!!!!!!」

 

たった一言、たった一言の侮蔑の言葉。

今までドラゴンからは、えげつないほどの悪口・暴言・毒舌・罵倒・面罵・痛罵のマシンガンを、それこそ蜂の巣どころか、穴が空きすぎてズタボロ状態になるほど撃ち込まれて来た士道でも、このたった一言の言葉で、『一、十、百、千、万、無量大数』の砲撃を生身で受けたような衝撃で吹き飛び、血を吐いてうつ伏せに倒れた。

いや、比喩でも冗談でも幻覚でもなく、本当に血を吐いて倒れたのだ。

 

『今回、我は攻略に参加しないでおく』

 

「・・・・良いのかい?」

 

倒れた士道に憐れみの視線を送る琴里達(神無月はドラゴンの言葉に興奮しているのは無視して)を尻目に、わりかし〈フラクシナス〉の中でドラゴンと良く話をする令音が聞くと、ドラゴンは吐き捨てるように言ってきた。

 

『こんな、気色の悪い変態! と一緒に行動していれば、我まで、異常な変質者! に思われてしまうわ。我は〈プリンセス〉のフォローか、〈ハーミット〉の勉強でも見ておいておく』

 

わざわざ侮蔑の言葉を力強く言って、ドラゴンは無様に倒れている士道の身体を尻尾で叩いて仰向けにさせると、白目を向いて痙攣する士道を無視して、さっさと体内に戻っていった。

ちなみに、ドラゴンは四糸乃がいずれ学校に通う日が来てもいいように、時おり〈ラタトスク〉が用意した勉強セットで、四糸乃(&よしのん)に勉強を教えているのだ。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

後に残された者達は無言の状態になり、数分後に士道が起き上がるまで何とも言えない気持ちでいた。

 

 

 

 

9月11日の月曜日。

授業が終わった生徒達は来るべき『天央祭』に向けて準備を進めーーーー実行委員は会場である天宮スクエアに赴き、エリアの確認をしたりしている。

 

《ーーーーさ、時間ね。早速準備してちょうだい》

 

「・・・・あいよ」

 

「ぬ? シドー、どこへ行くのだ? 天央祭の会場を見に行くのではないのか?」

 

インカムから聴こえる琴里の声に、士道はノロノロと椅子から立ち上がり、ロッカーに向かおうとするが、十香がその行動を不思議に思い声をかけてきた。

 

「ああ・・・・ちょっとな。先に準備しててくれ」

 

「む? う、うむ・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

今一つ腑に落ちないが、とりあえず頷く十香は士道の背を見送ったが、折紙のジッとした視線に気づかないフリをして教室を出て、ロッカーから小さなセカンドバックを取り出して、校舎の最奥にある男子トイレに足を踏み入り、個室に鍵を掛けると、バックの口を開ける。

中には、手鏡と化粧道具を取り出すと、『ドレスアップリング』をドライバーに翳した。

 

[ドレスアップ プリーズ!]

 

『ドレスアップ』で女子の制服(〈ラタトスク〉謹製の超高精度胸パッド付き)とウィッグを着用し、昨日1日で叩き込まれた化粧術を駆使して顔を飾り、変声機を取り付け、大・変・身! を完了させた。

 

「よし・・・・こんなとこだろ」

 

《士道、口調》

 

「・・・・こんなところかしら」

 

琴里に言われ、女口調に言う。・・・・正直死にたくなってきた。

ドラゴンが居れば≪さっさとくたばれ≫と冷徹な言葉が返ってきそうだが、本日はずっと沈黙を保ったままの状態だった。

そう言えば、終業のチャイムがなる前にドラゴンが言っていた、一応のアドバイスが頭によぎった。

 

 

 

【≪良いか変態。今回の攻略に不参加の我からちょっとした助言をしておいてやる≫】

 

【(誰が変態だ・・・・!「バシン!」いって!)】

 

【≪良いから黙って聞け。貴様の“サハラ砂漠の砂粒の数ほどある欠点”の中でも、特に悪い欠点を教えてやる≫】

 

【(サハラ砂漠? ドラゴンの事だから、”夜空の星の数ほどある”って言いそうなのに、随分とマイルドな毒舌だな?)】

 

【≪はぁ? 貴様の救いようなければ、どうしようもない欠点を、夜空に燦然と輝く星々と同列扱いする訳が無かろう。夜の闇の中で健気に輝き煌めき照らす星達を侮辱するような物だろうが。本当に自意識過剰で自己評価が部不相応に高い天狗小僧が。貴様の欠点など、地べたに広がる砂漠の砂粒と同類なのだ≫】

 

【(全然マイルドじゃなかったっ!!!)】

 

心の中でシャウトする士道を無視して、ドラゴンは続ける。

 

【≪良いか? 貴様の最大の欠点は、『直ぐに感情に流される事』だ≫】

 

【(感情に、流される??)】

 

【≪そうだ。精霊を『口説く』、もとい『交渉する』に当たって最もの悪手は、『感情に流される事』だ。良く『感情に従って行動するのは正しい行為』と言うが、貴様の場合は『従っている』のではなく、『流されている』と言う事だ。この二つは似て非なる、それこそ天地の違いがあるからな。その事をそのミジンコ並みの小さな脳細胞に刻んでおけ。では、我はこれから〈ハーミット〉の勉強を見るので忙しいからな。ヘマをするなよミジンコ生命体≫】

 

と、かなりの面罵を浴びた。

 

 

 

 

「(チックショウ・・・・! 誰がミジンコだ! 誰が!!)」

 

憤慨する女装士道が個室の扉を開くと、偶然か、神の悪戯か、何故か辺鄙なトイレで殿町と遭遇し、全速力で逃げる士道。

スピードを緩めた士道は、ヒラヒラとするスカート(下はショートパンツを装着している)が気持ち悪かった。

 

「・・・・女子ってのはよくこんなスカスカしたの腰に巻いて歩けるな・・・・」

 

《良い機会だし、少しは女の子の苦労を知っておくといいわ。今後の為にもね》

 

「・・・・へいへい」

 

乗降口にたどりつくと、亜衣麻衣美衣トリオが何くれとなくおしゃべりをしていた。

士道は深呼吸をして、三人に声をかける。

 

「あ、あのっ」

 

「ん?」

 

「え?」

 

「ほ?」

 

思い思いの声を発しながら、3人が振り向き、士道の方をマジマジと見てくる。ーーーーもしもこの強烈3人組にバレてしまったら最後、約1時間後には『五河士道は女装癖』なんて噂が学校中に広まってしまう危険がある。3人は首を不思議そうに傾げる。

 

「どーしたの? 何か用?」 

 

「背ぇ高っ、モデルさんみたーい」

 

「マジ引くわー。カーディガンとか暑くない? 冷え性?」

 

どうやら士道とは気づかれてはいないらしい。とりあえずはホウと息を吐く。

 

「その、山吹さん、葉桜さん、藤袴さんですよね、天央祭実行委員の」

 

「なぬ、お主、どこでその情報を!?」

 

「まさか敵国の間者か!?」

 

「マジ引くわー! 何が狙いだ!」

 

と、何やら奇妙にスタイリッシュなポーズを取って言った。とはいえ、本当に警戒してる感じではなかった。力なく笑いながら後を続けた。

 

「えっと、五河士道から伝言なんですけど、今日の実行委員は休ませて欲しいと・・・・」

 

「なんだとゴルァ!」

 

「あのヤロウ逃げやがった!」

 

「マジ引くわー! 火を持て! 魔女が出たぞ!」

 

なんだか明日魔女裁判のように火炙りされそうだったが、とりあえず聞かなかった事にしておき、士道の代わりに来たから連れていって欲しいと伝えると、亜衣がキョトンと目を丸くする。

 

「んー、そりゃ私たちは構わない・・・・っていうかむしろ助かるくらいだけど・・・・」

 

「そもそもあなたどちら様? 五河くんとどーいうご関係・・・・?」

 

「マジ引くわー。そういえばさっき呼び捨てにしてたね。やだ、もしかして十香ちゃんにライバル出現?」

 

と、三人がにわかに色めきヒソヒソと話す。士道が慌てて割って入った。

 

「い、いえ、私はそういうのではなくて・・・・そう、従兄妹です、イトコ! 1組の・・・・ええと、『五河士織』です」

 

咄嗟に適当な偽名を名乗ると、3人はスクラムを組むように会議を始めた。

そして数秒後、ガバッと円陣を展開すると、ポンポンと馴れ馴れしく肩を叩いてくる。

 

「色々腑に落ちない気もするけど、まあいいでしょ」

 

「よろしくね士織ちゃん」

 

「マジ引くわー。いっぱい働いてもらうかんねー」

 

「は、はい・・・・!」

 

どうやら第一関門は突破したらしい。ほっと安堵の息を吐く。

と、その時。背後から何やらやかましい声が聞こえてきた。

 

「どうせ貴様の仕業だろう! 言え、シドー達をどこにやった!」

 

「それはこちらの台詞。隠し立てすると後悔することになる」

 

振り返るまでもない。十香と折紙であった。まだ集合場所に現れてなかったのが不思議だったが、どうやら士道を探していたらしい。

 

「お、十香ちゃーん、鳶一さーん。こっちこっちー」

 

亜衣が手を振ると、十香と折紙が視線を向けてきた。

 

「・・・・うぬ?」

 

と。士道の姿を目にした十香が、目を丸くする。

そして何やら目を伏せ、匂いを嗅ぐようにヒクヒクと鼻を動かしてきた。

数秒後、確信を持った顔で士道の目を見つめてくる。

 

「何をしているのだ、シーーーー」

 

「・・・・っ!」

 

士道が慌てて口を塞ぎ、亜衣麻衣美衣トリオに聞こえないような声で十香の耳元に囁く。

 

「・・・・すまん、十香、ちょっと訳ありでな。知らないフリをしてくれないか?」

 

「ぬ・・・・? そ、そうなのか。うむ、わかったぞ」

 

十香は小さく頷き、やたらと大きな声を発した。 

 

「うむ!よろしくだ、シドーではない女!」

 

「・・・・は、はい、よろしくお願いします」

 

頰に汗を垂らしながらも握手を交わす。三人娘は少しだけ訝しげな顔をしたが、まあいつもの十香と言う事で納得したのだろう、深くは追求しなかった。

とーーーー。

 

「・・・・!?」

 

士道は思わずを目を瞑る。

理由は単純。突然下方からカシャッという音と共にフラッシュが焚かれたのである。

 

「えっ、えっ?」

 

士道が目を白黒させ、そっちを見ると・・・・すぐに犯人は知れた。

鳶一折紙だ。

どこから取り出したのか、小型のデジタルカメラを構え、妙に格好いいポーズで連続してシャッターを切っていたのだ。無論、被写体は士道である。

いつも通りの無表情たが、心なしか少し興奮したように息を荒くしている気がした。

 

「あ、あの・・・・」

 

「動かないで」

 

言って、折紙がまたもシャッターを切る。右から、左から、時に冷静かつ情熱的に。プロ顔負けの迫力で一心不乱に士道の姿を写真に収めていく。

 

「目線をこちらに」

 

「え、えっと・・・・」

 

「いい。とてもいい」

 

「その・・・・」

 

「1枚脱いで」

 

「こ、困ります」

 

士道としてはあまりこの姿を記録に残して欲しくないのだが、それを言ったところで折紙が従うとは思えなかった。恥ずかしそうに顔を背けながら折紙の気が済むのを待つ。

そんな様子を見てか、亜衣麻衣美衣がヒソヒソと話し始めた。

 

「ねーねー、鳶一さんって五河くん狙いじゃなかったの?」

 

「女の子もイケるクチだったとか?」

 

「五河姓なら誰でもOKって事? DNA狙い? マジ引くわー」

 

・・・・などと、好き放題言われているが、折紙は全く意に介する様子が無く、仰向けに横たわると、ぐぐっと士道の両足の間に手を滑り込ませてくる。

 

「ちょっ、何を・・・・!」

 

たまらずスカートを押さえて後退るが、折紙がカメラを持っていない方の手でガッシと足を鷲掴みにしてきた。

 

「こ、この、何をしているのだ!」

 

流石に見兼ねたのか、十香が折紙の両足を掴んで、士道から引き離そうとする。端から見たらさぞシュールに違いない。

だが折紙は、その細腕からは想像もつかないほどの怪力で士道の足をキープしたまま、カメラからカシャカシャカシャ・・・・と連続した音を響かせてきた。まさかの連写である。

 

「ちょ、まっ、い、いやぁぁぁぁぁああああッ!?」

 

士道は顔を赤くして、女の子より(少なくとも折紙より)女の子らしい悲鳴を上げた。




特ダネ! スクープ! 人気アイドル誘宵美九! 謎の美少女とデート!!
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