デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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名前

ー???sideー

 

「おい。せっかく精霊が現れたって言うのに、このまま手を出さねえのかよ?」

 

「忘れるな、我々の目的は精霊を始末する事ではない」

 

士道達がいる来禅高校から少し離れたビルの屋上に、無精髭を生やし、赤系統の派手な服を着た粗野な風貌の青年とノースリーブのドレス姿に妖艶な雰囲気を持つ黒髪の少女。〈魔獣 ファントム〉である、〈フェニックスのユウゴ〉と〈メデューサのミサ〉が、精霊が現れた高校を見据える。

 

「ケッ、だが『指輪の魔法使い』に彷徨かれるのは目障りだろう? フンッ!」

 

ユウゴが手に持った何個もある灰色の石を辺りに投げると、その石から魔法陣が現れ、石が『グール』へと変身した。

 

「行けグール共! 『指輪の魔法使い』と、『小蝿』を始末しておけ!」

 

『ウゥゥゥゥゥッ!!』

 

グール達は、ビルから飛び降りて来禅高校へと向かった。

 

「おいミサ、本当にあの精霊がそうなのか?」

 

「『ワイズマン』はそう睨んでいる。私達は『ワイズマン』の意思に従うだけだ」

 

自らの『上位存在』の指示に、忠実に従うだけのメデューサに、フェニックスは退屈そうに欠伸をかいた。

 

 

 

ー士道sideー

 

精霊〈プリンセス〉とのファーストコンタクトにとりあえず成功した士道(&ドラゴン)。

 

《ーーー上出来よ士道。そのまま続けて》

 

「あ、ああ・・・・」

 

右耳から響く琴理の声に、頷く士道。すると、〈プリンセス〉が大股で教室の外周をゆっくりと回り始めた。

 

「ただし不審な行動を取ってみろ。お前の身体に風穴を開けてやるからな」

 

「・・・・オーケイ、了解した」

 

士道の返答を聞きながら、〈プリンセス〉がゆっくりと教室に足音を響かせていく。

 

「シドー」

 

「な、なんだ?」

 

「ーーー早速聞くが。ここは一体何なんだ? 初めて見る場所だ」

 

言って歩きながら倒れていない机をベタベタと触り回る。

 

≪コイツ、学校を知らないのか?≫

 

「え・・・・ああ、学校ーーー教室、まあ、俺と同年代くらいの生徒達が勉強する場所た。その席に座って、こう」

 

「なんと。これに全ての人間が収まるのか? 冗談を抜かすな。四〇近くはあるぞ」

 

「いや、本当だよ」

 

〈プリンセス〉は驚いたように目を丸くしたのを見て、士道は頬をかいた。

 

≪精霊が現れると大半の人間は避難するからな。ASTくらいしか見たことがないのだろう≫

 

「なるほど。なあーーー」

 

ドラゴンの言葉に納得した士道は、〈プリンセス〉の名を呼ぼうとするが、自分が知っているのは彼女の識別名の〈プリンセス〉なので、声を詰まらせる。

 

「ぬ?」

 

士道の様子に気づき、〈プリンセス〉が眉をひそめてくる。

そしてしばし考えを巡らせるように顎に手を置いたあと。

 

「・・・・そうか、会話を交わす相手がいるのなら、必要なのだな。シドー。ーーーお前は私を何と呼びたい」

 

「・・・・は?」

 

手近にあった机に寄りかかりながら、そんな事を言う〈プリンセス〉の言葉の意味がわからず、問い返す。

〈プリンセス〉はフンと腕組みすると、尊大な調子で続けた。

 

「私に名をつけろ」

 

「≪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・≫」

 

士道とドラゴンはしばし沈黙した後で。

 

ーーー重ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!

 

士道は心中で絶叫し、ドラゴンは面倒な事になった言わんばかりにため息を漏らす。

 

「お、俺がかッ!?」

 

「ああ。どうせおまえ以外と会話する予定はない。問題あるまい」

 

「ち、ちょっと待っててくれ! 今考えるから!」

 

「何だと?」

 

「せっかく名前を考えるならさ! 変な名前を付けないようにしないといけないだろう?!」

 

「そうなのか?」

 

「ああ! もしも名前が、ポチとかタマとかクロスケって名前だったらおまえもイヤだろう?!」

 

「・・・・フム、確かにな。では少し待つか。だが、変な名前を付けたらどうなるか・・・・解るな?」

 

〈プリンセス〉の指先から黒い光が閃き、士道は首が外れんばかりに縦に振り、熟考しながらドラゴンと緊急脳内会議を開いた。

 

「(どうするよドラゴン!!)」

 

≪我に聞くな。こういう時こそ、お前の妹の組織がサポートするのではないか?≫

 

「(あぁそうか!)」

 

士道が琴理に指示を仰ごうとしたが、右耳から琴理がクルーと話し合っている声が聴こえ、耳をすませると。

 

《川越! 美佐子って別れた奥さんの名前じゃない!》

 

《す、すみません、思いつかなかったもので・・・・》

 

《麗鐘? 幹本、何て読むのこれ》

 

《麗鐘<くららべる>です!》

 

《あなたは生涯子供を持つことを禁じるわ》

 

《すいません! もう一番上の子が小学生です!》

 

《一番上の子?》

 

《はい! 三人います!》

 

《ちなみに名前は》

 

《上から、美空<びゆあつぷる>、振門体<ふるもんてい>、聖良布夢<せらふいむ>です!》

 

《一週間以内に改名して、学区外に引っ越ししなさい》

 

《そこまでですかッ!?》

 

《変な名前つけられた子供の気持ちを考えなさいこのダボハゼ》

 

《大丈夫ですよ! 最近はみんな似たようなものですから!》

 

「(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)」

 

≪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・≫

 

士道とドラゴンの顔から、〈フラクシナス〉への期待が一切合切無くなった。

 

「(頼むよドラゴン。一緒に考えてくれ・・・・!)」

 

≪ハアァァァ・・・・! 仕方あるまい。まったく役立たず共が・・・・!≫

 

右耳から聞こえるバカ共の漫才に、とうとう士道は本格的に頭を抱え、ドラゴンは盛大なため息をついて、バカ共に心の底から悪態をつく。

 

「(んで、どんな名前にすれば良いと思う?)」

 

≪ふむ。確か人間が赤ん坊に名前を付ける時、生まれた月から1月なら睦月、3月なら弥生と名前を付けたり、愛を持った子になる願いを込めて愛と名付けたり、真っ直ぐな子になって欲しくて直と言う名前を付けるな?≫

 

「(いつも思うけどよ。ドラゴンって結構人間社会の事よく知っているよな? そう言う知識何処から得ているんだ?)」

 

≪さぁな、“何故”かそう言う“知識”があるのだ≫

 

「(あっちょっと待てドラゴン! 今名前付けるのに生まれた月から取るって言ったよな?)」

 

≪言った≫

 

「(・・・・・・・・・・・・・・・・)」

 

士道は少し考えてから、〈プリンセス〉に向き直り。

 

「ーーーーーーと、“十香”」

 

士道は躊躇いがちにその名前を口にした。

 

「ぬ?」

 

「ど、どう・・・・かな?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

〈プリンセス〉はしばらく考えたあとーーー

 

「まあ、いい。ポチとかタマとか、クロスケよりはマシだ」

 

士道は見るからに余裕の無い苦笑を浮かべて後頭部をかいた。

 

≪四月“10日”に初めて出会ったからって、“十香”とは、安直過ぎるだろう・・・・≫

 

「(・・・・なーにやってんだ、俺は・・・・)」

 

≪まあ良いだろう。当の〈プリンセス〉は了承したしな≫

 

《士道にしては良い名前じゃない?》

 

とりあえず成功したので安堵する士道&ドラゴンに、琴理の暢気な声が届き、士道はこっそり声を潜ませ文句を言う。

 

「お前なぁ・・・・!」

 

《私は“トメ”って名前にしようと思ったわ。古風で良い名前だと思うし》

 

「(コイツが口を出す前に決めて本当に良かったわ)」

 

≪間違いなく不機嫌になっていたな≫

 

幹本の事を悪く言えないセンスである。全国のトメさんには失礼だが。〈プリンセス〉はトン、トンと士道に近づいてくる。

 

「それでーーートーカとは、どう書くのだ?」

 

「ああ、それはーーー」

 

士道は黒板の方に歩いていくと、チョークを手に取り、『十香』と書いた。

 

「ふむ」

 

〈プリンセス〉が小さく唸ってから、士道の真似をするように指先で黒板をなぞる。

 

「あ、いや、ちゃんとチョークを使わないと文字が・・・・」

 

言いかけて言葉を止める。〈プリンセス〉の指が伝ったあとが綺麗に削り取られ、下手くそな『十香』の二文字が記されていた。

 

「なんだ?」

 

「・・・・いや、なんでもない」

 

「そうか」

 

≪ゴリラかこの娘は?≫

 

〈プリンセス〉はしばしの間、自分書いた文字をじっと見つめ、小さく頷いた。

 

「シドー」

 

「な、なんだ?」

 

「十香」

 

「へ?」

 

「十香。私の名だ。素敵だろう?」

 

「あ、ああ・・・・」

 

≪名付け親に聞くことか?≫

 

〈プリンセス〉ーーー十香は、もう一度同じように唇を動かした。

 

「シドー」

 

・・・・さすがに鈍い士道でも、十香の意図は分かった。

 

「と、十香・・・・」

 

その名を呼ぶと、十香は満足そうに唇の端をニッと上げた。

 

「・・・・っ」

 

心臓が、どくんと跳ねる。そういえば十香の笑顔を見るのは、これが初めてだった。

 

≪乙女かお前は?・・・・む!≫

 

ドラゴンが呆れるが、そのとき。

 

「ーーーぇ・・・・?」

 

突如、校舎を凄まじい爆音と震動が襲った。

 

≪小僧。伏せろ≫

 

《士道、床に伏せなさい》

 

「っ!」

 

ドラゴンと琴理が当時に声を上げ、すぐに床にうつ伏せになる士道。

次の瞬間、ガガガガガガガガガガガーーーッと、けたたましい音を立てて、教室の窓ガラスが一斉に割れ、ついでに向かいの壁にいくつもの銃痕が刻まれた。

 

「ASTかっ!?」

 

《そのようね。外から攻撃して精霊をいぶり出す為じゃないかしら。ーーーああ、それとも校舎ごと潰して、精霊が隠れる場所を無くすつもりかも》

 

「滅茶苦茶やるなぁ・・・・!」

 

《今はASTのウィザードの災害復興部隊がいるからね。すぐに直せるなら一回くらい壊しちゃっても大丈夫ってことでしょ。ーーーにしても予想外ね。ここまで強攻策に出てくるなんて》

 

と、士道は顔を十香に向けた。

十香は先ほどまで士道に対していたときとはまるで違う表情をして、ボロボロにになった窓の外に視線を放っていた。

無論、十香には銃弾と窓ガラスの破片は触れていない。だがその顔は、ひどく痛ましく歪んでいた。

 

「ーーー十香ッ!」

 

「・・・・っ」

 

士道が名前を呼んで、ハッとした様子で十香は視線を外から士道に移した。

凄まじい銃声が響いていた教室への攻撃は一旦止んだ。

士道は外に気を張りながらも、右手に『ドライバーオンリング』を嵌めて、悲しげに目を伏せる十香を見据える。

 

「早く逃げろシドー。私と一緒にいては、同胞に討たれることになるぞ」

 

「・・・・・・・・・・・・(ドラゴン。力を貸してくれ)」

 

≪・・・・フン。仕方あるまい≫

 

士道は無言でバックルにリングを翳した。

 

[ドライバーオン プリーズ]

 

『ウィザードライバー』を召喚し、右手向きの手形のバックルを左手向きに変える。

 

[シャバドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪]

 

「変身!」

 

ドライバーを起動すると、軽快なメロディーが流れ、士道は左手に『ウィザードフレイムリング』嵌めて、メガネを下ろし、ウィザードの顔にしてバックルに翳す。

 

[フレイム プリーズ ヒー! ヒー! ヒーヒー、ヒィー!!]

 

メロディーが流れると同時に、士道の左手を左に伸ばし、ソコから魔法陣が左から右へと移動すると、士道の身体は燃える赤き魔法使い、『ウィザード フレイムスタイル』へと変身した。

 

《馬鹿ね》

 

士道が変身したのを見て琴理が呆れ混じりに言う。

 

「なんとでも言え」

 

《褒めてるのよ。ーーーまぁ死にたくなかったら、死なない程度に頑張りなさい》

 

「そのつもりだ」

 

≪まぁ文字通り、“死んでも死なない”からなこの小僧は≫

 

変身した士道は十香と隣りに立つ。

 

「はーーー?」

 

十香が目を見開く。

 

「何をしている? 早くーーー」

 

「知ったことか。今は俺とのお話しタイムだろ。ーーーそれにこの世界の情報、欲しいだろ? 俺に答えられることならなんでも答えてやる。それにこの姿なら銃弾くらい何ともない」

 

[ディフェンド プリーズ]

 

ウィザード<士道>は自分の前方に炎の魔法陣の障壁が展開された。心なしか、炎の魔法陣の障壁のパワーが、いつもよりも上がっているように感じる。

その証拠に、先ほどから撃たれてくる弾丸が、魔法陣に触れた瞬間に瞬間焼却され、ウィザード<士道>と十香にまったく当たらなかった。

 

「・・・・!」

 

十香は一瞬驚いた顔を作ってから、ウィザード<士道>と向かいあい、二人は床に座り込んでお話しタイムを始めた。

 

 

 

ー折紙sideー

 

ワイヤリングスーツに身を包んだ折紙は、両手の巨大ガトリングを握っていた。

随意領域<テリトリー>により重力と反動もほとんど感じない、戦艦に装備されているような大口径のガトリングの砲撃を四方から受けた校舎は見る見る穴だらけになってその体積を減らした。 しかしこのガトリングはあくまで校舎を破壊し、精霊をいぶり出す為のものだ。

 

《ーーーどう? 精霊は出てきた?》

 

ヘッドセットに内臓されたインカム越しに燎子の声が聞こえてくる。

 

「まだ確認できない」

 

攻撃を止めないまま答える。

 

《それにしても、校舎を破壊して精霊をいぶり出せって。網野中佐らしくない、過激な事を命令するようになったわね》

 

「隊長は、網野中佐を知っているの?」

 

網野中佐。現在本部の司令室で、折紙達に指示を飛ばしているASTの上官。

折紙が入隊する前に、上層部に“当時の上官”の不手際をリークして現在の地位についたような人物で、あまり折紙達のような若い隊員からは良い感情を持たれていないが、燎子達古参の隊員達からは敬意を持たれている。

 

《まぁね。あんた達のように日が浅い隊員達からは、上官をリークした汚い人と思っているようだけど。正直言って、網野中佐がいなかったら私達は、“犯罪者集団”になっていたからね。当時の隊員達からは“英雄”か“救世主扱い”だったわよ・・・・》

 

「???」

 

良く分からないが、気持ちを切り替えて、折紙は銃を撃ちながら目を見開いて崩れゆく校舎をじっと睨めていた。

通常であればまともに見取る事すらできない距離だが、随意領域<テリトリー>を展開させた今の折紙には、校舎脇の掲示板に張られた紙の文字まで読むことも可能であり、折紙は小さく目を細めた。

 

二年四組。折紙達の教室。

 

その外壁が折紙達の攻撃によって完全に崩れ落ち、ターゲットである精霊の姿が見えたがーーー。

 

《ん? アイツは・・・・!》

 

燎子が驚きの声を上げる。それはそうだろう。教室の中には魔法陣のようなものが見えた。その魔法陣は、昨日精霊を庇い、自分達を圧倒した〈仮面の魔法使い〉が使っていた魔法陣だと確認できたのである。

 

《あの魔法陣みたいなの、あの仮面野郎かっ?! やっぱり精霊の仲間だったようねっ!》

 

燎子は怒り心頭に叫び声を上げる。前回の戦闘で“おばさん”呼ばわりされたのを根に持っているようだ。

 

「ーーーーーー!」

 

そして折紙はすぐさま両手のガトリングを捨てて、腰に携えた近接戦闘用の対精霊レイザー・ブレイド<ノーペイン>を引き抜いて、校舎へと向かっていった。

途中燎子や本部から通信が響くが、折紙は構うことなく向かう。精霊と、〈仮面の魔法使い〉の正体を知るために、もしかしたら、あの少年がーーー折紙のクラスメート・五河士道が、〈仮面の魔法使い〉なのか探るために。

 

 

 

ー士道sideー

 

銃弾を炎の魔法陣が完全に防ぎ、仮面だけ変身解除した士道は、十香と向き合いながら話す。

会話の内容は何て事のないものである。

十香が今まで誰にも聞けなかった事を質問して士道が答える(ドラゴンは黙って二人の様子を見守る)。ただそれだけの応酬で、十香は満足そうに笑った。

どれくらい話したかと思うと、士道の耳に琴理の声が聞こえた。

 

《ーーー数値が安定してきたわ。もし可能だったら、士道からも質問してみてちょうだい。精霊の情報が欲しいわ》

 

言われて少し考えを巡らせた士道は仮面越しに口を開く。

 

「なあーーー十香」

 

「なんだ」

 

「お前って・・・・結局どういう存在なんだ?」

 

「む?」

 

士道の質問に十香が眉をひそめるが。

 

「知らん」

 

「知らん、て・・・・」

 

「事実なのだ。仕方ないだろう。ーーーどれくらい前だったか、私は急に“そこ”に芽生えた。それだけだ。記憶は歪で曖昧。自分がどういう存在なのかなど、知りはしない」

 

「そういうものか・・・・?」

 

≪・・・・・・・・・・・・≫

 

士道は頬をかき、ドラゴンは十香の情報から思考を巡らせていると、十香はふんと息を吐いて腕組みした。

 

「そういうものだ。突然この世に生まれ、その瞬間にはもう空に“メカメカ団”が舞っていた」

 

「≪“メカメカ団”・・・・?≫」

 

「あのびゅんびゅんうるさい人間たちのことだ」

 

どうやらASTの事らしいが、あまりにも安置なネーミングに士道は苦笑し、ドラゴンは呆れた。

と、次いでインカムから、クイズに正解したときのような軽快な電子音が鳴った。

 

「なんだ?」

 

《! チャンスよ士道》

 

「は・・・・? 何がだ?」

 

《精霊の機嫌メーターが七〇を超えたわ。一歩踏み込むなら今よ》

 

「踏み込むって・・・・何すりゃいいんだ?」

 

《んー、そうね。とりあえず・・・・デートにでも誘ってみれば?》

 

「はぁ・・・・!?」

 

琴理の言葉に士道は思わず大声を上げてしまった。

 

「ん? どうしたシドー」

 

十香が士道の声に反応して目を向ける。

 

「ッーーー! や、気にしないでくれ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

慌てて取り繕う士道に、十香はじとっとした訝しげな目で見つめてきた。

 

《誘っちゃいなさいよ。やっぱ親密度上げる為には一気にこう、さ》

 

「・・・・んなこと言ったって、こいつ出てきたときにはASTが・・・・」

 

《だからこそよ。今度現界したとき、大きな建造物の中に逃げ込んでくれるよう頼んでおくの。水族館でも映画館デパートでも何でもいいわ。地下施設があるとさらにいいわね。それならASTも直接入ってこられないでしょ》

 

「・・・・む、むう」

 

≪ここまで来たら腹をくくれ。いい加減にしないと〈プリンセス〉が不審に思うぞ≫

 

「さっきから何をブツブツ言っている。・・・・! やはり私を殺す算段を!?」

 

「ち、違う違う! 誤解だ!」

 

視線を鋭くした十香が、指先に光球を出現させ、士道は慌てて静止する。

 

「なら言え。今何と言っていた」

 

「ぐぬ・・・・」

 

士道がうめくと、琴理と艦橋内のクルー達も囃し立てるかのようなコールが響いた。

 

《ほーら、観念しなさいよ。デートっ! デートっ!》

 

《デ・エ・ト!》

 

《デ・エ・ト!》

 

《デ・エ・ト!》

 

「(コイツら・・・・!!)」

 

≪役立たずの集団の分際で、囃し立てるの“だけ”は気合いを入れるな。それで、どうする小僧? もう退けんぞ? 覚悟を決めるか?≫

 

「あーもうわかったよッ!」

 

士道は観念して叫びを上げた。

 

「あのだな十香」

 

「ん、なんだ」

 

「そ、その・・・・こ、今度俺と」

 

「ん?」

 

「で、デート・・・・しないか?」

 

十香は、キョトンとした顔を作った。

 

「デェトとは、一体なんだ?」

 

「あらっ?!」

 

≪そこからか・・・・≫

 

士道は思わずズッコケ、ドラゴンは頭痛を堪えるような苦々しい声を上げる。

と、その時、右耳から少し大きな琴理の声が入ってきた。

 

《ーーー士道! ASTが動いて《司令! 〈ファントム グール〉も現れました!》 何ですってっ!?》

 

「っ!」

 

琴理の声に士道はすぐさま立ち上がり、顔を仮面で覆いウィザードになると、次の瞬間ーーーいつの間にか、風通しの良くなった教室の外から、鳶一折紙が現れ、十香に敵意と殺意に溢れた眼差しで睨み、手にした無骨な機械から光の刃を現出させて構える。

 

「・・・・・・・・」

 

十香は一瞬で表情を険しくすると、ちらとウィザード<士道>を一瞥してから、自分の足元の床に踵を突き立てた。

 

「ーーー〈鏖殺公<サンダルフォン>〉!」

 

瞬間、教室の床が隆起し、そこから玉座が現れ、十香が玉座の背もたれから剣を抜き、折紙に向けて剣を構える。

 

「・・・・・・・・」

 

「無粋な・・・・!」

 

折紙と十香が睨み合う。

 

「お、おい」

 

《士道、ここは十香に任せて大丈夫よ。相手は1人だし、それに外では他のAST隊長達が、〈グール達〉と交戦しているわ》

 

「っ!」

 

士道は十香を睨んで動かない折紙の後ろをチラッと見ると、折紙と同じ武装をしたAST隊員達が、グールと交戦しているのが見えた。士道はコッソリと十香に寄り、耳打ちする。

 

「十香、ここは俺が何とかする。お前はトンズラしろ」

 

「何だと?」

 

「昨日も言っただろう? お前もアイツらの相手するの面倒だろって、それに外で昨日の異形達が暴れている。ここは俺に任せてくれ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

十香は不満そうな顔を浮かべる。

 

「今度デートの意味をちゃんと教えるからさ。頼むよ」

 

「・・・・・・・・良いだろう」

 

そう言って十香の周りを光が覆う。

 

「っ・・・・!」

 

折紙が十香に、光の刃を振り下ろして襲いかかろうとするが。

 

[コネクト プリーズ]

 

ウィザード<士道>がウィザードソードガン・ソードモードで折紙の光の刃を受け止める。

 

「くっ・・・・!」

 

「悪いな・・・・!」

 

≪〈プリンセス〉は離脱したぞ≫

 

光が収まるとそこに十香はいなくなっていた。ウィザード<士道>は折紙を押し退けると、折紙は穴だらけになった教室の床に着地する。

 

「誰なの・・・・」

 

「ん?」

 

「貴方は一体、誰なの?」

 

「(もしかして、感づかれてる?)」

 

≪口ぶりからするとまだ確信がないのだろう? とりあえずとぼけておけ≫

 

「・・・・俺の事よりも、良いのか? お仲間が大変な目に合っているぞ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・くっ」

 

折紙は無表情だが僅かに目を細め、インカムから聞こえてくる仲間達の叫びに歯噛みすると、教室を出て仲間達の元へ向かった。

 

「ふぃ~~・・・・」

 

《ナイスよ士道。このまま〈フラクシナス〉で回収するわ》

 

琴理の声を聞きながら、士道は教室の外を眺めると、〈グール〉と交戦しているASTを眺める。雑兵の〈グール〉しかいなく数もそこまで多くない、ASTも数の差で殲滅していく。

 

「〈グール〉だけか、でもとりあえず・・・・」

 

≪わざわざ手助けせずとも良いだろうに≫

 

[キャモナシューティングシェイクハンズ! キャモナシューティングシェイクハンズ! フレイム・シューティングストライク! ヒーヒーヒー!]

 

ウィザードソードガン・ガンモードに変えたウィザード<士道>は、シューティングストライクで何体かの〈グール〉を粉砕した。

ASTの隊員達は、ウィザード<士道>に驚いたような視線を向けるが、ウィザード<士道>は〈フラクシナス〉によって回収され、その場を去った。

 




〈グール〉ならASTでも倒せます。『仮面ライダーカブト』の〈ワーム サナギ体〉と〈ゼクトルーパー〉のような物です。
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