デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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協力・狂三

ー士道sideー

 

「だ、駄目だそんな事!」

 

冗談めかすような狂三の言葉に、士道は慌てて首を横に振った。

 

「うふふ、冗談ですわよ。優しい士道さんがそんな解決を望んでおられない事くらい承知しておりますわ。ーーーーこんなわたくしでさえ救おうとしま酔狂なお方ですもの」

 

≪酔狂と言うよりも、頭のネジが何本かすっ飛んだ変態だろう≫

 

「(誰が変態だこの陰湿トカゲ!)」

 

笑みを浮かべる狂三のそれが、少し印象と違う事が気になったが、狂三が言葉を続ける。

 

「でも、手段が取れないとすると少々骨ですわよ。この短時間で説き伏せるのは不可能としても、最低限、十香さんを救い出すまでの間、こちらに手を出さないと言う約束をさせるくらいはしておきませんと」

 

「約束・・・・か」

 

≪それが一番困難だろうが、これ以上軍勢を増やされたら面倒だ。この女には何か策があるのだろう≫

 

「・・・・狂三、お前ならどうする?」

 

質問の意図を察したのか、狂三が顎に手を当ててくる。

 

「美九さんと士道さんを二人きりにする事ができたら・・・・どうですの?」

 

「いや、それは・・・・難しいだろう。お前も見ていたかもしれないけど、マトモに話が通じる相手じゃないんだ。特に今俺は最悪なレベルで嫌われてるし・・・・それに何より、人を操る『声』を生まれ待っちまった精霊だからか、人間に対する価値観が異質なんだ」

 

と。士道が言うと、狂三がピクリと眉を動かした。

 

「どうかしたのか、狂三」

 

「・・・・それは、どうですかしらねぇ」

 

≪やはり、この女もそう思うか・・・・≫

 

「え・・・・?」

 

顎に指を触れさせながら言う狂三の言葉と、それに(珍しく)同意するドラゴンも首を捻る。すると狂三は半眼を作りながら答える。

 

「上手く説明できませんけれど、本当にあの方の価値観は、先天的なものたのでしょうか」

 

「どういう事だ・・・・?」

 

「いえ、何と言いましょうか。あの方、少しばかり妙な感じが・・・・」

 

「そう言えば、ドラゴンも美九がなぜあんな価値観を持ったのか不思議に思っていたな」

 

「ドラゴンさんも、ですの? ならば何故探りを入れなかったのですの?」

 

「・・・・・・・・」

 

狂三に問われ、士道はバツが悪そうに目を逸らしながら言う。

 

「その、俺が美九のあの考え方に嫌悪感を抱いて、【お前が嫌いだ】って、【お前の考え方を否定する】って、言っちまって・・・・」

 

「ああ、なるほど」

 

それだけ聞いて、その後の展開の予想がついた狂三は納得しつつ、はぁっ、ため息を漏らした。

 

「ドラゴンさんも迂闊でしたわね。士道さんの性格上、あの方の考え方と価値観を知れば、状況をややこしくさせてしまう事くらい考え付かなかったですの?」

 

≪・・・・それについて我の考え不足だった。この後先考えない畜生程度の脳細胞も、何人もの精霊達と対話をし続けてきたのたから、少しは冷静な行動が出きるようになったのではと、多少の期待を持ってしまった我の落ち度だ≫

 

「ふう、士道さんも、もう少し感情を抑える術<すべ>を身につけた方が宜しいですわね・・・・」

 

「(・・・・何でお前ら、会話の呼吸が合っているんだよ!?)」

 

琴里も普段はドラゴンと仲悪いが、士道を罵倒したり貶したりする時は阿吽の呼吸を見せるが。まさか狂三とも呼吸が合うとは思わなかった。しかもそれが自分の落ち度によるものだから、士道はかなり複雑な心情で渋面を作るのだった。

そんな士道に構わず、狂三はふうむと唸り数秒後、何かを思い付いたように顔を上げる。

 

「士道さん。何か『美九さんの持ち物』が手に入りません事?」

 

「美九の・・・・私物? 何でまたそんな物を?」

 

「わたくしの予想が正しければ、彼女の泣き所を押さえられるかもしれませんわ」

 

「なんだって・・・・!?」

 

≪・・・・・・・・なるほど、『虎穴に入らずんば虎子を得ず』。リスクを承知で挑む価値があるな≫

 

「だが、どうやってそんな物を・・・・いや、待てよ」

 

士道は頬をピクリと動かし、顎に手を当てた。

 

 

 

ー十香sideー

 

「む・・・・?」

 

目を覚ました十香は、微睡みの中で自分の現状を見下ろした。

暗い空間で、金属製の椅子に座らされ、手足が頑丈な手錠のような物に固定され、ついでに腕に点滴の針が刺され、頭や手足などに電極のようなものが幾つも貼り付けられている。

 

「なんだ・・・・これは・・・・」

 

まるで少し前にテレビのサスペンスドラマやアクション映画で見た、重罪人が入れられるような独房のような空間に自分はいた。

 

「ここは・・・・一体」

 

十香は微睡んでいる意識を覚醒させ、意識を失う前の出来事です思い出した。

 

「そうだ・・・・私は、天央祭でステージに立っていて・・・・!」

 

そう。天使を顕現させた精霊・美九と、それに操られた四糸乃と八舞姉妹。

とてつもなく強くなっていたフェニックス。

今まで見てきたファントムの中で一番気持ちの悪い気配をしたヴァンパイアと、その配下のパピヨンとヴァンパイアに操られた女性達。

そして白金の鎧を纏った魔術師<ウィザード>が現れーーーーフェニックスと士道と四糸乃と八舞姉妹の攻撃がぶつかり合った爆裂で士道は吹き飛び、探しに行こうとした自分の前に白金の魔術師<ウィザード>が立ち塞がり、十香は敗れ、気を失ってしまったのである。

 

「と言う事は、ここは・・・・」

 

と言いかけた所で前方の扉が開き、そこからの光で少しだけ外の景色が見て取れた。

そしてその扉から、3人の女性が現れた。

アップに纏められた色素の薄い金髪と白い肌。対してその身に纏っているのは、高級そうなブラックのスーツを着た女性、十香と戦った魔術師<ウィザード>であるエレン・メイザース。

黒曜石のように美しい黒い長髪に妖艶な雰囲気を放ち、ノースリーブのドレス姿の十香達と同い年くらいの少女。

薄く化粧を施され、茶色の長髪を1つにし前に垂らし、レザースーツを着た蠱惑的で、嗜虐的な雰囲気の女性。

 

「貴様! それに、ソコの女達、ファントムかっ!?」

 

エレンと身体に走ったゾワゾワから、残りの二人がファントムであると認識した瞬間、十香は変身しようと身体を動かそうとするが、手足の拘束が頑丈で、ビクともしない。

 

「落ち着いてください、十香さん。今のあなたの力ではその錠は破れません」

 

宥めるように言ってくるエレンの落ち着き払った態度が、十香の神経をさらに逆撫でする。

 

「ふざけるな! 貴様、一体何が狙いだ! 早くこれを外せ!」

 

「外したとして、どうするのですか?」

 

「知れたこと! シドーを助けにいく!」

 

十香は大声で叫び声を上げる。ドラゴンがいるから大丈夫だとは思うが、それでも美九の軍勢から逃げるのは困難だろうと考えたからだ。

だがエレンは、十香の言葉を聞いて息を吐いた。

 

「シドー・・・・五河士道の事ですか。安心してください。彼の行方は我々も調査中です。遅くとも数日中にはここにやって来るでしょう」

 

「な・・・・!」

 

「それに、天宮スクエアの方も今攻略部隊を編成中です。夜明けと同時に総攻撃を仕掛け、〈ディーヴァ〉以下、〈ハーミット〉、〈ベルセルク〉を捕獲する手筈です。すぐにお友達と対面させて差し上げます」

 

「き、貴様! シドーに何をするつもりだ!」

 

「ご安心を。こちらから積極的に暴力を振るうつもりはありませんよ。ーーーー最も、〈仮面ライダー〉として抵抗された場合、手足を全て折らせてもらうかもしれませんが」

 

「・・・・ッ!」

 

その言葉を聞いた瞬間、十香の頭の奥に底知れぬ憤怒と憎悪が沸き上がる感覚を覚え、それと同時に手足の錠が、ミシ、と小さな音を立てる。ーーーーしかし。

 

「・・・・なっ!?」

 

エレンが微かに眉を動かしたとかと思うと、十香の身体が目に見えない圧力によって押さえつけられ、十香は息を詰まらせる。

 

「こ、これ、はーーーー」

 

全身にかかる重力が何倍にもなったかのような感覚に呻き声認証上げる。折紙達AST隊員と戦った時と似てるが、強度と言うか、濃度が段違いだった。身体が重い。息をするのも困難になり、段々と意識が遠のく。

 

「ご理解いただけましたか」

 

エレンがそう言って、小さく息を吐く。すると全身にかかっていた重力が嘘のように霧散する。酸素が枯渇しかかっていた肺に空気が流れ軽く咳き込む。

 

「けほっ、けほ・・・・っ」

 

「私の随意領域<テリトリー>制度は全魔術師<ウィザード>中、最強です。抵抗は無意味とお心得てください」

 

「く・・・・」

 

霊力を封印されている今の十香には、せめてもの抵抗とばかりに憎々しげにエレンを睨み付ける。

その時、茶髪のファントムらしき女から、なぶるような視線を送られたが、十香はエレンだけを睨んだ。

 

「ーーーーさて、それでは幾つか質問させていただきます」

 

エレン達は壁の一部を引っ張り出して、簡易的な椅子を作り腰掛けてそう言ってきた。

 

 

 

 

ー折紙sideー

 

「ぁ・・・・」

 

目を覚ました折紙は、目に入った白い色を見て、意識を覚醒させていくと、自分は白い部屋のベッドに横たわっていた。

 

「お、折紙さん・・・・っ!?」

 

聞きなれた声に首を回すと、折紙の横たわったベッドのすぐ隣に、ASTの後輩、岡峰美紀恵がその可愛らしい顔を涙と鼻水に飾られ、何ともみっともない有り様になっていた。

 

「よ、よがっだ・・・・ごのばば目が覚めだがっだだどうじようがど・・・・」

 

「・・・・ここは」

 

そんな様子を見ながら、折紙は静かに声を発し、鼻を赤くした美紀恵は、近くに置いてあったティッシュでチ~ン! と鼻をかんでから返してくる。

 

「び、病院です! 折紙さん、怪我は治っていたんですけど、意識が戻らなくて・・・・も、もう目覚めないんじゃないがど・・・・」

 

最後の方はまた鼻声になっており、再びティッシュを取って鼻をかむ。

 

「すいません・・・・すいません・・・・ッ、私、折紙さんが危ないって知っていながら、何もできず・・・・あの時私が隊長を振り切ってでも駆けつけていればこんな事には・・・・」

 

美紀恵が悔しそうに顔を歪めながら言うが、折紙は首を横に振った後に出た言葉に、今度は目を丸くしてキョトンとする。

 

「謝る必要はない」

 

「え・・・・?」

 

「理由はどうあれ、私の行動は完全なる命令違反。あれはあくまでASTの総意ではなく、1隊員の暴走にしておかねばならなかった。ーーーー日下部一尉はどこに?」

 

「え、えっと・・・・基地です。折紙さんの件について上に掛け合うって・・・・」

 

「そう」

 

折紙は静かに頷くが、美紀恵は納得できないと言った様子で眉をひそめる。

 

「で、でも、やっぱり、それじゃ折紙さんが・・・・」

 

「日下部一尉の判断は正しい。もし仮にあの時私を助けていたなら、AST全体に処分が下る恐れがあった」

 

「そ、そんな!」

 

「あり得ない話ではない。だから、今回の件は私の責任。〈ホワイト・リコリス〉を独断使用したのも、第3戦闘分隊を襲ったののも、全て私の・・・・っ!」

 

そこで霞んでいた記憶が、自分の言葉で鮮明に甦り、折紙はすぐさま目を見開き、身体を起こした。が、すぐに強烈な頭痛と目眩いと脱力感が身体を襲う。

 

「く・・・・」

 

「だ、駄目ですよ折紙さん! 外傷は無いですけど、〈ホワイト・リコリス〉を臨界まで使用して、脳に相当の負担が掛かっているってお医者さんが!」

 

「・・・・士道、は」

 

「え?」

 

「士道は、無事?」

 

折紙がそう言うと、美紀恵はハッとした顔を作り、折紙に話して良いものかと思案するように唸ってから、小さく唇を開いた。

 

「・・・・今、調査中です。詳細はわかりません」

 

「どういう事?」

 

折紙が眉をひそめると、美紀恵はおずおずとリモコンを使ってテレビを点けた。

放送されているのは、誘宵美九・精霊〈ディーヴァ〉によって操られ大規模暴動を起こしている市民と警察官まで加わり、天宮市の異常事態が報じられているニュースだった。

折紙はベッドに横になったままそれを見て、顔を戦慄に染める。

 

「・・・・! これは・・・・」

 

「ご覧の通りです・・・・今、天宮市で大暴動が起こっています。ここは都市部から離れているから何とか無事ですが・・・・」

 

「一体何があったの」

 

美紀恵は、これが精霊による物であると伝え、折紙はなぜASTが出動しないのかと聞くと、こんな異常事態に上層部もすぐに対応ができず、待機命令が出され、美紀恵は燎子隊長に特別に許可を貰ってお見舞いに来たのた。

折紙はニュースを見ると、目算で数千、下手をすれば数万の人間達が精霊に操られている。如何にDEMの凶行を見て見ぬ振りで過ごそうとしていた上層部も、自らの責任の下、市民を攻撃しろと言いづらいのだろう。保身の為と言われればそれまでだが。しかし折紙にとって、上層部の事など美紀恵がかんだティッシュにも劣るほどどうでも良い。

大切なのは、士道は一体どうなってしまったのだろうか。いくら士道には〈仮面ライダー〉としての力があるが、無事なのだろうか。

と、そこで折紙は、気を失う前に見たもう1人の〈仮面ライダー〉を思い出した。

 

「真那ーーーー」

 

〈仮面ライダービースト〉にして、士道の生き別れの妹。崇宮真那だった。折紙の窮地を救ってくれた彼女が、士道をあの場から助け出している可能性もあった。

 

「真那は、どこ?」

 

「真那さん・・・・? ああ、そうです。驚きました! しばらく行方が分からなくなったと聞いていたんですけど・・・・あの時、折紙さんを私達の元に届けてくれたのは真那さんだったんです! でも、次に会う時は商売敵かもしれないみたいな事を言って、そのままどこかに・・・・」

 

美紀恵も困惑した様子で言い、折紙も記憶を巡らせ、朦朧とする意識の中で聞いた真那の言葉には、確かにそんな事を言っていた気がする。詳しい事情は不明だが、どうやらDEM社を出奔すると言うのは確からしい。

 

「士道の事は、何も?」

 

「は、はい・・・・残念ながら」

 

「・・・・く」

 

折紙は忌々しげに喉を絞り、ゆっくりと上体を起こそうとするが、上手く身体に力が入らなかった。

 

「私、は・・・・」

 

折紙はグッと拳を握り、ベッドに打ち付けるが、ボフッ、という小さな音が鳴り、微かに埃が舞う。

無力感。結局、折紙には士道を守る事ができなかった。規律を無視して〈ホワイト・リコリス〉を用いてなお、目的を達成できなかった。

 

「士、道・・・・」

 

安否の分からない恋人(折紙曰く)の名を呼びーーーー折紙は固めた拳を震わせた。

 

 

 

 

ー士道sideー

 

「ここ・・・・ですの?」

 

「ああ、間違いない」

 

時刻は21時。街灯と民家の明かりがボンヤリと輝く静かな住宅地に、士道と狂三は立っていた。

目の前には、精緻な細工が施された背の高い鉄柵に、丁寧に手入れされた庭園。そして御伽噺にでも出てきそうな洋風建築が聳えていた。

以前士道が士織として1度だけ訪れた事のある場所ーーーー誘宵美九の自宅である。

誰もいないのだろう。窓に明かりがなく、シンと静まり返っている。

美九は学校に通い、歌手として活動している故に、拠点となる場所を見つけるのは容易だった。

 

「さ、では早速調べましょう」

 

「ああ」

 

[フォール プリーズ]

 

視線を左右にやり、辺りに誰もいない事を確認した士道が、『フォール』の魔法で門の近くの壁に穴を開けると、ソコから士道と狂三は中に入り、玄関の扉も穴を開けて家の中に入った。

 

「ええと、多分この辺に・・・・」

 

手探りでスイッチを押すと、シャンデリア型の電灯に柔らかい光が灯る。

まさに金持ちの住む豪邸のような空間に圧倒されそうになるが、そこはドラゴンの≪シャンとしろ≫と、ド突きで正気に戻ると、靴を脱いで家に上がる。

 

「さ、それで、どこを調べますの?」

 

「ん・・・・そうだな。一階の応接室には大した物はない。何かあるとすれば美九の寝室とか・・・・かな」

 

「そうですの。では参りましょう」

 

「ああ」

 

狂三を従えて二階に行くと、『BEDROOM』のプレートが下がった扉があり、ノブを回して部屋に入った。広さは20畳ほどで、部屋の奥に天蓋付きのキングサイズベッドが置かれ、壁に沿うように木製のクローゼットや戸棚が置かれている。そしてベッドの正面には80インチはあろうかという巨大なテレビが備えられており、まるで高級ホテルの一室である。

 

「こりゃまた・・・・凄いな」

 

思わず苦笑しながらも、一応「お邪魔します」と言って足を踏み入れ、『美九の私物』があるか、戸棚を開けて中を探っているとーーーー。

 

「士道さん、士道さん。見てくださいまし」

 

「どうした? 何か見つけたのか?」

 

「ええ、凄い物を見つけましたわ」

 

言って、クローゼットの引き出しを指差す狂三。士道はその方向に目をやると。

 

「んな・・・・っ」

 

それを目にし、しばしの間身体を硬直させる。何しろそこには、可愛らしいブラジャーやショーツなどの下着類が、ぎっしりと詰め込まれていたのである。

 

「ほら、見てくださいまし。凄いサイズですわよ。私の頭が入ってしまいそうですわ」

 

言って、狂三が淡い色のブラを1枚摘まみ上げ、両手で広げて見せる。狂三も中々のサイズをしているが、なるほど確かに凄まじい大きさだ。狂三が大玉リンゴならばこちらは少玉スイカである。

士道もその魅惑のアイテムに興味がある健全な男の子である。が、今は状況が状況である上に、尻尾ド突きの気配を出したドラゴンにゾッと寒気が走り、赤くなりそうだった顔が一気に青ざめると、コホンと咳払いをする。

 

「何やってんだよお前・・・・今はそんな場合じゃないだろ」

 

「うふふ、士道さんは真面目ですのねぇ。少しは肩の力を抜かないといけませんわよ」

 

狂三が冗談めかすようにクスクスと笑いながら、手にしたブラを自分の胸元に宛がる。服の上からだが、まだ少し余裕があるようだ。

 

「あら、あら」

 

「・・・・ひぃっ!」

 

≪・・・・・・・・≫

 

その奇妙な組み合わせに、自然と顔が赤くなりそうだった士道だが、ドラゴンがさらに殺意の波動を放ち始めた物だから、小さく悲鳴をあげる。

しかしそんな士道の状態を面白がるように、手にしたブラを士道の方に差し出す。

 

「ほら、士道さんも着けてみません事?」

 

「はぁっ!? 何で俺が・・・・」

 

「ああ、これは失礼しましたわ。士織さんも、いかがでして」

 

「・・・・ぐ」

 

途方もない羞恥に頬を染めながら小さく唸り、狂三は妖しく微笑みながら続けてくる。

 

「ステージに立っていらっしゃったのは見ていましたけど、近くで士織さんを見る機会はありませんでしたの。1度じっくり拝見してみたいのですけれど」

 

「じ、冗談抜かせ。もう御免だっての・・・・!」

 

士道は思わず足を引いたが、狂三がその距離を詰めるように、ズイッと近づく。

 

「何故そこまで嫌がるのか分かりませんわ。別に減る物でもないでしょう?」

 

「減るわ! 確実に! 時間と俺の尊厳が!」

 

≪貴様の尊厳など、吐き捨てた痰と同レベルだろうが。時間の方が勿体無い≫

 

「そうつれない事仰らないで下さいまし。少しの間で良いのですのよ?1度、可愛い可愛い士織さんのお顔が、恥辱に震える所を見せていただければ・・・・」

 

「何するつもり?! 士織ちゃんに変な事しないで!」

 

≪気色の悪い声色を出すな・・・・≫

 

「よいではありませんの。よいではありませんの」

 

と、昔の時代劇の悪代官のような台詞を言いながら、迫ってきた狂三は、床に敷かれていた分厚い絨毯に躓き、不意に身体のバランスを崩し、前方に倒れ込んできた。

 

「ーーーーあら」

 

「う、うわ!」

 

丁度のし掛かるような格好になり、士道も一緒にその場に転げてしまう。しかも運が悪い事に、後方にあった戸棚をも巻き込んで。

ドガバキフォームと派手な音が鳴り、後頭部と背中に激しい痛みが襲い、士道は仰向けの姿勢のまま顔をしかめる。

 

≪くだらん茶番劇をしているからだ≫

 

「あいててててて・・・・、だ、大丈夫か、狂三」

 

「ええ。問題ありませんわ。士道さんが助けてくださいましたし」

 

言って、士道の胸に身体を預けるようにうつ伏せで倒れ込んだ狂三が妖艶に笑い、不必要にぐぐっと体重をかけてきた。狂三の華奢で、しかし柔らかそうな身体が押し付けられ、ビクッと肩を震わせる。

 

「お、おい狂三「バシィィイイイインッ!!」ぬぐぉおおおっ!!!」

 

遂に振り下ろされたドラゴンの尻尾ド突きの激痛に、士道は狂三を押し退けて絨毯の上を転げ回った。

 

「ぉぉ、おおおおお・・・・!」

 

「ふぅ、ドラゴンさんも少しは空気を読んで欲しい物ですわね」

 

「ド、ドラゴンから伝言、『時間を無駄に使うな。この鳴らない電話を誘惑したいなら、〈プリンセス〉を救ってからにしろ』・・・・だとよ」

 

「うふふ、では、そうさせて頂きますわね♪」

 

口元の唇をチロリと湿らせながら小さく微笑む狂三。その淫靡な仕草に、士道は頭の痛みとは別に顔が赤くなるのを感じた。

 

≪もう1発逝くか?≫

 

「っ!」

 

ドラゴンのド突きの気配を感じた士道は、水風呂に飛び込んだように身体が冷めてしまい。すぐに身体を起こし後方を見やると、棚の扉が盛大に凹んでいた。

 

「参ったな」

 

≪ん? おい、“そこにある缶は何だ"?≫

 

「ん? これは・・・・」

 

今の衝撃で棚から落ちてきたのか、クッキー等を入れて、小物入れにも使われるお菓子の缶だ。

士道は不思議に思い缶を開けると、中にはCDのプラスチックケースが数枚入っており、それら全てに美九の姿が印刷されていた。

 

「(美九がリリースしたCDか? こんなに曲を出していたのか?)」

 

≪・・・・いや、あの小娘の曲はこんなに出ていない。それに、“名前が違う"≫

 

「えっ? あっ!」

 

ドラゴンに言われてよく見ると、曲名の下に記された名前が、『誘宵美九』ではなかった。

 

「『宵待月乃』? 何だこの名前」




私の私感ですが、
耶倶矢・ノーマルサイズリンゴ。
十香と狂三・大玉リンゴ。
夕弦・少玉メロン。
6番精霊・大玉メロン。
美九・少玉スイカ。
令音・大玉スイカです。
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