デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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突入・DEMインダストリー

ー士道sideー

 

≪木偶人形<〈バンダースナッチ〉>共が人間であれば、阿鼻叫喚の地獄絵図であったろうな≫

 

ドラゴンの言う通り、それはなんとも壮絶だった。

空に舞う〈バンダースナッチ〉に数多の狂三か飛びつき、素手でウィングや銃、手や足や首を毟りとっていく。まさに人間であったら吐き気を催す地獄絵図になっている光景だ。

無論〈バンダースナッチ〉も手にしたレイザーカノンやマイクロミサイルを放ち、分身体の狂三の頭部や胸に真っ赤な花を咲かせるが、数の暴力を覆せず、頭部のランプを赤く点滅させ、断末魔のような甲高いブザーを鳴らしーーーー鉄塊となって地面に落ちていった。

 

「す、凄ぇな・・・・こりゃ」

 

「感心している暇はありませんわよ。後続隊が来ますわ」

 

狂三が油断なく敷地の奥を睨みながら言うと。

先ほどとは比べ物にならない数の〈バンダースナッチ〉と、DEMの魔術師<ウィザード>達が姿を現した。今相手にしているとはどうやら警備機だったのだろう。

入り口だけでなく、ビルの壁面が可変し、左右に開くと、魔術師<ウィザード>達が少なくとも500は下らない数でズラリと並んでいた。

 

「な・・・・!?」

 

防備はしていると思っていたが、ここまでの軍勢は想像していなく、士道は狼狽の声を上げる。

 

「ふむ、そうですわね。士道さん、作戦を少し変更しましょう」

 

「え?」

 

士道が狂三の声に反応すると、いつの間にか真っ黒に色づいていた地面から、狂三の分身体が何人も何人も這い出てきて、迫り来る魔術師<ウィザード>達を迎え撃つように、影から2丁の銃を抜き、陣形を組んでいく。

 

「ーーーー人形や魔術師<ウィザード>さん達に『わたくしたち』をぶつけますわ。その隙に、一気に防衛ラインを抜けますわよ。士道さんも変身くらいはしておいてくださいまし」

 

「お、おう・・・・っ!」

 

[ドライバーオン プリーズ]

 

「変身!」

 

[シャバドゥビタッチヘンシン~♪ フレイム プリーズ ヒーヒー ヒーヒーヒー!!]

 

[コネクト プリーズ]

 

士道は力強く頷くと、〈仮面ライダーウィザード〉に変身し、マシンウィンガーを召喚し股がると、狂三も後部座席に座り、赤のラインが入った黒いヘルメットを影から取り出し被ると、ウィザード<士道>の腰に手を回した。

 

「ではーーーーひとっ走り付き合いましょう。振り切って下さいまし! 〈刻々帝<ザフキエル>〉ーーーー【一の弾<アレフ>】・・・・ッ!!」

 

短銃を影から抜き、バイクに向けて撃つ。

それと同時に、DEMの魔術師<ウィザード>達と分身体の狂三達の先陣隊同士が激突した。

 

ドゴォオオオオオンン!!

 

魔術師<ウィザード>の武装と狂三隊の影の弾が交錯し、大爆発を起こす。

 

「ーーーーッ!」

 

ウィザード<士道>はそんな戦場の真っ直中を、高速化したマシンウィンガーで一気に駆け抜けた。

こんな戦場のような場所をバイクで爆走するだなんて、本当に馬鹿だと思う。

程なくして、爆心地のような戦場を抜け、【一の弾丸<アレフ>】の効力が切れると、マシンウィンガーの速度も本来の早さに戻る。

 

「狂三。第一社屋は?」

 

「ええ。こちらでーーーー」

 

ーーーーと、狂三が人差し指で進む先を指差そうとした瞬間。狂三の身体が一瞬黒く染まったかと思うと、

 

「ぁーーーー」

 

小さな。本当に小さな声と共に、ウィザード<士道>と会話をしていた狂三の首が宙を舞った。

 

≪ん? 奴らか・・・・≫

 

「え・・・・?」

 

突然の事に、ドラゴンの声も聞こえず、何が起きたか理解できず、ウィザード<士道>は呆然と声を発した。

バイクを止めると、狂三の頭部があった部分から温かい血がシャワーのように噴き出し、フレイムスタイルのボディを鮮血に染めると、ウィザード<士道>の脳はようやく状況を把握した。

 

「うーーーーうわぁぁぁぁ(バシィィイイイイイイインンッッ!!) ぐぅおぅぉぉぉぉぉぉ!!」

 

金切り声を上げそうになったウィザード<士道>は頭を潰さんばかりのドラゴンのド突きの痛みに悶えていると、狂三の身体は糸の切れたマリオネットように、バイクから崩れるように倒れた。

 

≪一々喚くな。コイツは分身体だ。敵地で騒ぐなんてマヌケな事をしおって≫

 

ドラゴンの言うと、首のない狂三の死体はビクンと小さく痙攣すると、地面に倒れ伏していた死体が影に呑まれていった。

と、そこで、ウィザード<士道>の後方に、何者かが立っていた事に気づき、視線を上げる。

 

「あーーーー」

 

「やれやれーーーーようやく見つけましたよ」

 

その黒いインナースーツに金の獅子の頭部を左肩に装備し、頭部には獅子の鬣に緑色の眼をした仮面をつけた『もう一人の魔法使い』、その仮面越しに聞こえる少女の声に、ウィザード<士道>は思わず呟く。

 

「真。那・・・・?」

 

そう、それは、士道の実妹を自称する少女ーーーー崇宮真那が変身する〈仮面ライダービースト〉だったのだ。

2ヶ月前、或美島で共闘し、『白い魔法使い』と行動を共にして、行方を眩ませていた真那との再会に驚きながらも、気を張り直した。今は分からないが、真那は元々DEMから出向してきた魔術師<ウィザード>であると言う話だ。もしや侵入者である士道を排除しに来たのではと思ったが、仮面を解除し、ヘッドセットを付けた素顔をさらすとーーーー。

 

「兄様。こちらは仮面を解除しやがりました。兄様も血塗れの身体を綺麗して、仮面を解除してください」

 

相変わらず丁寧なのかそうじゃないのか分からない口調だが、変身を解除するか迷うウィザード<士道>。

 

≪・・・・はぁ、時間が惜しい。この実妹の言う通りにしろ。後、解除前に『クリーン』を使え≫

 

「・・・・分かった」

 

[クリーン プリーズ]

 

魔法陣が展開され、ウィザード<士道>を通過すると、狂三の血で汚れた身体が綺麗になり、ウィザード<士道>はマスクを解除して、素顔を真那にさらし目を合わせた瞬間と、真那はキリッとしていた顔をグニャッと歪め、その場に膝を突いて士道に抱きついた。

 

「兄様・・・・! よくぞご無事で!」

 

「わ、わっ!?」

 

士道はお互いのスーツの感触に驚き、目を白黒させるが、すぐ落ち着きを取り戻し、その肩を押さえて身体を引き剥がす。

 

「ま、真那・・・・真那だよな。どうしてここに? お前はDEMの魔術師<ウィザード>なんだよな?」

 

「細けー話は後にしますが、私、DEMを辞めまして。今はちょっと公務員的な仕事をしているでやがりますよ」

 

「え?」

 

さらなる新情報に、士道の頭が混乱した。

 

「でも、それじゃあなんで、狂三を・・・・」

 

「ああ、兄様が〈ナイトメア〉に襲われていたようでしたので、いても立ってもいられず」

 

真那の言葉に、士道は眉の端を動かす。今は協力関係にあるものの、元々狂三は真那の宿敵にして人食いの精霊だった。そんな精霊と兄が2人っきりでいたなら、そう誤解されても仕方ない。

 

「ち、違うんだ! 今狂三は、俺に協力してくれてたんだ!」

 

「協力・・・・?」

 

真那が訝しげに目を細めるとその瞬間、ビルの壁に染み込むように黒い影が広がり、歪んだ笑みを浮かべる狂三が顔を覗かせた。

 

「きひひ、相変わらず手荒な歓迎をしてくださいますわね」

 

「狂三・・・・!(本当に分身体だったのか、いつ入れ替わっていたんだドラゴン?)」

 

≪ん? 木偶人形(〈バンダースナッチ〉と交戦を始めた時にコッソリと入れ替わっていたぞ)≫

 

「(もっと早く教えろよ!)」

 

≪あんな程度で殺られる〈ナイトメア〉ならば、とっくにケダモノ魔法使いが始末しているだろうが、一々喚きまくる貴様のドブネズミのような神経が悪い≫

 

「(なんでドブネズミ扱いなんだよ!?)」

 

なんて士道がドラゴンと喧嘩していると、真那が「ちっ」と盛大な舌打ちをして、喧嘩を中断した。

 

「これは残念ですね。もう少しでその不快極まる薄ら笑いを消してやれたのに」

 

「言ったではありませんの。貴女には無理、ですわよォ」

 

「ハン、試してみやがりますか? ご自慢の弾が、私に通じればいーですけどね」

 

「きひッ、ひひひひひひひひッ! まぁだわたくしの天使の恐ろしさが分からないとは、あまりの恐怖に記憶を失いまして?」

 

「おや、戦闘狂で殺人狂な貴女が、口だけで一向に掛かってきやがらねーとは珍しいですね。挑発に乗る余裕すら無くなりやがりましたか?」

 

「うふふ、ならば今度は、貴女の全身をバラバラに解体した後、その体内の動物の皆さんの皮を剥いで、敷物にするのも悪くありませんわね。真那さんの良く回る舌も堪能して差し上げても宜しいんですわよ」

 

≪≪≪≪やってみろ(みなさいよ)。この狂人風情がッ!!≫≫≫≫

 

≪ンモォゥッ!!≫

 

仮面を展開した真那とキマイラビーストと狂三が敵意と殺意に満ちた視線を交わらせながら、剣呑さ極まる言葉を交わし合う。そのちょうど直中にいた士道は、背中に冷たい汗が湿るのを感じた。

 

「ま、待てって、2人とも・・・・!」

 

士道が言うも、真那は背中にビーストキマイラの幻影を背負ったようなオーラを放ちながら、狂三に浴びただけで肌が爛れそうな視線を送り続ける。

が、狂三が小さく息を吐いて肩をすくめる。

 

「まあ、ちょうど良いですわ。ーーーーわたくしも別件でDEMに用事がありますし、ここからは別行動に致しましょう。真那さんがいらっしゃれば大丈夫でしょう」

 

「お、おい、狂三・・・・?」

 

≪ま、この女よりかは大分マシではあるな≫

 

「安心してくださいまし。『わたくし達』を使った陽動は続けますわ。ーーーーそれでは、ごきげんよう」

 

狂三は目を伏せ、影に潜っていく。一拍おいて、壁面から影が、スウッと消えていった。

 

「狂三っ! 狂三!(バシンっ!) いてぇっ!?」

 

≪だから一々喚くな、あの女にはあの女の思惑があるから協定を結んでいたのだ。1から10まで協力してもらえるなんて甘い思考をしているんじゃない。放っておけ。貴様ごときに心配するようなヘマをする奴ではないからな≫

 

ドラゴンは狂三の事は放っておけと言い、士道は髪をクシャクシャと掻き毟った。

 

「ふん。一体どんな協定を交わしたのか知らねーですが、これで良かったんですよ。あんな悪魔と相乗りするだなんて、払う代償が何なのか分かったもんじゃねーです」

 

≪≪≪≪≪ウンウン!≫≫≫≫≫

 

「真那、お前な・・・・」

 

「そんな事よりも。ーーーーちょっと失礼します、兄様」

 

狂三の事など微塵も気にかけない真那は、士道の顔をジッと見つめた後、鎧に覆われている胸元を荒々しく撫でるが、フゥムと、唸り声をあげると、士道の下腹部よりも下の方に手を伸ばしーーーー。

 

「ななななななっ!? 何しようとしてンだ真那っ!?」

 

自称とは言え実妹に男の大切な部分を触れられるのを察知した士道が、たまらず叫ぶと、真那は今度はウウムと難しげに唸る。

 

「いえですね。天央祭って祭りに行って見た時に、兄様が妙に可愛らしい格好をしてやがられたので。まさかそう言う趣味に目覚めてしまったのではないかと」

 

「違うわっ! つーかお前、天央祭にいたのかよっ!?」

 

「ええ、新しい仕事の都合で。『工事』まではしてねーのか確認したいので、上と下をちょっと見せていただいても良いでやがりますか?」

 

「あるわっ! 上も改造してねえし! まだちゃんと付いてるわっ!!」

 

≪まだ付いておるぞ。負の遺伝子を撒き散らかす危険性を持った管と玉はな≫

 

「ならばまあ、良しとしましょう。キマイラズも大爆笑してやがりましたが、真那は寛容です。女装くらいなら変わった趣味として認める度量を持っています。今度一緒にショッピングにでも行きましょう」

 

「だからな・・・・!」

 

士道が大きなため息を吐くと、真那が何やら耳元のヘッドセットに搭載されたインカムからの大声に、耳を押さえながら眉をひそめた。

 

「ああ・・・・そーでしたそーでした。グリフォン!」

 

真那が上に向かって呼ぶと、緑色のグリフォンのプラモンスター、名前を付けるならば『グリーングリフォン』が下りてきて、真那に小さな電子機械を差し出した。

 

「ーーーー兄様、これを。回線は繋がってます」

 

「これは・・・・インカム」

 

≪さっさと着けろ。五月蝿いのが待っている≫

 

インカムを受け取り、右耳に装着してしばらくすると、ばつの悪そうな声が聞こえた。

 

《・・・・士道、聞こえる?》

 

「琴里!? 正気に戻ったのか!?」

 

それは士道の妹にして〈フラクシナス〉の司令官・琴里の声だった。

美九の歌に操られていた筈なのだが、声を聞くと正気に戻ったようだ。

 

《ええ、まあ、なんとかね・・・・悪かったわよ。その・・・・死ねとか、何とか。いや・・・・記憶は無かったんだけど、映像を見て、そう言う事・・・・言ってたみたいだから・・・・その、本心じゃないから》

 

「ああ。分かってるよ、そんな事」

 

《む・・・・。こっちももっと早く連絡しようと、ドラゴンに何度も交信していたのに通じなかったのよ。と言うよりも、着信拒否されていたような感じだったんだけど?》

 

「えっ? ドラゴン、どういう事だ?」

 

≪あぁ~。元に戻っていたのか。何度か交信が聴こえていたが、もしかしたら〈ディーヴァ〉に操られていると思って無視していたが、どうやら大丈夫のようだなぁ? あのようなマヌケで恥さらしな醜態をさらした。一応、“小僧を支援するのが目的"とほざいておいて肝心な所で盛大に、強烈に、激烈に足を引っ張りまくったスリッパよりも役に立たない組織の司令官である〈イフリート〉よ≫

 

《はぐ! ぬぅ~~っ!!》

 

絶対、意図的に無視していたのを棒読みで、わざとらしい口調で痛烈な嫌味を吐くドラゴンに、インカム越しから琴里の歯噛みする声が聞こえた。おそらく今、琴里の顔には血管マークが浮かびまくり、鬼か般若か修羅のような貌で凄まじいまでに悔しく顔を歪めているのが容易に想像できるほどだ。

少しして、感情を押さえるように深呼吸する琴里の声に士道が苦笑いを浮かべながら口を開く。

 

「それで、どうやって美九からの支配が解けたんだ?」

 

それに答えたのは令音だった。

 

《・・・・実は『白い魔法使い』が突然現れてね。私と椎崎を除いた、美九に支配された皆を魔法で眠らせた後、『ピュリフィケイション<浄化>』の魔法で皆の身体の天使の毒素を“洗浄"してもらったのさ。そこまでは良かったんだが。皆が操られた際に暴れてしまって、〈フラクシナス〉の通信設定などを滅茶苦茶に弄ったりしてね。復旧に時間が掛かってしまった。今まで連絡できずにすまない。無事で何よりだ」

 

「『白い魔法使い』が・・・・?」

 

≪奴も色々動いているか・・・・≫

 

《それと、今君に渡したインカムは、特定域以外の音声を自動的にカットするように設定されている。美九の演奏はもうこちらには届かないから、安心してくれ》

 

「なるほど・・・・」

 

《で、ここからが本題だけど》

 

すると、ようやく落ち着いた琴里が話を切り出した。一度咳払いをし続ける。

 

『・・・・それで士道、あなたどうしてそんなところにいるの?しかも狂三と一緒になんて』

 

「ああ、それは・・・・」

 

士道は手短に、琴里達が美九に操られてから起こった事を説明した。

エレンに十香が攫われてしまった事。

『白い魔法使い』に短時間だが修行をつけて貰い『新たな力』を得た事。

狂三がその救出に協力してくれた事。

メデューサ達魔獣ファントムがDEMと手を結んだ事。

瞬間再生能力を得たフェニックスが暴走し、ファントム側から離れ、自分を探している事。

そしてーーーーどうやらこの施設内に十香が囚われているらしい事を。

それを聞いた琴里はしばらく押し黙るとーーーー重苦しい声で言ってきた。

 

《・・・・駄目。危険よ。認められないわ》

 

≪(ま、予想通りな答えだな)≫

 

琴里の意外な答えに、士道は盛大に眉根を寄せる。ドラゴンが琴里との交信を拒否していたのは、こう言う答えが出る事を見越していたからだ。

 

「っ、何言ってるんだよ!? 十香が拐われたんだぞ! DEMってのは、精霊を殺そうとしてる危険な組織なんじゃなかったのかよ! 一体何をされるか分かんないんだぞ!?」

 

《言われなくても分かってるわよ。そんな事は・・・・!》

 

「じゃあ、何で!」

 

《そんな危険な組織に乗り込もうとしている兄を止めちゃいけないっていうの!? 少しは自覚してよ! あなたの命の勘定には、いつも自分が入ってないのよ!》

 

「ぐ・・・・っ、だ、だからって、十香を放っておけってのかよ!」

 

《そうは言ってないでしょ! でも、それはもっとちゃんと準備をしてからーーー!》

 

「そんな呑気な事を言ってられるかよ! それに、今は何人もの狂三が、魔術師<ウィザード>と〈バンダースナッチ〉の足止めしてくれてる! こんなチャンス、もう2度と巡ってこない!」

 

《それは・・・・!》

 

≪小僧。我に少し口を貸せ≫

 

「ドラゴン? 分かった。琴里、ドラゴンが話があるそうだ」

 

《なに? 念話で言えない事?》

 

「≪まあそうだ。いつまでも下らん押し問答に時間を無為にしたくないからな。良いか〈イフリート〉。貴様の兄はなーーーーイカれているのだ。目の前の精霊を助ける為なら、どんな無謀な事にも、それが“どんな結果を生み出す事になっても"、そんな事に構わず、知ろうとせず、背負う事もしない無責任極まりない危険生命体に、大人しくしていろ等と言えば、コレは後先も考えず、ブレーキ無しで突っ走っしり、ややこしい状況を更にややこしくさせる勇気と狂愚の違いが分からん程の救いようの無い愚か者だ≫・・・・って、イカれているって、お前な・・・・!」

 

《士道が脳ミソのネジが10本程ぶっ飛んでいるイカれた兄だなんてとっくの昔に知っているわよ!》

 

「お前らなぁ・・・・!!」

 

相変わらず士道に対しての扱いが酷すぎるドラゴンと、それに同意する琴里の奇妙な連携に渋面を作るが、ドラゴンは構わず続け、士道はそれを声として発する。

 

「≪こんな生命体を大人しくさせるには、一刻も早く〈プリンセス〉を救出するのが得策だ。変に押さえつければ逆効果にしかならん≫」

 

《それは!・・・・そうだけど、でも準備とかを・・・・!》

 

「≪ほぉ、つい先ほどに、見るに堪えない失態と醜態と不首尾をやらかした、無能な貴様らの作戦で、上手く行くと本気で思っているのか? それとも、その事をもう忘れてしまう程度の知能しか持ち合わせていないのか?≫って、ドラゴン! 言いすぎだろう!」

 

流石に止める士道だが、インカムから今度は琴里の他に、令音と椎崎は除いたクルー達が悔しそうに歯噛みする声が聴こえた。が、神無月は、「あぁ、士道くんの声で何とエグい毒舌を吐くんでしょう。司令にとって効果が抜群の嫌がらせ。ドラゴンもかなりのドS様ですねぇーーーー(バキンッ!) ヒギィンッ!!」等とほざき、琴里に八つ当たりをかまされ、恍惚の声を挙げたが無視して、士道は琴里に懇願する。

 

「頼む、琴里! 俺は・・・・絶対に十香を助け出して見せる! だから・・・・!」

 

《・・・・ああっ、もうっ!》

 

琴里が苛立たしげにガンッ! と、椅子の手すりを叩く音が聞こえた。

 

《ドラゴンの言うとおり、どうせ、言ったって聞きゃし、逆に勝手に暴走するんでしょ・・・・》

 

「・・・・暴走はともかく、良く分かってるじゃないか」

 

《伊達に10年以上も妹やってないわよ》

 

諦めにも似た溜息を吐くと、琴里が言葉を続けてくる。

 

『恐らく、社屋内は随意領域<テリトリー>によって通信が阻害されているわ。こちらからのナビも出来ない。〈フラクシナス〉からできるのは、外部のサポートくらいよ》

 

「ああ、十分だ。・・・・悪いな、琴里」

 

『本当よ。聞き分けのない兄を持った妹同士、苦労が絶えないわね、真那』

 

琴里が言うと、真那はアハハと肩を竦めた。

 

「ええ。とはいえ、ここで尻尾巻いて芋引くような根性無しの軟弱者、真那の兄様とは認めねーですけども。それに、なんかウチのキマイラズが、兄様に借りを返したいって言ってやがりましたしね」

 

「えっ?」

 

「まぁそれはともかく、内部の情報ならこっちでどうにかなりそうでやがりますよ」

 

「《えっ?》」

 

士道と琴里が訝しそうに声を漏らすと、真那はスマホを取り出し操作し、画面を士道に見せると、そこには何やら建物の内部データが表示されていた。

 

「真那。これって・・・・?」

 

「DEMインダストリー第一社屋の内部構造データでやがります」

 

「《はぁっ!?》」

 

いきなり内部データを出してきた真那に、士道と琴里(後令音を除いたクルー達)が驚きの声をあげた。

 

「嫌ですね。今の再就職先の先輩が、この近くのDEMの傘下の会社にせんに、もとい失礼して、地下のサーバーを使ってDEMのコンピューターにハッキングして、内部構造のデータを失敬したんでやがりますよ。流石に顕現装置<リアライザ>でも、ネットワークの中まで展開するなんてできないでやがりますし、この状況で傘下の会社からの不正アクセスにまで目を光らせている余裕も無いでやがりますしね」

 

《それでも、DEMのサーバーにハッキングするだなんて相当難しいわよ。真那。貴方の再就職先の先輩って、一体何者?》

 

「おっと琴里さん。それ以上の問いかけは守秘義務が発生しやがります。今は秘密って事で納得しやがって下さい。時間も限られていやがりますし」

真那の言葉に、琴里が幾度とも知れぬため息を吐いた。

 

『・・・・はぁ、まぁいいわ。やるからには中途半端は許さないわよ。十香を助け出し、士道も真那も、オマケついでにドラゴンとキマイラズも全員無事。それ以外は成功とは認めないわ』

 

「ああ」

 

「当然でやがります」

 

士道と真那が頷くと、琴里が気を引き締めるように言葉を発した。

 

《さあーーーー私達の》

 

「ああーーーー俺たちの」

 

仮面を展開し、〈仮面ライダーウィザード〉。〈仮面ライダービースト〉になりながら、ウィザード<士道>も応ずるように続ける

 

《「戦争<デート>を、始めよう/始めましょう」》

 

同時にそう言い、ウィザード<士道>はバイクのハンドルを握り、ビースト<真那>は荷台に乗り込み、アクセルを全開にして、第一社屋へとマシンウィンガーを走らせた。

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