デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
ー仁藤sideー
ーーーーカタカタカタカタカタカタカタカタ・・・・。
仁藤はDEMの第一社屋の近くにあるDEM傘下の会社の地下サーバールームから、第一社屋のセキュリティに上手くクラッキングをし、社屋の内部構造データを真那に送信した後、他にDEMインダストリーが隠している“黒い情報"を得られないかと調査していた。
以前から公安だけでなく、各国の諜報機関がDEMインダストリーに対して不信感を抱いていた。
顕現装置<リアライザ>はある意味ではオーバーテクノロジーであり、それの使用には人体改造まで施す上に、DEMは非道な人体実験を行っていると言う“黒い情報"が絶えないので、公安の捜査官としても仁藤はDEMの内部情報の一部でも得られないか探っていた。
「・・・・やはりそう簡単に、データは手に入らないか」
しかし、日本の支社とは言え流石と言うのか、DEMのセキュリティは堅固であり、これ以上の調査は不可能と諦めようとする。
「・・・・っ!」
と、そこで仁藤は背後から、不気味な気配を察知し、懐から拳銃を掴もうとするがーーーー。
「きひひ、動かないで下さいまし」
「っ・・・・〈ナイトメア〉、時崎狂三、ですか?」
その手を掴んだ少女の手と声から、仁藤は誰なのか察した。最悪の精霊にして真那の因縁の相手、時崎狂三だった。
「きひひ、わたくしを見て動じないとは、随分と良い度胸をしたパートナーを得たようですわね、真那さんは」
「私としても光栄ですね。悪名高い最悪の精霊・〈ナイトメア〉に知って貰えていたとは恐悦至極」
「わたくしと士道さんが、行動を共にしている事を真那さんに教えていなかったのは中々の好プレーですわね?」
「真那さんの性格を考えれば、そんな事を知れば飛び出して、状況をややこしくさせてしまいかねませんでしたからね」
「きひ、ひひひ、しかも真那さんの性格を理解し、DEMのシステムにクラッキングを成功させるとは、かなり優秀な捜査官さんですわね。どうでしょう? いっそ真那さんではなく、わたくしと手を組みませんか?」
狂三は仁藤の手を掴んでいない方の手で、仁藤の肩を撫で、さらに手をソッと移動させ、スーツ越しから仁藤の胸元を妖しい手つきで撫で、耳元で甘い声と吐息で囁くように呟く。
これが士道ならば、顔を真っ赤にして無様に慌てふためく処だが、仁藤は極めて冷静な態度だった。
「お生憎ですが、大量殺人を起こした精霊と手を組むつもりはありませんよ」
「あらあら、そんな事を言って宜しいのかしら? 分かっておりますか? 貴方の生殺与奪はわたくしが握っていますのよ?」
その通りだ。狂三がその気になれば、仁藤の命を潰すことなど造作もない。仁藤もそれを分かっているのか、頬に一筋の汗を流すが、口元に笑みを浮かべて声をあげる。
「こちらも忙しいので、無意味な問答をするのはやめて欲しいですね。ここで私を殺しても、貴女にはなんのメリットも有りませんし、わざわざ挨拶のつもりで来た訳でもないのでしょう?」
「きひ、きひひひひひ、ひひひひひひ。やはり貴方は優秀ですわ。確かに、わたくしが貴方に近づいたのは、他の理由ですわ。DEMのコンピューターにクラッキングをしたのであれば、わたくしの知り得たい情報も、貴方が握っているのではないかと思いまして」
「・・・・なるほど」
それだけ言うと、仁藤はパソコンを操作し、集めた情報を狂三に見せた。
「あらあら、宜しいのですか?」
「別に構いませんよ。見せて困るのは私ではなくDEMなので。しかし、貴女が望む情報が入っているかは、保証しませんけど」
そう聞くと、狂三は画面を覗き込み、操作しながら視線を泳がせる。
「なるほど、流石と言いますか。“DEM社にとって重要な情報"を、日本の支社に置いておく訳ありませんわね」
そう言うと、狂三は仁藤から離れ、影の中に溶け込んでいく。
「あぁ仁藤さんでしたか? 早めに逃げる事をお薦めしますわ。DEMも無能ではありません。今に警備の魔術師<ウィザード>がこちらにやってきますわよ」
「・・・・・・・・」
完全に影に溶け、姿を消した狂三を確認すると、仁藤は直ぐに痕跡を全て消して、サーバールームから離れた。警備の魔術師<ウィザード>が来たのは、仁藤が消えて5分ほど経った時だった。
ーヴァンパイアsideー
「ふむ。騒がしくなってきたな・・・・。さ、お仕事の時間だよ、可愛い子ちゃん♪」
裸体を晒し、ベッドに腰かけていたヴァンパイアは、包帯を巻いた裸体で、床に四つん這いになって自分の女の部分を舐めているジェシカに、敵が来た事を告げると、ジェシカは蕩けたような笑みを浮かべ、まるで犬のように舌を出して声を発する。
「はイ、ヴァンパイアさマ・・・・」
「フフフ。ご褒美だよ」
ヴァンパイアがジェシカの首筋に牙を突き立てると、ジェシカの身体から傷が全て癒えた。
ジェシカは部屋に置かれたワイヤリングスーツを着用し、そのまま部屋を出ると、代わるように部屋に入って来たのは、パピヨンだった。
「おおパピヨン。天宮スクエアから連絡が取れなくて心配してたんだよ」
ついさっきまでパピヨンの事など忘れて、ジェシカの身体を散々弄んでいたにも関わらず、いけしゃあしゃあと言ってくるヴァンパイア。
「・・・・・・・・・・・・」
が、パピヨンはまるで人形のように何も言わず、部屋から出ていった。
「ふふふ。パピヨンも嫉妬しているのかな? まぁ良いだろう。指輪の魔法使いを始末すれば、次は〈プリンセス〉とエレン・メイザース、そしてメデューサを・・・・くくくく」
麗しい彼女達が自分に抱かれて、どんな顔を晒してくれるのか、ヴァンパイアは想像するだけで興奮していた。
ー折紙sideー
時は少し遡り、深夜2時。
士道を探しにいこうとする折紙は、寝ている美紀恵の制服を失敬しようと脱がせようとするが、突然の空間震警報に美紀恵がむにゃむにゃと起きると、折紙に服を脱がせられそうになっていた状況にすっとんきょうな悲鳴を上げるが、スカートのポケットにしまっていた通信端末機から通話が入り二、三言葉を交わして通話を切り、何があったかと折紙が聞くと、
“DEM日本支社が〈ナイトメア〉・時崎狂三と〈仮面ライダー〉に襲撃された"
と聞き、視線を鋭くする。〈仮面ライダー〉、つまり士道が何故か狂三と共に戦場にいると聞き、折紙は駆け出そうとするが美紀恵に止められる。ASTの格納庫にある装備を使おうと言う折紙だが、折紙のIDは凍結されて装備は使えないと美紀恵が言うと、度重なる装備の不正使用と活動限界を越えた脳の酷使等、心当たりは山ほどある。それでも通常装備で戦場に行こうとする折紙に、美紀恵は止めようとするが、
「・・・・戦場に、私の大切な人が、いる。だから・・・・往かないと」
「くーーーーそんなに・・・・その人が大切なんですか」
「大切」
「自分の命よりも・・・・ですか」
「そう。彼は、全てを失った私に残された、最後の拠り所。彼が死んでしまったら、きっと私は私でなくなってしまう。ーーーーだから、離して」
一瞬の迷いもなく頷き言った折紙に、美紀恵は、行ったら自分は舌を噛んで死ぬと言うが、折紙は私が悲しむのを知ってるからそんな事はしない、と断言され、美紀恵は目を見開き、顔を俯かせ、涙を拭うように顔を押さえた。
「・・・・悔しいなぁ・・・・羨ましいです、〈仮面ライダー〉が。折紙さんにそこまで言って貰えて」
素顔を知らない〈仮面ライダー〉に、敗北感を感じながらも、美紀恵は折紙に言った。
「・・・・分かりました。そこまでの覚悟ならば、私には止められません。ーーーーでも、折紙さんをただ死地に向かわせる訳にはいきません。・・・・使えるかどうか分かりませんが、1つだけ心当たりがあります。付いてきて下さい」
「心当たり・・・・?」
折紙は、不思議そうに首を傾げた。
ー士道sideー
ウィザード<士道>とビースト<真那>は、DEMの魔術師<ウィザード>と〈バンダースナッチ〉と分身体の狂三達と激しい戦闘、いやこれはもはや戦争と言えない滅茶苦茶な乱戦の中を、マシンウィンガーに乗って駆け抜けた。
ビースト<真那>が展開させた『カメレオンマント』によって、ウィザード<士道>とビースト<真那>の姿は周りに見えておらず、流れ弾も真那が手に持った『ダイスサーベル』で迎撃してくれており、ウィザード<士道>は運転に集中できている。
《ーーーーそこよ、士道》
と、インカムから琴里の声が聞こえてきて、ウィザード<士道>はマシンウィンガーを停止させて顔を上げ、ビースト<真那>も顔を同じ方向に向ける。
そこに聳え立っていたのは、辺りの建物よりも一層巨大はビルだった。階数は少なくとも20以上はあるだろう。正面入口と思しき扉には、非常事態を察知してか頑丈そうなシャッターが下されている。
「早く行こう」
[フォール プリーズ]
が、『フォール』の魔法にかかればどんなに厳重なシャッターだろうが、金庫だろうが意味を持たない。
ウィザード<士道>とビースト<真那>はマシンウィンガーで穴を潜り抜けようとした瞬間。
≪ぬっ、『ディフェンド』だっ!≫
「っ! 兄様っ!」
「お、おお!」
[ディフェンド プリーズ]
[ドルフィン ゴー! ド、ドドド、ドルフィン!]
ウィザード<士道>は前方に魔法陣の防御を、ビースト<真那>は直ぐにカメレオンマントから、『ドルフィンマント』に変えると、魔法陣の全体を水のカーテンのような防御壁で包んだ。
瞬間。正面入口がグワンッ、と歪むと同時に、視界に目映い光が満ちーーーー凄まじい大爆発が巻き起こった。
「なっ・・・・!?」
二重の防御で爆発と衝撃を防ぐが、爆風に煽られ、バイクを転倒しないようにする。
「な、なんだ一体!?」
「・・・・あなた、まさか」
ウィザード<士道>が濃密な煙の中から、何かがこちらに迫っている事に気づく。ビースト<真那>の声から、緊張と微かな怒りが混ざった声色だった。
すると辺りに充満していた濃密な煙を裂くようにして、大穴の空いた研究所の内部から、巨大な金属の塊が姿を現した。
巨木のような2門の砲身。戦車を彷彿させる鈍重なフォルム。そして、それらを背負うようにしてその直中に収められた1人の女性。
「あれは・・・・。〈ホワイト・リコリス〉・・・・!?」
かつて、両親の仇と思った琴里を抹殺する為に、折紙が使用した討滅兵器。
ただ1つ違うのはーーーーそのボディが雪のような純白であったに対して、目の前にあるのは鮮血のように毒々しい赤に染め上げられている事だった。
「・・・・兄様。あれは少し違えーです。DW-29R〈スカーレット・リコリス〉。実験用に作られた〈ホワイト・リコリス〉の姉妹機です」
ビースト<真那>が吐き捨てるように言ってから、仮面越しで忌々しげに顔を歪めた。
「イメチェンですか? 昼に見た時から随分と印象が変わったじゃねーですか。小憎たらしい顔が台無しですよーーーージェシカ」
言って、〈スカーレット・リコリス〉の搭乗者に視線を向ける。
「あの人は・・・・!」
≪あのASTの指輪の魔法使い部隊の隊長らしき女か・・・・≫
ソコにいたのは確かに、ASTと一緒にいた魔法使い<メイジ>の隊長であった女性だった。
「あはハ! マナ。マナ。タカミヤ・マナァァァ? どウ? どォウ? 私の〈リコリス〉ハ! これで私は負けないワ。あなたにハ。あなたなんかにハ・・・・!」
言って、カラカラと笑って見せた。
≪あの女、壊れておるな≫
≪悪い薬でも打ち込まれたのねぇ?≫
≪完全にラリってるぜ≫
ライオンとカメレオンとファルコ。他のキマイラズも、ジェシカの様子に憐れみの視線をむける。
「真那、知り合いか・・・・?」
「昔の同僚です。・・・・馬鹿な事を」
ビースト<真那>はそう言うと、バイクから下りて一歩足を前に踏み出し、かつての同僚の変わり果てた姿を見て唇を開く。
「ーーーージェシカ!今すぐ〈リコリス〉を停止させやがりなさい! 分かっていやがるでしょう!? それはあなたに扱えるような代物じゃねーです!」
「あはははははははハ! 何を言っているノ? 今はとてもいい気分ヨ。だってーーーー」
[チェンジ ナウ!]
ジェシカは視線を鋭くするとメイジへと変身し、砲門をビースト<真那>に向ける。
「ようやく・・・・貴女を、殺せるンですものォ」
「くーーーー!」
その気配を感じ取り、ビースト<真那>はノーモーションでメイジ<ジェシカ>に肉薄し、ダイスサーベルを蠢動させて斬り付ける。がーーーー。
「かかっタわネ!」
[エクスプロージョン ナウ!]
ドガァアアアアアンンッ!!
ビースト<真那>の行動を予測していたように、〈リコリス〉から音声が響くと、ビースト<真那>の眼前に魔法陣が展開され、猛烈な爆裂が襲った。
「真那っ!」
ウィザード<士道>は爆風に体制を保つ事が出来ず、バイクごと後方に吹き飛ばさてしまう。と、ウィザード<士道>の視界の中で、金色のシルエットとそれを追う巨大な赤の機影が通り抜けた。
獣の魔法使いと狂気に呑まれた魔術師<ウィザード>は戦場を空に移し、砲を、弾薬を撒き、あるいは剣を交え、あるいは魔法を交え、数瞬ごとに暗い空に星のごとき魔力の光を輝かせていく。
≪実妹があれを引き付けている。今のうちだ≫
「・・・・あぁ」
最優先目的は十香の救出だ。メイジ<ジェシカ>はビースト<真那>に任せるしかない。
ウィザード<士道>はバイクを起こすと、まだ動ける事を確認し、エンジンを吹かせて、ビルへと走る。
《士道! 危険よ! 単独で動くんじゃないわ! 真那を待ちなさい!》
ウィザード<士道>を止めるように琴里が怒鳴るが、速度を緩めない。
「真那を待ってちゃ警備を固められる! 今行くしかない!」
《そ、それは・・・・そうかもしれないけど! ちょっ・・・・士道!》
ウィザード<士道>は構わず、内部から滅茶苦茶に破壊されたビルの入口を駆け抜ける。瞬間、インカムから響く琴里の声がザザッというノイズに呑まれ、何も聞こえなくなる。が、これくらいは想定内。
〈リコリス〉が暴れた影響で半壊されたエントランスに構わず、ウィザード<士道>はバイクを走らせ、2階、3階、4階、5階と階段を駆け上がり、“18階の隔離エリア"を目指す。
ーーーーソコに十香がいるのである。
「どうだドラゴンっ!?」
≪・・・・・・・・〈プリンセス〉の気配が上からある。実妹の持ってきたデータは当たりのようだな。しかし、この気配は・・・・?≫
今まで随意領域<テリトリー>に妨害されて、十香と交信と気配を追えなかったドラゴンだが、十香に近づいたおかげで把握できるようになったようだ。
そして、真那が見せた内部構造データから〈フラクシナス〉のクルー達が解析して、その階にはあまりに不自然な程の厳重な設備が設られていて、隔離エリアである可能性が大きかったが、当たりであったようだ。
「・・・・!」
『『『『グゥゥゥゥゥ・・・・!』』』』
と、一体何階まで上がった頃だろうか、自分に向かってくる、『魔獣ファントム・グール』が4体も現れた。
「グールっ!?」
≪やはりな。ビルの中はファントムの気配だらけであったが、どうやら外は機械魔術師共に任せ、内部はファントム共にまもらせているようだな≫
「DEMは、本当にファントムと手を組んだのかよ・・・・!」
≪モタモタしてられんぞ、甘ちゃんの僕ちゃん?≫
「(分かってる! 十香を助ける為にも・・・・!)」
『『『『グォオオオオオッ!!』』』』
「お前ら、邪魔だーーーーーーーー!!!」
[コネクト プリーズ]
ウィザード<士道>はウィザーソードガンを取り出すと、マシンウィンガーのアクセスを上げて、槍を突き立てて迫るグール達と交戦を開始した。
ー燎子sideー
「い、一体何が起こってるってのよ、これは」
AST隊長の日下部燎子は、目の前に広がる光景が信じられず顔をしかめた。
何しろ、鏡山市のオフィス街にDEMの魔術師<ウィザード>達と機械人形、そして、何人もの同じ顔をした精霊・〈ナイトメア〉が溢れ、まさに戦場のような攻防を繰り広げていたのである。
ーーーー先刻、待機命令をされていたASTに、ようやく出動命令が下った。
が、それは天宮スクエアで人々を操っている精霊・〈ディーヴァ〉の討伐ではなく、新たに現れた精霊と〈仮面ライダー〉がDEM日本支社を襲撃した為、応援に回れと言うふざけた命令だった。
天宮スクエアの暴動を前列が無いなどといって放置し、お得意様のDEM社の方には迅速な対応する。そんな上層部に腹が立たない訳ではないが、精霊が現れたとのであればそちらも捨て置けない。燎子は待機していたAST隊員達と共にDEM日本社ビルがある鏡山市のオフィス街に急行した。
燎子は気を取り直すように大きく深呼吸をし、隊員達に指示を出した。
「総員、DEMインダストリーの魔術師<ウィザード>を援護、地上の〈ナイトメア〉を掃討。・・・・気乗りしない作戦ではあるでしょうけど、これも命令よ。気張りなさい」
『了解!』
燎子の指示に従い、CR-ユニットを纏った隊員達が空中に展開する。
燎子自身、DEMに不信感を持っていないのかと問われれば嘘になる。
ASTに無理矢理10名もの追加要員のねじ込み。一般市民が避難していない状態で戦闘を行おうとしたような組織だ。
しかし、これが上層部から下った命令である以上、無視するわけにもいかない。それをしてしまえば上層部に、ASTに処分を下す口実を与えてしまう。最悪の場合ーーーーASTがDEMの魔術師<ウィザード>に取って代わられる可能性も十分ある。
そして、折紙の事もある。明らかな命令違反をした折紙だがーーーージェシカ達、メイジ部隊の行おうとした作戦の危険性も明白だ。それを武器に折紙の処分を軽減しようと動いている燎子は、今上層部に弱みを作る訳にはいかない。
燎子はスラスターを駆動させ、隊員達と混線極まる戦場に身を投じた。
が、〈ナイトメア〉、時崎狂三の目的は交戦ではなく、撹乱による時間稼ぎ故に、燎子達とはマトモに戦おうとしなかった。それに燎子が訝しそうに眉根を寄せると、今度は何やらおかしな音が聞こえてきた。
「え・・・・?」
その一瞬、燎子の視線を一直線に横切るように、意思をもった台風としか言い様のない“何か"が、凄まじい風を起こしながら通りすぎた。
「な・・・・っ!」
思わず随意領域<テリトリー>の密度を高める燎子。その風の塊に煽られ、魔術師<ウィザード>や〈バンダースナッチ〉、〈ナイトメア〉が数名バランスを崩して辺りに吹き飛ぶ。
「な、何、今の・・・・?」
咄嗟の事で、正体が見とれず、目をパチパチと瞬かせるが、下方から影の弾丸が迫るが、密度を高めた随意領域<テリトリー>に弾かれ、燎子の意識が戦場に戻った。
風の正体は気になるが、今は〈ナイトメア〉をどうにかするのが先決と判断し、レイザーカノンを構えて、スラスターを駆動させると、混線の中に潜っていった。
ー仁藤sideー
「・・・・こちら仁藤。〈仮面ライダーウィザード〉が第一社屋に突入し、真那さんが〈スカーレット・リコリス〉を装備したメイジと交戦を開始。〈ナイトメア〉は引き続きDEMの魔術師<ウィザード>と交戦、ASTも参戦し、混線状態になっている状況です。さらに、『彼女達』も第一社屋へと向かいました」
傘下ビルから脱出し、別のビルの屋上にたどり着いた仁藤は、装備として持ってきていたスナイパーライフルのスコープで状況を見ると、“ある人物"に連絡を取っていた。
「はい・・・・はい・・・・そちらはお願いします。せめて〈仮面ライダーウィザード〉が、〈プリンセス〉を救出するまでは、“フェニックスの足止めを"」
そう言って仁藤は通信を切ると、再びスコープで戦況を見ていた。
ー白い魔法使いsideー
仁藤との通信を終えた白い魔法使いはーーーー“大西洋の上空で、フェニックスと交戦していた"。
『テメエ! 舐めてやがるのかっ!? マトモに戦いやがれっ!』
『残念だが、お前とマトモに戦うつもりはない。次はサハラ砂漠に招待しよう』
[タイム ナウ!]
士道と別れてから、フェニックスの足止め役をしていた『白い魔法使い』は、再び時間停止の魔法で、フェニックスの動きを封じるとーーーー。
[テレポート ナウ!]
停止させたフェニックスを連れて、地球の反対側へと転移した。
社内にいる敵はファントムにしました。魔術師<ウィザード>達は外の方を任せられています。