デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚   作:BREAKERZ

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参戦・美九

ー士道sideー

 

「はぁあああああああああっ!!」

 

『グギャァアッ!』

 

『ガァアッ!』

 

ウィザード<士道>はマシンウィンガーを駆使してDEMインダストリー・第一社屋の社内にいるグールとインプの大軍を斬り捨て、撃ち抜き、バイクで轢いたり前輪や後輪で殴りながら、18階に向かって駆け抜ける。

 

「い、今ので、何体目だ、ドラゴン・・・・!」

 

≪今のでグール・42体、インプ・37体、計79体と、新記録だな。今の階が8階だから、18階に着く頃には100体を越えるのでないか?≫

 

「まだ、8階、かよ・・・・!」

 

飛んで行こうにも、外は狂三の分身体とDEMの魔術師<ウィザード>の戦場で、ビースト<真那>とメイジ<ジェシカ>が激戦を繰り広げているので不可能。

中から行くのがベストと思ったが、社内はグールとインプに溢れており、進む度に数が増えていき、バイクで進み続けるのも困難になってきた。

 

『グォオオオオオッ!!』

 

『グワァァァァァッ!!』

 

と、バイクを止めたウィザード<士道>の前方に、廊下に所狭しと並んだグールの大軍が、後方に同じく所狭しと並んだインプの大軍に挟まれしまった。

 

「っ! しまった、囲まれた!」

 

≪数の暴力による挟撃か。小僧と同レベルの低能共が、無い知恵を振り絞った物だ「誰がグールとインプと同レベルの知能だよっ!?」 貴様以外に誰が・・・・ぬっ!≫

 

「どうした?!」

 

いつもの喧嘩を始めようとしたウィザード<士道>だが、ドラゴンが突然窓ガラスの向こうに視線を向けているのに気づき、そちらに目を向けようとした次の瞬間。

廊下に並んだ窓ガラスが一気に破片が雨のように降り注いだ。

 

「うわっ!」

 

『『グワァァァァァッ!!』』

 

ウィザード<士道>に、グールとインプの狼狽の声が響くが、異常はそれで終わりではなかった。割れた窓から凄まじい風圧が襲い、ウィザード<士道>の前方に並んだグール達を軽々と吹き飛ばす。

次いで、ウィザード<士道>は辺りの気温がガクンっと下がるのを感じたが、それだけでなく、後方にいたインプ達の身体が凍っていき、氷像へと変わっていく。

 

「これって、まさか・・・・!」

 

「ふん、情けないですねー」

 

≪ハァア、うざったいのが鬱陶しく現れおって・・・・≫

 

ウィザード<士道>が目を向け、ドラゴンが辟易したような声を上げると、砕かれた窓から、煌びやかな霊装を纏った美九が現れ、廊下に降り立った。

そしてそれと同時に美九は、タン、タン、と軽やかなステップを踏む。

 

「〈破軍歌姫<ガブリエル>〉ーーーー【独奏<ソロ>】!」

 

するとそこから、銀色の細長い円筒が現れた。あの巨大なパイプオルガンの一部のようだ。

そしてその先端部が、美九に向かって折れ曲がると、まるでライブなどに用いるスタンドマイクを思わせた。

 

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

 

美九がそれに向かって、思わず聞き惚れてしまいそうな美声を響かせる。ドラゴンは欠伸をかいていたが。

が、その声を聞くと、グールやインプ達が頭を押さえてもがき、その身体が粒子状となって消滅した。

 

「ふん! 私の美声を聞いて消滅するだなんて、失礼な話ですねー」

 

「美九!」

 

「気軽に呼ばないでもらえますぅ? あなたの喉から発せられた声で、舌で発音された音で呼ばれるとふ、それだけで私の可愛い名前に拭いようの無い穢れが蓄積されるんですよぉ」

 

≪この小娘の名前はどうでも良いが、確かにカビが生えて名が腐れ爛れそうだな≫

 

相も変わらず、愛らしい顔に似合わぬ鋭い罵倒と、それだけには同意するドラゴンの毒舌が、ウィザード<士道>の心を抉る。

窓の外を見ると、美九をこの階層まで運んできたのか、〈氷結傀儡<ザドキエル>〉を顕現させた四糸乃と、〈颶風騎士<ラファエル>〉を顕現させた八舞姉妹の姿があった。

 

「お姉様・・・・私達はどうしましょうか?」

 

巨大なウサギの人形にしがみついた四糸乃がそう言うと、美九がウィザード<士道>に向けていた険しい顔を一瞬の内に微笑に変えて四糸乃に向いた。

 

「んん、そうですねぇ。四糸乃ちゃんや耶倶矢さん、夕弦さん達の天使はビルの中じゃ窮屈そうですしー・・・・じゃあ、邪魔が入らないよう外の魔術師<ウィザード>さん達をやっつけておいてください」

 

美九が指を一本立ててパチリとウインクすると、今度は八舞姉妹が声をあげる。

 

「くく、なるほどな。では我らは、姉上様の帰り道を掃除しておく事にしようぞ」

 

「懸念。しかし、夕弦達がいなくて大丈夫ですか?」

 

「あはは、さっきも見たでしょう? いくら魔獣と言っても、精霊であるこの私が遅れを取るなんて事、あるはず無いじゃないですかぁ」

 

≪(どうやら、魔獣ファントムの事を見下しているようだな、この小娘)≫

 

精霊にとって、魔獣ファントムは唯一の『天敵』とも言える存在なのだが、美九は先ほどのグール達を『声』で倒すのを見て、自分の力はファントムに通用すると、思っているようだ。

美九の快活な笑みを見ると、3人は迷うような素振りを見せるが、一瞬目を合わせ、小さく頷く。

 

「お姉様がそう仰られるなら・・・・」

 

「ふ、承った! 我らに任せておくが良いぞ。この建物から一直線に、ピロードの絨毯を敷いておく事を約束しようぞ!」

 

「了解。全てはお姉様のお望みのままに」

 

「お、おい、四糸乃! 耶倶矢! 夕弦!」

 

≪(・・・・ま、この方が都合が良い)≫

 

ウィザード<士道>が叫ぶが3人は聞く耳持たず、天使を駆ってそれぞれ思い思いの方向に飛び去ると、その数秒後に、魔術師<ウィザード>と狂三達の戦場の中に、冷気の奔流と風の塊が荒れ狂うのが見えた。

それを満足げに見届けた美九は再び、ウィザード<士道>の方に顔を向ける。

 

「美九・・・・お前、一体なんでーーーーまさか美九、お前、あの約束を・・・・?」

 

「・・・・っ」

 

ウィザード<士道>の言葉に、美九が不快そうに顔を歪める。

 

「勘違いしないでもらえますぅ?私、どこかの不愉快な自殺志願者が勝手にペラペラ垂れ流した妄言にも満たない聞き苦しい奇声なんて、これっぽっっっっっっちも気にしてませんしぃ。ここに来たのは、もう1人の精霊さんを私のコレクションに加えようと思ったからですしー」

 

「美九・・・・。すまん。恩に着る・・・・!」

 

「ふんっ、だから、あなたにお礼を言われる筋合いなんて無いんですよぉ。私は私の意思で、十香さんを連れに来たんですから。・・・・無様に付いてくるのは勝手ですけど、できるだけ私の視界に入らないようにしてくださいよー」

 

頭を下げるウィザード<士道>を一瞥してから、廊下を歩いていく美九。ウィザード<士道>は『コネクト』の魔法で、マシンウィンガーを家のガレージに送り、美九の後を追った。

 

 

 

ー真那sideー

 

ビースト<真那>の視界を夥しい数のマイクロミサイルが埋め尽くすが、ビースト<真那>が回避すると、辺りを飛ぶDEMの魔術師<ウィザード>に〈バンダースナッチ〉が弾幕に被弾し、地上に堕ちていく。

 

「・・・・あなた、味方を!」

 

「ははははハ! 無駄よォ!」

 

ビースト<真那>の叫びにも構わず、メイジ<ジェシカ>は哄笑をあげる。

 

≪もはやマトモな判断力さえ残されていないようじゃな≫

 

≪おそらく真那ちゃんが、“何年も施されて来た魔力処理をされたのね"≫

 

≪しかも、この短時間で、真那のように全身ではなく、脳に重点的にな≫

 

≪それによぉなんかアイツの身体から、“濃密なファントムの臭いがしてるぜ"≫

 

≪ンモ≫

 

「くーーーー」

 

1日も経たずにここまでの強化をされたのかは分からないが、これが術者にどれほどの影響を及ぼすかは、容易に想像できた。

現にジェシカはもう既にその影響か、思考の並列が困難になっているのだろう、真那を倒す事だけに執着し、味方や辺りのDEM社の施設の被害を厭わず、滅茶苦茶に暴れている。

 

「くーーーー」

 

《真那! 援護するわ! 避けて!》

 

と、そこで琴里の声が響き、〈フラクシナス〉の〈世界樹の葉<ユグド・フオリウム>〉を機雷化して、ジェシカのミサイルを防いでくれた。

 

「どーもです。助かりーーーー」

 

≪≪≪≪≪真那(ちゃん)!! あれっ!≫≫≫≫≫

 

ビースト<真那>がキマイラズの声に身を翻して見ると、魔術師<ウィザード>がいる所の下方に、冷気の奔流を放つ、巨大なウサギの人形にしがみついた、メイド服の少女がいた。

 

「〈ハーミット〉・・・・いえ、四糸乃さん・・・・!?」

 

「お姉様の・・・・命令です。魔術師<ウィザード>さんは、みんな・・・・やっつけます!」

 

『おーし、その意気だよ四ー糸乃! うしゃー! あの子もついでに凍らせちゃおー!』

 

「うん・・・・!」

 

四糸乃は巨大なウサギ〈氷結傀儡<ザドキエル>〉と会話を交わすと、宙を舞いながら空気中に幾つもの氷柱を生成すると、ビースト<真那>に向かって放った。

 

「ちょっ、なんのっ!」

 

ビースト<真那>は迫り来る氷柱を、ファルコマントの機動性で回避し、あるいはダイスサーベルで打ち落としながら空を駆ける。

が、今度は上方から凄まじい風圧が襲いかかるが、ビースト<真那>は身体を螺旋状に回転して、風の壁を突き抜け上空に飛び上がる。

 

「くく、なんだ、やるではないか『獣の魔法使い<ベスティエ・マギア>』。そこらに蠢く凡百の魔術師<ウィザード>とは違うと言うわけか」

 

「警戒。耶倶矢、注意を。あれは確か士道の妹です。相当な実力と聞いています」

 

槍とペンデュラムを握った双子が、油断なく真那に視線を向ける。

 

「八舞姉妹・・・・でしたか」

 

〈ディーヴァ〉の支配下に置かれている事は知っていたが、なぜここに現れたのかは分からない。しかし悠長に思考をさせてくれる時間は無かった。

メイジ<ジェシカ>がまた、ビースト<真那>に迫ってきたのだ。

 

「冗談・・・・!」

 

精霊3人だけでなく、頭を滅茶苦茶に弄られ、ビースト<真那>と拮抗するほどに魔力を高めたメイジ<ジェシカ>が相手では、如何にビースト<真那>でも厳しい。

どうしたものかと、考えるビースト<真那>の前方の空域に、自衛隊ASTの魔術師<ウィザード>が、応援に呼ばれて現れた。

 

「あーーーー隊長!」

 

「え・・・・? は、アンターーーー真那!?」

 

その中に見知った日下部燎子の名を呼ぶと、燎子も意外そうな顔を作った。

 

「アンタ一体なんでこんな所にーーーー」

 

「話は後です! タッチ!」

 

「は?」

 

「あの子らを頼みます!」

 

≪≪≪≪後はヨロシク!≫≫≫≫

 

≪ンモッ!≫

 

言って、AST隊員達の間を突っ切るように飛翔すると、隊員達の目の前に、精霊3人が一斉に襲いかかってきたのだ。

 

「う、うわっ!? 総員、応戦! A班は〈ハーミット〉を、B班は〈ベルセルク〉を!」

 

『り、了解!』

 

燎子は咄嗟の事にも冷静に対応し、3人を迎え撃ち、3人も狙いをビースト<真那>からASTに変えたようだ。

それを視界で確認したビースト<真那>を、後方から追ってくるメイジ<ジェシカ>が2門の魔力砲を向けてきた。

 

「マァァァァァァァァナァァァァァァァァーーーーッ!!」

 

「しつけーですね・・・・!」

 

≪しつこい女は嫌われるわよっ!≫

 

≪ぬっ! 真那! 避けよ!!≫

 

鬱陶しげに舌打ちするビースト<真那>は、ライオンからの声が聞こえると同時に、背筋を冷たい指でなぞられるような感覚に襲われる。

 

「く・・・・!」

 

ビースト<真那>が慌てて身を翻して、回避行動を取ると、身体があった空間を、ビースト<真那>の身の丈くらいはあろうかというレイザーブレイトが通り過ぎた。

 

「ーーーーおや、避けましたか。いい反応です」

 

言って、ビースト<真那>の背後に現れたのは、白銀の:CR-ユニットを纏ったDEMインダストリーが誇る最強の魔術師<ウィザード>、エレン・M・メイザースが現れ、ビースト<真那>は息を詰まらせた。

 

「エレン・・・・ッ!」

 

「襲撃者達の中に大きなネズミが一匹紛れていると聞いていましたが・・・・貴女でしたか、真那」

 

言って、エレンはビースト<真那>を見下ろすように視線を送る。

 

「残念です。ビーストドライバーに認められただけでなく、貴女の事はDEMの中でも私に次ぐ実力者と認めていたのですけれど」

 

「は・・・・ッ、冗談じゃねーです。人の身体を勝手に弄くり回しておいて」

 

ビースト<真那>が吐き捨てるように言うと、エレンはピクリと眉の端を動かした。

 

「・・・・なるほど。そこまで知ってしまいましたか。『白い魔法使い』に拾われたと言うのは本当のようですね」

 

「ふん、驚かねー処を見ると、貴女も“共犯"らしいですね。理想的なシナリオとしちゃあ、真実を知った貴女が改心して一緒に社長をぶっ倒してくれる事だったんですが」

 

「残念ですが、私が『アイク』を裏切る事はあり得ません」

 

「・・・・でしょうねぇ」

 

ビースト<真那>は忌々しげに呟きながら眉を歪める。ーーーー正直、厄介極まる女が現れた。『アデプタス・ナンバーの頂点』にして、自他共に認める『世界最強の魔術師<ウィザード>』。キマイラビーストの力を持っているとはいえ、ビースト<真那>が勝てる保証はほんの2割りが良いところ。

しかも今はーーーー。

 

「消えロ! 〈ブラスターク〉!」

 

[エクスプロージョン ナウ!]

 

メイジ<ジェシカ>の叫びと魔法の音声が響くと、2門の魔力砲と真っ赤な魔法陣から、凄まじい魔力の奔流と業火が放たれる。

 

「ぐ・・・・!」

 

如何にビースト<真那>とは言え、〈リコリス〉と魔法の攻撃をノーダメージで防げない。ビースト<真那>はファルコの機動性と俊敏性で回避すると、エレンとメイジ<ジェシカ>を視界に収めるように後方に飛び退いた。

右には、白銀の鎧を纏った『最強の魔術師<ウィザード>』。

左には、真紅の戦車を背負った『最狂の魔術師<ウィザード>』。

 

「2対1と言うのは気が進みませんがーーーーまあ、アイクの意向であれば仕方ありません。そのビーストドライバー、回収させていただきますよ。『アデプタス2』」

 

「あ、は、はははハ、マナ、マナ、遂に追い詰めたわヨ。マァァァァナァァァァ?」

 

≪熱烈じゃない真那ちゃん?≫

 

≪モテモテじゃん?≫

 

「ち・・・・こんなモテ方、御免でやがります」

 

2対の視線に睨み付けられたビースト<真那>は、忌々しげに舌打ちをこぼした。

 

≪フム、どうしたものかの。・・・・おいトカゲ、少しは手を貸さんか≫

 

≪・・・・・・・・仕方あるまい≫

 

 

ードラゴンsideー

 

『(さて、あのガキの相手は小僧に任せて・・・・)』

 

ビースト<真那>が窮地にいる頃。

ドラゴンは瞑目すると、ASTと戦闘中の四糸乃(&よしのん)、耶倶矢、夕弦に交信をする。

先ほどまでは、交信しても3人は聞く耳を持たず、さらに近くに美九と言う邪魔がいたため出来なかったが、今ならできると確信したのだ。

 

『(おい〈ハーミット〉、〈テンペスト〉、〈ストーム〉、聞こえているか?)』

 

≪・・・・ド、ドラゴン、さん?≫

 

≪何用だ?≫

 

≪迷惑。夕弦達は忙しいのです≫

 

ドラゴンに対しても辛辣の対応をする精霊達に、内心、『こうも簡単に操られおって・・・・』と呆れながらも、話し出した。

 

『(いや何、せっかくこんな戦場で大激戦を繰り広げようとしているのだから、ここは1つ、変身でもしてかっこ良く活躍すれば良いのではないかと提案をしようと思ってな)』

 

≪≪≪変身?≫≫≫

 

3人が首を傾げてそう言った。

 

『(ああ。こんなに敵に溢れた戦場で、かっこ良く変身して、悪い魔術師<ウィザード>達や鉄人形共と言った、完全に悪い奴等の集団を〈仮面ライダー〉の姿となって颯爽と活躍など、まるでこの間みんなで見た映画のヒーローのようではないか?)』

 

≪≪≪・・・・・・・・・・・・≫≫≫

 

言われて3人は熟考する。確かに、以前に見たヒーロー物の映画では、ヒーロー達が変身して大活躍する場面に、八舞姉妹は興奮して見てたし、四糸乃とよしのんも食い入るように見ていた。

 

『それに〈ハーミット〉よ。ここで変身して活躍すれば、君の相棒のかっこ良い姿を見せて、お姉様とやらに認めてもらえるかも知れんぞ?』

 

≪っ!≫

 

言われて四糸乃がピクンッと肩を揺らした。四糸乃が変身し〈仮面ライダーハーミット〉になると、身体の主導権はよしのんにチェンジする。

それに、どうも美九はよしのんの事をただのパペットとして見ているような気がしていたので、“これを機によしのんの存在をアピールできるのではないか?"と、考えてしまう。

 

『まあ変身しないならそれなら構わんが、これを聞いて隣にいる精霊達が抜け駆けをするような真似をするかもしれんな?』

 

ドラゴンの言葉に、今度は八舞姉妹がピクンッと肩を揺らし、お互いに視線を向けた。

 

≪(なるほどな。確かに抜け駆けが得意な夕弦ならば、漁夫の利でこちらを出し抜き颯爽登場! のような大活躍をするやも知れん・・・・!)≫

 

≪(思考。あのカッコ付けたがりの耶倶矢であれば、すぐに変身して無駄に派手な立ち回りをして、目立とうとするかもしれません・・・・!)≫

 

お互いの長所も短所も知り尽くしている八舞姉妹は、お互いの共通点である『目立ちたがり屋』も熟知している故に、懐疑的な視線を向ける。

どうしようかと迷っている精霊達に、ドラゴンはさらに続ける。

 

『(向こうでは幹部クラスのファントム達が待ち構えているからなぁ。如何に〈ディーヴァ〉と言えども苦戦は必定だと思うのだがなぁ?)』

 

第一優先であるお姉様の危機を聞かされ、さらに3人はピクンッと肩を揺らした。

 

『(ここで変身してかっこ良く敵を倒し、窮地の〈ディーヴァ〉を救い出せば最高で最善にカッコいいヒーローだぞ?)』

 

≪≪≪・・・・・・・・≫≫≫

 

3人はドラゴンの口車に乗せられたかのように、お互いが同時に、『スピリッドライバー』を取り出した瞬間ーーーー抜け駆けされると思った3人は、急いでドライバーを腰に当てて、ベルトを展開させた。

 

[[[ドライバーセット シャバドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪ シャビドゥビタッチヘンシン~♪]]]

 

≪っ・・・・!≫

 

≪あれぇっ? どったの四糸乃?≫

 

≪変身!!≫

 

≪ええっ!?≫

 

よしのんが突然の四糸乃の行動に面食らっていると、八舞姉妹も遅れてなるものかと言わんばかりにーーーー。

 

≪≪変身!!≫≫

 

[ハーミット プリーズ]

 

[ベルセルク・テンペスト プリーズ]

 

[ベルセルク・ストーム プリーズ]

 

3人のドライバーから音声が響くと魔法陣が展開され通過すると、四糸乃の身体がサファイアに、耶倶矢がトパーズに、夕弦がオレンジエメラルドの宝石に包まれた。

 

『(狙い通り。〈ハーミット〉は自分が目立つよりも、相棒が目立つ方を優先する。〈テンペスト〉と〈ストーム〉も、目立ちたがり屋な性分を逆撫ですればこの通りっ!)』

 

3人の性格と性分を理解しているドラゴンは、してやったりと言わんばかりに笑みを浮かべた。

宝石の塊に包まれた3人が宝石を砕いて、〈仮面ライダーハーミット〉、〈仮面ライダーベルセルク・テンペスト〉、〈仮面ライダーベルセルク・ストーム〉へと変身した。

 

≪≪≪・・・・・・・・・・・・あれ??≫≫≫

 

変身完了した3人は、間の抜けた声を発して、首を傾げるーーーー。

 

 

 

 

ー士道sideー

 

廊下を歩きながら、十香のいる可能性の高い18階を目指し、既に14階までやって来たウィザード<士道>と美九。

時おりグールとインプが現れたりするが何とか倒していく。

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・・」

 

しかし、既に100体以上のグールとインプとの戦闘で、段々体力が消耗していき片膝を付くウィザード<士道>。そんな様子をチラッと見ながら、美九は忌々しげにフンと鼻を鳴らす。

 

「・・・・無様ですねー。なんでそうまでして頑張るんです?」

 

「言っただろ・・・・俺は、十香を助けなきゃならない。十香がどんな目に遭ってるか分からない以上、こんな所で・・・・モタモタしていられない!」

 

「くーーーー」

 

ウィザード<士道>はふらつく足に渇をいれるように叩くと、再び立ち上がった。美九はそれに、ピクリと眉を動かし、わざとらしく嫌悪感に溢れる表情を作ってくる。

 

「あーあーあー。お寒いですねぇ。何ですかそれー。悲劇のヒロインを助ける自分に酔ってるんですかぁ? 正義の魔法使い気取りですかぁ?」

 

嘲るように肩をすくめ、美九が続ける。

 

「あっはは、もしかしてあれですかー? 自分の命より十香さんが大切とか言っちゃった手前、引っ込みが付かなくなってるんですかー? いいですよー別に。人間の醜さはよぉく知っていますから、今更失望なんてしません」

 

「・・・・」

 

だがウィザード<士道>は反応を示さず、ただ黙々と廊下を歩いて行った。

 

「ちょっと!何無視してるんですかぁ!」

 

美九はそれが気に入らなかったのか、声を荒げてウィザード<士道>を追い越しーーーーそして、何かを思いついたようにポンと手を叩いた。

 

「ーーーーああ、そうだ。じゃあこうしましょう。今ここで、十香さんの事は諦めるって言ってくださいよぉ。そうしたら、私の『声』で、あなたの好きな女の子をいくらでもあなたの奴隷にしてあげます。どうですー? 悪い話じゃあないでしょう?」

 

美九のその言葉に、ウィザード<士道>は胸の内に、凄まじいまでの不快感が広がっていく。今美九の機嫌を損ねるのは得策ではない。ーーーーそんな事は分かっているが、今の発言だけは許せるない。仮面を解除した士道は、ギランと美九を睨み、声を発する。

 

「・・・・ふざけるな! 十香に、代わりなんていない!」

 

「・・・・ッ」

 

鋭く激しい剣幕の士道に、美九は小さく肩を震わせた後、いきり立つように語気を強めてきた。

 

「ふ、ふんッ、いつまでも見栄張ってんじゃないですよ! どうせあなた達の『好き』だとか『大切』だなんてその程度のものでしょう? 代わりを用意してあげるって言ってるんですから、それでいいじゃないですか! 何でそこまでするんですか・・・・ッ!」

 

強制をするような調子で美九が言ってくる。士道を惑わそうとするだけと言うには、それはあまりにも余裕のない口調。まるで、士道の言葉を否定しなければ、自分の中の『何か』を否定されると思っているかのように。

 

「確かに俺は、正義の魔法使いだなんて大層な事が言えるような立派な奴じゃない。それでも俺はーーーー十香を助ける。十香の希望になるって約束したからな」

 

「・・・・希望? 約束? ハッ、何ですかそれぇ。そんなお寒い綺麗事のために十香さんを助けるんですかぁ? 十香さんが精霊だからですかぁ?」

 

「そんなの関係無い! 俺は十香の希望になるって約束したから! それが俺の戦う理由だから! 俺は十香を助けるんだ!」

 

自分にも言い聞かせるように力強く叫ぶ。

 

【【【私達の、希望になってくれたから】】】

 

その時、四糸乃が、耶倶矢が、夕弦が言った言葉を思いだし、美九は一層顔を歪めた。

 

「何が・・・・何が希望ですか! 馬鹿じゃないですか!? そんな言葉、自分の偽善を隠す為の嘘に決まってます! 人間が、そんな風に戦える事ができない筈です!!」

 

「美九、お前は勘違いしてる。人間は、そんな奴らばっかりじゃーーーー」

 

「う・る・さぁぁぁぁいっ! 人間なんて私のおもちゃたんです! 男は奴隷! 女の子は可愛いお人形! 人間に、それ以上の価値なんてありません!」

 

美九が断ずるように叫ぶ。

 

「美九、お前・・・・」

 

士道は眉をひそめた。狂三の影の中で聞きそびれた言葉が、頭を掠める。

 

「なんでーーーーなんでお前はそんなに男を嫌うんだ! なんで女の子を物のように扱うんだよ! なんで人間を、そんな風に見てしまうんだ・・・・!」

 

「はッ、そんなの決まっているでしょう?人間なんてその程度のーーーー」

 

 

 

 

 

「“お前も、人間なのに"・・・・っ!」

 

 

 

 

 

美九の言葉を遮るように、士道は言い放った。

 




次回、美九の過去が明らかに。
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