デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
ー美九sideー
「“お前も、人間なのに"・・・・っ!」
士道の言葉に美九は、言葉を切って息を詰まらせた。
「ーーーーッ!?」
美九が驚愕に見開いた目を士道に向けてくる。士道はその目を見据えながら続けた。
「もともと人間だったお前に、識別名〈ファントム〉ーーーーノイズのような姿をした『何か』が、精霊の力を与えた。・・・・違うか!?」
「・・・・!」
美九が肩をビクッと震わせるがーーーー否定はしなかった。
狂三が、ここに至るまでの道中で、士道に話してくれた事が、それだった。
美九の家で発見したーーーー別名義のCDと、“幼い美九とその両親と思しき男女が写っていた写真"から読み取った情報。
美九はーーーー琴里と同じように、何者かによって精霊にされた人間である事。
そして、かつて別の名前でアイドルとして活動していたことがあるという、過去。
「・・・・あなた、どうしてそれを」
たった今美九が鋭い視線で睨み付けた事が、何よりの回答だった。
「知り合いに情報通がいてな」
とは言え、士道とて全てを知っている訳ではない。写真とCDから狂三が〈刻々帝<ザフキエル>〉・【十の弾<ユッド>】で読み取れたのは断片的な情報が多く、未だ分からない事は山ほどあったのだ。
もし・・・・美九が元々人間であったというのであれば。何故、同じ人間をモノとしてしか扱うことができないのだろう。
男が嫌いなだけでなく、お気に入りの女の子に対してすら、まるでアンティークドールを愛玩するような接し方しかしない。人間を自分と同じ生き物として扱おうとしない、途方も無い違和感があったのである。
当初士道はそれを、生まれながらにして絶対遵守の『声』の力故の、歪んだ価値観が形成されたからだと思った。
だがーーーー美九が人間だったとするならば。
十数年もの間に、人間社会で生活をしていて、どうしてこうも歪んだものとなったのか。
一体どれほどの事があれば、あそこまで人間に無機質的な感情を持てるのだろうか。
「同じ、人間じゃないか。だったらもっとーーーー」
士道が言いかけると、美九はギロリと鋭い視線を送り、憎々しげに叫ぶ。
「ふざけないでください・・・・、あなたに、あなたに一体何がわかるって言うんですか!」
「だから、教えてほしいんだ!」
「っ!」
美九が憎々しげに叫ぶが、士道がそう答え、口をつぐむと、士道はゆっくりと口を開く。
「美九・・・・お前に、一体、何があったんだ」
「・・・・ふんっ、なんで私がそんな事」
「美九」
士道が詰め寄るように言うと、美九は面倒そうに吐息した。
「しつこいですねー。ふん・・・・」
言ってーーーー美九は、ぽつぽつと、吐き捨てるように話を始めた。
* * *
ーーーーその少女には、歌しか無かった。
9歳になる頃の美九は、既にそう感じていた。
勉強も運動も、絵も工作も落ちこぼれ。小学校と中学校でも、彼女は落ちこぼれのままだった。
でも美九には、誰よりも上手くできる事があった。それが歌だった。唯一誇れるものだ。
きっかけはほんの些細な事、幼稚園で先生に褒められた事だった。
それは幼い美九にとって、誰も持っていないピカピカの勲章を貰ったような誇らしい気持ちだった。
そんな美九はやがて、テレビの中で歌い踊るアイドルに憧れるようになった。
煌びやかなステージの上で舞い、可愛らしい歌声を響かせる彼女達の姿に、幼い美九は夢中になった。歌詞と振り付けを完璧に覚えて両親を驚かせた程だ。
そして、美九が15歳の頃、オーディションで審査員の目に止まり、『宵待月乃』と言う名前で、憧れていたアイドルとしてデビューを飾った。
その時の喜びは言葉で表せない。憧れ続けたあの場所に立ち、声を、歌を、沢山の人達に聴いてもらえる。そう思うと自然に涙が溢れ落ちてきた。
仕事は順調な方だった。CDも徐々にチャートに入るようになっていき、ライブにも続々と人が増え始めて来た。
客層は男性客が9割を越え、今ではおぞましいが当時の美九にとっては皆、自分の歌を好きと言ってくれる大切なファンだった。
CDやラジオも収録も楽しかったが、やはり自分の歌声がファンの皆に届いているという実感が、一番湧いていたのがライブという舞台だった。
美九は歌やファンの皆が、大切で、大好きだった。
皆が少女の歌を褒めてくれる。
美九の事を大好きと言ってくれる。
胸につけられた、目には見えないピカピカの勲章が一層輝いて。
こんな夢のような時間が、永遠に続くと信じていた。
ーーーーだが、夢の終りはあっさりと、そして残酷なまでに訪れた。
美九がデビューしてからそれなりに人気も出始めて1年ほど経った頃。事務所のマネージャーから、某局のプロデューサーが、美九の事を気に入ってくれている、という話だった。“仲良く"すれば、ゴールデンのレギュラーが取れるという話もあった。
明確な指示は無かったが、つまりは“そういう事"だろう。
無論、その話は丁重に断った。
美九がアイドルになりたかったのは、別にテレビに出て有名になりたい訳ではなく、自分の歌と笑顔を皆に届けたい為だ。
だが、それからしばらくして。
美九の身に覚えの無いスキャンダルが、写真週刊誌に掲載された。
その内容は、余りのショックにほとんど覚えていないが、過去の男性関係、堕胎経験。ドラックパーティに入り浸っているという酷すぎる内容である事は覚えていた。
後からわかった事だが、どうやら先のプロデューサーが、一枚噛んでいたようだった。美九の事務所の社長とも懇意だったらしくーーーー美九は、いとも簡単に会社での居場所を無くしてしまった。
だが、美九にとって1番堪えたのは、ファンの・・・・否、今までファンと思っていた人達の態度だった。
今まで『大好き』と、『愛してる』と、『君のためなら死ねる』と、散々並べていた人達が、急に手のひらを返したように変わった。
美九の言葉より、どこの誰が言ったかもわからない噂話を信じられた事が、辛かった。
【《ねえ、前の彼氏とは何回ヤッたの?》】
【《堕胎って、赤ちゃん殺す事でしょ? 人殺しの癖に何やってんの?》】
ブログにそんなコメントが書き込まれる度に。
随分とお客の減った握手会やサイン会で心無い言葉をかけられる度に。
美九の心は、段々と磨耗し、笑顔は曇り、憔悴していった。
それでも、美九は諦めなかった。
美九には歌がある。歌があるのだ。始めから、自分には歌しかなかったのだ。
どんな噂話に流された人も、自分の歌を聴いてくれれば分かってくれる筈だ。
私の歌には、そんな力がある。
そんな、根拠のない自信が、心の何処かに残っていた。
そうして美九は、再びライブ会場のステージに立った。
だが、駄目だった。
会場にひしめく人々が、自分とは別の、何か恐ろしく、おぞましい怪物に見えて来て、緊張とは別の動悸が、身体を、心を支配していった。
しかし、歌わねばならない。歌わなければ、何も始まらない。
曲が始まり、マイクに口を近づけ、喉を震わせた。
だがーーーー。
【・・・・・・・・! ・・・・・・・・!】
ーーーー美九の喉からは、ひゅうひゅうと空気が発される、だけだった。
病院で精密検査をすると、心因性の失声症だった。過度のストレスが、美九の声を、歌を奪ったのだ。
こうして、歌しか持っていなかった宵待月乃の人生は、いとも容易く終わりを迎えた。
歌しか持ってなかった1人の少女が声を失ってしまったら、それはもう、その少女の存在価値が失われたようなものだ。
そんな事、9歳になる頃には、既に理解していた。
だから、そんな美九が自殺を考えるのは、当然の結末だった。
方法は何でも良かった。首吊り自殺。覆水自殺。睡眠薬の過剰な服用。電車の前に飛び出しも良い、剃刀を手に当てて引くだけでも構わない。たったそれだけの事で、無価値な自分を処分できる筈だから。
でも美九が、それを実行に移そうとした時。
美九の前に、『神様』が現れた。
【『ーーーー人間に失望した君。世界に絶望した君。ねぇ、力が欲しくは無い?世界を変えられるくらいの、大きな力が欲しくはなぁい?』】
* * *
「私はーーーー失ったんですよ。1度。心因性失声症で、醜い男共のせいでーーーー声を・・・・命よりも大事な、この声を・・・・ッ!」
感情を吐露するように独白し、美九が今にも泣き出してしまいそうな顔で言う。
「何度も死のうと思いました。でも、そこに・・・・『神様』が現れて、今のこの『声』をくれたんですよ!
1たび歌えば人を虜にする、この最高の『声』を!」
恐らくその『神様』というのは、琴里に霊力を与えた正体不明の精霊、識別名称・〈ファントム〉の事だろう。
「・・・・そう、だったのか」
≪・・・・・・・・≫
士道は、人を人として扱おうとしない美九に、途方も無い違和感を覚えていた。
価値観が、死生観が、人のそれと乖離し過ぎていると感じていた。それに憤りを覚える程に。
美九の家で宵待月乃の写真とCDを見つけた時、もしかして美九は、人間としての過去が存在するのではないかと思うと、その違和感はさらに膨れ上がっていった。
だがーーーーそれは違った。
勿論、美九の人間に対する接し方を肯定するつもりなど全くない。霊力の『声』で無理矢理自分に従順にし、女王気取りでいる美九のやり方を認める事は、やっぱり出来ない。
しかし違った。美九は人間を自分より劣るモノとしか思っていないのではなくーーーー。
対等の関係として接するのが、恐ろしくて、怖くてたまらないのだ。
信じたならば、きっと裏切られる。
託したならば、きっと見限られる。
頼ったならば、きっと騙される。
だったら・・・・最初から、何も期待しない、何も信じない方がいい。
人間と自分の間には距離を置き。
人間と自分は別種の存在なんだと認識し。
人間に自分の如何なるものをも託さない。
人間への失望し、大事な声を失った過去がある故に、彼女の自覚なき防衛策だ。
美九が自分の物にならなかった腹いせに、スキャンダルを捏造した卑劣なプロデューサーと、それに踊らせれて美九の心を傷つけた愚劣なファン達。そんな身勝手で醜悪な男達を侮蔑し拒絶し。
女性にも心を開く事ができず、自分を裏切らない可愛い人形としてしか接することができなくなってしまったのだ。
「だから、私は男が大っ嫌いなんですよ! 下劣で、汚くて、醜くてーーーー見ているだけで吐き気がして来ます!」
美九が、吐き捨てるように言う。
「女の子だってそうです!私の言うことだけを聞く、可愛い子がいればあとは必要ありません! 他の人間なんて、みんなみんな、死んじゃえばいいんです!」
「・・・・ッ!」
美九の叫びに、士道は息を呑みながら、拳を固く握りしめた。
確かに美九の苦悩は分かる。いや、分かったつもりでも、その苦しみの深さは、士道には完全に理解し切れないだろう。大事な声を失った事が、それがどれだけの絶望を彼女に与えたのか、当事者ではない士道が理解するのは難しい。
だが、それでもーーーー。
「それは・・・・違う! お前の境遇は気の毒だと思う・・・・! そのプロデューサーも記事を書いた記者も頭にくる! 手のひらを返したファンだって腹が立つさ! でも、だからと言って、他の人間達全部を一緒くたに嫌う事ないじゃないか!」
「何を・・・・!黙ってください! 男なんて皆同じなんです!」
「いいや言わせてもらう! そもそも本当に、お前の歌を聴いてくれる人は1人もいなかったのか!? スキャンダルなんかに踊らされずに、お前の歌を信じて楽しみにしてた人だっていたんじゃないのか!?」
「そ、そんな人ーーーー!」
と、その瞬間、廊下の前方から足音が響くと。すぐにグールやインプとそれを付き従えるファントムがいた。
「ちぃっ! 鬱陶しい! 後一体何体いやがんだよっ!?」
士道はマスクを展開せず、そのままソードガンを構えた。今は、美九と真っ正面から向き合わないといけないからだ。
ファントムの軍勢が迫ると、美九の音の壁で進行を阻み、その隙にソードモードを一閃させて、士道は声を張り上げる。
「美九ーーーーお前は自分の中で恐ろしい人間の幻想を作り上げちまってる!その『声』でみんな言う事を聞いてくれるから、それが膨れ上がってーーーー余計、本当の人間と話すのが怖くなってるんだ!」
「はぁっ!? 怖い・・・・!? 言うに事欠いて、私が、人間を恐れてるっていうんですか!? ていうか今は戦闘中でしょう! 何を余計なーーーーァァァァァァッ!」
美九の言葉の途中でまたもグールとインプ達が武器を持って迫って来た。美九は士道に向けていた声を張り上げると、再び声の壁を作りそれを防ぐ。
「そんなの関係あるか! 何度だって言ってやるよ! お前はずっと、自分を肯定しかしない人間に囲まれて来たから、生の人間と会話すんのが怖いんだ! でもーーーーそれだけ人間を拒絶しながら、心のどっかで、ちゃんと話をしたいって思ってたはずだ!」
「何を適当な・・・・! あなたなんかに何が分かるっていうんですか!」
美九が声を張り上げ、士道がガンソードを振るい、大声で言い合いながら、時折出てくるグールとインプを蹴散らし、進んでいく。
「わかるさ! だからこそお前は、自分の『声』でも操れない人間ーーーー『五河士織』が欲しかったんじゃないのかッ!?」
「・・・・ッ!」
美九が息を詰まらせ、表情を歪める。
そう。美九はこれまで自分の言う事を聞く人間、自分の事を好きな人間しかいらないと言っておきながら、異様に士織に対して執着していたのである。
「そ、そんなことーーーー」
「それにお前は、そのご自慢の『声』を手に入れて再デビューした時、『宵待月乃』でも新しい芸名でもなく、『誘宵美九』って本名を名乗ったんだろう!? お前は・・・・知って欲しかったんじゃないのか!? 自分はここにいるっ! 認めてもらいたかったんじゃないのか!? 他でもない人間に・・・・!」
美九はうぐぐ・・・・と顔を赤く染めると、廊下を前進しながらヒステリックな声を上げた。
「う・る・さぁぁぁぁぁぁぁいッ! 黙れ黙れ黙れぇぇぇっ! 知った風な口を利いてぇ! バカー! アホー! 間抜けぇぇぇっ!」
≪幼児退行したな・・・・≫
後半は罵倒ではなく、ただの悪口になっていた。が、その声には濃密な霊力が乗せられていたらしい。前方に顔を出していたグールとインプが、見えない音の壁に押し退けられ、後方へと吹き飛ばされていく。
「お、お前なぁ・・・・! 図星突かれたからって・・・・!」
「図星なんて突かれてないですもん! 違いますもん! あなたがバカなだけですし! バーカ! バーカ!! バーカ!!!」
「あぁぁぁぁぁもうこの我儘女・・・・ッ! やっぱお前に四糸乃や耶倶矢を任せてなんかおけねえ! こうなったら意地でも霊力封印してやるからなこの野郎・・・・っ!」
≪・・・・“そんな必要はないがな"≫
士道は叫ぶように言い、ドラゴンがボソリと呟くが、聞いていなかった。士道の言葉に美九がビクッと肩を震わせた。
「そんな事・・・・させないんですからっ! この『声』を封印されたら、私は、またーーーー」
美九が歯を噛みしめるように言いながら、言葉を継いでくる。
「あなたは・・・・また、なれっていうんですか!? 歌のない私に・・・・無価値な私に・・・・ッ!」
「そんな事ーーーー言ってねえだろ!!」
[キャモナスラッシュシェイクハンズ! キャモナスラッシュシェイクハンズ! フレイム・スラッシュストライク! ヒーヒーヒー! ヒーヒーヒー! ヒーヒーヒー!]
「ハアアァァァッ!!」
燃え盛る炎を纏った剣を振り抜き、斬擊が火龍となった『フレイムスラッシュ』が、グール達を切り裂き、燃やしていく。
「俺は・・・・人をいいように惑わす力なんて篭ってない。お前の本当の笑顔で、本当の歌声で歌って欲しいだけだ!」
それは本心だった。美九の家で聴いた人間だった頃の美九の歌声。それは本当にひたむきで、今の美九にない魅力に溢れていたのである。
ジャケットに写っていた、彼女の笑顔は、今の美九のような仮面のような偽りの笑顔では無い。本当に心から歌を愛していると、写真からでも伝わるような、眩しい笑顔だった。
しかし美九は、忌々しげに顔を歪める。
「知った風な口を利かないでください・・・・! この『声』があれば、私は最高のアイドルでいられるんです! この『声』を失った私の歌なんて、一体誰が聞いてくれるっていうんですかぁっ!!」
「俺が、俺達がーーーーいるだろうが・・・・ッ!」
士道が叫ぶと、美九は呆然と目を見開き、全身を微かに震わせた。
「何を・・・・適当なことを!私の歌なんて、聴いたこともない癖に! 『空っぽ』だって、雑音以下だって言った癖に!」
「後半を言ったのはドラゴンだったろうが! それに聴いたさ! 1曲だけだけどな! ひたむきで、一生懸命で、一途で、格好良かった! 今の歌よりよっぽど好きだね! お前の歌を酷評したドラゴンだって! 聞き入っていたよ! 誰も歌を聞いてくれない・・・・? はっ、抜けた事を言ってんなよ。ーーーー少なくとも、今ここに、どんな事があろうと、お前を信じて、何があっても離れないファンが、ここに、“2人"いる!」
「な・・・・っ!」
「ドラゴンからのメッセージだ! ≪我は今日までの数日間、歌の番組やCDで多くの歌手の歌を聞いてきた。皆、歌や客に対して情熱的で、楽しそうで、懸命で、歌手である事に矜持を持ち、自分の歌を聴いてくれる者達への“感謝の気持ちを込められた素晴らしい歌声"だった。が、お前の“歌には何も入っていない"。霊力の『歌』で人心を惑わしているだけで、“何の気持ちも入っていなかった"。だがら『空っぽ』と言ったのだ。だがな、宵待月乃として歌っていたお前の歌の方が、今の“霊力を込めた『声』を使った歌なんて足元にも及ばない程の素晴らしい歌であった"≫ってさっ!」
「・・・・っ!!」
美九は、今にも泣き出しそうな顔になりーーーーしかしすぐに思い直すように首をブンブンと振った。
「そんな・・・・そんな言葉ーーーー信じないんですからぁっ! そう言ったファンは、皆私の事を信じてくれなかった! 私が辛い時・・・・誰も手を差し伸べてくれなかった!」
「俺はそうは思わない! お前を信じて待っていたファンは、必ずいるはずだ! でも、もしーーーー本当にそうだとしたら! その時は俺が、必ずその手を掴んでみせるッ! 俺がお前の、最後の希望になってやるッ!!」
「都合のいいことを・・・・! じゃあなんですか、私がもし十香さんと同じようにピンチになったら、あなた、命を懸けて助けてくれるとでもいうんですかぁ!? それでもなってくれるって言うんですか!? 私の希望にっ!? 」
美九は士道を睨みながら叫ぶ。士道の答えを窮する様を見ようとして。
がーーーー。
「当然だろうがッ!!」
「・・・・!」
一瞬の迷いもなく、士道は喉を震わせて言った。
士道の返答に、美九が一瞬足を止めた。
だがすぐに不愉快そうに顔を歪め、士道の後を追ってくる。
「信じませんッ!どうせ嘘です・・・・! 嘘に決まってます!」
「お前なーーーー」
言い合いを続ける2人が18階の階層に上がった時、目の前に両手にガトリングガンを構えた魔術師<ウィザード>が現れるがあっさりとやられ、2人は目の前に魔術師<ウィザード>が現れた事にも気づいていない様子で続ける。
「大体ですね、なんで私があなたに助けられなきゃならないんですかぁ! 身の程を弁えてくださいよねぇ!」
「いやお前が助けてくれるかって言ったんだろうが!」
「ふーん! そんなの知りませんよーだ!」
美九がつーんと顔を背ける。士道は頰をピクつかせた。
「この・・・・っ!」
≪じゃれ合いはそこまでだ。着いたぞ≫
ドラゴンに言われて、士道は今いる階層が、今までと異なっている事に気が付いた。
頑丈そうな壁が連なり、辺りには窓一つない。まるでそうーーーー何かの隔離施設のように。
「もしかして・・・・ここが?」
眉をひそめ、前方を見やる。
長く連なる隔壁の一部。そこには、頑丈そうな扉が設えられていた。
芸能界の闇の被害者だったんですね美九は。