デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
ー美九sideー
ーーーー空が割れるかのような音が辺りに響き渡った瞬間、十香?の剣の延長線上に当たる全てに1本の線が引かれる。
一部を削り取られるビル。その下に広がる地面。さらにその先に広がる街並み。そして視界の奥の奥に見える山々に至るまで。
その線を霊力の波が通り抜けると、そこに存在していた筈の一切合切を粉砕した。
冗談でも比喩でもない。黒い霊力の本流に触れたもの全てが、圧搾され粉砕され粒子となって、風に消えていった。
「・・・・・・・・!」
空中でへたり込む美九は、目の前を通りすぎた斬撃の余波に吹き飛ばされないよう身を低くしながら、喉から空気を発した。
ビルに、街に、地面に、一直線の虚無の道ができてしまっている。近くを見ると、十香?の1撃の余波を防いだのか、氷の障壁が砕け、そこからハーミット<よしのん>の姿が確認できた。
だが、ウィザード<士道>とドラゴンの姿が見受けられない。
「・・・・っ! ・・・・っ!」
美九が声にならない声をあげ、ウィザード<士道>とドラゴンの名を呼んだ。
しかし、返事はなかった。
その時、美九の身体から、僅かに、紫色の皹が入り出した。
「っっ!!」
美九は、身体を襲う激痛に苛まれる。
「ふーーーーはは、はははははははははははっ!」
十香?はそんな美九を気に止めず、高笑いを響かせ、両手を広げて叫ぶように言葉を発する。
「消えた。消えた。ようやくーーーー消えた。私を惑わす奸佞邪知の人間が・・・・!」
「っ!・・・・!」
美九はギリッと歯を噛み締め、苦しみながら鋭い視線を十香?に向けるが、ソコで目を丸くする。
「ーーーー」
月を背に空に浮かぶ十香?。そのさらに上空に。
「・・・・・・・・」
≪・・・・・・ふん≫
ウィザード<士道>とドラゴンが、ウォータードラゴンとハリケーンドラゴンとランドドラゴンと共に、十香?を見下ろしていた。
ーエレンsideー
「がっ! くぅっ! アイタタタ・・・・!」
漸く意識が覚醒したエレンは脳天から杭打ちのように地面に落下した衝撃で脳がシェイクされたような目眩いと頭痛に若干涙目になりながら、上空を見上げていた。
そこには、自分をこんな目に合わせた『古の魔法使い』が4体が、『反転』した〈プリンセス〉を見下ろしていたのだ。
「よくも・・・・っ!」
起き上がったエレンの背後に、ビースト<真那>とイフリート<琴里>が立っていた。
「行かせないわよ」
「第2ラウンドでやがりますよエレン」
「はぁ・・・・・・・・っ!!」
一瞬面倒くさそうにため息を漏らしたが、すぐにレイザーブレイドを構えて2人と交戦に入った。
ーフェニックスsideー
『くぉおおおおおおおおおおおっ!!』
身体の痺れが抜けたフェニックスが、高熱で6本のゾーンガンを溶解させると、目の前にハーミット<よしのん>とベルセルク<八舞姉妹>が立ち塞がる。
「「「っ!!」」」
『はははははは、オゥラアアアアっ!!』
3人は無言で武器を構え、フェニックスは雄叫びをあげて交戦した。
ー十香?sideー
『気合いを入れろ、小僧共!!』
「行くぜ!」
「「「応っ!!」」」
四人のウィザード<士道>が十香?に向かって急降下していく。
「ーーーーな」
そこで、十香?もウィザード<士道>が上空から迫ってきている事に気づいた。
「このーーーーまだ生きていたか・・・・! しかも四人にまでなって・・・・!!」
言って、流石に連発ができないのか、この間合いでは使えないのか、【終焉の剣<ペイヴアーシュヘレヴ>】を解除して、〈暴虐公<ナヘマー>〉に変えて振りかぶる。
「「「「おっとっ!!」」」」
が、ソコで四人のウィザード<士道>達は、『キックストライクリング』を翳した。
[[[[チョーイイネ! キックストライク! サイコー!]]]]
「「「「はぁああああああっっ!!」」」」
【【【【ストライクウィザード】】】】
それぞれが炎と水と風と土を纏った蹴撃が大剣の刀身に叩きつけると、〈暴虐公<ナヘマー>〉との間に凄まじい火花が飛び散り・・・・。
バリィイイイイインン!!
ーーーーその刀身を砕いた。
「なっ!ーーーーぁ」
その時、一瞬だけ。天使がやぶれた事よりも、不意に頭を通り抜けた感覚に、十香?は身体を支配され、動きが、止まった。
自分の天使の刀身に蹴りを叩き込まれたこの光景を見た瞬間、埋もれた記憶の一欠片が、十香?の意識を裂いたのだ。
「私は、この光景を、どこかでーーーー」
ーーーー見た事が、ある。
それを認識すると同時に、記憶がーーーー自分の知らない筈の光景が、頭の中にありありと写し出される。
巨大な剣を振り上げる自分。そしてその名を叫ぶ仮面の戦士。
【十ぉぉぉ香ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁあーーーーーーッ!!】
「十ーーーー香・・・・」
記憶の中でその名が反芻する。
それは、確か。今目の前にいる戦士が、自分を呼称するのに使った名だ。
十香。十香。聞き覚えのない筈の言葉。だが、それはーーーー。
「く・・・・」
瞬間ーーーー十香?の頭に鋭い痛みが走る。
その刹那の隙に。
「「「行けっ! 俺!!」」」
「ーーーー十香!」
赤い宝石の戦士が、仮面を解除して自分の目の前まで肉薄した。
「よう、十香。助けに来たぞ」
『まったく世話の焼ける姫君だ』
「貴様ら・・・・っ!」
十香?は渋面を作り、剣を握る手に力を込めるが、完全に懐に入られた。明らかに、少年の胸にある龍が自分が噛み砕くか、炎で焼き尽くす方が早いだろう。思わず歯を食いしばり、痛みと高熱に備える。
だが、少年はまったく予想外の行動に出た。
龍の頭を、十香?を傷つけられる唯一の武器を、消したのだ。
「貴様、何をーーーー」
「すぐに・・・・起こしてやる」
少年はそう言うと、どこか緊張した面持ちを作りながら彼女をギュッと抱きしめてきた。
「な・・・・貴さーーーー」
十香?は少年の意図が分からず、眉をひそめるが、自分の言葉は最後まで発されなかった。
理由は単純。少年が、自分の唇に、自分の唇を押し当ててきたからだ。
突然の事態に、十香?の頭が混乱する。
ーーーー一体この男は何をしているのだ? 敵に。戦場で。接吻<キス>を? 何のために? 不意を衝くために? ならばなぜ龍を消した? 意味が分からない。視界がボヤける。意識が混濁する。≪シドー≫シドー? 頭を掠めた名前のような単語でさらに混乱する。頭がグルグルと廻る。埋もれていた記憶からバラバラと≪シドー≫破片が頭を出して≪シドー≫いく。≪シドー≫まるで自分の身体が自分の物でなくなる感≪シドー≫覚。≪シドー≫その名に、意識が侵食されていく。≪シドー≫その名が響く度、気持ち悪くなっテ、≪シドー≫でも、なんダか悪くナイ気分で。≪シドー≫あア何で忘れていたんだロウ。私に名前を付けてくれタ。≪シドー≫存在がひっクり返サレーーーー。
「ーーーーシ、ドー・・・・?」
「・・・・おう」
“十香”は、喉を震わせ、自分を抱く少年の名を呼び、士道が短く答える。
そして、それに合わせるように、纏っていた闇色の霊装と、手に握っていた剣が、粒子となって空気に溶け消え、支えを失った十香が落下しないように抑えながら、近くの屋上に降りると、他のスタイル達も美九を伴って降りてくる。
「おかえり、十香」
「む・・・・? うむ」
一瞬首を傾げかけーーーーしかし、十香はコクリと頷き、
「ただいまだ・・・・シドー」
満面の笑みを浮かべて言った。
『(どうやら、『彼女』は眠ったようだな)・・・・〈プリンセス〉。何があったか覚えているか?』
「ぬ・・・・? ん~と、確か・・・・シドーが、私じゃない蝶のファントムに殺されかけて、私にはどうしようもなくて、天使すらも頼れないと思った瞬間、それから先の記憶が無いのだ・・・・ぬぉっ! シドーがいっぱいいるぞっ!?」
と、そこでウォータードラゴンとハリケーンドラゴンとランドドラゴンも近づき、十香が驚きの声をあげた。
「いや、それはな・・・・」
と、ソコで衝撃音が幾つも響き、士道達がソコに目を向けると、ビルの外壁や地面に叩きつけられた精霊達とビースト<真那>がいた。
「みんなっ!」
「ぬぅ!・・・・ん? 私のリングとドライバァはどこだ?」
十香が変身しようにも、2つのアイテムが無く変身できなかった。
美九も驚いたようにそっちに目を向けると、フェニックスとエレンがゆっくり自分達のいる空中に上ってきた。
『んだよっ! もう終わっちまったのかよ!?』
「少々残念ですが、まぁ良いでしょう。このまま精霊達を回収します。それに、虚仮にしてくれたお礼をたっぷりと指せていただきます」
二体が武器を構えると、士道は仮面を展開させ、ドラゴンスタイル達と並ぶ。
「十香。美九を見ててやってくれ。美九。必ず助けるから、少し待っててくれ」
「うむ! 分かったぞ!」
「え・・・・ええ」
四人のウィザードは最強クラスの二体を睨む。
『はっ! まだやるのか魔法使いっ!?』
「年長者として特別に助言をして言ってあげましょう。諦めるのも潔い事ですよ。無様な悪足掻きほど見苦しい物は無いのです」
自分達の勝利を疑っていない2体に、ウィザード<士道>は毅然と声を発する。
「悪いな。俺は諦めが悪いんでね! 十香達も、美九も、みんな必ず守り抜く!」
[ドラゴタイム! セットアップ!]
ウィザード<士道>は再びドラゴタイマーを起動させると、ドライバーを起動させ、ドラゴタイマーを読み込ませた。
『これが我の、我等の新たな姿だーーーー!!』
[ファイルタイム! オールドラゴン! プリーズ!]
音声が響くと、ウィザード<士道>達が宙に浮き、フレイムを頂点にドラゴタイマーの文字のような盤菱形となり、ウォーターとハリケーンとランドの姿が、それぞれのカラーのドラゴンへと変化し、次々とウィザード<士道>の身体に入っていった。その時ーーーー。
ドラゴンテイルが、ドラゴンウイングが、ドラゴンクローが現れ、さらにドラゴンヘッドを召喚された。
『ギャオオオオオオオオオオオオオ!!!』
『なんだ?』
「っ、これは・・・・!!」
フェニックスとエレンが。
「シ、シドー!?」
「えっ・・・・?」
「あれはっ!?」
「うわぉ! 士道くんがドラゴンくんてんこ盛り!」
≪つ、強そうです・・・・!≫
「どうなってんのよあれ!?」
「驚愕。驚天動地です・・・・!」
「兄様・・・・さらに強くなったでやがりますね!」
≪≪≪≪≪あんなのってアリっ!?≫≫≫≫≫
「す、凄い・・・・!」
十香と起き上がったイフリート<琴里>達。痛みに耐える美九が、その姿を見据える。
『これが我らの切り札! オールドラゴンスタイルっ!!』
「全ての魔力を1つに! これが最後の希望だっ!!」
フェニックスとエレンが、好戦的な凄絶の笑みを浮かべる。
『面白ぇっ!』
「試させてもらいましょう・・・・!」
フェニックスが炎の翼を、エレンがCR-ユニットのスラスターを全開にして、ウィザード<士道>へと向かった。
「行くぜドラゴン!」
『命令するな』
オールドラゴンスタイルとなったウィザード<士道>は、果敢に挑むと、フェニックスの大剣を片方のクローで弾き、もう片方のクローでフェニックスの身体を裂き、フェニックスの身体が爆発し、レイザーブレイドごとエレンを尻尾で叩き飛ばした。
『ぐはぁっ!!』
「くぅっ!!」
体制の整えたエレンは高速で飛行し、ウィザード<士道>もさらにスピードをあげると、二つの影が空中で何度も交差し、その度に衝撃音と衝撃波が響く。
「てやぁあああああああああっ!!」
「はぁああああああああああっ!!」
力は互角と言っても良いほどの戦い。爪と剣がぶつかり合い、火花が激しく飛び散る。
しかし、エレンの腹部、折紙に傷つけられ、随意領域<テリトリー>で抑えていた傷が、開き始めた。
「ぐぅっ!!」
『貰った!!』
その僅かな隙をドラゴンは見逃さず、『グラビティ』の引力を使って、エレンを思いっきり引き込ませた。
「なっ!!?」
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
「ぐぁはぁあっっ!!」
突然自分の身体が強い力で引っ張られる感覚に、エレンは対処が遅れ、渾身の力を込めたドラゴンクローをマトモに受けてしまい。ビル街のビルを何本も貫通し、ビル街の端っこにあるビルの内部を転がりながら漸く失速した。
「ぐぅ、あ、ぁあっ・・・・!!」
CR-ユニットはボロボロになり、顕現装置<リアライザ>も故障し、ヨロヨロと突き破った窓ガラスに近づくと、ウィザード<士道>とドラゴンが自分を見下ろしていた。
「っ!!」
「そのまま大人しくしていろ。人間相手に本気になりたくないんだよ・・・・!」
本来ならどんな非情な人間でも、人間相手に戦いたくない士道はそう言うと、復活したフェニックスが迫っていたので、そっちに向かおうとした瞬間、ドラゴンがエレンを一瞥し、見下すように鼻で笑いーーーー。
『『人類最強の魔術師<ウィザード>』も、大した事ないな!』
煽りと嫌味と“今後の為”に言った訳で、本心ではエレンはドラゴンの中で、『厄介な敵ランキング』で上位に立ったのだ。
「っっっっ!!!!???」
エレンは目を思いっきり見開き、瞳孔が開き、歯を食い縛り、口を切ったのか血が滴り落ち、全身をワナワナと震わせる。
ウィザード<士道>とドラゴンはそんなエレンに構わず、フェニックスを迎撃に向かった。
「・・・・て・・・・待てっ・・・・! 待ちなさいっ!! 五河士道ぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!」
喉が潰れんばかりの大声を発するが、ウィザード<士道>とドラゴンに届かず、2人を視線だけで呪い殺さんばかりに睨みーーーー。
「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっ!!!!」
エレンは悔しさと憎しみを込めて両腕で床を思いっきり叩きつけた。
自分に黒星を、矜持<プライド>を傷つけた怨敵を見据えた。
ーーーー床に叩きつけた両腕が痛み出し、クスンクスンと啜り泣くようになるのは、この1分後であった。
◇
「つあっ!!」
ウィザード<士道>はフェニックスと交戦し、『ブリザード』で凍らせると、ドラゴンテイルで粉砕する。
が、フェニックスは逆再生のように再び肉体を再生した。
『ハハハハハハハ!! どんなに俺を殺そうが、俺は不死身だっ! もう誰も俺を止められねぇんだよ!!』
「・・・・・・・・」
『・・・・小僧。解ったか?』
不死身となり勝利を確信したのか、哄笑をあげるフェニックス。
しかし、ウィザード<士道>は、冷静にフェニックスを見据えるとドラゴンの問いかけに頷いた。
「あぁ、解った。この戦い、俺達は負けないっ!」
『ああん?』
ウィザード<士道>の言葉に、フェニックスは気だるそうに首を動かし、声を発する。
『魔法使い。お前、俺に勝てるつもりなのかよ? 俺はどんなに殺られてもすぐに再生し、さらに強くなるんだぜっ!?』
「・・・・じゃぁ、やってみろよ」
『あ?』
「お前の全力の魔力を使えよ。俺達の言葉の意味を、身を持って教えてやる・・・・!」
『はっ!』
ウィザード<士道>が挑発するように言うと、フェニックスは全身に深紅の魔力を迸らせると、大剣に炎を纏わせた。
「ドラゴン!」
『だから命令するな』
ウィザード<士道>も全身に4色の魔力を迸らせ、フェニックスに向かって突撃した。
『「うぉおおおおおおおおおおおおおっ!!」』
『オォゥラァアアアアアアアアアアアア!!!』
2体が交差し、背中を向けあって空中に佇む。
とーーーー。
『ガッハァ!!』
フェニックスの大剣が砕け、身体に巨大な穴が開き、爆散した。が。
『復活!』
すぐに再生し、再びウィザード<士道>に大剣を振るう。
『残念だったな魔法使い! 俺は不死身なんだよ!』
「ああ。お前は不死身だ。だが、それだけだ!」
振り向き際に再びドラゴンクローでフェニックスを裂くが、フェニックスはまた再生し、間合いを開けた。
『何度やっても無駄だよ!』
「無駄じゃない。フェニックス。気づかないのか?」
『あん?』
「こうやって、俺の体内のドラゴンと完全に一体となった事でドラゴンと感覚と思考を共有できるようになった今なら解る。フェニックス。お前、“魔力が上がっていないぞ”」
『何?』
フェニックスが魔力を迸らせる。が、すぐに違和感に気づいた。この戦場に来てから、もう数回は倒された筈なのに、魔力がーーーー天宮スクエアの時からまるで上がっていないのだ。
『ど、どうなってやがるっ!?』
『解らないのか?』
『っ!』
ドラゴンの言葉に、フェニックスは鋭い視線を向ける。
『貴様の能力は『再生能力』と、それによる『強化能力』だ。再生をするまでのタイムラグの間に魔力を強化するのが、貴様の厄介な能力だった。だが、貴様は『再生能力』を高めてしまった為に、“自身の『強化能力』を失ってしまったのだ”』
『なん、だと・・・・!』
『不死身となって、さらに無限に強くなれるだなんて、都合の良い事など有り得ないのだ。貴様の力は2つの能力がバランスを取っていたが、片方の能力を無理矢理高めてしまったが故に、バランスを失い、もう片方の能力を消滅させてしまった。もはや貴様はそれ以上に強くなる事などできん! 自らの進化の道を、自らで潰してしまったのだ!』
『再生』と『強化』。強力な組み合わせだった能力だが、フェニックスは『再生』を高める為に、自らその能力の片方を失った。
『ふ、ふざけんなぁ! 例え強化が無くなったとはいえ! 俺は不死身のファントムだぁあっっ!!!』
フェニックスはウィザードに炎の矢を放つ。が、ウィザード<士道>はドラゴンウイングからの緑色の竜巻で吹き飛ばすと。フェニックスの姿が消えていた。
その時ーーーー。
「っ!」
突如頭上が明るくなり、上空を見るとフェニックスが、太陽と見間違えんばかりの巨大な炎の塊を作り出した。
『くたばれぇえええええええええええっっ!!!!』
炎の塊をウィザード<士道>に向けて振り下ろす。その熱量は、地面に到達すればこの辺り一帯を灼き尽くす程の威力である事は、容易に想像できる。
「これで、決めてやるぜ!」
『これで、終わらせる!』
ウィザード<士道>とドラゴンが魔力を高めると、空中に大きな魔法陣が現れ、に赤、青、緑、黄の魔法陣を描くと、それぞれのエレメントの色となったドラゴンが顕現すると、
『「ハァアアッ!!」』
飛び出したウィザード<士道>に続くようにドラゴン達も飛翔し、炎の塊に蹴撃を叩きつけ、
ドゴォオオオオオオオオオオオンンッ!!
炎の塊が爆発し、貫いたウィザード<士道>が、フェニックスに迫ると、ドラゴン達が先行し、フェニックスの身体を拘束し、最後は大きな魔法陣が拘束し、ウィザードの蹴撃を叩きつける。
『やるじゃぇか・・・・! だが気をつけろよ・・・・俺は、何度だって甦るぜ・・・・!』
「いや、お前を倒す気はない!」
『なにっ?』
『精々不死となった我が身を呪うんだな』
「永遠に・・・・!」
『死と再生を繰り返せ!』
『「たぁあああああああああああああああっ!!!」』
【ドラゴンストライク】
ウィザードはさらに魔力を最大限に込めてフェニックスを上空へ、さらにその彼方へ一気に吹っ飛ばし。
『ぬぅぉおああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!』
フェニックスは大気圏を越え、星を離れ、何と、太陽
へと到達した。
太陽の温度は表面だけでも6000度。それに耐えられる生物などいるはずもなく、フェニックスの身体が焼失した。
『バ、バカな・・・・! この、俺が・・・・! ぁあっ!』
が、すぐに再生する。しかし、すぐに焼失する。再び再生する。再び焼失する。また再生する。また焼失する。再生する。焼失する。再生する。焼失する・・・・。
『あ、あぁぁあぁぁ・・・・!』
太陽の重力圏に捕らわれたフェニックスは、地球に戻る事はできず、永遠に死と再生の無限地獄から逃れられなくなった。
ウィザード<士道>とドラゴンは、間もなく朝日が登り始める太陽を見据える。
「お前に、フィナーレはない」
『次は〈ディーヴァ〉だ。行くぞ』
◇
ウィザード<士道>はフレイムスタイルに戻ると、横たわる美九を介抱する十香と、真那を除いて、変身を解除した琴里達がいた。
「おぉシドー!」
「無事で、良かったです・・・・」
『いや~、なんかドラゴンくんと完全に合体したって感じだねぇ!』
「漸くフェニックスとの因縁も終わりね」
「ふっ、龍と一体化した魔法使い。何とも凄まじい姿であるな」
「羨望。凄くカッコいいです」
「兄様。それよりも彼女が・・・・」
「ああ」
徐々に進行している皹を見据え、『エンゲージリング』を嵌めた。
「美九。必ず助ける。俺が、最後の希望だ」
「・・・・・・・・・・・・(コクン)」
美九は今までと違って、屈託ない笑みを浮かべて頷いた。
[エンゲージ プリーズ]
「真那。手伝ってくれ」
「了解でやがりますよ兄様!」
ウィザード<士道>とビースト<真那>が、美九に浮かんだ魔法陣に飛び込んだ。
◇
『♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~!!!!』
大きなドームステージの美九のアンダーワールドで、禍々しく豪奢なドレスを纏った背中にパイプオルガンを背負った巨大なファントム『ディーヴァファントム』が音楽を奏でると、音符の破壊光線を放っていた。
[ドラゴライズ プリーズ!]
[キマイラ! ゴー!]
ウィザードラゴンとビーストキマイラに乗ったウィザード<士道>とビースト<真那>が、『ディーヴァファントム』に向かった。
「行くぜ真那!」
「任せるでやがります!」
ドラゴンとキマイラズが視線で火花を散らすが、それに構わず、戦闘を開始した。
美九の付けていた『エンゲージリング』が、パイプオルガンの装飾が施された、紫色のタンザナイトのリングとなったのは、この数分後であった。
ーウェスコットsideー
「いやぁ素晴らしい! 反転した精霊だけでなく、ファントムの因子を付けた魔術師<ウィザード>の変貌! そして『古の魔法使い』が体内の魔獣と1つとなり、まさかエレンを撃ち破るとは!」
その頃。
ウェスコットはミサ<メデューサ>とソラ<グレムリン>を連れて、東京都の高級ホテルのスイートルームに着き、“先に来ていた客人”が見せてくれた戦況を、まるで素晴らしいショーを見たように拍手喝采でもあげるような心地で見ていた。
隣に立ったソラが、ウェスコットの肩に肘を軽く乗せてまるで10年来の友人に接するような態度で話しかける。
「でも良いのMr.ウェスコット? エレンちゃん帰ってきたら絶対不機嫌MAXだよ?」
「まぁソコは何とか宥めるさ。他のメイジ達にエレンの救出作業を任せている。それにしても、あの変貌したメイジ、確か、名前は・・・・」
怪物に変貌したジェシカの名前を思い出せず、少し頭を捻っていると、ソラが仕方ないなと言わんばかりに口を開く。
「えっと、ジェシカ・ベイリーちゃんだったね。真那ちゃんの次のアデプタス3の魔術師<ウィザード>だったと思うよ」
「ああ、そうだ。そんな名前だったね。まぁ、彼女には面白い物を見せてくれたからね。殉職代として遺族には、大金を出して置いてあげよう。それに、面白い物も見つかったしね」
あれだけ、崇拝に近い程の忠誠を持っていたジェシカに対して、ウェスコットはあまり興味を持っていなかった。おそらくエレンが戻る頃には、ジェシカの名前はまた忘れているだろうなと、ソラは思った。
ま、ソラもジェシカの事は、まるで興味無いから別に構わないが。
ウェスコットは〈プリンセス〉を回収した時に、同じく回収したリングとケースを取り出した。
十香の『サンダルフォンリング』と『スピリッドライバー』だ。スピリッドライバーの方は、天宮スクエアの戦いで破損したのか、半壊状態になっていた。
「しかし、何とも不思議なリングとアイテムだね。これで精霊達も〈仮面ライダー〉に変身するーーーー」
じっくり眺めようとするウェスコットだが、突然リングとドライバーに魔法陣が展開されると、2つは魔法陣から伸びた手に回収された。
「おや・・・・?」
『・・・・・・・・』
「「っ!」」
ウェスコットと“客人”はそれに少々呆気にとられ、ソラとミサが窓の外を見ると、『白い魔法使い』が魔法陣に乗りながら宙に浮いていた。
窓越しだが、白い魔法使いの声がその場にいた全員に聞こえる。
『これは返してもらうぞアイザック・レイ・ぺラム・ウェスコット。これは彼女の持ち物だからな』
[テレポート ナウ!]
そう言って、白い魔法使いは“客人”を一瞥しながら、転移魔法で去っていった。
「なるほど。彼がMr.ソラが言っていた『白い魔法使い』か・・・・」
「良いのかい、 Mr.ウェスコット?」
「構わないさ。これからの楽しみが増えると言うものだからね。それで、そちらの方はどうなんだい?」
『ーーーーーーーー』
“客人”は隣に控えるミサを見て、幾つか言葉を発すると、ミサは恭しく頭を垂れながら片膝をつく。
「はい。ヴァンパイアの処遇はこちらで行います。お任せください」
そして、ミサは立ち上がり、その“客人”、いや“主”に向かって声を発する。
「『ワイズマン』」
ー狂三sideー
士道達がこの場を去ってから、朝日が上がったばかりの早朝。
瓦礫に溢れた暗いビルの中に、幾つもの影が蠢いていた。狂三と分身体である。
「ーーーーDEM第二社屋、目的のお方はおられませんでしたわ。仁藤さんのハッキングでも、所在は分かりませんでしたわ」
「先端技術研究所、外れですわ」
「第一社屋、いたのは十香さんだけですわね」
次々と報告する『自分』の声に、瓦礫の上に腰かけた狂三はヤレヤレと息を吐く。
「どうやら・・・・ここもはずれのようですわねぇ」
1000体近い分身体を使い潰して実入りしなかった報告に、狂三は残念そうに息を吐くと、小さく肩をすくめる。
「ーーーー『囚われの精霊』。一体どこにいらっしゃるのやら」
静かに呟く狂三が探していたのは、『世界で2番目に確認された精霊』。
ーーーー“『始源の精霊』の精霊の事を知る、唯一の存在”。
例え精霊の力と強力な魔力を持つ士道とドラゴンを食らって、【12の弾<ユッド・ベート>】が使えても、『始まりの精霊』を討てなければ意味がない。
DEMインダストリーに囚われ、世界の何処かの施設に幽閉されていると言う精霊。
彼女を見つけ出す為に、狂三は士道に協力を持ちかけたのだ。とは言えーーーー今回は無駄足のようだった。
「まあ、仕方ありませんわ。今回は士道さんに頭を撫でてもらえましたし、ドラゴンさんにも優しい言葉をかけてもらえましたし、厄介なフェニックスさんもいなくなりましたし、それにーーーー士道さんとドラゴンさんの新しい力もたっぷりと見せて貰えましたしね。これだけでも良しとしましょう。ーーーーねぇ、わたくし達」
狂三が言うと、闇の中で蠢いた幾人もの狂三が、影の中に消えていった。
ディーヴァファントムとの戦いは、尺の都合で割愛させて貰います。
次回。ヴァンパイアに遂に罰が。そして美九は・・・・。