デート・ア・ライブ 指輪の魔法使いと精霊の恋愛譚 作:BREAKERZ
眠る龍と魔女の精霊
ー士道sideー
平行世界の仮面ライダー、〈仮面ライダーゴースト〉と〈シンフォギア装者〉と呼ばれる少女達と共に戦い。
〈システムケルブ・万由里〉との出会いと別れ。
10月に入ってから怒濤のように繰り広げられた激戦。そしてーーーー。
『我は暫く休眠状態に入る』
10月14日の土曜日の夜。
晩御飯を五河家でとっていた一同に、思念体として顕現したドラゴンがそう告げた。
「え、休眠状態って・・・・?」
『この所の激戦の連続と、新たな力の発現で魔力も相当量に消費してしまったからな。休眠状態に入って魔力を回復させる』
「・・・・その間、士道は変身できなくなるの?」
琴里が危惧しているのは、士道が〈仮面ライダーウィザード〉に変身する為にはドラゴンの存在が必要不可欠。そのドラゴンが休眠してしまえば、士道は魔法も変身も使えなくなるかもしれないと言う事だ。
魔獣・ファントムの存在もあるし、DEMの動きも気になる上に、現在は精霊達も変身アイテムであるスピリッドライバーもゴーレムが全部作り直しており、変身不可能になっていた。
『安心しろ。眠っていてもそれなりの魔力を経路<パス>は供給するから魔法は使えるし、変身もできる。が、我が休眠しているのでドラゴンスタイルにはなれんからな』
「そうか。それでどれだけ掛かるんだ?」
『長くて1週間は眠るな』
それからドラゴンが休眠に入る際、精霊達に色々なアドバイスをする。
『良いか〈プリンセス〉。また折紙<無表情娘>が何か出鱈目な事を吹き込んできても、真に受けて振り回されるのではないぞ』
「うむ!」
『〈ハーミット〉。少しお勉強の課題を出しておくからやっておくように』
「は、はい・・・・」
『ええ、お勉強やるのぉ? 四糸乃はお勉強好きだからいいどぉ、よしのんはあんまり好きじゃないよぉ』
『頑張るのだ。〈ハーミット〉と一緒にな。・・・・〈ベルセルク〉達。勝負の判定役は小僧に任せるから、いつも通りお互いに切磋琢磨し合うといい』
「ふっ! 我らの事は心配は無用の事ぞ。ヌシは魔なる力を蓄える為の深き眠りに安心して付くがよい」
「安心。夕弦達の事は心配しないでゆっくりとやすんでください」
『うむ。〈ディーヴァ〉「ハニー! お休みの前に貴方の美九がおやすみなさいのチュウを!」 お前はその情欲に忠実過ぎる性分を少しは抑えなさい』
唇を突き出して迫ってくる美九を、ヒラリとかわし、美九はソファーの上に倒れる。
「あぁん! ハニーのいけずぅ! でもそんなハニーがたまらないですぅ!」
身をくねらせる美九に、ドラゴンはやれやれとため息を吐くと、琴里に話しかける。
『・・・・〈イフリート〉。この家事以外はポンコツがまたヘマをやらかした時や精霊達の生活等をちゃんとフォローしろ。“それだけ!” がお前の組織が役に立てる部分なんだからな』
「五月蝿いわね」
〈ラタトスク〉に対する嫌味も言うドラゴンに、琴里は渋面と半眼になって返答する。
そして士道にはーーーー。
『我が寝ている間に精霊達のメンタルケアを怠るでないぞ。後な、貴様の最大の欠点の数々である『人間や物事を表面だけで判断してしまう狭くて窮屈な視野』と、『直ぐに感情的になって周りが見えなくなる猪のような単細胞』と、『日和った平和主義者気取りの平和ボケ思想』。『人間みんな良い奴らばかりだ考えるお花畑思考』『緊張感や危機感が全くないナマコのような性分』。これらの他にーーーー』
それはもうネチネチネチネチ、クドクドクドクドと、滔々と告げる。
「何で俺にはこんなに注意が多いんだよっ!!」
「それだけ士道がマトモに動いていないって事でしょう。少しは成長したら?」
『貴様の成長など、主夫能力くらいが関の山だがな。1人で戦っても大丈夫なように少しはウィザードとしての訓練や新しい戦い方の模索や、交渉術やポーカーフェイスやデートスポットやら女性が喜ぶ手段とかを学んでいろ。まぁ、貴様にそんな事を望むのは高望みと言っても良いかもしれんがな』
「本っっ当に、家事能力以外は平凡以下なのよね。少しはそれ以外も成長させて欲しいところよ」
「だから何でお前ら2人は俺を貶す時だけ息が合うんだよっ!!!??」
との事があって、ドラゴンは士道の体内に入りーーーー。
≪ZZZzzz・・・・ZZZzzz・・・・ZZZzzz・・・・≫
休眠状態に入ったドラゴン。本当に寝ているのかと、少し話しかけようとする士道。
「おいドラーーーー」
バシィイイイイイインンッ!!!
「ごぶべっ!!!」
寝ていても繰り出す強烈な尻尾ド突きで床に沈んだ。
◇
ドラゴンが休眠状態に入って翌日の10月15日の昼過ぎ。
士道と十香は、ハロウィンムードの装飾に染まった商店街を眺めながら、夕食の買い出しに来ていた。
「おお・・・・シドー、あれはなんだ?」
言いながら十香は、雑貨屋の軒下に飾られた巨大なカボチャのお化け、ジャック・オー・ランタンを指差した。
「ああ、ジャック・オー・ランタンだな。カボチャをくり抜いて作るんだが、まぁあれはプラスチックだろうけど」
「カボチャ? あのお化けはオレンジ色だぞ? カボチャは緑ではないのか?」
「日本のは大体緑だけど、外国にはオレンジ色のカボチャがあるらしいんだ」
「なんと・・・・あんなに大きいと、煮物や天ぷらやスープにしてもまだ余りそうだな」
十香が感心したように眼を丸くしてウンウンと頷くが、使われる品種のパンプキンは基本観賞用であまり食べないのであるが、十香の夢を壊す事もないだろう。
「んー、じゃあ折角だから、今日の晩飯用にカボチャでも買って帰るか。確か肉が余っていたし、そぼろ煮かコロッケにでもしよう」
「おお! それはとても良いと思うぞ! しかし、そぼろ煮は分かるがコロッケ・・・・? コロッケはジャガイモで作るのではないのか?」
「普通はそうなんだけどな。カボチャで作っても甘くて美味しいんだぞ」
目をキラキラさせながらブンブンと手を振る十香にそう言うと、味を想像するように数秒間眼を閉じて、ゴクリと生唾を飲み込み、今日はコロッケにしようと、八百屋に向かって歩幅を大きくして歩き出すと、道の脇から出てきた人影にぶつかり、その場で尻餅を付いてしまう。
「うぬっ!」
「おっと・・・・」
「十香! 大丈夫か?」
「む・・・・うむ」
十香を立ち上がらせ、今しがた十香がぶつかってしまった相手の方を向く。
そこにいたのは、車椅子に座った50代くらいの外国人の男性と、その椅子を押す20代半ばくらいの眼鏡をかけた女性だった。
「すいません、不注意で。怪我はありませんか? ほら、十香も」
「む・・・・すまん。前を見てなかった」
十香がすまなさそうに頭を下げると、男性は柔和そうな笑みを浮かべ首を振り、流暢な日本語を発する。
「いや、こちらこそすまなかったね。大丈夫かい、お嬢さん」
「うむ、大事ないぞ」
「それは何より。君のような可愛らしいお嬢さんに怪我をさせてとあっては、私は地獄に落ちてしまうところだった」
おどけるような調子で、すんなりとそんな台詞が出る辺り、昔はさぞプレイボーイだったに違いない。見習わなければなあ、と密かに思う士道だが、当の十香は頬を染めずキョトンとしていたが。
と、士道がそんな事を考えていると、男性が何かを思い出したように手を打に、市民病院に行きたいようで、士道と十香が案内した。
案内する内に、男性の方は『ボールドウィン』。女性の方は『カレン』と紹介された。
「どうも」とだけ言って無言に戻るカレン。士道は淡いノルディックブロンドと碧眼の容姿に、何処かで会ったような気がした。
士道と十香も自己紹介をすると、ボールドウィンが二人をカップルだと言った。
士道は吹き出し、十香はカップルの意味が分からないのか首を傾げた。
「シドー。カップルとは何だ?」
「え・・・・ッ!? いや、それはだな・・・・」
士道が困っていると、ボールドウィンは面白がるように十香に視線を向ける。
「十香さん。君は、士道くんと出会ってからどれくらいになるんだい?」
「む? そうだな・・・・大体半年くらいだ」
「なるほど。と言う事は4月くらいか。日本ではちょうど入学式や始業式が行われる辺りだね。そこで出会ったのかい?」
「いや。私とシドーは空間震の時にーーーー」
「わーっとぉ!」
士道は、素直すぎる十香の言葉を遮るように大声をあげ、十香もそれに気づいたのか、ハッと目を丸くし、誤魔化すように言葉を続ける。
「ち、違うぞ。空間震は空間震でも、アレだ、私が原因でアレではなくてだな、その・・・・」
「く、空間震の時に、シェルターで会ったんだよな!」
「! う、うむ! それだ!」
このままではいずれボロを出すと思った士道が言うと、十香は賛同するように首肯した。
少しわざとらしい話をボールドウィンは怪訝そうな顔をせず、ただ微笑ましげに2人のやり取りを眺めている。誤魔化せたと思った士道は胸を撫で下ろした。
だが、なんと言うのか、ボールドウィンはこちらの全てを察していると言いたげな気味の悪さがあった。
今ドラゴンが起きていたら、静かな警戒心を出していた所だろう。
「そうか。それは運命的だ」
ボールドウィンがゆっくりと、何やら感慨深そうに息を吐いてから、言葉を続ける。
「ーーーー十香さん。今、君は幸せかい?」
「ぬ?」
急な質問に目を丸くする十香だが、別段怪訝そうな顔もしないで、大きく頷いた。
「うむ、とっても幸せだぞ!」
「そうかい」
ボールドウィンが優しげに微笑んだ。
とーーーーその瞬間。
ーーーーウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーー。
不意に、商店街の各所に設えられた街頭スピーカーから、けたたましいサイレンが鳴り響いた。
「警報・・・・っ!」
士道が叫ぶと同時に、スピーカーから避難を促すアナウンスが流れ、辺りにいた買い物客達が慌ただしく最寄りのシェルターに避難していく。
空間震警報が鳴ったと言う事はーーーー新たな精霊が出現すると言う事だ。今すぐ〈フラクシナス〉に連絡を入れて回収してもらわねばならない。
「あ、あのっ! ボールドウィンさん! ここは危険です。すぐ避難してください!」
「ああ、そうするとしよう。君は?」
「えっ? お、俺は、その、ちょっとやることがあるので・・・・」
士道がシドロモドロになりながら答えると、ボールドウィンは肩をすくめながら笑った。
「いや、意地の悪い問いだったね。また会える幸運を願っているよ。ーーーー頑張ってくれ。精霊を、よろしく頼む」
「え・・・・?」
ボールドウィンの言葉に、士道は眉をひそめて喉を絞った。
しかし彼は何も返さず、カレンに命じて元来た道を戻っていった。
「シドー、何をしているのだ?」
「あ、ああ・・・・」
十香に言われて、士道はボールドウィンとカレンの背から視線を外すと、〈フラクシナス〉に連絡を取ろうとポケットに入れていたインカムを右耳に装着した。
ーボールドウィンsideー
「これから如何致しますか?ーーーー“五河司令から何度か連絡が入っているようですが”」
五河士道に夜刀神十香と別れてすぐ、車椅子を押すカレンが問いかけてくる。ボールドウィンはそちらを一瞥するように視線をやってから前方に向き直る。
「ははは、心配をかけてしまったかな。とは言え・・・・空間震となると〈フラクシナス〉も忙しかろう。取り敢えずは大人しく避難しておくさ。ーーーーああ、それと、確か〈ベルセルク〉の折に捕らえたDEM社員がいると言う話だったね。せっかく日本まで来たんだ。少し話をさせてもらおうじゃないか」
「分かりました。手配しておきます」
淡々とした調子でカレンが言い、ボールドウィンは小さく首肯した。
「ーーーーそれで、彼らに異常は?」
「見る限り、今のところは問題ないかと。非常に安定しています」
「そうか。それは何よりだ」
「“彼の中にいる魔獣”が休眠状態になっていて幸いでしたね。五河司令の報告では、彼の魔獣はかなりの切れ者で油断できない存在との事です」
「だからこそ、『伝承の魔獣』が眠っている機会に、接触したのだよ」
ボールドウィンはフゥと息を吐いた。
先月。『反転』したと言う精霊の夜刀神十香に、『伝承の魔獣』と一体化した『伝承の魔法使い』となる五河士道。
無論、検査結果の報告は受けていたが、やはり直接会ってこの目で確かめてみなければ懸念は拭えないし、騒ぐ“馬鹿共”を抑える事ができないからなのである。
だが、それは杞憂だった。今しがた耳にした十香の弾むような声を思い起こし、唇の端を緩める。
「ーーーー日本に来てよかった。彼女は、本当に幸せそうだったね」
そう言って彼ーーーー『エリオット・ボールドウィン・ウッドマン』は、小さく微笑んだ。
ー士道sideー
「こりゃ・・・・なんと言うか、不気味だな・・・・」
〈フラクシナス〉から空間震発生現場に転送された士道は、辺りに広がる光景を見て、思わず頬に汗を垂らした。
直径1キロメートルに及ぶ広大な範囲の災害の爪痕ではない。その痕の外縁南側。そこには、何とも異様な建造物が並んでいた。
空中の半ばで途切れたジェットコースターのレール。馬の首が無くなったメリーゴーランド。ひび割れたコーヒーカップ。半壊状態のミラーハウス。いずれも錆や苔にまみれていた。
ここは30年前の『南関東大空災』をギリギリ免れたが、客を失い、さらに空間震被害がギリギリ出ていなかった為、再開発の補助金も出ず、瞬く間に廃園となった、近隣住民からも『お化けランド』と呼ばれている遊園地の廃墟だった。
夕暮れ時と言う時間も相まって、何とも不気味な光景となっていた。まさにお化け屋敷が施設全体を侵食し、遊園地全体がお化け屋敷になったようだ。
「ちょっと雰囲気出過ぎだろ、これ・・・・」
《文句ばっか言ってるんじゃないの》
と、渋い顔で呟く士道の右耳のインカムから、自立カメラでうかがっている琴里の声が聞こえた。
《出現した精霊は既に空間震発生ポイントから西に移動しているわ。すぐにASTも現場に到着するはず。余計な茶々入れられる前に接触してちょうだい。今回はドラゴンがいないから、油断するんじゃないわよ》
「了解・・・・っ」
[コネクト プリーズ]
ドラゴンが休眠状態になっている間に精霊が出現した。
これまで〈フラクシナス〉の変化球な指示と、間違った指示を口にしようとする士道を強制的に黙らせたり、士道は認めないが、絶望と言う感情から生まれた存在故に、感情の機微にとてつもなく敏感だったドラゴンが、不在の状況だが、そんな事を言ってる場合ではない。いつ魔獣ファントムやASTが現れるか分からない。その前に精霊と少しでも対話をしておかねばならない。マシンウィンガーを召喚した士道は、ヘルメットを被り、廃墟を走る。
「・・・・は?」
がーーーー廃墟を走っていた士道が、不意にバイクを止めて立ち尽くす。
《ちょっと? 何してるの? 精霊の反応はもっと先ーーーー》
自立カメラからの映像を見て、琴里が言葉を途中で止める。
ある一定の地点から、廃墟の筈の遊園地が、デフォルメされたゴシック建築に、十字の墓標が並ぶ、何とも悪趣味な空間へと変貌していたのだ。
「な、なんだ・・・・これ? 遊園地のアトラクションが生きてた・・・・訳ないよな・・・・?」
《ーーーーええ。微弱ながら、周囲に霊波反応があるわ。詳しい事は分からないけど、おそらく精霊の能力に関係しているんでしょう》
落ち着きを取り戻した琴里の言葉に、四糸乃の雨や、八舞姉妹の台風のような物かと、ヘルメットを脱いだ士道は辺りの異様な光景に、ゴクリと喉を鳴らす。
とーーーー。
「あらぁん?」
困惑していた士道の上方から、女性の声が聞こえ、弾かれるように顔をあげると、目の前に聳え立つ教会の屋根の上に、変わったシルエットが見受けられた。
オレンジ色の夕陽を背に、十字架の上に腰かける1人の女性。
逆光のため表情は詳しく見えないがーーーー特徴的な帽子を被っている事ははっきりと見えた。
つばが広く、先端の折れた円錐の帽子。
まるでお伽話する出てくる『魔女』を思わせた。
「うふふ、珍しいわね、こちらに“引っ張られた”時に、AST以外の人間に会うだなんて」
その精霊はクスクスと笑い、ピョンと十字架から飛び降りる。
夕焼けのような橙色と、夜空のような黒で構成された霊装を纏った長身の女性。歳の頃は20を少し過ぎた位てで、スラリと伸びた手と美脚と豊満なバストと砂時計のように括れたウェストとプリンッとした臀部。グラビアモデルが裸足で逃げ出すような、完璧なプロポーション。
世の女性の理想を総結集したような、ある種の作り物染みた美女である。広い帽子のつばの下からは翡翠石<エメラルド>を溶かしたような艶やかな翡翠の長髪が広がり、その合間から、髪と同じ色をした宝石のような、本当に翡翠石<エメラルド>を嵌め込んだような双眸が、興味深そうに士道を見つめていた。
「ふぅん・・・・?」
精霊が士道を値踏みするように顔を近づけてくる。不意を突かれた士道は、思わずビクッと震わせてしまった。
そんな士道の反応を面白がるように、精霊がクスクスと笑う。
「ふふっ、別にそんなに怖がらなくても、取って食べたりしないわよ」
「あ、あの、俺はーーーー」
士道が言葉を返そうとすると、精霊が片手を伸ばし、クイと士道の顎を持ち上げる。
「へぇ・・・・なかなかカワイイじゃない。どうしたの、僕? 確か私が限界する時って、こっちの世界には警戒が鳴ってるんじゃあなかったっけ?」
「そ、それは・・・・」
《士道、選択肢よ!》
と、完全にペースを握られた士道が言葉を返そうとすると、右耳から響いた琴里の声で、途端にイヤな予感が身体を走る。〈フラクシナス〉の出す選択肢にはリスキーな選択肢があり、琴里達は何故かこれを選択するのが多いのだ。
まぁ、そんな選択肢に何の疑問も抱かずに口走る士道にも問題があるのだが。
ー琴里sideー
〈フラクシナス〉の艦橋のメインモニタに、〈フラクシナス〉のAIが選択肢を表示させた。
①【理由は1つです。あなたに、会いに来たんです】
②【ぼ、僕、何もわからないですぅ・・・・逃げ遅れて、気づいたら、ここにいて・・・・】
③【とりあえずおっぱい揉ませてもらってもよろしいですか】
「総員ーーーー選択!」
艦長席から琴里が叫ぶと、艦橋下のクルー達が一斉にコンソールを操作し、画面上に集計結果が表示された。
①と②が拮抗し、③には票が入っていない。
「まあ・・・・順当な処かしらね」
琴里がチュッパチャプスの棒をピコピコ動かし言うと、中津川が①を進めるが、(一応)大人の女性である箕輪が、「今度の精霊はお姉さん。士道くんは母性本能をくすぐるタイプだから、今こそその武器をリミットブレイクさせるべきです!」と、熱弁し、同じく(一応)大人の女性の椎崎が賛同を示すように「あー・・・・」と小さな声をあげた。
「成る程、分からないでもないわ。・・・・でも意外ね、③に1票も入っていないなんて。てっきり神無月辺りがまた悪ふざけをするのかと思っていたけれど」
琴里がそう言って足を組み換えながら、艦長席の後ろに立っている神無月を見る。
「そんなまさか。私はいつでも真剣です」
「本音は?」
「胸は膨らみかけが至高です。あのようなだらしないおっぱいに興味はありません」
「・・・・・・・・」
「【膝の裏を舐めさせてください】と言う選択肢だったら少し悩みました」
「・・・・・・・・」
世間一般ではそれがふざけていると言うのだが、この男には寝耳に水だろう。
とりあえず琴里は神無月を近づけさせると、その目に向けて舐め終わったチュッパチャプスの棒を突き刺した。
「ノォォォォォォォォォッ!?」
神無月辺りが目元を押さえて後方に倒れる。
【≪何でこんな家畜排泄物を副指令なんぞしたのだ貴様の組織は?≫】
と、ドラゴンが起きていたら言っていただろう嫌味を想像しため息を吐いた琴里は、新しいチュッパチャプスを取り出しながら士道に指示を出す。
「ーーーー士道、②よ。できるだけ目を潤ませながら、上目遣いで」
あの変態選択肢を真面目に選んでいるって、本当に〈ラタトスク〉の人選基準ってどうなっているのやら?