袴紋太郎の中編・短編集   作:袴紋太郎

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このSSは「回復術士のやり直し」のアンチ向け作品となっております

ホラー要素、グロ表現、キャラアンチがあるため読まれる際はご注意ください

登場人物は基本的に救われません、というか原作主人公以外が空気です

以上の条件で問題なければ、読んでやってください



逆行とかいかんよって話/回復術士のやり直し

全てが順調だった。

 

一回目の世界で復讐を果たし、二回目の世界では自分の思うがままに世界が動く。

 

力も、女も、金も、権力も。

 

だが、全てが一瞬で覆った。

 

【癒】の勇者ケヤル、ケヤルガと改名した男はとある家屋の一室に閉じこもっている。

 

窓はなく、部屋の四隅は石膏によって曲線となるように埋められ、家具の類は一切置かれていない。

 

部屋の中央でケヤルガは怯えていた。

 

体を震わせ、視線は絶え間なく動き、震える体を自分の腕で抱きしめている。

 

順調だった、全てが順調だった。

 

なのに、なのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのに!!!

 

前触れなどなかった。

 

いつも通りの日常の中、視界の端に【青黒い煙】が登っているのが見えたのだ。

 

煙は固まり、青い膿汁にまみれた「ナニカ」。

 

外観はおぼろげながら狼めいており、牙を鳴らす顎と燃え上がる眼を備えていた。

 

誰かが悲鳴をあげた。

 

いやその場にいた全員があまりにも冒涜的な、生命として逸脱した怪物に恐怖したのだ。

 

最初に犠牲になったのは、氷狼族のセツナ。

 

それに最も近かったが故に、すぐさま外敵を排除しようと飛びかかり―――「それ」の注射針のような奇怪な「舌」を胸元へ打ち込まれたのだ。

 

跳ね除けようと藻掻くも怪物の力は凄まじく、彼女は全身の体液を吸い尽くされてしまう。

 

絶望に見開いた瞳がケヤルガを写すまもなく、セツナは絶命した。

 

激高したケヤルガが怪物に挑むも、ソレは出現したときと同じく煙となって何処かへと消えてしまった。

 

干からびたセツナの遺体は悪臭を放ちながら、ボロボロと砂になって崩れて風と遠に消えていく。

 

生き残ったケヤルガ達は、夢遊病を患ったかのような錯覚に沈んでいたのだ。

 

なにもかもが悪い夢なのだと、だが終わったなのだと、割り切ることが出来ないまま―――怪物の襲撃は続いていた。

 

昼夜関係なく、結界も神器すらも意味を成さず、怪物はケヤルガ達に牙をむく。

 

次に犠牲となったのは【剣】の勇者クレハ、寝室でケヤルガを「慰め」ている場面に怪物に襲われミイラとなる。

 

その次は魔王候補のイヴ、セツナとクレハの死に様に怯えふとした事でパニックに陥りケヤルガ達から離れてしまう。

 

人気のない廃屋で身を縮めて震ているところを、背中から襲われ頭蓋を噛み砕かれた。

 

再びケヤルガの前に現れたとき、膿まみれたとなった「頭」が無残に地に転がっていた。

 

神獣グレンの炎で撃退に成功したこともあった、しかし怪物は炎に焼かれても死ぬことはなく、何度も何度も何度も何度も責め立てる。

 

一瞬の隙を突かれた神獣の少女は、怪物が現れた部屋の隅に”引きずり込まれた”

 

炎を放ち抵抗するも、怪物によって隅の奥にある「何処か」へと沈んでいく。

 

指先程度の抜け道に無理やり引きずり込まれたグレンは、四肢がひしゃげ、ただの肉塊となりながら――消えた。

 

ようやく怪物が鋭角、90度以下の「角」から出現することを理解し、対応しようとしたが失敗する。

 

すべてを曲線で構成することは極めて難しい、それまでに幾度も怪物から襲撃を受けるのだ。

 

作業が完了する頃には、生き残った二人の仲間…従者のフレアとその妹ノルンは正気を失っていた。

 

無理矢理に体を重ねようとする姉妹を拒絶し、ケヤルガは一人部屋の中に閉じこもった。

 

部屋の扉を叩いていた音はない、生きるものの息遣いを感じられない。

 

食料は尽きた、水もない、狂気と恐怖によって歪んだ男の顔は老人のようだ。

 

「なんでだよ」

 

「なんで俺がこんな目に遭うんだよ」

 

「おかしいだろ」

 

「こんなの、おかしいだろ」

 

「俺はあんなに苦しかったのに」

 

「俺はあんなに辛かったのに」

 

「なんで、なんで、ようやく俺が報われたのに!」

 

「なんで俺がこんな目に遭うんだよぉ!!!」

 

血の混じった赤い涙を流し、ひび割れた爪で床を引っ掻いた。

 

”掻いて”しまった。

 

「ひぃっ!」

 

床の傷から青黒い煙が噴出し、固まり、青みがかった特異な有毒の濃汁を垂れ流す怪物が出現する。

 

「く、くるな、来るなぁ!」

 

腕を振り回し、涙と唾を飛ばしながら、尻餅をついたまま壁へと後ずさるしか出来ない。

 

主人公補正(ヒール)』は使えない、男の心は折れていた。

 

都合のいい展開(ヒール)』は使えない、そんなもの最初からない。

 

ヒタリと、一歩一歩ケヤルガとの隙間を潰す怪物。

 

喉から声が出ない、引き攣りすぎた故に息が漏れるだけ。

 

ピチャリ、何かが頬を触れる感触。

 

異臭によって効かぬ鼻が、より強まることだけは感じられた。

 

さらに一匹、もう一匹と怪物が”増えている”ではないか。

 

五匹にまで増えた怪物たちが、鋭い牙を突きたて、部屋の中央でケヤルガを広げるように”引き伸ばした”

 

「―――ぎぃっ!」

 

皮が裂ける。

 

肉が千切れる。

 

骨が割れる。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛い゛だい゛い゛だい゛い゛だい゛い゛だい゛い゛だい゛い゛だい゛い゛だい゛!!」

 

「ゆ゛る゛じでぇ゛ごべばざい゛!ゆ゛る゛じでぇ゛ごべばざい゛ゆ゛る゛じでぇ゛ごべばざい゛ゆ゛る゛じでぇ゛ごべばざい゛」

 

「ごべばざい゛ぼぐがわぶらっがら゛ぁ!」

 

「だずげでぇおどう゛ざん゛!おがばぁざん゛!」

 

ぶつり。

 

五つに分けられた人間だったモノは、肉となって血がぶちまけられる。

 

舐め取り、啜り、獲物を食い尽くした怪物―――「ティンダロスの猟犬」は、煙となって消えた。

 

◆◆◆

 

「いやぁ、怖いねぇ」

 

遠く離れた地で猛獣に襲われたニュースを見た、その程度のニュアンスで呟かれる。

 

「別に、彼らが特別邪悪だったわけではない」

 

「別に、彼らが特別愚鈍だったわけではない」

 

「別に、彼らが特別不幸だったわけではない」

 

ただ”時を遡った”、そして猟犬に”見つかった”。

 

この二つだけだ、これだけでそうなった。

 

「まぁ、しかし、一回目で満足していればこんな事にはならなかっただろうさ」

 

”黒い肌の男”は、ご愁傷様と哂う。

 

その程度のおはなし。

 

貴方もお気をつけて、猟犬に目をつけられたら…ニゲラレマセン。

 

ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ

 

 




▼・ェ・▼ワンワンオ「時間逆行とか異世界でも見逃しませんよ」

お盆を前にブラックなネタを書いておこうと思ったが、あんまり怖くもグロくもなかっただろうか
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