超時空要塞マクロス ガールズ&ヴァルキリー そのニ 作:ノザ鬼
邪悪な満面の笑顔を浮かべ、
「驚きましたか?」
勝ち誇り、
「では…。」
ゆっくりと新入部員へ向かい、
「自己紹介を…。」
促す生徒会長。
一秒。
二秒。
三秒。
四秒。
五秒。
無限とも思えた時の流れ。
「あっ。」
気付き、
「私ですか?」
確認するヒビキ。
その場の全員…。お付の集団までが、
『ズコッ!』
効果音を出しコケた。
正確には、元を作ったヒビキと、反応を知っていたカケルの二人を除くである。
きっかり、三秒。
それは、皆が立ち直るまでに要した時間である。
右足に力を、
「お…。」
込め、
「お願い…。」
踏ん張り、
「できるかしら…。」
立て直した生徒会長。
二秒。
朝よりも、反応は早かった。
首を、
「えっと…。」
傾げ、
「新入部員の。」
考え、
「ヒビキです。」
思い出し、
「不届(ふとど)き者ですが。」
頭を、
「よろしくお願いします。」
下げた。
当然。
『ガクッ!』
効果音を出しコケる。
否、
「ヒョウカと申します。」
緊張の笑顔で、
「よろしくお願いしますね。」
答えた。
驚き!
コケもせず、上と下を極限まで離す目と口。
見開かれた目と、あんぐりと開いた口。
そう表現される表情を作るカケルとリクノの二人。
約四秒。
カケルが、
「ヒョウカさんが…。」
喉の奥から声を絞り出す。
リクノの、
「ヒョウカが…。」
肺が声帯を震わせる空気を送る。
カケルとリクノが同時に、
「ツッコまない!」
驚愕の真実を告げた。
そして、静寂が部室内を占拠する。
流石の肩書き、
「ヒビキさん…。」
最初に我に返り、
「不届き者ではなく…。」
ツッコミを、
「ふつつか者でしょう…。」
入れた生徒会長。
約三秒。
頭からギザギザと尖った、
「あっ。」
リアクションの効果線を出し、
「間違ってました…。」
自らの間違いに気が付いたヒビキ。
少し遅れ。
口元を右手の甲で隠し、
「ヒョウカ、どうかしたのか?」
そっとカケルの耳元へ囁くリクノ。
ちらりと視線をヒョウカへと送り、
「変ですね…。」
頷くカケル。
緊張。
それは、生まれて初めての感覚。
自分自身でも何が起きているのか理解できていなかった。
カケルとリクノのコソコソ話も耳に入らない程に、心臓の鼓動が早まり、視野が狭くなっていた。
観察。
リクノの目がヒョウカを解析、脳が状況を分析する。
結果。
また、
「なあ、なあ。」
右手の甲で口元を隠し、
「ヒョウカってさ。」
カケルへ、
「緊張してないか?」
疑問とも同意とも思える問をするリクノ。
今までのヒョウカを思い出し、
「まさかぁ…。」
答え、
「そんな…。」
目線を送り、
「………。」
確認、
「あっ!?」
発見、
「口元が僅かにヒクヒクしてる。」
まさかの真実に驚くカケル。
カケルが、
〘そう言えば…。〙
思い出す、
〘お昼休みに転校生を見に来たのは…。〙
あの時の、
〘ヒョウカさんが言い出したみたいな事言ってた…。〙
会話。
首を、
「えっと…。」
傾げ、
「あまり、部活動に参加できないかもしれませんが。」
ゆっくりと語るヒビキ。
「そうですか…。」
残念そうに、
「お忙しいでしょうね。」
一度、瞬きし答えたヒョウカ。
この状況を堪能するように、
「後は…。」
視線をだけで一瞥し、
「部員さん達に、お任せして…。」
作り笑顔で、
「私達は帰りましょう。」
支持を出す生徒会長。
回れ右。
足並み揃え、お付の人達が一糸乱れぬ団体行動。
視線を巡らせ窓を確認し、
「あのよ…。」
生徒会長の背中へ声を投げかけるリクノ。
首を向け、
「何か?」
対応する生徒会長。
もう一度、
「動物避けの…。」
窓の向こうを、
「電流柵、設置しても良いか?」
見るリクノ。その声には、怒りの感情が乗っている。
リクノの視線を追い、
「確かに…。」
窓の外を確認し、
「必要そうですね。」
『ニコリ』と対応する生徒会長。
また、
「俺は見られるのは構わないが…。」
窓を、
「覗かれるのは好きじゃない。」
確かめるリクノ。
野次馬。
窓の外に群がる動物の名前である。
「その辺りは…。」
またも、
「私の権限で何とかしましょう。」
邪悪な作り笑顔の生徒会長。
頭の後ろで、
「じぁ…。」
両手を、
「任せたぜ。」
組むリクノ。
「はい。」
首を進行方向に戻し、
「参りましょう。」
右手で髪をかき上げ、右足から踏み出す生徒会長。
モーゼの十戒。
それは、海を割る奇跡。
ここで起きたのは、極小規模なもので割ったのも海ではない。
その上、奇跡ではなく訓練。
生徒会長の歩みに合わせ、お付の集団が順番に左右に別れる。
人により作られた、出口までの【花道】。
小さな、小さなモーゼの十戒である。
それを見ていたカケル、リクノ、ヒョウカ。
驚き…。
否。
呆れ。
生徒会長が通り過ぎた割れ目役が、規則正しく左右から追従を始め行列を作っていく。
その訓練された姿が三人の口から『あんぐり』の効果音を出させた。
最後に出口となった扉を潜ったお付の人は女生徒。
お辞儀の後に、
『バタン!』
効果音を出し扉を閉める。