超時空要塞マクロス ガールズ&ヴァルキリー そのニ 作:ノザ鬼
放課後。
飛行機道部部室の扉の前。
ノブを見詰めるのはカケル。
鼻から息を、
『すーっ。』
吸う軽い深呼吸。
そして心の中で、
〘よし!〙
気合を入れ、両の拳を握り決意のポーズ。
ノブに手を回す音が、
『ガチャリ』
いつもよりも大きく感じるのは緊張が、カケルの五感を鋭くしているからかもしれない。
潜り、
「遅くなりました。」
中の二人に声をかける。
座っていた椅子の背もたれに体重を預け、
「何か、あったのか?」
反り返りカケルの方を向くリクノ。
近付きながら、
「今度の大会の事を詳しく聞いてきました。」
返すカケル。
納得の顔で、
「ご苦労さまです。」
労うヒョウカ。
カケルの緊張が、
〘落ち着け。〙
高まり頂点に
〘私。〙
心の中で、
〘で、頑張れ!〙
自分を鼓舞するカケル。
リクノのそれは、
「で?」
世界一短い質問。
予想していた質問に、
〘きたーー!〙
カケルの心は躍る。
漂わせる([せる]の上からには〔・〕が付きます。)、
「残念ながら…。」
悲壮感に、
「ヒビキちゃんは…。」
声のトーンは、
「一緒には…。」
低く、
「行けないようです…。」
ゆっくりと語尾は小さく言ったカケル。
リクノの、その表情が、
「まっ…。」
語るのは、
「仕方ないか…。」
予想通り。
二つのレンズが、
『キラーン!』
音を出し光り、
『クイッ。』
右の中指で、眼鏡の位置を修正するヒョウカ。
そして…。
腕を、
「一緒に行けないのは…。(語尾の[のは]には当然〔・〕が付く)」
組み、
「残念ですね…。」
二つのレンズの奥の瞳から、射抜く視線をカケルに放つヒョウカ。
背筋を、
『ゾクリ。』
駆け上がる音が、
〘ば、バレてる…?〙
カケルの心を焦らせる。
ヒョウカのゆっくりと上がる口角は、獲物をもて遊ぶ猫を背後にオーラとして浮かび上がらせる。
それを、
「ん?」
感じ、
「何か引っかかる言い方だな。」
視線をヒョウカに向けるリクノ。
お返しにと言わんばかりに、
「あら?」
視線をリクノへ、
「私、そんな言い方でしたか?」
向けるヒョウカ。
その表情は、
〘ご名答。〙
そう言いっていた。
そのやり取りに、カケルの第六感が、
『ドキッ!』
五感へ告げた。
ゆっくりと視線を移し、
「カケルさん…。」
ゆっくりと名前を呼ぶヒョウカ。
その意味に、
「はぃ…。」
声は素直に反応し語尾が小さくなるカケル。
そして、自分の居る場所を確信した。
そこは…。
【袋小路】
そう呼ばれる場所。
カケルの脳裏に浮かぶ感覚を例えるならば…。
推理ドラマのラストシーン。
犯人が追い詰められる山場。
心が、
『ザワザワ…。』
そんな効果音を出し波立ち、揺れ始める。
揺れは増し、更に心を揺さぶる。
そして…。
ついに、
『ボキッ!』
折れる音を出し、真っ二つになった。
苦しくなった胸の奥の肺から送る空気で、
「あ、あの…。」
喉を震わせ、
「ヒビキちゃん、なんですけど…。」
話し始めるカケル。
首と共に視線を、
「ん?」
カケルへ移し、
「一緒に行けないんだろ?」
不思議な顔で先程の報告を繰り返すリクノ。
右手で後頭部を掻き、
「そうなんですけど…。」
一瞬、
『チラリ。』
ヒョウカへ視線を送り確認するカケル。
視線は、
『ギラリ。』
光るレンズに阻まれ、その奥の瞳の表情を覗(うかが)う事はできなかった。
カケルの背中を、
「ヒビキちゃん…。」
流れる、
「お仕事で、一緒には行けないんですけど…。」
自らが作り出した幻影の汗。
その言葉の、
「さっきも、聞いたぞ?」
意図が解らないと聞き返すリクノ。
決意。
「はい…。」
いえ、
「お仕事の場所が…。」
覚悟。
「私達の出る大会なんです…。」
そして、白状したカケル。
見開く、
「まっ。」
目と口は驚きのヒョウカ。
勢いよく、
「なっ!」
椅子から立ち上がるリクノ。
そのまま、ゆっくりとカケルに、
「それ…。」
歩み寄り、
「って…。」
ではなく、詰め寄る。
苦し紛れの笑い、
「へへへ。」
そして、右手は後頭部を掻くカケル。
リクノの回す右腕で、
「カケル〜ぅ。」
カケルの頭をヘッドロック。
それは、リクノがカケルのやろうとした事を理解した証と言っていた。
リクノの右腕が、
『グリグリ。』
効果音を出し、
「この!」
痛く無い、
「この!」
締め付けを繰り返す。
それは反応し、
「ごめんなさい!」
カケルの口から、
「ごめんなさい!」
繰り返し出る言葉。
繰り返される。
リクノの、
「この! この!」
カケルの、
「ごめんなさい!」
それは、二人の対話。
それを見詰めるヒョウカの視線は口角を軽く引き上げ、楽しげな表情を作る。
暫時。
そして…。
不意。
外れたヘッドロック。
「でもよ…。」
疑問。
「なんで…。」
右脇に挟んでいたカケルへ、
「白状したんだ?」
視線を落とすリクノ。
ヘッドロックにより、
「えっと…。」
前屈みになっていた姿勢を戻し、
「ヒョウカさんに…。」
『チラリ』視線を向け、
「バレてたみたいだから…。」
表情を探るカケル。
ヒョウカの見開いた目、
「あら?」
口の前に持ってきた右の親指を除く四本の指は、
「私…。」
驚きを、
「気が付いてませんでしたよ。」
表していた。
今度は、
「えっ!」
カケルが驚き固まった。
その呪縛を、
「ニャハハハ。」
解く笑い声に、
「慣れない事すっからだよ。」
続き、
「だから、ヒョウカの事が必要以上に気になって、バレたと思ったんだろう。」
解説した。
右手で後頭部を、
「へへへ…。」
掻きながら上げた笑い声は、
「慣れない事は、駄目ですね…。」
照れたカケルから上がる。
そんな、二人を優しい視線で見詰めるヒョウカ。
暫時。
切り出しは小さく、
「でも…。」
そして、視線を送るカケル。
リクノは、
「でも?」
声で聞き返す。
ヒョウカは、傾げた首と目の表情で聞き返す。
カケルの力強い声に、
「二人にも…。」
握られる拳。
「ヒビキちゃんと…。」
次に向けた視線も、
「会場に行けるのを…。」
力強く、
「驚いてもらいたくて!」
熱い思いが乗っていた。
それを受け止め、
「そう言う事か。」
笑顔で返すリクノ。
続き、
「そう言う事ですか…。」
含みのある語尾。
「なら…。」
間を取り、
「かっこ悪いところは見せられませんね。」
含みのある笑顔を二人に向けるヒョウカ。
だが、その含みに気付かず…。
元気よく、
「はい!」
賛同するカケル。
普通に、
「そうだな。」
同意するリクノ。
ヒョウカの瞳の奥に、
「では…。」
点るのは、
「特訓の内容を、猛特訓に変更ですね。」
サディスティックな火。
頬が、
「えっ!」
引きつるカケル。
口が、
「げっ!」
半開きで固まるリクノ。
満面の邪悪な笑顔(二人には、こう見えたらしい。)に、
「さあ。」
声は、
「始めましょう。」
楽しげなヒョウカ。
軽く握った右手を、
「おう!」
上げ、賛同とするカケル。
後頭部で、
「まっ…。」
組んだ手は、
「かっこ悪いところは見せられないからな。」
いつになく熱くなっていた自分を恥ずかしと誤魔化していたリクノ。
これが、始まる猛特訓の初日だった。